以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図中、矢印Y1、Y2、Z1、及びZ2は、互いに直交する2軸(Y軸及びZ軸)に係る4方向を示している。矢印Z1は画像形成装置の上方を、矢印Z2は画像形成装置の下方を、矢印Y1は画像形成装置の前方を、矢印Y2は画像形成装置の後方を、それぞれ示す。
本実施形態に係る画像形成装置は、図1に示すような画像形成ユニット100を備える。画像形成ユニット100は、給紙カセット11と、手差しトレイ11aと、給紙ローラー12と、搬送路13と、複数の搬送ローラー13aと、転写ローラー14と、排出ローラー16と、排出部17と、感光体ドラム21と、トナーコンテナ22と、現像装置23と、帯電装置24と、露光装置25と、クリーニング装置26と、定着装置30とを備える。複数の搬送ローラー13aはそれぞれ、搬送路13に設けられている。
給紙カセット11は、複数枚の記録媒体P(例えば、印刷用紙)を収容できる。給紙ローラー12は、給紙カセット11中の記録媒体Pを1枚ずつ搬送路13に送り出す。搬送ローラー13aは、搬送路13に送り出された記録媒体Pを転写ローラー14に向けて搬送する。なお、手差しトレイ11aにセットされた記録媒体も、給紙カセット11中の記録媒体Pと同様に、転写ローラー14に搬送される。
感光体ドラム21の長寿命化を図るためには、感光体ドラム21として、例えばアモルファスシリコン(a−Si)感光体ドラムを使用することが好ましい。感光体ドラム21は、円柱状の外形を有する。感光体ドラム21は、芯材として金属製の筒体(例えば、アルミニウムパイプ)を備え、その芯材の外側に、感光層(例えば、a−Si層)と、感光層を保護するための保護層とをさらに備える。感光体ドラム21は、回転可能な態様で例えば画像形成装置の筐体に支持されており、例えばモーター(図示せず)によって駆動されて回転する。
画像形成ユニット100では、1つの感光体ドラム21につき1つの現像装置23が設けられている。また、1つの現像装置23につき1つのトナーコンテナ22が設けられている。
トナーコンテナ22は、供給ローラー22aを備える。トナーコンテナ22のトナー補給路には、トナー補給路を通過するトナーの量を検出するための補給量センサー22bが設けられている。補給量センサー22bは、例えばトナーがトナー補給路を通過する際の磁界変化を検出する磁気式流量センサーである。供給ローラー22aが回転すると、トナーコンテナ22内のトナーがトナーコンテナ22のトナー補給路を通って現像装置23に供給される。供給ローラー22aは、例えばモーター(図示せず)によって駆動されて回転する。なお、トナー残量を検出するセンサーをトナーコンテナ22に設けてもよい。
トナーコンテナ22には、トナーが収容されている。以下、トナーコンテナ22に収容されているトナーを、収容トナーと記載する場合がある。
トナーは、複数のトナー粒子を含む粉体である。トナー粒子は、外添剤を備えていてもよい。トナー粒子が外添剤を備える場合には、トナー粒子はトナー母粒子と外添剤とを備える。外添剤はトナー母粒子の表面に付着している。トナー粒子が外添剤を備えない場合には、トナー母粒子がトナー粒子に相当する。
トナー母粒子は、結着樹脂(例えば、非結晶性樹脂)を含有する。また、トナー母粒子は、必要に応じて、内添剤(例えば、離型剤、着色剤、電荷制御剤、及び磁性粉の少なくとも1つ)を含有していてもよい。トナー母粒子は、シェル層を備えないトナー母粒子(以下、非カプセルトナー粒子と記載する)であってもよいし、シェル層を備えるトナー母粒子(以下、カプセルトナー粒子と記載する)であってもよい。カプセルトナー粒子は、コアと、コアの表面を覆うシェル層(樹脂層)とを備える。ただし、カプセルトナー粒子よりも非カプセルトナー粒子の方が生産性は高い。
非カプセルトナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、トナー母粒子(非カプセルトナー粒子)が、結着樹脂に加えて、結晶性ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。トナー母粒子に結晶性ポリエステル樹脂を含有させることで、トナー母粒子にシャープメルト性を付与できる。また、比較的電気抵抗の低い結晶性ポリエステル樹脂をトナー母粒子に含有させることで、静電オフセット(トナーが電気的な力で定着ローラーに固着する現象)を抑制することが可能になる。
トナー母粒子が適度なシャープメルト性を有するためには、トナー母粒子中に、結晶性指数0.90以上1.15以下の結晶性ポリエステル樹脂を含有させることが好ましい。樹脂の結晶性指数は、樹脂の融点(Mp)に対する樹脂の軟化点(Tm)の比率(=Tm/Mp)に相当する。非結晶性樹脂については、明確なMpを測定できないことが多い。軟化点(Tm)は、高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)を用いて測定した値である。高化式フローテスターで測定されたS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)において、「(ベースラインストローク値+最大ストローク値)/2」となる温度が、Tm(軟化点)に相当する。また、融点(Mp)の測定値は、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて測定される吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)中の最大吸熱ピークの温度である。結晶性ポリエステル樹脂の結晶性指数は、結晶性ポリエステル樹脂を合成するための材料(例えば、アルコール及び/又はカルボン酸)の種類又は使用量を変更することで、調整できる。トナー母粒子は、結晶性ポリエステル樹脂を1種類だけ含有してもよいし、2種以上の結晶性ポリエステル樹脂を含有してもよい。
非カプセルトナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、トナー母粒子(非カプセルトナー粒子)が、融点(Mp)50℃以上100℃以下の結晶性ポリエステル樹脂を含有することが特に好ましい。
トナーコンテナ22(例えば、コンテナ下部の側面)には、タグメモリー22c(例えば、非接触型ICタグ)が取り付けられている。タグメモリー22cは、収容トナーに関する情報(以下、収容トナー情報と記載する)を記憶している。収容トナー情報は、トナー種別情報と、トナーの体積中位径と、トナーの体積基準の粒度分布の半値幅とを含む。以下、タグメモリー22cに記憶されているトナーの体積中位径を、D50情報と記載する。また、タグメモリー22cに記憶されているトナーの体積基準の粒度分布の半値幅を、HW情報と記載する。
トナー種別情報としては、例えば収容トナーの種別に応じて予め定められた数字が、タグメモリー22c中のトナー種別情報を記憶すべき領域(以下、変数Xと記載する)に格納されている。例えば、結晶性ポリエステル樹脂を含有する非カプセルトナーであれば「1」が、結晶性ポリエステル樹脂を含有しない非カプセルトナーであれば「2」が、カプセルトナーであれば「3」が、変数Xに格納される。
D50情報としては、例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA−750」)を用いて予め測定した収容トナーの体積中位径(D50)が、タグメモリー22c中のD50情報を記憶すべき領域(以下、変数Yと記載する)に格納されている。
HW情報としては、例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA−750」)を用いて予め測定した収容トナーの体積基準の粒度分布の半値幅が、タグメモリー22c中のHW情報を記憶すべき領域(以下、変数Zと記載する)に格納されている。図2に、トナーの体積基準の粒度分布(縦軸:存在頻度、横軸:粒子径)の一例を示す。図2中、ピーク高さhの半分の値(=h/2)でのピーク幅が、半値幅HWに相当する。以下、体積基準の粒度分布の半値幅を、単に半値幅と記載する場合がある。
トナーコンテナ22の近傍には、タグリーダー60が設けられている。タグリーダー60は、トナーコンテナ22が現像装置23に装着された状態で、タグメモリー22cに対向して、タグメモリー22cを非接触で読み取ることができるように構成される。なお、タグリーダー60がタグメモリー22cを読み取る方式は、非接触式に限られず任意であり、接触式であってもよい。
トナーコンテナ22は、現像装置23に対して着脱可能である。例えば、使用中のトナーコンテナ22(使用中コンテナ)内のトナー残量が少なくなった場合には、使用中コンテナを現像装置23から取り外して、別のトナーコンテナ22(新規コンテナ)を現像装置23に取り付けることで、トナーコンテナを交換できる。また、トナーコンテナ22の取付け部には、トナーコンテナ22の着脱に連動して、トナーコンテナ22のトナー補給路を開閉するシャッター(図示せず)が設けられている。詳しくは、トナーコンテナ22を現像装置23から取り外す際には、トナーコンテナ22のトナー補給路がシャッターで塞がれ、トナーコンテナ22を現像装置23に取り付けることで、トナーコンテナ22のトナー補給路が開放される。こうした構成により、トナーコンテナ交換時におけるトナー補給路からのトナーの漏れを抑制できる。画像形成ユニット100は、トナーコンテナの交換を検知するためのコンテナ交換センサーを備えてもよい。
現像装置23は、複数(例えば、2本)の攪拌スクリュー23aと、現像ローラー23bとを備える。現像ローラー23bは、金属製のシャフトと、マグネットロールと、非磁性材料から構成される現像スリーブとを備える。マグネットロールは、少なくともその表層部に磁極(例えば、永久磁石に基づくN極及びS極)を有し、シャフトに固定されている。現像スリーブは、マグネットロールの表層部に回転可能に設けられている。詳しくは、非回転のマグネットロールの周りを現像スリーブが回転できるように、シャフトと現像スリーブとがフランジを介して接続されている。
現像装置23の収容部には、トナーとキャリア(詳しくは、磁性キャリア)とを含む2成分現像剤が収容される。トナーは、順次又は必要に応じて、トナーコンテナ22から現像装置23の収容部へ補給される。攪拌スクリュー23aが回転すると、現像装置23の収容部にある2成分現像剤が攪拌される。正帯電性トナーを含む2成分現像剤が攪拌されると、正帯電性トナーはキャリアとの摩擦により正に帯電する。また、負帯電性トナーを含む2成分現像剤が攪拌されると、負帯電性トナーはキャリアとの摩擦により負に帯電する。現像ローラー23bは、現像装置23の収容部にあるトナー(例えば、トナーコンテナ22から供給されたトナー)を感光体ドラム21に供給する。現像装置23の収容部には、2成分現像剤におけるトナーの量(例えば、キャリアの質量に対するトナーの質量の比率)を検出するためのトナー量センサー23cが設けられている。攪拌スクリュー23a及び現像ローラー23bはそれぞれ、例えばモーター(図示せず)によって駆動されて回転する。なお、現像装置23の収容部に収容される現像剤は、2成分現像剤に限られず任意であり、1成分現像剤であってもよい。
定着装置30は、第1ローラー31(ヒーターを備える加熱ローラー)と、第2ローラー32(ヒーターを備えない非加熱ローラー)と、付勢装置(図示せず)とを備える。付勢装置は、第2ローラー32を第1ローラー31側に付勢するように構成される。付勢装置は、付勢力(ひいては、第1ローラー31に対する第2ローラー32の圧力)を調整するための機構(より具体的には、バネ力調整機構、カム駆動機構、又はラック・アンド・ピニオン駆動機構等)を有してもよい。図3に、定着装置30の概略構造を示す。
