JP6472024B2 - 潤滑性基油及び液晶性グリース化合物を含む潤滑剤組成物、並びに機械装置 - Google Patents

潤滑性基油及び液晶性グリース化合物を含む潤滑剤組成物、並びに機械装置 Download PDF

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Description

本発明は、潤滑性基油中に所定の液晶化合物を含むことにより、潤滑性基油の蒸発損失が低下させられた潤滑剤組成物等に関するものである。
潤滑剤は、液体としては水などに比べて粘性が高く被膜が丈夫で、物体間の摩擦を軽減させる作用を有するものであり、機械装置の機械要素間等に働く摩擦を軽減するために利用される。潤滑剤の一般的な構成は、基油に、各種特性を付与するための添加剤を添加するものである。
このような潤滑剤は、その使用される機械装置等の使用環境に応じて、各種の特性が求められる。例えば長期間の粘度安定性、耐酸化性、腐食耐性、温度変化に対する粘度の安定性などである。
さらに近年の各種技術革新により、様々な機械装置において、機械要素の小型化・軽量化・高速回転化・複雑化が進み、潤滑剤に求められる特性も高まっている。例えば、上記の特性に加えて、低摩擦係数や耐摩耗性、耐久性、低温流動性、高温安定性などが求められている。
このような各種の要求に応え得る潤滑剤として様々な潤滑剤が提案されているが、液晶化合物を潤滑剤として使用することも提案されている(特許文献1〜4)。液晶化合物は一般に、剛直なコア部分(メソ―ゲン基)と柔軟な鎖状部分を有する化合物である。
特開2006−257384号公報 特開平6−128582号公報 特開2005−139398号公報 特開2008−214603号公報
ところで、機械装置における機械要素の小型化・軽量化・高速回転化・複雑化などに伴い、潤滑剤が使用される環境も多岐にわたっている。例えば高温下、低温下、高せん断下、高圧力下、低圧力下など、用途に応じて潤滑剤は様々な環境で使用されている。
このように様々な環境で使用されるため、例えば常温常圧など通常の条件であれば、上記の各種特性において優れた潤滑剤であっても、例えば高温下など、特殊な環境下では基油成分が蒸発してしまう場合がある。
前記の蒸発の問題のために、有用な潤滑剤であっても、従来その用途が大きく制限されているものもあり、高温においても使用可能な新たな潤滑剤の開発もなされている。
これに対して本発明は、潤滑剤基油の蒸発損失を低下させることで、その使用可能な用途を拡大した潤滑剤組成物等を提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、所定の鎖状構造及び剛直なコア構造を有する液晶化合物を潤滑性基油に添加することで、その基油の蒸発損失を低下させ、潤滑剤としての用途を広げることができることを見出し、本発明を完成するにいたった。
すなわち本発明の要旨は、以下の通りである。
<1> 潤滑性基油及び下記一般式(1)で表される液晶化合物を含む潤滑剤組成物:

[式中、
基A及び基Bは、同一又は異なって、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基;フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基;フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基;あるいは、下記一般式(2)で表される一価の有機残基であり:

(式中、R11は、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基;フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基;あるいは、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基であり、
12及びR15はそれぞれ独立に、水素原子;フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基;フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基;あるいは、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基であり、
13は、単結合;フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基;あるいは、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニレン基であり、
14及びR16はそれぞれ独立に、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基;あるいは、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニレン基である。)
基Wは置換されていてもよい2価のテトラリン基、置換されていてもよい2価の多環芳香族基、及び下記一般式(I)で表される基からなる群より選ばれる2価のメソ−ゲン基である:

(式中、環D、環E及び環Fはそれぞれ独立にベンゼン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、ピリジン環、ピリミジン環、ジオキサン環、テトラリン環又は多環芳香族環であり、
Yはそれぞれ独立に、水素原子、重水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルキニル基、アルキニルオキシ基、アルコキシアルキル基、アルカノイルオキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、又はシアノ基であり、
s1〜s3はそれぞれ独立に、1、ないし環D、環E又は環Fの置換基が結合し得る部位の数、までの整数であり、
s1〜s3が2以上の場合、同一の環に結合した複数のYは同一であっても異なっていてもよく、
およびZはそれぞれ独立に単結合、−CO−O−、−O−CO−、−CHO−、−OCH−、−CHCH−、−CH=CHCHO−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−S−、−SO−、−SO−又は−C≡C−であり、
rは0、1又は2であり、
rが2の場合、二つ存在するZは同一であっても異なっていてもよく、二つ存在する環Dは同一であっても異なっていてもよく、二つの環Dにそれぞれ結合するYは、同一であっても異なっていてもよい。)]。
<2> 前記一般式(1)において、基A及び基Bが、同一又は異なって、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基であるか、又は前記一般式(2)で表される有機残基である、<1>に記載の潤滑剤組成物。
<3> 前記一般式(2)において、R11がフッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基であり、R12及びR15がそれぞれ独立に、水素原子;あるいは、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基であり、R13、R14及びR16がそれぞれ独立に、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基である、<1>又は<2>に記載の潤滑剤組成物。
<4> 前記一般式(I)において、環D、環E及び環Fはそれぞれ独立にベンゼン環、シクロヘキサン環、ジオキサン環、テトラリン環又は多環芳香族環を表し、Yはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、ZおよびZはそれぞれ独立に単結合又は−CO−O−を表し、rは0又は1を表す、<1>〜<3>のいずれかに記載の潤滑剤組成物。
