以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一または相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
(実施の形態1)
まず、液体吐出装置10の機能的な構成について図1および図2を参照しながら説明する。図1は、実施の形態1に係る液体吐出装置10のプリンタを示す図である。図2は、液体吐出装置10の機能的構成を概略的に示した図である。なお、以下では、液体吐出装置10の一例として、インクを吐出するプリンタについて説明するが、液体を吐出する液体吐出装置10であれば、液体吐出装置10はプリンタに限定されない。
液体吐出装置10はヘッド20、メンテナンスユニット30、制御部40および第1推定部41を備えている。液体吐出装置10は、給紙機構11、プラテン12、キャリッジ13、および、搬送機構14をさらに備えていてもよい。液体は、溶媒および溶質から構成されており、たとえば、顔料インクや染料インクが例示される。溶質は、たとえば、染料のように溶媒に溶けているものだけでなく、顔料のように溶媒に分散しているものも含む。
給紙機構11は、給紙トレイ(図示せず)内の用紙19を搬送経路へ供給する機構である。プラテン12は、供給された用紙19が載置される台である。
キャリッジ13は、ヘッド20を走査方向に往復移動させる搬送部である。たとえば、キャリッジ13は、走査方向に延びた2本のガイドレール113によって支持され、ガイドレール113に沿って走査方向に往復移動する。キャリッジ13は、プラテン12と対向する領域(記録領域)、および、走査方向に沿って記憶領域に隣接する領域(メンテナンス領域)に亘って移動する。記憶領域では、キャリッジ13は、プラテン12の上方で、プラテン12に対して間隔を開けて平行に配置される。
ヘッド20は、インクなどの液体をノズル21のノズル孔23から吐出させる部分であって、記憶領域においてノズル孔23がプラテン12に対向するようにキャリッジ13の下部に取り付けられている。複数のノズル21は、走査方向と直交する搬送方向に配列され、ノズル列を形成している。たとえば、4つのノズル列が、走査方向に配列されている。
搬送機構14は、給紙トレイから供給された用紙19をプラテン12とヘッド20との間を経て排紙トレイ(図示せず)まで搬送する機構であって、この搬送方向は走査方向と直交する。搬送機構14として、たとえば、2つの搬送ローラ114が用いられる。2つの搬送ローラ114は、キャリッジ13の搬送方向の上流側および下流側に配置されており、走査方向を軸方向として搬送方向に回転する。
メンテナンスユニット30は、ヘッド20による液体吐出性能を維持および回復する各種メンテナンス作業を行うユニットであって、メンテナンス領域に配置されている。メンテナンスユニット30は、キャップ31、接離部32、パージ部33、吸引部34、開放部37およびワイプ部材39を有している。また、メンテナンスユニット30は、廃液タンク30aを有していてもよい。メンテナンスユニット30については後述する。
制御部40は演算部(図示せず)および記憶部(図示せず)を有しており、演算部はプロセッサなどで構成され、記憶部は演算部がアクセス可能なメモリで構成されている。この記憶部に記憶されたプログラムを演算部が実行することにより、液体吐出装置10の各部が制御される。
第1推定部41は、液体跡24(図3)の形成を推定する推定部である。第1推定部41は、制御部40に設けられており、制御部40の機能として実現されている。ただし、第1推定部41は、制御部40とは別に設けられていてもよい。この場合、第1推定部41は、演算部(図示せず)および記憶部(図示せず)を有し、記憶部に記憶されたプログラムに従って演算部が実行することにより液体跡24の形成を推定する。
次に、液体吐出装置10の記録(印刷)の動作について図1および図2を参照して説明する。この動作は制御部40により実行される。印刷時には、用紙19は、給紙機構11により給紙トレイから供給されて、プラテン12上に載置され、搬送機構14によりさらに搬送方向へ断続的に搬送される。ヘッド20は、キャリッジ13により走査方向に移動しながら、ノズル孔23から液体を吐出する。この液体によって用紙19に所望の画像や文字などが印刷される。
次に、ヘッド20およびメンテナンスユニット30の構成について図1および図3を参照しながら説明する。図3は、ヘッド20およびメンテナンスユニット30を概略的に示す断面図である。なお、本実施の形態において、図3中のプラテン12上の用紙19の搬送方向は、以下で説明するノズル面22に形成された同色インク用のノズル孔23が並ぶ方向と一致している。
ヘッド20は、複数のノズル21およびノズル面22を有している。ノズル面22にはノズル21の一端開口(ノズル孔23)が形成されている。ノズル21の他端開口は、カートリッジまたは廃液タンク30a等の液体供給部(図示せず)と接続されており、液体は液体供給部からノズル21を介してノズル孔23へ供給される。これにより、インクなどの液体がノズル面22のノズル孔23から吐出される。
キャップ31は、ノズル面22に密着し易いように、たとえば、弾力性を有するゴムなどで形成されている。キャップ31は、箱形状であって、底部(キャップ底部)、および、このキャップ底部の周部から立設する側部(キャップ側部)を有している。このキャップ底部の内面およびキャップ側部の内面により凹部31eが形成され、この凹部31eに取り囲まれた空間(凹部31e内)がキャップ31の内部に設けられている。凹部31eは上方に向いて開いた開口を有しており、これにより凹部31e内は上方に向いて開いた空間である。このため、メンテナンス領域においてヘッド20がキャップ31の上方にある場合、キャップ底部はノズル面22と対向する。よって、キャップ底部は、ノズル面22と対向可能な対向部である。
