<概要>
典型的な実施形態を、図1〜図16を用いて説明する。図1〜図16は実施形態に係る眼鏡枠形状測定装置及び眼鏡枠形状取得方法を説明するための図である。
本開示の眼鏡枠形状測定装置1は、眼鏡フレームFを保持するためのフレーム保持ユニット500と、測定ユニット100と、を有する。測定ユニット100は、フレーム保持ユニット500によって保持されたリム(FL、FR)の輪郭をトレースしてリムの三次元形状を測定するために使用される。例えば、測定ユニット100は、眼鏡フレームFのリムの溝に挿入される測定子110を有し、測定子110をリムに沿って移動させ、測定子110の位置を検知することにより、リムの形状を測定する。
なお、本開示における眼鏡フレーム及びリムの上下方向とは、装用者が眼鏡フレームを装用した状態を基準にした上下方向(Y方向)をいう。また、本開示における眼鏡フレーム及びリムの前後方向とは、装用者が眼鏡フレームを装用した状態を基準にして、装用者の眼が位置する側を後方向とし、装用者から見て前側を前方向とする(Z方向)。
フレーム保持ユニット500は、左右リムの前傾角を変更可能に保持するリム保持ユニット500Aを備える。さらに、フレーム保持ユニット500は、テンプル保持ユニット600Aを備えていてもよい。例えば、フレーム保持ユニット500がテンプル保持ユニット600Aを備える場合、リム保持ユニット500Aは、左右リムのぞれぞれの少なくとも一部の箇所を一定位置で保持し、左右リムの前傾角を変更可能に保持する構成を有する。例えば、リム保持ユニット500Aは、左右リムの下部及び上部の何れか一方の前後方向の位置を規制するリム位置決めユニット(規制ユニット)580を有し、他方の前後方向の位置を自在に移動可能に保持する構成を有する。例えば、リム保持ユニット500Aは、左右リムの上部に当接する第1当接部(第1スライダー503)と、左右リムの下部に当接する第2当接部(第2スライダー505)と、を有し、少なくとも一方の当接部が上下方向に移動可能に構成され、左右リムを上下方向から挟み込むことによってリムを保持する。
例えば、リム位置決めユニット580は、第1当接部及び第2当接部の何れか一方に、規制部材の例である2つのピン582a、582bによってリム(FR、RL)を前後方向からクランプするためのクランプ機構(580A,580B)が配置されている。これにより、リム保持ユニット500Aはリムの前傾角を変化可能にしてリムを保持できる。
テンプル保持ユニット600Aは、リム保持ユニット500Aに保持されるリムの前傾角を所期する状態で規制するように眼鏡フレームの左右のテンプルを保持するために構成されている。例えば、テンプル保持ユニット600Aは、テンプルの耳かけ部に当接するテンプル当接部材(第1円柱部材612、第2円柱部材614)を備える。テンプル当接部材は、左右のテンプルの耳かけ部分を上下方向から挟み込んで保持するためのクランプ機構(610L、610R)の一部として構成されてもよい。
また、テンプル保持ユニット600Aは、リム保持ユニット500Aに保持されるリムの上下位置に対して一定の位置関係でテンプルを保持するように構成されてもよい。例えば、一定の位置関係とは、リム保持ユニット500Aに保持されるリムの上下位置に対して、標準的な眼鏡フレームのテンプルの延びる方向が水平方向となるように、テンプル保持ユニット600Aがテンプルを保持する位置である。さらには、例えば、リム保持ユニット500Aに保持されるリムの上部及び下部の中心に対して、テンプルの耳かけ部分の当接点が一定距離Th(例えば、5mmほど上)にある位置である。あるいは、テンプル保持ユニット600Aは、リム保持ユニット500Aに保持されるリムの上下位置に対してテンプルの上下位置(又はテンプルの傾斜角度)を相対的に調整するための調整機構620を有してもよい。例えば、調整機構620はテンプル当接部材(612、614)を上下方向に移動させてテンプルの上下位置(又は傾斜角度)を調整する。
このような構成により、例えば、リム位置決めユニット580によってリムの下部の前後位置を規制し、テンプルをテンプル保持ユニット600Aによって保持させることにより、リムの上部が前後方向に移動され、リム(FL、FR)の前傾角は眼鏡フレームFを装用者が装用したときの傾斜状態とされる。これにより、眼鏡装用時のリムの前傾角を再現した眼鏡フレームのリムの形状を得ることができる。
なお、リム保持ユニット500Aは、リムの前傾角を変更可能に、左右リムを保持する機構であればよい。例えば、左右リムの左右方向を保持する構成でもよい。
また、フレーム保持ユニット500は、テンプル保持ユニット600Aを設けなくても、リム保持ユニット500Aで左右リムの前傾角を変更可能に、左右リムを保持してもよい。例えば、第2スライダー505に左右リムの下部の前後方向の位置を規制するリム位置決めユニット(規制ユニット)580を設けるとともに、第1スライダー503にも左右リムの上部の前後方向の位置を規制するリム位置決めユニット(規制ユニット)581を設ける。また、リム位置決めユニット580及び581の一方を前後方向に調整するための前後調整ユニット595を設ける。他方のリム位置決めユニットは、測定ユニット100の測定子110をリムに挿入するために、リムの一部を前後方向の一定位置で保持する。例えば、リムの上部を規制するリム位置決めユニット581側を前後移動可能に構成し、前後調整ユニット595によってリムの上部を前後移動させることで左右リムの前傾角を変更可能に、左右リムを保持できる。
また、本開示の眼鏡枠形状測定装置(1B)は、眼鏡フレーム(例えば、テンプル)の傾斜角を測定可能な傾斜検知ユニット700を利用してもよい。傾斜検知ユニット700は、例えば、傾斜センサ710を備えると良い。例えば、眼鏡枠形状測定装置の制御ユニット50は、眼鏡フレームを装用者が装用したときの眼鏡フレームについて傾斜検知ユニット700によって検知された第1傾斜角を取得し、また、フレーム保持ユニット500で保持された眼鏡フレームについて傾斜検知ユニット700によって検知された第2傾斜角を取得するように構成される。なお、傾斜検知ユニット700は、傾斜センサ710を眼鏡フレームのテンプルに着脱自在にと取り付けるための取付け機構720を備えているとよい。
