JP6460567B1 - 折板屋根材及びこれを用いた緩勾配屋根の施工方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】例えば倉庫や工場、幹線道路沿いの比較的大きなコンビニや薬局等の緩勾配屋根を施工するにあたって短い工期でコストを安く抑えつつ安全な施工を行うための折板屋根材及びこれを用いた緩勾配屋根の施工方法を提供する。
【解決手段】緩勾配屋根に用いる折板屋根材であって、取り付け対象である建物の屋根の大きさとは別に予め決められた定尺の折板屋根板100と、折板屋根材を建物に取り付けた状態で上側面となる折板屋根板の全面を覆う防水用樹脂シート200を備え、防水用樹脂シートは、折板屋根板の長手方向一方の端部の縁部全体から所定の幅だけ突出した長手方向突出部210を有し、折板屋根板同士の端部を突き当てた状態で折板屋根板同士の突き当て部を重ねて覆う防水用樹脂シートの重なり部に熱溶着によって融着部220が形成された長尺の折板屋根材とすることができるようになっている。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば倉庫や工場、幹線道路沿いの比較的大きなコンビニや薬局等の緩勾配屋根に用いる折板屋根材及びこれを用いた緩勾配屋根の施工方法に関する。
例えば倉庫や工場、幹線道路沿いの比較的大きなコンビニや薬局等の屋根には、傾斜角度が緩くかつ屋根の上面全体が同一方向に緩やかに傾斜したいわゆる緩勾配屋根が多く使用されている(例えば特許文献1参照)。このような緩勾配屋根は、水漏れの防止を図る必要上、一般に長尺の折板屋根材を横並びにして互いの幅方向端部を嵌め合い組み立てられている。
かかる折板屋根材を用いた屋根構造の他に、例えばH型鋼の上に下地材としてのデッキ材を設け、その上に断熱材を重ね、その断熱材の上面に防水シートを貼って断熱性と防水性を高めた屋根の構造も知られている(例えば特許文献2参照)。
特開2010−37908号公報 特開2017−193945号公報
上述した長尺タイプの折板屋根材を並べて多数嵌め合わせた構造の場合、以下の点が問題点として挙げられている。まず第1に、建物の規模に応じて折板屋根材の長さが数十メートルから百メートル程度と非常に長い長尺タイプの折板を多数用意する必要がある。
このような長尺タイプの折板屋根材を使用する場合、屋根の施工現場と離れた工場で折板屋根材を多数製造し、これらを屋根の施工現場に大型トラック等で運搬しようとしても、折板屋根材の長さがあまりにも長いため実際上不可能である。
そのため、屋根の施工現場にロール型成型機を持ち込み、その施工現場で長尺タイプの折板屋根材を多数成型して、その成型作業後か成型作業に合わせて長尺タイプの折板屋根材を建物の屋根の上に吊り上げる作業が必要となる。
この段階での問題点として、施工現場で長尺タイプの折板屋根材を製造するために、大型のロール成型機を屋根の施工現場に持ち込んで一定期間その施工現場で使用し続けなければならない。それ故、非常に大きな運搬用大型トラックを用いなければならず、ロール型成型機の搬入が大変であるばかりか、天候によって成型機が雨さらしになり、機能劣化を招くことになる。同様にロール型成型機によって長尺の折板屋根材として成型される非常に大きな鉄板ロールを施工現場に搬入しなければならず、これらの搬入作業に伴って非常に大きな運搬用トラックを調達する必要がある。
また、ロール成型機をその施工現場で一定期間置かなければならないため、他の屋根の施工現場で用いる異なる種類の折板屋根材を同時に製造することができない。ロール型成型機は大変大掛かりで高価な製造設備であるため、このような成型機を何台も有することは難しく、施工現場に一旦設置してしまうと他の種類の折板屋根材が製造できなくなり、他の屋根の施工スケジュールに支障をきたすことがある。
また、長尺タイプの折板屋根材をロール型成型機で製造した後に建物の屋根の部分まで運び上げる場合、1本の折板屋根材の重量がかなり嵩むようになる。そのため、この長尺タイプの折板屋根材を建物の屋根の部分まで運び上げるためにかなり大型のクレーン車等の重機を用意してその折板屋根材を建物の屋根の部分まで吊り上げる作業を行わなければならない。
また、このような長尺タイプの折板屋根材を屋根の部分まで吊り上げるにあたってバランスを取りながら吊り上げなければならないため、作業が極めて大変である。具体的には、吊り金具であるテンビンを用いて折板屋根材の長手方向何箇所かに取り付けたワイヤーを取り付けてクレーン車で建物の屋根の施工部分にまで吊り上げた後にこのテンビンを全て外すという面倒な作業が必要となる。
また、上述の長尺タイプの折板屋根材を建物の下から屋根の部分まで吊り上げる作業を行なうにあたって、建物の上まで安全かつ確実に吊り上げるために建物の下側と上側に何人もの作業者を配置する必要とする。
しかしながら、昨今の屋根の施工現場でのいわゆる屋根職人(以下、適宜「屋根職人」と称する。)と呼ばれる屋根の設置作業に熟練した作業員や施工者の人材不足から、長尺タイプの折板屋根材を用いる場合その施工現場に合せた人数の屋根職人を集めるのは現状では非常に難しくなっている。
また、このような建物の下と屋根の設置部分のそれぞれにおいて、何人もの作業者を配置させながらテンビンを用いて長尺タイプの折板屋根材を持ち上げる作業は危険が伴うという安全上の問題点も生じている。
また、長尺タイプの折板屋根材を屋根の設置場所に全て吊り上げた後、母屋の上に並べて取り付けると共に、隣接する折板同士の幅方向の端部を嵌め合わせる作業を行う。しかしながら、長尺タイプのため1本の折板屋根材の長さが非常に長く長手方向において同時に嵌め合わせる作業が必要となる。長尺タイプの折板屋根材の場合、屋根材の長手方向に亘って何人もの屋根職人を適当な間隔で配置して嵌め合わせ作業を行なわなければならない。
そのため、長尺タイプの折板屋根材を用いて屋根を葺く作業のスケジュールに合わせて、予め決められた日程で多人数の屋根職人を確保しておかなければならず、上述したように屋根の施工の分野における人材不足からスケジュール調整が難しくなり、施工の工期が遅れてしまう場合もある。
