JP6461175B2 - 有機カルボニル化合物の酸化方法 - Google Patents

有機カルボニル化合物の酸化方法 Download PDF

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Description

本発明は、MWW型の骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料であって低いホウ素含量を有するゼオライト材料を含む触媒の存在下での、有機カルボニル化合物の酸化、特に有機カルボニル化合物のバイヤー・ビリガー型の酸化方法に関する。
有機化合物の酸化反応、特にバイヤー・ビリガー反応は、容易に入手できるカルボニル化合物をより複雑かつ価値のある生成物へと転化するためにかなり関心が持たれている。
Justus Liebigs Ann.Chem.681(1965),第28頁〜第30頁に記載されるバイヤー・ビリガー酸化におけるペルオキシ酢酸の使用は、ケトンをそれぞれのラクトンへと酸化するための一般的な方法である。しかしながら、そのペルオキシ酢酸の使用は、費用の有利性と安全性の観点から、特に工業的規模での方法において大きな欠点を伴う。
Nature 412(2001),第423頁〜第425頁と、Journal of Catalysis 234(2005),第96頁〜第100頁においては、バイヤー・ビリガー反応で使用するために、スズ含有のβ型ゼオライトが記載されている。更に、Journal of Catalysis 234(2005),第96頁〜第100頁において、出発材料としてシトラールが使用されるバイヤー・ビリガー反応が開示されている。この反応に関して行われた実験は、スズ含有のβ型ゼオライトの使用によって、メロナールへの選択性が最大で20%で達成されることを示している。一般的に、スズ含有のβ型ゼオライト材料は比較的製造が困難であり、それによりこの従来技術の方法は不利なものとなる。それというのも、その触媒の合成は、US5,968,473およびUS6,306,364に開示されるものの、低い収率、15日を超える長い合成時間、HFおよび塩素化されたSn前駆体化合物の使用のため工業的に規模拡大するのが困難だからである。
更に、Microporous and Mesoporous Materials 165(2013),第210頁〜第218頁において、MWW骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料の、2−アダマンタノンのバイヤー・ビリガー反応における使用が記載されている。この文献によれば、該ゼオライト材料は、脱ホウ素化を受けないホウ素含有前駆体材料から得られ、こうして比較的高いホウ素含量を有する材料が得られる。
WO03/074422A1およびUS7,326,401B2は、MWW構造を有するゼオライト材料の合成方法を記載している。詳細な説明においては、約4.7質量%の非常に高いスズ負荷量を有するスズ含有のMWWが挙げられている。このスズ含有のMWWは、B−MWWゼオライト前駆体から製造され、前記ゼオライトは酸処理によって脱ホウ素化され、それからSnが導入される。
本発明の課題は、有機カルボニル化合物のバイヤー・ビリガー酸化のための方法であって、酸化されるべき有機カルボニル化合物と酸化剤である過酸化水素の両方に対して高い酸化生成物についての選択性を示す方法を提供することであった。
驚くべきことに、前記課題は、該バイヤー・ビリガー酸化反応を、スズ含有のゼオライト材料の存在下で、かつカリウム添加剤の存在下で行うことで解決できることが判明した。
従って、本発明は、式(I)
Figure 0006461175
の有機カルボニル化合物の酸化方法であって、
(i)式(I)の化合物、過酸化水素、少なくとも1種の少なくとも部分的に溶解されたカリウム塩、および場合により溶剤を含む液状混合物を準備するステップと、
(ii)前記液状混合物中の式(I)の化合物と過酸化水素とをスズ含有のゼオライト材料を含む触媒の存在下で反応させることで、式(II)
Figure 0006461175
の化合物を得るステップと、
を含み、前記式中、R1およびR2は、互いに独立して、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル残基、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルケニル残基、アリールもしくはヘテロアリール残基、または水素原子であるが、但し、R1およびR2は、同時に水素原子ではなく、ここでR1もR2も水素原子ではない場合に、R1およびR2は、カルボニル基もしくはカルボキシル基と一緒になって環を形成し、その式(I)の化合物は
Figure 0006461175
であり、かつその式(II)の化合物は、
Figure 0006461175
である、前記方法に関する。
驚くべきことに、更に、本発明の課題は、前記スズ含有のゼオライト材料がどのような骨格構造を有するかにかかわらず、前記スズ含有のゼオライト材料がどのようなスズ含量を有するかにかかわらず、該反応が回分方式でゼオライト材料をそのまま使用して実施されるか、または連続方式で成形物中に含まれるゼオライト材料を使用して実施されるかにかかわらず、そして添加剤としてどのカリウム塩が使用されるかにかかわらず解決されうることが判明した。
ステップ(i)
式(I)の化合物
式(I)
Figure 0006461175
の有機カルボニル化合物につき、残基R1およびR2の化学的性質に関して、式(I)の化合物を酸化して式(II)の化合物が得られるという前提があるのであれば一般的に特段の制限は存在しない。
好ましくは、R1およびR2は、互いに独立して、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル残基、2〜20個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルケニル残基、4〜20個の炭素原子を有するアリールもしくはヘテロアリール残基、または水素原子である。好ましくは、R1もR2も水素原子ではない場合に、R1およびR2は、式(I)の化合物中のカルボニル基と一緒になって、または式(II)の化合物中のカルボキシル基と一緒になって、4〜20個の炭素原子を有する環を形成しうる。従って、本発明は、R1およびR2が、互いに独立して、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル残基、2〜20個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルケニル残基、4〜20個の炭素原子を有するアリールもしくはヘテロアリール残基、または水素原子であり、かつR1もR2も水素原子ではない場合に、R1およびR2が、カルボニル基またはカルボキシル基と一緒になって、4〜20個の炭素原子を有する環を形成しうる前記方法に関する。
1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル残基は、適宜置換されていてよく、例えばF、Cl、Br、Iのような少なくとも1つのハロゲン原子で、および/または好ましくは2〜8個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルケニル基で、および/または好ましくは4〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つのアリール基もしくはヘテロアリール基であって該ヘテロアリール基中に含まれる少なくとも1つのヘテロ原子が好ましくはS、OもしくはNである基で、および/または4〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つのアラルキル基で、および/または4〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つのヘテロアラルキル基であって該ヘテロアラルキル基中に含まれる少なくとも1つのヘテロ原子が好ましくはS、OもしくはNである基で置換されていてよい。本発明の文脈で使用される用語「アラルキル基」は、アリール基であって、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル残基に結合されており、かつ少なくとも1つのアルキル基で置換されているアリール基に関する。本発明の文脈で使用される用語「ヘテロアラルキル基」は、ヘテロアリール基であって、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル残基に、該ヘテロアリール基の炭素原子または適切なヘテロ原子のいずれかを介して結合されており、かつ少なくとも1つのアルキル基で置換されているヘテロアリール基に関する。更に、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル残基は、該炭素原子鎖中に、少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくはN、OまたはSを含んでよい。
好ましくは、前記直鎖状または分枝鎖状のアルキル残基は、1〜18個の、より好ましくは1〜14個の、より好ましくは1〜12個の、より好ましくは1〜11個の、より好ましくは1〜10個の、より好ましくは1〜9個の炭素原子を、より好ましくは1〜8個の炭素原子を、例えば1、2、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有する。
2〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルケニル残基は、適宜置換されていてよく、例えばF、Cl、Br、Iのような少なくとも1つのハロゲン原子で、および/または好ましくは2〜8個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキル基で、および/または好ましくは4〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つのアリール基もしくはヘテロアリール基であって該ヘテロアリール基中に含まれる少なくとも1つのヘテロ原子が好ましくはS、OもしくはNである基で、および/または4〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つのアラルキル基で、および/または4〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つのヘテロアラルキル基であって該ヘテロアラルキル基中に含まれる少なくとも1つのヘテロ原子が好ましくはS、OもしくはNである基で置換されていてよい。本発明の文脈で使用される用語「アラルキル基」は、アリール基であって、2〜20個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルケニル残基に結合されており、かつ少なくとも1つのアルキル基で置換されているアリール基に関する。本発明の文脈で使用される用語「ヘテロアラルキル基」は、ヘテロアリール基であって、2〜20個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルケニル残基に、該ヘテロアリール基の炭素原子または適切なヘテロ原子のいずれかを介して結合されており、かつ少なくとも1つのアルキル基で置換されているヘテロアリール基に関する。更に、2〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルケニル残基は、該炭素原子鎖中に、少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくはN、OまたはSを含んでよい。
好ましくは、前記直鎖状または分枝鎖状のアルケニル残基は、2〜18個の、より好ましくは2〜14個の、より好ましくは2〜12個の、より好ましくは2〜11個の、より好ましくは2〜10個の、より好ましくは2〜9個の炭素原子を、より好ましくは2〜8個の炭素原子を、例えば2、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有する。
4〜20個の炭素原子を有するアリールまたはヘテロアリール残基は、適宜置換されていてよく、例えばF、Cl、Br、Iのような少なくとも1つのハロゲン原子で、および/または好ましくは2〜8個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキル基で、および/または好ましくは4〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つのアリール基もしくはヘテロアリール基であって該ヘテロアリール基中に含まれる少なくとも1つのヘテロ原子が好ましくはS、OもしくはNである基で、および/または4〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つのアラルキル基で、および/または4〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つのヘテロアラルキル基であって該ヘテロアラルキル基中に含まれる少なくとも1つのヘテロ原子が好ましくはS、OもしくはNである基で置換されていてよい。本発明の文脈で使用される用語「アラルキル基」は、アリール基であって、4〜20個の炭素原子を有するアリールもしくはヘテロアリール残基に結合されており、かつ少なくとも1つのアルキル基で置換されているアリール基に関する。本発明の文脈で使用される用語「ヘテロアラルキル基」は、ヘテロアリール基であって、4〜20個の炭素原子を有するアリールもしくはヘテロアリール残基に、該ヘテロアリール基の炭素原子または適切なヘテロ原子のいずれかを介して結合されており、かつ少なくとも1つのアルキル基で置換されているヘテロアリール基に関する。更に、4〜20個の炭素原子を有するヘテロアリール残基は、少なくとも1つのヘテロ原子として、好ましくはN、OまたはSを含んでよい。
好ましくは、前記アリールまたはヘテロアリール残基は、4〜18個の、より好ましくは4〜14個の、より好ましくは4〜12個の、より好ましくは4〜11個の、より好ましくは4〜10個の、より好ましくは4〜9個の炭素原子を、より好ましくは4〜8個の炭素原子を、例えば4、5、6、7または8個の炭素原子を有する。
上述のように、R1およびR2は、互いに独立して、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル残基、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルケニル残基、アリールもしくはヘテロアリール残基、または水素原子であるが、但し、R1およびR2は、同時に水素原子ではないものとする。
従って、式(I)の化合物は、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル残基である残基R1と、水素である残基R2とを含んでよい。更に、式(I)の化合物は、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルケニル残基である残基R1と、水素である残基R2とを含んでよい。更に、式(I)の化合物は、アリールもしくはヘテロアリール残基である残基R1と、水素である残基R2とを含んでよい。更に、式(I)の化合物は、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル残基である残基R2と、水素である残基R1とを含んでよい。更に、式(I)の化合物は、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルケニル残基である残基R2と、水素である残基R1とを含んでよい。更に、式(I)の化合物は、アリールもしくはヘテロアリール残基である残基R2と、水素である残基R1とを含んでよい。更に、式(I)の化合物は、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル残基である残基R1と、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル残基である残基R2とを含んでよい。更に、式(I)の化合物は、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルケニル残基である残基R1と、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルケニル残基である残基R2とを含んでよい。更に、式(I)の化合物は、アリールもしくはヘテロアリール残基である残基R1と、アリールもしくはヘテロアリール残基である残基R2とを含んでよい。更に、式(I)の化合物は、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル残基である残基R1と、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルケニル残基である残基R2とを含んでよい。更に、式(I)の化合物は、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル残基である残基R1と、アリールもしくはヘテロアリール残基である残基R2とを含んでよい。更に、式(I)の化合物は、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルケニル残基である残基R1と、アリールもしくはヘテロアリール残基である残基R2とを含んでよい。更に、式(I)の化合物は、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル残基である残基R2と、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルケニル残基である残基R1とを含んでよい。更に、式(I)の化合物は、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル残基である残基R2と、アリールもしくはヘテロアリール残基である残基R1とを含んでよい。更に、式(I)の化合物は、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルケニル残基である残基R2と、アリールもしくはヘテロアリール残基である残基R1とを含んでよい。更に、式(I)の化合物は、これらの化合物の2種以上の混合物であってよいと考えられる。
更に、R1もR2も水素原子ではない場合に、R1およびR2は、式(I)の化合物中のカルボニル基と一緒になって、または式(II)の化合物中のカルボキシル基と一緒になって、好ましくは4〜20個の炭素原子を有する環を形成しうる。本発明の文脈で使用される用語「4〜20個の炭素原子を有する環」は、4〜20個の炭素原子の炭素原子鎖長を有する環に関する。
好ましくは、前記環は、4個から18個までの炭素原子を、より好ましくは5個から16個までの炭素原子を、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16個の炭素原子を、好ましくは5、6、8、12、15または16個の炭素原子を有する。R1もR2も水素原子ではなく、R1およびR2が、式(I)の化合物中のカルボニル基と一緒になって、または式(II)の化合物中のカルボキシル基と一緒になって環を形成した式(I)の好ましい化合物は、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロドデカノン、シクロペンタデカノン、シクロヘキサデカノン、2−ペンチルシクロペンタノン、2−ヘプチルシクロペンタノンおよびシクロヘキサデカ−8−エン−1−オンを含む。
従って、本発明は、式(I)
Figure 0006461175
の環状ケトンの酸化方法であって、
(i)式(I)の化合物、過酸化水素、少なくとも1種の少なくとも部分的に溶解されたカリウム塩、および場合により溶剤を含む液状混合物を準備するステップと、
(ii)前記液状混合物中の式(I)の化合物と過酸化水素とをスズ含有のゼオライト材料を含む触媒の存在下で反応させることで、式(II)
Figure 0006461175
の化合物を得るステップと、
を含み、前記式中、R1、R2および前記カルボニル炭素原子によって形成された環は、4〜20個の、好ましくは4〜18個の、より好ましくは5〜16個の炭素原子を、好ましくは5、6、8、12、15もしくは16個の炭素原子を有する、前記方法に関する。
更に、本発明は、式(I)の環状ケトンが、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロドデカノン、シクロペンタデカノン、シクロヘキサデカノン、2−ペンチルシクロペンタノン、2−ヘプチルシクロペンタノン、シクロヘキサデカ−8−エン−1−オン、およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、式(I)の環状ケトンは好ましくはシクロヘキサノンである、前記方法に関する。
式(I)の環状ケトンの環は、適宜置換されていてよく、例えばF、Cl、Br、Iのような少なくとも1つのハロゲン原子で、および/または好ましくは2〜8個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキル基で、および/または好ましくは4〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つのアリール基もしくはヘテロアリール基であって該ヘテロアリール基中に含まれる少なくとも1つのヘテロ原子が好ましくはS、OもしくはNである基で、および/または4〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つのアラルキル基で、および/または4〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つのヘテロアラルキル基であって該ヘテロアラルキル基中に含まれる少なくとも1つのヘテロ原子が好ましくはS、OもしくはNである基で置換されていてよい。本発明の文脈で使用される用語「アラルキル基」は、アリール基であって、前記環に結合されており、かつ少なくとも1つのアルキル基で置換されているアリール基に関する。本発明の文脈で使用される用語「ヘテロアラルキル基」は、ヘテロアリール基であって、前記環に、該ヘテロアリール基の炭素原子または適切なヘテロ原子のいずれかを介して結合されており、かつ少なくとも1つのアルキル基で置換されているヘテロアリール基に関する。更に、前記環は、該炭素原子鎖中に、少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくはN、OまたはSを含んでよい。更に、式(I)によるカルボニル基もしくはカルボキシル基と一緒に環を形成する炭素原子の鎖は、少なくとも1つのC−C二重結合を含んでよい。更に、式(I)の化合物は、式(I)によるカルボニル基もしくはカルボキシル基と一緒に形成される環を有する少なくとも1種の化合物と、そのような環を有さない少なくとも1種の化合物との混合物であってよい。
本発明によれば、式(I)の化合物は、少なくとも1つのC−C二重結合を含んでよい。この少なくとも1つのC−C二重結合は、残基R1および/またはR2中、または式(I)によるカルボニル基もしくはカルボキシル基と一緒に形成される環中のどこに位置していてもよい。例えば、R1および/またはR2のサイズに応じて、または式(I)の化合物中のカルボニル基と一緒にR1、R2によって形成される環において、式(I)の化合物は、1、2、3またはそれより多くのC−C二重結合を含んでよい。従って、本発明は、また、式(I)の化合物が、少なくとも1つのC−C二重結合を含む、前記方法に関する。
本発明によれば、式(I)の化合物は、式(I)によるカルボニル基に対してα位にC−C二重結合を含んでよい。こうして、本発明によれば、式(I)の化合物は、α,β−不飽和化合物であってよい。式(I)によるカルボニル基に対してα位にあるC−C二重結合に加えて、式(I)の化合物は、1、2またはそれより多くの追加のC−C二重結合を含んでよい。従って、本発明は、また、式(I)の化合物が、カルボニル基に対してα位にC−C二重結合を含む、前記方法に関する。
更に、本発明によれば、式(I)の化合物は、式(I)によるカルボニル基に対してα位にC−C二重結合を含んでよく、その際、残基R2は、水素原子である。従って、本発明は、また、R1が、カルボニル基に対してα位にC−C二重結合を含み、かつR2が水素原子である、前記方法に関する。
溶剤
有機カルボニル化合物の化学的性質に応じて、該有機カルボニル化合物は、ステップ(ii)で採用される反応条件下で液状であると考えられる。この場合に、該反応は溶剤を添加することなく行われ、そしてステップ(i)において溶剤を含まない液状混合物が準備されると考えられる。好ましくは、ステップ(ii)による反応のために、少なくとも1種の溶剤が使用され、そしてステップ(i)においては、溶剤を含有する液状混合物が準備される。従って、本発明は、
(i)式(I)の化合物、過酸化水素、少なくとも1種の少なくとも部分的に溶解されたカリウム塩、および溶剤を含む液状混合物を準備するステップ
を含む、前記方法に関する。
一般的に、前記溶剤は、有機カルボニル化合物の化学的性質に従って選択することができる。好ましくは、前記溶剤は、極性溶剤、より好ましくは極性非プロトン性溶剤である。従って、本発明は、
(i)式(I)の化合物、過酸化水素、少なくとも1種の少なくとも部分的に溶解されたカリウム塩、および極性溶剤、好ましくは極性非プロトン性溶剤を含む液状混合物を準備するステップ
