JP5958015B2 - スズ含有触媒を用いたカルボニル化合物の酸化物の製造方法 - Google Patents

スズ含有触媒を用いたカルボニル化合物の酸化物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、スズ含有触媒の存在下、過酸化反応により、カルボニル化合物を酸化して酸化物を製造する方法に関する。さらに、本発明は、酸化反応に使用したスズ含有触媒を回収して繰り返し使用する製造方法に関する。
本発明のように、過酸化反応によりカルボニル化合物を酸化して酸化物を製造する方法としては、例えば、ケトンと、過酢酸、過安息香酸等の有機過酸とを反応させて、エステル、ラクトン、及びホルミルオキシ化合物を製造する、いわゆる、バイヤー−ビリガー(Baeyer−Villiger)反応が、一般的に知られている(例えば、非特許文献1参照))。また、反応生成物である、例えば、エステル、ラクトン、並びにこれらの化合物の副反応により得られるカルボン酸、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、及びアルコールは、例えば、医薬、香料、染料、有機合成中間体や樹脂原料等として有用な化合物である。(例えば、非特許文献2参照)。
特に、環状ケトンを製造原料として使用した場合、反応で製造される、ラクトン、ヒドロキシカルボン酸、及びジカルボン酸は、それぞれ、ジオール化合物合成の有用な出発原料となるため注目されている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、バイヤー−ビリガー反応としては、近年、酸化剤として、前記有機過酸ではなく、過酸化水素を使用する様々な酸化系が開発されてきている(例えば、特許文献2、特許文献3、及び非特許文献3参照)。
例えば、特許文献1では、周期表3族、13族、14族及び15族から選択された金属元素を含む化合物の存在下、ケトン化合物と過酸化水素とを反応させて、エステル化合物又はラクトン化合物を製造する方法が示され、さらに実施例では、シクロへキサノンからのε−カプロラクトンの合成法が開示されている。
また、特許文献2には、例えば、タングステン、モリブデンおよびバナジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む金属含有メソポアシリケートを使用した反応例等が開示されている。
さらに、非特許文献3では、例えば、スズを担持したベータゼオライト(HZSM−5)などの金属触媒を用いた酸化反応方法について報告されている。
国際公開公報第1996/020909号パンフレット 特開2000−256342号 特開2003−300722号
Tetrahedron letters, 43, p.6925 (2002) J. Org. Chem., 51, p.2830 (1986) Nature,412,424(2001)
しかしながら、例えば、過酢酸又はm−クロロ過安息香酸等の有機過酸は、衝撃に敏感取り扱いが難しく、また、濃縮状態では爆発の危険もあるため、研究目的としては広く使用されてはいるが、工業的な使用を考えた場合、安全性やコスト面から実用的な方法とは言い難かった。
そこで、取り扱いが難しい有機過酸の使用を避けるために、例えば、特許文献2、特許文献3及び非特許文献3などに記載の様々な酸化系が開発されてきている。しかしながら、これらの方法においても、例えば、使用する金属触媒が高価であるというコスト面での問題や、希少金属であるという工業的使用に対して供給安定性の問題や、さらには製造に使用する前に特殊な触媒調製を行う必要があるという煩雑な調製面での問題等から、工業的な製造においては、実用性が高い製造方法とは言い難かった。
また、本発明者もε−カプロラクトンを得る目的で、実際に、特許文献2の実施例12に従って塩化スズ(II)を用いてこの反応を試してみたが、目的とするε−カプロラクトンの反応選択率は、わずか4.1%しかないことが確認された(本願比較例1参照)。
さらに、工業的使用を考えた場合、例えば、経済性(コスト)や、廃棄物の削減という環境問題等も考慮し、反応触媒がリサイクル再使用できるかどうかも重要な課題であった。
そこで、本発明は、カルボニル化合物を使用した過酸化反応において、高い反応選択性を有し、かつリサイクル使用可能な反応触媒を提供することを課題とする。さらに、本発明は、前記反応触媒して、カルボニル化合物を過酸化反応させて、例えば、エステル、ラクトン又はホルミルオキシ化合物、或いはこれらの化合物の加水分解物などを高効率的に製造する方法を提供することを課題とする。
上記の課題より、本発明者らは、本発明の課題を達成するため鋭意検討した結果、本発明の過酸化反応に対してリサイクル再使用が可能な特定のスズを含有する新規な反応触媒を見出した。さらに、このスズ含有触媒を使用して、カルボニル化合物の過酸化反応を行い、例えば、エステル、ラクトン、又はホルミルオキシ化合物、並びにこれらの化合物の副反応により得られるカルボン酸、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、及びアルコールを高効率的に製造する方法を見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の課題は、下記に示す[1]から[14]の発明にて解決される。
[1] 下記一般式(1)で示されるスズ含有触媒の存在下、下記一般式(2)で示されるカルボニル化合物と過酸化物とを反応させることを特徴とする、一般式(3)で示されるエステル化合物、一般式(4)で示されるカルボン酸化合物、及び一般式(5)で示される水酸基を含有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化物の製造方法。
Figure 0005958015
(式中、Rは炭素原子数1から24の炭化水素基(又はアルカリ金属原子)を示し、xはR基の個数で0〜3の実数を示す。また、yは酸素原子の個数を示し、0〜1の実数である。さらに、zは水酸基の個数を示し、0〜4の実数である。但し、x、y及びzの合計数は4を超えない。なお、一般式(1)で示されるスズ含有触媒の炭素原子数は100を越えない。)
Figure 0005958015
(式中、Rは、置換基を有していても良い炭素原子数1から24の炭化水素基を示す。また、Rは、水素原子、置換基を有していても良い炭素原子数1から24の炭化水素基を示す。)
Figure 0005958015
(式中、R及びRは、前記一般式(2)のR及びRの定義と同じである。)
Figure 0005958015
(式中、Rは、前記一般式(2)のRの定義と同じである。)
Figure 0005958015
(式中、Rは、前記一般式(2)のRの定義と同じである。)
[2] 下記一般式(1)で示されるスズ含有触媒の存在下、下記一般式(6)で示される環状カルボニル化合物と過酸化物とを反応させることを特徴とする、下記一般式(7)で示されるラクトン化合物、及び下記一般式(8)で示されるヒドロキシカルボン酸化合物、及び一般式(9)で示されるジカルボン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化物の製造方法。
Figure 0005958015
(式中、R、x、y及びzは、前記一般式(1)で示されるものと同じである。なお、一般式(1)で示されるスズ含有触媒の炭素原子数は100を越えない。)
Figure 0005958015
(式中、Lは、置換基を有していても良い、炭素原子数3から24のアルキレン基、又は炭素原子数7から24のアラルキレン基を示す。)
Figure 0005958015
(式中、Lは、前記一般式(6)のLの定義と同じである。)
Figure 0005958015
(式中、Lは、前記一般式(6)のLの定義と同じである。)
Figure 0005958015
(式中、Lは、置換基を有していても良い、炭素原子数2から23のアルキレン基、フェニレン基、又は炭素原子数7から23のアラルキレン基を示す。)
[3]一般式(1)で示されるスズ含有触媒として、下記一般式(1a)で示されるスズ含有触媒を使用する、前記[1]又は[2]に記載の酸化物の製造方法。
Figure 0005958015
(式中、yは酸素原子の個数を示し、0〜1の実数である。また、zは水酸基の個数を示し、0〜4の実数である。但し、y及びzの合計数は4を超えない。)
[4] 一般式(1a)で示されるスズ含有触媒が、四塩化スズ、テトラアルコキシスズ、スズ酸塩、又はスズの有機酸塩を加水分解して調製された触媒である、前記[3]に記載の酸化物の製造方法。
Figure 0005958015
(式中、yは酸素原子の個数を示し、0〜1の実数である。また、zは水酸基の個数を示し、0〜4の実数である。但し、yとzとの合計数は4を超えない。)
[5] 前記[1]又は[2]の反応終了後に回収して得られるスズ含有リサイクル触媒を、繰り返し前記[1]又は[2]に記載のスズ含有反応触媒として使用する、請求項1又は2に記載の酸化物の製造方法。
[6] 酢酸スズ(Sn(OAc))の存在下、前記一般式(2)で示されるカルボニル化合物と過酸化物とを反応させた後に回収して得られるスズ含有リサイクル触媒を、繰り返し前記[1]又は[2]に記載のスズ含有反応触媒として使用する、前記[1]又は[2]に記載の酸化物の製造方法。
[7] 過酸化物が過酸化水素である、前記[1]から[6]のいずれか1項に記載の酸化物の製造方法。
[8] 前記[1]又は[2]に記載の反応終了後に回収して得られるスズ含有リサイクル触媒。
[9] 酢酸スズ(Sn(OAc))の存在下、前記一般式(2)で示されるカルボニル化合物と過酸化物とを反応させた後に回収して得られるスズ含有リサイクル触媒。
本発明の製造方法によれば、前記一般式(2)で示される、ケトン基やホルミル基などを有するカルボニル化合物から、例えば、一般式(3)で示されるエステル化合物、及び/又は一般式(4)で示されるカルボン酸化合物等の多種多様な化合物を一度に製造することができる。また、同様に一般式(6)で示される環状のカルボニル化合物から、例えば、一般式(7)で示されるラクトン化合物、一般式(8)で示されるヒドロキシカルボン酸化合物、及び/又は一般式(9)で示されるジカルボン酸化合物等が製造されるが、これらの化合物は、それぞれ、例えば、医薬、香料、染料、有機合成中間体や樹脂原料等として有用である。
さらに、例えば、一般式(2)で示されるカルボニル化合物として、一般式(6)で示される環状カルボニル化合物を使用した場合、本発明の反応によって得られる一般式(7)で示されるラクトン化合物、及び下記一般式(8)で示されるヒドロキシカルボン酸化合物及び一般式(9)で示されるジカルボン酸化合物は、いずれも、アルキレンジオールの合成原料として使用することもできる。すなわち、本発明は、アルキレンジオール製造用原料の製造方法でもある。さらに、本発明の製造方法によれば、使用したスズ含有触媒が意外にも失活することなくリサイクル使用できることから経済的にも好適なカルボニル化合物の酸化物の製造方法である。
≪一般式(1)で示されるスズ含有触媒≫