更に、長尺タイプの折板屋根材による屋根の施工が終わって長期間経過した後に生じる問題もある。具体的には、長尺タイプの折板屋根材は1本の非常に細長い金属板でできているため、熱応力の影響によりタイトフレームが壊れて飛び散るようなことも懸念される。
その理由は、屋根は建物の上部を全て覆う構造体であるため、太陽光、風雨、積雪などの全ての過酷な自然環境の影響を直接受ける。そのため、四季の季節ごとや、例えば真夏の天候の変化による影響(晴天の炎天下や急な台風の来襲に伴う激しい風雨)により、極端に細長い各折板屋根材がそれぞれ個別に熱膨張や熱収縮する。このような熱応力の影響によってタイトフレームが壊れて飛び散るためである。
また、折板屋根材を用いた屋根全体に断熱材を備えた構造とする場合においても問題点が生じる。具体的にはこのような断熱材を備えるためにダブルパック工法という施工方法により2枚の折板屋根材の間に断熱材を挟んだいわゆるサンドイッチ構造とする必要がある。
このような構造を実現するためには、一旦建物の屋根の部分一面に長尺の折板屋根材を葺いてその上を断熱材で全て覆い、更に新たな折板屋根材をその断熱材の上に葺く必要がある。このような構造を実現するために第1工程として下側の折板屋根材の取り付け、第2工程として断熱材をその折板屋根材の上に取り付け、第3工程として断熱材の上に更に折板屋根材を取り付ける3工程を必要とする。
そして、第1工程及び第3工程の作業と第2工程の作業は全く異なるものとなるため、長尺の折板屋根材を建物の上に取り付ける屋根職人と異なる作業者が下側の長尺の折板屋根材の上に断熱材を取り付けることとなる。
そのため、施工のスケジュールに合わせて最初に第1工程を担当する折板屋根材取付けの屋根職人を多人数確保し、この工程が終わった後に第2工程を担当する断熱材取付けの屋根職人を多人数確保し、更にこの工程が終わった後に第3工程を担当する折板屋根材取付けの屋根職人を再び多人数確保する大変面倒なスケジュール調整を必要とする。
更には、ロール成型機で作る長尺の折板屋根材の数が、断熱材を備えない場合に比べて2倍になると共に、この多くの折板屋根材を作る間中ロール成型機有を施工現場に置き続けなければならず、かつ建物の上部の高所で行う第1工程乃至第3工程においてそれぞれ多くの作業者を必要とし、かつ危険を伴うテンビンによる長尺の折板屋根材の吊り上げ作業を行わなければならない。そのため、断熱材を取り付けない場合の屋根の取り付けに比べてかなり長い作業スケジュールを必要とし、屋根職人の人材確保が大変であり、かつ施工コストがかなり嵩んでしまう。
また、背景技術で説明したH型鋼の上に下地材としてのデッキ材を設け更に断熱材を重ねてその上に防水用樹脂シートを貼る屋根の構造の場合、以下の点が問題点として挙げられている。
まず第1に、支持用の鋼材であるH型鋼の上に下地材としての鉄板を取り付ける作業と、その上に断熱材を重ねる作業と断熱材の上面に防水シートを融着で貼り付ける作業は別々の工事として行われ、異なる作業者が行うことになる。
上述したように熟練した屋根職人が不足している現状において各工程の作業者を工期に関して最短のスケジュールを組むためにそのスケジュール期間中に完全に人員確保しておくことは難しい。そのため、どうしてもこの屋根の取り付けの方法では工期が長くなってしまい問題が生じる。
また、デッキ材をしっかりと下地材に乗せるために例えばH型鋼同士の間隔をデッキ材に合わせて狭くしなければならず下地材を屋根全体に亘って組み立てるためにある程度長い期間を有し、その分工期が延びて屋根の取り付けのスケジュールに影響を与える。
また、このような屋根の構造によると、近年懸念されている大規模地震が起こった際に下地材である鉄板などのデッキ材が落下してくる虞も考えられる。
本発明の目的は、例えば倉庫や工場、幹線道路沿いの比較的大きなコンビニや薬局等の緩勾配屋根を施工するにあたって短い工期でコストを安く抑えつつ安全な施工を行うために好適に利用可能な定尺の折板屋根材及びこれを用いた緩勾配屋根の施工方法を提供することにある。
上述した課題を解決するために、本発明の請求項1に係る折板屋根材は、
緩勾配屋根に用いる折板屋根材であって、
前記折板屋根材は、取り付け対象である建物の屋根の大きさとは別に予め決められた所定の長さを有する定尺の折板屋根板と、
前記折板屋根材を建物に取り付けた状態で上側面となる前記折板屋根板の全面を覆う防水用樹脂シートを備え、
前記折板屋根材と前記防水用樹脂シートとは、ロール成型機の圧縮力によって互いに密着しており、
前記防水用樹脂シートは、前記折板屋根材を前記建物に取り付けた状態で見て、前記折板屋根板の長手方向一方の端部のみであって当該折板屋根材の水流れ方向水下側となる当該端部の縁部全体から所定の幅だけ突出した長手方向突出部を有し、
前記折板屋根板同士の端部を突き当てた状態で当該折板屋根板同士の突き当て部を重ねて覆う前記防水用樹脂シートの重なり部に熱溶着によって融着部が形成された長尺の折板屋根材とすることができるようになっており、
前記防水用樹脂シートの長手方向突出部は、前記折板屋根材の山折り部と谷折り部の折り具合の形状に合わせた状態で延在していると共に、少なくとも前記防水用シートの前記折板屋根材の谷折り部に相当する部分がこれに接続される相手側折板屋根材の谷折り部の接続部分の上に重なって熱溶着可能になっていることを特徴としている。
また、本発明の請求項2に係る折板屋根材は、請求項1に記載の折板屋根材において、
前記折板屋根材を建物に取り付けた状態で下側面となる前記折板屋根板に断熱材を備えたことを特徴としている。
また、本発明の請求項3に係る折板屋根材は、請求項1又は請求項2に記載の折板屋根材において、
前記折板屋根材の防水用樹脂シートが、前記折板屋根板の幅方向片側において当該折板屋根板の長手方向全体に亘って所定の幅だけ突出した幅方向突出部を有していることを特徴としている。
