しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
まず、従来のX線撮影装置において、X線検出器105に相当する面積の検出マスク109を必要とする。検出マスク109は試料マスク107と同様にX線吸収材R1およびX線透過材R2とを数十μm程度のピッチで精度良く並列させる構成を有する必要がある。また検出マスク109のX線吸収効率を高めるためには、高エネルギーのX線を吸収可能とすべく、X線吸収材R1の厚さを厚くする必要がある。
一般的にX線検出器105のX線入射面は40cm四方程度の広い面積である。すなわちX線吸収材R1が厚く、かつX線吸収材R1およびX線透過材R2が数十μm程度のピッチで高精度に繰り返し並列する構成を、数十cm四方の大面積で作成するのは非常に困難である。従って、大面積の検出マスク109は非常に高額になるので、X線撮影装置の製造コストが高くなる。
次に、X線の屈折を正確に検出するには、X線検出器105に設けられる画素113の各々と、検出マスク109に設けられるX線透過材R2の各々とが1対1に対応する位置関係にある必要がある。そのため検出マスク109とX線検出器105とを高い精度で位置合わせをする必要がある。そして検出マスク109と試料マスク107とを相対移動させる場合、検出マスク109とX線検出器105との位置関係を正確に維持した状態で両者を移動させる必要がある。このように高精度の移動機構と、高精度に位置合わせがなされた検出マスク109およびX線検出器105を要するのでX線撮影装置の製造コストがさらに上昇する。
また高精度に位置合わせを行ってX線撮影装置を製造した場合であっても、X線撮影装置を使用する際に、振動などによってX線管103、試料マスク107、検出マスク109、およびX線検出器105の位置関係がずれる場合がある。位置関係がずれた場合、X線画像A1およびA2に映るX線像の位置に誤差が生じるので、結果としてX線小角散乱画像の診断能が低下する。
さらに従来の装置においてX線小角散乱画像を生成するには、検出マスク109と試料マスク107とを相対移動させつつX線撮影を複数回行う必要がある。そのため被検体の被曝量が大きくなる。またX線検出器105においてX線感度を向上するには、高エネルギーのX線を検出可能とすべく、シンチレータ層105aを厚くする必要がある。しかしシンチレータ層105aを厚くする場合、シンチレータ光がシンチレータ層105aの内部で容易に散乱するので、X線画像の解像度が低下するという問題も懸念される。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、診断能の高いX線小角散乱画像の撮影を可能とするX線撮影装置をより低い製造コストで提供することを目的とする。
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係るX線撮影装置は、被検体にX線を照射するX線管と、X線管と前記被検体の間に設けられており、第1の方向に延伸するX線透過部が前記第1の方向に直交する第2の方向に並列するように形成されている遮蔽マスクと、前記X線透過部を透過したX線を検出してX線検出信号を出力するX線検出器と、前記X線検出器および前記遮蔽マスクの相対位置を前記第2の方向へ移動させる移動機構と、前記移動機構が前記相対位置を移動させる間に、前記X線管にX線照射を繰り返させる制御を行うX線照射制御部と、前記X線管によりX線照射ごとに前記X線検出器が出力するX線検出信号を用いてX線画像を生成する画像生成部と、前記画像生成部が生成したX線画像に基づいて、前記X線の屈折する方向および屈折する角度からなるX線屈折情報を算出する屈折情報算出部と、前記X線屈折情報に基づいて前記被検体のX線屈折コントラスト像を映すX線小角散乱画像を再構成する散乱画像再構成部とを備え、前記X線検出器は、格子状の遮光壁、および前記遮光壁により二次元マトリクス状に区画されたセル内にそれぞれ充填され、入射したX線を光に変換するシンチレータ素子からなるシンチレータ層と、前記シンチレータ素子の各々が変換した光を電荷に変換する画素が二次元マトリクス状に配列された出力層とを備えることを特徴とするものである。