を含む、前記方法に関する。
より好ましくは、前記溶剤は、アセトニトリル、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、プロピオニトリル、1,4−ジオキサン、メチル−t−ブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチルアセテート、ブチルアセテート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される。より好ましくは、前記溶剤は、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、またはそれらの混合物である。従って、本発明は、また、
(i)式(I)の化合物、過酸化水素、少なくとも1種の少なくとも部分的に溶解されたカリウム塩、およびアセトニトリル、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、プロピオニトリル、1,4−ジオキサン、メチル−t−ブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチルアセテート、ブチルアセテート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される極性溶剤を含み、その際、前記溶剤は、より好ましくは1,2−ジクロロエタン、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、またはそれらの2種もしくは3種の混合物である液状混合物を準備するステップ
を含む、前記方法に関する。
過酸化水素
ステップ(i)で使用される過酸化水素は、あらゆる考えられる方法に従って製造してよい。過酸化水素は、硫酸をペルオキソ二硫酸へと陽極酸化によって同時に陰極で水素を発生しつつ転化させることによって得られると考えられる。次いでそのペルオキソ二硫酸の加水分解により、ペルオキソ一硫酸を経て過酸化水素と硫酸に導かれ、こうして硫酸が再度得られる。元素からの過酸化水素の製造も考えられる。特定の製造方法に応じて、前記過酸化水素は、例えば水性の過酸化水素溶液の形で、または水性/メタノール性の過酸化水素溶液の形で、好ましくは水性の過酸化水素溶液の形で使用することができる。水性の過酸化水素溶液が使用される場合に、該溶液の過酸化水素に関する含量は、好ましくは20質量%から90質量%までの範囲であり、好ましくは30質量%から85質量%までの範囲であり、より好ましくは40質量%から75質量%までの範囲である。
本発明によれば、ほぼ全世界の過酸化水素生産量が生産されているアントラキノン法として知られる方法から得られる混合物の抽出によって粗製過酸化水素溶液として得られる過酸化水素を含む溶液を使用することが好ましい(例えばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第5版,A13巻(1989)第443頁〜第466頁を参照のこと)。そのアントラキノン法においては、好ましくは2〜10個の炭素原子、より好ましくは少なくとも5個の炭素原子、例えば5個の炭素原子もしくは6個の炭素原子を有するアルキル基を含むアントラキノンの溶液が使用され、かつ使用される溶剤は、通常は2種の異なる溶剤の混合物からなる。このアントラキノンの溶液は、通常は、作業溶液と呼ばれる。このプロセスにおいて、アントラキノン法の過程で形成された過酸化水素は、一般的に、水素化/再酸化のサイクルの後にそれぞれの作業溶液からの抽出によって分離される。前記抽出は、好ましくは実質的に純粋な水を用いて行うことができ、そして粗製過酸化水素水溶液が得られる。一般的に、こうして得られた粗製過酸化水素水溶液を蒸留によって更に精製することができるが、本発明によれば、蒸留によって精製されていない粗製過酸化水素水溶液を使用することが好ましい。更に、一般的に、前記粗製過酸化水素水溶液には、適切な抽出剤、好ましくは有機溶剤が使用される更なる抽出段階にかけることができる。より好ましくは、この更なる抽出段階のために使用される有機溶剤は、アントラキノン法で使用されるのと同じ溶剤である。好ましくは、抽出は、作業溶液中の溶剤のちょうど1種を使用して、最も好ましくは作業溶液の最も非極性である溶剤をまさに使用して行われる。粗製過酸化水素水溶液がそのような更なる抽出段階にかけられる場合には、いわゆる粗製洗浄済み過酸化水素溶液(crude washed hydrogen peroxide solution)が得られる。好ましくは、その粗製洗浄済み過酸化水素溶液が、過酸化水素溶液として使用される。
水、好ましくは実質的に純粋な水での抽出の間に過酸化水素の十分な安定性をもたらすために、使用される水、好ましくは実質的に純粋な水へと適切な安定化剤が通常は添加される。特に、強無機酸および/またはキレート化剤を挙げることができる。好ましい抽出法によれば、少量の硝酸塩および/またはリン酸塩およびピロリン酸塩のそれぞれが、安定化剤として、酸またはナトリウム塩のいずれかとして添加される。これらの安定化剤は、通常は、該粗製過酸化水素水溶液が、それぞれの場合に該粗製過酸化水素水溶液中に含まれる過酸化水素に対して計算して、50質量ppmから400質量ppmまでのナトリウムカチオンと、100質量pmから700質量ppmまでのホスフェート(PO4 3-)として計算されたリンと、50質量ppmから400質量ppmまでの硝酸アニオンとを含有する量で添加される。好ましい範囲は、例えば、50質量ppmから200質量ppmまでの、または50質量ppmから100質量ppmまでのナトリウムカチオン、100質量ppmから500質量ppmまでの、または100質量ppmから300質量ppmまでのリン、および50質量ppmから200質量ppmまでの、または50質量ppmから100質量ppmまでの硝酸アニオンである。更に、他の安定化剤、例えば亜スズ酸塩、例えば亜スズ酸ナトリウム(Na2SnO2)および/または有機ホスホン酸、特に有機ジホスホン酸、例えばエチドロン酸を使用することが考えられる。好ましくは、水性過酸化水素流は、1×10-6:1から250×10-6:1までの範囲の、より好ましくは5×10-6:1から50×10-6:1までの範囲のナトリウムの過酸化水素に対するモル比でナトリウムを含む。より好ましくは、ステップ(i)で使用される好ましく使用される過酸化水素水溶液は、ステップ(i)で準備される液状混合物中にナトリウムが導入される唯一の起源である。
従って、本発明は、また、ステップ(i)で準備される液状混合物が、1×10-6:1から250×10-6:1までの範囲の、好ましくは5×10-6:1から50×10-6:1までの範囲のナトリウムの過酸化水素に対するモル比でナトリウムを含有する、前記方法に関する。従って、本発明は、また、過酸化水素が、ステップ(i)において、過酸化水素水溶液の全質量に対して、20質量%から90質量%までの範囲の、好ましくは30質量%から85質量%までの範囲の、より好ましくは40質量%から75質量%までの範囲の過酸化水素濃度を有する過酸化水素水溶液の形で使用され、ここで前記過酸化水素水溶液は、更に1×10-6:1から250×10-6:1までの範囲の、好ましくは5×10-6:1から50×10-6:1までの範囲のナトリウムの過酸化水素に対するモル比でナトリウムを含む、前記方法に関する。
こうして、本発明は、
(i)式(I)の化合物、過酸化水素、少なくとも1種の少なくとも部分的に溶解されたカリウム塩、およびアセトニトリル、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、プロピオニトリル、1,4−ジオキサン、メチル−t−ブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチルアセテート、ブチルアセテート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される極性溶剤を含み、その際、前記溶剤は、より好ましくは1,2−ジクロロエタン、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、またはそれらの2種もしくは3種の混合物である液状混合物を準備するステップ
を含み、その際、ステップ(i)で前記液状混合物を準備するために、過酸化水素は、ステップ(i)において、過酸化水素水溶液の全質量に対して、20質量%から90質量%までの範囲の、好ましくは30質量%から85質量%までの範囲の、より好ましくは40質量%から75質量%までの範囲の過酸化水素濃度を有する過酸化水素水溶液の形で使用され、ここで前記過酸化水素水溶液は、更に1×10-6:1から250×10-6:1までの範囲の、好ましくは5×10-6:1から50×10-6:1までの範囲のナトリウムの過酸化水素に対するモル比でナトリウムを含む、前記方法に関する。
カリウム塩
ステップ(i)によれば、前記液状混合物は、式(I)の化合物に加えて、少なくとも1種の少なくとも部分的に溶解されたカリウム塩を含む。
前記少なくとも1種のカリウム塩の化学的性質に関しては、該カリウム塩がステップ(i)で準備される液状混合物中に少なくとも部分的に溶解されうるならば特段の制限は存在しない。好ましくは、前記少なくとも1種のカリウム塩は、少なくとも1種の無機カリウム塩、少なくとも1種の有機カリウム塩、および少なくとも1種の無機カリウム塩と少なくとも1種の有機カリウム塩との組み合わせからなる群から選択される。
好ましくは、前記少なくとも1種のカリウム塩は、水酸化カリウム、ハロゲン化カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、過塩素酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1種の無機カリウム塩、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、脂肪族飽和カルボン酸、例えば好ましくは1個から6個までの、より好ましくは1個から5個までの、より好ましくは1個から4個までの、より好ましくは1個から3個までの炭素原子を有するモノカルボン酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、好ましくは2個から6個までの、より好ましくは2個から4個までの炭素原子を有するジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、好ましくは4個から10個までの炭素原子を有するトリカルボン酸、例えばクエン酸もしくはイソクエン酸またはプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、テトラカルボン酸のカリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種の有機カリウム塩、および前記少なくとも1種の無機カリウム塩の少なくとも1種と前記少なくとも1種の有機カリウム塩の少なくとも1種との組み合わせからなる群から選択される。
より好ましくは、前記有機カリウム塩は、好ましくは1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有する脂肪族飽和モノカルボン酸のカリウム塩、炭酸カリウム、および炭酸水素カリウムからなる群から選択される。より好ましくは、前記有機カリウム塩は、ギ酸カリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、炭酸カリウム、および炭酸水素カリウムからなる群から選択される。より好ましくは、前記有機カリウム塩は、ギ酸カリウム、酢酸カリウム、炭酸カリウム、および炭酸水素カリウムからなる群から選択される。より好ましくは、前記有機カリウム塩は、ギ酸カリウムおよび酢酸カリウムからなる群から選択される。
より好ましくは、前記少なくとも1種のカリウム塩は、硝酸カリウム、リン酸二水素カリウム、ギ酸カリウム、およびそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される。
従って、本発明は、また、
(i)式(I)の化合物、過酸化水素、少なくとも1種の少なくとも部分的に溶解されたカリウム塩、およびアセトニトリル、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、プロピオニトリル、1,4−ジオキサン、メチル−t−ブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチルアセテート、ブチルアセテート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される極性溶剤を含み、その際、前記溶剤は、より好ましくは1,2−ジクロロエタン、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、またはそれらの2種もしくは3種の混合物である液状混合物を準備するステップ
を含み、その際、ステップ(i)で前記液状混合物を準備するために、過酸化水素は、ステップ(i)において、過酸化水素水溶液の全質量に対して、30質量%から80質量%までの範囲の、より好ましくは35質量%から75質量%までの範囲の、より好ましくは40質量%から70質量%までの範囲の過酸化水素濃度を有する過酸化水素水溶液の形で使用され、ここで前記過酸化水素水溶液は、更に1×10-6:1から250×10-6:1までの範囲の、好ましくは5×10-6:1から50×10-6:1までの範囲のナトリウムの過酸化水素に対するモル比でナトリウムを含み、かつ
前記少なくとも1種のカリウム塩は、水酸化カリウム、ハロゲン化カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、過塩素酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1種の無機カリウム塩、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、脂肪族飽和カルボン酸、例えば好ましくは1個から6個までの、より好ましくは1個から5個までの、より好ましくは1個から4個までの、より好ましくは1個から3個までの炭素原子を有するモノカルボン酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、好ましくは2個から6個までの、より好ましくは2個から4個までの炭素原子を有するジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、好ましくは4個から10個までの炭素原子を有するトリカルボン酸、例えばクエン酸もしくはイソクエン酸またはプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、テトラカルボン酸のカリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種の有機カリウム塩、および前記少なくとも1種の無機カリウム塩の少なくとも1種と前記少なくとも1種の有機カリウム塩の少なくとも1種との組み合わせからなる群から選択され、その際、前記少なくとも1種のカリウム塩は、より好ましくは、硝酸カリウム、リン酸二水素カリウム、ギ酸カリウム、およびそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される、前記方法に関する。
ステップ(i)で準備される液状混合物中の前記少なくとも1種のカリウム塩の濃度に関して、特段の制限は存在しない。好ましくは、ステップ(i)で準備される液状混合物中の少なくとも1種のカリウム塩の濃度は、ステップ(i)で準備される液状供給流中での前記少なくとも1種のカリウム塩の溶解限度の少なくとも10%であり、好ましくは10%から100%までの範囲であり、好ましくは20%から100%までの範囲であり、より好ましくは30%から100%までの範囲であり、より好ましくは40%から100%までの範囲である。本発明の文脈で使用される用語「液状混合物中での少なくとも1種のカリウム塩の溶解限度」は、液状供給混合物中の少なくとも1種のカリウム塩の飽和濃度であって、より多くの前記少なくとも1種のカリウム塩を添加することによって、該液状混合物中の溶質としての少なくとも1種のカリウム塩の濃度が増えず、少なくとも1種のカリウム塩の少なくとも1種が沈殿しはじめるであろう濃度に関する。前記液状混合物中での少なくとも1種のカリウム塩の溶解限度は、該液状混合物の組成と、該液状混合物がステップ(i)で準備される温度および圧力等の条件に依存するものである。前記液状混合物中での少なくとも1種のカリウム塩の溶解限度の測定は、所定の液状混合物の前記条件および組成を知っている当業者にとっては簡単かつ明白な作業である。添加される前記少なくとも1種のカリウム塩の量が溶解限度を上回るかどうかを評価する簡単な方法は、該液状混合物をフィルタを通じて通過させることであり、そして該フィルタを通じての圧力降下を測定する。該フィルタを通じての圧力降下が運転中に時間と共に高まるとともに、前記少なくとも1種のカリウム塩の少なくとも1種が稼働停止時に該フィルタ上に見られるのであれば、添加される少なくとも1種のカリウム塩の量は、既に溶解限度を上回っている。従って、前記少なくとも1種のカリウム塩は、好ましくは、ステップ(i)で準備される液状混合物中に完全に溶解されている。
従って、本発明は、また、ステップ(i)で準備される液状混合物中の少なくとも1種のカリウム塩の濃度は、ステップ(i)で準備される液状混合物中での前記少なくとも1種のカリウム塩の溶解限度の少なくとも10%であり、好ましくは10%から100%までの範囲であり、より好ましくは20%から100%までの範囲であり、より好ましくは30%から100%までの範囲であり、より好ましくは40%から100%までの範囲である、前記定義の通りの方法に関する。
従って、本発明は、また、
(i)式(I)の化合物、過酸化水素、少なくとも1種の溶解されたカリウム塩、および場合により溶剤を含む液状混合物を準備するステップ
を含み、その際、ステップ(i)で準備される液状混合物中の少なくとも1種のカリウム塩の濃度は、ステップ(i)で準備される液状混合物中での少なくとも1種のカリウム塩の溶解限度の10%から100%までの範囲である、前記方法に関する。
好ましくは、ステップ(i)で準備される液状混合物中に含まれる少なくとも1種のカリウム塩中に含まれるカリウムの、過酸化水素に対するモル比は、25×10-6:1から1000×10-6:1までの、より好ましくは100×10-6:1から600×10-6:1までの、より好ましくは250×10-6:1から450×10-6:1までの範囲である。
更に好ましくは、ステップ(i)で準備される液状混合物中に含まれるカリウムの、過酸化水素に対するモル比は、25×10-6:1から1000×10-6:1までの、好ましくは100×10-6:1から600×10-6:1までの、より好ましくは250×10-6:1から450×10-6:1までの範囲である。
従って、本発明は、また、
(i)式(I)の化合物、過酸化水素、少なくとも1種の少なくとも部分的に溶解されたカリウム塩、および極性溶剤を含む液状混合物を準備するステップ
を含み、その際、ステップ(i)で準備される液状混合物中に含まれるカリウムの、過酸化水素に対するモル比は、25×10-6:1から1000×10-6:1までの、好ましくは100×10-6:1から600×10-6:1までの、より好ましくは250×10-6:1から450×10-6:1までの範囲である、前記方法に関する。
従って、本発明は、また、
(i)式(I)の化合物、過酸化水素、少なくとも1種の少なくとも部分的に溶解されたカリウム塩、およびアセトニトリル、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、プロピオニトリル、1,4−ジオキサン、メチル−t−ブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチルアセテート、ブチルアセテート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される極性溶剤を含み、その際、前記溶剤は、より好ましくは1,2−ジクロロエタン、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、またはそれらの2種もしくは3種の混合物である液状混合物を準備するステップ
を含み、その際、ステップ(i)で前記液状混合物を準備するために、過酸化水素は、ステップ(i)において、過酸化水素水溶液の全質量に対して、30質量%から80質量%までの範囲の、より好ましくは35質量%から75質量%までの範囲の、より好ましくは40質量%から70質量%までの範囲の過酸化水素濃度を有する過酸化水素水溶液の形で使用され、ここで前記過酸化水素水溶液は、更に1×10-6:1から250×10-6:1までの範囲の、好ましくは5×10-6:1から50×10-6:1までの範囲のナトリウムの過酸化水素に対するモル比でナトリウムを含み、
前記少なくとも1種のカリウム塩は、水酸化カリウム、ハロゲン化カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、過塩素酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1種の無機カリウム塩、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、脂肪族飽和カルボン酸、例えば好ましくは1個から6個までの、より好ましくは1個から5個までの、より好ましくは1個から4個までの、より好ましくは1個から3個までの炭素原子を有するモノカルボン酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、好ましくは2個から6個までの、より好ましくは2個から4個までの炭素原子を有するジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、好ましくは4個から10個までの炭素原子を有するトリカルボン酸、例えばクエン酸もしくはイソクエン酸またはプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、テトラカルボン酸のカリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種の有機カリウム塩、および前記少なくとも1種の無機カリウム塩の少なくとも1種と前記少なくとも1種の有機カリウム塩の少なくとも1種との組み合わせからなる群から選択され、その際、前記少なくとも1種のカリウム塩は、より好ましくは、硝酸カリウム、リン酸二水素カリウム、ギ酸カリウム、およびそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、かつ
ステップ(i)で準備される液状混合物中に含まれるカリウムの、過酸化水素に対するモル比は、25×10-6:1から1000×10-6:1までの、好ましくは100×10-6:1から600×10-6:1までの、より好ましくは250×10-6:1から450×10-6:1までの範囲である、前記方法に関する。
式(I)による化合物の濃度に関しては、ステップ(ii)による反応が行われうるのであれば特段の制限は存在しない。好ましくは、ステップ(i)で準備される液状混合物は、式(I)による化合物を、0.1:1から5:1までの、好ましくは0.2から1:1までの、より好ましくは0.3:1から0.99:1までの、より好ましくは0.5:1から0.95:1までの範囲の、過酸化水素の式(I)による化合物に対するモル比で含有する。従って、本発明は、ステップ(ii)による反応の開始時点で、過酸化水素の式(I)による化合物に対するモル比が、0.1:1から5:1までの、好ましくは0.2から1:1までの、より好ましくは0.3:1から0.99:1までの、より好ましくは0.5:1から0.95:1までの範囲である、前記方法に関する。
前記液状混合物は、ステップ(i)において、該混合物がその液状形で、場合により1つ、2つまたはそれより多くの異なる液相からなる液状形であるならば任意の所望の温度および任意の所望の圧力で準備することができる。好ましくは、前記液状混合物は、10℃から50℃までの範囲の、より好ましくは15℃から40℃までの範囲の、より好ましくは20℃から30℃までの範囲の温度を有して準備される。好ましくは、前記液状混合物は、0.7barから1.5barまでの範囲の、より好ましくは0.8barから1.3barまでの範囲の、より好ましくは0.9bar(℃)から1.1bar(℃)までの範囲で、より好ましくは大気圧で準備される。従って、本発明は、また、ステップ(i)において、前記液状混合物が、大気圧で、10℃から50℃までの範囲の、より好ましくは15℃から40℃までの範囲の、より好ましくは20℃から30℃までの範囲の温度を有して準備される、前記方法に関する。
スズ含有のゼオライト材料
ステップ(ii)によれば、式(I)による化合物と過酸化水素とは、スズ含有のゼオライト材料を含む触媒の存在下で反応される。ステップ(ii)での反応をどのように、例えば回分方式で、半回分方式で、または連続方式で実施するかに応じて、前記ゼオライト材料は、そのままで、すなわち合成および任意の後処理から得られたゼオライト粉末のままで、または合成および任意の後処理から得られたゼオライト粉末を、該ゼオライト粉末に加えて更にバインダーを含んでよい成形物が得られる成形方法にかけることによって製造された成形物の形で使用することができる。
