JP6462424B2 - 田植機搭載型薬剤散布装置 - Google Patents

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本発明は、田植機に搭載され、田植え作業と並行して粒状の農薬を散布する田植機搭載型薬剤散布装置に関する。
しろかきを終えて水を導入した水田に除草を目的として散布される薬剤は、以前は田植えを行う数日前後に散布されるのが一般的であったが、近年では成分の改良がなされ、田植えと同時に散布することが可能になっている。
このような薬剤には粒状のものと液状のものとがある。粒状の薬剤を散布する装置は、田植機に装着され、薬剤の収納部から間欠的に粒状薬剤を流下させ、さらに流下させた薬剤の粒をモータによって回転駆動されるインペラによって田植機の後方に弾き飛ばすしくみになっている。このような粒状薬剤の散布装置を、田植えを行う田植機の走行中に作動させることで水田に薬剤を散布する。
特開2006-320340号公報
上記の粒状薬剤散布装置に具備されるインペラは、円板の上面に羽根部が形成された形状をしており、モータを回転させることによって一方向に回転し、収納部からパイプ部を通じて円板上に落下する薬剤の粒を羽根部によって弾き飛ばすようになっている。
ところで、インペラの羽根部に当る薬剤の粒の動きには当然ながら不規則さが伴うので、インペラの回転は一定でも羽根部に当る粒の角度は様々であり、羽根部に当って弾き飛ばされる粒の方向も不規則である。ところが、収納部から連続的に薬剤を供給し続けると、インペラによって弾き飛ばされる粒が飛散する領域内にはある傾向が現れる。つまり、インペラを上から見て時計回りに回転させる散布装置の場合、田植機の上から後方を見て左寄り、かつ散布装置からさほど遠くない領域に薬剤の粒が濃く散布され、右に寄るほど薄くなるように散布される。その原因は、インペラに弾かれても後方に飛ばず、散布装置の回転しない他の部分に当って飛散のための運動エネルギーを失った粒が、散布器のすぐ後方に落下してしまうためと分析される。
このような粒の濃淡の分布は、苗の植え付けのため水田内で田植機を往復走行させると、水田に粒の濃淡が交互に現れる縞模様になってしまう。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、薬剤の粒を、濃淡の分布の差をできるだけ少なくして一様に水田に散布することができる田植機搭載型薬剤散布装置を提供することを目的としている。
本発明に係る田植機搭載型薬剤散布装置は、田植え作業と並行して粒状の薬剤を散布する田植機搭載型薬剤散布装置であって、前記薬剤を収納する収納部と、前記収納部の下方に設置され、ほぼ鉛直な回転軸を中心として円周方向に回転可能であり、前記収納部から落下される前記薬剤の粒を自らの回転によって弾き飛ばすインペラと、前記インペラを前記回転軸を中心として回転駆動するモータとを備え、
前記インペラは前記回転軸を中心とする主円板と、前記主円板の上面に植設され、前記収納部から前記主円板の上面に落下される前記薬剤の粒を前記主円板の回転に伴って弾き飛ばす複数の羽根部と、前記主円板の上方に、前記主円板に対し中心を同じくするように配置され、前記主円板に固定される円環状の副円板とを備え、
前記副円板の外径は、前記主円板の外径よりも大きく、前記薬剤の粒は、前記収納部から前記主円板上に、前記副円板の内側を通じて供給されることを特徴とする。
本発明に係る田植機搭載型薬剤散布装置においては、インペラの羽根部に当る薬剤の粒の動きには当然ながら不規則さが伴うので、インペラの回転は一定でも羽根部に当る粒の角度は様々であり、羽根部に当って弾き飛ばされる粒の方向も不規則である。そこで、主円板上に円環状の副円板を取り付けたインペラを採用すると、従来機のような、田植機の上から後方を見て左寄り、かつ散布装置からさほど遠くない領域に薬剤の粒が濃く散布され、右に寄るほど薄くなるように散布されるといった現象が大幅に改善した。
このような改善は、インペラの羽根部に当って弾き飛ばされた粒が後方に飛ばずとも、主円板の上方に取り付けられた副円板に当って飛散の向きを規制されて後方に向かうこと、副円板も回転しているためにそれに当った粒が飛散のための運動エネルギーを失い難く飛距離が稼げることがその要因と分析される。また、前記副円板の外径は、前記主円板の外径よりも大きい。羽根部に当って弾き飛ばされる粒は、外方に向かう運動エネルギーを付与されるので、上方に弾かれた粒を副円板に当てるには、副円板の外径は主円板の外径よりも大きくすべきである。このインペラを採用すると、水田内で田植機を往復走行させても、水田に粒の濃淡の分布が交互に現れる縞模様を生じ難いことも確認された。