また、本発明の請求項4に係る折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工方法は、
請求項1又は請求項2の何れかに記載の折板屋根材を建物に屋根を葺く分だけ多数用意し、
これらの折板屋根材を建物の屋根設置部分まで運び、
前記多数の折板屋根材を、前記防水用樹脂シートの長手方向突出部がその折板屋根材より水流れ方向下流側に隣接する折板屋根材の防水用樹脂シートの上に重なるように母屋に順々に取り付け、
前記多数の折板屋根材を全て母屋に取付けると共に、前記折板屋根材同士の長手方向の端部間において重なり合った防水用樹脂シートを全て融着することで防水仕様の緩勾配屋根を建物に取り付けることを特徴としている。
また、本発明の請求項5に係る折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工方法は、
請求項3に記載の折板屋根材を建物に屋根を葺く分だけ多数用意し、請求項4に記載の折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工方法によって建物に屋根を取り付けるに際して、前記隣接する折板屋根材の幅方向一方の端部に備わる幅方向突出部についても隣接する前記折板屋根材の防水用樹脂シートの上に重ねながら前記折板屋根材を前記母屋に順々に取り付け、前記多数の防水用樹脂シートの幅方向一方の端部に沿って重なり合った前記防水用樹脂シートについても全て融着することで防水仕様の緩勾配屋根を建物に取り付けることを特徴としている。
本発明によると、例えば倉庫や工場、幹線道路沿いの比較的大きなコンビニや薬局等の緩勾配屋根を施工するにあたって、特別に工夫した定尺の折板屋根材を用いることで、防水性に優れた緩勾配屋根の施工を短い工期でコストを安く抑えかつ安全に施工することができる。
本発明の第1の実施形態に係る折板屋根材の斜視図である。 本発明の第1の実施形態に係る折板屋根材の平面図である。 本発明の第1の実施形態に係る折板屋根材の端面図である。 本発明の第1の実施形態に係る折板屋根材を2枚横方向に嵌合させた状態を示す端面図である。 本発明の第1の実施形態に係る折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工方法を説明する図である。 図5に続く説明図である。 図6に続く説明図である。 図7に続く説明図である。 図8に続く説明図であり、本実施形態に係る折板屋根材を用いて建物に屋根を葺いた状態を示す図である。 本発明の第2の実施形態に係る折板屋根材の端面図である。 図10に示した折板屋根材を2枚横方向に嵌合させた状態を示す端面図である。 本発明の第3の実施形態に係る折板屋根材の平面図である。 本発明の第3の実施形態に係る折板屋根材の端面図である。 本発明の第3の実施形態に係る折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工方法を説明する図である。 図14に続く説明図である。 図15に続く説明図である。 図16に続く説明図であり、本実施形態に係る折板屋根材を用いて建物に屋根を葺いた状態を示す図である。 本発明の第4の実施形態に係る折板屋根材を2枚横方向に嵌合させた状態を部分的に示す断面図である。 本発明の第5の実施形態に係る折板屋根材であって断熱材を有さない折板屋根材の端面図(図19(a))及び断熱材を有する折板屋根材の端面図(図19(b))である。 図19(a)に示す折板屋根材を横方向に2つ並べて結合させた状態を部分的に示す端面図(図20(a))及び図19(b)に示す折板屋根材を横方向に2つ並べて結合させた状態を部分的に示す端面図(図20(b))である。
以下、本発明に係る折板屋根材及びこれを用いた緩勾配屋根の施工方法の実施形態について図面に基づいて説明する。最初に第1の実施形態に係る折板屋根材10及びこれを用いた緩勾配屋根の施工方法について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る折板屋根材の斜視図である。また、図2は、本発明の第1の実施形態に係る折板屋根材の平面図である。また、図3は、本発明の第1の実施形態に係る折板屋根材の端面図である。また、図4は、本発明の第1の実施形態に係る折板屋根材を2枚横方向に嵌合させた状態を示す端面図である。
第1の実施形態に係る折板屋根材(以下適宜単に「折板屋根材」とする)10は、例えば倉庫や工場、幹線道路沿いの比較的大きなコンビニや薬局等の緩勾配屋根に用いる折板屋根材である。そして、折板屋根材10は、取り付け対象である建物の屋根の大きさとは別に予め決められた所定の長さを有する定尺の折板屋根板100と、折板屋根材10を建物に取り付けた状態で上側面となる折板屋根板100の全面を覆う防水用樹脂シート200を備えている。更に、防水用樹脂シート200は、折板屋根板100の長手方向一方の端部の縁部全体から所定の幅だけ突出した長手方向一端突出部210を有している。
そして、折板屋根板同士の端部を突き当てた状態で折板屋根板同士の突き当て部を重ねて覆う防水用樹脂シート200の長手方向一端突出部210、即ち長手方向に隣接する折板屋根材同士の間における重なり部に熱溶着によって水流れ方向下流側融着防水部220が形成された長尺の折板屋根材とすることができるようになっている。
本実施形態の場合、折板屋根板100にはアルミニウムや亜鉛の合金メッキ鋼板であるガルバリウム鋼板(登録商標)が用いられている。また、防水用樹脂シート200には塩ビ(ポリ塩化ビニル)シートが用いられている。そして、折板屋根材10を建物に取り付けた状態で上側面となる折板屋根板の全面を覆うように防水用樹脂シート200を重ねた状態でロール成型機(図示せず)を用いて長手方向に所定の山折り部110と谷折り部120を形成するようになっている。これに加えて、折板屋根材10の折板屋根板100は、幅方向一方の側に内側ハゼ130を有し、かつ他方の側には外側ハゼ140を有し、例えば長さ10m程度、幅30cmから50cm程度の定尺の折板屋根材として作成されている。