本発明の過酸化反応で使用される反応触媒としては、下記一般式(1)で示されるスズ含有触媒が使用される。
Figure 0005958015
ここで、一般式(1)中、Rは当該反応触媒の中心金属であるスズ(Sn)に結合する炭素原子数1から24の炭化水素基(又はアルカリ金属原子)を示し、xはR基の平均個数で0〜3の実数で表され、yは当該反応触媒の中心金属であるスズ(Sn)に結合する酸素原子数の平均個数を示し、0〜1の実数で表され、zは当該反応触媒の中心金属であるスズ(Sn)に結合する水酸基数の平均個数を示し、0〜4の実数で示される。但し、x、y及びzの合計数は4を超えない。ここで、前記平均値は、元素分析から算出される。
ここで、一般式(1)中、Rで示される炭化水素基は、炭素原子数1〜24の直鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等);炭素原子数3〜24の分岐鎖状アルキル基(例えば、2−メチルエチレン基、3,3−ジメチルプロピレン基、3,3−ジメチルペンチレン基等);炭素原子数3〜24の環状アルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデカニル基等);炭素原子数6〜24のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、ビフェニル基等);炭素原子数7〜24のアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基等)の炭素原子数1〜24の炭化水素基であり、さらに、上記で示された基は、位置異性体や光学異性体などの各種異性体も含む。
また、一般式(1)の炭素原子数1〜24の炭化水素基は、置換基を有してもよい。そこで、前記炭化水素基の炭素原子に結合する水素原子の1つ以上が、例えば、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基、及び/又は炭素数1〜6のジアルキルアミノ基などで置換されていてもよい。また、これらの置換基の個数は限定されないが、一般式(1)で示されるスズ含有触媒の炭素原子数は100を越えない。
上記より、一般式(1)で示されるスズ含有触媒として、好ましくは下記一般式(1a)、一般式(1b)、及び一般式(1c)からなる群より選ばれる一種以上のスズ含有触媒であり、より好ましくはSn(OH)、SnO(OH)、Rが炭素原子数1〜18の炭化水素基又はアルカリ金属原子である前記一般式(1b)、及び前記一般式(1c)からからなる群より選ばれる一種以上のスズ含有触媒が使用される。
Figure 0005958015
(一般式(1a)から(1b)中、Rは炭素原子数2から24の炭化水素基を示し、yは0〜1の実数であり、zは0〜4の実数である。但し、yとzとの合計数は4を超えない。)
ここで、上記一般式(1b)及び前記一般式(1c)における炭素原子数1〜18の炭化水素基として、好ましくは炭素原子数1〜18の直鎖状アルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンジル基である。
また、本発明で使用される一般式(1)で示されるスズ含有触媒は、更に例えば、シリカ、アルミナ、ジルコンなどから選ばれる担体に担持されたスズ成分を含有する担持型反応触媒であってもよい。但し、これらの触媒においては、1つ以上の水酸基がスズに結合したスズ成分を含有した担持型反応触媒を示す。従って、本発明で使用される一般式(1)で示されるスズ含有触媒は、1つ以上の水酸基がスズ原子に結合している化合物、及びそれを含む組成物のすべて含む。
本発明で使用する一般式(1)で示されるスズ含有触媒は、市販品があればそれを使用してもよく、また、市販品が無いものについては、例えば、次に示す反応触媒の製造方法等に従って、別途製造して使用する。
<方法1:スズ酸化合物の加水分解法>
本発明に使用される一般式(1)で示されるスズ含有触媒のうち、主に一般式(1a)で示されるスズ含有触媒は、例えば、一般式(1d)で示されるスズ酸化合物を水溶液中にて加水分解する方法により製造することができる(下記、反応式<I>参照)。
Figure 0005958015
ここで、一般式(1d)中、Mは、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子を示し、mはその個数を示し、0〜2である。また、一般式(1a)中、yは0〜1の実数であり、zは0〜4の実数である。但し、一般式(1a)中、yとzとの合計数は4を超えない。
また、一般式(1d)で示されるスズ酸化合物は、単独で使用しても、又は複数種類使用してもいずれであってもよい。
<方法2:スズアルコキシド化合物の加水分解法>
本発明に使用される一般式(1)で示されるスズ含有触媒のうち、主に一般式(1a)で示されるスズ含有触媒は、例えば、一般式(1e)で示されるスズアルコキシド化合物を水溶液中にて加水分解する方法により製造することができる(下記、反応式<II>参照)。
Figure 0005958015
ここで、一般式(1e)中、R’は、前記一般式(1)におけるRの定義と同じである。また、一般式(1a)中、yは0〜1の実数であり、zは0〜4の実数である。但し、一般式(1a)中、yとzとの合計数は4を超えない。
また、一般式(1e)で示されるスズ酸化合物は、単独で使用しても、又は複数種類使用してもいずれであってもよい。
<方法3:ハロゲン化スズ化合物の加水分解法>
本発明に使用される一般式(1)で示されるスズ含有触媒のうち、主に一般式(1a)から一般式(1c)で表されるスズ含有触媒は、例えば、一般式(9)で示される炭化水素基(R)を含有してもよいハロゲン化スズ化合物を水溶液中にて加水分解する方法により製造することができる(下記、反応式<III>参照)。
Figure 0005958015
ここで、一般式(1)中、R、x、y及びz、並びに一般式(1f)における、R、x及びyは、前記一般式(1)のものと同じである。また、一般式(1f)中、Halは、ハロゲン原子を示し、hはその個数を表し、1〜4の整数である。但し、一般式(1f)中、x、y、及びhの合計数は4を超えない。また、一般式(1f)で示されるハロゲン化スズ化合物は、単独で使用しても、又は複数種類使用してもいずれであってもよい。
(一般式(1f)で示されるハロゲン化スズ)
上記より、一般式(1f)で示されるハロゲン化スズとしては、好ましくはSnCl、RSnCl、及び、RSn(=O)Clからなる群より選ばれる一種以上のハロゲン化スズである。
(水溶液)
前記加水分解法において、使用される水溶液は、本発明の前記加水分解反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、有機溶媒との混合溶液であってもよい。
前記加水分解法において、使用される水溶液として、好ましくはアルカリ水溶液であり、その具体例としては、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物や炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、又は炭酸水素カリウム等の炭酸のアルカリ金属塩、水酸化マグネシウムや水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物や炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸のアルカリ土類金属塩の水溶液が使用される。なお、これらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、単独で使用しても、或いは複数種類を混合して使用してもどちらであっても良く、これらのアルカリ金属塩とアルカリ土類金属塩とを混合して使用してもよい。さらに、これらのアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、加水分解反応の際に適宜をそのまま添加して調整してもよい。従って、前記水溶液の濃度についても特に限定されない。
前記加水分解法において、アルカリ水溶液とハロゲン化スズの混合方法については特に制限されない。つまり、アルカリ水溶液にハロゲン化スズを添加しても良いし、ハロゲン化スズにアルカリ水溶液を添加しても良いし、アルカリ水溶液とハロゲン化スズを添加混合しても良い。また、加水分解においては、反応液のpHを調整することが好ましい。なお、pHとしては、好ましくは0.5〜10、更に好ましくは1〜7である。
上記方法1より、本発明の一般式(1)で示されるスズ含有触媒は、例えば、一般式(1f)で示されるハロゲン化スズを水溶液中に、攪拌するなどの方法にて混合し、得られた反応混合物をろ過又はデカンテーションを行い、固体として取得する。なお、上記方法において、例えば、反応温度、反応圧力等の反応環境は特に制限されない。
<方法4:カルボン酸スズ化合物を用いた製造方法>
本発明に使用される一般式(1a)で示されるスズ含有触媒は、例えば、一般式(10)で示されるカルボン酸スズ化合物を過酸化物の存在下にて処理する方法(方法4−1)、又は一般式(10)で示されるカルボン酸スズ化合物を、過酸化物と前記一般式(2)又は一般式(6)で示されるカルボニル化合物の存在下で処理する方法(方法4−2)を行うことで取得することができる(下記、反応式<IV>参照)。
Figure 0005958015
ここで、反応式<IV>中、一般式(1a)で示されるスズ含有触媒におけるy及びzは、前記一般式(1a)のものと同じである。また、一般式(1a)中、yとzとの合計数は4を超えない。なお、一般式(10)で示されるカルボン酸スズ化合物については、次に説明する。
(一般式(10)で示されるカルボン酸スズ化合物)
本発明で使用される一般式(5)で示されるカルボン酸スズ化合物において、Rにおける炭素原子数1から24の炭化水素基は、前記一般式(1)のRおける炭化水素基の定義と同じである。
本発明で使用される一般式(5)で示されるカルボン酸スズ化合物としては、例えば、蟻酸スズ、酢酸スズ、プロピオン酸スズ、ブタン酸スズ、ヘキサン酸スズ、2−エチルヘキサン酸スズ等の炭素原子数1〜24の脂肪族モノカルボン酸のスズ塩;安息香酸スズ等の炭素原子数7〜24の芳香族モノカルボン酸のスズ塩;ピリジンカルボン酸スズ;シュウ酸スズ、マロン酸スズ、マレイン酸スズ等の炭素原子数1〜24の脂肪族ジカルボン酸のスズ塩;フタル酸スズ、イソフタル酸スズ、テレフタル酸スズ、ベンゼンテトラカルボン酸(モノ又はジ)スズ、ナフタレンテトラカルボン酸(モノ又はジ)スズ、ビフェニルテトラカルボン酸(モノ又はジ)スズ等の炭素原子数8〜24の芳香族ポリカルボン酸のスズ塩;ピリジンカルボン酸スズ、ピロールカルボン酸スズ、フランカルボン酸スズ等の炭素原子数4〜24の複素環式モノカルボン酸のスズ塩などが挙げられる。
上記カルボン酸スズ化合物として、好ましくは1〜24の脂肪族モノカルボン酸のスズ塩及び炭素原子数7〜24の芳香族モノカルボン酸のスズ塩からなる群より選ばれる一種以上のカルボン酸スズ化合物;より好ましくは酢酸スズ、プロピオン酸スズ、ブタン酸スズ、ヘキサン酸スズ、2−エチルヘキサン酸スズ、安息香酸スズからなる群より選ばれる一種以上のカルボン酸スズ化合物である。