[作用・効果]本発明に係るX線撮影装置によれば、X線検出器のシンチレータ層は格子状の遮光壁によってシンチレータ素子が区画された構成を有する。この場合、遮蔽マスクによってファンビーム状に制限されたX線のうち、遮光壁が設けられた部分に入射するX線は検出されず、シンチレータ素子が設けられた部分に入射するX線のみが検出される。従って、遮蔽マスクを透過したX線の一部を制限する検出マスクの機能を、シンチレータ層に設けられる遮光壁によって代替できる。
その結果、EI−XPCiに用いる従来のX線撮影装置では必須な構成であった検出マスクを省略しても、好適にEI−XPCiを行ってX線小角散乱画像を取得できる。すなわち大面積で製造することが困難であった検出マスクを必要としないので、大面積のX線検出器についてEI−XPCiを行い、サイズがより大きなX線小角散乱画像を取得することが容易となる。
また高精度かつ大面積の検出マスクを製造する必要がないので、EI−XPCiに用いるX線撮影装置の製造コストを低減できる。さらに検出マスクとX線検出器とを高精度に位置合わせをする必要がないので、位置ズレに起因するX線小角散乱画像の診断能の低下をより確実に回避できるとともに、X線撮影装置の製造コストをさらに低減できる。
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明に係るX線撮影装置は、被検体にX線を照射するX線管と、X線管と前記被検体の間に設けられており、第1の方向に延伸するX線透過部が前記第1の方向に直交する第2の方向に並列するように形成されている遮蔽マスクと、前記X線透過部を透過したX線を検出してX線検出信号を出力するX線検出器と、前記X線検出器が出力するX線検出信号を用いてX線画像を生成する画像生成部と、前記画像生成部が取得したX線画像に基づいて、前記X線の屈折する方向および屈折する角度からなるX線屈折情報を算出する屈折情報算出部と、前記X線屈折情報に基づいて前記被検体のX線屈折コントラスト像を映すX線小角散乱画像を再構成する散乱画像再構成部とを備え、前記X線検出器は、格子状の遮光壁、および前記遮光壁により二次元マトリクス状に区画されたセル内にそれぞれ充填され、入射したX線を光に変換するシンチレータ素子からなるシンチレータ層と、前記シンチレータ素子の各々が変換した光を電荷に変換する画素が二次元マトリクス状に配列された出力層とを備え、前記X線が前記X線検出器に入射する領域は、前記第2の方向において2以上の前記シンチレータ素子の各々に重複するように、前記X線透過部および前記X線検出器の位置が設定されることを特徴とするものである。
[作用・効果]本発明に係るX線撮影装置によれば、遮蔽マスクにおいて、第1の方向に延伸するX線透過部が第1の方向に直交する第2の方向に並列するように形成される。X線が前記X線検出器に入射する領域は、第2の方向において2以上の前記シンチレータ素子の各々の一部に重複するように、X線透過部およびX線検出器の位置が設定される。
このような構成において、遮蔽マスクによってX線は第1の方向に延伸するファンビーム状に制限され、第2の方向において2以上のシンチレータ素子の各々に入射する。そしてX線が被検体を透過する際に第2の方向に屈折した場合、X線の入射領域は第2の方向に移動する。そのため2以上のシンチレータ素子の各々に入射するX線量の偏りが変化する。
従って2以上のシンチレータ素子の各々に入射するX線量の偏りの変化に基づいて、X線の屈折する方向および屈折する角度を算出できる。シンチレータ素子の各々に入射するX線量はX線画像における画素の輝度値に基づいて算出できるので、屈折情報算出部は1回のX線撮影によって、第2の方向に係るX線の屈折方向および屈折角度からなる屈折情報を算出できる。
散乱画像再構成部は屈折情報に基づいて前記被検体のX線屈折コントラスト像を映すX線小角散乱画像を再構成する。従って、X線小角散乱画像に要するX線照射の回数が従来では複数回出会ったのに対し、本発明に係るX線撮影装置では1回ですむ。その結果、X線小角散乱画像を取得する際に被検体が被曝するX線量を低減できるとともに、X線小角散乱画像の撮影に要する時間を短縮できる。
また、上述した発明において、前記X線検出器は、格子状の前記遮光壁、および前記遮光壁によって区画されて前記第2の方向に並列する第1のシンチレータ素子によって構成される第1のシンチレータアレイと、格子状の前記遮光壁、および前記遮光壁によって区画されて前記第2の方向に並列する第2のシンチレータ素子によって構成され、前記第2のシンチレータ素子の配列パターンは前記第1のシンチレータ素子の配列パターンと比べて前記第2の方向に所定の距離ずれている第2のシンチレータアレイとが前記第1の方向に交互に並んで配列されることが好ましい。
