JP6470642B2 - 金属製支柱を補強または補修する方法、および補強または補修された金属製支柱構造 - Google Patents
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具体的な補修工法としては、鋼板を巻き立てて接着する工法が古くから知られており、さらに、多層(通常5層から8層程度)で重ねられた、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維などの繊維シートを、樹脂を用いて貼り付ける工法も実用化されている。
また、特開2003−213635号公報(特許文献2)には、金属支柱の破損または腐食部分に紫外線硬化型の繊維強化樹脂シートを巻付けて硬化させ、その上面側を支柱断面に対応した筒状の金属補強材で覆う補修方法が開示されている。
(1)
本発明の金属製支柱を補強または補修する方法は、第1被覆工程と、貼設工程と、第2被覆工程と、硬化工程とを含む。
第1被覆工程は、金属製支柱の補強または補修すべき部分を第1の繊維強化樹脂プリプレグシートで被覆する。貼設工程では、第1の繊維強化樹脂プリプレグシートの外側表面に金属製補強部材を貼設する。第2被覆工程では、金属製補強部材の少なくとも外側表面の全てを覆う大きさおよび形状の第2の繊維強化樹脂プリプレグシートで被覆する。硬化工程では、第1の繊維強化樹脂プリプレグシートおよび第2の繊維強化樹脂プリプレグシートのマトリックス樹脂を硬化させる。
(1)の金属製支柱を補強または補修する方法において、金属製補強部材による貼設面積は、金属製支柱の周方向の一部を覆う大きさであってよい。
(1)の金属製支柱を補強または補修する方法において、金属製補強部材による貼設面積が、金属製支柱の周方向の全部を覆う大きさであってよい。
(1)から(3)の金属製支柱を補強または補修する方法において、金属製補強部材は、金属製支柱の表面形状に沿った割管状であってよい。
(1)から(4)の金属製支柱を補強または補修する方法において、金属製補強部材の端面が、第1の繊維強化樹脂プリプレグシートおよび第2の繊維強化樹脂プリプレグシートの少なくともいずれかによって被覆されていてよい。
(1)から(5)の金属製支柱を補強または補修する方法において、金属製補強部材は、端部に向かって肉薄となるように形成されていてよい。
(1)から(5)の金属製支柱を補強または補修する方法において、金属製補強部材の端面にシーリング剤樹脂が塗着されていてよい。
(1)から(7)の金属製支柱を補強または補修する方法において、金属製補強部材の外側表面および内側表面の表面粗さは、1μm以上100μm以下であってよい。
本発明の補強または補修された金属製支柱構造は、第1の繊維強化樹脂シートと、金属製補強部材と、第2の繊維強化樹脂シートと、を含む。
第1の繊維強化樹脂シートは、金属製支柱の補強または補修すべき部分を被覆している。金属製補強部材は、第1の繊維強化樹脂シートの表面に貼設されている。第2の繊維強化樹脂シートは、金属製補強部材の表面よりも大きい表面積を有し、金属製補強部材の表面を被覆している。第1の繊維強化樹脂シートおよび第2の繊維強化樹脂シートにおける樹脂は一体的に硬化されている。
図1に、本発明の補強または補修された金属製支柱構造の一例の一部切り欠き図を示す。図1では、一部切り欠きによって軸心を含む面で切断した場合の断面図(縦断面図)が示される。図2は、図1の金属製支柱構造を軸心方向に垂直な面で切断した場合の断面図(横断面図)である。図1および図2に示す補強または補修された金属製支柱構造100は、金属製支柱200と、第1の繊維強化樹脂シート311と、第2の繊維強化樹脂シート312と、金属製補強部材320とを含む。図1においては、金属製支柱構造のグラウンドレベルGLより下の地下埋設部を含む地際部付近を表示しており、上部は省略している。
金属製支柱200は、照明柱、標識柱、および信号柱など、建築構造物の金属製支柱であってよい。金属製支柱200の材質としては特に限定されず、炭素鋼および鋳鋼などが挙げられる。本実施形態の金属製支柱200は中空管状であるが、本発明は、金属製支柱200が中実であることを除外するものではない。本実施形態の金属製支柱200の外周断面形状は円であるが、四角形その他の多角形を含む任意の形状であってよい。
金属製支柱200は、たとえば、外周の最大幅が50mm以上1000mm以下であってよく、中空の場合は肉厚が2mm以上30mm以下であってよい。
第1の繊維強化樹脂シート311は、金属製支柱200の補強または補修すべき箇所、本実施形態では劣化部210全体を被覆している。第1の繊維強化樹脂シート311は、繊維にマトリックス樹脂が含浸されかつ当該マトリックス樹脂が硬化されていればよい。
金属製補強部材320は、たとえば、炭素鋼、鋳鋼、鉄鋼、ステンレスなどの板材である。金属製補強部材320は、第1の繊維強化樹脂シート311上に貼設されている。具体的には、金属製支柱200の補強または補修すべき箇所、本実施形態では劣化部210全体を、第1の繊維強化樹脂シート311を介して被覆するように貼設されている。金属製補強部材320の厚みとしては、当業者が適宜決定することができ、劣化による肉厚減少で生じた剛性減少を補填し、健全状態同等の剛性を回復(補修)させ得る厚みであってもよいし、それ以上の剛性を付与(補強)させ得る厚みであってもよい。
