JP6460687B2 - インフラ構造物の保守管理システム、インフラ構造物の保守管理方法 - Google Patents
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Description
このため、RBM(Risk Based Maintenance)を用いてコンクリート構造物のリスク評価を行い、相対的にリスクの高いものから優先的に補修を行う技術が提案されている(特許文献1,2)。
ライフサイクルマネージメントシステムは、主に鋼構造物を対象としていたが、現在では、コンクリート構造物においても、適用が検討されている。例えば、コンクリート構造物は、自然環境やコンクリート材料、施工方法などの様々な要因により劣化するため、このような劣化要因を考慮しつつ、コンクリート構造物の保守管理を行う技術がある。
本発明の第一実施態様に係るインフラ構造物の保守管理システムは、インフラ構造物の定期点検情報に基づいて、前記インフラ構造物の構成部材の破損確率と影響度を評価する予備評価部と、前記予備評価部の結果に基づいてリスク評価を行うリスク評価部と、前記定期点検情報に基づいて前記インフラ構造物の三次元CADモデルを作成する三次元モデル作成部と、前記三次元CADモデルに対して前記リスク評価部の結果を反映するリスク評価反映部と、前記リスク評価反映部の結果を表示する表示部と、を備え、前記影響度の評価は、安全性被害の評価と経済性被害の評価を含み、前記リスク評価部は、前記破損確率の評価と前記安全性被害の評価に基づいて安全性に関するリスク評価を行うと共に、前記破損確率の評価と前記経済性被害の評価に基づいて経済性に関するリスク評価を行い、前記リスク評価反映部は、前記三次元CADモデルに対して、前記安全性に関するリスク評価の結果と前記経済性に関するリスク評価の結果を別個に反映し、前記表示部は、前記安全性に関するリスク評価が反映された三次元CADモデルと前記経済性に関するリスク評価の結果が反映された三次元CADモデルをそれぞれ表示することを特徴とする。
よって、本発明によれば、インフラ構造物に対して適切なメンテナンスを行うことにより、インフラ構造物を長期間に亘って安全に維持することができる。
インフラ構造物とは、生産や生活の基盤を形成する構造物を意味する。例えば、ダム、道路、橋梁、トンネル、港湾、発電所、通信施設などの社会産業基盤、及び学校、病院、公園などの福祉環境施設が含まれる。
以下では、インフラ構造物のうち、公共土木施設の一つである橋梁A(道路橋)について説明する。
橋梁(インフラ構造物)Aは、コンクリートや鉄鋼からなる多数の構成部材10を備える。具体的には、橋梁Aは、上部構造(主桁、横桁、床版等)、下部構造、支承部、排水施設など、例えば258個の構成部材10を備える。
橋梁Aの各構成部材10は、経年変化や塩害等により劣化する。各構成部材10の劣化状態は、その構成部材10の環境や使用状況等によって様々である。このため、橋梁Aの各構成部材10に対して適宜、調査や補修を行う必要がある。
もっとも、橋梁Aの補修等を効率的に行うためには、これら全ての構成部材10の中から、早急に補修等を行うべき構成部材10、すなわち経年変化や塩害等によって損傷が発生している可能性が高い構成部材10を抽出する必要がある。
本実施形態のインフラ構造物の保守管理方法は、RBM(Risk Based Maintenance)と呼ばれる手法を基礎とするものである。
なお、RBMは、RBI(Risk Based Inspection)と称される場合もある。
RBMについての詳細は、例えば「圧力技術」第39巻1号(2001年1月)等に記載されている。
道路などのインフラ構造物の管理者(所有者)などが、リスク評価対象のインフラ構造物を選定する。例えば、図1に示す橋梁Aが選択される。
「破損確率」は、損傷係数基本、劣化加速要因、検査要因、施工・管理要因を定量化して求められる。損傷係数基本とは、例えば、劣化度、共用年数、交通量、当該構成部材10の環境、当該構成部材10の局部/断面応力レベル等である。検査要因とは、例えば、検査有効度、余寿命計算、配置位置、損傷事例等である。施工・管理要因とは、例えば、施工品質、塗装・紡織機能、補修履歴、点検状況等である。