[作用・効果]本発明に係るX線撮影装置によれば、X線検出器は第1のシンチレータアレイと第2のシンチレータアレイとが第1の方向に交互に並んで配列される。そして第1のシンチレータアレイに設けられる第1のシンチレータ素子の配列パターンと、第2のシンチレータアレイに設けられる第2のシンチレータ素子の配列パターンとは第2の方向に所定の距離ずれている。
この場合、1回のX線照射によって生成されるX線画像について、第1のシンチレータ素子に基づく画像情報はX線検出器を移動させずに撮影した場合に取得されるX線画像情報である。一方、第2のシンチレータ素子に基づく画像情報は、X線検出器を第2の方向へ所定の距離移動させた状態でX線を照射した場合に取得されるX線画像情報である。そのため1回のX線照射によって、異なる2つの撮影位置で撮影された2つのX線画像情報を取得できる。
屈折情報算出部は1回のX線照射によって得られた2つのX線画像情報に基づいてX線の屈折情報を算出するので、X線小角散乱画像に要するX線照射の回数は1回で済む。従って、X線小角散乱画像を取得する際に被検体が被曝するX線量を低減できるとともに、X線小角散乱画像の撮影に要する時間を短縮できる。さらに2つのX線画像情報の各々の撮影位置の間の距離は、シンチレータ素子の配列パターンのずれに基づいて予め算出できる。従って、屈折情報を算出するための演算処理を単純化することができる。
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち本発明に係るX線撮影装置は、被検体にX線を照射するX線管と、X線管と前記被検体の間に設けられており、X線を透過させるX線透過部が直交する2方向に二次元マトリクス状に配設される遮蔽マスクと、前記X線透過部を透過したX線を検出してX線検出信号を出力するX線検出器と、前記X線検出器が出力するX線検出信号を用いてX線画像を生成する画像生成部と、前記画像生成部が取得したX線画像に基づいて、前記X線の屈折する方向および屈折する角度からなるX線屈折情報を算出する屈折情報算出部と、前記X線屈折情報に基づいて前記被検体のX線屈折コントラスト像を映すX線小角散乱画像を再構成する散乱画像再構成部とを備え、前記X線検出器は、格子状の遮光壁、および前記遮光壁により二次元マトリクス状に区画されたセル内にそれぞれ充填され、入射したX線を光に変換するシンチレータ素子からなるシンチレータ層と、前記シンチレータ素子の各々が変換した光を電荷に変換する画素が二次元マトリクス状に配列された出力層とを備え、前記X線が前記X線検出器に入射する領域は、前記直交する2方向のそれぞれについて2以上の前記シンチレータ素子の各々に重複するように、前記X線透過部および前記X線検出器の位置が設定されることを特徴とするものである。
[作用・効果]本発明に係るX線撮影装置によれば、遮蔽マスクにおいて、X線透過部は直交する2方向に二次元マトリクス状に配設される。X線が前記X線検出器に入射する領域は、直交する2方向のそれぞれにおいて2以上の前記シンチレータ素子の各々の一部に重複するように、前記X線透過部およびX線検出器の位置が設定される。
このような構成において、遮蔽マスクによってX線はペンシルビーム状に制限され、直交する2方向の各々において、2以上のシンチレータ素子にそれぞれ入射する。そしてX線が被検体を透過する際に第2の方向に屈折した場合、X線の入射領域は直交する2方向の各々に移動する。そのためシンチレータ素子の各々に入射するX線量の偏りが変化する。
従って直交する2方向の各々について、シンチレータ素子の各々に入射するX線量の偏りの変化に基づいてX線の屈折する方向および屈折する角度を算出できる。シンチレータ素子の各々に入射するX線量はX線画像における画素の輝度値から算出できるので、屈折情報算出部は1回のX線撮影によって、直交する2方向の各々におけるX線の屈折方向および屈折角度からなる屈折情報をそれぞれ算出できる。
散乱画像再構成部は屈折情報に基づいて前記被検体のX線屈折コントラスト像を映すX線小角散乱画像を再構成する。従って、X線小角散乱画像に要するX線照射の回数が従来では複数回であったのに対し、本発明に係るX線撮影装置では1回ですむ。その結果、X線小角散乱画像を取得する際に被検体が被曝するX線量を低減できるとともに、X線小角散乱画像の撮影に要する時間を短縮できる。そしてX線小角散乱画像は直交する2方向のそれぞれにおけるX線の屈折情報に基づく画像である。そのため1方向におけるX線の屈折情報に基づくX線小角散乱画像と比べて、X線小角散乱画像に映る屈折コントラスト像はより精密になる。従って、X線小角散乱画像を用いて、より精度の高い診断を行う事が可能となる。