<5> 前記一般式(2)において、R14及びR16が同一の基である、<1>〜<4>のいずれかに記載の潤滑剤組成物。
<6> 前記潤滑剤組成物における前記式一般式(1)で表される液晶化合物の含有量が、5重量%以上である、<1>〜<5>のいずれかに記載の潤滑剤組成物。
<7> <1>〜<6>のいずれかに記載の潤滑剤組成物を含む液晶グリース。
<8> 互いに接触して相対運動する複数の機械要素と、該機械要素の接触面の少なくとも一部に配置された<1>〜<6>のいずれかに記載の潤滑剤組成物又は<7>に記載の液晶グリースとを有する機械装置。
本発明によれば、潤滑性基油の蒸発損失を低下させ、その利用可能な用途を大きく拡大することができる。
図1は、実施例において、本発明の潤滑剤組成物、潤滑性基油化合物1及び比較混合物について、100℃の恒温槽に入れ、所定の時間における重量減少を調べた結果を示す。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の潤滑剤組成物は、潤滑性基油及び上記一般式(1)で表される液晶化合物を含有する。以下、前記潤滑性基油及び液晶化合物の順に説明する。
〔潤滑性基油〕
本発明の潤滑剤組成物は潤滑性基油を含有する。潤滑性基油は、潤滑機能を有しているものであれば特に限定されず、従来使用されている潤滑性の基油を含めて、各種の基油が本発明において使用可能である。潤滑性基油は各種環境で蒸発する場合があり、特に蒸発損失の大きいものもあった。特にそれらについては潤滑剤として利用できる用途が制限されていたが、本発明においては後述する液晶化合物が共存することで、潤滑性基油の蒸発損失が大きく低下している。そのため本発明の潤滑剤組成物は、高温下、低圧下、クリーンルーム内など各種の特殊な環境においても、潤滑性基油の蒸発損失が大幅に抑えられ、長期にわたって安定に使用することができる。
前記潤滑性基油の具体例としては、潤滑機能を有する液晶化合物、鉱油、高精製鉱油、有機酸エステル、リン酸エステル、シリコーン油、オレフィンオリゴマー、ポリα―オレフィン、ポリアルキレングリコール、ポリオールエステル、アルキルベンゼン及びその誘導体、フッ素油、アルキルフェニルエーテル油、アルキルビフェニル油、アルキルジフェニルエーテル油、ポリフェニルエーテル油等が挙げられる。
これらの中でも蒸発損失の大きい潤滑性基油において、本発明の、潤滑性基油の蒸発を抑えられ、その潤滑剤用途が広がるという効果が好適に奏される。なお、ここでいう、「蒸発損失の大きい」とは、1気圧で100℃の環境下で、500時間経過すると潤滑性基油の重量減少率が5%以上であることを言う。
また、後述するとおり、潤滑性基油は一般に鎖構造を有しているが、その鎖構造が一般式(1)で表される液晶化合物が配向している構造中に入り込むことで、分子間相互作用によりトラップされ、蒸発しにくくなるものと考えられる。このような点から、潤滑性基油は、前記液晶化合物の配向した構造中に入り込みやすい鎖構造、例えば直鎖構造や、液晶化合物のテール部分に類似した鎖構造(大きさや極性、鎖の形状などが類似した鎖構造)を有していることが好ましい。
また、特に本発明の効果が顕著に奏される(後述する一般式(1)で表される液晶化合物との組み合わせにより大きく蒸発損失が低下する)基油としては、下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
(R及びRについて)
一般式(3)において、R及びRはそれぞれ独立に、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基;フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基;あるいは、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基である。
前記アルキル基の例としては、ブチル基、ペンチル基、2−エチルヘキシル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−メチルヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基が挙げられ、
前記アルケニル基の例としては、ブテニル基、ペンテニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基が挙げられ、
前記アルキニル基の例としては、ブチニル基、ペンチニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基、トリデシニル基、テトラデシニル基が挙げられる。
(R及びRについて)
上記一般式(3)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子;フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基;フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基;あるいは、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基である。
前記アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、2−メチルプロピル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基が挙げられ、
前記アルケニル基の例としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基が挙げられ、
前記アルキニル基の例としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基が挙げられる。
(R及びRについて)
上記一般式(3)において、R及びRはそれぞれ独立に、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基;あるいは、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニレン基である。
前記アルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられ、
前記アルケニレン基の例としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基が挙げられる。
(mについて)
上記一般式(3)において、mは1〜6の整数である。mが2以上の場合、mの添え字がつけられたカッコでくくられた単位が複数存在し、R、R、R及びRがそれぞれ複数存在することになるが、これら複数存在するR同士、R同士、R同士、R同士は、それぞれ互いに同じであっても異なっていてもよい。
<蒸発損失の低下>
本発明の潤滑剤組成物においては、例えば以上説明した各種潤滑性基油に、後述する一般式(1)で表される液晶化合物を組み合わせることで、その蒸発損失を低下させられる。
<潤滑性基油の含有量>
本発明の潤滑剤組成物100重量%中における潤滑性基油の含有量は、従来公知の範囲から適宜選択されるものであり、特に制限されるものではないが、前記組成物の潤滑性の観点から、通常30重量%以上であり、好ましくは40〜99重量%である。
〔一般式(1)で表される液晶化合物〕
次に、本発明の潤滑剤組成物の必須成分である、一般式(1)で表される液晶化合物(以下、液晶化合物1ともいう)について説明する。当該化合物は、下記一般式(1)で表される。
後述する通り、液晶化合物1において基A及びBは柔軟なテール部分であり、基Wは剛直なコア構造(液晶形成要素)である。このような化学構造を有しているため、液晶化合物1は液晶相を形成することが可能である。
液晶相においては、複数の液晶化合物1の分子が、おおよそ基Wは基Wどうし、基A及び基Bは基A及びBどうしの部分で重なった規則正しい分子間配列構造をとっている。