また、演算ユニットの例である制御ユニット(プロセッサ)50は、取得された第1傾斜角及び第2傾斜角に基づき、測定ユニット100で測定された測定データを眼鏡装用基準での測定データに補正する演算を行う。例えば、制御ユニット50は、第1傾斜角と第2傾斜角との差であるズレ角を求め、求めたズレ角に基づき、測定データを眼鏡装用基準のデータに補正する演算を行う。これにより、眼鏡装用時のリムの前傾角を再現した眼鏡フレームのリムの形状を得ることができる。
<第1実施例>
以下、典型的な実施例の一つを図面に基づいて説明する。図1〜図3は、実施例の眼鏡枠形状測定装置1の概略構成図である。図1は眼鏡枠形状測定装置1を右斜め上から見た斜視図である。図2は眼鏡枠形状測定装置1を右方向から見た側面図であり、図3は眼鏡枠形状測定装置1の上面図である。
眼鏡枠形状測定装置1は、眼鏡フレームFを保持するためのフレーム保持ユニット500を有する。眼鏡フレームFは左リムFL、右リムFR、左テンプルFTL、右テンプルFTRを有する。また、眼鏡枠形状測定装置1は、本体カバー12の内部に配置された測定ユニット100を有する。測定ユニット100は、フレーム保持ユニット500によって保持されたフレームFのリム(FL、FR)の輪郭をトレースしてリムの三次元形状を測定するために使用される。
フレーム保持ユニット500の構成を図1−図6に基づいて説明する。フレーム保持ユニット500は、左右リム(FL、FR)を保持するためのリム保持ユニット500Aと、眼鏡フレームFの左右のテンプル(FTL、FTR)を保持するテンプル保持ユニット600Aと、を備える。
リム保持ユニット500Aは、左右リムにおける少なくとも一部の箇所を一定位置で保持し、左右リムの前傾角を変化可能に保持する構成を有する。例えば、リム保持ユニット500Aは、左右のリム(FL、FR)を眼鏡フレーム装用時の上下方向から挟み込んで保持するために、上下方向(Y方向)に移動される第1スライダー503及び第2スライダー505と、第1スライダー503及び第2スライダー505を上下方向に移動可能にガイドするガイド機構508と、を備える。例えば、ガイド機構508は、横方向である左右方向(X方向)の中央部に配置されている。
図1の実施例では、リム保持ユニット500Aは、装用者が眼鏡フレームFを装着する場合と同じく、眼鏡フレームFを水平方向に保持するために、鉛直方向から左右リム(FL、FR)の上下方向を挟み込むように、第1スライダー503が上側に配置され、第2スライダー505が下側に配置されている。しかし、フレーム保持ユニット500は、垂直方向に限られず、水平方向又は前後に傾斜した方向から左右リム(FL、FR)を挟み込む構成であっても良い。
図1の実施例においては、第1スライダー503の下面503Baが左右リムの上部(又は下部)に当接する第1当接部となる。下面503Baは第2スライダー505に対向する側である。なお、実施例の第1スライダー503はカバー503aを有し、下面503Baはカバー503aに形成されている。また、第2スライダー505の上面505Uaは左右リムの下部(又は上部)に当接する第2当接部となる。上面505Uaは第1スライダー503に対向する側である。なお、実施例の第2スライダー505はカバー505aを有し、上面505Uaはカバー505aに形成されている。第1スライダー503及び第2スライダー505に当接される眼鏡フレームFの左右リム(FL、FR)の上下は逆であっても良い。
図4は、カバー503a及び505aを取り除いた状態のリム保持ユニット500Aの正面図である。図5は、図4のリム保持ユニット500Aを右から見た側面図である。なお、図2−図5において、装置1を見たときの左右方向をX方向とし、上下方向(縦方向)をY方向とし、前後方向をZ方向として図示する。
図4−図5において、固定ベース520上には、第2スライダー505に含まれるスライド板550が上下方向(Y方向)に移動可能に保持されている。スライド板550の下には2本のシャフト553及び555が固定されている。シャフト553は、固定ベース520の固定されたブロック522によって上下方向に移動可能に支持されている。また、シャフト555は、固定ベース520に取り付けられた2つのローラ524によって上下方向に移動可能に支持されている。これらシャフト553、シャフト555、固定ベース520、ブロック522、ローラ524等によって第2スライダー505を上下方向に支持する支持機構552が構成される。
また、第1スライダー503を構成するスライド板560が支柱部材510の上部に固定されている。支柱部材510は、固定ベース520及びブロック522等によって上下方向に移動可能に保持されている。実施例では支柱部材510は第1スライダー503を上下方向に移動可能にガイドするガイド機構を兼ねている。支柱部材510の下方に取り付け板562が取り付けられている。取り付け板562の下方に、第1ローラ564が取り付けられている。また、ブロック522の下方には、前後方向(Z方向)に延びるシャフト525を中心にして回転可能な円弧部材526が取り付けられている。円弧部材526は左右方向に延びる第1アーム526a及び第2アーム526bを有する。第1アーム526aの上面に第1ローラ564が載っている。また、スライド板550に固定されたシャフト555の下端の前側には、第2ローラ557が取り付けられている。そして、円弧部材526の第アーム526bの上面に第2ローラ557が載っている。これらによって、第1スライダー503及び第2スライダー505の互いの間隔が広がる方向及び互いの間隔が狭くなる方向に、第1スライダー503及び第2スライダー505が連動して移動される連動機構530が構成される。すなわち、スライド板550(第2スライダー505)が上昇した状態では、円弧部材526の第1アーム526aが下方に下がるため、第1ローラ564も下がる。これにより、スライド板560(第1スライダー503)が下方に下がり、第1スライダー503及び第2スライダー505の互いの間隔が狭められる(閉じられる)。そして、スライド板560(第1スライダー503)が上方向に移動されると、第1ローラ564が上昇することによって、円弧部材526の第1アーム526aも上昇可能になると共に、円弧部材526の第2アーム526bが下降可能にされる。そして、スライド板550、シャフト555及び第2ローラ5557が自重によって下降される。これによって第1スライダー503と第2スライダー505との間隔が広げられる(開かれる)。