キャップ底部には吸引孔31aが貫通して設けられている。キャップ側部の上部には、凸部(キャップリップ)31bが設けられている。このキャップリップ31bの端面は、キャップ31の縁を構成し、凹部31eの開口を取り囲んでいる。キャップ側部は、そのキャップリップ31bがノズル面22に当接可能な当接部である。凹部31eの開口のサイズは、キャップリップ31bが複数のノズル孔23の全部または一部が取り囲むように設定されている。これにより、キャップ31はヘッド20のノズル孔23を含むようにノズル面22を覆う。また、キャップリップ31bの内面と外面との間の厚みは、キャップ側部の内面と外面との間の厚みより薄い。これにより、キャップリップ31bは、キャップ側部より撓み易く、ノズル面22に密着し易い。
キャップ31には、第1キャップ係合部31cおよび第2キャップ係合部31dが設けられている。第1キャップ係合部31cは、後述するホルダ35に対して一方側のキャップ側部(第1キャップ側部)の上限位置を規定するものであって、第1キャップ側部から外側へ突出する突起である。第2キャップ係合部31dは、ホルダ35に対し他方側のキャップ側部(第2キャップ側部)の上限位置を規定するものである。たとえば、第2キャップ側部から外側へ突出した棒状などの突出部分、および、該突出部分の先端に設けられた球形状などの先端部分を有している。
この第2キャップ側部の上端および第1キャップ側部の上端はそれぞれ、キャップ31の当接部であって、ノズル面22と平行な第1方向における一端側の一端部と他端側の他端部とを構成している。このため、第1キャップ係合部31cおよび第2キャップ係合部31dは、キャップ31の開口を挟んで対向する位置に設けられている。
キャップ31はホルダ35に収容されている。ホルダ35は、箱形状であって、その内部に空間を有し、上部が開口している。ホルダ35は、底部(ホルダ底部)、および、このホルダ底部の周部から立ち上がる側部(ホルダ側部)を有している。ホルダ35は、その開口を介してキャップ31が上下動可能であって、内部空間にキャップ31を収容できるサイズに設定されている。
ホルダ35には、第1ホルダ係合部35aおよび第2ホルダ係合部35bが設けられている。第1ホルダ係合部35aは、ホルダ35の内部空間に収容された第1キャップ係合部31cに対向するホルダ側部に設けられており、ホルダ側部の上端から内側に突出している突起である。第1ホルダ係合部35aおよび第1キャップ係合部31cのそれぞれの突出寸法は、ホルダ35の内部空間に収容されたキャップ31が上昇したときに、その第1キャップ係合部31cの上面が第1ホルダ係合部35aの下面に当接し得る長さに設定されている。このように第1キャップ係合部31cおよび第1ホルダ係合部35aが当接することにより、ホルダ35に対する第1キャップ側部の上限位置が規定される。
第2ホルダ係合部35bは、ホルダ35の内部空間に収容された第2キャップ係合部31dに対向するホルダ側部に設けられており、ホルダ側部内に形成された円柱形状などの空間(ホルダ空間)を形成する内面の上面および下面である。ホルダ空間には第2キャップ係合部31dの先端部分が収容される。第2ホルダ係合部35bの上面と下面との間におけるホルダ空間の上下方向の寸法(高さ)は、第2キャップ係合部31dの先端部分の直径より大きく設定されている。このため、先端部分はホルダ空間内を上下方向に移動可能である。また、ホルダ空間において球形状の先端部分が回動自在であり、これにより、先端部分に繋がる突出部分、および、該突出部分に固定されるキャップ31は傾斜可能である。
このような、第2キャップ係合部31dの先端部分が第2ホルダ係合部35bの上面に当接することにより、ホルダ35に対する第2キャップ側部の上限位置が規定される。第2キャップ係合部31dが第2ホルダ係合部35bの上面に当接するときの第2キャップ側部は、第1キャップ係合部31cが第1ホルダ係合部35aの上面に当接するときの第1キャップ側部より、下方に位置している。また、第2キャップ係合部31dの先端部分が第2ホルダ係合部35bの下面に当たることにより、ホルダ35に対する第2キャップ側部の下限位置が規定される。
ホルダ35の内部空間に弾性部材が配置されている。弾性部材は、キャップ31を上方へ付勢する弾性体であって、たとえば、バネ36が用いられる。バネ36は、上下方向に弾性変形するように、ホルダ底部の内面に固定されている。バネ36の搬送方向の位置は、ホルダ底部の搬送方向の中心から第1ホルダ係合部35a側にずれている。
吸引部34は、キャップ31の凹部31e内を吸引する機構であって、たとえば、吸引ポンプ134により構成されている。吸引ポンプ134は、チューブ34aによりキャップ31の吸引孔31aに接続されている。この凹部31eをノズル面22で覆った状態で吸引ポンプ134を動作させると、吸引ポンプ134は、チューブ34aおよび吸引孔31aを介して凹部31e内を吸引する。これにより、ノズル面22で覆われた凹部31e内が減圧されて、ノズル孔23から凹部31e内へ液体が排出されるため、吸引ポンプ134はパージ部33としても機能する。
チューブ34aに大気開放弁34bが設けられている。この大気開放弁34bが閉じた状態では凹部31e内が吸引ポンプ134と連通し、大気開放弁34bが開いた状態では凹部31e内が大気に開放される。なお、大気開放弁34bは吸引ポンプ134に設けられていてもよい。