前記スズ含有のゼオライト材料のゼオライト骨格構造に関して、特段の制限は存在しない。好ましくは、前記スズ含有のゼオライト材料は、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EMT、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MMFI、MFS、MON、MOR、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAB、NAT、NEES、NON、NPO、OBW、OFF、OSI、OSO、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN SFO、SGT、SOD、SSY、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、WEN、YUG、ZON、およびこれらの骨格構造の2種以上の混合型の骨格構造からなる群から選択される骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料、またはこれらのスズ含有のゼオライト材料の2種以上の混合物である。
より好ましくは、前記スズ含有のゼオライト材料は、BEA、MWWおよびそれらの混合型の構造からなる群から選択される骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料、またはこれらの構造の2種以上の混合物である。
本発明の文脈で使用される用語「MWW骨格構造」は、例えばCamblorらにおいて定義されるMWW構造型を有するゼオライト材料に関し、そしてまたこの構造から誘導され、かつ異なる格子パラメータcによって示される異なる層間距離を有するゼオライト構造にも関する。好ましくは、本発明によるスズ含有のゼオライト材料は、(7.1±0.1)°および(7.9±0.1)°の2シータ回折角でのピークを含むX線回折パターン、より好ましくは(7.1±0.1)°、(7.9±0.1)°、(9.6±0.1)°、(12.8±0.1)°、(14.4±0.1)°、(14.7±0.1)°、(15.8±0.1)°、(19.3±0.1)°、(20.1±0.1)°、(21.7±0.1)°、(21.9±0.1)°、(22.6±0.1)°、(22.9±0.1)°、(23.6±0.1)°、(25.1±0.1)°、(26.1±0.1)°、(26.9±0.1)°、(28.6±0.1)°および(29.1±0.1)°の2シータ回折角でのピークを含むX線回折パターンを有する。
好ましくは、該スズ含有のゼオライト材料中に含まれるスズの少なくとも一部は、ゼオライト骨格構造サイトに位置している。好ましくはYO2およびX23からなるゼオライト骨格構造を構成する他の元素は、Yに関してはSi、Ti、ZrおよびGeの少なくとも1つを含み、Xに関してはAl、B、In、GaおよびFeの少なくとも1つを含む。従って、本発明は、前記スズ含有のゼオライト材料が、X23およびY2Oを含む骨格構造を有し、ここでYは、Si、Ti、Zr、Geおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される四価の元素であり、かつXは、Al、B、In、Ga、Feおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される三価の元素である、前記方法に関する。好ましくは、YはSiであり、かつ前記スズ含有のゼオライト材料は、X23およびY2Oを含む骨格構造を有し、ここでYはSiであり、かつXは、Al、B、In、Ga、Feおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される三価の元素である。好ましくは、XはAlおよび/またはB、より好ましくはBであり、かつ前記スズ含有のゼオライト材料は、X23およびY2Oを含む骨格構造を有し、ここでYは、Si、Ti、Zr、Geおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される四価の元素であり、かつXは、Al、Bおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される三価の元素であり、その際、Xは、より好ましくはBである。より好ましくは、YはSiであるとともにXはBであり、かつ前記スズ含有のゼオライト材料は、X23およびYO2を含む骨格構造を有し、ここでYはSiであるとともにXはBである。
従って、本発明は、前記スズ含有のゼオライト材料が、BEA、MWWおよびそれらの混合型の構造からなる群から選択される骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料、またはこれらの構造の2種以上の混合物であり、かつ前記骨格構造は、X23およびYO2を含み、ここでYはSiであり、かつXは、Al、B、In、Ga、Feおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される三価の元素であり、Yは、好ましくはSiであり、かつXは、好ましくはBである、前記方法に関する。
好ましくは、スズ含有のゼオライト材料であって、該ゼオライト骨格構造の少なくとも95質量%が、好ましくは少なくとも98質量%が、より好ましくは少なくとも99質量%が、より好ましくは99.5質量%が、より好ましくは少なくとも99.8質量%が、より好ましくは少なくとも99.9質量%がSiO2およびB23およびSnからなるゼオライト材料が使用される。
本発明の方法で使用されるスズ含有のゼオライト材料は、あらゆる考えられる方法によって製造することができる。例えば、前記スズ含有のゼオライト材料を、少なくとも1種のスズに関する起源を含むX23およびYO2に関する起源から、例えば水熱合成法において製造することが考えられる。また、X23およびYO2に関する起源からスズ含有のゼオライト材料を製造することで、骨格構造がX23およびYO2からなるゼオライト材料が得られ、該ゼオライト材料中にスズを、適切な後処理ステップにおいて、好ましくは該ゼオライト骨格中に空の骨格サイトが、好ましくは空の四面体の骨格サイトが形成された後に導入することも考えられる。好ましくは、そのような空の骨格サイト、好ましくは空の四面体の骨格サイトの形成は、骨格構造がX23およびYO2からなるゼオライト材料を酸で、スチームで、または弱溶剤系で、例えば水および/またはアルコールで適切な条件下で処理することによって達成することができる。ゼオライト骨格構造中へのスズの導入は、好ましくは、空の骨格サイトを有するゼオライト骨格を、少なくとも1種の適切なスズ源の存在下に、かつ場合によりゼオライト骨格構造指向剤(directing agent)の存在下に水熱処理することによって達成することができる。また、ゼオライト骨格構造中へのスズの導入は、好ましくは、固体イオン交換法によって、適宜、空の骨格サイトを有するゼオライト骨格と、少なくとも1種の適切なスズ源とを混合することによって達成することもできる。必要に応じて、こうして得られたスズ含有のゼオライト材料は、追加の後処理段階に、例えば含浸ステップ、好ましくは湿潤含浸(wet−impregnation)ステップにかけることによって、追加のスズを前記ゼオライト材料中に、好ましくは骨格外スズとして導入することができる。
ステップ(ii)で使用されるスズ含有のゼオライト材料のスズ含量には、何ら特段の制限は課されない。好ましくは、前記スズ含有のゼオライト材料は、該スズ含有のゼオライト材料の全質量に対して、0.1質量%から25質量%までの、より好ましくは0.2質量%から20質量%までの、より好ましくは0.3質量%から16質量%までの、より好ましくは0.4質量%から15質量%までの範囲のスズ含量を有する。
ステップ(ii)で使用されるスズ含有のゼオライト材料の量に関しては、特段の制限は存在しない。好ましくは、前記スズ含有のゼオライト材料を含む触媒の量は、ステップ(ii)による反応の開始時点で、スズ含有のゼオライト材料の過酸化水素に対する質量比が、0.01:1から5:1までの、より好ましくは0.05:1から4:1までの、より好ましくは0.1:1から3:1までの範囲であるように選択される。
スズ含有のゼオライト材料の好ましい製造方法、および本発明の方法で使用できる好ましいスズ含有のゼオライト材料を、以下に記載する。
好ましい方法によれば、スズは、MWW骨格構造を有するとともに空のゼオライト骨格サイトを有するゼオライト材料中に、前記ゼオライト材料のスズ源の存在下での水熱処理を介して導入される。スズ含有のゼオライト材料の製造方法およびスズ含有のゼオライト材料を、それぞれの前方参照および従属関係によって表される以下の実施形態および実施形態の組み合わせによって説明する。
1. MWW骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料(Sn−MWW)の製造方法であって、
(a)SiO2およびB23を含むMWW骨格構造を有するホウ素含有のゼオライト材料(B−MWW)を準備するステップ、
(b)ステップ(a)で準備されたB−MWWを5.5から8までの範囲のpHを有する液体溶剤系で処理することによって前記B−MWWを脱ホウ素化するステップ、
(c)Snをステップ(b)から得られる脱ホウ素化されたB−MWW中に以下のステップ(c.1)〜(c.3)を含む方法によって導入するステップ、
(c.1)ステップ(ii)から得られる脱ホウ素化されたB−MWW、MWWテンプレート化合物、好ましくはピペリジン、ヘキサメチレンイミン、N,N,N,N’,N’,N’−ヘキサメチル−1,5−ペンタンジアンモニウムイオン、1,4−ビス(N−メチルピロリジニウム)ブタン、オクチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヘプチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヘキシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択されるMWWテンプレート化合物、およびスズ源を含有する水性合成混合物を調製するステップ、その際、前記合成混合物において、SnO2として計算されたSnの、SiO2として計算された脱ホウ素化されたB−MWW中に含まれるSiに対するモル比は、多くとも0.015:1であり;
(c.2)ステップ(c.1)から得られた合成混合物からMWW型の骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料を水熱合成することにより、MWW型の骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料をその母液中に得るステップ;
(c.3)ステップ(c.2)から得られたMWW型の骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料をその母液から分離するステップ;
(d)ステップ(c)から得られたMWW骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料を、高くても5のpHを有する水溶液で処理することによって、元素として計算して、かつSn−MWWの質量を基準として、高くても2質量%のSn含量を有するSn−MWWが得られ、場合により該Sn−MWWを前記水溶液から分離するステップ、
を含む、前記方法。
2. 実施形態1の方法であって、ステップ(a)において、前記B−MWWは、以下のステップ(a−1)〜(a−2)を含む方法によって準備し、
(a−1)ケイ素源、好ましくはアンモニアで安定化されたコロイダルシリカ、ホウ素源、好ましくはホウ酸、およびMWWテンプレート化合物、好ましくはピペリジン、ヘキサメチレンイミン、N,N,N,N’,N’,N’−ヘキサメチル−1,5−ペンタンジアンモニウムイオン、1,4−ビス(N−メチルピロリジニウム)ブタン、オクチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヘプチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヘキシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択されるMWWテンプレート化合物を含有する水性合成混合物からB−MWW前駆体を水熱合成することで、前記B−MWW前駆体をその母液中で得るステップ;
(a−2)前記B−MWW前駆体をその母液から分離するステップ、好ましくは前記ステップは、該B−MWW前駆体を乾燥するステップを含み、その際、前記乾燥は、好ましくは、100℃から180℃までの、より好ましくは110℃から140℃までの範囲の温度で行われ;
その際、ステップ(a−1)の合成混合物において、前記ホウ素源中に含まれるB23として計算されたBの、前記ケイ素源中に含まれるSiO2として計算されたSiに対するモル比は、好ましくは0.4:1から0.6:1までの、より好ましくは0.45:1から0.55:1までの、より好ましくは0.47:1から0.52:1までの範囲にあり、
前記MWWテンプレート化合物の、Si源中に含まれるSiO2として計算されたSiに対するモル比は、好ましくは0.8:1から1.7:1までの、より好ましくは1.0:1から1.5:1までの、より好ましくは1.1:1から1.3:1までの範囲にあり、かつ
2Oの、ケイ素源中に含まれるSiO2として計算されたSiに対するモル比は、好ましくは12:1から20:1までの、より好ましくは13:1から18:1までの、より好ましくは14:1から16:1までの範囲にある、前記方法。
3. 実施形態2の方法であって、ステップ(a−2)は、B−MWW前駆体の噴霧乾燥を含む、前記方法。
4. 実施形態2の方法であって、前記乾燥は、1時間から10時間までの範囲の、より好ましくは2時間から6時間までの範囲の時間にわたり行われる、前記方法。
5. 実施形態2から4のいずれかの方法であって、ステップ(a−2)は、分離された、好ましくは乾燥されたB−MWW前駆体を焼成することでB−MWWを得ることを含み、その際、前記焼成は、好ましくは400℃から800℃までの範囲の、より好ましくは600℃から700℃までの範囲の温度で行われる、前記方法。
6. 実施形態5の方法であって、前記焼成は、1時間から10時間までの範囲の、より好ましくは2時間から6時間までの範囲の時間にわたり行われる、前記方法。
7. 実施形態1から6のいずれかの方法であって、ステップ(a)において、前記B−MWWの骨格構造の少なくとも95質量%、好ましくは少なくとも98質量%、より好ましくは少なくとも99質量%が、B23およびSiO2からなる、前記方法。
8. 実施形態1から7のいずれかの方法であって、ステップ(a)において、前記B−MWWのB23:SiO2のモル比が、少なくとも0.03:1であり、好ましくは0.03:1から0.09:1までの範囲であり、より好ましくは0.03:1から0.08:1までの範囲であり、より好ましくは0.03:1から0.07:1までの範囲である、前記方法。
9. 実施形態1から8のいずれかの方法であって、ステップ(b)において、前記液体溶剤系は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、プロパン−1,2,3−トリオール、およびそれらの2種以上の混合物からなる群、好ましくは水から選択され、その際、好ましくは、前記液体溶剤系は、無機酸もしくは有機酸またはそれらの塩を含有しない、前記方法。
10. 実施形態1から9のいずれかの方法であって、ステップ(b)において、前記液体溶剤系のB−MWWに対する質量比が、40:1から5:1までの範囲であり、好ましくは30:1から7:1までの範囲であり、より好ましくは20:1から10:1までの範囲である、前記方法。
11. 実施形態1から10のいずれかの方法であって、ステップ(b)において、前記処理は、50℃から125℃までの範囲の、好ましくは90℃から115℃までの範囲の、より好ましくは95℃から105℃までの範囲の温度で行われる、前記方法。
12. 実施形態1から11のいずれかの方法であって、ステップ(b)において、前記処理は、6時間から20時間までの範囲の、好ましくは7時間から17時間までの範囲の、より好ましくは8時間から12時間までの範囲の時間にわたり行われる、前記方法。
13. 実施形態1から12のいずれかの方法であって、ステップ(b)において、前記処理は、閉鎖系において自圧下で行われる、前記方法。
14. 実施形態1から12のいずれかの方法であって、ステップ(b)において、前記処理は、開放系において還流下で行われる、前記方法。
15. 実施形態1から14のいずれかの方法であって、ステップ(b)は、脱ホウ素化されたB−MWWを乾燥させることを含み、その際、前記乾燥は、好ましくは100℃から180℃までの範囲の、より好ましくは110℃から140℃までの範囲の温度で行われる、前記方法。
16. 実施形態15の方法であって、ステップ(b)は、前記脱ホウ素化されたB−MWWの噴霧乾燥を含む、前記方法。
17. 実施形態15の方法であって、前記乾燥は、1時間から30時間までの範囲の、好ましくは14時間から18時間までの範囲の時間にわたり行われる、前記方法。
18. 実施形態1から17のいずれかの方法であって、ステップ(b)は、分離された、好ましくは乾燥された脱ホウ素化されたB−MWWを焼成することを含み、その際、前記焼成は、好ましくは400℃から800℃までの範囲の、より好ましくは600℃から700℃までの範囲の温度で行われる、前記方法。
19. 実施形態1から18のいずれかの方法であって、前記脱ホウ素化されたB−MWWは、大きくても0.01:1の、好ましくは0.001:1から0.01:1までの範囲の、より好ましくは0.001:1から0.003:1までの範囲のB23:SiO2のモル比を有する、前記方法。
20. 実施形態1から19のいずれかの方法であって、ステップ(c.1)で使用されるテンプレート化合物がピペリジンである、前記方法。
21. 実施形態1から20のいずれかの方法であって、スズ源は、SnCl4、Sn(IV)−アセテート、Sn(IV)−t−ブトキシド、SnBr4、SnCl4、SnF4、Sn(IV)−ビスアセチルアセトネートジクロリド、Sn(IV)−ビスアセチルアセトネートジブロミド、Sn(II)−アセテート、Sn(II)−アセチルアセトネート、Sn(II)−シトレート、SnCl2、SnF2、SnI2、SnSO4およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、その際、前記スズ源は、好ましくはSn(IV)−t−ブトキシドである、前記方法。
21. 実施形態1から20のいずれかの方法であって、ステップ(c.1)での合成混合物において、SnO2として計算されたSnの、SiO2として計算された脱ホウ素化されたB−MWW中に含まれるSiに対するモル比は、0.001:1から0.015:1までの範囲であり、好ましくは0.001:1から0.010:1までの範囲であり、より好ましくは0.001:1から0.0075:1までの範囲であり、より好ましくは0.001:1から0.005:1までの範囲である、前記方法。
22. 実施形態1から21のいずれかの方法であって、ステップ(c.1)での合成混合物において、前記MWWテンプレート化合物の、SiO2として計算された脱ホウ素化されたB−MWW中に含まれるSiに対するモル比は、1.0:1から2.0:1までの範囲であり、好ましくは1.2:1から1.8:1までの範囲であり、より好ましくは1.4:1から1.6:1までの範囲である、前記方法。
23. 実施形態1から22のいずれかの方法であって、ステップ(c.1)での合成混合物において、H2Oの、SiO2として計算された脱ホウ素化されたB−MWW中に含まれるSiに対するモル比は、10:1から20:1までの範囲であり、好ましくは12:1から18:1までの範囲であり、より好ましくは14:1から16:1までの範囲である、前記方法。
24. 実施形態1から23のいずれかの方法であって、ステップ(c.2)による水熱合成は、80℃から250℃までの範囲の、好ましくは120℃から200℃までの範囲の、より好ましくは160℃から180℃までの範囲の温度で行われる、前記方法。
25. 実施形態1から24のいずれかの方法であって、ステップ(c.2)による水熱合成は、20時間から200時間までの範囲の、より好ましくは60時間から160時間までの範囲の、より好ましくは110時間から125時間までの範囲の時間にわたり行われる、前記方法。
26. 実施形態1から25のいずれかの方法であって、ステップ(c.3)は、MWW骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料を乾燥させることを含み、その際、前記乾燥は、好ましくは100℃から180℃までの範囲の、より好ましくは110℃から140℃までの範囲の温度で行われる、前記方法。
27. 実施形態26の方法であって、ステップ(c.3)は、前記MWW骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料の噴霧乾燥を含む、前記方法。
28. 実施形態26の方法であって、前記乾燥は、1時間から30時間までの範囲の、好ましくは6時間から24時間までの範囲の、より好ましくは14時間から18時間までの範囲の時間にわたり行われる、前記方法。
29. 実施形態1から28のいずれかの方法であって、ステップ(c.3)において、ステップ(d)の前に、分離された、好ましくは乾燥されたMWW骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料を焼成にかけない、前記方法。
30. 実施形態1から29のいずれかの方法であって、ステップ(d)において、前記水溶液は、有機酸、好ましくはシュウ酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される有機酸、および/または無機酸、好ましくはリン酸、硫酸、塩化水素酸、硝酸およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される無機酸を含み、その際、前記無機酸は、好ましくは硝酸である、前記方法。
31. 実施形態1から30のいずれかの方法であって、ステップ(d)において、前記水溶液は、0から5までの範囲の、好ましくは0から3までの範囲の、より好ましくは0から2までの範囲のpHを有する、前記方法。
32. 実施形態1から31のいずれかの方法であって、ステップ(d)において、前記MWW骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料は、水溶液によって、50℃から175℃までの範囲の、好ましくは70℃から125℃までの範囲の、より好ましくは95℃から105℃までの範囲の温度で処理される、前記方法。
33. 実施形態1から32のいずれかの方法であって、ステップ(d)において、前記MWW骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料は、水溶液によって、1時間から40時間までの範囲の、より好ましくは12時間から24時間までの範囲の、より好ましくは18時間から22時間までの範囲の時間にわたり処理される、前記方法。
34. 実施形態1から33のいずれかの方法であって、ステップ(d)において、前記水溶液の、前記MWW骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料に対する質量比は、10:1から50:1までの範囲であり、好ましくは20:1から40:1までの範囲であり、より好ましくは25:1から35:1までの範囲である、前記方法。
35. 実施形態1から34のいずれかの方法であって、ステップ(d)において、前記処理は、閉鎖系において自圧下で行われる、前記方法。
36. 実施形態1から34のいずれかの方法であって、ステップ(d)において、前記処理は、開放系において還流下で行われる、前記方法。
37. 実施形態1から36のいずれかの方法であって、ステップ(d)で得られたSn−MWWの、元素として計算された該Sn−MWWの質量を基準とするスズ含量は、0.1質量%から1.9質量%までの範囲であり、より好ましくは0.2質量%から1.5質量%までの範囲であり、より好ましくは0.3質量%から1.2質量%までの範囲であり、より好ましくは0.4質量%から1.0質量%までの範囲である、前記方法。
38. 実施形態1から37のいずれかの方法であって、ステップ(d)は、Sn−MWWを乾燥させることを含み、その際、前記乾燥は、好ましくは100℃から180℃までの範囲の、より好ましくは110℃から130℃までの範囲の温度で行われる、前記方法。
39. 実施形態38の方法であって、ステップ(d)は、Sn−MWWの噴霧乾燥を含む、前記方法。
40. 実施形態38の方法であって、前記乾燥は、1時間から20時間までの範囲の、好ましくは4時間から16時間までの範囲の、より好ましくは8時間から12時間までの範囲の時間にわたり行われる、前記方法。
41. 実施形態1から40のいずれかの方法であって、ステップ(d)は、好ましくは分離された、好ましくは乾燥されたSn−MWWを焼成することを含み、その際、前記焼成は、好ましくは400℃から800℃までの範囲の、より好ましくは450℃から700℃までの範囲の、より好ましくは500℃から600℃までの範囲の温度で行われる、前記方法。
42. 実施形態41の方法であって、前記焼成は、1時間から20時間までの範囲の、より好ましくは8時間から12時間までの範囲の時間にわたり行われる、前記方法。