(カルボニル化合物)
本発明の方法4−2で使用される、一般式(2)又は一般式(6)で示されるカルボニル化合物とその使用量は、後述の≪本発明の酸化物の製造方法≫に記載のカルボニル化合物と同じ種類であり、また同じ使用量である。
(過酸化物)
また、本発明で使用される過酸化物及びその使用量は、後述の≪本発明の酸化物の製造方法≫に記載の過酸化物と同義のものが使用される。
なお、本発明の方法4によれば、一般式(1a)で示されるスズ含有触媒は、例えば、一般式(10)で示されるカルボン酸スズ化合物の水溶液中に、過酸化物と、必要に応じて前記一般式(2)又は一般式(6)で示されるカルボニル化合物を加え、攪拌するなどの方法にて混合し、得られた反応混合物をろ過又はデカンテーションを行うことで、固体として取得することができる。なお、上記の方法において、例えば、反応温度、反応圧力等の反応環境は特に制限されない。
≪本発明の酸化物の製造方法≫
本発明の酸化物の製造方法は、例えば、前記一般式(1)で示されるスズ含有触媒の存在下、一般式(2)で示されるカルボニル化合物と過酸化物とを反応させて、一般式(3)で示されるエステル化合物の製造することができる(反応式<V>)。
Figure 0005958015
ここで、反応式<V>において、一般式(1)で示されるスズ含有触媒における、R、x、y及びzは、前記一般式(1)に記載のものと同じである。
また、一般式(2)中、Rは、置換基を有していても良い炭素原子数1から24の炭化水素基を示し、Rは、水素原子、置換基を有していても良い炭素原子数1から24の炭化水素基を示す。さらに、R及びRは、結合して環状構造を形成していてもよい。一般式(3)中、R及びRは、前記一般式(2)のR及びRの定義と同じである。
<一般式(2)で示されるカルボニル化合物>
本発明の製造原料であるカルボニル化合物は、下記一般式(2)で示されるケトン又はアルデヒド基を有する化合物である。
Figure 0005958015
一般式(2)において、式中、Rは、置換基を有していても良い炭素原子数1から24の炭化水素基を示す。また、Rは、水素原子、置換基を有していても良い炭素原子数1から24の炭化水素基を示す。なお、R及びRは、結合して環状構造を形成していてもよい。
一般式(2)中、R又はRおける炭化水素基は、炭素原子数1〜24の直鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等);炭素原子数3〜24の分岐鎖状アルキル基(例えば、2−メチルエチレン基、3,3−ジメチルプロピレン基、3,3−ジメチルペンチレン基等);炭素原子数3〜24の環状アルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデカニル基等);炭素原子数6〜24のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、ビフェニル基等);炭素原子数7〜24のアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基等)を示し、更に位置異性体や光学異性体などの各種異性体も含む。
<一般式(6)で示される環状カルボニル化合物>
また、一般式(2)で示されるカルボニル化合物は、R及びRは結合して環状構造を形成してもよく、すなわち、下記一般式(6)で示される環状カルボニル化合物であってもよい。
Figure 0005958015
一般式(6)で示される環状カルボニル化合物において、Lは、置換基を有していても良い、炭素原子数3から24のアルキレン基、又は炭素原子数7から24のアラルキレン基を示す。
そこで、本発明の一般式(2)で示される環状カルボニル化合物としては、例えば、無置換又は置換基を有しても良い、シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、シクロドデカノン、シクロウンデカノン、2−デカロン(Decahydro-2-naphthalenone)、スピロ[2,5]オクタン−6−オン、スピロ[3,5]ノナン−7−オン等の脂環式カルボニル化合物や下記に一般式(12)〜(16)に示す、含芳香族縮環式カルボニル化合物が含まれる。
Figure 0005958015
また、前記一般式(2)のR及びRにおける炭化水素基、並びに前記一般式(6)のLにおけるアルキレン基及びアラルキレン基は、置換基を有していても良い。そこで、このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子)、炭素原子数1から8のアルキル基(直鎖、分岐鎖、環状;各種異性体も含む)、メトキシ基、エトキシ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリクロロロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロエトキシ基、フェニル基、ハロゲン原子で置換されたフェニル基、フェニルオキシ基、及び(ハロゲン原子で置換されたフェニル)オキシ基が挙げられる。さらに、これらの置換基の個数は限定されない。但し、一般式(2)で示されるカルボニル化合物、及び一般式(6)で示される環状カルボニル化合物の炭素原子数は24を越えない。
なお、一般式(6)で示される環状カルボニル化合物を使用した場合、本発明の反応により、一般式(7)で示されるラクトン化合物が得られる(反応式<V>)。
Figure 0005958015
ここで、反応式<V>中、一般式(1)で示されるスズ含有触媒における、R、x、y及びzは、前記一般式(1)に記載のものと同じである。また、一般式(6)で示される環状カルボニル化合物のLは、置換基を有していても良い、炭素原子数3から24のアルキレン基、又は炭素原子数7から24のアラルキレン基を示す。
従って、本発明で使用される一般式(2)で示されるカルボニル化合物又は一般式(6)で示される環状カルボニル化合物として具体的に、好ましくは無置換又は置換基を有しても良い、シクロヘキシルカルボアルデヒド、メチルシクロヘキシルケトン、ベンズアルデヒド、アセトフェノン、2,3−メチレンジオキシベンズアルデヒド、3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒド、2,3−エチレンジオキベンズアルデヒド、3,4−エチレンジオキシベンズアルデヒド、2,3−メチレンジオキシアセトフェノン、3,4−メチレンジオキシアセトフェノン、2,3−エチレンジオキシアセトフェノン、3,4−エチレンジオキシアセトフェノン、シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、シクロドデカノン、シクロウンデカノンであり;
より好ましくはメチルシクロヘキシルケトン、2,3−メチレンジオキシベンズアルデヒド、3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒド、2,3−エチレンジオキベンズアルデヒド、3,4−エチレンジオキシベンズアルデヒド、2,3−メチレンジオキシアセトフェノン、3,4−メチレンジオキシアセトフェノン、2,3−エチレンジオキシアセトフェノン、3,4−エチレンジオキシアセトフェノン、シクロプロパノン、シクロペンタノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロドデカノンである。
<過酸化物>
本発明で使用される過酸化物は、過酸化水素、過硫酸、過硫酸アルカリ塩化合物、過硫酸アルカリ土類塩化合物からなる群から少なくとも1種以上が選ばれる。また、本発明で使用される過酸化物は、水又は後述の有機溶媒に溶解又は懸濁させて使用してもよい。なお、前記過酸化物は、例えば、市販品をそのまま使用しても、また任意の公知の方法により製造して用いてもよい。
本発明の過酸化物として、好ましくは過酸化水素、過硫酸、過硫酸のアルカリ金属塩、更に好ましくは過酸化水素水、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、及び過硫酸ナトリウムと過硫酸カリウムの混合物、より好ましくは過酸化水素水、特に好ましくは30%〜60%過酸化水素水である。
本発明の過酸化物の使用量は、反応液の均一性や攪拌性等により適宜調節するが、一般式(2)で示されるカルボニル化合物(又は一般式(6)で示される環状カルボニル化合物)1モルに対して、好ましくは0.1〜100モル、より好ましくは0.3〜50モル、特に好ましくは0.5〜10モルである。
<本発明で使用されるスズ含有触媒>
本発明で使用されるスズ含有触媒は、前記一般式(1)で示されるスズ成分を含有する組成物である。また、本発明のスズ含有触媒は、単独又は複数種類を混合して使用しても良い。さらに、前記反応触媒は、そのまま使用しても、例えば、水、後述の有機溶媒或いはこれらの混合溶媒に溶解又は懸濁させて使用しても良い。
(使用量:反応触媒)
本発明のスズ含有触媒の使用量は、反応液の均一性や攪拌性等により適宜調節するが、一般式(2)で示されるカルボニル化合物1モルに対して、0.001モル以上2.0モル以下であり、好ましくは0.001モル以上1.0モル未満、より好ましくは0.003モル以上1.0モル未満、特に好ましくは0.004モル以上0.5モル以下である。
<反応溶媒>
本発明の酸化反応は、無溶媒で行うことも、また反応溶媒の存在下にて行うこともできる。また、その反応系は、均一系或いは不均一系のどちらでもよく、更に、均一系の場合、単相系であっても、例えば、水−有機相からなる二相系のような多相系であってもどちらの場合でもあってもよい。
本発明の反応を反応溶媒の存在下にて行う場合、使用することができる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ヘキフルオロイソプロパノール等のアルコール類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;アセトン、2−ブタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;蟻酸、酢酸等のカルボン酸類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホンキシド類、スルホラン等のスルホン類;N,N’−ジメチルイミダゾリジノン等の尿素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロエタン等のハロゲン類;酢酸エチル、プロピオン酸エチル等のカルボン酸エステル類等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を同時に使用してもよい。