接離部32は、ノズル面22に対してキャップ31を当接および離間させる機構である。接離部32には、たとえば、回転運動をキャップ31の昇降運動に変換するカム132が用いられる。カム132の軸部にはモータが取り付けられており、カム132はその軸を中心にモータの駆動によって回転する。カム132は、略円形状のベースサークルと該ベースサークルより軸部から外側へ突き出したカムローブとを有している。カム132は、その周面がホルダ35の下面に接するように配置されている。
カム132の回転によりホルダ35に接する部分がベースサークルからカムローブへ移ると、ホルダ35と共にキャップ31が上昇し、キャップリップ31bがヘッド20のノズル面22に当接する。このとき、キャップ31はノズル面22に対してバネ36の付勢力によって押し当てられる。これにより、凹部31eの開口がノズル面22により閉塞されて、凹部31eとノズル面22で囲まれた気密的な閉空間が形成される。この閉空間は、ノズル面22のノズル孔23に隣接する。
一方、カム132の回転によりホルダ35に接する部分がカムローブからベースサークルへ移ると、ホルダ35の下降と共にキャップ31もその自重により下降し、キャップリップ31bがヘッド20のノズル面22から離間する。これにより、凹部31e内が大気に開放されるため、接離部32は開放部37としても機能する。
ワイプ部材39は、ノズル面22に当接可能な部材である。ワイプ部材39は、メンテナンス領域にあるノズル面22に接しながらノズル面22に対して駆動モータ(図示せず)により相対的に移動する。これによりノズル面22に付着したインク25および軟化した液体跡24を拭き取ることができる。
次に、キャップリップ31bによりノズル面22に形成された液体跡24を除去するメンテナンスの動作について図1、図3〜図7を参照して説明する。この動作は、制御部40が接離部32、パージ部33、吸引部34、開放部37およびワイプ部材39などを制御することにより実行される。
液体跡24は、インク25の溶媒が蒸発して残った溶質の固形物またはゲル状物である。図4は、メンテナンス動作の一例を示すフローチャートである。図5は、キャップ31をヘッド20のノズル面22から一部離間した状態を概略的に示す断面図である。図6は、キャップ31をノズル面22に当接させた状態を概略的に示す断面図である。図7は、キャップリップ31bをノズル面22から離間させてから内部の液体を吸引する状態を概略的に示す断面図である。
たとえば、液体吐出装置10としてプリンタを用いる場合、インクの混触を避けるため、キャップ31の搬送方向の一端側が他端側よりもノズル面22から離れるような傾斜姿勢で、キャップ31をノズル面22から離間させている。また、キャップ31の他端側に吸引孔31aを設けている。このように、キャップ31をノズル面22に対して傾斜させて離間すると、他端側にインクブリッジが形成される。このインクブリッジが切れると、インクブリッジを構成していたインクは、他端側からキャップ31内に流れて、吸引孔31aへ速やかに吸引される。
また、プリンタの高速印刷のために、ノズル21の数が増やされている。これにより、ヘッド20およびキャップ31が搬送方向において長尺化すると共に、多数のノズル21から排出されるインクが増え、キャップ31に多くのインクが溜まり易い。よって、キャップ31のノズル面22に対する傾斜角度を大きくし、より多くのインクを他端側に集めるようにしている。
このように、キャップ31の傾斜角度を大きくすると、インクがキャップ31の他端側に移動して、他端側とノズル面22との隙間に表面張力によってインクが保持される。このインクは隙間から流れ出難い。ただし、プリンタの周囲温度が上昇して、インクの温度が上昇すると、インクの表面張力が低下する。このため、インクが隙間に保持されなくなると、インクは隙間から流れ出してキャップリップ31bの外側に付着する。この状態でキャップ31がノズル面22に当接すると、キャップリップ31bとノズル面22の間で毛管現象によりインクが保持される。このキャップリップ31bの外側が大気に開放されているため、インクが乾燥して液体跡24がノズル面22に形成される。
しかも、ノズル面22からキャップリップ31bに沿って液体跡24が形成されると、液体跡24のノズル面22からの突出寸法は高くなり易い。よって、液体跡24が形成されたノズル面22にキャップリップ31bを当接する際、これらの間に液体跡24が挟まると、キャップリップ31bがノズル面22に密着することを液体跡24は妨げてしまう。この場合、凹部31e内を吸引しても十分に負圧を生成できず、ノズル面22のノズル孔23からインク25を十分に排出させられないおそれがある。よって、キャップリップ31bに対応するノズル面22の位置にある液体跡24にインク25を付着させて軟化させるメンテナンスが行われる。
このメンテナンスでは、まず、第1推定部41により液体跡24が形成されているかが推定される(図4のステップS1)。なお、第1推定部41により液体跡24の形成が推定されない場合(図4のステップS1:NO)、第1推定部41は液体跡24の形成を監視する。
たとえば、前回のメンテナンスからの経過時間が閾時間に達し、長期間放置されている場合、ノズル面22の液体の乾燥が進行して、液体跡24が形成されていると推定される。このため、第1推定部41は、前回のメンテナンスからの経過時間を内蔵タイマにより計測して、この経過時間が閾時間に達したか否かを判定する。経過時間が閾時間に達していれば、第1推定部41は液体跡24が形成されていると推定する(図4のステップS1:YES)。
なお、閾時間は、推定される液体跡24の高さに基づいて設定される。たとえば、キャップリップ31bとノズル面22との間でリークを生じるような液体跡24の高さになると推定される期間を閾時間と設定される。