このような規則正しい分子間配列構造の中に潤滑性基油の鎖構造が入り込むことによって潤滑性基油がトラップされ、結果として潤滑性基油の蒸発損失が大きく低下するものと考えられる。また、潤滑性基油の鎖構造としては各種のものがあるが、本発明においては、これをトラップする分子間配列構造となる部分、特に液晶化合物1の基Aや基Bのテール部分を、組み合わされる潤滑性基油の鎖構造に合わせるように設計することによって、潤滑性基油の蒸発損失を好適に低下させられるものと考えられる。なお、「潤滑性基油の鎖構造に合わせる」とは、潤滑性基油の鎖構造が液晶化合物1の分子間配列構造に入り込みやすくすることであり、例えば液晶化合物1の基Aや基Bを潤滑性基油の鎖構造に、大きさ、極性や形状の点で類似させることである。
以下、前記液晶化合物1を表す上記一般式(1)における各基について説明する。
<基A及び基Bについて>
一般式(1)において、基A及び基Bは、同一又は異なって、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基;フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基;フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基;あるいは、下記一般式(2)で表される一価の有機残基である。
基A及び基Bは、液晶化合物1におけるテール部分を構成し、またこれの種類により、液晶化合物1同士、又は液晶化合物1と後述する本発明の潤滑剤組成物の構成成分(例えば潤滑性基油)との分子間力や、特に潤滑性基油に関しては分子間配列構造への入り込みやすさを調整することができる。
前記アルキル基は、液晶化合物1の潤滑性基油との相溶性の観点から、好ましくはその炭素数が4〜14である。このようなアルキル基の例としては、ブチル基、ペンチル基、2−エチルヘキシル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−メチルヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基が挙げられる。
前記アルケニル基は、液晶化合物1の潤滑性基油との相溶性の観点から、好ましくはその炭素数が4〜14である。このようなアルケニル基の例としては、ブテニル基、ペンテニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基が挙げられる。
前記アルキニル基は、液晶化合物1の潤滑性基油との相溶性の観点から、好ましくはその炭素数が4〜14である。このようなアルキニル基の例としては、ブチニル基、ペンチニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基、トリデシニル基、テトラデシニル基が挙げられる。
次に、上記一般式(2)における各基について説明する。
(R11について)
上記一般式(2)において、R11は、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基;フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基;あるいは、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基である。
前記アルキル基は、液晶化合物1の潤滑性基油との相溶性の観点から、好ましくはその炭素数が1〜12である。このようなアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、2−エチルヘキシル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−メチルヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基が挙げられる。
前記アルケニル基は、液晶化合物1の潤滑性基油との相溶性の観点から、好ましくはその炭素数が2〜12である。このようなアルケニル基の例としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基が挙げられる。
前記アルキニル基は、液晶化合物1の潤滑性基油との相溶性の観点から、好ましくはその炭素数が2〜12である。このようなアルキニル基の例としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基が挙げられる。
以上説明したR11としては、液晶化合物1の潤滑性基油との相溶性の観点から、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。
(R12及びR15について)
上記一般式(2)において、R12及びR15はそれぞれ独立に、水素原子;フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基;フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基;あるいは、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基である。
前記アルキル基は、液晶化合物1の潤滑性基油との相溶性の観点から、好ましくはその炭素数が1〜4である。このようなアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、2−メチルプロピル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基が挙げられる。
前記アルケニル基は、液晶化合物1の潤滑性基油との相溶性の観点から、好ましくはその炭素数が2〜4である。このようなアルケニル基の例としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基が挙げられる。
前記アルキニル基は、液晶化合物1の潤滑性基油との相溶性の観点から、好ましくはその炭素数が2〜4である。このようなアルキニル基の例としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基が挙げられる。
以上説明したR12及びR15としては、液晶化合物1の潤滑性基油との相溶性の観点から、水素原子、並びに、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。
(R13について)
上記一般式(2)において、R13は、単結合;フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基;あるいは、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニレン基である。
前記アルキレン基は、液晶化合物1の潤滑性基油との相溶性の観点から、好ましくはその炭素数が1〜4である。このようなアルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられる。
前記アルケニレン基は、液晶化合物1の潤滑性基油との相溶性の観点から、好ましくはその炭素数が2〜4である。このようなアルケニレン基の例としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基が挙げられる。
以上説明したR13としては、液晶化合物1の潤滑性基油との相溶性の観点から、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基が好ましい。
(R14及びR16について)
上記一般式(2)において、R14及びR16はそれぞれ独立に、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基;あるいは、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニレン基である。