また、防水用樹脂シート200は、折板屋根板100の山折り部110と谷折り部120のみならず内側ハゼ130及び外側ハゼ140の上側面も覆うようにロール形成されている。なお、折板屋根板100をなすガルバリウム鋼板(登録商標)の厚さは、一例として0.5mmから1mm程度、防水用樹脂シート200をなす塩ビシートは、一例として1.5mm程度の厚さとなっている。
そして、防水用樹脂シート200は、上述したように折板屋根板100の一方の端部の縁部全体から縁全体に沿って所定の幅だけ突出して上述したように長手方向一端突出部210を形成している。上述の寸法の場合、この長手方向一端突出部210の突出長さは一例として10cm程度となっている。
続いて、第1の実施形態に係る折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工方法について説明する。図5は、本発明の第1の実施形態に係る折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工方法を説明する図である。また、図6は、図5に続く説明図である。また、図7は、図6に続く説明図である。また、図8は、図7に続く説明図である。また、図9は、図8に続く説明図であり、本実施形態に係る折板屋根材を用いて建物に屋根を葺いた状態を示す図である。
なお、図5乃至図9は、本発明への説明の理解の容易化を図るために、折板屋根材10の各構成要素の実際の形態に対して多少描き方を変えて(モディファイして)示している。
最初に、上述した定尺の折板屋根材10を屋根の施工現場とは離れた工場内で多数製造しておく。この折板屋根材を製造に当たっては、工場内にあるロール成型機を用いて製造して工場内か工場とは別の倉庫に保管しておく。
即ち、本発明によると予め任意の種類の折板屋根材10を任意の数だけ製造して保管しておくことができる。そのため、同一寸法を有する折板屋根材10か異なる寸法を有する別仕様の折板屋根材10を多少多めに作っておくことで、新たな屋根の施工の注文が急遽入った時にこれに迅速に対応することができる。
次いで、これらの折板屋根材10を、屋根を設置すべき建物の施工現場まで運搬する。本実施形態に係る折板屋根材10は、平均的には5mから長くても12m程度の長さでさほど長くない定尺の屋根材であるため、建物に取り付ける屋根の規模が大きくても小型のトラックで何回かに分けて運搬することで対応でき、特別に大型のトラックを運送会社に委託して大掛かりな運搬作業を行わずに済む。
次いで、施工現場に運んだ折板屋根材10を適当な枚数まとめてクレーン車などを用いて建物の上部の屋根設置場所まで移動させる。この場合においても、従来例で説明したように建物の上部と下部に多人数の作業者を配置しながら長尺の折板屋根材を吊り金物(テンビン)を用いた吊り上げ作業を行う必要がないので、作業者の確保がし易くかつ吊り上げ作業を安全に行うことができる。また、クレーン車も長尺の折板屋根材を釣り上げる時のような大型のクレーン車(重機)を使用する必要はない。
次いで、建物の母屋90に折板屋根材10を取り付ける。以下にこの手順について説明する。建物の母屋90が水流れ方向に対して垂直に例えば2m間隔で設けられているとすると、図5に示すように、最初に軒下の一方の端に1番目の折板屋根材10(1−1)を取り付ける。この際、母屋90に適当な固定具を用いて取り付ける。次いで、この取り付けられた折板屋根材の横方向(軒下の延在方向、以下単に「横方向」とする)に隣接する母屋90に2番目の折板屋根材10(1−2)を取付けると共に、1番目の折板屋根材10(1−1)の内側ハゼ130に2番目の折板屋根材10(1−2)の外側ハゼ140をしっかりと嵌め込む(図4参照)。
このような手順で順々に横方向に折板屋根材10を母屋90に取り付けながら既に取り付けられた折板屋根材10の内側ハゼ130にその後に取り付けられる折板屋根材10の外側ハゼ140をしっかりと嵌め込んでいく。このようにして最も軒下側の母屋90に軒下の一端から他端まで横方向(水流れと垂直方向)に折板屋根材10(1−1)〜10(1−n)を1列取り付ける(図6参照)。
次いで、この横方向1列目の折板屋根材10(1−1)〜10(1−n)の上側に上記手順と同様の手順で水流れ方向下から2列目の折板屋根材10(2−1)〜10(2−n)を取り付ける(図8参照)。そして、本実施形態においてはその後、3列目の折板屋根材10(3−1)〜10(3−n)を取り付ける。
なお、各折板屋根材10を新たに取り付ける毎に、水流れ方向下から2列目の各折板屋根材10の防水用樹脂シート200の水流れ方向下流側の端部の縁全体から突出した長手方向一端突出部210については、その下側、即ち水流れ方向下流側の折板屋根材10を覆う防水用樹脂シート200の上流側を幅方向全体に亘って長手方向に沿って一部を覆い被せるように上側に必ず重ねて取り付ける。
このようにして、軒下から軒先に向かって定尺の折板屋根材10の横方向の列を順々に母屋90に取付けると共に、既に母屋90に取り付けられた折板屋根材10の内側ハゼ130にその後に取り付けられる折板屋根材10の外側ハゼ140をしっかりと嵌め込んでいく。また、折板屋根材10の長手方向一方の端部の縁全体から突出した防水用樹脂シート200の長手方向一端突出部210については、全てその下側の折板屋根材10を覆う防水用樹脂シート200の上側に重ねるように取り付ける(図8参照)。
以上のような作業を繰り返して建物の上部の母屋90の部分全体に定尺の折板屋根材10を葺く。そして、防水用樹脂シート同士の重なり部分を熱溶着装置で融着させ、長手方向に隣接する折板屋根材同士の全ての接続部分に水流れ方向下流側融着防水部220を形成する(図9参照)。これによって、定尺の折板屋根材10を利用しているにも関わらず、屋根の施工現場でロール成型機を用いて作った長尺の屋根材と同じように水流れ方向に対して完全防水を実現した構造として建物の屋根を葺く作業を完了する。