図3に示すように、第1ローラー31は、筒状の芯金312を備える。芯金312の例としては、アルミニウムパイプ又はステンレス鋼管が挙げられる。芯金312は、線状のヒーター311(より具体的には、ハロゲンヒーター又はセラミックヒーター等)を内包している。ヒーター311は芯金312内(筒内)に位置し、例えば通電により発熱して芯金312を加熱するように構成される。例えば、図示しない電源からヒーター311に供給される電力を制御することで、定着温度(トナーを定着するための温度)を制御できる。なお、第1ローラー31の近傍に、第1ローラー31の表面の温度を検知するためのセンサー(例えば、サーミスター)を設けてもよい。
芯金312の表面には、プライマー層313(下塗塗料)が形成されている。芯金312の表面はプライマー層313を介してコート層314(トップコート)で覆われている。プライマー層313は、芯金312の表面とコート層314との密着力を向上させている。
コート層314は、第1ローラー31の表層部に存在する。第1ローラー31の表面に十分な離型性を確保するためには、コート層314がフッ素樹脂を含有することが好ましい。フッ素樹脂の例としては、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリトリフルオロエチレン(より具体的には、ポリクロロトリフルオロエチレン等)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、又はテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が挙げられる。
また、正帯電性トナーの静電オフセットを抑制するためには、コート層314が、フッ素樹脂に加えて、導電性材料を含有することが好ましい。導電性材料の例としては、金属(より具体的には、銀又は銅等)、炭素材料(より具体的には、カーボンブラック等)、導電性金属酸化物(より具体的には、ドーピングされた酸化錫又は酸化インジウム等)、又は導電性高分子が挙げられる。
第2ローラー32は、筒状の芯金321と、弾性層322とを備える。芯金321の例としては、アルミニウムパイプ又はステンレス鋼管が挙げられる。弾性層322は、例えば軟質ゴム(より具体的には、ウレタンゴム又はシリコーンゴム等)から構成される。第2ローラー32は非加熱ローラーに限られない。必要であれば、第2ローラー32にヒーターを設けてもよい。
定着装置30は、記録媒体Pの表裏面(面F1及びF2)のうち、表面(感光体ドラム21側の面F1)に存在するトナー像(詳しくは、転写工程で記録媒体Pに転写されたトナー像)に第1ローラー31(定着ローラー)が接触し、裏面(面F2)に第2ローラー32が接触するように、記録媒体Pを挟むことで、トナー像を記録媒体Pに定着させるように構成される。詳しくは、定着装置30は、第1ローラー31と第2ローラー32とで記録媒体Pを挟んで加圧しながら第1ローラー31で記録媒体P上のトナー像を加熱することにより、トナー像を記録媒体Pに定着させるように構成される。
図1を参照して、説明を続ける。画像形成ユニット100の像形成部(帯電装置24及び露光装置25)は、感光体ドラム21上に静電潜像を形成するように構成される。帯電装置24は、例えば感光体ドラム21の表面に当接する帯電性部材(より具体的には、帯電ローラー等)を備え、感光体ドラム21の感光層に一様に静電気を帯びさせるように構成される。露光装置25は、例えば光源としてLED(発光ダイオード)ヘッドを備え、感光体ドラム21の感光層に静電潜像を形成するための露光を行うように構成される。クリーニング装置26は、例えば感光体ドラム21の表面に当接するクリーニング部材(より具体的には、クリーニングローラー等)を備え、感光体ドラム21上の不要な付着物(例えば、転写工程で転写されなかったトナー)を除去するように構成される。
画像形成ユニット100が記録媒体Pに画像を形成する場合には、像形成部(帯電装置24及び露光装置25)が感光体ドラム21の感光層に静電潜像を形成し、現像装置23が、トナーで静電潜像を現像する。詳しくは、帯電装置24が感光体ドラム21の感光層を一様に帯電させる。続けて、露光装置25が感光体ドラム21の感光層に選択的に光を照射する。光の照射位置は、画像データに応じて決定される。感光層のうち光が照射された部分の電位は低下する。その結果、感光体ドラム21の表面に静電潜像が形成される。続けて、現像装置23が、帯電したトナー(例えば、キャリアとの摩擦により帯電したトナー)を感光体ドラム21に供給して、静電潜像を現像する。帯電したトナーは、静電潜像に応じて選択的に感光層に付着する。その結果、感光体ドラム21の表面にトナー像が形成される。
記録媒体Pは、搬送ローラー13aにより搬送されて、感光体ドラム21と転写ローラー14との間を通る。この際、転写ローラー14にバイアス(電圧)をかけることにより、上述のようにして感光体ドラム21に形成されたトナー像を記録媒体Pに転写することができる。定着装置30は、トナー像を加熱及び加圧して記録媒体Pに定着させる。なお、感光体ドラム21から記録媒体Pへトナー像が転写された後、感光体ドラム21の表面に残留しているトナーは、クリーニング装置26により除去される。また、画像形成ユニット100は、感光体ドラム21の表面における残留電荷を除電するための除電装置を備えてもよい。
画像形成ユニット100では、上記のようにして、記録媒体Pに画像が形成される。画像が形成された記録媒体Pは、排出ローラー16によって排出部17に排出される。
以下、主に図4を参照して、本実施形態に係る画像形成装置の制御系について説明する。本実施形態に係る画像形成装置は、図4に示すような、制御部50、記憶装置54、及びインターフェイス55を備える。画像形成装置に電力が投入される(電源がオンされる)と、制御部50が作動し、各種制御に用いられる各種パラメーターを初期化する。制御部50は、感光体ドラム21等を制御して、記録媒体Pに画像を形成する。例えば、画像形成装置が汎用コンピューターに通信可能に接続されている場合において、制御部50が、汎用コンピューターから画像データ及び印刷指示を受信すると、制御部50は、受信した指示に基づいて画像の形成を開始する。