本発明の田植機搭載型薬剤散布装置において、前記羽根部は、側方視すると、上端に向かうほど幅が狭くなる台形状で、前記回転軸寄りの斜辺と上辺とが交差する角部から前記回転軸までの距離は、前記副円板の内孔半径にほぼ等しいことが好ましい。
例えば、羽根部が長方形状であると、回転軸寄りの側辺と上辺とが交差する角部から回転軸までの距離は、副円板の内孔半径よりも小さくなる場合がある。この場合、上記角部近辺で羽根部に当った粒は、副円板には当らず内孔を通じてインペラの上に飛び出してしまい、副円板の効果を享受できない。しかしながら、上記のごとく羽根部を台形状にすると、長方形の場合に角部に当っていた粒はその位置では羽根板には当らずに落下し、主円板上に落下して角度を変えるので、副円板に当る確度が増す。
本発明に係る田植機搭載型薬剤散布装置によれば、薬剤の粒を、濃淡の差をできるだけ少なくして一様に水田に散布することができる。
本発明の田植機搭載型薬剤散布装置の実施形態を示す図であって、田植機搭載型薬剤散布装置の構造を示す概略図である。 田植機搭載型薬剤散布装置を構成する散布機構を示す斜視図である。 散布機構の内部構造を示す分解斜視図である。 インペラの形状を示す分解斜視図である。 回転軸方向に沿うインペラの断面図である。
本発明の田植機搭載型薬剤散布装置の実施形態を図1から図4に示して説明する。
図1に示す田植機搭載型薬剤散布装置(以下では単に散布装置と呼ぶ)は、田植機の後部に位置する苗床台Sのさらに後方に設置され田植作業と並行して粒状薬剤を散布する散布機構1と、田植機に具備される苗床台Sの往復動作を利用して作動されて散布機構1による農薬散布を田植作業に同調して間欠的に行わせる散布動作制御機構2と、散布機構1を作動させるための電力を供給する電源機構4とを備えている。各機構に繋がるコード類はセンターボックス5に集められており、センターボックス5には散布装置の作動をおおもとで断続する主スイッチ5aが設けられている。
散布機構1は、田植機の農薬が収納される収納部10と、収納部10の下部に取付けられたパイプ部11を通じて供給される粒状薬剤を噴出するノズル部12とを備え、苗床台Sの後方に立設された門型の支持フレーム13に固定されている。
収納部10は、縦長の箱形でその上面には着脱可能な蓋体10aが取り付けられており、この蓋体10aを外して内部に粒状薬剤を収納するようになっている。パイプ部11は、すり鉢状に形成された収納部10の内底に連通し、下方に向けて延出された先端にノズル部12が取付けられている。
図2に示すように、収納部10を除くパイプ部11とこれに通じるノズル部12とは、防水ケース41に収納されている。防水ケース41はプラスチック等の樹脂製で、前方には粒状薬剤の散布口41aが設けられている。散布口41aは、後述するインペラ17に弾かれた農薬の飛散を妨げないように、断面が横長の矩形状で、後述するインペラ17から前方に離れるほど幅が拡がり開口面積が拡大するように形成されている。防水ケース41の後部には、支持フレーム13に固定される取付け部41bが設けられている。
散布口41aの幅方向の両側には、インペラ17に弾かれて飛散する農薬の散布幅および散布の方向を規制するための整流板42a,42bが、散布口41aの内側に傾倒可能に支持されている。
散布量調節機構として、防水ケース41の側面に回動可能にダイヤル45が取り付けられている。ダイヤル45には針部45aが設けられており、収納部10の側面に刻まれた目盛に針部45aを合わせることで農薬の散布量を任意に調節できるようになっている。
図3に示すように、ノズル部12は、パイプ部11と連結される連結部12a、遮蔽弁28が内蔵される遮蔽弁ケース12b、上ケース12c、及び下ケース12dが組み合わされて構成されている。
上ケース12cと下ケース12dとの間にはモータ18が設置されている。モータ18の回転軸は下ケース12dの下面に突出しており、この回転軸にインペラ17が取り付けられている。
図4、図5に示すように、インペラ17は、モータ18の回転軸に中心を固定された主円板17a上に6枚の羽根部17bが周方向に立設されたもので、散布口41aの幅方向に面方向を一致させてノズル部12の下部に配置されている。インペラ17は、モータ18の回転軸を中心として円周方向に回転可能であり、収納部から落下される薬剤の粒を自らの回転によって弾き飛ばす。