前記アルキレン基は、液晶化合物1の潤滑性基油との相溶性の観点から、好ましくはその炭素数が2〜4である。このようなアルキレン基の例としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられる。
前記アルケニレン基は、液晶化合物1の潤滑性基油との相溶性の観点から、好ましくはその炭素数が2〜4である。このようなアルケニレン基の例としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基が挙げられる。
以上説明したR14及びR16としては、液晶化合物1の潤滑性基油との相溶性の観点から、フッ素原子、ヒドロキシル基又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基が好ましい。またこれらの基は、液晶化合物1の製造の容易性から、同一の基であることが好ましい。
(基A及び基Bについて)
液晶化合物1の構造を示す上記一般式(1)において、基A及び基Bは以上説明したとおり、所定のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又は上記一般式(2)の一価の有機残基である。
これらの中でも、基A及び基Bとしては、液晶化合物1の潤滑性基油との相溶性の観点から、前記アルキル基及び前記一般式(2)の有機残基が好ましい(このとき基A及び基Bは、同一であっても異なっていてもよい)。
<基Wについて>
上記一般式(1)において、基Wは置換されていてもよい2価のテトラリン基、置換されていてもよい2価の多環芳香族基、及び下記一般式(I)で表される基からなる群より選ばれる2価のメソ−ゲン基である。

基Wは剛直な構造であり、液晶化合物1における液晶形成要素(コア部分)である。
前記多環芳香族基は、2つ以上の芳香環を有する芳香族基である。これら2つ以上の芳香環は、例えばビフェニルのように単結合で結合していてもよいし、ナフタレンのように縮合環の状態で結合していてもよい。また、芳香環の環構成原子は炭素原子のみであってもよいし、ヘテロ原子が含まれていてもよい。
このような多環芳香族基の例としては、例えば以下のものが挙げられる。
前記テトラリン基及び多環芳香族基における置換基としては、重水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基が挙げられる。
上記一般式(I)において、環D、環E及び環Fはそれぞれ独立にベンゼン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、ピリジン環、ピリミジン環、ジオキサン環、テトラリン環又は多環芳香族環である。前記多環芳香族環は、基Wの候補として上記で説明した多環芳香族基と同様である。
上記一般式(I)において、Yはそれぞれ独立に、水素原子、重水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルケニルオキシ基、炭素数2〜8のアルキニル基、炭素数2〜8のアルキニルオキシ基、炭素数2〜8のアルコキシアルキル基、炭素数2〜8のアルカノイルオキシ基、炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、又はシアノ基を表す。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられる。
上記一般式(I)において、s1〜s3はそれぞれ独立に、1、ないし環D、環E又は環Fの置換基が結合し得る部位の数、までの整数である。例えば環Dがベンゼン環であれば、s1は1〜4の整数であり、ナフタレン環であればs1は1〜6の整数である。
ここで、s1〜s3が2以上の場合には、環D〜Fのそれぞれに複数のYが結合することになるが、同一の環に結合した複数のYは同一であっても異なっていてもよい。また、異なる環に結合したYが同一であっても異なっていてもよいことはもちろんである。
上記一般式(I)において、ZおよびZはそれぞれ独立に単結合、−CO−O−、−O−CO−、−CHO−、−OCH−、−CHCH−、−CH=CHCHO−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−S−、−SO−、−SO−又は−C≡C−を表し、rは0、1又は2を表す。
ここでrが2の場合には、環D及びZが二つずつ存在することになるが、二つ存在するZは同一であっても異なっていてもよく、二つ存在する環Dは同一であっても異なっていてもよい。さらに、二つの環Dにそれぞれ結合するYは、同一であっても異なっていてもよい。
さらに、上記Yとしては、液晶の温度特性の観点からは、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基が好ましく、水素原子、重水素原子及びハロゲン原子がより好ましく、水素原子及びハロゲン原子が特に好ましい。
また、ZおよびZとしては、液晶の温度特性の観点からは、単結合、−CO−O−、−O−CO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−SO−が好ましく、単結合、−CO−O−、及び−CHO−がより好ましく、単結合及び−CO−O−が特に好ましい。
環D、環E及び環Fとしては、ベンゼン環、シクロヘキサン環、ジオキサン環、テトラリン環及び多環芳香族環が好ましい。また、rは0又は1であることが好ましい。
以上説明した一般式(I)で表される二価のメソ−ゲン基の具体例としては、下記の二価の有機残基が挙げられる。
<基A及び基Bについて>
以上説明したとおり、一般式(1)において基A及び基Bは同一の選択肢から選択されるので、基A及び基Bが同一の基である場合がある。そのような場合の液晶化合物1は、後述する液晶化合物1の製造において使用する原料の種類が少なくて済むため、製造の観点から好ましい。
一方基A及び基Bが異なる基である場合には、これらが同一の場合に比べて使用する製造原料の種類が多くなるが、後述する、本発明の潤滑剤組成物の使用可能温度範囲の点において有利な場合がある。
<液晶化合物1の含有量>
本発明の潤滑剤組成物100重量%中における、以上説明した液晶化合物1の含有量は、潤滑性基油の蒸発損失を低下させられる範囲で適宜選択されるが、通常1重量%以上であり、好ましくは5重量%以上である。
<液晶化合物1の製造方法>
次に、以上説明した液晶化合物1の製造方法について説明する。前記液晶化合物1の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の反応を組み合わせることで、液晶化合物1を製造することができる。
液晶化合物1の合成は、一般式(1)に記載の基W(コア部分)と、その両側にある基A又は基Bとを、エーテル結合により順次又は同時に結合させることで、容易に行うことができる。
前記エーテル結合により基Wと基A又は基Wと基Bとを結合する反応としては、アルコール化合物(A−OHやB−OH)やフェノール化合物(HO−W−OH)とアルカリ金属やアルカリ金属アルコラートを用い、ハロゲン化合物(A−X、B−XやX−W−X(Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子などのハロゲン原子))と反応させる方法が利用できる。
前記アルカリ金属としては、炭酸カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。また前記アルカリ金属アルコラートとしては、ナトリウムエチラート、ナトリウムメチラート、tert−ブトキシナトリウム、tert−ブトキシカリウムなどが挙げられる。
これらの反応には従来公知の各種有機溶媒が使用可能であり、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、トルエンが使用可能である。