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)51と、ROM(Read Only Memory)52と、RAM(Random Access Memory)53とを備える。ROM52は、例えばフラッシュメモリーのようなPROM(Programmable ROM)である。ROM52には、例えばBIOS(Basic Input/Output System)、OS(Operating System)、各種ドライバー、及び各種アプリケーションのようなプログラムが格納されている。RAM53は、例えばDRAM(Dynamic RAM)である。
インターフェイス55は、制御部50と外部の装置との間でのデータの送受信を可能にする。制御部50は、インターフェイス55を介して、記憶装置54と通信可能に接続されている。記憶装置54は、不揮発性メモリー(例えば、ハードディスク)から構成される。
記憶装置54の所定の記憶領域(詳しくは、図5中に示す第1記憶部541)には、制御用の定着温度の値(以下、目標温度値と記載する)が記憶されている。詳しくは、記憶装置54の第1記憶部541には、目標温度値を記憶すべき領域(以下、変数Tと記載する)が用意されており、変数Tに目標温度値が格納されている。
記憶装置54の所定の記憶領域(詳しくは、図5中に示す第2記憶部542)には、使用中のトナー(収容トナー)にとって適した定着温度(基準定着温度)を求めるための制御規則(以下、定着制御規則と記載する)が記憶されている。詳しくは、定着制御規則として、トナーの体積中位径と、トナーの半値幅(体積基準の粒度分布の半値幅)と、基準定着温度とを関連付けるマップ又は数式が、記憶装置54に格納されている。
例えば、体積中位径8μmかつ半値幅6μmのトナーにとって適した定着温度(基準定着温度)が170℃である画像形成装置では、定着制御規則として、次に示す数式(1)〜(4)を好適に使用できる。
数式(1):基準定着温度[℃]=170−(4×ΔDA1)−3−(2×ΔDB)
数式(2):基準定着温度[℃]=170−(3×ΔDA2)−(2×ΔDB)
数式(3):基準定着温度[℃]=170+(3×ΔDA3)−(2×ΔDB)
数式(4):基準定着温度[℃]=170+(2×ΔDA4)+3−(2×ΔDB)
上記数式(1)〜(4)中、ΔDA1、ΔDA2、ΔDA3、ΔDA4、ΔDBはそれぞれ、「ΔDA1=7μm−DA」、「ΔDA2=8μm−DA」、「ΔDA3=DA−8μm」、「ΔDA4=DA−9μm」、「ΔDB=6μm−DB」のように表される。DAは収容トナーの体積中位径(単位:μm)を示し、DBは収容トナーの半値幅(単位:μm)を示す。
詳しくは、収容トナーの体積中位径が7μm未満であれば数式(1)を使用し、収容トナーの体積中位径が7μm以上8μm未満であれば数式(2)を使用し、収容トナーの体積中位径が8μm以上9μm未満であれば数式(3)を使用し、収容トナーの体積中位径が9μm以上であれば数式(4)を使用する。例えば、制御部50が、収容トナーの体積中位径が上記4種類の範囲のいずれにあるかを判断し、その範囲に応じた数式(数式(1)〜(4)のいずれか)を選択する。そして、制御部50が、選択された数式と、収容トナーの体積中位径と、収容トナーの半値幅とに基づいて、基準定着温度を算出する。
例えば、収容トナーが、体積中位径6μmかつ半値幅6μmのトナーである場合には、数式(1)が選択され、数式(1)に基づき、基準定着温度が「170−(4×(7−6))−3−(2×(6−6))=163℃」のように算出される。また、収容トナーが、体積中位径8μmかつ半値幅4μmのトナーである場合には、数式(3)が選択され、数式(3)に基づき、基準定着温度が「170+(3×(8−8))−(2×(6−4))=166℃」のように算出される。また、収容トナーが、体積中位径10μmかつ半値幅7μmのトナーである場合には、数式(4)が選択され、数式(4)に基づき、基準定着温度が「170+(2×(10−9))+3−(2×(6−7))=177℃」のように算出される。
トナーの体積中位径とトナーの半値幅とが定着制御規則に入力されると、定着制御規則は、その入力に応じた基準定着温度を一意的に定めて出力する。体積中位径及び半値幅の少なくとも一方が異なる複数種のトナーを準備し、各トナーを定着させるために適した定着温度(基準定着温度)を予め測定して、そのトナーの体積中位径と半値幅とに関連付けることで、定着制御規則を作成できる。発明者の実験により、トナーの体積中位径が小さくなるほど、そのトナーを定着させるために適した定着温度は低くなる傾向があることが分かった。この理由は、トナー粒子の粒子径が小さくなるほど、トナー粒子において離型剤(又は、結晶性ポリエステル樹脂)の占める割合が大きくなるからであると考えられる。また、発明者の実験により、トナーの半値幅が小さくなる(トナーの体積基準の粒度分布がシャープになる)ほど、そのトナーを定着させるために適した定着温度は低くなる傾向があることが分かった。この理由は、トナーの半値幅が小さくなるほど、トナーに含まれるトナー粒子の性質が均一になり、定着しにくいトナー粒子の割合が少なくなるからであると考えられる。
記憶装置54には、印刷用の画像データ、各種制御に係るプログラム、及びプログラムで用いられるデータ等が格納されてもよい。
制御部50には、インターフェイス55を介して、操作パネル70(図1には図示せず)、補給量センサー22b、トナー量センサー23c、及びタグリーダー60の各出力信号等が入力される。画像形成装置の操作パネル70は、ユーザーからの入力を受け付ける入力部と、所定の情報を含む画像を表示する表示部とを有する。操作パネル70は、例えばタッチパネル及び入力ボタン等から構成される。タッチパネルでは、入力部と表示部とが一体化している。ユーザーは、操作パネル70を通じて画像形成装置に指示を与えることができる。
制御部50は、インターフェイス55を介して、給紙ローラー12、搬送ローラー13a、転写ローラー14、排出ローラー16、感光体ドラム21、供給ローラー22a、攪拌スクリュー23a、現像ローラー23b、帯電装置24、露光装置25、及びタグリーダー60等を制御できる。また、制御部50に、インターフェイス55を介して、汎用コンピューター(いわゆるパーソナルコンピューター)等が接続されてもよい。