また、内蔵バッテリーが切れた後に液体吐出装置10の電源を入れた場合、内蔵タイマが停止し、前回のメンテナンスからの経過時間を判定できない。この場合、キャップリップ31bがノズル面22に当接した状態で長期間放置され、液体跡24が形成されていると推定される。このため、第1推定部41は、内蔵タイマまたはこの内蔵タイマによる計測時間を記憶するメモリから前回のメンテナンスからの経過時間を取得できない場合、第1推定部41は液体跡24の硬度を推定する(図4のステップS1:YES)。
制御部40は、第1推定部41により前記液体跡の形成が推定されると、メンテナンスユニット30などを制御する。これにより、図1のヘッド20は、メンテナンス領域にキャリッジ13によって移動させられ、キャップ31の凹部31eの開口に対向する。そして、図3に示すメンテナンス領域においてパージ処理を実行する(図4のステップS2)。ここでは、当接部をノズル面22に当接させて、凹部31e内へノズル21からインク25を排出させる。
具体的には、パージ処理では、カム132によりホルダ35が押し上げられる。これに伴いホルダ35内のキャップ31も上昇する。これにより、キャップリップ31bがヘッド20のノズル面22に接触し、ノズル孔23を含むノズル面22をキャップ31が覆う。これにより、凹部31eとノズル面22とにより閉空間が形成される。この状態で大気開放弁34bを閉じて吸引ポンプ134によって閉空間を吸引すると、閉空間の圧力が低下する。これにより、ノズル孔23からインク25が閉空間に排出されて、パージ処理が実行される。そして、凹部31e内にインク25が溜まる。
このパージ処理の後に、移動処理を実行する(図4のステップS3)。ここでは、凹部31e内に液体を残した状態で、ノズル面22と直交する第2方向において一端部が他端部よりも離れ且つノズル面22と凹部31eの一端側との間で液体が保持される位置にキャップ31の当接部を位置付けさせる。
具体的には、移動処理では、凹部31e内にインク25を残した状態で吸引ポンプ134の動作を止めてから大気開放弁34bを開き、凹部31e内を大気に開放して、凹部31e内の低下した圧力を戻す。そして、大気開放弁34bを閉じた後、カム132を回転して、ホルダ35を下降させる。
このとき、図5に示すように、キャップ底部はバネ36によってホルダ35に対して支持されているため、ホルダ35の下降に伴いキャップ31が下降する際、キャップ31はノズル面22に対して搬送方向に傾斜可能な状態になっている。このバネ36は、キャップ31の搬送方向の中心より第1ホルダ係合部35a側に位置するため、キャップ31は第2キャップ側部が第1キャップ側部より下方になるように傾いて下降する。
また、ホルダ35の下降に伴って第2キャップ係合部31dの先端部分は、ホルダ空間内を上昇し、第2ホルダ係合部35bの上面に当たる。この際、第1キャップ係合部31cの上面が第1ホルダ係合部35aの下面に当たる前に、第2キャップ係合部31dの先端部分は第1ホルダ係合部35aの上面に当たる。よって、第2キャップ係合部31dに接続されている第2キャップ側部はその上限位置に制限される。この結果、キャップ31は、ホルダ35の下降に伴って第2キャップ側部がノズル面22から先に離れ、第1キャップ側部がその後に離れる。
これにより、図5に示すように、第2キャップ側部よりノズル面22から離れる第1キャップ側部の側(一端側)の凹部31eとノズル面22との間に架け渡されたインク25(インクブリッジ)が局部的に形成される。このようにインクブリッジにより、第1キャップ側部の側の凹部31eとノズル面22との間に液体が保持される位置までキャップ31を移動させる。なお、この局所的にインクブリッジが形成されている状態では、第2キャップ側部の側(他端側)の凹部31eとノズル面22との間にはインク25が架け渡されていない。
この移動処理の後に、液体付着処理を(図4のステップS4)を実行する。ここでは、当接部の一端部が他端部よりも第2方向に離れた状態を保ちつつインク25が保持される位置から当接部とノズル面22とを近接させ、当接部をノズル面22に再び当接させて、当接部に液体を付けると共に当接部についた液体を液体跡24に付着させる。
具体的には、インクブリッジが局所的に形成されている状態において、再び、図6に示すように、カム132を回転させて、ホルダ35およびキャップ31を上昇させ、キャップ31を傾斜させたままでノズル面22に近づける。これにより、ノズル面22に垂直な方向においてインクブリッジがキャップ31およびノズル面22により押し潰されて、ノズル面22に平行な方向の力がインクブリッジに作用する。この力によってインクブリッジを構成していたインクは、インクブリッジの近傍にある第1キャップ側部へこぼれる。このため、図6に示すように、インク25が第1キャップ側部のキャップリップ31b上に付着する。
なお、キャップ31をノズル面22に近づける際のキャップ31の傾斜角度および速度は、インクの表面張力、ノズル面22とキャップ31の凹部31eに対するインクの濡れ性、および、凹部31eのインク量により設定される。たとえば、インクが保持される位置からノズル面22に近づけるときのキャップ31の移動速度を、後述の当接処理においてインクが保持される位置からノズル面22に近づけるときのキャップ31の移動速度より大きくする。
さらに、キャップ31を上昇させると、キャップリップ31bがノズル面22に接触する。このとき、キャップリップ31bに付いたインク25がノズル面22の液体跡24に付着する。このインク25はパージ処理にて排出されたインク25であるため、インク25は多くの溶媒を含んでいる。よって、液体跡24の溶質がインク25の溶媒により溶けたり分散したりして、液体跡24が軟化する。