スライド板560(第1スライダー503)の上部には、回転ノブ570が設けられている。回転ノブ570には上下方向(Y方向)に延びる回転シャフト572が取り付けられている。回転シャフト572は、第1スライダー503及び第2スライダー505の左右方向の中央部に配置されている。回転シャフト572は、支柱部材510と共に上下方向に移動可能に、且つ回転可能に、スライド板550、スライド板560及び固定ベース520に保持されている。回転ノブ570及び回転シャフト572は、左右リム(FL、FR)を前ピン及び後ピンによってクランプするために使用される。
図6は、スライド板550を上から見た図であり、リム(FR、RL)を、前ピン及び後ピンによって前後方向からクランプするためのクランプ機構(580A,580B)を説明する図である。クランプ機構(580A,580B)は、左右リム(FL、FR)の上部及び下部の何れか一方の前後方向の位置を規制するリム位置決めユニット580の例である。
図6において、クランプ機構580Aは、左リムFLを前後方向からクランプするための一対の前ピン582a及び後ピン582bを有する。前ピン582aは、軸584aを中心に回転可能なアーム586aに取り付けられている。後ピン582bは、軸584bを中心に回転可能なアーム586bに取り付けられている。アーム586aの基部には軸584aを中心としたギヤ588aが形成されている。同様に、アーム586bの基部にも軸584bを中心としたギヤ588bが形成されている。ギヤ588bはギヤ588aに噛み合わされている。このギヤの噛み合いにより、アーム586bが軸584bを中心に回転されると、これに連動してアーム586aも軸584aを中心に回転される。すなわち、前ピン582aと後ピン582bが連動して開閉される。アーム586aとアーム586bとの間には圧縮バネ589が配置されている。圧縮バネ589によってアーム586aとアーム586bは、開く方向に付勢力が与えられている。
図6において、右側のクランプ機構580Bは、上記のクランプ機構580Aと左右対称であるので、各部材には同符号を付し、その説明は省略する。
クランプ機構580Aのアーム586bにワイヤ592aが取り付けられている。ワイヤ592aの一端がガイド部材を介して左右中央の半リング部材594に接続されている。半リング部材594の内径は、回転シャフト572の径に噛み合う大きさで形成されている。回転シャフト572には円形部材574が固定されている。半リング部材594は、円形部材574にピン576によって連結されている。図6において、回転シャフト572が時計の回転方向に回転されると、円形部材574が回転シャフト572と一体的に回転され、半リング部材594の内径が回転シャフト572の径に噛み合う位置まで半リング部材594が移動される。半リング部材594の移動により、ワイヤ592aが引っ張られる。これにより、クランプ機構580Aの前ピン582a及び後ピン582bが閉じる方向に移動される。回転シャフト572が反時計回りに回転されると、半リング部材594は図6の状態に戻される。圧縮バネ589によって、前ピン582a及び後ピン582bの間隔が広げられる。
クランプ機構580Bのアーム586bにもワイヤ592aが接続され、ワイヤ592aの一端は半リング部材594に接続されている。このため、回転シャフト572の回転により、クランプ機構580Bの前ピン582a及び後ピン582bも、クランプ機構580Aと同様に開閉される。
以上のようなリム位置決めユニット580の例であるクランプ機構580A及び580Bによって、例えば、左右リム(FL、FR)の下部(下端)が前ピン582a及び後ピン582bによって保持され、リムの前後方向の位置が規制される。
一方、図1の実施例では、左右リムFL、FRの上部が当接する第1スライダー503の下部には、左右リムの上部の前後方向の位置を規制するための規制部材(前ピン582a、後ピン582b)は非配置となっている。左右リムFL、FRの上部には、カバー503aの下面503Baが当接し、左右リムFL、FRの上下方向の移動位置を規制するが、前後方向の位置を自在に移動可能に保持している。これにより、リム保持ユニット500Aは、後述するテンプル保持ユニット600Aとの協同によって左右リムの前傾角を自由に変更可能に、左右リムFL、FRを保持できる。
なお、第1スライダー503及び第2スライダー505によって左右リムFL、FRを保持する保持力は、実施例では第1スライダー503側の加重の重力を利用しているが、付勢力付与機構(例えば、バネ)を使用してもよい。左右リムFL、FRを保持する保持力は、例えば、操作者の手の力を受けたときには第1スライダー503及び第2スライダー505は開く方向に移動可能であるが、測定ユニット100による測定時に測定子110に掛けられる測定圧では移動不能とされるように設定されている。これにより、左右リムを第1スライダー503及び第2スライダー505によって保持させるときには、左右リムの前傾角が変更可能にされ、測定時には左右リムFL、FRが安定して保持される。
なお、実施例では、操作者が回転ノブ570を回転することにより、リム位置決めユニット580の例であるクランプ機構580A、580Bを駆動するものとしたが、その駆動手段としてはモータを使用することでも良い。また、リム位置決めユニット580は実施例に限られず、周知の機構が使用されても良い。例えば、リム位置決めユニット580としては、一対の前ピン582a及び後ピン582bに代えて、V字状の溝を持つ規制部材をそれぞれ第2スライダー505の上面に設ける構成でも良い。
次に、テンプル保持ユニット600Aの構成を説明する。例えば、テンプル保持ユニット600Aは、眼鏡の左テンプルFTLを支持するためのクランプ機構610Lと、右テンプルFTRを支持するためのクランプ機構610Rと、を有する。クランプ機構610L及び610Rは、例えば、眼鏡フレームFの後方側(装用者の眼が位置する側)で、取付ユニット602に配置されている。取付ユニット602は、本体カバー12に対して上下移動可能に配置されている。例えば、取付ユニット602は、カバー12の上面に位置する上板602aと、左右それぞれの側面に延びる側面板602L及び602Rを有する。側面板602L及び602Rにクランプ機構610L及び610Rがそれぞれ配置されている。例えば、クランプ機構610Lは、テンプルの耳かけ部分を上下方向から挟み込んで保持するために、テンプルの耳かけ部に当接するテンプル当接部材の例である第1円柱部材612及び第2円柱部材614を有する。第2円柱部材614は、図1及び図2において、支点614aを中心に移動可能に側面板602Lに取り付けられている。支点614aを中心に第2円柱部材614が回転されることにより、第1円柱部材612と第2円柱部材614との間にテンプルFTL,FTRの耳かけ部分が挟み込まれ、保持される。支点614aに図示を略すコイルバネが配置されており、テンプルFTL,FTRを挟み込む方向に第2円柱部材614が移動するような付勢力が与えられる。クランプ機構610Rも同様な構成とされている。