前記反応溶媒として、好ましくは水、ニトリル類、ケトン類、カーボネート類、エーテル類、カルボン酸類、芳香族炭化水素類、ハロゲン類、カルボン酸エステル類からなる群より選ばれる少なくとも1種の混合溶媒、より好ましくは水、アセトニトリル、アセトン、ジメチルカーボネート、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、酢酸、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ベンゼン、及びトルエン、キシレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の混合溶媒、特に好ましくは、水、アセトニトリル、アセトン、1,4−ジオキサン、酢酸、プロピオン酸エチル、及びトルエンからなる群より選ばれる少なくとも1種の混合溶媒が挙げられる。
また、前記の水との混合溶媒については、それらの混合組成は特に限定されないが、全溶媒量に対する水の量は、通常0.01〜80重量%、好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは0.3〜20重量%、更に好ましくは0.5〜10重量%、特に好ましくは0.5〜7.5重量%である。
(使用量:反応溶媒)
前記反応溶媒の使用量は、反応液の均一性や攪拌性等により適宜調節するが、一般式(1)で示される環状ケトン化合物1gに対して、好ましくは、0.1〜1000gであり、より好ましくは0.3〜750g、特に好ましくは0.5〜500gである。
<その他添加物>
本発明の反応では、添加物として、例えば、リン酸、リン酸塩化合物、界面活性剤などを加えて、本発明の反応を行なってもよい。
使用するリン酸塩としては、例えば、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウム等のリン酸アルカリ金属塩、リン酸水素アルカリ金属塩、及びリン酸アルカリ土類金属塩並びにリン酸アンモニウム塩を挙げられる。また、本発明の反応では、反応速度を高めるために、例えば、アルキルスルホン酸アルカリ金属塩等の界面活性剤を使用しても良い。なお、上記の添加物を用いて、後述の反応液のpHを調整してもよい。
<反応条件>
本発明の過酸化反応は、例えば、大気中又は不活性ガス雰囲気にて行われる。また、本発明のスズ含有触媒、前記一般式(2)で示されるカルボニル化合物(又は一般式(6)で示される環状カルボニル化合物)、過酸化物、及び反応溶媒の混合順序は特に限定されない。しかしながら、危険性を有する過酸化物が、反応時に確実に消費され、反応終了後に過剰に残存しないように、前記一般式(2)で示されるカルボニル化合物(又は一般式(6)で示される環状カルボニル化合物)、スズ含有触媒、及び反応溶媒との混合物に、反応温度条件下にて過酸化物を加えていく態様が望ましい。反応時に、過酸化物が確実に消費されるように、攪拌しながら反応を行うことが好ましい。
(反応温度)
本発明の反応温度は、好ましくは0℃〜150℃、更に好ましくは10℃〜120℃、より好ましくは20℃〜100℃、特に好ましくは60℃〜90℃であり、反応圧力は、特に限定されない。また、上記反応においては、反応系のpHにより、過酸化物が分解されるため反応自体が進みにくくなる場合がある。したがって、反応系のpHは、好ましくは6.0〜10.5、より好ましくは8.0〜9.5で実施する。なお、本発明の反応の進行は、ガスクロマトグラフィー(GC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)等の分析手段により確認しながら行うことが望ましい。
本発明の反応は、反応終了後、例えば、反応混合物を必要により分液、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸塩や、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤にて処理後、得られたラクトン化合物及びヒドロキシカルボン酸化合物の混合物を、引き続き、ジオール化合物の製造に使用することができる。また、得られたラクトン化合物及びヒドロキシカルボン酸化合物の混合物は、例えば、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の弱アルカリ性水溶液と有機溶媒を用いて分液することで、ラクトン化合物を有機層溶液へ、ヒドロキシカルボン酸化合物を水層溶液へ分配し、それぞれ単離・精製することができ、或いは蒸留、再結晶或いはカラムクロマトグラフィー等の方法によってもそれぞれ単離・精製することもできる。
≪本発明の製造法で得られる酸化物及びその加水分解物≫
本発明は、上記のような酸化反応条件下で過酸化反応を行うことにより、一般式(2)で示される様々なカルボニル化合物と過酸化物から、効率よく一般式(3)で示されるエステル化合物、及び一般式(7)で示されるラクトン化合物などの酸化物が得られる。
<一般式(3)で示されるエステル化合物、及び一般式(7)で示されるラクトン化合物>
そこで、本発明で製造される酸化物である、一般式(3)で示されるエステル化合物、及び一般式(7)で示されるラクトン化合物としては、例えば、ギ酸シクロへキシルエステル、ギ酸フェニルエステル、ギ酸(2,3−メチレンジオキシベンジル)エステル、ギ酸(3,4−メチレンジオキシベンジル)エステル、ギ酸(2,3−エチレンジオキシベンジル)エステル、ギ酸(3,4−エチレンジオキシベンジル)エステル、酢酸シクロへキシルエステル、酢酸フェニルエステル、酢酸(2,3−メチレンジオキシベンジル)エステル、酢酸(3,4−メチレンジオキシベンジル)エステ、酢酸(2,3−エチレンジオキシベンジル)エステル、酢酸(3,4−エチレンジオキシベンジル)エステル、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、β−メチル−ε−カプロラクトン、γ−メチル−ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−プロピル−ε−カプロラクトン、α−エチル−ε−カプロラクトン、β−エチル−ε−カプロラクトン、γ−エチル−ε−カプロラクトン、α−エチル−ε−メチル−ε−カプロラクトン、α−エチル−ε−ブチル−ε−カプロラクトン、α−エチル−ε−イソプロピル−ε−カプロラクトン、α−エチル−ε−イソブチル−ε−カプロラクトン、α−エチル−ε−tert−ブチル−ε−カプロラクトン、α−プロピル−ε−カプロラクトン、α−ブチル−ε−カプロラクトン、α−ブチル−ε−メチル−ε−カプロラクトン、α−ブチル−ε−プロピル−ε−カプロラクトン、α−イソプロピル−ε−カプロラクトン、α−イソプロピル−ε−メチル−ε−カプロラクトン、α−イソプロピル−ε−プロピル−ε−カプロラクトン、α−イソプロピル−ε−ブチル−ε−カプロラクトン、α−イソプロピル−ε−tert−ブチル−ε−カプロラクトン、α−イソブチル−ε−カプロラクトン、α−イソブチル−ε−メチル−ε−カプロラクトン、α−イソブチル−ε−プロピル−ε−カプロラクトン、α−イソブチル−ε−ブチル−ε−カプロラクトン、α−イソブチル−ε−イソプロピル−ε−カプロラクトン、α−イソブチル−ε−tert−ブチル−ε−カプロラクトン、α−tert−ブチル−ε−カプロラクトン、β−tert−ブチル−ε−カプロラクトン、γ−tert−ブチル−ε−カプロラクトン、α−tert−ブチル−ε−メチル−ε−カプロラクトン、α−tert−ブチル−ε−プロピル−ε−カプロラクトン、α−tert−ブチル−ε−ブチル−ε−カプロラクトン、α,β−ジメチル−ε−カプロラクトン、α,γ−ジメチル−ε−カプロラクトン、α,δ−ジメチル−ε−カプロラクトン、α,ε−ジメチル−ε−カプロラクトン、β,γ−ジメチル−ε−カプロラクトン、β,δ−ジメチル−ε−カプロラクトン、α,β−ジエチル−ε−カプロラクトン、α,γ−ジエチル−ε−カプロラクトン、α,δ−ジエチル−ε−カプロラクトン、α,ε−ジエチル−ε−カプロラクトン、β,γ−ジエチル−ε−カプロラクトン、β,δ−ジエチル−ε−カプロラクトン、α,ε−ジプロピル−ε−カプロラクトン、α,ε−ジブチル−ε−カプロラクトン、α,ε−ジイソプロピル−ε−カプロラクトン、α,ε−ジイソブチル−ε−カプロラクトン、α,ε−ジtert−ブチル−ε−カプロラクトン等が挙げられる。
≪本発明の製造法で得られる酸化物からの加水分解物≫
本発明の製造法では、上記のような酸化物がさらに反応中で加水分解した、例えば、前記一般式(4)で示されるカルボン酸化合物、前記一般式(5)で示される水酸基を含有する化合物、又は前記一般式(8)で示されるヒドロキシカルボン酸化合物のような加水分解物、及びこのヒドロキシカルボン酸化合物が、さらに過酸化反応された一般式(9)で示されるジカルボン酸化合物が精製する(反応式<VI>)。
Figure 0005958015
ここで、反応式<VI>中のそれぞれの化合物において、Rは、置換基を有していても良い炭素原子数1から24の炭化水素基を示し、Rは、水素原子、置換基を有していても良い炭素原子数1から24の炭化水素基を示す。また、Lは、置換基を有していても良い、炭素原子数3から24のアルキレン基、又は炭素原子数7から24のアラルキレン基を示し、Lは、置換基を有していても良い、炭素原子数2から23のアルキレン基、フェニル基、又は炭素原子数7から23のアラルキレン基を示す。
このような化合物のうち、特に、一般式(3)で示されるエステル化合物が、例えば、ギ酸シクロヘキシルエステル、ギ酸フェニルエステル、又はギ酸(3,4−メチレンジオキシフェニル)エステルなどのエステル化合物である場合、加水分解により精製するシクロヘキサノール、フェノール、又はセサモールなどの上記一般式(5)で示される水酸基を含有する化合物は、それぞれ単独に、溶剤、有機合成用原料、又は香料用原料等として工業的に有用である。
さらに、本発明の製造方法によれば、例えば、一般式(6)で示される環状カルボニル化合物並びにその加水分解物である上記一般式(8)で示されるヒドロキシカルボン酸化合物及び/又はこのヒドロキシカルボン酸化合物が、さらに過酸化反応を受けた一般式(9)で示されるジカルボン酸化合物が、一度に併産できる場合がある。これらの一般式(6)で示される環状カルボニル化合物、一般式(8)で示されるヒドロキシカルボン酸化合物、及び一般式(9)で示されるジカルボン酸化合物は、それぞれ単独に、またこれらの混合物を、水素化分解することでアルキレンジオールを製造することができる。
従って、本発明の製造方法は、上記一般式(6)で示される環状カルボニル化合物、一般式(8)で示されるヒドロキシカルボン酸化合物、及び一般式(9)で示されるジカルボン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のアルキレンジオール製造用原料の製造方法でもある。
本発明において、特に過酸化物として過酸化水素を使用した場合、この過酸化水素は反応後に水と酸素に分解されるため、過酸化物由来の副生成物の処理を行う必要がなく、使用した過酸化水素は、反応後の水に分解出来ることから、有害な廃棄物を低減させた、いわゆる、環境への負荷を抑えた製造方法である。