また、キャップリップ31bとノズル面22とは密着しているため、キャップリップ31bに付着した第1キャップ側部のインク25は、毛管現象によりキャップリップ31bとノズル面22との間を伝わって、キャップリップ31bに沿って周方向に拡がる。よって、キャップリップ31b上の広い範囲に亘って広がるインク25を、ノズル面22の液体跡24に付着させることができる。これにより、ノズル面22の多くの液体跡24が軟化する。
この液体付着処理後に、ノズル21の吐出特性の回復が要求されているか否かを判定する(図4のステップS5)。ここで、ノズル21の吐出特性の回復が要求されていない場合、(図4のステップS5:NO)、メンテナンスを終了する。なお、ノズル21の吐出特性の回復が要求されていない場合、(図4のステップS5:NO)、後述する空吸引処理を実行せずにワイピング処理および当接処理を実行してから、メンテナンスを終了してもよい。または、ノズル21の吐出特性の回復が要求されていない場合、(図4のステップS5:NO)、後述する空吸引処理およびワイピング処理を実行せずに当接処理を実行してから、メンテナンスを終了してもよい。
たとえば、ユーザによる操作パネル(図示せず)の操作により、ノズル21をクリーニングするメンテナンスが実行されている場合、制御部40は、この操作パネルから信号に基づいてノズル21の吐出特性の回復が要求されていると判定する(図4のステップS5:YES)。また、前回のメンテナンスからの経過時間が閾時間に達している場合、メンテナンスが実行される。このような場合も、制御部40は、経過時間を測定する内蔵タイマ(図示せず)からの信号に基づいて、ノズル21の吐出特性の回復が要求されていると判定する(図4のステップS5:YES)。
制御部40は、ノズル21の吐出特性の回復が要求されていると判定すると(図4のステップS5:YES)、空吸引処理を実行する(図4のステップS6)。ここで、パージ処理、移動処理の順に実行させた後に、凹部31e内を大気に開放し、凹部31e内を吸引して、凹部31e内の液体を排出させる。
具体的には、空吸引処理では、図7に示すように、カム132を回転させて、キャップ31を下降させて、キャップリップ31bをノズル面22から離す。そして、大気開放弁34bを閉じて吸引ポンプ134によって凹部31e内を吸引すると、凹部31e内に残ったインク25が吸引されて排出される。排出されたインク25は廃液タンク30aに排出される。
この空吸引処理の後、ワイピング処理を実行する(図4のステップS7)。ここでは、ワイプ部材39をノズル面22に接触させてノズル面22に対して相対的に移動させると、ノズル面22に付着したインク25や軟化した液体跡24が拭き取られる。
このワイピング処理の後、当接処理を実行する(図4のステップS8)。ここでは、当接部を、インク液体が保持される位置からノズル面22に当接させる。これにより、ノズル孔23をキャップ31で覆って、メンテナンスの動作が終了する。
上記実施の形態によれば、移動処理においてキャップ31をノズル面22に対して傾斜させてノズル面22から離して、インクブリッジを形成する。液体付着処理において、キャップ31を傾斜させたままノズル面22に近づけることにより、インクブリッジのインク25をキャップリップ31bに確実に付着させることができる。
さらに、パージ処理で排出された凹部31e内のインク25をキャップリップ31bに付着させてから、このキャップリップ31bをノズル面22に再び接触させている。これにより、キャップリップ31b上のインク25がノズル面22の液体跡24に付着し、このインク25で液体跡24を軟化させることができる。このため、液体跡24がキャップリップ31bに当たっても、軟化した液体跡24が変形し易い。よって、液体跡24によってノズル面22とキャップリップ31bとの間に隙間が空くことを防いだり、仮に隙間が空いても、その隙間の寸法(高さ)を小さく抑えたりすることができる。よって、隙間による凹部31e内の減圧の低下を抑え、パージ処理を十分に実行することができる。
また、液体付着処理時にノズル面22からキャップ31を近づけるときのキャップ31の速度を、当接処理時にノズル面22からキャップ31を近づけるときのキャップ31の速度より大きくしている。このように、キャップ31をノズル面22から素早く近づけることにより、パージ処理により排出された凹部31e内のインク25をさらに確実にキャップリップ31bに付着させることができる。
さらに、液体付着処理時にノズル面22からキャップ31を近づける際に、キャップ31をノズル面22に対して傾けている。これにより、ノズル面22とこのノズル面22に近い側のキャップリップ31bとの間にインクブリッジを形成している。この状態でキャップ31をノズル面22から素早く近づけることにより、インクブリッジのインク25をキャップリップ31b側へ飛散させる。よって、パージ処理により排出された凹部31e内のインク25をさらに確実にキャップリップ31bに付着させることができる。
このように、凹部31e内のインク25を飛散させることにより、多量のインク25をキャップリップ31bに付着させることができる。よって、インク25をキャップリップ31bに広く付着させると共に、多くのインク25を液体跡24に付けることができる。
さらに、液体跡24に付着するインク25に、パージ処理で排出されたインク25を用いている。このインク25は、通常、メンテナンスの動作の後に廃棄される。よって、パージ処理によりノズル21内の増粘したインクを排出することできると共に、廃棄されるインク25を液体跡24の軟化に利用することによりインク25を無駄な消費を抑えることができる。
また、ノズル面22の液体跡24を除去するためのメンテナンスを、第1推定部41により液体跡24が形成されていると推定されうたタイミングで実施している。これにより、パージ処理の回数が制限され、メンテナンスによるインク25の使用量を抑えることができる。しかも、液体跡24によるリークをより確実に防止することができる。