なお、液晶化合物1が、一般式(1)において基Aと基Bとが同一の基である化合物である場合には、以上説明した、一般式(1)における基Aとなる化合物と基Bとなる化合物とは同一であり、それゆえ液晶化合物1の合成原料が2種類で済むため、その合成が容易である。
(混合物の生成)
一方、基Aと基Bとが異なる基である場合には、一般式(1)における基Wとなる化合物X’−W−X’(コア原料)と、基Aとなる化合物A−X(原料1)と、基Bとなる化合物B−X(原料2)とを反応させることになる。ここで、これらを同時に反応させると、コア原料の2か所の反応点のいずれに原料1又は2が反応するかは確率の問題となり、一般式(1)の基Wにおける左側の反応点に原料1又は2が反応し、右側の反応点に原料1又は2が反応して、合計4種類の化合物が生成する。なお、一般式(1)において基Wが左右対称の構造の基である場合には、3種類の化合物が生成することになる。この複数種類の化合物の生成を反応式で示すと、例えば以下の通りである。

(Xは互いに独立にハロゲン原子又はヒドロキシル基であり、X’は互いに独立にハロゲン原子又はヒドロキシル基である。)
目的の液晶化合物1は、このような複数の化合物の混合物として得られる。後述するとおり液晶化合物1自体には潤滑性基油の蒸発損失低下作用に加えて潤滑性があり、前記の混合物は液晶化合物1単独の場合に比較して、より広い温度範囲で潤滑剤用途に適した低粘度を示すので、前記混合物は、後述する通り本発明の潤滑剤組成物において好適に使用することができる。
〔潤滑剤組成物〕
上述の通り、本発明の潤滑剤組成物は潤滑性基油及び所定の液晶化合物1を含み、潤滑性基油の鎖構造の少なくとも一部が、液晶化合物1の分子間配列構造中に入り込んでトラップされる。これにより、本発明の潤滑剤組成物においては潤滑性基油の蒸発損失が低下させられており、各種の基油を幅広い用途において使用することができる。とりわけ、潤滑油としての性能に優れるものの、蒸発損失が高いために高温下や低圧下において使用することができなかった潤滑性基油が、本発明により、それらの環境においても使用し得るものとなる。
また、前記液晶化合物1は潤滑性基油の蒸発損失を低下させるだけでなく潤滑作用も有しており、それゆえ本発明の潤滑剤組成物は、潤滑性に特に優れた潤滑剤として使用し得るものである。
さらに、本発明においては、その蒸発損失低下作用により使用可能な潤滑性基油、及び潤滑剤組成物の利用可能な用途も従来の潤滑剤に比較して広い。それゆえ、用途に応じて求められる特性に従って潤滑性基油の種類などを適宜選択することで、本発明の潤滑剤組成物を各種の潤滑用途に使用可能である。例えば、粘度を所定の範囲に調整して、本発明の潤滑剤組成物を液晶グリースとして使用することができる。
なお、液晶化合物1は、一般式(1)における基Wが各種の剛直な基であるため、液晶相を形成することができる。具体的には液晶化合物1は、通常−20〜150℃の範囲にて液晶相を形成する(サーモトロピック液晶)。形成する液晶相はスメクチック液晶相、ネマチック液晶相、コレステリック液晶相、ディスコチック液晶相のいずれでもよい。なお、液晶性の有無は偏光顕微鏡を用いた観察により判断できる。
また、液晶化合物1は、潤滑性基油中に含有させて、液晶相を形成し得るものである。
このようにして形成された液晶相において、液晶化合物1は、潤滑剤組成物が使用された機械要素の部位において規則的に配列し、機械要素の回転等による機械的衝撃によっては潤滑剤組成物が飛散されにくくなると考えられるため、好ましい。さらに、液晶化合物1は比較的広い温度範囲で液晶相を形成する物質であり、上述の通り混合物の態様で使用されると、さらに液晶相形成温度範囲が広くなる。これにより、潤滑性基油の蒸発損失を低下させられる温度範囲も広くなり、それゆえ本発明の潤滑剤組成物は一般的に利用可能な温度範囲が広い。
本発明の潤滑剤組成物は、以上説明したとおり潤滑性基油及び液晶化合物1を含む。また、本発明の潤滑剤組成物においては、前記潤滑性基油として1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、液晶化合物1も同様に、1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、これらの含有量については、潤滑性基油及び液晶化合物1のそれぞれの項において説明した通りである。
<その他の成分>
次に、本発明の潤滑剤組成物が、本発明の効果を損なわない範囲において含んでもよいその他の成分について、順に説明する。これらは基本的に潤滑剤組成物の含有成分として従来公知の物質であって、その含有量は、特にほかに言及しない限り、従来公知の範囲で当業者が適宜選択することができる。また、いずれの成分も1種単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(液晶化合物)
本発明の潤滑剤組成物は、上述した液晶化合物1以外の液晶化合物を含有してもよい。
そのような液晶化合物としては、スメクチック相あるいはネマチック相を示す液晶化合物、アルキルスルホン酸、ナフィオン膜系の構造を持つ化合物、アルキルカルボン酸、アルキルスルホン酸等を挙げることができる。
これらの成分の併用は、本発明の潤滑剤組成物に含まれる液晶化合物が液晶相を形成する温度範囲を広げ得るものであり、上述の液晶相形成による利点を広い温度範囲にて享受できる可能性がある。
(その他の添加剤)
本発明の潤滑剤組成物に添加可能な添加剤としては、軸受油、ギヤ油及び作動油などの各種機械装置の潤滑剤に用いられている各種添加剤、すなわち極圧剤、配向吸着剤、摩耗防止剤、摩耗調整剤、油性剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤、金属不活性化剤、腐食防止剤、防錆剤、消泡剤、固体潤滑剤等が挙げられる。
前記極圧剤の例としては、塩素系化合物、硫黄系化合物、リン酸系化合物、ヒドロキシカルボン酸誘導体、及び有機金属系極圧剤が挙げられる。極圧剤を添加することにより、本発明の潤滑剤組成物の耐摩耗性が向上する。
前記配向吸着剤の例としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤などの各種カップリング剤に代表される有機シランや有機チタン、有機アルミニウム等が挙げられる。配向吸着剤を添加することにより、本発明の潤滑剤組成物における液晶化合物の液晶配向を強め、後述する、本発明の潤滑剤組成物から形成される被膜の厚さとその強度が強化され得る。
<潤滑剤組成物の調製方法>
本発明の潤滑剤組成物は、以上説明した潤滑性基油及び液晶化合物1や必要に応じてその他の成分を、従来公知の方法で混合することによって、調製することができる。本発明の潤滑剤組成物の調製方法の一例を示せば、以下のとおりである。
潤滑剤組成物の構成成分を常法で混合し、その後、必要に応じて、ロールミル、脱泡処理、フィルター処理等を行って本発明の潤滑剤組成物を得る。あるいは、潤滑剤組成物の油成分を先に混合し、続いて添加剤等のその他の成分を加えて混合し、必要に応じて上記の脱泡処理等を行うことによっても、潤滑剤組成物を調製することができる。
<潤滑剤組成物の用途>
本発明の潤滑剤組成物は、液晶化合物1の潤滑性基油に対する蒸発損失低下作用により、潤滑性基油として広い範囲のものを使用可能であり、それゆえ適用用途が広い。また、上述の通り液晶化合物1は一般的に広い温度範囲で液晶相を形成する化合物であり、低温域を含む広い温度範囲にて液晶相を形成するので、本発明の潤滑剤組成物は利用可能温度範囲も一般的に広い。以上より前記潤滑剤組成物は、各種の機械装置における潤滑剤として好適に使用可能である。
機械装置は一般に、互いに接触して相対運動する複数の機械要素を有するが、この機械要素の接触面の少なくとも一部に本発明の潤滑剤組成物を配置することで、前記複数の機械要素の接触による摩擦を低減し、相対運動を円滑にすることができる。