また、本発明の反応に使用したスズ含有触媒は、反応後処理時のろ過操作により固形物のろ物として分離されることから、生成物であるエステル化合物、ラクトン化合物及び/又はホルミルオキシ化合物を容易に取得することができる。すなわち、本発明の製造方法は、工業的にも簡便な製造方法であるといえる。
さらに、本発明の製造方法によれば、例えば、反応後にろ過等により回収された固形物は、スズ含有触媒として、そのまま次回のバイヤー−ビリガー反応に再利用しても、意外にも、全く失活することなくカルボニル化合物の酸化物を取得することができる。これまでに反応触媒をリサイクル使用する製造方法は、これまで数多く知られているが、多くの場合、回収された触媒をそのまま再利用に供することはできず、例えば、触媒再生化工程などの煩雑な操作を要する。しかしながら、本発明の反応後に回収された固形物は、そのままリサイクル使用できることから経済的にも好適に、カルボニル化合物の酸化物を取得することができる反応触媒である。
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、「%」は特記しない限り、「質量%」を意味する。
分析装置:GC−14B(SHIMADZU製)
使用カラム:TC−WAX(GL Science製);0.53mmI.D.×30m,膜厚1μm
分析温度:開始温度:60℃(5分間保持)→(昇温速度:7℃/min)→終了温度:220℃(12分間保持)。
注入口:スプリットレス,250℃
検出器:FID,250℃
内部標準物質:アニソール
<高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の分析条件>
カラム:ODS−80TsQA φ4.6mm×250mm(TOSOH製)+Unision C−18 φ4.6mm×100mm(Imtact製)
溶離液:アセトニトリル/20mM NaH2PO4水溶液;Vol/Vol)=5/95(リン酸でpH=3.0に調整)。
カラム温度:40℃
検出器:210nm
流量:1.0ml/min
実施例1(一般式(1)で示されるスズ含有触媒の製造:方法1)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器にスズ酸ナトリウム1.00g(3.749mmol)、水100gを加え、室温で1mol/L塩酸7.5ml(7.5mmol)を滴下した。反応液を25℃で1時間攪拌した。その後、反応液中の不溶物をろ過し、ろ物を減圧下乾燥することで、目的物である一般式(1)で示されるスズ含有触媒を、前記一般式(1a)のスズ含有触媒として0.608g(白色固体)取得した。
実施例2(一般式(1)で示されるスズ含有触媒の製造:方法2)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器に水100gを加え、室温でテトラーt−ブトキシスズ1.00g(2.432mmol)を滴下した。反応液を25℃で1時間攪拌した。その後、反応液中の不溶物をろ過し、ろ物を減圧下乾燥することで、目的物である一般式(1)で示されるスズ含有触媒を、前記一般式(1a)のスズ含有触媒として0.420g(白色固体)取得した。
実施例3(一般式(1)で示されるスズ含有触媒の製造:方法3)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器に水20mlを加え、25℃で反応液のpHが2.5から3.5の範囲で、四塩化スズ五水和物3.00g(8.555mmol)を水34mlに溶解した水溶液と1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を滴下した。反応液を25℃で30分間攪拌した。その後、反応液中の不溶物をろ過し、ろ物を減圧下乾燥することで、目的物である一般式(1)で示されるスズ含有触媒を、前記一般式(1a)のスズ含有触媒として1.369g(白色固体)取得した。
実施例4(一般式(1)で示されるスズ含有触媒の製造:方法3)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器に2mol/L水酸化ナトリウム水溶液30.6ml(61.2mmol)を加え、25℃で四塩化スズ五水和物3.57g(10.185mmol)を水10mlに溶解した水溶液を滴下した。反応液を25℃で30分間攪拌した。1mol/L塩酸20.4ml(20.4mmol)を滴下した。反応液を25℃で30分間攪拌した。その後、反応液中の不溶物をろ過し、ろ物を減圧下乾燥することで、目的物である一般式(1)で示されるスズ含有触媒を、前記一般式(1a)のスズ含有触媒として1.6532g(白色固体)取得した。
実施例5(一般式(1)で示されるスズ含有触媒の製造:方法4)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器に酢酸スズ(II)2.00g(8.446mmol)、水20mlを加え、2mol/L水酸化ナトリウム水溶液8.5ml(17.00mmol)を加えた。反応液を25℃で3時間攪拌した。3mol/L硫酸を反応液のpHが3.5なるまで滴下した。反応液を25℃で30分間攪拌した。その後、反応液中の不溶物をろ過し、ろ物を減圧下乾燥することで、目的物である一般式(1)で示されるスズ含有触媒を、前記一般式(1a)のスズ含有触媒として1.1867g(黄褐色固体)取得した。
実施例6(一般式(1)で示されるスズ含有触媒の製造:方法4)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器に酢酸スズ(II)2.00g(8.446mmol)、水15ml、アセトニトリル15mlを加え、反応液を75℃で4時間攪拌した。その後、反応液中の不溶物をろ過し、ろ物を減圧下乾燥することで、目的物である一般式(1)で示されるスズ含有触媒を、前記一般式(1a)のスズ含有触媒として1.2126g(黒灰色固体)取得した。
実施例7(一般式(1)で示されるスズ含有触媒の製造:方法4)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器に酢酸スズ(IV)2.00g(5.636mmol)、水15ml、アセトニトリル15mlを加え、反応液を75℃で4時間攪拌した。その後、反応液中の不溶物をろ過し、ろ物を減圧下乾燥することで、目的物である一般式(1)で示されるスズ含有触媒を、前記一般式(1a)のスズ含有触媒として0.9240g(白色固体)取得した。
実施例8(一般式(1)で示されるスズ含有触媒の製造:方法4)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキサノン20.00g(0.204mol)、アセトニトリル80g、60%過酸化水素11.46g(0.204mol)、酢酸スズ(II)4.827g(0.020mol)を加え、70℃にて4時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、反応液中の不溶物をろ過し、ろ物を減圧下乾燥することで、目的物である一般式(1)で示されるスズ含有触媒を、前記一般式(1a)のスズ含有触媒として3.833g(白色固体)取得した。
実施例9(一般式(1)で示されるスズ含有触媒の製造:方法4)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器に酢酸スズ(II)2.414g(10.194mmol)アセトニトリル40g、60%過酸化水素8.597g(152.91mmol)、を加え、70℃にて4時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、反応液中の不溶物をろ過し、ろ物を減圧下乾燥することで、目的物である一般式(1)で示されるスズ含有触媒を、前記一般式(1a)のスズ含有触媒として1.8021g(白色固体)取得した。
実施例1〜9で得たスズ含有触媒において、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES)によりスズ原子の定量分析を行い、また不活性ガス溶融−赤外線吸収法による酸素と水素の定量分析を行った。その結果を以下の表1に纏めた。
Figure 0005958015
*1:誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES)。
*2:不活性ガス溶融−赤外線吸収法。
参考例1(HPLC標品の合成:6−ヒドロキシヘキサン酸の水溶液)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器にε−カプロラクトン(0.20g、東京化成製)、精製水(8ml)、8M水酸化ナトリウム水溶液(2ml)を加え、100℃の油浴中で1時間攪拌し、反応させた。反応終了後、得られた反応液を冷却し、3M硫酸水溶液を用いて、当該反応液のpHを2.5〜3.0とし、6−ヒドロキシヘキサン酸の水溶液を得た。
実施例10(ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合成;実施例1のスズ含有触媒使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1.5等量)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキサノン1.00g(10.2mmol)に、アセトニトリル4g、60%過酸化水素0.867g(15.3mmol)、実施例1のスズ含有触媒0.19g(約1mmol)を加え、70℃にて4時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、不溶物をろ過にて取り除いた。次いで、得られたろ液を分析(GC;内部標準法、HPLC;絶対検量線法)したところ、シクロヘキサノンの転化率は33.8%、ε−カプロラクトンの収率は22.8%、選択率は67.5%(シクロヘキサノンの使用量基準)、6−ヒドロキシヘキサン酸の収率は3.7%、選択率は11.0%(シクロヘキサノンの使用量基準)、アジピン酸の収率は0.8%、選択率は2.4%(シクロヘキサノンの使用量基準)であり、ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合計の選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)は、80.9%であった。
実施例11(ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合成;実施例2のスズ含有触媒使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1.5等量)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキサノン1.00g(10.2mmol)に、アセトニトリル4g、60%過酸化水素0.867g(15.3mmol)、実施例2のスズ含有触媒0.19g(約1mmol)を加え、70℃にて4時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、不溶物をろ過にて取り除いた。次いで、得られたろ液を分析(GC;内部標準法、HPLC;絶対検量線法)したところ、シクロヘキサノンの転化率は38.0%、ε−カプロラクトンの収率は24.2%、選択率は63.7%(シクロヘキサノンの使用量基準)、6−ヒドロキシヘキサン酸の収率は4.9%、選択率は12.9%(シクロヘキサノンの使用量基準)、アジピン酸の収率は1.0%、選択率は2.6%(シクロヘキサノンの使用量基準)であり、ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合計の選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)は、79.2%であった。