なお、上述した定尺の折板屋根材10を建物の母屋90に葺く作業と防水用樹脂シート同士の重なり部を熱溶着装置(図示せず)で融着させて水流れ方向下流側融着防水部220を形成する作業とは同一の屋根職人が行っても良く、若しくは屋根職人のスケジュール調整や安全上重要である疲労度合いを考慮して別の屋根職人が行っても良い。
また、水流れ方向に対して下流側となる位置における横方向1列に亘って全ての定尺の折板屋根材10を母屋90に取り付けた後に、これに対して隣接する上流側となる位置に横方向に定尺の折板屋根材10を1枚ずつ母屋90に取り付け、その直後に防水用樹脂シート同士の重なり部分を熱溶着装置で融着させて、折板屋根材同士の接続部分に逐次水流れ方向下流側融着防水部220を形成する作業を繰り返しても良い。
また、水流れ方向に対して下流側となる位置における横方向1列に亘って全ての定尺の折板屋根材10を母屋90に取り付けた後に、これに対して隣接する上流側となる位置に横方向1列に亘って定尺の折板屋根材10を全て母屋90に取り付け、その後に防水用樹脂シート同士の重なり部分を熱溶着装置で融着させて、折板屋根材同士の接続部分に逐次水流れ方向下流側融着防水部220を形成する作業を繰り返しても良い。
続いて、上述した第1の実施形態の作用について説明する。第1の実施形態に係る特別に工夫した定尺の折板屋根材10を用いて屋根を施工することによって、解決すべき課題の欄で記載した問題を解決しながら長尺の折板屋根材と同様に防水性を確保した緩傾斜の屋根を建物に葺くことができる。
より詳細には、従来のように屋根の施工現場にロール成型機を設置して長尺の折板屋根材を作る代わりに、その現場と離れた工場内のロール成型機で定尺の折板屋根材10を予め多数作って保管しておくことができる。そのため、長尺タイプとは異なり長さが短い定尺タイプの折板屋根材10のため、工場でこの折板屋根材10を製造し、施工現場まで大掛かりなトラックを用いずに運搬していくことができる。
また、工場内のロール成型機で予め定尺の折板屋根材10を作っておくことができるため、屋根の施工現場にロール型成型機やこれによって成形される非常に大きな鉄板ロールを屋根の施工期間中置いておく必要が無い。更に、長尺タイプの折板屋根材を吊り金具(テンビン)によって多人数で屋根の設置場所まで吊り上げる大掛かりで安全面において問題がある作業を行なう必要がない。
また、長尺タイプの折板屋根材を用いる場合のように屋根を施工する際に一度に多くの屋根職人を集める必要が無いので、施工のスケジュールに合わせて少人数の熟練した屋根職人を集め易い。また、1本の折板屋根材の長さが定尺寸法となっているので、屋根職人の身体的負担が軽くなり作業が捗ると共に、高い所で行う屋根の施工作業中の屋根職人の安全を確保することができる。
また、長尺タイプの折板屋根材のように屋根の施工後に長期間経って経年変化を起こしてタイトフレーム等が壊れて飛び散るような不具合を防ぐことができる。
また、特別に工夫した定尺の折板屋根材10を用いるので、母屋に折板屋根材を取り付けるにあたって、長尺の折板屋根材を1本ごとに大掛かりな作業を伴いながら母屋に取り付ける従来の工法と異なり、施工作業に時間的な自由度と余裕を持たせることができる。
続いて、本発明の第2の実施形態に係る折板屋根材20及びこれを用いた緩勾配屋根の施工方法について説明する。図10は、本発明の第2の実施形態に係る折板屋根材の端面図である。また、図11は、図10に示した折板屋根材を2枚横方向に嵌合させた状態を示す端面図である。
この実施形態に係る折板屋根材20は、第1の実施形態に係る折板屋根材10に加えて、折板屋根材を建物に取り付けた状態で下側面となる折板屋根板に断熱材300を備えたことを特徴としている。
本実施形態の場合、断熱材300の材質は、屋根の断熱材として一般的に用いられる発泡材である。この場合、発泡材の寸法の一例として、折板屋根材20の谷折り部120に対する山折り部110の高さ(山高)が100mm程度とすると、断熱材300の厚さは30mmかそれ以上、断熱効果を考慮して適当な厚さを選択する。
断熱材300は、上述した一定の厚みを有する板状体からなり、この上面が折板屋根板100の谷折り部120の裏側に当接した状態で、ここでは詳細には説明しない固定金具を折板屋根板100の裏側の山折り部110と谷折り部120とで形成される凹凸部に嵌め込むことによって折板屋根板の裏側にしっかりと固定されている。
そして、この第2の実施形態に係る断熱材300を備えた折板屋根材20を用いて屋根の施工を行うにあたっては、基本的には、図5乃至図9に示す第1の実施形態における屋根の施工方法と同様なやり方で行なう。なお、断熱材300に関しては折板屋根材を母屋90に取り付ける際にその直前に折板屋根材20に固定しても良く、折板屋根材20を吊り上げる前や工場で折板屋根材20をロール成型機で作った際に取り付けていても良い。
以下に第2の実施形態に係る断熱材を備えた折板屋根材20の作用について説明する。基本的には第1の実施形態に係る折板屋根材10と同等の作用を発揮するが、これに加えて以下のような特別の作用を発揮することが可能となる。
具体的には、この実施形態のようにして断熱材300を備えた屋根を葺く場合、従来の長尺タイプの折板屋根材を用いたのではダブルパック構造にしなければならず施工期間が極端に長くなっていたが、本実施形態による防水用樹脂シート200を備えた定尺タイプの折板屋根材20を用いることで、母屋90に折板屋根材20を1回葺くだけで屋根の施工を完了することができる。
即ち、従来のダブルパックの屋根構造のように1度屋根を葺いてその上に断熱材を乗せまた更にその上に屋根を葺くという3段階の工程を経て屋根を完成させる必要が無いので、従来例の課題で説明した熟練した屋根職人のスケジュール調整や工期の遅れ、コストの上昇等、長尺の屋根をテンビンによって吊り上げる大がかりで危険性を伴う吊り上げ作業の不要化、これに伴う多人数の作業者の困難なスケジュール調整や屋根の施工に関する屋根職人やその他の関連する作業者の安全性の確保等の問題を全て解決することができる。