ここで、テンプル保持ユニット600Aは、リム保持ユニット500Aによって保持されるリムの前傾角を所期する状態で規制するように眼鏡フレームの左右のテンプルを保持するために構成されている。すなわち、テンプル保持ユニット600Aは、リム保持ユニット500Aによって保持されるリムの前傾角が眼鏡フレームFを装用者が装用したときの傾斜を実現するための構成を有する。
例えば、テンプル保持ユニット600Aは、リム保持ユニット500Aに保持されるリムの上下位置に対して一定の位置関係でテンプルを保持するように構成されているかもしれない。一つの例では、クランプ機構610L及び610Rがテンプルを保持する位置は、リム保持ユニット500Aに保持されるリムの上下位置に対して、標準的な眼鏡フレームのテンプルの延びる方向が水平方向となるように設定されている。例えば、第1スライダー503及び第2スライダー505によってリム(FL、FR)の上下位置が保持されたときに、第1スライダー503の当接部と第2スライダー505の当接部との中心で水平に位置する中心軸CNに対して、第1円柱部材612の当接点P1が一定距離Thに位置するように、クランプ機構610L、610Rが配置されている。一般的な眼鏡フレームでは、装用時におけるリムの上部及び下部の中心に対して、テンプルの耳かけ部分の当接点は5mmほど上に位置する。このため、クランプ機構610L及び610Rの標準位置における距離Thは5mmに設定されている。また、リム保持ユニット500Aによって保持されるリム位置(例えば、第2スライダー505の規制部材)に対する当接点P1までの距離については、標準的なテンプルFTLの耳かけ部分に相当する距離となるようにクランプ機構610L、610Rが配置されているかもしれない。
なお、テンプル(FTL、FTR)の耳かけ部分の位置は、フレームによって異なる場合があるかもしれない。この対応のために、テンプル保持ユニット600Aは、リムの上下位置に対してテンプルFTL,FTRの上下位置(テンプルの傾斜角の場合も含む)を調整するための調整機構620を有する。例えば、調整機構620は、本体カバー12に対して取付ユニット602を上下方向に移動するために、操作者が操作する回転ノブ622と、回転ノブ622の下に固定されたネジ付き支柱624と、を備える。取付ユニット602の上板602aに支柱624に形成されたネジに噛み合うネジ穴が形成されている。支柱624の下端は本体カバー12に上面に当接する。回転ノブ622の正回転と逆回転が切換えられることにより、支柱624のネジの回転によってテンプル保持ユニット600Aのクランプ機構610L及び610Rの上方向への移動と下方向への移動とが切換えられる。これにより、テンプルFTL,FTRを保持するときの上下位置(又はテンプルの傾斜角)が調整可能にされている。
ここで、調整機構620は、種々の眼鏡に応じて上下位置を調整した場合にも、標準位置に復帰させる復帰機構626が備えられている。例えば、上板602aの上面にマーク626bが付されており、回転ノブ622にもマーク622aが付されている。マーク626bに対して回転ノブ622のマーク622aを一致させるように回転ノブ622を回転させることで、クランプ機構610L及び610Rが標準の上下位置に移動される。
なお、調整機構620は、操作者の手動操作に限られず、モータ等の電動機構でも良い。調整機構620の構成には周知の各種のものが適用できる。また、電動機構の場合、復帰機構626はモータの駆動によって自動調整する機構を採用することもできる。
次に、測定ユニット100の構成例を、図7〜図9を基に説明する。図7は、図1に対して本体カバー12及びベースカバー11を取り除いた状態の測定ユニット100を説明する概略構成図である。図8は、図7の測定ユニット100を上から見た図である。
図7において、測定ユニット100の主要な機構は、本体ベース10に配置され、フレーム保持ユニット500によって保持された眼鏡フレームFの後側(装用者の眼が位置する側)に位置する。
測定ユニット100は、測定子110と、測定子軸112と、測定子移動ユニット108と、回転ユニット200と、前後移動ユニット300と、を備える。測定子110は眼鏡フレームFのリム(FR、FL)の溝(図示を略す)に挿入される。測定子110は測定子軸112の先端に取り付けられている。測定子移動ユニット108は、測定子110を径方向に移動させるために構成されている。測定子移動ユニット108によって、測定子110は回転軸Z1の付近から離れる方向及び回転軸Z1の付近に近づく方向に移動される。回転ユニット200は、回転軸Z1を中心に測定子移動ユニット108を回転するために構成されている。例えば、回転軸Z1は、測定子110の先端110aがリムの輪郭に沿ってリムをトレースするように、リムの輪郭内を通るように設定されている。回転ユニット200は、フレーム保持ユニット500に保持されたリム(FR、FL)の後側に配置されている。前後移動ユニット300は、フレームFの前後方向におけるリムの変化に沿って測定子110がリムをトレースするように、前前後方向における測定子110の位置を変化させるために構成されている。
実施例の測定子移動ユニット108は、回転軸Z1に対して非平行に設定された回旋軸A1を中心にして測定子軸112をリムの径方向に回旋させるための回旋ユニット120を備える。測定子移動ユニット108としては、回旋ユニット120の構成に限られず、回転軸Z1に垂直な平面(測定基準面S1)に平行に直線移動する構成であっても良い。
また、測定ユニット100は、フレーム保持ユニット500に保持されたフレームFの右リムFRを測定するための第1測定位置と、他方の左リムFLを測定するための第2測定位置と、の間で回転ユニット200等を移動する左右移動ユニット400を備える。左右移動ユニット400は、モータ