詳述すると、インペラ17は、モータ18の回転軸を中心として円周方向に回転可能な主円板17aと、主円板17aの上面に植設され、収納部10からパイプ部11を通じて主円板17aの上面に落下される薬剤の粒を主円板17aの回転に伴って弾き飛ばす複数の羽根部17bと、主円板17aの上方に、主円板17aに対し中心を同じくするように配置され、主円板17aに固定される円環状の副円板17cとを備えている。
羽根部17bは、主円板17aの上面に、周方向に等間隔に離間して配置されている。また、主円板17aは、断面視すると中央部分に対し周縁部分がせり上がった皿状に形成されており、主円板17a上に落下した粒をインペラ17の回転に伴いモータ18の回転軸に対して斜め上方に弾き出すようになっている。
副円板17cの下面には、羽根部17bとは別に3本の柱状部17dが垂設されている。主円板17aは、この柱状部17dの下端にビス17eを介して固定されている。主円板17aの中央には、上方に突き出した茎部17fが形成されており、茎部17fの中心に形成された小孔にモータ18の回転軸を差し込み、側方から茎部17fにビスを螺入することによりモータ18の回転軸に固定される。
ノズル部12の内部には、収納部10からパイプ部11を通じて供給される農薬を主円板17a上に供給する供給管19が設けられている。供給管19はノズル部12の内部でパイプ部11と連通しており、下ケース12dの穴を通じてインペラ17に向けて農薬を落下させるようになっている。
インペラ17は、モータ18を駆動させることによって一方向に回転し、収納部10からパイプ部11を通じて主円板17a上に供給される農薬を、主円板17aとともに回転する羽根部17bによって弾き飛ばすようになっている。なお、薬剤の粒は、収納部10からパイプ部11を通じて、主円板17aの上面に、副円板17cの内側を通じて供給される。
ノズル部12には、スイッチ25が接続されたときに作動するソレノイド26が付設されている。ソレノイド26の駆動軸には、パイプ部11を仕切りソレノイド26の作動によってパイプ部11を開いてインペラ17に向けて農薬を供給する遮蔽弁28が固定されている。
散布動作制御機構2には、ソレノイド26により作動される遮蔽弁28の1回あたりの開閉動作につき、ノズル部12内の流通口20aを通過する農薬の量を調節し、これによってノズル部12から噴出される農薬の量を調節する機構が設けられている(詳細は特開2006-320340号公報を参照のこと)。
電源機構4は、実際の電力供給源として田植機に搭載されているバッテリーが兼用されている。センターボックス5は、運転席に搭乗する作業者から手の届く位置に設置されている。
また、センターボックス5には、近接スイッチ52の出力を得て散布機構1を作動させる制御部54が内蔵されている。制御部54は、ソレノイド26を間欠的に作動させる。ソレノイド26の作動間隔(時間)は、田植機の田植え動作の速度の変化に同調して長くなったり短くなったりする。
上記のように構成された散布装置は次のようにして使用される。まず、育苗箱で育てた苗の束を苗床台Sに搭載し、水田に乗り入れた田植機について、主スイッチ5aを接続すると、モータ18が作動してインペラ17が回転を開始する。
植え付け動作が開始されると、苗床台Sは、掻き取り爪による苗の掻き取り動作に同調して側方に往復移動を開始する。苗床台Sが往復移動すると、制御部54がその移動を検出し、ソレノイド26が間欠的に作動する。ソレノイド26が作動する度に遮蔽弁28が隔壁20に沿って往復移動して流通口20aが開閉される。流通口20aが開閉されると、これに伴って流通口20aを通過した農薬が供給管19を通ってインペラ17上に落下する。インペラ17上に落下した農薬は、継続的に回転するインペラ17に弾かれ、噴出口12fおよび散布口41aを通じて田植機の後方に向けて噴出される。
上記のように構成された散布装置の場合、収納部10から主円板17aの上面に落下し、羽根部17bに当る薬剤の粒の動きには当然ながら不規則さが伴うので、インペラ17の回転は一定でも羽根部17bに当る粒の角度は様々であり、羽根部17bに当って弾き飛ばされる粒の方向も不規則である。そこで、主円板17a上に円環状の副円板17cを取り付けたインペラ17を採用すると、従来機のような、田植機の上から後方を見て左寄り、かつ散布装置からさほど遠くない領域に薬剤の粒が濃く散布され、右に寄るほど薄くなるように散布されるといった現象が大幅に改善した。