43. MWW骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料(Sn−MWW)であって、元素として計算された該Sn−MWWの質量を基準として多くとも2質量%のスズ含量を有し、かつ(6.6±0.1)°の2シータ回折角でのピークを含み、好ましくは(6.6±0.1)°の2シータ回折角でのピーク、(7.1±0.1)°の2シータ回折角でのピーク、および(7.9±0.1)°の2シータ回折角でのピークを含む、前記ゼオライト材料。
44. 実施形態43のゼオライト材料であって、前記ゼオライト材料が、元素として計算されてSn−MWWの質量を基準として、0.1質量%から1.9質量%までの、より好ましくは0.2質量%から1.5質量%までの、より好ましくは0.3質量%から1.2質量%までの、より好ましくは0.4質量%から1.0質量%までの範囲のスズ含量を有する、前記ゼオライト材料。
45. 実施形態43または44のゼオライト材料であって、(6.6±0.1)°、(7.1±0.1)°、(7.9±0.1)°、(9.6±0.1)°、(12.8±0.1)°、(14.4±0.1)°、(14.7±0.1)°、(15.8±0.1)°、(19.3±0.1)°、(20.1±0.1)°、(21.7±0.1)°、(21.9±0.1)°、(22.6±0.1)°、(22.9±0.1)°、(23.6±0.1)°、(25.1±0.1)°、(26.1±0.1)°、(26.9±0.1)°、(28.6±0.1)°および(29.1±0.1)°の2シータ回折角でのピークを含むX線回折パターンを有する、前記ゼオライト材料。
46. 実施形態43から46のいずれかのゼオライト材料であって、XRDにより測定されたcパラメータは、(27.1±0.2)オングストロームである、前記ゼオライト材料。
47. 実施形態43から46のいずれかのゼオライト材料であって、前記Sn−MWWのMWW骨格構造は、SiO2およびB23を含み、かつB23:SiO2のモル比は、大きくても0.01:1であり、好ましくは0.001:1から0.01:1までの範囲であり、より好ましくは0.001:1から0.003:1までの範囲である、前記ゼオライト材料。
48. 実施形態43から47のいずれかのゼオライト材料であって、前記Sn−MWWのMWW骨格構造の少なくとも95質量%、好ましくは少なくとも98質量%、より好ましくは少なくとも99質量%が、SiO2およびB23およびSnからなる、前記ゼオライト材料。
49. 実施形態43から48のいずれかのゼオライト材料であって、DIN66131により測定されたBET表面積を、300m2/gから600m2/gまでの範囲で、好ましくは350m2/gから550m2/gまでの範囲で有する、前記ゼオライト材料。
50. 実施形態43から49のいずれかのゼオライト材料であって、DIN66131により測定されたラングミュア表面積を、400m2/gから800m2/gまでの範囲で、好ましくは400m2/gから750m2/gまでの範囲で有する、前記ゼオライト材料。
51. 実施形態43から50のいずれかのゼオライト材料であって、実施形態1から42のいずれかの方法によって得ることができる、もしくは得られる、前記ゼオライト材料、または実施形態1から42のいずれかの方法によって得ることができる、もしくは得られるゼオライト材料。
52. 噴霧乾燥粉末(spray powder)としての、実施形態43から51のいずれかのゼオライト材料。
更なる好ましい方法によれば、スズは、MWW骨格構造を有するとともに空のゼオライト骨格サイトを有するゼオライト材料中に、前記ゼオライト材料のスズ源の存在下での固体イオン交換を介して導入される。スズ含有のゼオライト材料の製造方法およびスズ含有のゼオライト材料を、それぞれの前方参照および従属関係によって表される以下の実施形態および実施形態の組み合わせによって説明する。
1. MWW骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料の製造方法であって、
(a)X23およびYO2[式中、式中、Yは、Si、Ti、Zr、Geおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される四価の元素であり、かつXは、Al、B、In、Ga、Feおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される三価の元素である]を含む空の四面体骨格サイトを有するMWW骨格構造を有するゼオライト材料を準備するステップ、
(b)スズイオン源を固体形で準備するステップ、
(c)スズをステップ(a)で準備されたゼオライト材料中に、該ステップ(a)で準備されたゼオライト材料を、前記ステップ(b)で準備されたスズイオン源と固体イオン交換条件下で接触させることによって導入することで、MWW骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料を得るステップ、
を含む、前記方法。
2. 実施形態の方法であって、YがSiであり、かつXがBである、前記方法。
3. 実施形態1または2の方法であって、ステップ(a)により、空の四面体骨格サイトを有するMWW骨格構造を有するゼオライト材料は、以下のステップ(a.1)〜(a.4)を含む方法によって準備される、前記方法
(a.1)MWW骨格構造を有するゼオライト出発材料を準備するステップ、その際、該ゼオライト出発材料の骨格構造は、X23およびYO2を含み、かつX23:YO2のモル比は、少なくとも0.03:1であり、好ましくは0.03:1から0.09:1までの範囲であり、より好ましくは0.03:1から0.08:1までの範囲であり、より好ましくは0.03:1から0.07:1までの範囲であり;
(a.2)ステップ(a.1)で準備されたゼオライト出発材料を液体溶剤系で、好ましくは還流下に処理することによって空の四面体骨格サイトを生成させることで、0.03未満:1のX23:YO2のモル比を有するゼオライト材料を得るステップ、その際、前記液体溶剤系は、好ましくは、水、メタノール、エタノール、プロパノール、エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、プロパン−1,2,3−ジオールおよびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、前記液体溶剤系は、より好ましくは水であり、より好ましくは前記液体溶剤系は、無機酸もしくは有機酸またはそれらの塩を含有せず、かつ前記処理は、好ましくは50℃から125℃までの範囲の、より好ましくは90℃から115℃までの範囲の、より好ましくは95℃から105℃までの範囲の温度で、かつ好ましくは6時間から20時間までの範囲の、より好ましくは7時間から17時間までの範囲の、より好ましくは8時間から12時間までの範囲の時間にわたり行われ;
(a.3)ステップ(a.2)から得られたゼオライト材料を、前記液体溶剤系から少なくとも部分的に分離するステップ、前記ステップは、場合により乾燥を含み、その乾燥は、好ましくは100℃から180℃までの範囲の、より好ましくは110℃から140℃までの範囲の温度で行われ;
(a.4)場合により、ステップ(a.3)から得られた分離されたゼオライト材料を、好ましくは400℃から800℃までの範囲の、より好ましくは600℃から700℃までの範囲の温度で焼成するステップ。
4. 実施形態1から3のいずれかの方法であって、ステップ(a)で準備されたゼオライト材料の骨格構造において、X23:YO2のモル比が、大きくても0.01:1であり、好ましくは0.001:1から0.01:1までの範囲であり、より好ましくは0.001:1から0.003:1までの範囲である、前記方法。
5. 実施形態1から4のいずれかの方法であって、ステップ(a)で準備されるゼオライト材料の骨格構造の少なくとも95質量%、好ましくは少なくとも98質量%、より好ましくは少なくとも99質量%が、X23およびYO2からなる、前記方法。
6. 実施形態1から5のいずれかの方法であって、ステップ(a)で準備されたスズイオン源は、スズ(II)アルコキシド、スズ(IV)アルコキシド、有機酸のスズ(II)塩、有機酸のスズ(IV)塩およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、好ましくは1個から4個までの炭素原子を有するスズ(II)アルコキシド、1個から4個までの炭素原子を有するスズ(IV)アルコキシド、1個から6個までの炭素原子を有する有機酸のスズ(II)塩、1個から6個までの炭素原子を有する有機酸のスズ(IV)塩、およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、その際、より好ましくは、ステップ(ii)で準備されるスズイオン源はスズ(II)アセテートである、前記方法。
7. 実施形態1から6のいずれかの方法であって、ステップ(c)により、前記ゼオライト材料と接触されるスズイオン源中に含まれるスズの、前記ゼオライト材料の空の四面体骨格サイトに対するモル比は、大きくても1:1である、前記方法。
8. 実施形態1から7のいずれかの方法であって、ステップ(c)において、ステップ(a)で準備されたゼオライト材料を、ステップ(b)で準備されたスズイオン源と、固体イオン交換条件下で接触させることは、ステップ(a)で準備されたゼオライト材料と一緒に該スズイオン源とを混合することを含む、前記方法。
9. 実施形態8の方法であって、ステップ(c)において、前記ゼオライト材料は、前記スズイオン源と一緒に、2分間から5時間までの範囲の、好ましくは5分間から3時間までの範囲の、より好ましくは10分間から2時間までの範囲の時間にわたり混合される、前記方法。
10. 実施形態8または9の方法であって、100Wから1000Wまでの範囲の、好ましくは200Wから800Wまでの範囲の、より好ましくは300Wから600Wまでの範囲の撹拌エネルギー入力で撹拌しながら粉砕が行われる、前記方法。
11. 実施形態8から10のいずれかの方法であって、前記ゼオライト材料を磨砕および/または粉砕してから前記ゼオライト材料と一緒にスズイオン源を粉砕するか、または前記スズイオン源を磨砕および/または粉砕してから前記ゼオライト材料と一緒に該スズイオン源を粉砕するか、または前記ゼオライト材料を磨砕および/または粉砕してから前記ゼオライト材料と一緒に前記スズイオン源を粉砕し、そして該スズイオン源を磨砕および/または粉砕してから前記ゼオライト材料と一緒に該スズイオン源を粉砕することを含む、前記方法。
12. 実施形態1から11のいずれかの方法であって、
(iv)ステップ(c)から得られたゼオライト材料を熱処理にかけるステップ
を更に含む、前記方法。
13. 実施形態12に記載の方法であって、ステップ(d)による熱処理は乾燥を含み、そして該乾燥は、75℃から175℃までの範囲の、好ましくは100℃から150℃までの範囲の温度で、2時間から48時間までの範囲の、より好ましくは6時間から24時間までの範囲の時間にわたり、好ましくは少なくとも部分的に酸素を含む雰囲気中で行われる、前記方法。
14. 実施形態12または13に記載の方法であって、ステップ(d)による熱処理は焼成を含み、そして該焼成は、400℃から700℃までの範囲の、好ましくは450℃から600℃までの範囲の温度で、1時間から10時間までの範囲の、より好ましくは2時間から8時間までの範囲の時間にわたり、好ましくは少なくとも部分的に酸素を含む雰囲気中で行われる、前記方法。
15. 実施形態1から14のいずれかの方法であって、
(e)ステップ(c)または(d)から、好ましくはステップ(d)から得られたゼオライト材料を、高くても5のpHを有する水溶液で処理するステップ
を更に含む、前記方法。
16. 実施形態1から15のいずれかの方法であって、ステップ(e)において、前記水溶液は、有機酸、好ましくはシュウ酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される有機酸、および/または無機酸、好ましくはリン酸、硫酸、塩化水素酸、硝酸およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される無機酸を含み、その際、前記無機酸は、より好ましくは硝酸である、前記方法。
17. 実施形態15または16の方法であって、ステップ(e)において、前記水溶液は、0から5までの範囲の、好ましくは0から3.5までの範囲の、より好ましくは0から2までの範囲のpHを有する、前記方法。
18. 実施形態15から17のいずれかの方法であって、ステップ(e)において、前記ゼオライト材料を、水溶液によって、70℃から100℃までの範囲の、好ましくは80℃から100℃までの範囲の、より好ましくは90℃から100℃までの範囲の温度で、好ましくは閉鎖系において自圧下で処理する、前記方法。
19. 実施形態15から18のいずれかの方法であって、ステップ(e)において、前記ゼオライト材料を、水溶液によって、10分間から40時間までの範囲の、好ましくは30分間から30時間までの範囲の、より好ましくは1時間から25時間までの範囲の時間にわたり処理する、前記方法。
20. 実施形態15から19のいずれかの方法であって、ステップ(e)において、前記ゼオライト材料を、水溶液によって、2:1から50:1までの、好ましくは8:1から40:1までの、より好ましくは10:1から35:1までの範囲の前記水溶液の前記ゼオライト材料に対する質量比で処理する、前記方法。
21. 実施形態15から20のいずれかの方法であって、更に、
(vi)ステップ(e)で得られたゼオライト材料を、好ましくは洗浄後に乾燥および焼成するステップ
を含み、その際、前記乾燥は、好ましくは90℃から180℃までの範囲の、好ましくは100℃から150℃までの範囲の温度で、1時間から24時間までの範囲の、好ましくは6時間から12時間までの範囲の時間にわたり行われ、かつ前記焼成は、好ましくは400℃から700℃までの範囲の、好ましくは450℃から600℃までの範囲の温度で、1時間から24時間までの範囲の、好ましくは6時間から12時間までの範囲の時間にわたり行われる、前記方法。
22. 実施形態1から21のいずれかの方法によって得ることができる、または得られる、スズ含有のゼオライト材料。
23. X23およびYO2[式中、Yは、Si、Ti、Zr、Geおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される四価の元素であり、Yは、好ましくはSiであり、Xは、Al、B、In、Ga、Feおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される三価の元素であり、Xは、好ましくはBである]を含むMWW型の骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料であって、前記骨格構造は、追加的にスズを含み、ここで該ゼオライト材料の骨格構造において、X23:YO2のモル比は、大きくても0.01:1であり、好ましくは0.001:1から0.01:1までの範囲であり、より好ましくは0.001:1から0.003:1までの範囲であり、その際、前記ゼオライト材料の骨格構造の少なくとも95質量%、好ましくは少なくとも98質量%、より好ましくは少なくとも99質量%は、X、Y、Oおよびスズからなり、かつ前記スズ含有のゼオライト材料は、該スズ含有のゼオライト材料の全質量に対して、少なくとも10質量%のスズ含量を有する、前記スズ含有のゼオライト材料。
24. 実施形態23のスズ含有のゼオライト材料であって、該スズ含有のゼオライト材料の全質量に対して、10質量%から20質量%までの、より好ましくは11質量%から18質量%までの、より好ましくは12質量%から16質量%までの範囲のスズ含量を有する、前記スズ含有のゼオライト材料。
25. 実施形態23または24のスズ含有のゼオライト材料であって、請求項1から21のいずれかの方法によって得ることができる、または得られる、前記スズ含有のゼオライト材料。
更なる好ましい方法によれば、スズは、BEA骨格構造を有するとともに空のゼオライト骨格サイトを有するゼオライト材料中に、前記ゼオライト材料のスズ源の存在下での固体イオン交換を介して導入される。スズ含有のゼオライト材料の製造方法およびスズ含有のゼオライト材料を、それぞれの前方参照および従属関係によって表される以下の実施形態および実施形態の組み合わせによって説明する。
1. BEA骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料の製造方法であって、
(a)X23およびYO2[式中、式中、Yは、Si、Ti、Zr、Geおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される四価の元素であり、かつXは、Al、B、In、Ga、Feおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される三価の元素である]を含む空の四面体骨格サイトを有するBEA骨格構造を有するゼオライト材料を準備するステップ、
(b)スズイオン源を固体形で準備するステップ、
(c)スズをステップ(a)で準備されたゼオライト材料中に、該ステップ(a)で準備されたゼオライト材料を、前記ステップ(b)で準備されたスズイオン源と固体イオン交換条件下で接触させることによって導入することで、BEA骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料を得るステップ、
(d)ステップ(c)から得られたゼオライト材料を熱処理にかけるステップ、
(e)ステップ(d)から得られた熱処理されたゼオライト材料を、高くても5のpHを有する水溶液で処理するステップ
を含む、前記方法。
2. 請求項1の方法であって、YがSiであり、かつXがBである、前記方法。
3. 実施形態1または2の方法であって、ステップ(a)により、空の四面体骨格サイトを有するBEA骨格構造を有するゼオライト材料は、以下のステップ(a.1)〜(a.4)を含む方法によって準備される、前記方法
(a.1)BEA骨格構造を有するゼオライト出発材料を準備するステップ、その際、該ゼオライト出発材料の骨格構造は、X23およびYO2を含み、かつX23:YO2のモル比は、0.02超:1であり、好ましくは少なくとも0.03:1であり、より好ましくは0.03:1から0.07:1までの範囲であり、より好ましくは0.03:1から0.06:1までの範囲であり、より好ましくは0.03:1から0.05:1までの範囲であり;
(a.2)ステップ(a.1)で準備されたゼオライト出発材料を液体溶剤系で、好ましくは還流下に処理することによって空の四面体骨格サイトを生成させることで、大きくても0.02:1のX23:YO2のモル比を有するゼオライト材料を得るステップ、その際、前記液体溶剤系は、好ましくは、水、メタノール、エタノール、プロパノール、エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、プロパン−1,2,3−ジオールおよびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、前記液体溶剤系は、より好ましくは水であり、より好ましくは前記液体溶剤系は、無機酸もしくは有機酸またはそれらの塩を含有せず、かつ前記処理は、好ましくは50℃から125℃までの範囲の、より好ましくは90℃から115℃までの範囲の、より好ましくは95℃から105℃までの範囲の温度で、好ましくは6時間から20時間までの範囲の、より好ましくは7時間から17時間までの範囲の、より好ましくは8時間から12時間までの範囲の時間にわたり行われ;
(a.3)ステップ(a.2)から得られたゼオライト材料を、前記液体溶剤系から少なくとも部分的に分離するステップ、前記ステップは、場合により乾燥を含み;
(a.4)場合により、ステップ(a.3)から得られた分離されたゼオライト材料を、好ましくは400℃から700℃までの範囲の、より好ましくは450℃から550℃までの範囲の温度で、かつ1時間から10時間までの範囲の、より好ましくは3時間から6時間までの範囲の時間にわたり焼成するステップ。
4. 実施形態1から3のいずれかの方法であって、ステップ(a)で準備されたゼオライト材料の骨格構造において、X23:YO2のモル比が、大きくても0.02:1であり、好ましくは大きくても0.01:1であり、より好ましくは0.0005:1から0.01:1までの範囲であり、より好ましくは0.0009:1から0.003:1までの範囲である、前記方法。
5. 実施形態1から4のいずれかの方法であって、ステップ(a)で準備されるゼオライト材料の骨格構造の少なくとも95質量%、好ましくは少なくとも98質量%、より好ましくは少なくとも99質量%が、X23およびYO2からなる、前記方法。
6. 実施形態1から5のいずれかの方法であって、ステップ(b)で準備されたスズイオン源は、スズ(II)アルコキシド、スズ(IV)アルコキシド、有機酸のスズ(II)塩、有機酸のスズ(IV)塩およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、好ましくは1個から4個までの炭素原子を有するスズ(II)アルコキシド、1個から4個までの炭素原子を有するスズ(IV)アルコキシド、1個から6個までの炭素原子を有する有機酸のスズ(II)塩、1個から6個までの炭素原子を有する有機酸のスズ(IV)塩、およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、その際、より好ましくは、ステップ(b)で準備されるスズイオン源はスズ(II)アセテートである、前記方法。
7. 実施形態1から6のいずれかの方法であって、ステップ(c)により、前記ゼオライト材料と接触されるスズイオン源中に含まれるスズの、前記ゼオライト材料の空の四面体骨格サイトに対するモル比は、大きくても1:1である、前記方法。
8. 実施形態1から7のいずれかの方法であって、ステップ(c)において、ステップ(a)で準備されたゼオライト材料を、ステップ(b)で準備されたスズイオン源と、固体イオン交換条件下で接触させることは、ステップ(a)で準備されたゼオライト材料と一緒に該スズイオン源とを混合することを含む、前記方法。
9. 実施形態8の方法であって、ステップ(c)において、前記ゼオライト材料は、前記スズイオン源と一緒に、2分間から5時間までの範囲の、好ましくは5分間から3時間までの範囲の、より好ましくは10分間から2時間までの範囲の時間にわたり混合される、前記方法。
10. 実施形態8または9の方法であって、前記混合は、100Wから1000Wまでの範囲の、好ましくは200Wから800Wまでの範囲の、より好ましくは300Wから600Wまでの範囲の撹拌エネルギー入力で撹拌しながら行われる、前記方法。
11. 実施形態8から10のいずれかの方法であって、前記ゼオライト材料を磨砕および/または粉砕してから前記ゼオライト材料と一緒にスズイオン源を粉砕するか、または前記スズイオン源を磨砕および/または粉砕してから前記ゼオライト材料と一緒に該スズイオン源を粉砕するか、または前記ゼオライト材料を磨砕および/または粉砕してから前記ゼオライト材料と一緒に前記スズイオン源を粉砕し、そして該スズイオン源を磨砕および/または粉砕してから前記ゼオライト材料と一緒に該スズイオン源を粉砕することを含む、前記方法。
12. 実施形態1から11のいずれかの方法であって、ステップ(d)による熱処理は焼成を含み、その際、該焼成は、好ましくは400℃から700℃までの範囲の、より好ましくは450℃から650℃までの範囲の温度で、より好ましくは500℃から600℃までの範囲の温度で、好ましくは1時間から10時間までの範囲の、より好ましくは2時間から8時間までの範囲の時間にわたり、より好ましくは3時間から6時間までの範囲の時間にわたり、好ましくは少なくとも部分的に酸素を含む雰囲気中で行われる、前記方法。
13. 実施形態1から12のいずれかの方法であって、ステップ(d)による焼成は、部分的に不活性雰囲気中で行われる、前記方法。
14. 実施形態1から13のいずれかの方法であって、ステップ(e)において、前記水溶液は、有機酸、好ましくはシュウ酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される有機酸、および/または無機酸、好ましくはリン酸、硫酸、塩化水素酸、硝酸およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される無機酸を含み、その際、前記無機酸は、好ましくは硝酸である、前記方法。
15. 実施形態1から14のいずれかの方法であって、ステップ(e)において、前記水溶液は、0から5までの範囲の、好ましくは0から3.5までの範囲の、より好ましくは0から2までの範囲のpHを有する、前記方法。
16. 実施形態1から15のいずれかの方法であって、ステップ(e)において、前記熱処理された材料を、水溶液によって、20℃から130℃までの範囲の、好ましくは50℃から120℃までの範囲の、より好ましくは90℃から110℃までの範囲の温度で処理する、前記方法。
17. 実施形態1から16のいずれかの方法であって、ステップ(e)において、前記熱処理されたゼオライト材料を、水溶液によって、10分間から40時間までの範囲の、好ましくは30分間から30時間までの範囲の、より好ましくは1時間から25時間までの範囲の時間にわたり処理する、前記方法。
18. 実施形態1から17のいずれかの方法であって、ステップ(e)において、前記熱処理されたゼオライト材料を、水溶液によって、2:1から50:1までの、好ましくは8:1から40:1までの、より好ましくは10:1から35:1までの範囲の前記水溶液の前記熱処理されたゼオライト材料に対する質量比で処理する、前記方法。