例えば、左右移動ユニット400は、モータ404を備え、回転ユニット200等が配置された円弧動ベース402を、モータ404の駆動によって軸C1(縦軸)を中心に回転させる。軸C1(縦軸)は、回転ユニット200よりさらに後方で、Y方向に延びている。例えば、軸C1は、フレーム保持ユニット500の横方向の中心を通って前後方向に延びる中心線L1の位置に設定されている。これにより、回転ユニット200は軸C1を中心にして左右方向に移動され、回転軸Z1の測定位置が右リムFRを測定するための第1測定位置と、他方の左リムFLを測定するための第2測定位置と、の間で切換えられる。左右移動ユニット400は、左右方向に平行(直線的)に回転ユニット200(ベース402)を移動することでも良い。
前後移動ユニット300は、回転ユニット200が搭載される前後動ベース310と、前後動ベース310を回転軸Z1の方向に移動可能にガイドするガイド機構304と、モータ306と、等を備える。回転ユニット200(前後動ベース310)は、ガイド機構304にガイドされ、モータ306の駆動によって測定位置と退避位置とに移動される。また、前後移動ユニット300は、回転軸Z1方向における前後動ベース310の移動位置を検知するためのセンサ314を備える。センサ314の検知情報は、回転軸Z1方向における測定子110の移動位置の検知に利用される。
図9は、回転ユニット200及び回旋ユニット120を側面から見た図である。図7−図9において、前後動ベース310上に保持ブロック202が固定されている。保持ブロック202に回転ベース204が回転軸Z1を中心に回転可能に保持されている。回転ベース204は、保持ブロック202に固定されたモータ206によって、ギヤ等から構成される回転伝達機構208を介して回転軸Z1の回りに回転される。
回転ベース204に回旋ユニット120が搭載されている。回転ベース204に固定ブロック122が配置され、固定ブロック122に測定子軸支持部材124が回旋軸A1を中心にして回転可能に保持されている。測定子軸支持部材124に測定子軸112の基部が取り付けられている。測定子軸112が回旋軸A1を中心にして回旋されることにより、測定子110は回転軸Z1から円弧運動として径方向に移動される。測定子軸支持部材124は、測定子110の先端が回転軸Z1から離れる方向に回転されるように、測定圧付与手段の一例であるバネ(付勢部材)126によって付勢力が与えられる構成となっている。
ここで、回旋軸A1は、回転軸Z1に対して或る角度β(図8参照)で傾斜して設定されている。例えば、角度βは45度である。しかし、回転軸Z1に対して回転軸Z1に直交していても良い。回旋軸A1が回転軸Z1に対して傾斜していることにより、測定子110の先端が回転軸Z1から離れるに従って、測定基準面S1(回転軸Z1に直交する平面)に対する測定子110の先端方向の傾斜角が大きくなる。これにより、高カーブフレームのリムから測定子110が外れ難くなり、高カーブフレームのリムの輪郭をスムーズにトレースできる。
なお、測定基準面S1の基準位置は、フレーム保持ユニット500の所定位置(例えば、基準平面S1が第2スライダー505側の前ピン582a及び582bの中央を通る位置)とされる。
測定子軸支持部材124にセンサ板132が取り付けられている。また、固定ブロック122には、動径方向における測定子110の位置を検知するための検知ユニットの例であるセンサ130が取り付けられている。センサ130はセンサ板132に形成された指標を検知することで、測定子軸112の回旋状態を検知さし、その検知結果を基に測定子110の位置を検知する。また、バネ126の付勢力に抗して測定子軸112の測定子110が回転軸Z1の付近に移動させる移動機構140が、前後動ベース310に設けられている。
なお、測定ユニット100の構成は、例えば、特開平2011−12899号公報、特開平2000−304530号公報、等の周知のものが使用でき、その構成は特に問わない。
図10は、眼鏡枠形状測定装置1の電機系の構成図である。図10において、例えば、制御ユニット50は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM等を備える。制御ユニット50は、装置全体の制御を司る。また、制御ユニット50は、各種の演算(例えば、リムの三次元形状の演算)を行う演算ユニットを兼ねていてもよい。制御部ユニット50には、装置全体の動作を制御するための各種プログラム、眼鏡枠形状を取得するための取得プログラム、等が記憶されている。また、制御ユニット50には、測定結果等を記憶するメモリ52、測定開始信号を入力するスイッチ61、タッチ機能のディスプレイ62等を有する入力ユニット60が接続されている。
次に、図1〜図10の構成を有する眼鏡枠形状測定装置1の測定動作を説明する。操作者は、眼鏡フレームFをフレーム保持ユニット500に保持させる。操作者が回転ノブ570と共に第1スライダー503を持ち上げると、連動機構530によって第2スライダー505が下方に下がり、フレームFのリム(FL、FR)を挿入するための空間が開く。操作者はフレームFのテンプルFTL,FTRが回転ユニット200側に向くように、左右リム(FL、FR)をリム保持ユニット500Aの例である第1スライダー503と第2スライダー505によって保持させる。また、操作者はテンプル(FTL、FTR)をテンプル保持ユニット600Aの例であるクランプ機構610L及び610Rによって保持させる。操作者は、左テンプルFTLの耳かけ部分を、クランプ機構610Lの第1円柱部材612と第2円柱部材614との間に挟み込む。同様に、右テンプルFTRの耳かけ部分を、クランプ機構610Rの第1円柱部材612と第2円柱部材614との間に挟み込む。そして、操作者が回転ノブ570を回転させることにより、リム位置決めユニット580が作動し、クランプ機構580Aの前ピン582a及び後ピン582bによって左右リム(FL、FR)の下部(下端)が所定の測定位置に位置決めされる。すなわち、左右リム(FL、FR)の下部の前後方向の位置が規制される。一方、左右リム(FL、FR)の上部は、第1スライダー503によって上下方向の位置が規制されるが、前後方向の位置は自在に保持される。
ここで、テンプル保持ユニット600AがテンプルFTL、FTRを保持する上下方向の標準位置は、リム保持ユニット500Aによって保持されるリム(FL、FR)の上下位置に対して一定の位置関係にある。すなわち、標準的な装用者が標準的な眼鏡フレームFを装用したときのリムの傾斜角を実現するように、テンプルFTL,FTRの耳かけ部を保持する上下位置が定められている。これにより、リム保持ユニット500Aによって保持されたリムFL、FRの前傾角は、眼鏡フレームFを装用者が装用したときの傾斜状態とされる。