また、上述した発明において、前記X線が前記X線検出器に入射する領域は、前記直交する2方向の各々において2以上の前記シンチレータ素子の各々に接するように、前記X線透過部および前記X線検出器の位置が設定されることが好ましい。
[作用・効果]本発明に係るX線撮影装置によれば、X線がX線検出器に入射する領域は、直交する2方向の各々において2以上のシンチレータ素子の各々に接する。この場合、X線が屈折しない場合はシンチレータ素子のいずれにも入射しないので、X線画像における全画素の輝度値は0である。一方、X線が屈折する場合はX線が屈折する側にあるシンチレータ素子にX線が入射するので、画素の輝度値は入射するX線量に応じた所定の値となる。
屈折情報算出部はX線画像における画素の輝度値に基づいて、直交する2方向の各々について、X線の屈折情報を算出できる。X線が屈折しない場合、画素の輝度値は全て0であるので、屈折情報算出部が屈折情報を算出するために行う演算処理をより単純化できる。そのためX線小角散乱画像の取得に要する時間をより短縮できる。
また、上述した発明において、前記X線検出器は、第1の前記シンチレータ層と、第2の前記シンチレータ層と、前記第1のシンチレータ層に設けられるシンチレータ素子が変換した光を電荷に変換する画素が二次元マトリクス状に配列された第1の前記出力層と、前記第2のシンチレータ層に設けられるシンチレータ素子が変換した光を電荷に変換する画素が二次元マトリクス状に配列された第2の前記出力層とを備え、前記第1のシンチレータ層に設けられる前記遮光壁の格子パターンと前記第2のシンチレータ層に設けられる前記遮光壁の格子パターンとは、前記X線の入射面に沿ってずれていることが好ましい。
[作用・効果]本発明に係るX線撮影装置によれば、第1のシンチレータ層に設けられる遮光壁の格子パターンと、第2のシンチレータ層に設けられる遮光壁の格子パターンとはX線の入射面に沿ってずれている。そのためX線検出器に入射されるX線はより確実に第1のシンチレータ素子および第2のシンチレータ素子のうち、少なくとも一方に入射して光に変換される。従って、X線検出器においてX線を検出できない領域を大幅に低減できるので、X線検出器のX線感度を大きく向上することが可能となる。
また、上述した発明において、前記第2のシンチレータ層に設けられる前記遮光壁のピッチと、前記第1のシンチレータ層に設けられる前記遮光壁のピッチとの比は、前記X線管から照射されたX線が前記第1のシンチレータ層に到達したときの広がり幅と、前記X線管から照射されたX線が前記第2のシンチレータ層に到達したときの広がり幅との比に等しいことが好ましい。
[作用・効果]本発明に係るX線撮影装置によれば、放射状に広がるX線を可能な限り遮光壁に入射させず、感度の高いX線撮影装置を提供できる。
また、上述した発明において、前記X線検出器は、前記シンチレータ層と、前記シンチレータ素子を備えるシンチレータパネルと、前記シンチレータ層に設けられるシンチレータ素子によって変換された光を電荷に変換する画素が二次元マトリクス状に配列された第1の前記出力層と、前記シンチレータパネルに設けられるシンチレータ素子によって変換された光を電荷に変換する画素が二次元マトリクス状に配列された第2の前記出力層とを備え、前記シンチレータ層および前記シンチレータパネルは、前記X線の入射方向に積層されていることが好ましい。
[作用・効果]本発明に係るX線撮影装置によれば、X線検出器は格子状の遮光壁によってシンチレータ素子が区画されたシンチレータ層を有する。そのため、遮蔽マスクを透過したX線の一部を制限する検出マスクの機能を、シンチレータ層に設けられる遮光壁によって代替できるので、従来のX線撮影装置では必須な構成であった検出マスクを省略しても、好適にEI−XPCiを行ってX線小角散乱画像を取得できる。そして、シンチレータ層はシンチレータパネルとX線の入射方向に積層されているので、X線検出器全体としてデュアルエナジー型のX線検出器と同じ効果を得られる。