このような改善は、インペラ17の羽根部17bに当って弾き飛ばされた粒が後方に飛ばずとも、主円板17aの上方に取り付けられた副円板17cに当って飛散の向きを規制されて後方に向かうこと、副円板17cも回転しているためにそれに当った粒が飛散のための運動エネルギーを失い難く飛距離が稼げることがその要因と分析される。このインペラを採用すると、水田内で田植機を往復走行させても、水田に粒の濃淡の分布が交互に現れる縞模様を生じ難いことも確認された。このように、上記のように構成されたインペラ17を備える散布装置によれば、薬剤の粒を、濃淡の差をできるだけ少なくして一様に水田に散布することができる。
ところで、羽根部17bに当って弾き飛ばされる粒は、当然のごとく外方に向かう運動エネルギーを付与される。そこで、図5に示すように、上方に弾かれた粒を副円板17cに高い確度で当てるために、副円板17cの外径は主円板17aの外径よりも大きくされている。
また、羽根部17bは、側方視すると、上端に向かうほど幅が狭くなる台形状で、モータ18の回転軸寄りの斜辺と上辺とが交差する角部から回転軸までの距離は、副円板17cの内孔半径にほぼ等しい。例えば、羽根部が長方形状であると、回転軸寄りの側辺と上辺とが交差する角部から回転軸までの距離は、副円板の内孔半径よりも小さくなる場合がある。この場合、上記角部近辺で羽根部に当った粒は、副円板には当らず内孔を通じてインペラの上に飛び出してしまい、副円板の効果を享受できない。しかしながら、上記のごとく羽根部を台形状にすると、長方形の場合に角部に当っていた粒はその位置では羽根板には当らずに落下し、主円板17a上に落下して角度を変えるので、副円板17cに当る確度が増す。
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された事項によってのみ限定される。
本発明は、粒状の薬剤を、収納部からインペラの上面に落下される前記薬剤の粒をインペラの回転によって弾き飛ばす構造の田植機搭載型薬剤散布装置であって、
前記インペラは前記回転軸を中心とする主円板と、前記主円板の上面に植設され、前記収納部から前記主円板の上面に落下される前記薬剤の粒を前記主円板の回転に伴って弾き飛ばす複数の羽根部と、前記主円板の上方に、前記主円板に対し中心を同じくするように配置され、前記主円板に固定される円環状の副円板とを備えることを特徴とする田植機搭載型薬剤散布装置に関する。
この田植機搭載型薬剤散布装置によれば、濃淡の分布の差をできるだけ少なくして一様に水田に散布することができる。
1 散布機構、
10 収納部、
11 パイプ部、
12 ノズル部、
17 インペラ、
17a 主円板、
17b 羽根部、
17c 副円板、
17d 柱状部、
18 モータ

Claims (2)

  1. 田植え作業と並行して粒状の薬剤を散布する田植機搭載型薬剤散布装置であって、
    前記薬剤を収納する収納部と、
    前記収納部の下方に設置され、ほぼ鉛直な回転軸を中心として円周方向に回転可能であり、前記収納部から落下される前記薬剤の粒を自らの回転によって弾き飛ばすインペラと、
    前記インペラを前記回転軸を中心として回転駆動するモータとを備え、
    前記インペラは前記回転軸を中心とする主円板と、
    前記主円板の上面に植設され、前記収納部から前記主円板の上面に落下される前記薬剤の粒を前記主円板の回転に伴って弾き飛ばす複数の羽根部と、
    前記主円板の上方に、前記主円板に対し中心を同じくするように配置され、前記主円板に固定される円環状の副円板とを備え、
    前記副円板の外径は、前記主円板の外径よりも大きく、
    前記薬剤の粒は、前記収納部から前記主円板上に、前記副円板の内側を通じて供給されることを特徴とする田植機搭載型薬剤散布装置。
  2. 前記羽根部は、側方視すると、上端に向かうほど幅が狭くなる台形状で、前記回転軸寄りの斜辺と上辺とが交差する角部から前記回転軸までの距離は、前記副円板の内孔半径にほぼ等しいことを特徴とする請求項1に記載の田植機搭載型薬剤散布装置。
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