なお、装用者が選択したフレームFを構成するテンプルFTL,FTRの耳かけ部分の上下位置が標準のものと異なる場合は、調整機構620によってテンプルFTL,FTRの上下位置(傾斜)を調整することにより、装用者がフレームFを装用したときの状態を再現することができる。例えば、予め装用者がフレームFを装用したときの側面の状態をカメラで撮影した後、操作者が撮影された画像をディスプレイ等で見ながら調整機構620を操作して左右のテンプルFTL,FTRが眼鏡装用時の上下位置となるように調整する。これにより、眼鏡装用時のリム(FL、FR)の前傾角を再現した状態でフレームFを保持できる。
また、クランプ機構610L及び610Rの上下位置を標準位置に戻したいときは、復帰機構626の例である板602aの上面のマーク626bと回転ノブ622のマーク622aと合わせるようにクランプ機構610L及び610Rを移動させれば良い。
なお、フレーム保持ユニット500によって保持させる眼鏡フレームFの上下は逆であっても良い。この場合、実施例に対して、クランプ機構610L及び610Rの標準位置も上下を逆にしておけば良い。
また、リム位置決めユニット580はリムの上部の前後方向位置を規制し、リム保持ユニット500Aはリムの下部を前後方向に自在に移動可能に保持する構成であっても良い。
眼鏡装用時の眼鏡フレームFの前傾角を再現した状態で眼鏡フレームFが保持させることができたら、測定ユニット100によるリムの形状測定の段階に移行する。スイッチ61によって測定開始信号が入力されると、測定(眼鏡枠形状取得プログラム)が実行される。例えば、右リムから測定が開始される。
制御ユニット50は、前後移動ユニット300の駆動を制御し、退避位置に置かれていた回転ユニット200及び測定子110等を測定開始の初期位置まで移動させる。測定開始の初期位置は、測定子110が右リムの下端側の前ピン582aと後ピン582bとの中央位置に設定されている。制御ユニット50は、移動機構140を制御して測定子軸112の回旋の固定を解除し、バネ126の付勢力によって測定子110の先端をリムの溝に挿入させる。その後、制御ユニット50は、リムをトレースするために、回転ユニット200のモータ206を駆動し、回転ベース204を回転軸Z1の回りに回転させる。回転ベース204の回転により回旋ユニット120と共に測定子軸112及び測定子110が回転軸Z1の回りに回転される。これによって測定子110がリムの周方向に移動される。すなわち、リムの輪郭が測定子110によってトレースされる。トレース時の測定子軸112の回旋状態はセンサ130によって検知される。また、回転軸Z1方向におけるリムの変化に追従して測定子110が前後方向(回転軸Z1方向)に移動される。この前後移動はセンサ314によって検知される。制御ユニット50は、センサ130の検知信号に基づき、回転ベース204の回転角毎に基準位置(回転軸Z1の位置)からのリムの動径長rnを得る。回転ベース204の或る回転角(θn)における動径長(rn)は、測定子軸112の回旋角と、回旋中心から測定子110の先端までの距離(これは既知である)と、等に基づいて数学的に演算される。また、制御ユニット50はセンサ314の検知信号に基づいて回転ベースの回転角(θn)毎に、回転軸Z1方向の右リムFRの位置(zn)を得る。そして、回転ベース204を1回転させることにより、リムの全周の三次元形状データ(rn,zn,θn)(n=1,2,3、・・・,N)が得られる。
右リムFRの測定が終了すると、制御ユニット50は、左右移動ユニット400のモータ404の駆動を制御し、左リムFLの測定用の所定位置に円弧動ベース402及び回転ユニット200を移動する。その後、制御ユニット50は、測定ユニット200の各モータを制御し、右リムFRの測定と同様に左リムの全周の三次元形状データを得る。右リムFR及び左リムFLの測定結果(トレース結果)は、メモリ52に記憶される。
以上のようにして、眼鏡装用時のリムの前傾角を再現した状態のリムの形状が得られる。また、眼鏡装用状態のリムの三次元形状が得られることにより、眼鏡装用状態のリムの前傾角を得ることもできる。リムの前傾角が得られることにより、リムの前傾角を配慮したレンズ加工のための基礎データを得ることができる。また、眼鏡装用状態のリムの三次元形状を基に、より正確なリムの反り角を得ることができ、これを利用してより正確なレンズ加工のための基礎データを得ることができる。
制御ユニット50は、眼鏡装用状態のリムの三次元形状を基に、リムの前傾角AL1を求める。図11はリムの前傾角及び反り角を求める方法を説明する図である。図11(a)は、測定された左リムの三次元形状を側面から見たときの図である。図11(b)は、測定された左右リムの三次元形状の例を示す斜視図である。
例えば、図11に例示するように、眼鏡装用状態の正面方向D1から見たリムFLの玉型形状FL2Dについて、左右方向(横方向)の幾何中心を通る縦軸YL1を求める。次に、リムの三次元形状FL3Dについて、縦軸YL1の方向における最上端の点P1と、最下端の点P2と、を求める。リムの前傾角AL1は、点P1と点P2とを結んだ直線CY1と、縦軸YL1と、が成す角として得ることができる。
また、制御ユニット50は、眼鏡装用状態のリムの三次元形状FL3Dを基にリムの反り角BL1を求める。例えば、眼鏡装用状態の正面から見たリムFLの玉型形状FL2Dについて、縦軸YL1における幾何中心(点P1と点P2の中心)を通る横軸XL1を求める。次に、三次元形状FL3Dについて、横軸XL1の方向における左端の点P3と右端の点P4とを求める。そして、リムの反り角BL1は、点P3と点P4とを結んだ直線CX1と、横軸XL1とが成す角として得ることができる。
リムの前傾角AL1及び反り角BL1が得られれば、これを二次元玉型形状の補正に用いることができる。例えば、直線CY1に平行で、且つ直線CX1に平行な平面CXY1を求める。そして平面CXY1にリムの三次元形状FL3Dを投影したときの二次元形状を加工に用いる二次元玉型形状とする。