制御部50は、図5に示すような、トナー種別判断部501、粒子径判断部502、定着温度更新部503、及び定着制御部504を有する。これらトナー種別判断部501、粒子径判断部502、定着温度更新部503、及び定着制御部504は、電子回路及び/又はプログラムによって具現化できる。制御部50は、制御部50の外に設けられた電子回路及び/又はプログラムと協働して、トナー種別判断部501、粒子径判断部502、定着温度更新部503、及び定着制御部504を具現化してもよい。
トナー種別判断部501は、変数X(タグメモリー22cに記憶されているトナー種別情報)に基づいて、収容トナー(トナーコンテナ22に収容されているトナー)が、結晶性ポリエステル樹脂を含有する非カプセルトナー(以下、対象種別トナーと記載する)であるか否かを判断するように構成される。詳しくは、トナー種別判断部501は、変数Xが「1」であれば収容トナーが対象種別トナーであると判断し、変数Xが「1」でなければ収容トナーが対象種別トナーではないと判断する。
粒子径判断部502は、変数Y(タグメモリー22cに記憶されているD50情報)に基づいて、収容トナー(トナーコンテナ22に収容されているトナー)が、6μm以上10μm以下の範囲内で設定された対象範囲内の体積中位径を有するか否かを判断するように構成される。対象範囲は、6μm以上10μm以下であってもよいし、7μm以上8.5μm以下であってもよい。対象範囲は、6μm以上10μm以下の範囲内であれば任意に設定できる。
定着温度更新部503は、変数Y(タグメモリー22cに記憶されているD50情報)と変数Z(タグメモリー22cに記憶されているHW情報)とから定着制御規則により一意的に定まる基準定着温度を得て、得られた基準定着温度に基づいて、変数T(記憶装置54の第1記憶部541に記憶されている目標温度値)を更新するように構成される。定着制御規則に基づいて得た基準定着温度でそのまま変数Tを更新(変数T=基準定着温度)してもよい。ただし、定着制御規則に基づいて得た基準定着温度を所定の補正係数で補正して、補正された基準定着温度で変数Tを更新(「変数T=基準定着温度×補正係数」又は「変数T=基準定着温度+補正係数」等)してもよい。
定着制御部504は、変数T(記憶装置54の第1記憶部541に記憶されている目標温度値)に基づいて定着装置30の定着温度(詳しくは、第1ローラー31の温度)を制御するように構成される。例えば、定着制御部504は、第1ローラー31の温度が目標温度値(変数T)に一致するように、ヒーター311に供給される電力を制御する。
以下、主に図6を参照して、本実施形態に係る画像形成装置を用いた画像形成方法の一例について説明する。図6の処理(ステップS11〜S15)は、制御部50により実行される。例えば、ROM52又は記憶装置54等に記憶されているプログラムをCPU51が実行することで、図6の処理が実行される。図6の処理は、例えばトナーコンテナが交換されるごとに(すなわち、トナーコンテナ交換後に)実行される。制御部50は、例えば所定のセンサー(コンテナ交換センサー)に基づいて、トナーコンテナが交換されたことを検知できる。また、制御部50は、タグメモリー22cに記憶されている収容トナー情報に基づいて、トナーコンテナが交換されたことを検知してもよい。また、ユーザーが操作パネル70を操作することにより、トナーコンテナが交換されたことを制御部50に知らせてもよい。例えば、新規コンテナの使用を開始する時の初期設定(インストール操作)が行われたことに基づき、制御部50が図6の処理を実行してもよい。
ステップS11では、制御部50が、タグメモリー22cに記憶されている変数X、Y、及びZ(トナー種別情報、D50情報、及びHW情報)をタグリーダー60から取得する。
ステップS12では、ステップS11で取得した変数Xが「1」であるか否かを、制御部50のトナー種別判断部501が判断する。
ステップS12において変数Xが「1」であると判断された場合(ステップS12:YES)には、制御部50がステップS13〜S15の処理を実行する。この場合、収容トナーは、対象種別トナー(結晶性ポリエステル樹脂を含有する非カプセルトナー)であると考えられる。他方、ステップS12において変数Xが「1」ではないと判断された場合(ステップS12:NO)には、制御部50が、図6の一連の処理を終了する。この場合、収容トナーは、対象種別トナー(結晶性ポリエステル樹脂を含有する非カプセルトナー)ではないと考えられる。
ステップS13では、ステップS11で取得した変数Yが対象範囲(6μm以上10μm以下)内の体積中位径であるか否かを、制御部50の粒子径判断部502が判断する。
ステップS13において変数Yが対象範囲(6μm以上10μm以下)内の体積中位径であると判断された場合(ステップS13:YES)には、制御部50はステップS14〜S15の処理を実行する。他方、ステップS13において変数Yが対象範囲(6μm以上10μm以下)内の体積中位径ではないと判断された場合(ステップS13:NO)には、制御部50は図6の一連の処理を終了する。
ステップS14では、制御部50の定着温度更新部503が、定着制御規則を参照して、ステップS11で取得した変数Y及びZ(トナーの体積中位径、及びトナーの体積基準の粒度分布の半値幅)に応じた基準定着温度TF(定着制御規則により一意的に定まる基準定着温度)を求める。そして、続くステップS15において、制御部50の定着温度更新部503は、基準定着温度TFに基づいて、変数T(記憶装置54の第1記憶部541に記憶されている目標温度値)を更新する。例えば、制御部50の定着温度更新部503は、変数Tに基準定着温度TFを代入する。
ステップS15の処理が完了すると、図6の一連の処理は終了する。ステップS15で変数T(目標温度値)が更新された場合には、その後にさらなる更新がない限り、制御部50の定着制御部504は、その更新された変数Tに基づいて定着装置30の定着温度を制御する。詳しくは、制御部50の定着制御部504は、変数Tに代入された基準定着温度TFに基づいて定着装置30の定着温度を制御する。例えば、基準定着温度TFが170℃であれば、制御部50の定着制御部504は、第1ローラー31の温度(例えば、第1ローラー31の表面の温度)が170℃に一致するように、ヒーター311に供給される電力を制御する。