続いて本発明の第3の実施形態に係る折板屋根材30及びこれを用いた緩勾配屋根の施工方法について説明する。図12は、本発明の第3の実施形態に係る折板屋根材の平面図である。また、図13は、本発明の第3の実施形態に係る折板屋根材の端面図である。この実施形態に係る折板屋根材30についても、基本的構造は第1の実施形態に係る折板屋根材10と同様であるが、以下の点で構成が異なっている。
具体的には折板屋根材10の防水用樹脂シート200が、上述の実施形態と異なり、折板屋根板100の幅方向一方の側、具体的には外側ハゼ140が形成されている側の長手方向全体に亘って所定の幅だけ突出した幅方向一側突出部250を有している。なお、この突出長さの一例としては、約10mmから20mm程度が考えられる。
そして、折板屋根材30の内側ハゼ130にこれに隣接する折板屋根材30の外側ハゼ140を嵌合させた際に、この外側ハゼ140の側方縁部全体から延在する幅方向一側突出部250を嵌合相手となる折板屋根材30の防水用樹脂シート200の一部を覆うように被せる。これによって、横方向に隣接する折板屋根材30の防水用樹脂シート200が互いに重なり合い、この部分を熱溶着させることで側方融着防水部260を形成することができるようになっている。
次いで、第3の実施形態の折板屋根材30を用いた屋根の施工方法について説明する。図14は、本発明の第3の実施形態に係る折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工方法を説明する図である。また、図15は、図14に続く説明図である。また、図16は、図15に続く説明図である。また、図17は、図15に続く説明図であり、本実施形態に係る折板屋根材を用いて建物に屋根を葺いた状態を示す図である。この実施形態に係る屋根の施工方法についても、基本的には第1の実施形態に係る屋根の施工方法と同様であるが、以下の工程が追加されている。なお、図14乃至図17についても、図5乃至と同様に、本発明への説明の理解の容易化を図るために、折板屋根材10の各構成要素の実際の形態に対して多少描き方を変えて(モディファイして)示している。
具体的には、既に母屋90に固定された折板屋根材30の横に続く折板屋根材30を固定するに際して、上述した折板屋根板100の幅方向一方の側、即ち外側ハゼ140が形成されている側からこの折板屋根板の長手方向全体に亘って所定の幅だけ突出した防水用樹脂シート200の幅方向一側突出部250をその隣の折板屋根材30の防水用樹脂シート200の上に重ねる(図14参照)。そして、この重なり合っている防水用樹脂シート200の幅方向一側突出部250を融着させて側方融着防水部260とし、この部分についても完全防水構造となるようにする(図15参照)。
なお、この第3の実施形態の折板屋根材の一方の側方から突出した防水用樹脂シート200の幅方向一側突出部250をこれに隣接する折板屋根材30の防水用樹脂シート200に溶着装置(図示せず)によって融着させる作業については、上述した第1の実施形態に係る折板屋根材10の水流れ方向下流側端部から突出した防水用樹脂シート200の長手方向一端突出部210をこの下流側の折板屋根材10の防水用樹脂シート200に溶着装置によって溶着させる作業に合わせて行うのが施工上効率的である。
この第3の実施形態に係る折板屋根材30を用いることによって、隣接する折板屋根材同士が外側ハゼ140と内側ハゼ130との嵌合によってその部分に防水機能を持たせることに加えて、これを覆う部分の防水用樹脂シート200を融着することにより更なる防水機能を高めることができ、防水性に格段に優れた屋根を施工することができる。
続いて、本発明の第4の実施形態に係る折板屋根材40及びこれを用いた緩勾配屋根の施工方法について説明する。図18は、本発明の第4の実施形態に係る折板屋根材を2枚横方向に嵌合させた状態を部分的に示す断面図である。
第4の実施形態に係る折板屋根材40(以下単に「折板屋根材40」とする)は、第1及び第2の実施形態に係る折板屋根材10,20と基本的構成に関しては共通している。そして、第1及び第2の実施形態に係る折板屋根材10,20との相違点としては、これら折板屋根材については、横方向に隣接する折板屋根材同士を結合する際に一方の折板屋根材の一端側の内ハゼに他方の折板屋根材の他端側の外ハゼを被せるように嵌合していたが、第4の実施形態ではこのような構成をとらずにいわゆるキャップ式屋根材の構成をとっている。
即ち、折板屋根材40は、幅方向中心に対して左右対称となるキャップ嵌合ハゼ410,420をそれぞれ有している。また、本実施形態においては塩ビシートからなる防水用樹脂シート430は、取り付け状態で折板屋根材の40の水流れ方向下流側に第1及び第2の実施形態の長手方向一端突出部210と同様に長手方向一端突出部を有すると共に、幅方向に関しては、図18に示すように一例としてその端部431,432がキャップ嵌合ハゼ410,420の内側まで延在している。
そして、同図に示すように、横方向に2枚の折板屋根材40,40’を並べて母屋90に固定し、一方の折板屋根材40の幅方向一端側のキャップ嵌合ハゼ410と他方の折板屋根材40’の幅方向他端側のキャップ嵌合ハゼ420’を僅かな間隔だけ隔てた状態とし、この上から定尺の折板屋根材と同様の長さを有する端面視逆角型U字状のキャップ450を双方のキャップ嵌合ハゼ410,420’に被せてきっちりと嵌め込むようになっている。
キャップ450には、2つのハゼ係合部451,452が互いに対向するように備わっており、この2つのハゼ係合部451,452がそれぞれのキャップ嵌合ハゼ410,420’の下向き折り曲げ部411,421’に嵌まることで、隣接する折板屋根材40,40’の互いに向かい合うキャップ嵌合ハゼ410,420’にキャップ450がしっかりと被さり、この部分の防水を確実に図ることができる。