ここで、リムに保持させる眼鏡レンズが乱視軸を持つとき、リムの前傾角AL1を考慮することなく、通常得られる二次元玉型形状に従って加工されたレンズをリムに枠入れすると、前傾角AL1の影響によって二次元玉型形状に適用する乱視軸に回転ズレが生じる場合がある。この問題は、特に、リムの反り角が大きく、リムの前傾角も大きくなりがちな高カーブフレームの場合に大きくなる。この対応として、例えば、眼鏡装用状態の正面方向D1から見たときの横軸XL1に対する直線CX1の回転ずれ角ΔB(図示を略す)を求め、この回転ずれ角ΔBを基に二次元玉型形状を平面CXY1に垂直な軸を中心に回転させる。これにより、より正確な二次元玉型形状を得ることができる。右リムFRの形状についても同様な方法で得ることができる。
また、取得したリムの前傾角AL1及び反り角BL1を用いることにより、眼鏡フレームFを装用する装用者のアイポイント位置(二次元玉型形状に対するレンズの光学中心の位置関係)を、より正確に決定することもできる。例えば、装用者の瞳孔間距離PDの位置を、平面CXY1上の二次元玉型形状に正面方向D1から投影した位置として求めることにより、二次元玉型形状に対するアイポイント位置を得ることができる。
以上のように眼鏡装用時の眼鏡フレーム(リム)の前傾角を再現したリムの形状を得ることにより、より適切なリムの二次元玉型等を取得でき、眼鏡レンズの周縁加工のためのより適切なデータを提供できる。
第1実施例のフレーム保持ユニット500は、上記に限られず種々の変容が可能である。例えば、テンプル保持ユニット600Aを設けなくても、リム保持ユニット500Aで左右リムの前傾角を変更可能に、左右リムを保持してもよい。図12は、リフレーム保持ユニット500Aの変容例を示す図である。図12において、第2スライダー505に左右リムの下部の前後方向の位置を規制するリム位置決めユニット(規制ユニット)580を設けるとともに、第1スライダー503にも左右リムの上部の前後方向の位置を規制するリム位置決めユニット(規制ユニット)581を設ける。リム位置決めユニット581の構成は、リム位置決めユニット580と同じく、左右リムのそれぞれを前後方向からクランプする一対の前ピン582a及び後ピン582bを有するクランプ機構580A、580Bによって構成できる。リム位置決めユニット581のクランプ機構は、第2スライダー505側のクランプ機構580A、580Bを上下逆に配置することで構成できる。リム位置決めユニット581は、第1スライダー503のスライド板560に配置されている。
そして、第1スライダー503にはリム位置決めユニット581を前後方向へ移動するための前後調整機構595が設けられている。例えば、前後調整機構595は、回転ノブ595aと、回転ノブ595aに固定されたネジ部材595bと、ネジ部材595bのネジに噛み合うナット部材595cであって、スライド板560に固定されたナット部材595cと、を備える。スライド板560は周知のスライド機構によって前後移動可能に第1スライダー503に取り付けられている。
操作者は、左右リムFL、FRの下部を第2スライダー505側の前ピン582a及び後ピン582bによって保持させ、左右リムFL、FRの上部を第1スライダー503側の前ピン582a及び後ピン582bによって保持させる。その後、前後調整機構595によって左右リムFL、FRの上部を前後方向に移動すると、左右リムの前傾角が変更される。例えば、先の例と同様に、予め装用者がフレームFを装用したときの側面の状態撮影画像を見ながらテンプル(FTL、FTR)の延びる方向が眼鏡装用時と同じになるように左右リムFL、FRの上部を前後方向に移動してリムの前傾角を調整する。これにより、眼鏡装用時のリムの前傾角を再現した状態に調整できる。
なお、前後調整機構595は左右リムの上部及び下部の一方を調整できれば良く、上記とは逆に、左右リムの下部を前後移動することでもよい。また、左右リムの位置決めユニットは、リムの上部及び下部に限られず、リムの一部を前後方向の一定位置で保持できればよく、例えば、リム保持ユニット500Aはリムの前傾角を変更可能に左右リムの横方向を保持する構成でもよい。
<第2実施例>
眼鏡装用時の眼鏡フレームFの前傾角を再現したリムの形状を得る眼鏡枠形状測定装置及び眼鏡枠形状取得方法の第2実施例を説明する。眼鏡枠形状測定装置の制御ユニット50は、眼鏡枠形状取得プログラムの実行により、装用者が眼鏡フレームを装用した状態における眼鏡フレームについての第1傾斜状態を取得し、また、リムの測定時における眼鏡フレームについての第2傾斜状態を取得し、取得された第1傾斜状態及び第2傾斜状態の取得結果に基づき、第2傾斜状態で測定されたリムの三次元形状の測定結果を補正する。第1傾斜状態及び第2傾斜状態は、眼鏡フレームの傾斜状態を検知するための傾斜センサユニットを利用することによって取得される。
図13、図14は、傾斜センサユニットの構成を説明する図である。図13(a)は、傾斜センサユニット700の表面側を示す外観斜視図である。図13(b)は傾斜センサユニット700の裏面側を示す外観斜視図である。図14は、傾斜センサユニット700の電気系の構成図である。
図13(a)、(b)及び図14において、傾斜センサユニット700の内部には傾斜センサ710が配置されている。例えば、傾斜センサ710は小型のジャイロセンサであり、水平状態に対する傾斜角度を検知する。傾斜センサ710としては周知のものが使用できる。傾斜センサユニット700には表示器の例であるディスプレイ712、スイッチ部714が配置されている。ディスプレイ712及びスイッチ部714は、傾斜センサユニット700の筐体の表面側に配置されている。また、傾斜センサユニット700には、眼鏡フレームFのテンプルFTL,FTRに傾斜センサユニット700を取り付けるための取付け機構720が配置されている。例えば、取付け機構720は、弾性部材720aを有し、傾斜センサユニット700の筐体の裏面700bと弾性部材720aとの間に眼鏡フレームのテンプルFTL(FTR)を挟み込むように取り付け可能に構成されている。図13の例では弾性部材720aは2箇所に配置されている。
図14において、傾斜センサ710は、傾斜センサユニット700に配置された制御ユニット(CPU)705に接続されている。制御ユニット705は、傾斜センサユニット700、ディスプレイ712等の駆動を制御する。また、傾斜センサユニット700に傾斜センサ710の測定結果の信号を眼鏡枠形状測定装置1Bに送信するための送信器716が配置されている。例えば、送信器716は測定結果の信号を無線信号で、眼鏡枠形状測定装置1Bに送信する。送信器716は制御ユニット705によって制御される。なお、眼鏡枠形状測定装置1Bには、送信器716からの信号を受信する受信器64が配置されている。