以上説明したように、本実施形態に係る画像形成装置は、トナー容器(トナーコンテナ22)と、像担持体(感光体ドラム21)と、現像装置(現像装置23)と、転写部(転写ローラー14)と、定着装置(定着装置30)と、第1記憶部541(記憶装置54の所定の記憶領域)と、第2記憶部542(記憶装置54の所定の記憶領域)と、定着温度更新部503と、定着制御部504とを備える。トナー容器は、トナーを収容し、トナーの体積中位径(D50情報)とトナーの体積基準の粒度分布の半値幅(HW情報)とを記憶するタグメモリー(タグメモリー22c)を備える。現像装置は、トナー容器から供給されたトナーで像担持体上の静電潜像を現像して、像担持体上にトナー像を形成するように構成される。転写部は、像担持体上のトナー像を、記録媒体(記録媒体P)に転写するように構成される。定着装置は、記録媒体に転写されたトナー像を所定の定着温度で加熱して、記録媒体に定着させるように構成される。第1記憶部541は、制御用の定着温度の値である目標温度値を記憶している。第2記憶部542は、トナーの体積中位径と、トナーの体積基準の粒度分布の半値幅と、基準定着温度とを関連付ける制御規則(定着制御規則)を記憶している。定着温度更新部503は、タグメモリーに記憶されているトナーの体積中位径とトナーの体積基準の粒度分布の半値幅とから制御規則により一意的に定まる基準定着温度を得て、得られた基準定着温度に基づいて、第1記憶部541に記憶されている目標温度値を更新するように構成される。定着制御部504は、第1記憶部541に記憶されている目標温度値に基づいて定着装置の定着温度を制御するように構成される。
また、本実施形態に係る画像形成方法は、コンテナ装着と、トナー像形成と、転写と、定着とを含む。コンテナ装着では、トナーを収容し、トナーの体積中位径とトナーの体積基準の粒度分布の半値幅とを記憶するタグメモリー(タグメモリー22c)を備えるトナー容器(トナーコンテナ22)を、画像形成装置に取り付ける。トナー像形成では、画像形成装置の現像装置(現像装置23)が、トナー容器から供給されたトナーで像担持体(感光体ドラム21)上の静電潜像を現像して、像担持体上にトナー像を形成する。転写では、画像形成装置の転写部(転写ローラー14)が、像担持体上のトナー像を記録媒体(記録媒体P)に転写する。定着では、画像形成装置の定着装置(定着装置30)が、タグメモリーに記憶されているトナーの体積中位径とトナーの体積基準の粒度分布の半値幅とに基づいて設定した定着温度で、記録媒体に転写されたトナー像を加熱して、記録媒体にトナー像を定着させる。
本実施形態に係る画像形成装置及び画像形成方法によれば、以下のような優れた効果が奏される。
一般的な製法でトナーを製造した場合、製造ロット(生産単位)間での、トナーの半値幅(体積基準の粒度分布の半値幅)のばらつきは、それほど大きくないため、トナーの半値幅に基づいて定着温度を制御することは、従来行われていなかった。不要な制御を行うことは、制御負荷の増大につながるからである。しかし、発明者は、実験及び検討を重ね、トナーの半値幅の僅かな差異に起因した定着温度のずれ(適正温度からのずれ)であっても、微小な定着オフセット(定着ローラーにトナーが融着する現象)が発生し得るという知見を得た。特に、収容トナーが、結晶性ポリエステル樹脂を含有する非カプセルトナーである場合には、微小な定着オフセットが発生し易くなる。
本実施形態の画像形成装置及び画像形成方法によれば、トナー容器ごとに、収容トナーの体積中位径及び半値幅に適した基準定着温度が得られる。そして、得られた基準定着温度に基づいて定着温度を制御することが可能となる。トナーの半値幅は、トナーに含まれるトナー粒子の粒子径のばらつきを高い精度で表す。トナー容器ごとに(ひいては、収容トナーごとに)適切な定着温度を設定して、その定着温度でトナーを記録媒体に定着させることにより、微小な定着オフセットを抑制しながら、トナーを記録媒体に良好に定着させることが可能になる。また、不要に定着温度を高くしなくて済むため、消費エネルギーを削減することが可能になる。
本実施形態の画像形成装置は、トナー種別判断部501をさらに備える(図5参照)。また、タグメモリー(タグメモリー22c)には、トナー容器(トナーコンテナ22)に収容されているトナーが、結晶性ポリエステル樹脂を含有する非カプセルトナーであるか否かを示すトナー種別情報がさらに記憶されている。また、トナー種別判断部501は、タグメモリーに記憶されているトナー種別情報に基づいて、トナー容器に収容されているトナーが、結晶性ポリエステル樹脂を含有する非カプセルトナーであるか否かを判断するように構成される(図6のステップS12参照)。また、定着温度更新部502は、トナー種別判断部501により、収容トナー(トナー容器に収容されているトナー)が、結晶性ポリエステル樹脂を含有する非カプセルトナーであると判断された場合にのみ、前述の制御規則(定着制御規則)による目標温度値の更新を実行するように構成される(図6のステップS12、S14、及びS15参照)。
上記のように、画像形成装置の制御部50にトナー種別判断部501を搭載することで、収容トナーが、結晶性ポリエステル樹脂を含有する非カプセルトナーである場合にのみ、定着制御規則による目標温度値の更新を実行することが可能になる。微小な定着オフセットが特に発生し易い場合にのみ、定着制御規則による目標温度値の更新を実行することで、制御負荷の軽減が図られる。