また、上述した発明において、前記シンチレータパネルに設けられる前記画素のピッチは、前記シンチレータ層に設けられる前記画素のピッチより大きいことが好ましい。
[作用・効果]本発明に係るX線撮影装置によれば、シンチレータパネルに設けられる画素のピッチは、シンチレータ層に設けられる画素のピッチより大きい。そのため第1の出力層に基づいて、X線小角散乱の情報を含むより精密な画像情報を取得できる。一方でシンチレータパネルに設けられる画素のピッチは比較的大きいので、シンチレータパネルにおいて情報量の過多による処理時間の長期化を回避できる。その結果、X線画像の取得に要する時間を短縮できるとともに、X線検出器の構成がより単純となるので、装置の製造に要するコストをより低くできる。
また、上述した発明において、前記画素に設けられる光電変換素子が前記遮光壁の格子により形成される区画の内部に位置していることが好ましい。
[作用・効果]本発明に係るX線撮影装置によれば、互いに隣り合う光電変換素子をより確実に光学的に隔絶できる。
また、上述した発明において、前記遮光壁は、前記X線検出器の中央部から端部に向かうに従って次第に傾斜するように構成されていることが好ましい。
[作用・効果]本発明に係るX線撮影装置によれば、放射状に広がるX線を可能な限り2画素以上に入射させず、精度の高いX縁撮影装置を提供できる。
また、上述した発明において、前記X線が前記X線検出器に入射する領域と、前記第1の方向に延びる前記シンチレータ素子とが重複する領域の広さは、前記第2の方向に並ぶ前記シンチレータ素子の各々について周期的に変化するように、前記X線透過部および前記X線検出器が構成されることが好ましい。
[作用・効果]本発明に係るX線撮影装置によれば、重複する領域の広さの周期的な変化を算出することにより、遮蔽マスクとX線検出器との相対位置のズレを正確に検出し、当該相対位置のズレがX線画像に与える影響を補正できる。そのため、相対位置のズレがX線画像に与える影響をより迅速かつ容易に補正し、より精度の高いX線画像を取得できる。
また、上述した発明において、前記X線が前記X線検出器に入射する領域は、前記第2の方向において2以上の前記シンチレータ素子の各々に接するように、前記X線透過部および前記X線検出器の位置が設定されることが好ましい。
[作用・効果]本発明に係るX線撮影装置によれば、X線が屈折しない場合はシンチレータ素子のいずれにも入射しないので、X線画像における全画素の輝度値は0である。一方、X線が屈折する場合はX線が屈折する側にあるシンチレータ素子にX線が入射するので、画素の輝度値は入射するX線量に応じた所定の値となる。そのため、屈折情報算出部が屈折情報を算出するために行う演算処理をより単純化できるので、X線小角散乱画像の取得に要する時間をより短縮できる。
また、上述した発明において、前記X線が前記X線検出器に入射する領域は、前記第2の方向において2以上の前記遮光壁の各々に接するように、前記X線透過部および前記X線検出器の位置が設定されることが好ましい。
[作用・効果]本発明に係るX線撮影装置によれば、X線が屈折しない場合は遮光壁に入射しない。一方、X線が屈折する場合はX線が屈折する側にある遮光壁にX線が入射するので、画素の輝度値は入射するX線量に応じた所定の値となる。そのため、屈折情報算出部が屈折情報を算出するために行う演算処理をより単純化できるので、X線小角散乱画像の取得に要する時間をより短縮できる。
本発明に係るX線撮影装置によれば、X線検出器のシンチレータ層は格子状の遮光壁によってシンチレータ素子が区画された構成を有する。この場合、遮蔽マスクによってファンビーム状に制限されたX線のうち、遮光壁が設けられた部分に入射するX線は検出されず、シンチレータ素子が設けられた部分に入射するX線のみが検出される。従って、遮蔽マスクを透過したX線の一部を制限する検出マスクの機能を、シンチレータ層に設けられる遮光壁によって代替できる。
その結果、EI−XPCiに用いる従来のX線撮影装置では必須な構成であった検出マスクを省略しても、好適にEI−XPCiを行ってX線小角散乱画像を取得できる。すなわち大面積で製造することが困難であった検出マスクを必要としないので、大面積のX線検出器についてEI−XPCiを行い、サイズがより大きなX線小角散乱画像を取得することが容易となる。