本発明において前記接触とは、複数の物体が直接接している場合だけでなく、本発明の潤滑剤組成物により形成される被膜など、何らかの物質の介在を受けて間接的に接している場合を含む。すなわち、本発明の潤滑剤組成物が複数の機械要素の接触面に配置された場合、当該組成物からなる被膜が複数の機械要素の間に形成されて、機械要素の直接的接触がなくなる。これにより、機械要素同士の摩擦による摩耗や焼き付きを好適に防止することができる。また、機械要素の接触は、必ずしも相対運動の間途切れることなく継続する必要はなく、歯車のごとく、相対運動において機械要素が接触しない状態が存在してもよい。
本発明の潤滑剤組成物を前記複数の機械要素の接触面に配置する方法は当業者に公知である。そのような方法として例えば、前記接触面への組成物の塗布、前記機械要素の接触面を含む、機械要素が近接している一定領域への前記組成物の充填が挙げられる。
また、前記機械要素とは、各種の機械装置を構成する要素(部品等)であり、従来潤滑剤による潤滑が行われているもの、及び、将来潤滑剤による潤滑が行われる可能性のあるものを含む。
前記複数の機械要素の接触面、より広く言えば機械要素の接触部位は平面であっても曲面であってもよいし、そのような面の少なくとも一部に凹凸があってもよいし、孔部が存在してもよい。また機械要素の接触部位を構成する各機械要素の部位には、各種改質など、表面処理がなされていてもいい。機械要素の材質も特に限定されず、金属材料、あるいは有機・無機材料など、いずれの材料で構成されていてもよい。また、機械要素の一方と他方とで、構成材料の種類が異なっていてもよい。
このような各種機械要素を有する機械装置の例としては、運送用機械、加工用機械、コンピュータ関連機器、複写機等の事務関連機器並びに家庭用製品などが挙げられ、本発明の潤滑剤組成物は、例えばこれら各種機械装置の軸受けの潤滑のために好適に利用することができる。
前記軸受けの具体例としては、電動ファンモータ及びワイパーモータ等の自動車電装品に使用される軸受;水ポンプ及び電磁クラッチ装置等の自動車エンジン補機等や駆動系に使用される転がり軸受;産業機械装置用の小型ないし大型の汎用モータ等の回転装置に使用される転がり軸受;工作機械の主軸軸受等の高速高精度回転軸受、エアコンファンモータ及び洗濯機等の家庭電化製品のモータや回転装置に使用される転がり軸受;HDD装置及びDVD装置等のコンピュータ関連機器の回転部に使用される転がり軸受;複写機及び自動改札装置等の事務機の回転部に使用される転がり軸受;並びに、電車及び貨車の車軸軸受が挙げられる。
また本発明の潤滑剤組成物は、自動車のCVJ装置や電子電気制御のパワーステアリング装置等に使用される樹脂プーリの潤滑、並びに、リニアガイドやボールねじなどの各種転動装置の機械要素の潤滑に使用することができる。
本発明の潤滑剤組成物は、例えば、自動車等の車両のエンジン油、ギヤ油、自動車用作動油、船舶・航空機用潤滑油、マシン油,タービン油、油圧作動油、スピンドル油、圧縮機・真空ポンプ油、冷凍機油及び金属加工用潤滑油剤、また、ヒンジ油、ミシン油及び摺動面油、さらには、HDD装置のプラッタ用潤滑剤(水平磁気記録方式及び熱アシスト記録技術等を利用した垂直磁気記録方式に使用されるものを含む)、磁気記録媒体用潤滑剤、マイクロマシン用潤滑剤や人工骨用潤滑剤等にも利用することができる。
〔グリース組成物〕
本発明は以下に説明するグリース組成物にも関するものであり、以下、当該グリース組成物について説明する。本発明のグリース組成物は、上記一般式(1)で表される液晶化合物1に、上記潤滑性基油を添加したものであるが、下記説明により明らかとなる本発明のグリース組成物の構成の例を示せば、以下の通りである。
[1]上記一般式(1)で表される液晶化合物及び潤滑性基油を含むグリース組成物。
[2]前記グリース組成物における潤滑性基油の含有量が、0.1〜50重量%である、[1]に記載のグリース組成物。
[3]前記潤滑性基油の側鎖の構造が、前記一般式(1)におけるA又はBに類似している、[1]又は[2]に記載のグリース組成物。
[4]互いに接触して相対運動する複数の機械要素と、該機械要素の接触面の少なくとも一部に配置された[1]〜[3]のいずれかに記載のグリース組成物とを有する機械装置。
<液晶化合物1>
本発明のグリース組成物に用いられる液晶化合物1は、本発明の潤滑剤組成物に使用される、上記一般式(1)で表される液晶化合物1と同様である。液晶化合物1は、潤滑性基油の蒸発損失を低下させることができるが、それ自身潤滑性を有しており、また自身の蒸発損失も低いので、液晶化合物1自体を潤滑剤として好適に使用することができる。
そして、液晶化合物1は上記一般式(1)におけるWという剛直な構造を有しているため、比較的粘度が高い。そこで、これに潤滑性基油を添加することで全体としての粘度を下げて、所望の粘度を達成したグリース組成物とすることができる。
本発明のグリース組成物においては液晶化合物1が主成分であり、当該液晶化合物1は前記グリース組成物中に、通常50〜99.9重量%、好ましくは70〜99重量%の割合で含有されている。また、液晶化合物1は1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<潤滑性基油>
本発明のグリース組成物に用いられる潤滑性基油は、本発明の潤滑剤組成物に使用される潤滑性基油と同様である。
当該潤滑性基油は液晶化合物1に比べて粘度が低く、これを添加することでグリース組成物全体の粘度を、その用途に応じて適切な範囲に調節することができる。なお潤滑性基油は、液晶化合物1の分子間配列構造中に入り込んでその構造を若干乱すことで、前記の粘度を低くする作用も有するものと考えられる。
このような作用の観点から、潤滑性基油は、液晶化合物1の分子間配列構造中に入り込みやすい構造をしていることが好ましく、具体的には、液晶化合物1のテール部分であるAやBと類似した構造を、主鎖あるいは側鎖として有していることが好ましい。
なお、前記「類似した構造」とは、上記一般式(1)におけるAとBで定義される構造を指す。
本発明のグリース組成物における潤滑性基油の含有量は、組成物の粘度を適切に調節する観点から、通常0.1〜50重量%であり、好ましくは0.1〜30重量%である。また、潤滑性基油は1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<その他の成分>
本発明のグリース組成物には、本発明の潤滑剤組成物と同様、本発明の効果を損なわない範囲において、液晶化合物、極圧剤、配向吸着剤、摩耗防止剤、摩耗調整剤、油性剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤、金属不活性化剤、腐食防止剤、防錆剤、消泡剤、固体潤滑剤等のその他の添加剤を添加することができる。これらのうち1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<グリース組成物の調製方法>
本発明のグリース組成物は、以上説明した液晶化合物1及び潤滑性基油や必要に応じてその他の成分を、従来公知の方法で混合することによって、調製することができる。本発明のグリース組成物の調製方法の一例を示せば、以下のとおりである。
グリース組成物の構成成分を常法で混合し、その後、必要に応じて、ロールミル、脱泡処理、フィルター処理等を行って本発明のグリース組成物を得る。あるいは、グリース組成物の油成分を先に混合し、続いて添加剤等のその他の成分を加えて混合し、必要に応じて上記の脱泡処理等を行うことによっても、グリース組成物を調製することができる。
<グリース組成物の用途>
本発明のグリース組成物は、以上説明した液晶化合物1及び潤滑性基油を含んでおり、任意に各種のその他の成分を含んでもよい。液晶化合物1はそれ自体潤滑性能を有するとともに、蒸発損失が低く、しかも上記で説明した通り、共存成分である潤滑性基油の蒸発損失を低減する作用を有している。このため、本発明のグリース組成物は全体として蒸発損失が低く、例えば高温下、低圧力下など、様々な環境において使用することができる。