損傷係数基本については、鉄鋼からなる構成部材10の調査では、腐食、亀裂、ゆるみ・脱落等を調査する。コンクリートからなる構成部材10の調査では、ひび割れ、剥離・鉄筋露出、漏水・遊離石灰等を調査する。
橋梁については、橋梁定期点検要領に基づく定期点検が行われている(非特許文献1参照)。そして、全ての構成部材について、定期点検時の判定結果が点検調書(定期点検情報)に記載される。
このため、橋梁Aの「破損確率」の評価では、橋梁定期点検要領に基づいて作成された、各構成部材10の点検調書を用いることができる。具体的には、橋梁Aの258個の構成部材10について、橋梁定期点検要領に基づいて、損傷程度の評価(a〜eの5段階評価等)が行われ、点検調書の損傷程度の欄に記載される。この損傷程度の評価は、破損確率の評価において、最も重みづけされて用いられる。
「影響度」は、「安全性被害」と「経済性被害」の2項目について定量化して求められる。
安全性被害(人身災害)の調査では、例えば、当該構成部材10の性質、重さ、高さ、危険度(温度、圧力、運動量)などを調査する。
経済性被害の調査では、例えば、当該構成部材10の補修コスト、補修するためのアクセス、通行規制に与える影響などを調査する。
「影響度」の段階評価では、各構成部材10について、「安全性被害」と「経済性被害」を区別してそれぞれ段階評価する。
図5は、経済性被害の評価を説明する図であって、(a)リスクマトリックス図、(b)三次元CADモデルMBを示す。
なお、以下の説明では、視覚的に識別(区別)可能な表現手法として、模様(ハッチング)を例にして説明する。
具体的には、橋梁Aの各構成部材10について、2つのリスクマトリクスを作成する。つまり、「破損確率」と「安全性被害」のリスクマトリクスと、「破損確率」と「経済性被害」のリスクマトリクスをそれぞれ作成する。
なお、「破損確率」と「安全性被害」のリスクマトリクスを「安全性のリスクマトリクス」、「破損確率」と「経済性被害」のリスクマトリクスを「経済性のリスクマトリクス」と呼ぶ。
また、リスクマトリクスの斜線領域にマッピングされた場合には、当該構成部材10は、「要計画変更(時期点検までに補修)」と評価される。
また、リスクマトリクスのドットハッチング領域にマッピングされた場合には、当該構成部材10は、「条件付許容(適切な検査やメンテナンスが行われていれば使用可能)」と評価される。
また、リスクマトリクスの無装飾領域にマッピングされた場合には、当該構成部材10は、「許容可能(検査・管理は不要)」と評価される。
排水管部材に関しては、漏水・滞水や防食機能の劣化が挙げられており、損傷の進行が確認されている。この部材は補修が比較的容易である。一方、支承部材に関しては、腐食や防食機能が発生しており、組立ベントの設置、ジャッキアップによる仮桁や補強部材などの設置が必要となるため、大規模な補修工事が必要となる。
そこで、橋梁Aの三次元CADモデルに対してリスクマトリクスの結果を反映して表示する。
橋梁定期点検要領に基づいて作成された点検調書(定期点検情報)には、橋梁Aの各構成部材10の配置、形状等が記載されている。このため、この点検調書に記載された各構成部材10の情報に基づいて、橋梁Aの三次元CADモデルMを作成することができる。
言い換えれば、三次元CADモデルMは、橋梁定期点検要領に基づいて作成された点検調書に記載された各構成部材10を、最小要素として作成される。
図4(b)、図5(b)に示すように、ステップS6のマッピングの結果、「許容不可(即座に補修)」と評価された構成部材10は、クロスハッチングで表示される。
また、「要計画変更(時期点検までに補修)」と評価された構成部材10は、斜線で表示される。
また、「条件付許容(適切な検査やメンテナンスが行われていれば使用可能)」と評価された構成部材10は、ドットハッチングで表示される。
また、「許容可能(検査・管理は不要)」と評価された構成部材10は、無装飾に表示される。
つまり、「安全性のリスクマトリクス」が反映された三次元CADモデルMAと、「経済性のリスクマトリクス」が反映された三次元CADモデルMBをそれぞれ作成する。
このため、橋梁Aの各構成部材10のうち、床版11が「許容不可」であると、一見して認識することができる。
このため、橋梁Aの各構成部材10のうち、床版11、支承部材12及び排水管部材13が「許容不可」であり、下部構造14等が「要計画変更(時期点検までに補修)」であると、一見して認識することができる。