即ち、本実施形態によると、上述した第3の実施形態に係る折板屋根材のように防水用樹脂シートを折板屋根材の幅方向一方の側方からの長手方向全体に亘って一定量突出させてこれに隣接する折板屋根材の防水用樹脂シートとの重なり部を溶着しなくても十分な防水機能を確保することができる。
以上説明したように、本発明によると、例えば倉庫や工場、幹線道路沿いの比較的大きなコンビニや薬局等の緩勾配屋根を施工する際に施工現場でなければ造ることができない非常に長いいわゆる長尺の折板屋根材を用いる代わりに、特別に工夫した折板屋根材を用いながら長尺の折板屋根材を用いた時のように水漏れが生じない防水性に優れた緩勾配屋根を施工できる。
これに伴い、従来のように長尺の折板屋根材を用いるに当たって必ず生じていた問題、即ち施工現場にロール成型機を設置したり、その場で造った長尺の折板屋根材を屋根の上に吊り上げるかなり大型のクレーン車等の重機を屋根の施工中使い続けたりしなければならない問題を一気に解決できる。
また、吊り金具(テンビン)を用いて吊り上げる必要が無いので大人数の作業者をスケジュールに合わせて集める必要が無い。また、このような危険を伴う長尺の折板屋根材の吊り上げ作業を行なわなくて済むので安全上好ましい。また、建物の上で長尺の折板屋根材のように多人数の屋根職人が1度に集まって屋根を施工することを必要としないので、屋根職人の確保が非常に楽になる。
また、断熱材を備えたダブルパック構造の折板屋根構造とする場合、従来のような長尺の折板屋根材を用いなくて済むので、このようなダブルパック構造とする必要が無く、1度で屋根を葺くことができる。これによって屋根職人を多人数集める必要が無くスケジュール調整がとり易くなり、且つ工期も長尺の折板屋根材を用いることに比べて格段に短くて済む。その結果施工コストを大幅に下げることができる。
また、H型鋼の上に下地材としての鉄板などでできたデッキ材を設け更に断熱材を重ねてその上に防水用樹脂シートを貼る屋根の構造のように、支持用の鋼材であるH型鋼の上に下地材としての鉄板を取り付ける作業と、その上に断熱材を重ねる作業と断熱材の上面に防水シートを融着で貼り付ける別作業を異なる屋根職人が行う必要はなく、少人数の熟練した屋根職人によって短い工期で建物に屋根を葺く作業を行うことができる。
特に折板屋根材を使った場合、それ自体十分な強度と剛性を有しているため、母屋のスパンを大きく取ることができ、上述した構造のようにH形鋼を小さい間隔で屋根の部分に張り巡らす必要がなく、コストを削減できると共に工期を短縮することができる。
また、キャップ式の折板屋根材にも本発明を適用可能であるので、定尺の折板屋根材を用いながら防水性に優れた緩勾配屋根を施工できる。
また、近年懸念されている大規模地震が起こった際に下地材である鉄板などのデッキ材が落下してくる心配も全くない。
最後に、本発明の第5の実施形態に係る折板屋根材50,60及びこれを用いた緩勾配屋根の施工方法について説明する。図19は、本発明の第5の実施形態に係る折板屋根材であって断熱材を有さない折板屋根材の端面図(図19(a))及び断熱材を有する折板屋根材の端面図(図19(b))である。また、図20は、図19(a)に示す折板屋根材を横方向に2つ並べて結合させた状態を部分的に示す端面図(図20(a))及び図19(b)に示す折板屋根材を横方向に2つ並べて結合させた状態を部分的に示す端面図(図20(b))である。
なお、折板屋根材50と折板屋根材60の違いは、前者が断熱材を有さず後者が断熱材690を有する点だけの違いであるので、基本的に両者共通して以下にその構造を説明する。また、符号については、第5の実施形態に関しては括弧なしの符号とし、第6の実施形態に関しては括弧付きの符号として併記した状態で示す。
折板屋根材50(60)は、本発明を包含しながら上述の各実施形態を複合させた形態をとっている。具体的には、第1及び第3の実施形態に係る折板屋根材の外ハゼの代わりに、第4の実施形態に係る折板屋根材のキャップが一体化してキャップ部分540(640)として形成され、更に防水用樹脂シート520(620)がキャップ部分540(640)の上面を全て覆った後、第2の実施形態に係る折板屋根材のように折板屋根材50(60)の長手方向全体に亘って一定の幅だけ幅方向一側突出部522(622)が備わっている。
なお、折板屋根材50(60)を母屋に取り付けた状態で水流れ方向下流側となる折半屋根板510(610)の長手方向端部からは、上述した各実施形態と同様に防水用樹脂シート520(620)の長手方向一端突出部521(621)が備わっている。即ち、この長手方向一端突出部521(621)の幅は、上述したキャップ部分540(640)の上に被さり、かつ折半屋根板510(610)の幅方向一側から突出した幅方向一側突出部521(621)は、第2の実施形態と同様に折半屋根板510(610)の水流れ方向下流側端部よりも延在して防水用樹脂シート520(620)の長手方向一端突出部521(621)の一部をなしている。
第5及び第6の実施形態に係る折板屋根材50,60は、上述した構造を有することで、第2の実施形態のように折板屋根材を母屋に取り付けた後に隣接する折半屋根材の横方向接続部であって隣接する折板屋根材50(60)の防水用樹脂シート520(620)に長手方向一端突出部521(621)を重ねた状態で熱溶着装置を用いてこの重なり部を融着させることで、側方融着防水部523(623)を形成する。即ち、第5及び第6の実施形態においても、第2の実施形態のように直列に連結して長尺化した折板屋根材50,60の長手方向全体に亘って側方融着防水部523(623)が形成されることになる。
これにより第5及び第6の実施形態においては、キャップ部分540(640)についても防水用樹脂シート520(620)で完全に覆った状態とすることができ、緩傾斜屋根に激しく降りつける大量の雨水からの緩傾斜屋根の水漏れを確実に防止する。その結果、近年の気象変動に伴う大型台風や局所的な集中豪雨に対しても長期に亘って水漏れ防止機能(防水性能)を保つことができる。