19. 実施形態1から18のいずれかの方法であって、更に、
(f)ステップ(e)で得られたゼオライト材料を、好ましくは洗浄後に乾燥および/または焼成するステップ
を含み、その際、前記乾燥は、好ましくは100℃から180℃までの範囲の、好ましくは120℃から150℃までの範囲の温度で、10時間から70時間までの範囲の、好ましくは15時間から25時間までの範囲の時間にわたり行われ、かつ前記焼成は、好ましくは550℃から700℃までの範囲の、好ましくは600℃から680℃までの範囲の温度で、1時間から10時間までの範囲の、好ましくは2時間から5時間までの範囲の時間にわたり行われる、前記方法。
20. X23およびYO2[式中、Yは、Si、Ti、Zr、Geおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される四価の元素であり、Yは、好ましくはSiであり、Xは、Al、B、In、Ga、Feおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される三価の元素であり、Xは、好ましくはBである]を含むBEA型の骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料であって、前記骨格構造は、追加的にスズを含み、ここで該ゼオライト材料の骨格構造において、X23:YO2、好ましくはB2O:SiO2のモル比は、大きくても0.02:1であり、好ましくは大きくても0.01:1であり、より好ましくは0.0005:1から0.01:1までの範囲であり、より好ましくは0.0009:1から0.003:1までの範囲であり、その際、前記ゼオライト材料の骨格構造の少なくとも95質量%、好ましくは少なくとも98質量%、より好ましくは少なくとも99質量%は、X、Y、Oおよびスズ、好ましくはB、Si、Oおよびスズからなり、かつ前記スズ含有のゼオライト材料は、多くても12質量%の、好ましくは多くても10質量%の吸水率を有する、前記スズ含有のゼオライト材料。
21. 実施形態20のスズ含有のゼオライト材料であって、該スズ含有のゼオライト材料の全質量に対して、2質量%から20質量%までの、より好ましくは5質量%から18質量%までの、より好ましくは8質量%から16質量%までの範囲のスズ含量を有する、前記スズ含有のゼオライト材料。
22. 実施形態20または21のスズ含有のゼオライト材料であって、200nmから220nmまでの範囲に最大値を示す紫外/可視スペクトルを有する、前記スズ含有のゼオライト材料。
23. 実施形態20から22のいずれかのスズ含有のゼオライト材料であって、請求項1から19のいずれかの方法によって得ることができる、または得られる、前記スズ含有のゼオライト材料。
成形物の製造
本発明の酸化方法がステップ(ii)で行われる方式に応じて、スズ含有のゼオライト材料を含む触媒は、好ましくは粉末として、噴霧乾燥粉末として、または成形物として使用される。例えば、本発明の酸化方法が回分方式で実施される場合に、スズ含有のゼオライト材料を含む触媒を、粉末として、または噴霧乾燥粉末として使用することが好ましいことがある。例えば、本発明の酸化方法が半連続方式または連続方式で実施される場合に、スズ含有のゼオライト材料を含む触媒を、噴霧乾燥粉末として、または成形物として使用することが好ましいことがある。従って、本発明の酸化方法の具体的な方式に応じて、スズ含有のゼオライト系の粉末または噴霧乾燥粉末を、好ましくは前記実施形態によるスズ含有のゼオライト系の粉末または噴霧乾燥粉末を更に加工して、該粉末または該噴霧乾燥粉末を含む成形物を製造することが考えられる。
好ましくは、前記成形物は、
(A)スズ含有のゼオライト材料を含む成形可能な混合物であって、場合によりバインダーまたはバインダー前駆体を含む前記混合物を調製するステップ、
(B)ステップ(A)から得られた混合物を成形することで、スズ含有のゼオライト材料を含有する成形物を得るステップ、
(C)場合により、ステップ(B)で得られた成形物を乾燥および/または焼成するステップ
を含む方法によって製造される。
一般に、適切なバインダーは、バインダーが無しに存在しうる物理吸着を超える、結合されるべきゼオライト材料粒子間に接着性および/または凝集性を付与するあらゆる化合物である。そのようなバインダーの例は、金属酸化物、例えばSiO2、Al23、TiO2、ZrO2もしくはMgO、またはクレイ、あるいはこれらの酸化物の2種以上の混合物、またはSi、Al、Ti、ZrおよびMgの少なくとも2種の混合酸化物である。クレイ鉱物および天然産生のまたは合成産生のアルミナ、例えばα−、β、γ−、δ−、η−、κ−、χ−もしくはθ−アルミナおよびそれらの無機もしくは有機金属前駆体化合物、例えばギブサイト、バイヤライト、ベーマイトもしくはシュードベーマイトまたはトリアルコキシアルミネート、例えばアルミニウムトリイソプロピレートが、Al23型バインダーとして特に好ましい。更なる考えられるバインダーは、極性部と非極性部とを有する両親媒性化合物および黒鉛であってよい。更なるバインダーは、例えばクレイ、例えばモンモリロナイト、カオリン、メタカオリン、ヘクトライト、ベントナイト、ハロイサイト、ディッカイト、ナクライトまたはアナキサイトであってよい。これらのバインダーは、そのままで、または適切な前駆体化合物の形で使用することができ、その前駆体化合物は、噴霧乾燥および/または後続の焼成の間に所望のバインダーを形成するものである。そのようなバインダー前駆体の例は、テトラアルコキシシラン、テトラアルコキシチタネート、テトラアルコキシジルコネートまたは2種以上の異なるテトラアルコキシシランの混合物もしくは2種以上の異なるテトラアルコキシチタネートの混合物もしくは2種以上の異なるテトラアルコキシジルコネートの混合物、または少なくとも1種のテトラアルコキシシランおよび少なくとも1種のテトラアルコキシチタネートの混合物もしくは少なくとも1種のテトラアルコキシシランおよび少なくとも1種のテトラアルコキシジルコネートの混合物もしくは少なくとも1種のテトラアルコキシチタネートおよび少なくとも1種のテトラアルコキシジルコネートの混合物もしくは少なくとも1種のテトラアルコキシシランおよび少なくとも1種のテトラアルコキシチタネートおよび少なくとも1種のテトラアルコキシジルコネートの混合物である。本発明の文脈においては、完全にかもしくは部分的のいずれかにSiO2を含む本発明のバインダー、またはSiO2が形成されるSiO2の前駆体である本発明のバインダーが好ましい。この文脈においては、コロイダルシリカと、いわゆる「湿式法」シリカおよびいわゆる「乾式法」シリカの両方を使用することができる。このシリカは、アモルファスシリカであってよく、その際、該シリカ粒子のサイズは、例えば5nmから100nmまでの範囲であり、かつ該シリカ粒子の表面積は、50m2/gから500m2/gの範囲である。コロイダルシリカ、好ましくはアルカリ性溶液および/またはアンモニア性溶液としての、より好ましくはアンモニア性溶液としてのコロイダルシリカは、とりわけ例えばLudox(登録商標)、Syton(登録商標)、Nalco(登録商標)またはSnowtex(登録商標)として市販されている。「湿式法」シリカは、とりわけ例えばHi−Sil(登録商標)、Ultrasil(登録商標)、Vulcasil(登録商標)、Santocel(登録商標)、Valron−Estersil(登録商標)、Tokusil(登録商標)またはNipsil(登録商標)として市販されている。「乾式法」シリカは、とりわけ例えばAerosil(登録商標)、Reolosil(登録商標)、Cab−O−Sil(登録商標)、Fransil(登録商標)またはArcSilica(登録商標)として市販されている。とりわけ、コロイダルシリカのアンモニア性溶液が好ましいことがある。
前記スズ含有ゼオライト材料の、成形物の製造のために使用されるバインダーの量に対する比率については、一般的に自由に選択することができる。一般的に、前記スズ含有のゼオライト材料の、前記バインターに対する質量比は、20:1から1:20までの範囲であり、好ましくは10:1から1:10までの範囲であり、より好ましくは1:1から1:10までの範囲である。
前記スズ含有のゼオライト材料を基礎とする成形物の製造のために、成形可能な混合物の改善された加工可能性を与えるのに、少なくとも1種のペースト化剤を使用することができる。考えられるペースト化剤は、なかでも、有機の、特に親水性のポリマー、例えば炭水化物、例えばセルロース、セルロース誘導体、例えばメチルセルロースおよびデンプン、例えばバレイショデンプン、壁紙用プラスター、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリイソブテンまたはポリテトラヒドロフランである。水、アルコールもしくはグリコールまたはそれらの混合物、例えば水とアルコールとの混合物、または水とグリコールとの混合物、例えば水とメタノールとの混合物、または水とエタノールとの混合物、または水とプロパノールとの混合物、または水とプロピレングリコールとの混合物をペースト化剤として使用することを挙げることができる。好ましくは、炭水化物、例えばセルロース、セルロース誘導体、水およびこれらの化合物の2種以上の混合物、例えば水およびセルロースまたは水およびセルロース誘導体の混合物がペースト化剤として使用される。本発明による方法の特に好ましい一実施形態においては、前記少なくとも1種のペースト化剤は、以下に更に記載されるように、乾燥および/または焼成によって除去される。そのようなペースト化剤は、特定の多孔質、好ましくはメソ孔質を該成形物へと付与することもできる。
前記スズ含有ゼオライト材料の、成形物の製造のために使用されるペースト化剤の量に対する比率については、一般的に自由に選択することができる。一般的に、前記スズ含有のゼオライト材料の、前記ペースト化剤に対する質量比は、20:1から1:50までの範囲であり、好ましくは10:1から1:40までの範囲であり、より好ましくは1:1から1:30までの範囲である。
更に、細孔形成剤、特にメソ孔形成剤を、前記成形物の製造のために追加的に使用することが考えられる。そのような通常使用される細孔形成剤は、好ましくは、高分子ビニル化合物、例えばポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレンオキシド、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオレフィン、ポリアミドおよびポリエステルである。
前記スズ含有ゼオライト材料の、成形物の製造のために使用される細孔形成剤の量に対する比率については、一般的に自由に選択することができる。一般的に、前記スズ含有のゼオライト材料の、前記細孔形成剤に対する質量比は、20:1から1:50までの範囲であり、好ましくは10:1から1:40までの範囲であり、より好ましくは1:1から1:30までの範囲である。
本発明の成形物は、ステップ(B)においてあらゆる考えられる形状、例えばストランド形状、例えば矩形断面、三角形断面、六角形断面、正方形断面、楕円形断面もしくは円形断面を有するストランド形状、星形形状、タブレット形状、球形状、中空円筒形状等で成形することができる。具体的な形状に応じて、ステップ(B)による成形法は選択されることとなる。本発明の好ましい一実施形態によれば、ストランド形状が製造される場合に、ステップ(B)による成形は、好ましくはステップ(A)で得られる混合物を押出にかけることを含む。適切な押出装置は、例えば「Ullmann’s Enzyklopaedie der Technischen Chemie」,第4版,第2巻,第295頁以降,1972に記載されている。押出機の使用に加えて、該成形物の製造のために押出プレス機を使用することもできる。必要に応じて、前記押出機は、適宜、押出プロセスの間に冷却することができる。バッチ当たり電力消費が、1Aから10Aまでの範囲であり、好ましくは1.5Aから6Aまでの範囲であり、より好ましくは2Aから4Aまでの範囲である押出プロセスが考えられる。押出ダイヘッドを通じて押出機を出て行くストランドは、適切なワイヤによって、または断続的な気流を介して機械的に切断することができる。
ステップ(B)から得られた成形物は、場合により乾燥および/または焼成される。乾燥条件および焼成条件に関して特段の制限は存在しない。前記乾燥は、好ましくは、一般的に80℃から160℃までの範囲の、より好ましくは90℃から155℃までの範囲の、より好ましくは100℃から150℃までの範囲の温度で、かつ好ましくは6時間から24時間までの範囲の、より好ましくは10時間から20時間までの範囲の時間にわたり行われる。前記乾燥は、任意の適切なガス雰囲気下で行うことができ、その際、窒素、空気および/またはリーンエアが好ましい。
前記焼成は、好ましくは、一般的に400℃から650℃までの範囲の、より好ましくは450℃から625℃までの範囲の、より好ましくは500℃から600℃までの範囲の温度で、かつ好ましくは0.25時間から6時間までの範囲の、より好ましくは0.5時間から2.5時間までの範囲の時間にわたり行われる。前記焼成は、任意の適切なガス雰囲気下で行うことができ、その際、空気および/またはリーンエアが好ましい。
更に、ステップ(B)または(C)から、好ましくはステップ(C)から得られたスズ含有のゼオライト材料を含む成形物は、5.5から8までの範囲のpHを有する水性系での処理にかけられる。
好ましくは、前記成形物は、その水性系により、80℃から220℃までの範囲の、好ましくは100℃から180℃までの範囲の、より好ましくは130℃から150℃までの範囲の温度で処理される。更に、前記水性系による処理は、1時間から20時間までの範囲の、好ましくは4時間から15時間までの範囲の、より好ましくは6時間から10時間までの範囲の時間にわたり行われる。好ましくは、前記水性系の少なくとも95質量%、より好ましくは少なくとも99質量%、より好ましくは少なくとも99.9質量%は、水からなる。より好ましくは、前記水性系は水である。
本発明の好ましい一実施形態によれば、前記水性系による処理は、閉鎖系において自圧下で、かつ撹拌しながら、または撹拌せずに行われる。本発明のもう一つの実施形態によれば、前記水性系による処理は、開放系において、好ましくは還流下で、かつ撹拌しながら、または撹拌せずに行われる。
前記成形物を水性系で処理した後に、該成形物を、好ましくは適宜、懸濁液から分離する。該成形物の懸濁液からのあらゆる分離法が考えられる。これらの方法は、例えば濾過および遠心分離法を含む。これらの方法の2種以上の組み合わせを適用することができる。本発明によれば、前記成形物は、好ましくは前記水性系から濾過によって分離され、こうして得られた成形物を、好ましくは、50℃までの範囲の、好ましくは15℃から35℃までの範囲の、より好ましくは20℃から30℃までの範囲の温度で、洗浄に、好ましくは水による洗浄にかける。
前記水性系による処理の後に、該成形物を、好ましくは乾燥および/または焼成にかけ、その際、前記乾燥は、好ましくは100℃から180℃までの範囲の、好ましくは130℃から150℃までの範囲の温度で、10時間から70時間までの範囲の、好ましくは15時間から25時間までの範囲の時間にわたり行われ、かつ前記焼成は、好ましくは550℃から700℃までの範囲の、好ましくは600℃から680℃までの範囲の温度で、1時間から10時間までの範囲の、好ましくは2時間から5時間までの範囲の時間にわたり行われる。
従って、前記成形物は、
(A)スズ含有のゼオライト材料を含む成形可能な混合物であって、場合によりバインダーまたはバインダー前駆体を含む前記混合物を調製するステップ、
(B)ステップ(A)から得られた混合物を成形することで、スズ含有のゼオライト材料を含有する成形物を得るステップ、
(C)場合により、ステップ(B)で得られた成形物を乾燥および/または焼成するステップ、
(D)ステップ(B)または(C)から、好ましくはステップ(C)から得られた成形物を、5.5から8までの範囲のpHを有する水性系で処理するステップ、
(E)場合により、ステップ(D)から得られた成形物を乾燥および/または焼成するステップ、
を含む方法によって製造できる。
ステップ(ii)による反応
ステップ(ii)で採用される反応条件は特に制限されない。特に、ステップ(ii)による反応混合物の温度に関しては、式(II)の酸化された有機カルボニル化合物を得るのに適しているならば特段の制限は存在しない。特に、前記反応温度は、溶剤の存在もしくは不存在、または溶剤の化学的性質に依存することとなる。好ましくは、ステップ(i)による反応は、50℃から150℃までの範囲の、好ましくは70℃から120℃までの範囲の、より好ましくは90℃から110℃までの範囲の温度で行われる。
前記のように、ステップ(ii)における反応は、例えばバッチ方式で、または連続方式で行うことができる。ステップ(ii)による反応が回分方式で行われる場合に、用語「反応の開始時に」は、触媒を含む全ての出発材料が反応混合物中に同時に存在するとともに、温度に応じて式(I)の化合物の転化が開始する時点に関する。ステップ(ii)による反応が連続方式で行われる場合に、用語「反応の開始時に」は、反応混合物が通過する反応器の入口であって、該反応器中に供給される1つ以上の供給流が触媒と接触する入口に関する。
本発明の一実施形態によれば、ステップ(ii)による反応は、回分方式で行われる。使用される反応時間に関しては、式(II)の酸化された有機カルボニル化合物を得るのに適しているならば特段の制限は存在しない。好ましくは、該反応は、1時間から10時間までの範囲の、好ましくは3時間から5時間までの範囲の時間にわたり行われる。好ましくは、ステップ(i)による反応は、還流下に行われる。この場合に、ステップ(i)で使用される適切な反応帯域は、好ましくは、還流冷却器を備えた適切な加熱手段を備えた容器である。このように、ステップ(ii)による反応は、好ましくは開放系において還流下で行われる。ステップ(ii)による反応の間に、該反応混合物を撹拌することが好ましい。その撹拌速度は、ステップ(ii)の間に実質的に一定に維持されるか、または変更されてよい。前記撹拌速度は、適宜、例えば該反応混合物の容量、所望される温度等に応じて選択できる。
ステップ(ii)での反応が回分方式で実施される場合に、前記触媒はステップ(ii)において粉末として、または噴霧乾燥粉末として使用され、ここで該触媒の好ましくは少なくとも90質量%が、より好ましくは少なくとも95質量%が、より好ましくは少なくとも99質量%が、より好ましくは少なくとも99.5質量%が、より好ましくは少なくとも99.9質量%が前記スズ含有のゼオライト材料からなることが好ましい。
本発明の一実施形態によれば、ステップ(i)による反応は、連続方式で行われる。連続法の段取りに関して特段の制限は存在しない。好ましい連続法の段取りは、少なくとも1つの固定床反応器であって、その固定床が、前記のスズ含有のゼオライト材料を含む成形物であり、前記固定床を通じて反応混合物が通過する固定床反応器の使用を含む。この実施形態によれば、個々の出発材料を、場合により溶剤も別個の流れとして前記反応器中に供給することができる。別個の出発材料流を、それらが反応器へと供給される前に適宜合することもできる。例えば、過酸化水素流を、溶剤流または溶剤流の一部と合して、この流れを反応器へと供給することが考えられ、その際、式(I)の化合物を含有する供給物は、別個の流れとして、場合により前記溶剤の一部と合して反応器へと供給される。単独の供給流を、複数の別個の流れ、つまり好ましくは水性の過酸化水素を含有する1つの流れ、式(I)の有機化合物を含有する1つの流れ、溶剤を含有する1つの任意の流れから調製することも考えられる。一般的に、前記少なくとも1種のカリウム塩を、好ましくは水溶液として、別個の流れとして反応器へと供給することが考えられる。好ましくは、前記の好ましくは水性の過酸化水素流中に含まれる少なくとも1種のカリウム塩は反応器へと供給される。
2つ以上の反応器を使用することができ、その際、少なくとも2つの反応器を並列で連結でき、および/または少なくとも2つの反応器を直列で連結できる。直列に連結された2つの反応器の間に、少なくとも1つの中間段階を実現することができ、そこでは、例えば式(I)の化合物は、適宜、反応混合物から分離され、そして該反応混合物の残部は、場合により1種以上の新たな出発材料と一緒に後続の反応器へと供給される。2つ以上の反応器が使用される場合に、該反応器中の触媒は、それらがスズ含有のゼオライト材料を含むならば同一または互いに異なってよい。
従って、本発明は、また、連続方式で実施される前記方法であって、ステップ(i)において、液状混合物は、式(I)の化合物、過酸化水素、少なくとも1種の少なくとも部分的に溶解されたカリウム塩、および場合により溶剤を含む液状供給流として準備され、かつステップ(ii)においてステップ(i)で準備された液状供給流は、スズ含有のゼオライト材料を含む触媒を含む酸化反応器中に通過され、そして前記液状供給流を酸化反応器中で酸化反応条件に供することで、式(II)の化合物、前記少なくとも1種のカリウム塩の少なくとも一部、場合により式(I)の化合物、および場合により溶剤を含む反応混合物が得られ、該方法は、好ましくは前記酸化反応器から排出流を除去することを含み、前記排出流は、式(II)の化合物、前記少なくとも1種のカリウム塩の少なくとも一部、場合により式(I)の化合物、および場合により溶剤を含む、前記方法に関する。
ステップ(ii)での反応が連続方式で実施される場合に、前記触媒はステップ(ii)においてスズ含有のゼオライト材料と好ましくはバインダーとを含む成形物として使用され、ここで前記スズ含有のゼオライト材料は、該成形物中に、好ましくは粉末としての、または噴霧乾燥粉末としての成形物中に含まれており、ここで該粉末または噴霧乾燥粉末の好ましくは少なくとも90質量%が、より好ましくは少なくとも95質量%が、より好ましくは少なくとも99質量%が、より好ましくは少なくとも99.5質量%が、より好ましくは少なくとも99.9質量%が前記スズ含有のゼオライト材料からなることが好ましい。
ステップ(ii)による反応の後に、スズ含有のゼオライト材料を含む使用された触媒は、反応混合物から分離される。前記反応が連続方式で、好ましくは固定床反応器を使用して実施される場合には、前記反応混合物は反応器を出て行き、触媒は反応器中に残留する。該反応が回分方式で実施される場合には、好ましくはスズ含有のゼオライト材料を含む粉末として、または噴霧乾燥粉末として使用される触媒の分離は、例えば濾過、限外濾過、透析濾過および遠心分離および/または傾瀉法を含む任意の考えられる方法によって達成することができ、その際、濾過法は、吸引ステップおよび/または加圧濾過ステップを伴ってよい。
分離後に、その分離された触媒は、場合により、1つ以上の適切な洗浄剤を用いて1つ以上の洗浄ステップにかけられる。考えられる洗浄剤は、水、エーテル、例えばジオキサン、例えば1,4−ジオキサン、アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、またはそれらの2種以上の混合物を含んでよい。好ましい洗浄剤はジオキサンである。洗浄ステップの間に適用される好ましい温度は、10℃から50℃までの範囲であり、より好ましくは15℃から40℃までの範囲であり、より好ましくは20℃から30℃までの範囲である。
一般的に、本発明は、また、前記方法のステップ(ii)から、場合により前記触媒の分離後に得ることができるか、または得られる反応混合物に関する。
ステップ(iii)
ステップ(ii)による反応の後に、式(II)の得られた化合物は、好ましくはステップ(ii)から得られた反応混合物から分離される。従って、本発明は、更に
(iii)式(II)の化合物をステップ(i)で得られた混合物から分離するステップ
を含む、前記方法に関する。
この文脈において、ステップ(ii)から得られた反応混合物は、触媒の分離後に少なくとも1つの蒸留段階にかけられ、該蒸留段階から式(II)の化合物が得られると考えられる。
場合によりステップ(ii)で使用される溶剤の性質に応じて、蒸留の前に相分離が行われ、そして式(II)の化合物を含む相が蒸留にかけられると考えられる。
触媒系
本発明によれば、スズ含有のゼオライト材料、好ましくはMWWまたはBEA骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料を含む触媒と、該触媒への添加剤として使用される少なくとも1種のカリウム塩との特定の組み合わせは、式(II)による有機化合物を式(I)の有機化合物から酸化剤として過酸化水素を用いて、かつ好ましくは溶剤の存在下に製造される酸化反応の予想外かつ優れた特性に導くことが判明した。従って、本発明は、また、スズ含有のゼオライト材料を含む触媒と少なくとも1種のカリウム塩とを含む触媒系であって、前記少なくとも1種のカリウム塩が、少なくとも1種の無機カリウム塩、少なくとも1種の有機カリウム塩、および少なくとも1種の無機カリウム塩と少なくとも1種の有機カリウム塩との組み合わせからなる群から選択される、前記触媒系に関する。
本発明の文脈において使用される用語「触媒系」は、スズ含有のゼオライト材料を含む触媒と少なくとも1種のカリウム塩とから構成される系であって、該触媒系は、ステップ(i)で準備される液状混合物をステップ(ii)で前記触媒と接触させるときに実現される、前記系に関する。この触媒系は、示される樹属関係および前方参照からもたらされる以下の実施形態および実施形態の組み合わせによって特徴付けられる。
1. スズ含有のゼオライト材料を含む触媒と少なくとも1種のカリウム塩とを含む触媒系であって、前記少なくとも1種のカリウム塩が、少なくとも1種の無機カリウム塩、少なくとも1種の有機カリウム塩、および少なくとも1種の無機カリウム塩と少なくとも1種の有機カリウム塩との組み合わせからなる群から選択される、前記触媒系。