さらに、パージ処理で排出されたインク25をノズル面22に付着させた後に、ワイプ部材39によりノズル面22を拭いている。これにより、ノズル面22のインク25および軟化した液体跡24がワイプ部材39によりさらに確実に除去され、凹部31e内の吸引不良を防止することができる。
(実施の形態2)
キャップリップ31bにインク25を付着させる方法は、実施の形態1における方法に限定されない。たとえば、実施の形態2に係る液体吐出装置10では、液体付着処理においてインク25が保持される位置から当接部とノズル面22とを近接させる際、キャップ31を揺動している。
具体的には、図8に示すように、液体吐出装置10は、キャップ31を揺動する揺動部38をさらに備えている。図8は、実施の形態2に係る液体吐出装置10の構成を概略的に示した図である。
たとえば、接離部32にキャップ31を昇降させるカム132を用いる場合、キャップ31に昇降することにより、キャップ31が上下方向に揺れる。この場合、接離部32は揺動部38として機能する。また、この接離部32とは別に、キャップ31を揺らす部材を設けてもよい。このキャップ31を揺らす方向は特に限定されず、たとえば、上下方向、搬送方向、または、斜め方向である。キャップ31の揺らす距離、回数および速度などは、凹部31e内に残したインク25をキャップリップ31bに付着させるように設定される。
この揺動部38は、液体付着処理においてインク25が保持される位置から当接部とノズル面22とを近接させる際、キャップ31を揺動するように制御部40により制御される。具体的には、液体跡24の形成が推定され(図4のステップS1:YES)、パージ処理(図4のステップS2)の後、移動処理(図4のステップS3)において傾斜したキャップ31の凹部31eとノズル面22との間にインクブリッジが形成される。液体付着処理(図4のステップS4)においてキャップ31を傾斜させたまま、インクブリッジが形成されている状態でキャップ31をノズル面22に近づける。この際、傾斜したキャップ31を、たとえば、上下方向、搬送方向、または、斜め方向に揺らす。これにより、インクブリッジのインク25がキャップリップ31b上に付着する。そして、キャップリップ31bをノズル面22に当接させると、キャップリップ31bに付いたインク25がノズル面22の液体跡24に付着し、液体跡24が軟化する。そして、ノズル21の吐出特性の回復が要求されていると(図4のステップS5:YES)、空吸引処理を実行し(図4のステップS6)、凹部31e内に残ったインク25を排出する。その後、ノズル面22に付着したインク25や軟化した液体跡24をワイプ部材39で拭き取り(図4のステップS7)、キャップリップ31bをノズル面22に当接させる(図4のステップS8)。
上記実施の形態によれば、液体付着処理においてインク25が保持される位置から当接部とノズル面22とを近接させる際、キャップ31を揺動している。これにより、インクブリッジが形成されている状態でキャップ31がノズル面22に近づけられながら、傾斜したキャップ31が揺らされる。これにより、インクブリッジのインク25をキャップリップ31bにさらに確実に付けて、さらに液体跡24に付着させることができる。
(実施の形態3)
キャップリップ31bにインク25を付着させる方法は、実施の形態1における方法に限定されない。たとえば、実施の形態3に係る液体吐出装置10では、制御部40は、液体付着処理においてインク25が保持される位置から当接部とノズル面22とを近接させる際、第2方向において一端部が他端部よりもノズル面22から離れるようにキャップ31を傾斜させる角度を変化させるように接離部32を制御する。
具体的には、液体跡24の形成が推定され(図4のステップS1:YES)、パージ処理(図4のステップS2)の後、移動処理(図4のステップS3)において傾斜したキャップ31の凹部31eとノズル面22との間にインクブリッジが形成される。液体付着処理(図4のステップS4)において、キャップ31を傾斜させたまま、インクブリッジが形成されている状態でノズル面22に対するキャップ31の傾斜角度を変化させる。この実施の形態では、ノズル面22に対して直交する方向において、第1キャップ側部の上端が第2キャップ側部の上端よりもノズル面22から離れるようにキャップ31を傾斜させる。そして、キャップ31の傾斜角度を、たとえば、ノズル面22とキャップリップ31bとの間の距離などに応じて変化させる。たとえば、この距離が小さくなるほど、ノズル面22に対するキャップ31の傾斜角度を大きくしてもよい。これにより、キャップ31が大きく傾斜して、インクブリッジのインク25がキャップリップ31b上に付く。このキャップリップ31bをノズル面22に再び当接すると、キャップリップ31bに付いたインク25がノズル面22の液体跡24に付着し、液体跡24が軟化する。そして、ノズル21の吐出特性の回復が要求されていると(図4のステップS5:YES)、空吸引処理を実行し(図4のステップS6)、凹部31e内に残ったインク25を排出する。その後、ノズル面22に付着したインク25や軟化した液体跡24をワイプ部材39で拭き取り(図4のステップS7)、キャップリップ31bをノズル面22に当接させる(図4のステップS8)。
上記実施の形態によれば、液体付着処理においてインク25が保持される位置から当接部とノズル面22とを近接させる際、第2方向において一端部が他端部よりもノズル面22から離れるようにキャップ31を傾斜させる角度を変化させている。これにより、インクブリッジが形成されている状態でキャップ31がノズル面22に近づけられながら、キャップ31の傾斜角度が変化する。たとえば、この距離が短くなるほど、キャップ31の傾斜角度を大きくしている。これにより、インクブリッジのインク25をキャップリップ31bにさらに確実に付けて、さらに液体跡24に付着させることができる。