実施例12(ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合成;実施例3のスズ含有触媒使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1.5等量)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキサノン1.00g(10.2mmol)に、アセトニトリル4g、60%過酸化水素0.867g(15.3mmol)、実施例3のスズ含有触媒0.19g(約1mmol)を加え、70℃にて4時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、不溶物をろ過にて取り除いた。次いで、得られたろ液を分析(GC;内部標準法、HPLC;絶対検量線法)したところ、シクロヘキサノンの転化率は36.1%、ε−カプロラクトンの収率は24.3%、選択率は67.3%(シクロヘキサノンの使用量基準)、6−ヒドロキシヘキサン酸の収率は4.4%、選択率は12.2%(シクロ0ヘキサノンの使用量基準)、アジピン酸の収率は1.3%、選択率は3.6%(シクロヘキサノンの使用量基準)であり、ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合計の選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)は、83.1%であった。
実施例13(ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合成;実施例4のスズ含有触媒使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1.5等量)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキサノン1.00g(10.2mmol)に、アセトニトリル4g、60%過酸化水素0.867g(15.3mmol)、実施例4のスズ含有触媒0.19g(約1mmol)を加え、70℃にて4時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、不溶物をろ過にて取り除いた。次いで、得られたろ液を分析(GC;内部標準法、HPLC;絶対検量線法)したところ、シクロヘキサノンの転化率は34.7%、ε−カプロラクトンの収率は22.7%、選択率は65.4%(シクロヘキサノンの使用量基準)、6−ヒドロキシヘキサン酸の収率は4.1%、選択率は11.8%(シクロヘキサノンの使用量基準)、アジピン酸の収率は1.0%、選択率は2.9%(シクロヘキサノンの使用量基準)であり、ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合計の選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)は、80.1%であった。
実施例14(ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合成;実施例5のスズ含有触媒使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1.5等量)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキサノン1.00g(10.2mmol)に、アセトニトリル4g、60%過酸化水素0.867g(15.3mmol)、実施例5のスズ含有触媒0.19g(約1mmol)を加え、70℃にて4時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、不溶物をろ過にて取り除いた。次いで、得られたろ液を分析(GC;内部標準法、HPLC;絶対検量線法)したところ、シクロヘキサノンの転化率は28.7%、ε−カプロラクトンの収率は18.3%、選択率は63.8%(シクロヘキサノンの使用量基準)、6−ヒドロキシヘキサン酸の収率は4.3%、選択率は15.0%(シクロヘキサノンの使用量基準)、アジピン酸の収率は0.7%、選択率は2.4%(シクロヘキサノンの使用量基準)であり、ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合計の選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)は、81.2%であった。
実施例15(ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合成;実施例6のスズ含有触媒使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1.5等量)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキサノン1.00g(10.2mmol)に、アセトニトリル4g、60%過酸化水素0.867g(15.3mmol)、実施例6のスズ含有触媒0.19g(約1mmol)を加え、70℃にて4時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、不溶物をろ過にて取り除いた。次いで、得られたろ液を分析(GC;内部標準法、HPLC;絶対検量線法)したところ、シクロヘキサノンの転化率は22.5%、ε−カプロラクトンの収率は14.2%、選択率は63.1%(シクロヘキサノンの使用量基準)、6−ヒドロキシヘキサン酸の収率は2.7%、選択率は12.0%(シクロヘキサノンの使用量基準)、アジピン酸の収率は0.5%、選択率は2.2%(シクロヘキサノンの使用量基準)であり、ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合計の選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)は、77.3%であった。
実施例16(ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合成;実施例7のスズ含有触媒使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1.5等量)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキサノン1.00g(10.2mmol)に、アセトニトリル4g、60%過酸化水素0.867g(15.3mmol)、実施例7のスズ含有触媒0.19g(約1mmol)を加え、70℃にて4時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、不溶物をろ過にて取り除いた。次いで、得られたろ液を分析(GC;内部標準法、HPLC;絶対検量線法)したところ、シクロヘキサノンの転化率は45.2%、ε−カプロラクトンの収率は27.8%、選択率は61.5%(シクロヘキサノンの使用量基準)、6−ヒドロキシヘキサン酸の収率は9.4%、選択率は20.8%(シクロヘキサノンの使用量基準)、アジピン酸の収率は1.7%、選択率は3.8%(シクロヘキサノンの使用量基準)であり、ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合計の選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)は、86.1%であった。
実施例17(ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合成;実施例8のスズ含有触媒使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1.5等量)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキサノン1.00g(10.2mmol)に、アセトニトリル4g、60%過酸化水素0.867g(15.3mmol)、実施例8のスズ含有触媒0.19g(約1mmol)を加え、70℃にて4時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、不溶物をろ過にて取り除いた。次いで、得られたろ液を分析(GC;内部標準法、HPLC;絶対検量線法)したところ、シクロヘキサノンの転化率は33.8%、ε−カプロラクトンの収率は23.9%、選択率は70.7%(シクロヘキサノンの使用量基準)、6−ヒドロキシヘキサン酸の収率は4.2%、選択率は12.4%(シクロヘキサノンの使用量基準)、アジピン酸の収率は0.9%、選択率は2.7%(シクロヘキサノンの使用量基準)であり、ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合計の選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)は、85.5%であった。
実施例18(ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合成;実施例8のスズ含有触媒使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1.2等量、有機溶媒未使用)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキサノン2.00g(20.2mmol)に、60%過酸化水素1.388g(24.5mmol)、実施例8のスズ含有触媒0.38g(約2mmol)を加え、70℃にて8時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、不溶物をろ過にて取り除いた。次いで、得られたろ液を分析(GC;内部標準法、HPLC;絶対検量線法)したところ、シクロヘキサノンの転化率は52.3%、ε−カプロラクトンの収率は7.7%、選択率は14.7%(シクロヘキサノンの使用量基準)、6−ヒドロキシヘキサン酸の収率は33.6%、選択率は64.3%(シクロヘキサノンの使用量基準)、アジピン酸の収率は2.7%、選択率は5.2%(シクロヘキサノンの使用量基準)であり、ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合計の選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)は、84.2%であった。