本実施形態の画像形成装置は、粒子径判断部502をさらに備える(図5参照)。また、粒子径判断部502は、タグメモリー(タグメモリー22c)に記憶されているトナーの体積中位径(D50情報)に基づいて、トナー容器(トナーコンテナ22)に収容されているトナーが、6μm以上10μm以下の範囲内で設定された対象範囲内の体積中位径を有するか否かを判断するように構成される(図6のステップS13参照)。また、定着温度更新部503は、粒子径判断部502により、収容トナー(トナー容器に収容されているトナー)が対象範囲内の体積中位径を有すると判断された場合にのみ、前述の制御規則(定着制御規則)による目標温度値の更新を実行するように構成される(図6のステップS13〜S15参照)。
上記のように、画像形成装置の制御部50に粒子径判断部502を搭載することで、収容トナーが、対象範囲(6μm以上10μm以下の範囲内で設定された粒子径範囲)内の体積中位径を有する場合にのみ、定着制御規則による目標温度値の更新を実行することが可能になる。収容トナーの体積中位径が6μm以上10μm以下である場合に、交換前のトナーと交換後のトナーとの間での半値幅の違いが微小な定着オフセットの原因となり易い。また、6μm以上10μm以下の範囲の中でも、特に7.5μm以上8.5μm以下の範囲で、交換前のトナーと交換後のトナーとの間での半値幅の違いが微小な定着オフセットの原因となり易い。上記のように、画像形成装置の制御部50に粒子径判断部502を搭載し、実行で得られる効果が特に大きい場合にのみ、定着制御規則による目標温度値の更新を実行することによって、制御負荷の軽減が図られる。対象範囲は、6μm以上10μm以下よりも狭く設定してもよい。
上記実施形態において、画像形成装置の構成(構成要素、寸法、材質、形状、又は位置等)は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において任意に変更又は割愛することができる。
例えば、制御部50(図5参照)におけるトナー種別判断部501及び粒子径判断部502を割愛してもよい。制御部50は、図6の処理に代えて、図6中のステップS12及びS13を割愛した処理(例えば、図7の処理)を実行してもよい。なお、図7の処理では、変数Xを使用しないため、ステップS11において、変数Y及びZのみを取得している。
上記実施形態に係る画像形成装置の制御に係る機能は、ハードウェア(電子回路等)によっても、ソフトウェア(プログラム)によっても実現することができる。上記実施形態において制御部50が実行するプログラムは、例えばCD−ROMのようなコンピューターに読み取り可能な記録媒体に格納して配布可能にしてもよい。また、プログラムを通信ネットワーク上の所定のサーバーに保持させ、クライアントが実行又はダウンロードできるようにしてもよい。また、OS(Operating System)とアプリケーションとの協働により所定の機能を実現する場合には、OS以外の部分のみについて配布等を可能にしてもよい。
本発明は、複数種のトナー容器(ひいては、複数種のトナー)を用いてフルカラー画像を形成するフルカラー画像形成装置にも適用できる。トナー容器間で適正定着温度が異なる場合には、最も高い適正定着温度でトナーを記録媒体に定着させることが好ましい。ただし、モノクロモードで画像を形成する場合には、ブラックトナーの適正定着温度でトナーを記録媒体に定着させることが好ましい。
画像形成装置は、複合機であってもよいし、複写機、プリンター、又はファクシミリの単体ユニット(単一機能の画像形成装置)であってもよい。画像形成装置は、無線通信機能を有していてもよい。
トナー容器を画像形成装置に取り付ける時に、図6に示す制御を実行する実施例に係る画像形成装置と、図6に示す制御を実行しない比較例に係る画像形成装置とを準備した。画像形成装置としては、モノクロ複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa 3510i」、印刷速度:35枚/分)を使用した。ただし、実施例に係る画像形成装置には、図6に示す制御を実行するためのプログラムを制御部に追加した。これら画像形成装置をそれぞれ用いて、画像(トナー像)を記録媒体(印刷用紙)に形成して、記録媒体に対する画像(トナー)の定着性を評価した。
現像剤としては、次に示す方法で製造したトナーA〜E(1成分現像剤)を使用した。
[トナーの製造]
次に示す割合で、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いてトナー材料(非結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、磁性粉、離型剤、及び電荷制御剤)を混合した。
非結晶性ポリエステル樹脂:42質量部
結晶性ポリエステル樹脂:6質量部
磁性粉:45質量部
離型剤:4質量部
電荷制御剤:3質量部
磁性粉としては、マグネタイト(三井金属鉱業株式会社製「TN−15」)を使用した。離型剤としては、エステルワックス(日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP−9」)を使用した。電荷制御剤としては、4級アンモニウム塩(オリヱント化学工業株式会社製「BONTRON(登録商標)P−51」)を使用した。非結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂としては、それぞれ次に示す方法で合成した樹脂を使用した。
(非結晶性ポリエステル樹脂の合成)
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた容量5Lの4つ口フラスコ内に、ビスフェノールA−PO(プロピレンオキサイド)付加物1700gと、ビスフェノールA−EO(エチレンオキサイド)付加物650gと、n−ドデセニル無水コハク酸975gと、テレフタル酸670gと、トリメリット酸160gと、酸化ジブチル錫4gとを入れた。続けて、温度220℃でフラスコ内容物を9時間反応させた。続けて、減圧雰囲気(圧力8kPa)でフラスコ内容物を反応させて、非結晶性ポリエステル樹脂を得た。得られた非結晶性ポリエステル樹脂に関しては、Tmが131.1℃、Tgが60.8℃、Mwが76297、Mnが3660であった。
(結晶性ポリエステル樹脂の合成)