第2の繊維強化樹脂シート312は、金属製補強部材320の外側表面327の全体を覆っている。第2の繊維強化樹脂シート312は、金属製補強部材320の外側表面327の全体を一度に覆うことが可能な形状および大きさを有するシートである。本実施形態では、第2の繊維強化樹脂シート312の1周分の巻回によって、一対の金属製補強部材320の外側表面327の全体がまとめて被覆されている。
図3は、補強または補修された金属製支柱構造の第1変形例を示す横断面図である。図4は、補強または補修された金属製支柱構造の第2変形例の一部縦断面図である。図5は、補強または補修された金属製支柱構造の第3変形例の横断面図である。図6は、補強または補修された金属製支柱構造の第4変形例の一部縦断面図である。
以下の変形例においては、主に上述の実施形態と異なる点について説明し、その他の部分は同じとして基本的に説明を省略する。
図3に示す補強または補修された金属製支柱構造100aは、金属製支柱200aと、第1の繊維強化樹脂シート311と、第2の繊維強化樹脂シート312と、金属製補強部材320aとを含む。補強または補修された金属製支柱構造100aにおいては、金属製支柱200aにおける劣化態様および金属製補強部材320aの大きさ・形状が、それぞれ、上述の補強または補修された金属製支柱構造100における金属製支柱200における劣化態様および金属製補強部材320の大きさ・形状と異なる。
図4に示す補強または補修された金属製支柱構造100bは、金属製支柱200と、第1の繊維強化樹脂シート311と、第2の繊維強化樹脂シート312と、金属製補強部材320bとを含む。補強または補修された金属製支柱構造100bにおいては、金属製補強部材320bの形状が、上述の補強または補修された金属製支柱構造100における金属製補強部材320の形状と異なる。
図5に示す補強または補修された金属製支柱構造100cは、金属製支柱200と、第1の繊維強化樹脂シート311と、第2の繊維強化樹脂シート312と、金属製補強部材320cとを含む。補強または補修された金属製支柱構造100cにおいては、金属製補強部材320cの形状および第1の繊維強化樹脂シート311の被覆態様が、それぞれ、上述の補強または補修された金属製支柱構造100における金属製補強部材320の形状および第1の繊維強化樹脂シート311の被覆態様と異なる。
図6に示す補強または補修された金属製支柱構造100dは、金属製支柱200と、第1の繊維強化樹脂シート311と、第2の繊維強化樹脂シート312と、金属製補強部材320bとを含む。補強または補修された金属製支柱構造100dにおいては、金属製補強部材320bの形状ならびに第1の繊維強化樹脂シート311および第2の繊維強化樹脂シート312の被覆態様が、それぞれ、上述の補強または補修された金属製支柱構造100における金属製補強部材320の形状ならびに第1の繊維強化樹脂シート311および第2の繊維強化樹脂シート312の被覆態様と異なる。
図7から図11は、金属製支柱を補強または補修する方法の一例について、各工程を示す。図7から図11に説明する方法は、図1および図2に示す構造を得る方法の一例である。
図7に示すように、補強または補修すべき金属製支柱200の、グラウンドレベルGLから下の部分を掘削によって露出させ、補強または補修すべき部位である劣化部210を露出させる。劣化部210を含む所定の面(後述の第1の繊維強化樹脂プリプレグシート311’で被覆する面)は、金属製支柱200の金属下地が露出するまでケレン処理してよい。ケレン処理としては、ワイヤーブラシやディスクグラインダー、サンドブラストおよびブリストルブラストによる方法が挙げられる。ケレン処理によって、錆びが落とされ表面を均すことができ、また、表面が粗化されることにより、後述の第1の繊維強化樹脂プリプレグシート311’の接着力を上げることができる。
次に、図8に示すように、金属製支柱200の劣化部210を第1の繊維強化樹脂プリプレグシート311’で被覆する(第1被覆工程)。第1の繊維強化樹脂プリプレグシート311’は、上述の第1の繊維強化樹脂シート311の完全硬化前のものである。つまり、第1の繊維強化樹脂プリプレグシート311’は、上述の第1の繊維強化樹脂シート311で述べた繊維に、マトリックス樹脂が完全硬化されていない状態(未硬化または半硬化)で含浸されている。含浸されたマトリックス樹脂には、硬化剤および硬化促進剤が含まれていてよく、さらに、着色剤および各種添加剤などが含まれていてもよい。マトリックス樹脂が完全硬化されていないことにより、第1の繊維強化樹脂プリプレグシート311’は柔軟であり、該シート表面は粘着性を有する。
第1被覆工程の後、図9に示すように、第1の繊維強化樹脂プリプレグシート311’の外側表面に金属製補強部材320を貼設する(貼設工程)。本実施形態では、金属製補強部材320として、金属製支柱200の外周面に沿う内周面形状を有する半割管を一対用いる態様を例示する。この半割管は、軸心方向の両端部分がそれぞれの末端に向かって肉薄となる傾斜面329が形成されている。