実施例19(ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合成;実施例9のスズ含有触媒使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1.5等量)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキサノン1.00g(10.2mmol)に、アセトニトリル4g、60%過酸化水素0.867g(15.3mmol)、実施例9のスズ含有触媒0.19g(約1mmol)を加え、70℃にて4時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、不溶物をろ過にて取り除いた。次いで、得られたろ液を分析(GC;内部標準法、HPLC;絶対検量線法)したところ、シクロヘキサノンの転化率は40.5%、ε−カプロラクトンの収率は25.7%、選択率は63.5%(シクロヘキサノンの使用量基準)、6−ヒドロキシヘキサン酸の収率は7.7%、選択率は19.0%(シクロヘキサノンの使用量基準)、アジピン酸の収率は1.6%、選択率は4.0%(シクロヘキサノンの使用量基準)であり、ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合計の選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)は、86.5%であった。
実施例20(ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合成;メタスズ酸(SnO(OH))使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1.5等量)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器にクロヘキサノン2.00g(20.4mmol)に、アセトニトリル8g、60%過酸化水素1.719g(30.6mmol)、メタスズ酸0.38g(三津和化学薬品社製、2.25mmol)及び酢酸1.224g(20.4mmol)を加え、70℃にて4時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、不溶物をろ過にて取り除いた。次いで、得られたろ液を分析(GC;内部標準法、HPLC;絶対検量線法)したところ、シクロヘキサノンの転化率は34.7%、ε−カプロラクトンの収率は27.5%、選択率は79.3%(シクロヘキサノンの使用量基準)、6−ヒドロキシヘキサン酸の収率は2.8%、選択率は8.1%(シクロヘキサノンの使用量基準)、アジピン酸の収率は1.4%、選択率は4.0%(シクロヘキサノンの使用量基準)であり、ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合計の選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)は、91.4%であった。
実施例21(ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合成;メタスズ酸(SnO(OH))使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1.5等量)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器にクロヘキサノン2.00g(20.4mmol)に、アセトニトリル8g、60%過酸化水素1.719g(30.6mmol)、メタスズ酸0.38g(三津和化学薬品社製、2.25mmol)を加え、70℃にて4時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、不溶物をろ過にて取り除いた。次いで、得られたろ液を分析(GC;内部標準法、HPLC;絶対検量線法)したところ、シクロヘキサノンの転化率は15.3%、ε−カプロラクトンの収率は10.5%、選択率は68.6%(シクロヘキサノンの使用量基準)、6−ヒドロキシヘキサン酸の収率は1.5%、選択率は9.8%(シクロヘキサノンの使用量基準)、アジピン酸の収率は0.6%、選択率は3.9%(シクロヘキサノンの使用量基準)であり、ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合計の選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)は82.4%であった。
実施例22(ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合成;ブチルスズヒドロキシドオキシド:(BuSnO(OH))使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1.2等量)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキサノン2.00g(20.4mmol)に、60%過酸化水素1.146g(20.4mmol)、ブチルスズヒドロキシドオキシド0.426g(東京化成工業製、2.04mmol)、及び酢酸1.224g(20.4mmol)を加え、70℃にて8時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、不溶物をろ過にて取り除いた。次いで、得られたろ液を分析(GC;内部標準法、HPLC;絶対検量線法)したところ、シクロヘキサノンの転化率は94.4%、ε−カプロラクトンの収率は1.9%、選択率は2.0%(シクロヘキサノンの使用量基準)、6−ヒドロキシヘキサン酸の収率は87.0%、選択率は92.2%(シクロヘキサノンの使用量基準)、アジピン酸の収率は4.9%、選択率は5.1%(シクロヘキサノンの使用量基準)であり、ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合計の選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)は、99.3%であった。
実施例23(ε−カプロラクトン及び6−ヒドロキシヘキサン酸の合成;トリフェニルスズヒドロキシド:(Ph3SnOH)使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1.5等量)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキサノン1.00g(10.2mmol)に、60%過酸化水素1.146g(20.4mmol)、トリフェニルスズヒドロキシド0.374g(ALDRICH製、1.02mmol)を加え、70℃にて4時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、不溶物をろ過にて取り除いた。次いで、得られたろ液を分析(GC;内部標準法、HPLC;絶対検量線法)したところ、シクロヘキサノンの転化率は28.5%、ε−カプロラクトンの収率は14.3%、選択率は50.2%(シクロヘキサノンの使用量基準)、6−ヒドロキシヘキサン酸の収率は6.1%、選択率は21.4%(シクロヘキサノンの使用量基準)、アジピン酸の収率は1.0%、選択率は3.6%(シクロヘキサノンの使用量基準)であり、ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合計の選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)は、75.2%であった。
実施例24(ブチロラクトン及び6−ヒドロキシブタン酸の合成;実施例8のスズ含有触媒使用、過酸化水素の使用量;シクロブタノン1モルに対して1.5等量)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器にシクロブタノン1.43g(20.4mmol)に、60%過酸化水素1.723g(30.6mmol)、実施例8のスズ含有触媒0.380g(約2mmol)、アセトニトリル8gを加え、55〜60℃にて4時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、不溶物をろ過にて取り除いた。次いで、得られたろ液を分析(GC;内部標準法、HPLC;絶対検量線法)したところ、シクロブタノンの転化率は98.7%、ブチロラクトンの収率は69.2%、選択率は70.1%(シクロブタノンの使用量基準)、4−ヒドロキシブタン酸の収率は12.3%、選択率は12.4%(シクロブタノンの使用量基準)であり、ブチロラクトンと4−ヒドロキシブタン酸の合計の選択率(シクロブタノンの使用量基準)は、82.5%、反応収率は81.5%であった。
実施例25(プロピオン酸エチル及びプロピオン酸の合成;実施例8のスズ含有触媒使用、過酸化水素の使用量;3−ペンタノン1モルに対して2.0等量)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器に3−ペンタノン1.72g(20.0mmol)に、60%過酸化水素2.268g(40.0mmol)、実施例8のスズ含有触媒0.426g(約2mmol)、トルエン8g、及び酢酸1.20g(20.0mmol)を加え、70℃にて6時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、不溶物をろ過にて取り除いた。次いで、得られたろ液を分析(GC;内部標準法、HPLC;絶対検量線法)したところ、3−ペンタノンの転化率は42.5%、プロピオン酸エチルの収率は36.8%、選択率は86.6%(3−ペンタノンの使用量基準)、プロピオン酸の収率は2.7%、選択率は6.4%(3−ペンタノンの使用量基準)であり、プロピオン酸エチルとプロピオン酸の合計の選択率(3−ペンタノンの使用量基準)は、92.9%、反応収率は39.5%であった。
実施例26(酢酸(3,4−メチレンジオキシフェニル)エステルの合成;実施例8のスズ含有触媒使用、過酸化水素の使用量;3,4−メチレンジオキシアセトフェノン1モルに対して2.0等量)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器に3,4−メチレンジオキシアセトフェノン1.64g(10.0mmol)に、60%過酸化水素1.134g(20.0mmol)、実施例8のスズ含有触媒0.186g(約1mmol)、トルエン4g、及び酢酸0.600g(10.0mmol)を加え、45℃にて10時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、不溶物をろ過にて取り除いた。次いで、得られたろ液を分析(GC;内部標準法、HPLC;絶対検量線法)したところ、3,4−メチレンジオキシアセトフェノンの転化率は58.8%、酢酸(3,4−メチレンジオキシフェニル)エステルの選択率は87.8%(5−アセチル−1,3−ベンゾジオキソールの使用量基準)、反応収率は51.6%であった。