さらに液晶化合物1は比較的粘度が高いが、共存する潤滑性基油により、グリース組成物全体の粘度を調節することができる。また、潤滑性基油の配合量やその他の成分、さらに液晶化合物1の種類の選択などによって粘度を自由度高く調節することができる。
このように本発明のグリース組成物は粘度を自由度高く調節することができ、かつ蒸発損失が低いので、各種の機械装置における潤滑剤として好適に使用することができる。前記機械装置は、上記本発明の潤滑剤組成物の場合と同様に、一般に、互いに接触して相対運動する複数の機械要素を有するものである。
当該機械要素とは、各種の機械装置を構成する要素(部品等)であり、従来潤滑剤による潤滑が行われているもの、及び、将来潤滑剤による潤滑が行われる可能性のあるものを含む。
このような各種機械要素を有する機械装置の例としては、運送用機械、加工用機械、コンピュータ関連機器、複写機等の事務関連機器並びに家庭用製品などが挙げられ、本発明のグリース組成物は、例えばこれら各種機械装置の軸受けの潤滑のために好適に利用することができる。
前記軸受けの具体例としては、電動ファンモータ及びワイパーモータ等の自動車電装品に使用される軸受;水ポンプ及び電磁クラッチ装置等の自動車エンジン補機等や駆動系に使用される転がり軸受;産業機械装置用の小型ないし大型の汎用モータ等の回転装置に使用される転がり軸受;工作機械の主軸軸受等の高速高精度回転軸受、エアコンファンモータ及び洗濯機等の家庭電化製品のモータや回転装置に使用される転がり軸受;HDD装置及びDVD装置等のコンピュータ関連機器の回転部に使用される転がり軸受;複写機及び自動改札装置等の事務機の回転部に使用される転がり軸受;並びに、電車及び貨車の車軸軸受が挙げられる。
また本発明のグリース組成物は、自動車のCVJ装置や電子電気制御のパワーステアリング装置等に使用される樹脂プーリの潤滑、並びに、リニアガイドやボールねじなどの各種転動装置の機械要素の潤滑に使用することができる。
本発明のグリース組成物は、例えば、自動車等の車両のエンジン油、ギヤ油、自動車用作動油、船舶・航空機用潤滑油、マシン油,タービン油、油圧作動油、スピンドル油、圧縮機・真空ポンプ油、冷凍機油及び金属加工用潤滑油剤、また、ヒンジ油、ミシン油及び摺動面油、さらには、HDD装置のプラッタ用潤滑剤(水平磁気記録方式及び熱アシスト記録技術等を利用した垂直磁気記録方式に使用されるものを含む、)磁気記録媒体用潤滑剤、マイクロマシン用潤滑剤や人工骨用潤滑剤等にも利用することができる。
以下、実施例及び比較例によりさらに本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されない。
<合成例1>
以下に示す反応スキームに従い、下記実施例に使用した潤滑性基油化合物1を合成した。
500mlの三口フラスコにエタノールを200ml入れ、金属ナトリウム4.7g(0.20mol)を溶解させた。これに、エタノール100mlに式(i)の化合物を25.0g(0.19mol)溶解させたものを加え、エタノールをエバポレーターで減圧除去した。残渣にDMF200mlを加え、窒素雰囲気下で加熱溶解させた。その後、窒素雰囲気下、70℃で24時間撹拌した。
撹拌後、式(ii)の化合物を45.2g(0.20mol)を滴下し、70℃で24時間反応した。
反応後、反応液を冷希塩酸(氷30g+蒸留水200ml+塩酸30ml)に注ぎ、1Lの分液漏斗を用いて300mlのジエチルエーテルで目的物を抽出した。エーテル層を得て、それに蒸留水300mlを加えよく振り洗浄し、エーテル層を分液により得た。そこに無水硫酸ナトリウムを加えて、一晩脱水した。
無水硫酸ナトリウムを濾過除去し、ジエチルエーテルを減圧除去した。残渣を減圧蒸留し、目的物である式(iii)の化合物を37.3g(0.14mol)得た。
500mlの三口フラスコにジエチルエーテル200mlと式(iii)の化合物20.0(0.073mol)とピリジン5.8g(0.074mol)を加え、そこに氷浴中で式(iv)の化合物15.0g(0.073mol)を滴下した。滴下後、油浴を用いて50℃で24時間還流した。
還流後、反応液に300mlのジエチルエーテルを加え冷希塩酸(氷30g+蒸留水200ml+塩酸30ml)に注ぎ、1Lの分液漏斗を用いて抽出操作した。エーテル層を得て、そこに蒸留水100mlを加えよく振り洗浄し、エーテル層を分液により得た。そこに無水硫酸ナトリウムを加えて、一晩脱水した。
無水硫酸ナトリウムを除去し、ジエチルエーテルを減圧除去した。残渣を減圧蒸留し、目的物である式(v)の化合物(潤滑性基油化合物1)を24.7g(0.056mol)得た。
<合成例2>
下記の3種の液晶化合物の混合物を、下記合成スキーム1及び合成スキーム2に従い調製した。
(式(A−iii)の化合物の合成)
1000mlのナス型フラスコにエタノール400mlを入れ、金属ナトリウム13.8g(0.6mol)を溶解した。これに、式(A−i)の化合物を71.0g(0.6mol)を加え、エタノールをエバポレーターで減圧除去した。
残渣にDMF200mlを加え、窒素雰囲気下で70℃、24時間撹拌した。その後、1−ブロモプロパンを73.8g(0.6mol)加え、窒素雰囲気下、70℃で24時間反応した。
反応液を、10%冷希塩酸600mlに注ぎ、2Lの分液漏斗を用いて600mlのジエチルエーテルで目的物を抽出した。エーテル層を得て、そこに蒸留水600mlを加えよく振り洗浄し、エーテル層を分液により得た。そこに無水硫酸ナトリウムを加えて一晩脱水した。無水硫酸ナトリウムを除去し、ジエチルエーテルをエバポレーターにて減圧除去した。残渣を減圧蒸留し、無色透明の液体である式(A−ii)の化合物を24.0g(0.15mol)得た。
100mlの三口フラスコに式(A−ii)の化合物を22.4g(0.14mol)、ピリジン1.0g(0.013mol)を入れた。三臭化燐36.6g(0.14mol)をトルエン20mlに溶解させた溶液を、反応液を5℃以下に保つように氷浴で冷却しながら、滴下漏斗により反応液に滴下した。滴下終了後、窒素雰囲気下、室温にて12時間撹拌した。
反応液を氷水300mlに注ぎ、ジエチルエーテル300mlで目的物を抽出した。エーテル層を得て、それに蒸留水300mlを加えよく振り洗浄し、エーテル層を分液により得た。そこに無水硫酸ナトリウムを加えて、一晩脱水した。無水硫酸ナトリウムを除去し、ジエチルエーテルをエバポレーターにて減圧除去した。残渣を減圧蒸留し、無色透明の液体である式(A−iii)の化合物を26.7g(0.12mol)得た。
(式(A−v)の化合物の合成)
1000mlのナス型フラスコにエタノール400mlを入れ、金属ナトリウム13.8g(0.6mol)を溶解した。これに、式(A−i)の化合物を71.0g(0.6mol)を加え、エタノールをエバポレーターで減圧除去した。
残渣にDMF200mlを加え、窒素雰囲気下で70℃、24時間撹拌した。その後、1−ブロモヘキサンを99.0g(0.6mol)加え、窒素雰囲気下、70℃で24時間反応した。
反応液を10%冷希塩酸600mlに注ぎ、2Lの分液漏斗を用いて600mlのジエチルエーテルで目的物を抽出した。エーテル層を得て、そこに蒸留水600mlを加えよく振り洗浄し、エーテル層を分液により得た。そこに無水硫酸ナトリウムを加えて一晩脱水した。無水硫酸ナトリウムを除去し、ジエチルエーテルをエバポレーターにて減圧除去した。残渣を減圧蒸留し、無色透明の液体である式(A−iv)の化合物を31.9g(0.16mol)得た。
100mlの三口フラスコに式(A−iv)の化合物を28.3g(0.14mol)、ピリジン1.0g(0.013mol)を入れた。三臭化燐36.6g(0.14mol)をトルエン20mlに溶解させた溶液を、反応液を5℃以下に保つように氷浴で冷却しながら、滴下漏斗により反応液に滴下した。滴下終了後、窒素雰囲気下、室温にて12時間撹拌した。