このようにリスクが高い順にメンテナンスを行うことによって、橋梁A全体におけるリスクを効率的に低減させることができる。
このことは、今後増えると予測される、老朽化が進んだインフラ構造物に対しても当てはまる。すなわち、将来起こりうる経済的な影響や人的な影響を回避することが可能となる。
また、演算部24は、予備評価部25、リスク評価部26、三次元モデル作成部27及びリスク評価反映部28を備える。
演算部24のリスク評価部26は、ステップS6を実施する。すなわち、予備評価部25の演算結果に基づいて、「破損確率」及び「影響度」の評価指数をリスクマトリクスにマッピングして、各構成部材10のリスクを評価する。つまり、「安全性のリスクマトリクス」と「経済性のリスクマトリクス」をそれぞれ作成する。
演算部24の三次元モデル作成部27は、ステップS7を実施する。すなわち、入力部21から入力された各種情報等に基づいて、橋梁Aの三次元CADモデルを作成する。
演算部24のリスク評価反映部28は、ステップS8を実施する。すなわち、三次元モデル作成部27で作成した橋梁Aの三次元CADモデルMに対して、リスク評価部26の演算結果を反映する。つまり、「安全性のリスクマトリクス」が反映された三次元CADモデルMAと、「経済性のリスクマトリクス」が反映された三次元CADモデルMBをそれぞれ作成する。
上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
Claims (4)
- インフラ構造物の定期点検情報に基づいて、前記インフラ構造物の構成部材の破損確率と影響度を評価する予備評価部と、
前記予備評価部の結果に基づいてリスク評価を行うリスク評価部と、
前記定期点検情報に基づいて前記インフラ構造物の三次元CADモデルを作成する三次元モデル作成部と、
前記三次元CADモデルに対して前記リスク評価部の結果を反映するリスク評価反映部と、
前記リスク評価反映部の結果を表示する表示部と、
を備え、
前記影響度の評価は、安全性被害の評価と経済性被害の評価を含み、
前記リスク評価部は、前記破損確率の評価と前記安全性被害の評価に基づいて安全性に関するリスク評価を行うと共に、前記破損確率の評価と前記経済性被害の評価に基づいて経済性に関するリスク評価を行い、
前記リスク評価反映部は、前記三次元CADモデルに対して、前記安全性に関するリスク評価の結果と前記経済性に関するリスク評価の結果を別個に反映し、
前記表示部は、前記安全性に関するリスク評価が反映された三次元CADモデルと前記経済性に関するリスク評価の結果が反映された三次元CADモデルをそれぞれ表示することを特徴とするインフラ構造物の保守管理システム。 - 前記インフラ構造物は、橋梁であることを特徴とする請求項1に記載のインフラ構造物の保守管理システム。
- インフラ構造物の定期点検情報に基づいて、前記インフラ構造物の構成部材の破損確率と影響度を評価する予備評価工程と、
前記予備評価工程の結果に基づいてリスク評価を行うリスク評価工程と、
前記定期点検情報に基づいて前記インフラ構造物の三次元CADモデルを作成する三次元モデル作成工程と、
前記三次元CADモデルに対して前記リスク評価工程の結果を反映するリスク評価表示工程と、
を有し、
前記影響度の評価は、安全性被害の評価と経済性被害の評価を含み、
前記リスク評価工程は、前記破損確率の評価と前記安全性被害の評価に基づいてリスク評価を行うと共に、前記破損確率の評価と前記経済性被害の評価に基づいてリスク評価を行い、
前記リスク評価表示工程は、前記三次元CADモデルに対して前記破損確率の評価と前記安全性被害の評価に基づくリスク評価の結果を反映すると共に、前記三次元CADモデルに対して前記破損確率の評価と前記経済性被害の評価に基づくリスク評価の結果を反映し、前記安全性に関するリスク評価が反映された三次元CADモデルと前記経済性に関するリスク評価の結果が反映された三次元CADモデルをそれぞれ表示することを特徴とするインフラ構造物の保守管理方法。 - 前記インフラ構造物は、橋梁であることを特徴とする請求項3に記載のインフラ構造物の保守管理方法。
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