傾斜センサユニット700と眼鏡枠形状測定装置1Bとの間の信号通信は、ケーブルであっても良い。また、送信器716及び受信器64はそれぞれが共に送信及び受信できる機能を有していても良い。この場合、眼鏡枠形状測定装置1Bからの信号によって制御ユニット705が傾斜センサユニット700等の制御を行うことができる。
図15は、第2実施例における眼鏡枠形状測定装置1Bを右方向から見た側面図である。眼鏡枠形状測定装置1Bは眼鏡フレームFを保持するためのフレーム保持ユニット500を有する。フレーム保持ユニット500は、左右リム(FL、FR)を保持するためのリム保持ユニット500Bを有するが、図1〜図3に示されたフレーム保持ユニット500に対して、テンプル保持ユニット600Aが省かれた構成である。リム保持ユニット500Bは、図1、図2のリム保持ユニット500Aに対して、第1スライダー503の下面503Ba側にも、第2スライダー505と同じく、左右リムの上部の前後方向の位置を規制するリム位置決めユニット581を設けたものである。例えば、リム位置決めユニット581は、先の例と同じく、左右リムの上部を前ピン582a及び後ピン582bによって前後方向からクランプするためのクランプ機構580A,580Bを有し、第2スライダー505側のクランプ機構580A、580Bを上下逆に配置した構成である。
例えば、第1スライダー503に設けられたリム位置決めユニット581と、第2スライダー505に設けられたリム位置決めユニット580は、従来例と同じく、左右リムの上部及び下部を所定の測定基準面に位置させるように、左右リムを保持するように構成されている。これにより左右リムを安定して保持できる。
なお、眼鏡枠形状測定装置1Bにおいて、図1の眼鏡枠形状測定装置1と相違する点は、第1スライダー503にリム位置決めユニット581を設けたこと、テンプル保持ユニット600Aを省いたことであり、他の構成は、先の実施例と基本的に同じであるので、各要素には同一符号を付し、同一要素の説明は省略する。眼鏡枠形状測定装置1Bは、傾斜センサユニット700を備えていていもよい。
なお、第2実施例では、眼鏡枠形状測定装置1Bのフレーム保持ユニット500及び測定ユニット100の構成は、例えば、特開平2011−12899号公報、特開平2000−304530号公報、等の周知のものが使用でき、これらの構成は特に問わない。
次に、傾斜センサユニット700を使用した眼鏡枠形状測定装置1Bの測定動作を説明する。
まず、操作者は、装用者が装用する眼鏡フレームのテンプルFTL(又はFTR)に傾斜センサユニット700を取り付ける。傾斜センサユニット700は取付け機構720によって眼鏡フレームのテンプルFTLに着脱自在に取り付け可能である。
次に、図16に示すように、傾斜センサユニット700が取り付けられた眼鏡フレームを装用者が装用する。このとき、装用者には頭部が正面方向を向いた通常の姿勢を取ってもらう。この状態で、傾斜センサユニット700のスイッチ部714のスイッチを操作することによって、傾斜センサ710に傾斜角を検知させる。例えば、傾斜センサ710は水平状態に対する傾斜角を検知し、スイッチ部714からの指令信号によって検知した傾斜角を保持する。
次に、操作者は装用者から眼鏡フレームを外し、スイッチ部714を操作して眼鏡枠形状測定装置1Bに傾斜センサ710が検知した傾斜角情報を送信させる。制御ユニット705は傾斜角情報を送信器716から無線通信で送信する。眼鏡枠形状測定装置1Bの制御ユニット50は、受信器64を介して装用状態における眼鏡フレーム(テンプル)の第1傾斜角情報を取得する。
なお、傾斜センサ710が検知した傾斜角情報は、ディスプレイ712に表示される。このため、制御ユニット50による傾斜角情報の取得は、操作者がディスプレイ712に表示される傾斜角を確認し、その傾斜角を入力ユニット60によって入力することも良い。
次に、操作者はスイッチ部714を操作して傾斜センサ710の検知結果をリセットさせた後、傾斜センサユニット700が取り付けられた眼鏡フレームを、図15に示すように、フレーム保持ユニット500(リム保持ユニット500B)に所定の手順で保持させる。左右リムの上部を第1スライダー503のリム位置決めユニット581によって保持させ、また、左右リムの下部を第2スライダー505のリム位置決めユニット580によって保持さることで、左右リムは所定の測定状態に位置決めされる。
左右リムが測定状態に保持できたら、スイッチ部714のスイッチを操作することによって、測定状態における眼鏡フレームの傾斜角を傾斜センサ710に検知させる。その後、操作者がスイッチ部714を操作して眼鏡枠形状測定装置1Bに検知した傾斜角情報を送信させる。これにより、制御ユニット50は測定状態における眼鏡フレーム(テンプル)の第2傾斜角情報を取得する。
また、操作者はスイッチ61によって測定開始信号を指令し、フレーム保持ユニット500に保持された左右リムを測定ユニット100によって測定させる。測定ユニット100の作動により、制御ユニット50は、先の例と同じく、左右のリムの三次元形状の測定結果を取得する。なお、測定状態における眼鏡フレーム(テンプル)の傾斜角の検知は、リムの形状の測定後であっても良く、順番は問わない。
制御ユニット50は、第1傾斜角情報、第2傾斜角情報及びリムの測定結果が得られると、第1傾斜角情報及び第2傾斜角情報に基づき、所定の演算方法によってリムの測定結果を補正する演算を行う。例えば、制御ユニット50は、眼鏡装用状態の第1傾斜角に対する測定時の第2傾斜角のズレ角を求める。そして、求めたズレ角を基にリムの測定データの3次元形状データを座標変換することによって、眼鏡装用状態を基準としたリムの三次元形状の補正データを求める。制御ユニット50は、この補正を左右リムについて行う。これにより、眼鏡装用状態のリムの前傾角を再現したリムの形状を得ることができる。
また、制御ユニット50は、取得された眼鏡装用状態のリムの三次元形状を基に、先の例と同じく、リムの前傾角AL1を求めることができる。また、制御ユニット50は、リムの三次元形状を基に、反り角BL1を求めることができる。
以上のように眼鏡装用時の眼鏡フレーム(リム)の前傾角を再現したリムの形状を得ることにより、より適切なリムの二次元玉型等を取得でき、眼鏡レンズの周縁加工のためのより適切なデータを提供できる。