2. 実施形態1の触媒系であって、前記少なくとも1種のカリウム塩は、水酸化カリウム、ハロゲン化カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、過塩素酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1種の無機カリウム塩、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、脂肪族飽和カルボン酸、例えば好ましくは1個から6個までの、より好ましくは1個から5個までの、より好ましくは1個から4個までの、より好ましくは1個から3個までの炭素原子を有するモノカルボン酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、好ましくは2個から6個までの、より好ましくは2個から4個までの炭素原子を有するジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、好ましくは4個から10個までの炭素原子を有するトリカルボン酸、例えばクエン酸もしくはイソクエン酸またはプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、テトラカルボン酸のカリウム塩から選択される少なくとも1種の有機カリウム塩、および前記少なくとも1種の無機カリウム塩の少なくとも1種と前記少なくとも1種の有機カリウム塩の少なくとも1種との組み合わせからなる群から選択される、前記触媒系。
3. 実施形態1または2の触媒系であって、前記少なくとも1種のカリウム塩は、硝酸カリウム、リン酸二水素カリウム、ギ酸カリウム、およびそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される、前記触媒系。
4. 実施形態1から3のいずれかの触媒系であって、前記スズ含有のゼオライト材料は、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EMT、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MMFI、MFS、MON、MOR、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAB、NAT、NEES、NON、NPO、OBW、OFF、OSI、OSO、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN SFO、SGT、SOD、SSY、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、WEN、YUG、ZON、およびこれらの骨格構造の2種以上の混合型の骨格構造からなる群から選択される骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料、またはこれらのスズ含有のゼオライト材料の2種以上の混合物、好ましくはBEA、MWWおよびこれらの骨格構造の混合型の骨格構造からなる群から選択される骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料、またはこれらのスズ含有のゼオライト材料の混合物である、前記触媒系。
5. 実施形態1から4のいずれかの触媒系であって、前記スズ含有のゼオライト材料は、該スズ含有のゼオライト材料の全質量に対して、0.1質量%から25質量%までの、より好ましくは0.2質量%から20質量%までの、より好ましくは0.3質量%から16質量%までの、より好ましくは0.4質量%から15質量%までの範囲のスズ含量を有する、前記触媒系。
6. 実施形態1から5のいずれかの触媒系であって、該ゼオライト骨格構造の少なくとも95質量%が、好ましくは少なくとも98質量%が、より好ましくは少なくとも99質量%が、より好ましくは99.5質量%が、より好ましくは少なくとも99.8質量%が、より好ましくは少なくとも99.9質量%がSiO2およびB23およびSnからなる、前記触媒系。
7. 実施形態1から6のいずれかの触媒系であって、前記触媒は、粉末または噴霧乾燥粉末の形のスズ含有のゼオライト材料であるか、またはスズ含有のゼオライト材料と好ましくはバインダーとを含む成形物であり、ここで前記スズ含有のゼオライト材料は、該成形物中に、好ましくは粉末としての、または噴霧乾燥粉末としての成形物中に含まれており、ここで該粉末または噴霧乾燥粉末の好ましくは少なくとも90質量%が、より好ましくは少なくとも95質量%が、より好ましくは少なくとも99質量%が、より好ましくは少なくとも99.5質量%が、より好ましくは少なくとも99.9質量%が前記スズ含有のゼオライト材料からなる、前記触媒系。
8. 実施形態1から7のいずれかの触媒系であって、式(I)
Figure 0006461175
[式中、R1およびR2は、互いに独立して、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル残基、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルケニル残基、アリールもしくはヘテロアリール残基、または水素原子であるが、但し、R1およびR2は、同時に水素原子ではないものとする]の有機カルボニル化合物の酸化のための、前記触媒系。
9. 実施形態8の触媒系であって、前記式中、R1もR2も水素原子ではなく、かつR1およびR2は、式(I)の化合物中のカルボニル基と一緒になって環を形成し、好ましくは4個から20個までの、より好ましくは4個から18個までの、より好ましくは5個から16個までの、例えば5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16個の炭素原子を、好ましくは5、6、8、12、15または16個の炭素原子を有する環を形成する、前記触媒系。
10. 実施形態8または9の触媒系であって、前記式(I)の化合物は、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロドデカノン、シクロペンタデカノン、シクロヘキサデカノン、2−ペンチルシクロペンタノン、2−ヘプチルシクロペンタノン、シクロヘキサデカ−8−エン−1−オン、およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、前記触媒系。
11. 実施形態1から10のいずれかの触媒系であって、以下のステップ(i’)〜(ii’)を含む方法によって得ることができる、または得られる、前記触媒系
(i’)過酸化水素、前記少なくとも1種のカリウム塩、場合により溶剤、および式(I)
Figure 0006461175
[式中、R1およびR2は、互いに独立して、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル残基、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルケニル残基、アリールもしくはヘテロアリール残基、または水素原子であるが、但し、R1およびR2は、同時に水素原子ではないものとする]の化合物を含み、かつスズ含有のゼオライト材料を含む触媒を含有する液状混合物を準備するステップ;
(ii’)好ましくは、前記液状混合物中の式(I)の化合物と過酸化水素とを、前記スズ含有のゼオライト材料を含む触媒の存在下に反応させることで、式(II)
Figure 0006461175
の化合物を得るステップ、前記式中、R1もR2も水素原子ではない場合に、R1およびR2は、カルボニル基もしくはカルボキシル基と一緒になって環を形成してよく、その式(I)の化合物は、
Figure 0006461175
であり、かつその式(II)の化合物は、
Figure 0006461175
である。
12. 実施形態11の触媒系であって、ステップ(i’)で準備される液状混合物中の、カリウムの過酸化水素に対するモル比は、25×10-6:1から1000×10-6:1までの、好ましくは100×10-6:1から600×10-6:1までの、より好ましくは250×10-6:1から450×10-6:1までの範囲である、前記触媒系。
13. 実施形態11または12の触媒系であって、ステップ(i’)で準備される液状混合物中の少なくとも1種のカリウム塩の濃度は、ステップ(i’)で準備される液状混合物中での前記少なくとも1種のカリウム塩の溶解限度の少なくとも10%であり、より好ましくは10%から100%までの範囲であり、より好ましくは20%から100%までの範囲であり、より好ましくは30%から100%までの範囲であり、より好ましくは40%から100%までの範囲である、前記触媒系。
14. 実施形態11から13のいずれかの触媒系であって、ステップ(i’)において、前記液状混合物中に溶剤が含まれており、前記溶剤は、好ましくは極性溶剤、より好ましくは極性非プロトン性溶剤であり、前記溶剤は、より好ましくは、アセトニトリル、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、プロピオニトリル、1,4−ジオキサン、メチル−t−ブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチルアセテート、ブチルアセテート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、前記溶剤は、より好ましくは1,2−ジクロロエタン、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、またはそれらの2種もしくは3種の混合物である、前記触媒系。
一般的に、本発明は、また、少なくとも1種のカリウム塩の、式(I)
Figure 0006461175
の有機カルボニル化合物の酸化方法におけるスズ含有のゼオライト材料を含む触媒のための添加剤としての使用において、または式(I)の有機カルボニル化合物の酸化方法であってスズ含有のゼオライト材料を含む触媒のための添加剤として少なくとも1種のカリウム塩が使用される前記方法において、前記式中、R1およびR2は、互いに独立して、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル残基、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルケニル残基、アリールもしくはヘテロアリール残基、または水素原子であるが、但し、R1およびR2は、同時に水素原子ではなく、好ましくはエポキシ化剤としての過酸化水素が用いられ、こうして式(II)
Figure 0006461175
の化合物が得られ、ここで、R1もR2も水素原子ではない場合に、R1およびR2は、前記カルボニル基またはカルボキシル基と一緒になって環を形成してよく、前記式(I)の化合物は、
Figure 0006461175
であり、かつ前記式(II)の化合物は、
Figure 0006461175
である、前記使用または方法に関する。
更に、本発明は、前記スズ含有のゼオライト材料は、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EMT、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MMFI、MFS、MON、MOR、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAB、NAT、NEES、NON、NPO、OBW、OFF、OSI、OSO、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN SFO、SGT、SOD、SSY、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、WEN、YUG、ZON、およびこれらの骨格構造の2種以上の混合型の骨格構造からなる群から選択される骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料、またはこれらのスズ含有のゼオライト材料の2種以上の混合物、好ましくはBEA、MWWおよびこれらの骨格構造の混合型の骨格構造からなる群から選択される骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料、またはこれらのスズ含有のゼオライト材料の2種以上の混合物であり、かつ前記スズ含有のゼオライト材料は、0.1質量%から25.0質量%までの範囲の、好ましくは0.2質量%から20質量%までの範囲の、より好ましくは0.3質量%から16質量%までの範囲の、より好ましくは0.4質量%から15質量%までの範囲のスズ含量を有する、前記使用または方法に関する。
更にまた、本発明は、前記少なくとも1種のカリウム塩は、水酸化カリウム、ハロゲン化カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、過塩素酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1種の無機カリウム塩、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、脂肪族飽和カルボン酸、例えば好ましくは1個から6個までの、より好ましくは1個から5個までの、より好ましくは1個から4個までの、より好ましくは1個から3個までの炭素原子を有するモノカルボン酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、好ましくは2個から6個までの、より好ましくは2個から4個までの炭素原子を有するジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、好ましくは4個から10個までの炭素原子を有するトリカルボン酸、例えばクエン酸もしくはイソクエン酸またはプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、テトラカルボン酸のカリウム塩から選択される少なくとも1種の有機カリウム塩、および前記少なくとも1種の無機カリウム塩の少なくとも1種と前記少なくとも1種の有機カリウム塩の少なくとも1種との組み合わせからなる群から選択される、前記使用または方法に関する。
本発明を、更に、以下の参考例、比較例および実施例によって説明する。
実施例
参考例A:吸水率の測定
ゼオライト材料の吸水率は、TAインスツルメンツ社製のVTI SA機器でステップ等温プログラムに従って実行された水吸脱着等温線によって測定される。その実験は、前記機器の内側にある微量はかり皿上に置かれたサンプル材料に対して行われる1つの実行または一連の複数の実行からなるものであった。測定を開始する前に、サンプルの残留水分を、該サンプルを100℃(5℃/分の昇温加熱)にまで加熱し、それを窒素流下で6時間にわたり保持することによって除去した。乾燥プログラムの後に、セル中の温度を25℃にまで低下させ、測定の間、等温に保った。微量はかりを校正し、そして乾燥されたサンプルの重さを量った(最大の質量のずれ0.01質量%)。該サンプルによる吸水率は、乾燥サンプルの重さに対する重さの増大として測定した。まず、吸着曲線を、該サンプルがさらされる相対湿分(RH)(セル内部の雰囲気中の水の質量%として表現される)を高め、そして平衡したときのサンプルによる吸水率を測定することによって測定した。前記相対湿分(RH)を10質量%のステップで5%から85%にまで高め、各ステップでシステムはその相対湿分(RH)を制御し、サンプルの重さを、該サンプルを85質量%から5質量%にまで10%のステップでさらした後で平衡状態に達するまでサンプルの重さを監視し、該サンプルの重さ(吸水率)の変化を監視し、記録した。
参考例B:結晶化度の測定
B.1 MWW骨格構造を有するゼオライト材料の結晶化度
本発明によるゼオライト材料の結晶化度は、XRD分析によって測定した。データは、Cu−X線源とエネルギー分散型点検出器を備えた標準的なブラッグ−ブレンターノ型の回折計を使用して収集した。2°から70°までの角度範囲(2シータ)は0.02°のステップサイズで走査し、その一方で、可変発散スリットは、照射されたサンプルの長さが一定の20mmとなるように調節される。次いで、それらのデータをTOPAS V4ソフトウェアを使用して解析する。その際、複数の先鋭な回折ピークが、以下の出発パラメータ:空間群P6/mmmにおいてa=14.4オングストロームおよびc=25.2オングストロームを有する単位胞を含めたPawleyフィッティングを使用してモデル化される。これらを抽出することでデータをフィッティングする。線形のバックグラウンドがモデル化される。独立したピークを、以下の位置8.4°、22.4°、28.2°および43°に挿入する。これらは、非晶質分の説明のために使用される。晶質分は、非晶質分についての強度に対する晶質シグナルの強度を表している。
B.2 BEA骨格構造を有するゼオライト材料の結晶化度
本発明によるゼオライト材料の結晶化度は、XRD解析によってUser Manual DIFFRAC.EVA Version 3,第105頁(Bruker AXS GmbH,カールスルーエ)に記載されるEVA法を使用して測定された。それぞれのデータは、標準的なBruker D8 Advance Diffractometer Series IIにおいてSol−X検出器を用いて、2°から50°までの2シータで、可変スリット(V20)を使用し、0.02°の2シータのステップサイズおよび2.4s/ステップのスキャン速度を使用して収集した。デフォルトパラメータは、バックグラウンド/非晶質分を推定するために使用した(曲率=1、閾値=1)。
参考例C:FT−IR測定
FT−IR(フーリエ変換赤外)測定は、Nicolet 6700分光計で実施した。粉末化された材料を、添加剤を全く用いずに自己支持性のペレットへと圧縮した。該ペレットを、FT−IR機器中に位置する高真空(HV)セル中に導入した。測定前に、サンプルを高真空(10-5mbar)中で300℃で3時間にわたり前処理した。該セルを50℃に冷却した後にスペクトルを収集した。該スペクトルは、2cm-1の解像度で4000cm-1から800cm-1までの範囲で記録した。得られたスペクトルを、x軸上に波数(cm-1)を有し、かつy軸上に吸収(任意の単位、a.u.)を有するプロットで表す。ピーク高さおよびこれらのピーク間の比率の定量的測定のために、ベースライン校正を行った。3000cm-1から3900cm-1までの領域での変化を解析し、多重サンプルの比較のために、参照として1800±5cm-1でのバンドを取得した。
参考例1:MWW骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料の製造
参考例1.1:水熱合成によるスズの導入を介したMWW骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料の製造
参考例1.1.1:水熱合成によるスズの導入を介したMWW骨格構造を有する0.46質量%のSn含量を有するスズ含有のゼオライト材料の製造
(i)B−MWWの製造
480kgの脱イオン水を容器中に準備した。70rpm(1分間あたりの回転数)で撹拌しながら、166kgのホウ酸を室温で水中に懸濁した。該懸濁液を、室温で更に3時間にわたり撹拌した。引き続き、278kgのピペリジンを添加し、そして該混合物を更に1時間にわたり撹拌した。得られた溶液に、400kgのLudox(登録商標)AS−40を添加し、そして得られた混合物を室温で更に1時間にわたり70rpmで撹拌した。最終的に得られた混合物を、結晶化容器へと移し、170℃へと5時間にわたり自圧下で撹拌(50rpm)しながら加熱した。170℃の温度を実質的に一定に120時間にわたり維持した。この120時間の間に、該混合物は50rpmで撹拌した。引き続き、該混合物を50℃〜60℃の温度に冷却した。B−MWW前駆体を含有する水性懸濁液は、pH検知電極での測定により測定された11.3のpHを有するものであった。前記懸濁液から、B−MWW前駆体を濾過によって分離した。次いで濾過ケークを脱イオン水で室温において、洗浄水が700マイクロシーメンス/cm未満の導電性となるまで洗浄した。こうして得られた濾過ケークを、噴霧塔中で以下の噴霧乾燥条件で噴霧乾燥にかけた:
乾燥ガス、ノズルガス: 工業用窒素
乾燥ガスの温度:
− 噴霧塔の温度(入口): 235℃
− 噴霧塔の温度(出口): 140℃
ノズル:
− 上部コンポーネントノズル: 供給業者Gerig:サイズ0
− ノズルガス温度: 室温
− ノズルガス圧力: 1bar
作動モード: 窒素直接式(nitrogen straight)
使用装置: 1つのノズルを備えた噴霧塔
構成: 噴霧塔−フィルタ−スクラバ
ガス流量: 1500kg/h
フィルタ材料: Nomex(登録商標)ニードルフェルト20m2
フレキシブルチューブポンプを介して計量供給: SP VF 15(供給業者:Verder)。
前記噴霧塔は、長さ2650mm、直径1200mmを有する垂直に配置された底部が円錐状に狭まった円筒体から構成されたものであった。円錐の長さは600mmであった。該円筒体の頂部には、複数の霧化手段(2成分ノズル)が配置されたものであった。噴霧乾燥された材料を、該噴霧塔の下流にあるフィルタで乾燥ガスから分離し、該乾燥ガスを次いでスクラバに通過させた。その懸濁液をノズルの内側開口部に通し、そしてノズルガスは、前記開口部を取り囲む環状の間隙に通過させた。噴霧乾燥された材料を次いで、600℃で10時間にわたり焼成にかけた。焼成された材料は、B23:SiO2のモル比0.06:1を有していた。
(ii)脱ホウ素化
脱イオン水9kgおよび例1の(i)により得られた焼成されたゼオライト600gを、100℃で250rpmでの撹拌下に10時間にわたり還流させた。得られた脱ホウ素化されたゼオライト材料を、濾過により懸濁液から分離し、そして4lの脱イオン水で室温において洗浄した。濾過後に、濾過ケークを120℃の温度で16時間にわたり乾燥させた。MWW骨格構造を有する乾燥されたゼオライト材料は、B23:SiO2のモル比0.0020:1を有するものであった。
(iii)Snの導入
776.25gの脱イオン水をガラスビーカー中に準備し、375gのピペリジンを撹拌しながら添加した。この懸濁液に、1.45gのSn(OAc)2(Sn(II)アセテート)を添加し、そして該懸濁液を更に10分間にわたり撹拌した。前記(ii)により得られたゼオライト材料172.4gを、その混合物に添加し、そして室温で20分間(200rpm)にわたり撹拌した。次いで得られた懸濁液をオートクレーブ中に充填した。該混合物を、170℃の温度で撹拌(100rpm)しながら48時間にわたり処理した。その後に、オートクレーブを室温にまで冷やし、そして得られたゼオライト材料を室温での濾過により懸濁液から分離し、そして脱イオン水で、洗浄水が200マイクロシーメンス/cm未満の導電性となるまで洗浄した。濾過後に、濾過ケークを120℃で16時間にわたり乾燥させた。乾燥されたゼオライト材料は、40質量%のSi含量と0.42質量%のSn含量を有していた。
(iv)酸処理
前記(iii)により得られたゼオライト173.4gを、丸底フラスコ中に準備し、0から1までの範囲のpHを有する30質量%のHNO3水溶液5202gを添加した。該混合物を100℃の温度で20時間(200rpm)の時間にわたり還流下で撹拌した。該懸濁液を濾過し、そして濾過ケークを脱イオン水で室温において、洗浄水が約7のpHを有するまで洗浄した。得られたゼオライト材料を、120℃で16時間にわたり乾燥させ、そして550℃へと加熱(1分間あたり2℃)し、引き続き550℃で10時間にわたり加熱することによって焼成した。乾燥および焼成されたゼオライト材料は、47質量%のSi含量と0.46質量%のSn含量を有し、XRDにより測定された26.91オングストロームのcパラメータを有していた。XRDにより測定された該ゼオライト材料の結晶化度は、89%であった。更に、該ゼオライト材料は、DIN66131に準じて測定された520m2/gのBET表面積およびDIN66131に準じて測定された713m2/gのラングミュア表面積を有していた。更に、得られたゼオライト材料は、(6.6±0.1)°、(7.1±0.1)°、(7.9±0.1)°、(9.6±0.1)°、(12.8±0.1)°、(14.4±0.1)°、(14.7±0.1)°、(15.8±0.1)°、(19.3±0.1)°、(20.1±0.1)°、(21.7±0.1)°、(21.9±0.1)°、(22.6±0.1)°、(22.9±0.1)°、(23.6±0.1)°、(25.1±0.1)°、(26.1±0.1)°、(26.9±0.1)°、(28.6±0.1)°および(29.1±0.1)°の2シータ回折角でのピークを含むX線回折パターンを有していた。
参考例1.1.2:水熱合成によるスズの導入を介したMWW骨格構造を有する0.46質量%のSn含量を有するスズ含有のゼオライト材料の製造、および成形物の製造
(i)B−MWWの製造
480kgの脱イオン水を容器中に準備した。70rpm(1分間あたりの回転数)で撹拌しながら、166kgのホウ酸を室温で水中に懸濁した。該懸濁液を、室温で更に3時間にわたり撹拌した。引き続き、278kgのピペリジンを添加し、そして該混合物を更に1時間にわたり撹拌した。得られた溶液に、400kgのLudox(登録商標)AS−40を添加し、そして得られた混合物を室温で更に1時間にわたり70rpmで撹拌した。最終的に得られた混合物を、結晶化容器へと移し、170℃へと5時間にわたり自圧下で撹拌(50rpm)しながら加熱した。170℃の温度を実質的に一定に120時間にわたり維持した。この120時間の間に、該混合物は50rpmで撹拌した。引き続き、該混合物を50℃〜60℃の温度に冷却した。B−MWWを含有する水性懸濁液は、pH検知電極での測定により測定された11.3のpHを有していた。前記懸濁液から、B−MWWを濾過によって分離した。次いで濾過ケークを脱イオン水で室温において、洗浄水が500マイクロシーメンス/cm未満の導電性となるまで洗浄した。こうして得られた濾過ケークを、噴霧塔中で以下の噴霧乾燥条件で噴霧乾燥にかけた:
乾燥ガス、ノズルガス: 工業用窒素
乾燥ガスの温度:
− 噴霧塔の温度(入口): 235℃
− 噴霧塔の温度(出口): 140℃
ノズル:
− 上部コンポーネントノズル: 供給業者Gerig:サイズ0
− ノズルガス温度: 室温
− ノズルガス圧力: 1bar
作動モード: 窒素直接式
使用装置: 1つのノズルを備えた噴霧塔
構成: 噴霧塔−フィルタ−スクラバ
ガス流量: 1500kg/h
フィルタ材料: Nomex(登録商標)ニードルフェルト20m2
フレキシブルチューブポンプを介して計量供給: SP VF 15(供給業者:Verder)。
前記噴霧塔は、長さ2650mm、直径1200mmを有する垂直に配置された底部が円錐状に狭まった円筒体から構成されたものであった。円錐の長さは600mmであった。該円筒体の頂部には、複数の霧化手段(2成分ノズル)が配置されていた。噴霧乾燥された材料を、該噴霧塔の下流にあるフィルタで乾燥ガスから分離し、該乾燥ガスを次いでスクラバに通過させた。その懸濁液をノズルの内側開口部に通し、そしてノズルガスは、前記開口部を取り囲む環状の間隙に通過させた。噴霧乾燥された材料を次いで、650℃で回転炉において向流(0.8kg/h〜1kg/h)で焼成にかけた。焼成された材料は、1.4質量%のB含量、43質量%のSi含量、および0.1質量%未満のTOCを有していた。該材料は、DIN66131に準じて測定された468m2/gのBET比表面積を有していた。
(ii)脱ホウ素化
脱イオン水1590kgおよび前記(i)から得られた焼成された材料106kgを、100℃で70rpmでの撹拌下に10時間にわたり還流させた。得られた脱ホウ素化されたゼオライト材料を、濾過により懸濁液から分離し、そして150lの脱イオン水で4回、室温において洗浄した。濾過後に、濾過ケークを120℃で16時間にわたり乾燥させた。MWW骨格構造を有する乾燥されたゼオライト材料は、0.04質量%のB含量、42質量%のSi含量、およびDIN66131に準じて測定された462m2/gのBET比表面積を有していた。
(iii)Snの導入
776.25gの脱イオン水をガラスビーカー中に準備し、375gのピペリジンを撹拌しながら添加した。この懸濁液に、25gのピペリジン中に予め溶解された2.5gのSn(IV)ブトキシドを添加し、その懸濁液を更に10分間にわたり撹拌した。前記(ii)により得られた脱ホウ素化されたゼオライト材料172.4gを、その混合物に添加し、そして室温で60分間(200rpm)にわたり撹拌した。次いで得られた懸濁液をオートクレーブ中に充填した。該混合物を、170℃の温度で撹拌(100rpm)しながら120時間にわたり処理した。その後に、オートクレーブを室温にまで冷やし、そして得られたゼオライト材料を室温での濾過により懸濁液から分離し、そして脱イオン水で、洗浄水が200マイクロシーメンス/cm未満の導電性となるまで洗浄した。濾過後に、濾過ケークを120℃の温度で16時間にわたり乾燥させた。乾燥されたゼオライト材料は、40質量%のSi含量と0.42質量%のSn含量を有していた。
(iv)酸処理
前記(iii)から得られたスズ含有のゼオライト174gを、丸底フラスコ中に準備し、0から1までの範囲のpHを有する30質量%のHNO3水溶液5220kgを添加した。該混合物を100℃の温度で20時間(200rpm)の時間にわたり撹拌した。該懸濁液を濾過し、次いで濾過ケークを脱イオン水で室温において、洗浄水が約7のpHを有するまで洗浄した。得られたゼオライト材料を、120℃で16時間にわたり乾燥させ、そして550℃へと加熱(2K/分)し、引き続き550℃で10時間にわたり加熱することによって焼成した。乾燥および焼成されたゼオライト材料は、49質量%のSi含量と0.46質量%のSn含量を有し、XRDにより測定された27.1オングストロームのcパラメータを有していた。XRDにより測定された該ゼオライト材料の結晶化度は、86%であった。更に、該ゼオライト材料は、DIN66131に準じて測定された521m2/gのBET表面積およびDIN66131に準じて測定された695m2/gのラングミュア表面積を有していた。
(v)成形物の製造
前記(iv)から得られた焼成された140gのゼオライト材料および8.4gのWalocelを、エッジミル中で5分間にわたり混練した。混練の間に、82.6gのLudox(登録商標)AS−40を連続的に添加した。10分後に、150mlの脱イオン水の添加を開始した。更に30分後に、混練物を30mlの脱イオン水の添加によって調整した。50分間の総混練時間後に、前記混練物は押出可能であり、該混練物を、100barから150barまでの圧力で1分間の間で押出した。得られたストランドを、120℃で8時間にわたり炉内で乾燥させ、そして500℃で5時間にわたり焼成した。137.2gの白色のストランドが得られ、それは1.7mmの直径を有していた。前記ストランドの形態の乾燥および焼成された材料は、46質量%のSi含量、0.41質量%のSn含量、および0.01質量%のTOCを有していた。XRDにより測定された該ゼオライト材料の結晶化度は、78%であった。更に、前記ストランドは、DIN66131に準じて測定された412m2/gのBET表面積、および水銀多孔度測定法によって測定された0.91ml/gの細孔容積を有していた。
参考例1.2:固体イオン交換によるスズの導入を介したMWW骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料の製造
参考例1.2.1:固体イオン交換によるスズの導入を介したMWW骨格構造を有する12.8質量%のSn含量を有するスズ含有のゼオライト材料の製造
(i)B−MWWの製造
480kgの脱イオン水を容器中に準備した。70rpm(1分間あたりの回転数)で撹拌しながら、166kgのホウ酸を室温で水中に懸濁した。該懸濁液を、室温で更に3時間にわたり撹拌した。引き続き、278kgのピペリジンを添加し、そして該混合物を更に1時間にわたり撹拌した。得られた溶液に、400kgのLudox(登録商標)AS−40を添加し、そして得られた混合物を室温で更に1時間にわたり70rpmで撹拌した。最終的に得られた混合物を、結晶化容器へと移し、170℃で5時間にわたり自圧下で撹拌(50rpm)しながら加熱した。170℃の温度を実質的に一定に120時間にわたり維持した。この120時間の間に、該混合物は50rpmで撹拌した。引き続き、該混合物を50℃〜60℃の温度に冷却した。B−MWWを含有する水性懸濁液は、pH検知電極での測定により測定された11.3のpHを有していた。前記懸濁液から、B−MWWを濾過によって分離した。次いで濾過ケークを脱イオン水で室温において、洗浄水が500マイクロシーメンス/cm未満の導電性となるまで洗浄した。こうして得られた濾過ケークを、噴霧塔中で以下の噴霧乾燥条件で噴霧乾燥にかけた:
乾燥ガス、ノズルガス: 工業用窒素
乾燥ガスの温度:
− 噴霧塔の温度(入口): 235℃
− 噴霧塔の温度(出口): 140℃
ノズル:
− 上部コンポーネントノズル: 供給業者Gerig:サイズ0
− ノズルガス温度: 室温
− ノズルガス圧力: 1bar
作動モード: 窒素直接式
使用装置: 1つのノズルを備えた噴霧塔
構成: 噴霧塔−フィルタ−スクラバ
ガス流量: 1500kg/h
フィルタ材料: Nomex(登録商標)ニードルフェルト20m2
フレキシブルチューブポンプを介して計量供給: SP VF 15(供給業者:Verder)。
前記噴霧塔は、長さ2650mm、直径1200mmを有する垂直に配置された底部が円錐状に狭まった円筒体から構成されたものであった。円錐の長さは600mmであった。該円筒体の頂部には、複数の霧化手段(2成分ノズル)が配置されていた。噴霧乾燥された材料を、該噴霧塔の下流にあるフィルタで乾燥ガスから分離し、該乾燥ガスを次いでスクラバに通過させた。その懸濁液をノズルの内側開口部に通し、そしてノズルガスは、前記開口部を取り囲む環状の間隙に通過させた。噴霧乾燥された材料を次いで、650℃で回転炉において向流(0.8kg/h〜1kg/h)で焼成にかけた。焼成された材料は、1.4質量%のB含量、43質量%のSi含量、および0.1質量%未満のTOC(総有機炭素)を有していた。XRDにより測定された前記材料の結晶化度は、88%であり、かつDIN66131に準じて測定されたBET比表面積は、468m2/gであった。
(ii)脱ホウ素化
脱イオン水1590kgおよび前記2.1により得られた焼成された材料106kgを、100℃で70rpmでの撹拌下に10時間にわたり還流させた。得られた脱ホウ素化されたゼオライト材料を、濾過により懸濁液から分離し、そして150lの脱イオン水で4回、室温において洗浄した。濾過後に、濾過ケークを120℃で16時間にわたり乾燥させた。MWW型の骨格構造を有する乾燥されたゼオライト材料は、0.04質量%のB含量、42質量%のSi含量、XRDにより測定された82%の結晶化度、および462m2/gのBET比表面積を有していた。
(iii)Snの導入
前記(ii)により得られた脱ホウ素化されたゼオライト材料30gを、ミキサー(ミル型のMicroton MB550)中で8.9gのSn(OAc)2(スズ(II)アセテート、CAS番号:638−39−1、Sigma−Aldrich)と一緒に添加した。それらの2種の成分を15分間にわたり14000rpm(1分間あたりの回転数)の撹拌速度で一緒に粉砕した。その後に、こうして得られた粉末10.8gを磁器製の入れ物へと移し、120℃で10時間にわたり乾燥させた。
(iv)酸処理
硝酸(30質量%)330gおよび前記(iii)から得られた乾燥されたゼオライト材料11gを、撹拌しながら0.5lのガラス製丸底フラスコ中に添加した。容器中の混合物を100℃に加熱し、この温度で自圧下に撹拌(200rpm)しながら20時間にわたり保持した。こうして得られた混合物を次いで、1時間にわたり50℃未満の温度に冷却した。冷却された混合物を濾過にかけ、その濾過ケークを脱イオン水で、pH7に達するまで洗浄した。その濾過ケークを120℃で10時間にわたり乾燥させ、550℃で10時間にわたり焼成した(昇温加熱2K/分)。Sn含量12.6質量%、Si含量36.5質量%、およびTOC0.1質量%未満を有するゼオライト材料が得られた。DIN66131に準じて測定されたBET比表面積は385m2/gであり、XRDにより測定された結晶化度は87%であった。
参考例1.2.2:固体イオン交換によるスズの導入を介したMWW骨格構造を有する12.3質量%のSn含量を有するスズ含有のゼオライト材料の製造
(i)B−MWWの製造
480kgの脱イオン水を容器中に準備した。70rpm(1分間あたりの回転数)で撹拌しながら、166kgのホウ酸を室温で水中に懸濁した。該懸濁液を、室温で更に3時間にわたり撹拌した。引き続き、278kgのピペリジンを添加し、そして該混合物を更に1時間にわたり撹拌した。得られた溶液に、400kgのLudox(登録商標)AS−40を添加し、そして得られた混合物を室温で更に1時間にわたり70rpmで撹拌した。最終的に得られた混合物を、結晶化容器へと移し、170℃へと5時間にわたり自圧下で撹拌(50rpm)しながら加熱した。170℃の温度を実質的に一定に120時間にわたり維持した。この120時間の間に、該混合物は50rpmで撹拌した。引き続き、該混合物を50℃〜60℃の温度に冷却した。B−MWWを含有する水性懸濁液は、pH検知電極での測定により測定された11.3のpHを有していた。前記懸濁液から、B−MWWを濾過によって分離した。次いで濾過ケークを脱イオン水で室温において、洗浄水が500マイクロシーメンス/cm未満の導電性となるまで洗浄した。こうして得られた濾過ケークを、噴霧塔中で以下の噴霧乾燥条件で噴霧乾燥にかけた:
乾燥ガス、ノズルガス: 工業用窒素
乾燥ガスの温度:
− 噴霧塔の温度(入口): 235℃
− 噴霧塔の温度(出口): 140℃
ノズル:
− 上部コンポーネントノズル: 供給業者Gerig:サイズ0
− ノズルガス温度: 室温
− ノズルガス圧力: 1bar
作動モード: 窒素直接式
使用装置: 1つのノズルを備えた噴霧塔
構成: 噴霧塔−フィルタ−スクラバ
ガス流量: 1500kg/h
フィルタ材料: Nomex(登録商標)ニードルフェルト20m2
フレキシブルチューブポンプを介して計量供給: SP VF 15(供給業者:Verder)。
前記噴霧塔は、長さ2650mm、直径1200mmを有する垂直に配置された底部が円錐状に狭まった円筒体から構成されたものであった。円錐の長さは600mmであった。該円筒体の頂部には、複数の霧化手段(2成分ノズル)が配置されていた。噴霧乾燥された材料を、該噴霧塔の下流にあるフィルタで乾燥ガスから分離し、該乾燥ガスを次いでスクラバに通過させた。その懸濁液をノズルの内側開口部に通し、そしてノズルガスは、前記開口部を取り囲む環状の間隙に通過させた。噴霧乾燥された材料を次いで、650℃で回転炉において向流(0.8kg/h〜1kg/h)で焼成にかけた。焼成された材料は、1.4質量%のB含量、43質量%のSi含量、および0.1質量%未満のTOC(総有機炭素)を有していた。XRDにより測定された前記材料の結晶化度は、88%であり、かつDIN66131に準じて測定されたBET比表面積は、468m2/gであった。
(ii)脱ホウ素化
脱イオン水1590kgおよび前記(i)により得られた焼成された材料106kgを、100℃で70rpmでの撹拌下に10時間にわたり還流させた。得られた脱ホウ素化されたゼオライト材料を、濾過により懸濁液から分離し、そして150lの脱イオン水で4回、室温において洗浄した。濾過後に、濾過ケークを120℃の温度で16時間にわたり乾燥させた。MWW型の骨格構造を有する乾燥されたゼオライト材料は、0.04質量%のB含量、42質量%のSi含量、XRDにより測定された82%の結晶化度、および462m2/gのBET比表面積を有していた。
(iii)Snの導入
前記(ii)により得られた脱ホウ素化されたゼオライト材料120gを、ミキサー(ミル型のMicroton MB550)中で34gのSn(OAc)2(スズ(II)アセテート、CAS番号:638−39−1、Sigma−Aldrich)と一緒に添加した。それらの2種の成分を15分間にわたり14000rpm(1分間あたりの回転数)の撹拌速度で一緒に粉砕した。その後に、こうして得られた粉末28gを磁器製の入れ物へと移し、スタティックオーブン(static oven)中で3時間にわたり500℃で2K/分の加熱速度で焼成した。焼成された粉末は、以下の元素組成:Sn 11.5質量%、Si 35質量%、およびTOC0.1質量%未満を有していた。DIN66131に準じて測定されたBET比表面積は392m2/gであり、XRDにより測定された結晶化度は79%であった。
(iv)酸処理
硝酸(30質量%)1800gおよび前記(iii)から得られた焼成されたゼオライト材料60gを、撹拌しながら2.0lのガラス製丸底フラスコ中に添加した。容器中の混合物を100℃に加熱し、この温度で自圧下に撹拌(200rpm)しながら20時間にわたり保持した。こうして得られた混合物を次いで、1時間にわたり50℃未満の温度に冷却した。冷却された混合物を濾過にかけ、その濾過ケークを脱イオン水で、pH7に達するまで洗浄した。その濾過ケークを120℃で10時間にわたり乾燥させ、550℃で5時間にわたり焼成した(昇温加熱2K/分)。Sn含量12.3質量%、Si含量37質量%、およびTOC0.1質量%未満を有する材料が得られた。DIN66131に準じて測定されたBET比表面積は400m2/gであり、XRDにより測定された結晶化度は84%であった。
参考例2:固体イオン交換によるスズの導入を介したBEA骨格構造を有する9.6質量%のSn含量を有するスズ含有のゼオライト材料の製造
(i)B−BEAの製造
209kgの脱イオン水を容器中に準備した。120rpm(1分間あたりの回転数)で撹拌しながら、355kgのテトラエチルアンモニウムヒドロキシドを添加し、その懸濁液を室温で10分間にわたり撹拌した。その後に、61kgのホウ酸を水中に懸濁し、その懸濁液を室温で更に30分間にわたり撹拌した。引き続き、555kgのLudox(登録商標)AS−40を添加し、そして得られた混合物を室温で更に1時間にわたり70rpmで撹拌した。液状のゲルは、pH電極での測定により測定された11.8のpHを有していた。最終的に得られた混合物を、結晶化容器へと移し、160℃で6時間にわたり7.2barの圧力下で撹拌(140rpm)しながら加熱した。引き続き、該混合物を室温に冷却した。その混合物を再び160℃へと6時間以内で加熱し、更に55時間にわたり140rpmで撹拌した。該混合物を室温に冷却し、引き続き該混合物を160℃の温度で更に45時間にわたり140rpmで撹拌しながら加熱した。380kgのこの懸濁液へと7800kgの脱イオン水を添加した。その懸濁液を70rpmで撹拌し、100kgの10質量%のHNO3水溶液を添加した。この懸濁液から、BEA骨格構造を有するホウ素含有のゼオライト材料を濾過により分離した。次いで濾過ケークを脱イオン水で室温において、洗浄水が150マイクロシーメンス/cm未満の導電性となるまで洗浄した。こうして得られた濾過ケークを、窒素流中での乾燥にかけた。
こうして得られたゼオライト材料を、噴霧塔中で以下の噴霧乾燥条件で噴霧乾燥にかけた:
乾燥ガス、ノズルガス: 工業用窒素
乾燥ガスの温度:
− 噴霧塔の温度(入口): 235℃
− 噴霧塔の温度(出口): 140℃
ノズル:
− 上部コンポーネントノズル: 供給業者Gerig:サイズ0
− ノズルガス温度: 室温
− ノズルガス圧力: 1bar
作動モード: 窒素直接式
使用装置: 1つのノズルを備えた噴霧塔
構成: 噴霧塔−フィルタ−スクラバ
ガス流量: 1500kg/h
フィルタ材料: Nomex(登録商標)ニードルフェルト20m2
フレキシブルチューブポンプを介して計量供給: SP VF 15(供給業者:Verder)。
前記噴霧塔は、長さ2650mm、直径1200mmを有する垂直に配置された底部が円錐状に狭まった円筒体から構成されたものであった。円錐の長さは600mmであった。該円筒体の頂部には、複数の霧化手段(2成分ノズル)が配置されていた。噴霧乾燥された材料を、該噴霧塔の下流にあるフィルタで乾燥ガスから分離し、該乾燥ガスを次いでスクラバに通過させた。その懸濁液をノズルの内側開口部に通し、そしてノズルガスは、前記開口部を取り囲む環状の間隙に通過させた。噴霧乾燥された材料を次いで、500℃で5時間にわたり焼成にかけた。焼成された材料は、B23:SiO2のモル比0.045、総炭素含量(TOC)0.08質量%、XRDにより測定された結晶化度56%、およびDIN66131によって測定されたBET比表面積498m2/gを有していた。
(ii)脱ホウ素化
840kgの脱イオン水を、還流冷却器を備えた容器中に準備した。40rpmで撹拌しながら、前記(i)から得られた噴霧乾燥および焼成されたゼオライト材料28kgを使用した。引き続き、前記容器を閉じ、還流冷却器を稼働させた。撹拌速度を70rpmに高めた。70rpmで撹拌しながら、該容器の内容物を1時間以内で100℃に加熱し、この温度で20時間にわたり保持した。次いで、その容器の内容物を50℃未満の温度に冷却した。得られたBEA骨格構造を有する脱ホウ素化されたゼオライト材料を、2.5barの窒素圧下で濾過により懸濁液から分離し、そして脱イオン水で4回、室温において洗浄した。濾過後に、濾過ケークを窒素流中で6時間にわたり乾燥させた。得られた脱ホウ素化されたゼオライト材料を、前記5.1に記載の条件下で噴霧乾燥にかけた。得られたゼオライト材料は、B23:SiO2のモル比0.002未満、吸水率15質量%、XRDにより測定された結晶化度48%、およびDIN66131によって測定されたBET比表面積489m2/gを有していた。
(iii)Snの導入
前記(ii)から得られたBEA骨格構造を有する脱ホウ素化されたゼオライト材料25gを、ミキサー(ミル型のMicroton MB550)へと5.5gのスズ(II)アセテート(Sn(OAc)2[CAS番号:638−39−1])と一緒に添加し、その混合物を14000rpm(1分間あたりの回転数)で15分間にわたり粉砕した。粉砕後に、該混合物を磁器製のカゴへと移し、空気中550℃で5時間にわたり2K/分の昇温加熱で焼成した。得られた粉末材料は、Sn含量9.6質量%、ケイ素(Si)含量38質量%、および0.1質量%未満のTOCを有していた。DIN66131によって測定されたBET比表面積は423m2/gであり、XRDにより測定される結晶化度は51%であり、かつ吸水率は18質量%であった。紫外/可視スペクトルは、2つの極大を示し、一番目が200nmの波長であり、二番目が約250nmの波長であった。FT−IRスペクトルにおいて、3701cm-1から3741cm-1の間に極大を有する一番目の吸収帯と、3600cm-1から3690cm-1の間に極大を有する二番目の吸収との間の強度比は、1.49であった。
(iv)酸処理
前記(iii)から得られたゼオライト10gを、丸底フラスコ中に準備し、0から1までの範囲のpHを有する30質量%のHNO3水溶液300gを添加した。該混合物を100℃の温度で20時間(200rpm)の時間にわたり撹拌した。該懸濁液を濾過し、そして濾過ケークを脱イオン水で室温において、洗浄水が約7のpHを有するまで洗浄した。得られたゼオライト材料を、120℃で10時間にわたり乾燥させ、そして550℃へと加熱(2K/分)し、引き続き550℃で10時間にわたり加熱することによって焼成した。乾燥および焼成されたゼオライト材料は、36質量%のSi含量、9.3質量%のSn含量を有し、XRDにより測定された結晶化度53%を有していた。更に、該ゼオライト材料は、DIN66131に準じて測定された380m2/gのBET比表面積、および吸水率6質量%を有していた。紫外/可視スペクトルは、2つの極大を示し、一番目が208nmの波長であり、二番目が約250nmの波長であった。FT−IRスペクトルにおいて、3701cm-1から3741cm-1の間に極大を有する一番目の吸収帯と、3600cm-1から3690cm-1の間に極大を有する二番目の吸収との間の強度比は、0.93であった。
例1: Sn含量0.46質量%を有するSn−MWWと、溶剤としての1,2−ジクロロエタンを使用した、カリウム塩を添加したシクロヘキサノンのε−カプロラクトンへのバイヤー・ビリガー酸化
一般的手順
100mlのガラスフラスコ容器に、1.5gのシクロヘキサノン、参考例1.1.1により得られたSn含量0.46質量%を有する1.2gのゼオライト材料、および45gのジクロロエタンを装入した。該混合物を加熱還流させた(95℃)。0.5gのH22の水溶液(70質量%)を添加し、その反応を4時間にわたり撹拌した。室温に冷却した後に、その溶液を濾過し、そしてシクロヘキサノンと過酸化水素に対するε−カプロラクトンについての選択性に関して、ジ−n−ブチルエーテルを内部標準として用いて定量的GC分析によって分析した。
例1.1: カリウム塩としてリン酸二水素カリウム(KH2PO4)を添加したバイヤー・ビリガー酸化
例1.1は、前記一般的手順に従って実施した。その際、過酸化水素の水溶液は追加的に1モルのH22当たりに360マイクロモルのKH2PO4を含有した。シクロヘキサノンと過酸化水素に対する、ε−カプロラクトンについての選択性を以下の第1表に示す。
例1.2: カリウム塩としてリン酸二水素カリウム(KNO3)を添加したバイヤー・ビリガー酸化
例1.2は、前記一般的手順に従って実施した。その際、過酸化水素の水溶液は追加的に1モルのH22当たりに360マイクロモルのKNO3を含有した。シクロヘキサノンと過酸化水素に対する、ε−カプロラクトンについての選択性を以下の第1表に示す。
例1.3: カリウム塩としてギ酸カリウム(KCO2H)を添加したバイヤー・ビリガー酸化
例1.3は、前記一般的手順に従って実施した。その際、過酸化水素の水溶液は追加的に1モルのH22当たりに360マイクロモルのKCO2Hを含有した。シクロヘキサノンと過酸化水素に対する、ε−カプロラクトンについての選択性を以下の第1表に示す。
比較例1: カリウム塩を添加しないバイヤー・ビリガー酸化
比較例1.3は、前記の例1の一般的な手順に記載されるようにして実施した。シクロヘキサノンと過酸化水素に対する、ε−カプロラクトンについての選択性を以下の第1表に示す。
例2: Sn含量0.46質量%を有する成形したSn−MWWと、溶剤としてのアセトニトリルを使用した、KH2PO4を添加したシクロヘキサノンのε−カプロラクトンへの連続型のバイヤー・ビリガー酸化
一般的手順