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた容量5Lの4つ口フラスコ内に、1,4−ブタンジオール990gと、1,6−ヘキサンジオール242gと、フマル酸1480gと、1,4−ベンゼンジオール2.5gとを入れた。続けて、温度170℃でフラスコ内容物を5時間反応させた。続けて、温度210℃でフラスコ内容物を1.5時間反応させた。続けて、減圧雰囲気(圧力8kPa)かつ温度210℃の条件で、フラスコ内容物を1時間反応させた。続けて、常圧雰囲気に戻し、フラスコ内に、スチレン69gと、メタクリル酸n−ブチル54gとを入れた。続けて、温度210℃でフラスコ内容物を1.5時間反応させた。続けて、減圧雰囲気(圧力8kPa)かつ温度210℃の条件で、フラスコ内容物を1時間反応させた。その結果、結晶性ポリエステル樹脂が得られた。得られた結晶性ポリエステル樹脂に関しては、Tmが88.8℃、Mpが82℃、Mwが27500、Mnが3620であった。
上記割合でトナー材料を混合した後、得られたトナー材料の混合物を、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて溶融混練した。その後、得られた混練物を冷却した。続けて、得られた混練物を、粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)」)を用いて、設定粒子径2mmで粗粉砕した。続けて、得られた粗粉砕物を、機械式粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミルT250」)を用いて微粉砕した。続けて、得られた微粉砕物を、分級機(コアンダ効果を利用した風力分級機:日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて分級した。その結果、トナー母粒子(粉体)が得られた。分級条件を変えることで、トナー母粒子の体積中位径及び半値幅を調整した。詳しくは、体積中位径及び半値幅の少なくとも一方が異なる複数種のトナーA〜E(詳しくは、後述する表1に示す体積中位径及び半値幅を有するトナーA〜E)が得られるように、トナー母粒子の体積中位径及び半値幅を調整した。
続けて、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて、トナー母粒子100質量部と、疎水性シリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)RA−200H」)1.5質量部と、導電性酸化チタン微粒子(チタン工業株式会社製「EC−100」)0.8質量部とを、混合した。これにより、トナー母粒子の表面に外添剤が付着した。その後、300メッシュ(目開き48μm)の篩を用いて篩別を行った。その結果、多数のトナー粒子を含むトナーA〜Eが得られた。
[評価方法]
対象装置(実施例に係る画像形成装置、及び比較例に係る画像形成装置のいずれか)の評価方法は、以下の通りである。対象装置のトナーコンテナを交換することにより、トナーA〜Eを順に対象装置にセットして、トナーA〜Eの各々について下記評価を行った。
(定着率)
温度23℃かつ湿度55%RHの環境下、対象装置を用いて、評価用紙(ニーナ社製「クラシッククレスト(登録商標)」)に印字率90%の画像(詳しくは、未定着のトナー像)を形成した。その後、画像(未定着のトナー像)が形成された紙を対象装置の定着装置に通して、定着処理を行った。続けて、反射濃度計(X−Rite社製「SpectroEye(登録商標)」)を用いて、定着装置に通した紙上の画像の画像濃度(以下、擦り前IDと記載する)を測定した。続けて、布帛で被覆した1kgの分銅を用いて、評価用紙上の画像を10往復摩擦した。続けて、反射濃度計(SpectroEye)を用いて、評価用紙上の画像の画像濃度(以下、擦り後IDと記載する)を測定した。続けて、式「定着率=100×擦り後ID/擦り前ID」に従って、定着率(単位:%)を求め、下記基準で評価した。なお、定着率は、擦る前の画像濃度(ID)を基準にして、擦った後で画像濃度(ID)がどの程度低下するかを示している。すなわち、定着率は、画像を構成するトナーのうち十分に定着したトナーの割合を示す指標となる。
○(良い):定着率が90%以上であった。
×(良くない):定着率が90%未満であった。
(微小オフセット)
温度23℃かつ湿度55%RHの環境下において、対象装置を用いて、印字率1%で1万枚の紙(A4サイズの普通紙)に連続印刷を行う耐刷試験を行った。その後、対象装置の定着ローラーの表面の汚れを目視及び拡大鏡で確認し、トナーが付着していた場合には微小オフセットが発生した(微小オフセット有り)と評価し、トナーの付着が見られない場合には微小オフセットが発生していない(微小オフセット無し)と評価した。
[評価結果]
実施例に係る画像形成装置、及び比較例に係る画像形成装置の各々についての評価結果を、表1に示す。表1中、「体積中位径」は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA−750」)を用いて測定された収容トナーの体積中位径を示している。「半値幅」は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA−750」)を用いて測定された収容トナーの体積基準の粒度分布の半値幅を示している。「定着温度」は、印刷(画像形成)時の定着処理における定着温度(対象装置の定着ローラーの表面の温度)を示している。「定着率」は、前述の手順で測定された定着率が90%以上であるか否か(○:90%以上、×:90%未満)を示している。「微小オフセット」は、前述の手順で評価された微小オフセットの有無を示している。
実施例に係る画像形成装置では、トナーA〜Eのいずれを用いた場合でも、微小な定着オフセットを抑制しながら、トナーを記録媒体に良好に定着させることができた。
比較例に係る画像形成装置では、特定のトナー(トナーD)を用いた場合にしか、微小な定着オフセットを抑制しながら、トナーを記録媒体に良好に定着させることはできなかった。