なお、実施の形態3において、実施の形態2と同様に、キャップ31を揺動部38により揺らしてもよい。これにより、インクブリッジのインク25をキャップリップ31bにさらに確実に付着させることができる。
(実施の形態4)
実施の形態1に係る液体吐出装置10では、液体付着処理において、一度、インク25が付いたキャップリップ31bをノズル面22に当接させてから、空吸引処理を行った。このインク25が付いたキャップ31をノズル面22に当接させる回数は1度に限定されない。たとえば、実施の形態4に係る液体吐出装置10では、制御部40は、液体付着処理においてノズル面22から当接部を離間させた後にノズル面22に当接部を再び当接させる動作を繰り返すように接離部32を制御する。
具体的には、液体跡24の形成が推定され(図4のステップS1:YES)、パージ処理(図4のステップS2)の後、移動処理(図4のステップS3)において傾斜したキャップ31の凹部31eとノズル面22との間にインクブリッジが形成される。液体付着処理(図4のステップS4)において、インク25をキャップリップ31bに付けた際に、インク25がキャップリップ31bの一部にしか付着していないことがある。この場合、キャップリップ31bをノズル面22に当接させると、インク25が毛管現象によりキャップリップ31bとノズル面22との間を伝わって、キャップリップ31bに沿って拡がる。しかしながら、1度の当接でキャップリップ31bの全周にインク25が行き渡らないおそれがある。このため、再びキャップリップ31bをノズル面22から離し、それから、キャップリップ31bをノズル面22に当接させる。このようなノズル面22に対するキャップリップ31bの当接および離間を複数回、繰り返すことにより、インク25をキャップリップ31bの全周に拡がり、キャップリップ31bに対向する液体跡24の全部または多くの部分にインク25を付着させることができる。そして、ノズル21の吐出特性の回復が要求されていると(図4のステップS5:YES)、空吸引処理を実行し(図4のステップS6)、凹部31e内に残ったインク25を排出する。その後、ノズル面22に付着したインク25や軟化した液体跡24をワイプ部材39で拭き取り(図4のステップS7)、キャップリップ31bをノズル面22に当接させる(図4のステップS8)。
上記実施の形態によれば、液体付着処理においてノズル面22から当接部を離間させた後にノズル面22に当接部を再び当接させる動作を繰り返している。これにより、インク25が付いたキャップリップ31bがノズル面22に複数回、当接される。よって、インク25をキャップリップ31bの全体または広い範囲に行きわたらせ、キャップリップ31bに対向する液体跡24にインク25を付着させることができる。
なお、実施の形態4において、実施の形態2と同様に、揺動部38によりキャップ31を揺らしてもよい。また、実施の形態4において、実施の形態3と同様に、ノズル面22とキャップリップ31bとの間の距離に応じてキャップ31の傾斜角度を変化させもよい。
(実施の形態5)
実施の形態5に係る液体吐出装置10では、制御部40は、液体付着処理においてノズル面22に当接部を再び当接させた状態を所定時間、維持するように接離部32を制御する。
具体的には、液体跡24の形成が推定され(図4のステップS1:YES)、パージ処理(図4のステップS2)の後、移動処理(図4のステップS3)において傾斜したキャップ31の凹部31eとノズル面22との間にインクブリッジが形成される。液体付着処理(図4のステップS4)において、キャップリップ31bをノズル面22に対して傾斜させながらノズル面22に近づけることにより、インクブリッジのインク25がキャップリップ31bに付く。そして、カム132を回転して、キャップ31を上昇させて、インク25が付いたキャップリップ31bをノズル面22に当接する。ここで、所定時間、カム132を回転させないことにより、キャップリップ31bがノズル面22に当接した状態が維持される。そして、キャップリップ31bをノズル面22に当接させてから所定時間が経過すると、カム132を回転させて、キャップ31を下降させ、キャップリップ31bをノズル面22から離間させる。そして、ノズル21の吐出特性の回復が要求されていると(図4のステップS5:YES)、空吸引処理を実行し(図4のステップS6)、凹部31e内に残ったインク25を排出する。その後、ノズル面22に付着したインク25や軟化した液体跡24をワイプ部材39で拭き取り(図4のステップS7)、キャップリップ31bをノズル面22に当接させる(図4のステップS8)。
上記実施の形態によれば、液体付着処理においてノズル面22に当接部を再び当接させた状態を所定時間、維持している。これにより、インク25が付いたキャップリップ31bをノズル面22に当接させた状態が所定時間、維持される。よって、ノズル面22上の液体跡24をインク25でさらに確実に軟化させ、凹部31e内の吸引不良を防止することができる。
なお、所定時間は、たとえば、インク25の種類に応じて変更してもよい。インク25の溶媒が揮発し易い場合、または、インク25の溶質が硬い場合に、所定時間を長く設定してもよい。
また、実施の形態5において、実施の形態2と同様に、揺動部38によりキャップ31を揺らしてもよい。また、実施の形態5において、実施の形態3と同様に、ノズル面22とキャップリップ31bとの間の距離に応じてキャップ31の傾斜角度を変化させもよい。さらに、実施の形態5において、実施の形態4と同様に、液体付着処理においてノズル面22に対してキャップリップ31bを当接および離間させる動作を繰り返してもよい。
(変形例)