温度調節用のジャケットを備えた管形反応器(長さ:1.4m、内径:7mm)に、前記参考例1.1.2により得られた触媒15gを1.7mmの直径を有するストランドの形で装入した。その反応容積の残りを、不活性材料(ステアタイト球、直径2mm、該反応器の下端に約5cmの高さまで、残りは該反応器の上端)で満たした。該反応器を、伝熱媒体、つまり水およびエチレングリコールの混合物を前記ジャケット中に通過させることによって温度調節した。該伝熱媒体を、前記ジャケットの下端で、それが反応器内容物に対して並流方式で流れるように供給した。該ジャケットの入口での伝熱媒体の温度が反応温度として定義される。伝熱媒体の流速は、入口温度と出口温度の間の差が大きくても1Kであるように調節した。反応器中の圧力を、適切な圧力調節弁によって制御し、20bar(絶対圧力)で一定に維持した。反応器供給流は、計量型ポンプを使用することによって計量供給した。前記供給流は、アセトニトリル(93.6質量%)、シクロヘキサノン(2.5質量%)、40質量%の濃度を有する過酸化水素水溶液(3.9質量%)(流速:40g/時間)の混合物からなるものであった。使用された条件下で供給物は液状であり、1つの液相だけしか存在しなかった。実験は連続方式で実施した。実行の開始時に(t=0が定義され、そのときに計量型ポンプが始動される)、反応温度を90℃に定めた。ある一定の時間後に(通常は操業中4時間以内に)定常状態に至った。圧力制御弁の後の反応器排出液を、回収し、秤量し、そして内部標準としてジ−n−ブチルエーテルを使用したGCによって分析した。
特別な手順
例2は、前記一般的手順に記載のように実施した。その際、供給流の製造のために使用される過酸化水素溶液は追加的にリン酸二水素カリウムを1モルの過酸化水素当たりに360マイクロモルのKH2PO4の量で含有した。シクロヘキサノンと過酸化水素に対する、ε−カプロラクトンについての選択性を以下の第1表に示す。
比較例2: カリウム塩を添加しないバイヤー・ビリガー酸化
比較例2は、前記の例2の一般的な手順に記載されるようにして実施した。シクロヘキサノンと過酸化水素に対する、ε−カプロラクトンについての選択性を以下の第1表に示す。
例3: Sn含量12.8質量%を有するSn−MWWと、溶剤としての1,2−ジクロロエタンを使用した、KH2PO4を添加したシクロヘキサノンのε−カプロラクトンへのバイヤー・ビリガー酸化
一般的手順
100mlのガラスフラスコ容器に、3gのシクロヘキサノン、参考例1.2.1により得られたSn含量12.8質量%を有する0.1gのゼオライト材料、および90gのジクロロエタンを装入した。該混合物を加熱還流させた(95℃)。0.98gのH22の水溶液(70質量%)を添加し、その反応を4時間にわたり撹拌した。室温に冷却した後に、その溶液を濾過し、そしてシクロヘキサノンと過酸化水素に対するε−カプロラクトンについての選択性に関して、ジ−n−ブチルエーテルを内部標準として用いて定量的GC分析によって分析した。
特別な手順
実施例3は、前記一般的手順に記載されるように実施した。その際、過酸化水素の水溶液は追加的に1モルのH22当たりに360マイクロモルのKH2PO4を含有した。シクロヘキサノンと過酸化水素に対する、ε−カプロラクトンについての選択性を以下の第1表に示す。
比較例3: カリウム塩を添加しないバイヤー・ビリガー酸化
比較例3は、前記の実施例3の一般的な手順に記載されるようにして実施した。シクロヘキサノンと過酸化水素に対する、ε−カプロラクトンについての選択性を以下の第1表に示す。
実施例4: Sn含量12.3質量%を有するSn−MWWと、溶剤としての1,2−ジクロロエタンを使用した、KCO2Hを添加したシクロヘキサノンのε−カプロラクトンへのバイヤー・ビリガー酸化
一般的手順
100mlのガラスフラスコ容器に、1.5gのシクロヘキサノン、参考例1.2.2により得られたSn含量12.3質量%を有する0.1gのゼオライト材料、および45gの1,2−ジクロロエタンを装入した。該混合物を加熱還流させた(95℃)。0.49gのH22の水溶液(70質量%)を添加し、その反応を4時間にわたり撹拌した。室温に冷却した後に、その溶液を濾過し、そしてシクロヘキサノンと過酸化水素に対するε−カプロラクトンについての選択性に関して、ジ−n−ブチルエーテルを内部標準として用いて定量的GC分析によって分析した。
特別な手順
実施例4は、前記一般的手順に記載されるように実施した。その際、過酸化水素の水溶液は追加的に1モルのH22当たりに360マイクロモルのKCO2Hを含有した。シクロヘキサノンと過酸化水素に対する、ε−カプロラクトンについての選択性を以下の第1表に示す。
比較例4: カリウム塩を添加しないバイヤー・ビリガー酸化
比較例4は、前記の実施例4の一般的な手順に記載されるようにして実施した。シクロヘキサノンと過酸化水素に対する、ε−カプロラクトンについての選択性を以下の第1表に示す。
実施例5: Sn含量9.6質量%を有するSn−BEAと、溶剤としての1,4−ジオキサンを使用した、KH2PO4を添加したシクロヘキサノンのε−カプロラクトンへのバイヤー・ビリガー酸化
一般的手順
100mlのガラスフラスコ容器に、1.5gのシクロヘキサノン、参考例2により得られたSn含量9.6質量%を有する1gのゼオライト材料、および45gの1,4−ジオキサンを装入した。該混合物を加熱還流させた(95℃)。0.5gのH22の水溶液(70質量%)を添加し、その反応を4時間にわたり撹拌した。室温に冷却した後に、その溶液を濾過し、そしてシクロヘキサノンと過酸化水素に対するε−カプロラクトンについての選択性に関して、ジ−n−ブチルエーテルを内部標準として用いて定量的GC分析によって分析した。
特別な手順
実施例5は、前記一般的手順に記載されるように実施した。その際、過酸化水素の水溶液は追加的に1モルのH22当たりに360マイクロモルのKH2PO4を含有した。シクロヘキサノンと過酸化水素に対する、ε−カプロラクトンについての選択性を以下の第1表に示す。
比較例5: カリウム塩を添加しないバイヤー・ビリガー酸化
比較例5は、前記の実施例5の一般的な手順に記載されるようにして実施した。シクロヘキサノンと過酸化水素に対する、ε−カプロラクトンについての選択性を以下の第1表に示す。
Figure 0006461175
前記実施例および比較例は、ゼオライト骨格構造にかかわらず、該ゼオライト材料のスズ含量にかかわらず、そして使用されるカリウム塩の化学的性質にかかわらず、酸化反応へのカリウム塩の添加、従ってスズ含有のゼオライト材料およびカリウム塩の触媒系の添加は、酸化されるべき出発材料と過酸化水素に対する、該生成物についての選択性の改善がもたらされることを明らかに示している。従って、ある方法が工業的目的に関心が持たれるか否かに最も重要な影響を及ぼすのは、これらの選択性なので、本発明による方法および触媒系は、中規模法および大規模法に特に適している。これはまた実施例E2と比較例CE2とによって説明される。それらの例は連続型の方法であり、そこでは触媒はスズ含有のゼオライト材料を含むストランドからなり、かつ前記ゼオライト材料とカリウム塩添加剤の触媒系は、工業的規模の方法に特に関連がある固定床触媒系として実現されている。なおも更に、前記スズ含有のゼオライト材料がどのように製造されるかにかかわらず改善された特性が得られることが実証される。それというのも、固体スズイオン交換によるだけでなく、水熱合成によるスズの導入によって製造されたゼオライト材料についても好ましい選択性の値が得られるからである。更にまた、使用される溶剤にかかわらず好ましい選択性値が得られることも実証される。それというのも、前記の実施例および比較例においては、種々の溶剤が使用され、それぞれの溶剤について好ましい効果が得られたからである。
まとめると、本発明による方法および本発明による触媒系は、カリウム塩添加剤とスズ含有のゼオライト材料との組み合わせをバイヤー・ビリガー型の酸化反応で使用することによって実現される何よりも重要な概念的な枠組みであることが明らかである。
引用文献
− Nature 412(2001),第423頁〜第425頁
− Journal of Catalysis 234(2005),第96頁〜第100頁
− US5,968,473
− US6,306,364
− Microporous and Mesoporous Materials 165(2013),第210頁〜第218頁
− WO03/074422A1
− US7,326,401B2
− M.A.Camblor,A.Corma,M.−J.Diaz−Cabanas and Ch.Baerlocher,J.Phys.Chem.B102(1998)第44頁〜第51頁

Claims (35)

  1. 式(I)
    Figure 0006461175
    の有機カルボニル化合物の酸化方法であって、
    (i)式(I)の化合物、過酸化水素、少なくとも1種の少なくとも部分的に溶解されたカリウム塩、および場合により溶剤を含む液状混合物を準備するステップ、
    (ii)前記液状混合物中の式(I)の化合物と過酸化水素とをスズ含有のゼオライト材料を含む触媒の存在下で反応させることで、式(II)
    Figure 0006461175
    の化合物を得るステップ、
    を含み、前記式中、R1およびR2は、互いに独立して、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル残基、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルケニル残基、アリールもしくはヘテロアリール残基、または水素原子であるが、但し、R1およびR2は、同時に水素原子ではないものとし、ここでR1もR2も水素原子ではない場合に、R1およびR2は、カルボニル基もしくはカルボキシル基と一緒になって環を形成してよく、その式(I)の化合物は
    Figure 0006461175
    であり、かつその式(II)の化合物は、
    Figure 0006461175
    である、前記方法。
  2. 請求項1に記載の方法であって、R1およびR2は、互いに独立して、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル残基、2〜20個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルケニル残基、4〜20個の炭素原子を有するアリールもしくはヘテロアリール残基、または水素原子であり、かつR1もR2も水素原子ではない場合に、R1およびR2は、カルボニル基またはカルボキシル基と一緒になって、4〜20個の炭素原子を有する環を形成してよい、前記方法。
  3. 請求項1または2に記載の方法であって、前記式(I)の化合物は、少なくとも1つのC−C二重結合を含む、前記方法。
  4. 請求項3に記載の方法であって、前記式(I)の化合物は、前記カルボニル基に対してα位にC−C二重結合を含む、前記方法。
  5. 請求項4に記載の方法であって、式中、R1は、前記カルボニル基に対してα位にC−C二重結合を含み、かつR2は水素原子である、前記方法。
  6. 請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法であって、前記スズ含有のゼオライト材料は、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EMT、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MMFI、MFS、MON、MOR、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAB、NAT、NEES、NON、NPO、OBW、OFF、OSI、OSO、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN SFO、SGT、SOD、SSY、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、WEN、YUG、ZON、およびこれらの骨格構造の2種以上の混合型の骨格構造からなる群から選択される骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料、またはこれらのスズ含有のゼオライト材料の2種以上の混合物である、前記方法。
  7. 請求項6に記載の方法であって、前記スズ含有のゼオライト材料は、BEA、MWWおよびこれらの骨格構造の混合型の骨格構造からなる群から選択される骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料、またはこれらのスズ含有のゼオライト材料の2種以上の混合物である、前記方法。
  8. 請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法であって、前記スズ含有のゼオライト材料は、該スズ含有のゼオライト材料の全質量に対して、0.1質量%から25質量%までの範囲のスズ含量を有する、前記方法。
  9. 請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップ(ii)による反応の開始時点で、スズ含有のゼオライト材料の過酸化水素に対する質量比が、0.01:1から5:1までの範囲である、前記方法。
  10. 請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップ(ii)による反応の開始時点で、過酸化水素の式(I)による化合物に対するモル比が、0.1:1から5:1までの範囲である、前記方法。
  11. 請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップ(ii)において、前記式(I)の化合物が溶剤の存在下で反応される方法において、
    (i)式(I)の化合物、過酸化水素、少なくとも1種の少なくとも部分的に溶解されたカリウム塩、および溶剤を含む液状混合物を準備するステップ
    を含、前記方法。
  12. 請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法であって、前記少なくとも1種のカリウム塩は、少なくとも1種の無機カリウム塩、少なくとも1種の有機カリウム塩、および少なくとも1種の無機カリウム塩と少なくとも1種の有機カリウム塩との組み合わせからなる群から選択される、前記方法。
  13. 請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法であって、前記少なくとも1種のカリウム塩は、水酸化カリウム、ハロゲン化カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、過塩素酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1種の無機カリウム塩、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、脂肪族飽和カルボン酸のカリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種の有機カリウム塩、および前記少なくとも1種の無機カリウム塩の少なくとも1種と前記少なくとも1種の有機カリウム塩の少なくとも1種との組み合わせからなる群から選択される、前記方法。
  14. 請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法であって、前記少なくとも1種のカリウム塩は、硝酸カリウム、リン酸二水素カリウム、ギ酸カリウム、およびそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される、前記方法。
  15. 請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップ(i)で準備される液状混合物中の少なくとも1種のカリウム塩の濃度は、ステップ(i)で準備される液状混合物中での前記少なくとも1種のカリウム塩の溶解限度の少なくとも10%である、前記方法。
  16. 請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップ(i)で準備される液状混合物において、前記少なくとも1種のカリウム塩中に含まれるカリウムの、過酸化水素に対するモル比は、25×10-6:1から1000×10-6:1までの範囲である、前記方法。
  17. 請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップ(i)で準備される液状混合物において、カリウムの過酸化水素に対するモル比は、25×10-6:1から1000×10-6:1までの範囲である、前記方法。
  18. 請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップ(i)で準備される液状混合物が、1×10-6:1から250×10-6:1までの範囲のナトリウムの過酸化水素に対するモル比でナトリウムを含有する、前記方法。
  19. 請求項1から18までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップ(i)において、前記過酸化水素は、過酸化水素水溶液として使用され、前記過酸化水素水溶液は、該過酸化水素水溶液の全質量に対して、20質量%から90質量%までの範囲の過酸化水素濃度を有する、前記方法。
  20. 請求項1から19までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップ(ii)において、前記反応は、50℃から150℃までの範囲の温度で行われる、前記方法。
  21. 請求項1から20までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップ(ii)において、前記反応は回分方式で行われる、前記方法。
  22. 請求項21に記載の方法であって、ステップ(ii)において、前記反応は、1時間から10時間までの範囲の時間にわたり行われる、前記方法。
  23. 請求項21または22に記載の方法であって、ステップ(ii)において、前記反応は、開放系において還流下で行われる、前記方法。
  24. 請求項21から23までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップ(ii)において、前記触媒は、粉末として、または噴霧乾燥粉末として使用される、前記方法。
  25. 請求項1から24までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップ(ii)において、前記反応は連続方式で行われる、前記方法。
  26. 請求項25に記載の方法であって、ステップ(i)において、前記液状混合物は、式(I)の化合物、過酸化水素、少なくとも1種の少なくとも部分的に溶解されたカリウム塩、および場合により溶剤を含む液状供給流として準備され、かつステップ(ii)において、ステップ(i)で準備された液状供給流は、スズ含有のゼオライト材料を含む触媒を含む酸化反応器中に通過され、そして前記液状供給流を酸化反応器中で酸化反応条件に供することで、式(II)の化合物、前記少なくとも1種のカリウム塩の少なくとも一部、場合により式(I)の化合物、および場合により溶剤を含む反応混合物が得られ、前記方法。
  27. 請求項25または26に記載の方法であって、前記触媒は、スズ含有のゼオライト材料およびバインダーを含む成形物として使用され、その際、前記スズ含有のゼオライト材料は、前記成形物中に含まれる、前記方法。
  28. 請求項1から27までのいずれか1項に記載の方法であって、更に
    (iii)式(II)の化合物をステップ(ii)から得られた混合物から分離するステップ
    を含む、前記方法。
  29. 請求項28に記載の方法であって、ステップ(iii)による分離は、蒸留段階を、場合により相分離段階の後に含む、前記方法。
  30. スズ含有のゼオライト材料を含む触媒と少なくとも1種のカリウム塩とを含む触媒系であって、前記少なくとも1種のカリウム塩が、少なくとも1種の無機カリウム塩、少なくとも1種の有機カリウム塩、および少なくとも1種の無機カリウム塩と少なくとも1種の有機カリウム塩との組み合わせからなる群から選択される、前記触媒系であり、式(I)
    Figure 0006461175
    [式中、R 1 およびR 2 は、互いに独立して、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル残基、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルケニル残基、アリールもしくはヘテロアリール残基、または水素原子であるが、但し、R 1 およびR 2 は、同時に水素原子ではないものとする]の有機カルボニル化合物の酸化のための、前記触媒系
  31. 請求項30に記載の触媒系であって、前記少なくとも1種のカリウム塩は、水酸化カリウム、ハロゲン化カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、過塩素酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1種の無機カリウム塩、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、脂肪族飽和カルボン酸のカリウム塩から選択される少なくとも1種の有機カリウム塩、および前記少なくとも1種の無機カリウム塩の少なくとも1種と前記少なくとも1種の有機カリウム塩の少なくとも1種との組み合わせからなる群から選択される、前記触媒系。
  32. 請求項30または31に記載の触媒系であって、前記スズ含有のゼオライト材料は、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EMT、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MMFI、MFS、MON、MOR、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAB、NAT、NEES、NON、NPO、OBW、OFF、OSI、OSO、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN SFO、SGT、SOD、SSY、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、WEN、YUG、ZON、およびこれらの骨格構造の2種以上の混合型の骨格構造からなる群から選択される骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料、またはこれらのスズ含有のゼオライト材料の2種以上の混合物であり、かつ前記スズ含有のゼオライト材料は、該スズ含有のゼオライト材料の全質量に対して、0.1質量%から25質量%までの範囲のスズ含量を有する、前記触媒系。
  33. 少なくとも1種のカリウム塩の、式(I)
    Figure 0006461175
    の有機カルボニル化合物の酸化方法におけるスズ含有のゼオライト材料を含む触媒のための添加剤としての使用において、前記式中、R1およびR2は、互いに独立して、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル残基、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルケニル残基、アリールもしくはヘテロアリール残基、または水素原子であるが、但し、R1およびR2は、同時に水素原子ではなく、こうして式(II)
    Figure 0006461175
    の化合物が得られ、ここで、R1もR2も水素原子ではない場合に、R1およびR2は、カルボニル基またはカルボキシル基と一緒になって環を形成してよく、その式(I)の化合物は、
    Figure 0006461175
    であり、かつその式(II)の化合物は、
    Figure 0006461175
    である、前記使用。
  34. 請求項33に記載の使用であって、前記スズ含有のゼオライト材料は、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EMT、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MMFI、MFS、MON、MOR、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAB、NAT、NEES、NON、NPO、OBW、OFF、OSI、OSO、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN SFO、SGT、SOD、SSY、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、WEN、YUG、ZON、およびこれらの骨格構造の2種以上の混合型の骨格構造からなる群から選択される骨格構造を有するスズ含有のゼオライト材料、またはこれらのスズ含有のゼオライト材料の2種以上の混合物であり、かつ前記スズ含有のゼオライト材料は、0.1質量%から25.0質量%までの範囲のスズ含量を有する、前記使用。
  35. 請求項33または34に記載の使用であって、前記少なくとも1種のカリウム塩は、水酸化カリウム、ハロゲン化カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、過塩素酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1種の無機カリウム塩、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、脂肪族飽和カルボン酸のカリウム塩から選択される少なくとも1種の有機カリウム塩、および前記少なくとも1種の無機カリウム塩の少なくとも1種と前記少なくとも1種の有機カリウム塩の少なくとも1種との組み合わせからなる群から選択される、前記使用。
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