なお、本発明は、上述した各実施形態及びそれに対応する図面に記載された形状や寸法、材質、施工方法に限定されるものではなく、本発明の作用を発揮し得る範囲内であれば様々な他の変形例も本発明に属するものであることは言うまでもない。
従って、上述の実施形態では、折板屋根材を葺いていくに当たって、建物の軒下の一端から他端まで横方向に並べて折板屋根材の横方向の列を施工した後に、建物の棟に向かって1列ずつ折板屋根材を取り付けていた。しかしながら、本発明においては、その代わりに建物の棟と軒下の一端側に折板屋根材を直列に連結するように取り付けて、この長尺となった折板屋根材を取り付け終えたらそれに隣接する位置に同様の折板屋根材を取り付け、この作業を建物の棟と軒下の他端側に向かって繰り返していき、建物に全ての折板屋根材を葺くようにしても良い。
また、上述した実施形態において、図5乃至図9、図15乃至図17に示した建物に屋根を葺く形態については、それぞれ折板屋根材を水流れ方向に3本直列に繋げて長尺の折板屋根材としたものであるが、本発明の趣旨を鑑みて例えばこのような折板屋根材を10本や20本直列につなげて長さ50mmから100mm程度あるロール成型機で作った極めて長尺の折板屋根材に変えて建物の屋根に葺くことができることは言うまでもない。即ち、本発明によると、極めて大きな建物に緩勾配屋根を葺く場合についても従来の問題点を解決しながら対応可能であることを付言しておく。
10 折板屋根材
10(1−1)〜10(1−n) 水流れ下流から1列目の折板屋根材
10(2−1)〜10(2−n) 水流れ下流から2列目の折板屋根材
10(3−1)〜10(3−n) 水流れ下流から3列目の折板屋根材
20,30,40,40’,50,60 折板屋根材
90 母屋
100 折板屋根板
110 山折り部
120 谷折り部
130 内側ハゼ
140 外側ハゼ
200 防水用樹脂シート
210 長手方向一端突出部
220 水流れ方向下流側融着防水部
250 幅方向一側突出部
260 側方融着防水部
300 断熱材
410,420(420’) キャップ嵌合ハゼ
411,421(421’) 下向き折り曲げ部
430 防水用樹脂シート
431,432 端部
450 キャップ
451,452 ハゼ係合部
510(610) 折半屋根板
520(620) 防水用樹脂シート
521(621) 長手方向一端突出部
522(622) 幅方向一側突出部
523(623) 側方融着防水部
540(640) キャップ部分

Claims (5)

  1. 緩勾配屋根に用いる折板屋根材であって、
    前記折板屋根材は、取り付け対象である建物の屋根の大きさとは別に予め決められた所定の長さを有する定尺の折板屋根板と、
    前記折板屋根材を建物に取り付けた状態で上側面となる前記折板屋根板の全面を覆う防水用樹脂シートを備え、
    前記折板屋根材と前記防水用樹脂シートとは、ロール成型機の圧縮力によって互いに密着しており、
    前記防水用樹脂シートは、前記折板屋根材を前記建物に取り付けた状態で見て、前記折板屋根板の長手方向一方の端部のみであって当該折板屋根材の水流れ方向水下側となる当該端部の縁部全体から所定の幅だけ突出した長手方向突出部を有し、
    前記折板屋根板同士の端部を突き当てた状態で当該折板屋根板同士の突き当て部を重ねて覆う前記防水用樹脂シートの重なり部に熱溶着によって融着部が形成された長尺の折板屋根材とすることができるようになっており、
    前記防水用樹脂シートの長手方向突出部は、前記折板屋根材の山折り部と谷折り部の折り具合の形状に合わせた状態で延在していると共に、少なくとも前記防水用シートの前記折板屋根材の谷折り部に相当する部分がこれに接続される相手側折板屋根材の谷折り部の接続部分の上に重なって熱溶着可能になっていることを特徴とする折板屋根材。
  2. 前記折板屋根材を建物に取り付けた状態で下側面となる前記折板屋根板に断熱材を備えたことを特徴とする請求項1に記載の折板屋根材。
  3. 前記折板屋根材の防水用樹脂シートが、前記折板屋根板の幅方向片側において当該折板屋根板の長手方向全体に亘って所定の幅だけ突出した幅方向突出部を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の折板屋根材。
  4. 請求項1又は請求項2の何れかに記載の折板屋根材を建物に屋根を葺く分だけ多数用意し、
    これらの折板屋根材を建物の屋根設置部分まで運び、
    前記多数の折板屋根材を、前記防水用樹脂シートの長手方向突出部がその折板屋根材より水流れ方向下流側に隣接する折板屋根材の防水用樹脂シートの上に重なるように母屋に順々に取り付け、
    前記多数の折板屋根材を全て母屋に取付けると共に、前記折板屋根材同士の長手方向の端部間において重なり合った防水用樹脂シートを全て融着することで防水仕様の緩勾配屋根を建物に取り付けることを特徴とする折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工方法。
  5. 請求項3に記載の折板屋根材を建物に屋根を葺く分だけ多数用意し、請求項4に記載の折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工方法によって建物に屋根を取り付けるに際して、前記隣接する折板屋根材の幅方向一方の端部に備わる幅方向突出部についても隣接する前記折板屋根材の防水用樹脂シートの上に重ねながら前記折板屋根材を前記母屋に順々に取り付け、前記多数の防水用樹脂シートの幅方向一方の端部に沿って重なり合った前記防水用樹脂シートについても全て融着することで防水仕様の緩勾配屋根を建物に取り付けることを特徴とする折板屋根材を用いた緩勾配屋根の施工方法。
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