実施の形態5の変形例に係る液体吐出装置10は、図10に示すように、第2推定部42をさらに備えている。図10は、実施の形態5の変形例に係る液体吐出装置10の機能的構成を概略的に示した図である。第2推定部42は、液体跡24の硬度を推定する推定部である。この第2推定部42により推定される液体跡24の硬度(推定硬度)が高いほど、制御部40は所定時間を長く設定する。
具体的には、第2推定部42は、制御部40に設けられており、制御部40の機能として実現される。ただし、第2推定部42は、制御部40とは別の回路として設けられていてもよい。この場合、第2推定部42は、演算部(図示せず)および記憶部(図示せず)を有し、記憶部に記憶されたプログラムに従って演算部が実行することにより液体跡24の硬度を推定する。
たとえば、前回のメンテナンスからの経過時間が長い場合、ノズル面22のインク25の乾燥が進行して、液体跡24の硬度が高くなっていると推定される。このため、経過時間が長いほど推定硬度が高くなるように、経過時間と推定硬度との関係情報が予め設定されている。よって、第2推定部42は、前回のメンテナンスからの経過時間を内蔵タイマなどから取得し、経過時間と推定硬度との関係情報に基づいて経過時間に応じた推定硬度を求める。
また、内蔵バッテリーが切れた後に電源を入れた場合、内蔵時計が停止し、前回のメンテナンスからの経過時間が判断できない。この場合、キャップ31がノズル面22に付けた状態で長期間放置され、ノズル面22のインク25の乾燥が進行して、液体跡24の硬度が高くなっていると推定される。このため、経過時間の未取得に対して推定硬度が高くなるように、経過時間と推定硬度との関係情報が予め設定されている。よって、第2推定部42は、前回のメンテナンスからの経過時間を内蔵タイマなどから取得できないと、経過時間と推定硬度との関係情報に基づいて経過時間の未取得に応じた推定硬度を求める。
制御部40は、推定硬度と所定時間との関係情報を参照して、第2推定部42からの推定硬度に応じた所定時間を取得する。この推定硬度が高いほど、インク25を液体跡24に付着してから液体跡24が軟化するまでに長い時間を要する。このため、推定硬度と所定時間との関係情報には、推定硬度が高いほど、所定時間が長くなるように予め設定されている。よって、液体跡24の推定硬度が高いほど、所定時間が長く設定される。
このように、液体跡24の推定硬度が高いほど、インク25を付けたキャップリップ31bをノズル面22に当接させる時間を長くする。これにより、インク25で液体跡24をさらに確実に軟化させることができる。
(その他)
上記全ての実施の形態では、接離部32として、回転運動をキャップ31の昇降運動に変換するカム132を用いた。このため、接離部32によりキャップ31を動かして、キャップリップ31bをノズル面22に対して当接および離間させた。これに対して、キャップリップ31bをノズル面22に対して当接および離間させる接離部32であれば、これに限定されない。たとえば、ヘッド20を動かす接離部32により、キャップリップ31bをノズル面22に対して当接および離間させてもよい。または、キャップ31およびヘッド20をそれぞれ動かす接離部32により、キャップリップ31bがノズル面22に対して当接および離間してもよい。
上記全ての実施の形態では、接離部32によりキャップリップ31bをノズル面22から離間させて、凹部31e内を大気に開放させることにより、接離部32を開放部37として用いた。これに対して、凹部31e内を大気に開放する開放部37であれば、これに限定されない。たとえば、キャップ31に吸引孔31aとは別に、キャップ底部の貫通する孔(大気開放孔)を設け、この大気開放孔を開閉する弁を取り付けてもよい。そして、キャップリップ31bをノズル面22が当接している状態で、この弁により大気開放孔を開いて、ノズル面22および凹部31eにより形成される閉空間を大気に開放する。この場合、キャップリップ31bをノズル面22に当接した状態で、吸引部34により凹部31e内を吸引して、空吸引処理を実行する。
上記全ての実施の形態では、キャップ31に接続した吸引ポンプ134により凹部31e内を減圧することにより、ノズル孔23からインク25を排出させるパージ処理を実行した。しかしながら、パージ処理はこれに限定されない。たとえば、加圧ポンプなどの加圧部材をノズル21に接続し、加圧ポンプによりノズル21内のインク25を加圧することにより、ノズル孔23からインク25を排出させるパージ処理を実行してもよい。
上記全ての実施の形態では、パージ処理によりノズル孔23から排出されたインク25を凹部31e内に溜めて、この凹部31e内のインク25をキャップリップ31bに付着させた。これに対して、フラッシング処理によりノズル孔23から排出されたインク25を直接キャップリップ31bに付着させてもよい。
上記全ての実施の形態では、液体吐出装置10はワイプ部材39を備えていたが、図10に示すようにワイプ部材39は省略されてもよい。この場合、図4のステップS8に示すワイピング処理が省かれる。
上記全ての実施の形態では、液体吐出装置10は吸引部34および開放部37を備えていたが、図10に示すように吸引部34および開放部37は省略されてもよい。この場合、図4のステップS6に示す空吸引処理が省かれる。
上記全ての実施の形態では、図4のステップS5において、ノズル21の吐出特性の回復が要求されているか否かを判定したが、この判定処理を行わなくてもよい。この場合、図4のステップS4の液体付着処理の後にステップS6の空吸引処理を行う。
上記全ての実施の形態において、凹部31e内にチップを配置してもよい。
なお、上記全実施の形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更できる。