実施例27(酢酸シクロヘキシルエステルの合成;実施例8のスズ含有触媒使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキシルメチルケトン1モルに対して2.0等量)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキシルメチルケトン1.26g(10.0mmol)に、60%過酸化水素1.134g(20.0mmol)、実施例8のスズ含有触媒0.186g(約1mmol)、トルエン4g、及び酢酸0.600g(10.0mmol)を加え、70℃にて6時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、不溶物をろ過にて取り除いた。次いで、得られたろ液を分析(GC;内部標準法、HPLC;絶対検量線法)したところ、シクロヘキシルメチルケトンの転化率は92.7%、酢酸シクロヘキシルエステルの選択率は92.2%(シクロヘキシルメチルケトンの使用量基準)、反応収率は85.5%であった。
実施例28(酢酸シクロヘキシルエステルの合成;実施例8のスズ含有触媒使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキシルメチルケトン1モルに対して2.0等量)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキシルメチルケトン1.26g(10.0mmol)に、60%過酸化水素1.134g(20.0mmol)、実施例8のスズ含有触媒0.186g(約1mmol)、アセトニトリル4g、及び酢酸0.600g(10.0mmol)を加え、70℃にて6時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、不溶物をろ過にて取り除いた。次いで、得られたろ液を分析(GC;内部標準法、HPLC;絶対検量線法)したところ、シクロヘキシルメチルケトンの転化率は79.4%、酢酸シクロヘキシルエステルの選択率は82.9%(シクロヘキシルメチルケトンの使用量基準)、反応収率は65.8%であった。
実施例29〜32(リサイクル製造法:ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合成;実施例8のスズ含有触媒繰り返し使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1.5等量)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキサノン2.00g(20.4mmol)に、60%過酸化水素1.735g(30.6mmol)、実施例8のスズ含有触媒0.38g(約2mmol)、アセトニトリル8g、及び酢酸1.224g(20.4mmol)を加え、70℃にて4時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、スズ含有触媒をろ過にて回収した。回収したスズ含有触媒に、シクロヘキサノン2.00g(20.4mmol)に、60%過酸化水素1.735g(30.6mmol)、アセトニトリル8g、及び酢酸1.224g(20.4mmol)を加え、70℃にて4時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、スズ含有触媒をろ過にて回収した。同反応操作によるスズ含有触媒の繰り返し使用を合計4回行った。各反応で得られたろ液は分析(GC;内部標準法、HPLC;絶対検量線法)を行い、シクロヘキサノンの転化率、ε−カプロラクトンの収率、選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)、6−ヒドロキシヘキサン酸の収率、選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)、アジピン酸の収率、選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)を測定した。以下、表2にそれらの結果を纏めた。
Figure 0005958015
*1:合計選択率(%)=[ε−カプロラクトンの選択率(%)]+[6−ヒドロキシへキサン酸の選択率(%)]+[アジピン酸の選択率(%)]
比較例1(ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合成;塩化スズ(II)使用、過酸化水素の使用量;シクロヘキサノン1モルに対して1等量)
攪拌装置、温度計を備えたガラス製容器にシクロヘキサノン1.00g(10.2mmol)に、アセトニトリル4g、60%過酸化水素0.573g(10.2mmol)、塩化スズ(II)0.097g(0.5mmol)を加え、70℃にて6時間攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、不溶物をろ過にて取り除いた。次いで、得られたろ液を分析(GC;内部標準法、HPLC;絶対検量線法)したところ、シクロヘキサノンの転化率は60.4%、ε−カプロラクトンの収率は2.5%、選択率は4.1%(シクロヘキサノンの使用量基準)、6−ヒドロキシヘキサン酸の収率は12.9%、選択率は21.4%(シクロヘキサノンの使用量基準)、アジピン酸の収率は3.9%、選択率は6.5%(シクロヘキサノンの使用量基準)であり、ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸及びアジピン酸の合計の選択率(シクロヘキサノンの使用量基準)は、32.0%であった。
上記実施例及び比較例より、本発明の製造方法は、スズ含有触媒を用いることで、例えば、ケトン基やホルミル基を有するカルボニル化合物から、エステル、ラクトン及びホルミルオキシ化合物のような酸化物、並びにこれらの化合物が分解して得られるカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸及びアルコールなどの加水分解物を、製造工程を複雑にすることなく、安全で高い反応選択率で取得することが出来る。
また、前記製造方法で使用後、回収されたスズ含有触媒を、本発明の過酸化反応に繰り返し使用しても、高い選択率で、目的物であるエステル化合物、ラクトン化合物等を取得することができる。
本発明は、特定のスズ含有触媒を使用することで、ケトン基やホルミル基を有するカルボニル化合物から、エステル化合物、又はラクトン化合物のような酸化物を、工業的に有利な方法で製造することができる。また、本発明の方法で得られる生成物の中で、特に、エステル化合物、及びラクトン化合物、並びにこれらの化合物が加水分解して得られるカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、及び水酸基を含有する化合物(アルコール類やフェノール類)は、例えば、医薬、香料、染料、有機合成中間体や樹脂原料等として有用な化合物である。

Claims (1)

  1. 無溶媒、或いは、水、アセトニトリル、アセトン、1,4−ジオキサン、プロピオン酸エチル、及びトルエンからなる群より選ばれる少なくとも1種を溶媒として、
    一般式(1)で示されるスズ含有触媒のみを使用し、
    下記一般式(2)で示されるカルボニル化合物である、無置換又は置換基を有しても良い、シクロヘキシルカルボアルデヒド、メチルシクロヘキシルケトン、ベンズアルデヒド、アセトフェノン、2,3−メチレンジオキシベンズアルデヒド、3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒド、2,3−エチレンジオキベンズアルデヒド、3,4−エチレンジオキシベンズアルデヒド、2,3−メチレンジオキシアセトフェノン、3,4−メチレンジオキシアセトフェノン、2,3−エチレンジオキシアセトフェノン若しくは3,4−エチレンジオキシアセトフェノン、又は下記一般式(6)で示される環状カルボニル化合物である、無置換又は置換基を有しても良い、シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、シクロドデカノン若しくはシクロウンデカノンと、
    過酸化水素とを反応させて、
    (i)一般式(2)で示されるカルボニル化合物の場合は、対応する一般式(3)で示されるエステル化合物、一般式(4)で示されるカルボン酸化合物及び一般式(5)で示される水酸基を含有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化物、及び
    (ii)一般式(6)で示される環状カルボニル化合物の場合は、対応する一般式(7)で示されるラクトン化合物、一般式(8)で示されるヒドロキシカルボン酸化合物、及び一般式(9)で示されるジカルボン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化物
    を製造する方法。
    Figure 0005958015
    (式中、Rは炭素原子数1から24の炭化水素基(又はアルカリ金属原子)を示し、xは
    R基の個数で0〜3の実数を示す。また、yは酸素原子の個数を示し、0〜1の実数であ
    る。さらに、zは水酸基の個数を示し、0〜4の実数である。但し、x、y及びzの合計
    数は4を超えない。なお、一般式(1)で示されるスズ成分を含有する反応触媒の炭素原
    子数は100を越えない。)
    Figure 0005958015
    (式中、R は、置換基を有していても良い炭素原子数1から24の炭化水素基を示す。また、R は、水素原子、置換基を有していても良い炭素原子数1から24の炭化水素基を示す。)
    Figure 0005958015
    (式中、R 及びR は、前記一般式(2)のR 及びR の定義と同じである。)
    Figure 0005958015
    (式中、R は、前記一般式(2)のR の定義と同じである。)
    Figure 0005958015
    (式中、R は、前記一般式(2)のR の定義と同じである。)
    Figure 0005958015
    (式中、Lは、置換基を有していても良い、炭素原子数3から24のアルキレン基、又は炭素原子数7から24のアラルキレン基を示す。)
    Figure 0005958015
    (式中、Lは、前記一般式(6)のLの定義と同じである。)
    Figure 0005958015
    (式中、Lは、前記一般式(6)のLの定義と同じである。)
    Figure 0005958015
    (式中、L は、置換基を有していても良い、炭素原子数2から23のアルキレン基、フェニレン基、又は炭素原子数7から23のアラルキレン基を示す。)
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