また高精度かつ大面積の検出マスクを製造する必要がないので、EI−XPCiに用いるX線撮影装置の製造コストを低減できる。さらに検出マスクとX線検出器とを高精度に位置合わせをする必要がないので、位置ズレに起因するX線小角散乱画像の診断能の低下をより確実に回避できるとともに、X線撮影装置の製造コストをさらに低減できる。
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。図1(a)は、EI−XPCiに用いることのできる、実施例1に係るX線撮影装置の全体構成を説明する概略図である。
<全体構成の説明>
実施例1に係るX線撮影装置1は、被検体MにX線3aを照射するX線管3と、X線3aを検出してX線検出信号を出力するX線検出器5と、移動機構6と、試料マスク7と、画像生成部8と、屈折情報算出部9と、散乱画像再構成部10とを備えている。被検体Mは図示しない載置ステージに載置されており、載置ステージは例えばy方向に平行な軸の軸周りに回転可能に構成される。すなわち載置ステージを回転させることにより被検体Mを適宜回転させ、被検体Mの任意の面に対してX線を照射できるように構成されている。なお、実施例1に係るX線撮影装置1は検出マスクを必須構成とする従来の装置と異なり、検出マスクを省略していることを特徴とする。
移動機構6はX線検出器5に接続されており、X線検出器5をx方向へ移動させることにより、X線検出器5と試料マスク7との位置関係を相対的に変位させる。X線管3には図示しないX線照射制御部が接続されており、X線照射制御部はX線管3からX線3aを照射するタイミングやX線3aの線量などを制御する。移動機構6がX線検出器5と試料マスク7との相対位置をx方向に変位させつつ、X線照射制御部がX線3aを適切なタイミングで照射することにより、複数のX線画像を撮影できる。
画像生成部8はX線検出器5の後段に設けられており、X線検出器5から出力されるX線検出信号に基づいて被検体MのX線画像を生成する。屈折情報算出部9は画像生成部8の後段に設けられており、X線画像における画素の輝度値に基づいてX線3aに関する屈折情報を算出する。屈折情報とは一例としてX線3aの屈折する方向や、X線3aの屈折角度の大きさなどに関する情報が挙げられる。散乱画像再構成部10はX線3aの屈折情報に基づいて、被検体Mの屈折コントラスト像を映す、X線小角散乱画像を再構成する。
試料マスク7は被検体MとX線管3との間に設けられ、X線管3から照射されるX線3aの中心軸3bに沿った方向(z方向)と、試料マスク7におけるX線入射面とが直交するように配置される。試料マスク7は図1(b)に示すように、y方向に延伸しX線を吸収するX線吸収材R1と、y方向に延伸しX線を透過するX線透過材R2とがx方向に交互に並列する構成を有している。X線吸収材R1のピッチ(周期)の長さをGとし、X線透過材R2のx方向の長さをNとする。
すなわちX線透過材R2によって、試料マスク7においてy方向に延伸し、X線を透過させるスリット部が多数形成される。そしてX線3aは試料マスク7を透過することによって、y方向に延伸しx方向の長さがNであるファンビームが、y方向に多数連なった形状に制限される。X線吸収材R1を構成する材料としては金や白金などX線吸収率の高い金属などが用いられる。X線透過材R2としてはX線吸収率の低い樹脂などが挙げられる。X線吸収材R1およびX線透過材R2はそれぞれx方向の長さが略同じであることが好ましい。なおX線透過材R2は開口部であってもよい。試料マスク7は本発明における遮蔽マスクに相当し、X線透過材R2は本発明におけるX線透過部に相当する。
X線検出器5は、z方向にX線検出面が直交するように配置される。実施例1において、X線検出器5として間接変換型のフラットパネル型検出器(FPD)を用いることとする。X線検出器5は図2(a)に示すように、シンチレータ層11と出力層13が積層された構成を有している。シンチレータ層11は二次元マトリクス状に配列された多数のシンチレータ素子15が格子状の遮光壁17によって仕切られた形状を有している。すなわちX線検出器5はシンチレータ素子15を格子状の遮光壁17で区画する構成を備えている(参考文献1:国際公開2012/161304号参照)。
シンチレータ素子15は照射されたX線を吸収し、照射されたX線に応じて蛍光などの光をシンチレータ光として発光する。シンチレータ素子15を構成する材料としては、ヨウ化セシウムなどのX線蛍光体が挙げられる。遮光壁17の材料としては、一例としてアルカリ金属酸化物を含有するガラス粉末などが用いられる。なお、シンチレータ素子15の材料、遮光壁17の材料、および出力層13に遮光壁17を形成する工程の詳細などについては参考文献1などに詳述されているので、ここではこれ以上の説明を省略する。