貼設工程の後、図10に示すように、金属製補強部材320を第2の繊維強化樹脂プリプレグシート312’で被覆する(第2被覆工程)。第2の繊維強化樹脂プリプレグシート312’は、上述の第2の繊維強化樹脂シート312の完全硬化前のものである。つまり、第2の繊維強化樹脂プリプレグシート312’は、上述の第2の繊維強化樹脂シート312で述べた繊維に、マトリックス樹脂が完全硬化されていない状態(未硬化または半硬化)で含浸されている。含浸されたマトリックス樹脂には、硬化剤および硬化促進剤が含まれていてよく、さらに、着色剤および各種添加剤などが含まれていてもよい。マトリックス樹脂が完全硬化されていないことにより、第2の繊維強化樹脂プリプレグシート312’は柔軟であり、該シート表面は粘着性を有する。
第2被覆工程の後、図11に示すように、第1の繊維強化樹脂プリプレグシート311’および第2の繊維強化樹脂プリプレグシート312’を硬化させる。金属製支柱200に、第1の繊維強化樹脂プリプレグシート311’および第2の繊維強化樹脂プリプレグシート312’が被覆された箇所へシリコンラバーヒーター710を装着し、さらに、それら全体を覆うように構成された保温治具720を装着する。ヒーターを起動させて第1の繊維強化樹脂プリプレグシート311’および第2の繊維強化樹脂プリプレグシート312’(、および不陸を均すために樹脂が塗布された場合は当該塗布された樹脂)を熱硬化させる。これにより、第1の繊維強化樹脂シート311および第2の繊維強化樹脂シート312(図1および図2参照)が金属製補強部材320とともに金属製支柱200に固定される。
その後、グラウンドレベルに相当する部位に、帯状のテフロン(登録商標)シート(553x10×1mm)を巻付け、更にその上からステンレス製結束バンドにて締め上げた。
200,200a 金属製支柱
210,210a 劣化部(金属製支柱の補強または補修すべき部分)
311 第1の繊維強化樹脂シート
311’ 第1の繊維強化樹脂プリプレグシート
312 第2の繊維強化樹脂シート
312’ 第2の繊維強化樹脂プリプレグシート
320,320b,320c 金属製補強部材(金属製支柱の周方向の全部を覆う大きさを有するもの)
320a 金属製補強部材(金属製支柱の周方向の一部を覆う大きさを有するもの)
324c,328 端面
329 傾斜面(端部に向かって肉薄となるように形成されている部分)
327,327c (金属製補強部材の)外側表面
Fb シーリング樹脂
Claims (9)
- 金属製支柱の補強または補修すべき部分を第1の繊維強化樹脂プリプレグシートで被覆する第1被覆工程と、
前記第1の繊維強化樹脂プリプレグシートの外側表面に金属製補強部材を貼設する貼設工程と、
前記金属製補強部材の外側表面を、前記金属製補強部材の少なくとも前記外側表面の全てを覆う大きさおよび形状の第2の繊維強化樹脂プリプレグシートで被覆する第2被覆工程と、
前記第1の繊維強化樹脂プリプレグシートおよび前記第2の繊維強化樹脂プリプレグシートのマトリックス樹脂を硬化させる硬化工程と、
を含む、金属製支柱を補強または補修する方法。 - 前記金属製補強部材による貼設面積が、前記金属製支柱の周方向の一部を覆う大きさである、請求項1に記載の金属製支柱を補強または補修する方法。
- 前記金属製補強部材による貼設面積が、前記金属製支柱の周方向の全部を覆う大きさである、請求項1に記載の金属製支柱を補強または補修する方法。
- 前記金属製補強部材が、前記金属製支柱の表面形状に沿った割管状である、請求項1から3のいずれか1項に記載の金属製支柱を補強または補修する方法。
- 前記金属製補強部材の端面が、前記第1の繊維強化樹脂プリプレグシートおよび前記第2の繊維強化樹脂プリプレグシートの少なくともいずれかによって被覆されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の金属製支柱を補強または補修する方法。
- 前記金属製補強部材が、端部に向かって肉薄となるように形成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の金属製支柱を補強または補修する方法。
- 前記金属製補強部材の端面にシーリング剤樹脂が塗着されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の金属製支柱を補強または補修する方法。
- 前記金属製補強部材の外側表面および内側表面の表面粗さが1μm以上100μm以下である、請求項1から7のいずれか1項に記載の金属製支柱を補強または補修する方法。
- 金属製支柱の補強または補修すべき部分を被覆する第1の繊維強化樹脂シートと、
前記第1の繊維強化樹脂シートの表面に貼設された金属製補強部材と、
前記金属製補強部材の表面を被覆する、前記金属製補強部材の前記表面よりも大きい表面積を有する第2の繊維強化樹脂シートと、を含み、
前記第1の繊維強化樹脂シートおよび前記第2の繊維強化樹脂シートにおける樹脂が一体的に硬化されている、
補強または補修された金属製支柱構造。
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