反応液を氷水300mlに注ぎ、ジエチルエーテル300mlで目的物を抽出した。エーテル層を得て、それに蒸留水300mlを加えよく振り洗浄し、エーテル層を分液により得た。そこに無水硫酸ナトリウムを加えて、一晩脱水した。無水硫酸ナトリウムを除去し、ジエチルエーテルをエバポレーターにて減圧除去した。残渣を減圧蒸留し、無色透明の液体である式(A−v)の化合物を31.1g(0.12mol)得た。
100mlの三口フラスコに4,4’−ビフェノール8.9g(0.048mol)と、炭酸カリウム20.0g(0.145mol)、DMF70mlを加え室温で1時間撹拌した。さらに式(A−iii)の化合物を10.7g(0.048mol)、式(A−v)の化合物を12.7g(0.048mol)加え80℃で24時間撹拌した。反応液を10%冷希塩酸300mlに注ぎ、1Lの分液漏斗を用いて300mlのジエチルエーテルで目的物を抽出した。エーテル層を得て、それに蒸留水300mlを加えよく振り洗浄し、エーテル層を分液により得た。そこに無水硫酸ナトリウムを加えて一晩脱水した。
無水硫酸ナトリウムを濾過にて除去し、ジエチルエーテルをエバポレータにて減圧除去した。残渣にヘキサン80mlを加え、60℃に加熱して、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。ヘキサンをエバポレーターにて減圧除去し、式(A1)の液晶化合物、式(A2)の液晶化合物及び式(A3)の液晶化合物の混合物(以下、「液晶混合物」)16.5gを得た。
[実施例(潤滑剤の蒸発損失の検討)]
潤滑性基油化合物1、潤滑性基油化合物1:液晶混合物=2:1の重量比率で混合した本発明の潤滑剤組成物、及び比較混合物(潤滑性基油化合物1:「4−メチル-4’−エチルビフェニル」=2:1(重量比))を、それぞれステンレス製容器に1.0000g入れたものを3個ずつ用意した。それらを100℃の恒温槽(常圧)に入れ、所定の時間で取り出し、電子天秤にて重量を測定し、減少した重量(蒸発損失)の平均値をグラフにプロットした。結果を図1に示す。
図1より、潤滑性基油化合物1は100℃、常圧の環境では蒸発して重量が減少しまうことがわかる。その3分の1を4−メチル-4’−エチルビフェニルに代えた比較混合物では、4−メチル-4’−エチルビフェニルが潤滑性基油化合物1に比べて蒸発しにくいためか、蒸発損失が若干低減した。
一方本発明の潤滑剤組成物においては、その3分の2は潤滑性基油化合物1で構成されているにも関わらず、蒸発損失は大きく低減されたことがわかる。なお、100時間程度まではわずかに蒸発損失がみられるが、それ以降は実質的な蒸発損失がみられない。これは、潤滑性基油化合物1が蒸発することで、潤滑性基油化合物1に対する液晶混合物の割合が多くなり、それによる蒸発損失の低減効果が大きくなったためではないかと考えられる。

Claims (8)

  1. 下記一般式(3)で表される潤滑性基油及び下記一般式(1)で表される液晶化合物を含む潤滑剤組成物であって、前記液晶化合物の含有量が5重量%以上であり、前記潤滑性基油の含有量が30重量%以上である潤滑剤組成物

    [式中、
    基A及び基Bは、同一又は異なって、下記一般式(2)で表される一価の有機残基であり:

    (式中、R11、分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基であり、
    12及びR15はそれぞれ独立に、水素原子;又は分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基であり、
    13、分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基であり、
    14及びR16はそれぞれ独立に、分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基である。)
    基Wは下記一般式(I)で表される基からなる群より選ばれる2価のメソ−ゲン基である:

    (式中、環D、環E及び環Fはそれぞれ独立にベンゼン環、シクロヘキサン環、ジオキサン環、又はテトラリン環であり、
    Yはそれぞれ独立に、水素原子、重水素原子、又はハロゲン原子であり、
    s1〜s3はそれぞれ独立に、1、ないし環D、環E又は環Fの置換基が結合し得る部位の数、までの整数であり、
    s1〜s3が2以上の場合、同一の環に結合した複数のYは同一であっても異なっていてもよく、
    およびZはそれぞれ独立に単結合、−CO−O−、又は−CH−であり、
    rは0又は1である。]。

    (式中、R 及びR はそれぞれ独立に、分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基であり、
    及びR はそれぞれ独立に、分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基であり、
    及びR はそれぞれ独立に、分岐を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基であり、
    mは1〜6の整数である。)
  2. 前記一般式(3)において、R 及びR はそれぞれ独立に、ブチル基、ペンチル基、2−エチルヘキシル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−メチルヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、又はテトラデシル基であり、
    及びR はそれぞれ独立に、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、又はブチレン基であり、
    及びR はそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、2−メチルプロピル基、プロピル基、ブチル基、又はt−ブチル基であり
    mは1である、
    請求項1に記載の潤滑剤組成物。
  3. 前記一般式(2)において、R11メチル基であり、
    12 が水素原子であり、
    15メチル基であり、
    13 がメチレン基、エチレン基、プロピレン基、又はブチレン基であり、
    14及びR16がそれぞれ独立に、エチレン基、プロピレン基、又はブチレン基である、請求項1又は2に記載の潤滑剤組成物。
  4. 前記一般式(I)において、環D、環E及び環Fはベンゼン環を表し、Yはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、ZおよびZはそれぞれ独立に単結合又は−CO−O−を表し、 〜s は1を表す、請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑剤組成物。
  5. 前記一般式(2)において、R14及びR16が同一の基である、請求項1〜4のいずれかに記載の潤滑剤組成物。
  6. 上記一般式(2)において、R 11 はメチル基であり、R 12 は水素原子であり、R 15 はメチル基であり、R 13 はメチレン基であり、R 14 及びR 16 はエチレン基であり、
    上記一般式(I)において、rは0であり、環E及び環Fはベンゼン環であり、Yは水素原子であり、s は1であり、s は1であり、Z は単結合であり、
    上記一般式(3)において、R 及びR がデシル基であり、R 及びR がメチレン基であり、R 及びR がエチル基であり、
    前記潤滑性基油前記液晶化合物の重量比が2:1である、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の潤滑剤組成物を含む液晶グリース。
  8. 互いに接触して相対運動する複数の機械要素と、該機械要素の接触面の少なくとも一部に配置された請求項1〜6のいずれかに記載の潤滑剤組成物又は請求項7に記載の液晶グリースとを有する機械装置。
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