出力層13は基板19と、二次元マトリクス状に配列された画素21とを備えている。画素21の各々は光を電荷に変換する光電変換素子と、変換された電荷に基づいてX線検出信号を出力する出力素子とを備えており、シンチレータ素子15において発光するシンチレータ光をX線検出信号に変換して出力する。画像生成部8は画素21の各々と接続されており、画素21が出力するX線検出信号に対して各種画像処理を施すことにより、被検体MのX線画像を生成する。
なお図2(a)に示すように、画素21の各々は、遮光壁17によって区画されたシンチレータ素子15の各々と1対1に対応する位置関係になるように配置されている。すなわち画素21のピッチ(周期)は、シンチレータ素子15のピッチと略同じとなるように構成される。
このように、シンチレータ層11は格子状の遮光壁17によって区画されたセルの各々の内部に、シンチレータ素子15が充填された構成を有している。このような構成を有することにより、シンチレータ素子15が発光するシンチレータ光がシンチレータ層11の内部で散乱した場合であっても散乱したシンチレータ光は遮光壁17によって遮断される。
そのためシンチレータ素子15において発生する散乱光が、隣接するシンチレータ素子15へ到達することを防止できる。従って、シンチレータ素子15を遮光壁17で仕切ることによって、X線検出器5のX線感度を向上すべくシンチレータ素子17をz方向に厚くした場合であっても、X線画像の解像度が低下することを回避できる。
なお実施例1に係るX線検出器5では、遮光壁17のピッチを60〜100μm程度の短い距離にすることができる。そのためこのようなX線検出器を用いることにより、画素のピッチがより細かいX線画像が要求される場合であっても、X線画像の解像度の低下を回避できる。
さらにX線検出器5においてシンチレータ素子15を遮光壁17で区画することにより、EI−XPCiに用いる従来のX線撮影装置では検出マスクが必須である一方、実施例1に係るX線撮影装置では検出マスクを省略しても好適なEI−XPCiを実行できる。検出マスクを省略できる効果についての詳細は後述する。
X線撮影装置1において、X線管3、X線検出器5、および試料マスク7は以下のように構成することができる。
X線管3の焦点から試料マスク7までの距離D1 :1.6m
試料マスク7からX線検出器5のX線入射面までの距離D2 :0.4m
試料マスク7から被検体Mまでの距離D3 :5cm
試料マスク7におけるX線吸収材R1のピッチの長さG(スリット周期):66.8μm
試料マスク7におけるX線吸収材R2のx方向における長さN:33.4μm(G/2)
X線検出器5におけるシンチレータ素子15のピッチの長さT:83.5μm
X線検出器5におけるシンチレータ素子15のx方向の長さB:41.75μm(T/2)
上述のように構成することにより、試料マスク7のX線透過材R2を透過するX線のx方向の長さは、X線検出器5に入射する際において、シンチレータ素子15のx方向における長さBと等しくなる。なおD1〜D3までの各距離は適宜変更してよい。その場合、ピッチ長さPおよびピッチ長さTは距離D1〜D3の値に応じてそれぞれ変更される。
なおX線検出器5と試料マスク7との初期位置については、被検体Mが存在しない状態においてX線3aを照射した場合、X線3aはシンチレータ素子15および遮光壁17の各々に対して均等に入射するように、各初期位置の位置合わせが予め行われている(図3(a))。またX線透過材R2のx方向の長さとシンチレータ素子15のx方向の長さとの比は、距離D1と距離D2との比に等しくなるように構成される。X線透過材R2はx方向に延伸するように構成されるので、被検体Mが存在しない状態でX線を照射した場合、X線3aがX線検出器5に入射する領域Hは、x方向に延伸する矩形状の領域となる(図3(b))。
そのためX線の屈折が起こらない場合は図3(b)に示すように、X線3aはシンチレータ素子15の各々について、右半分(または左半分)に相当する領域に入射する。実施例1において、屈折せずにX線検出器5に入射するX線3aは、シンチレータ素子15の各々の右半分に相当する領域に入射するよう、X線検出器5と試料マスク7との位置合わせが行われているものとする。
なお、シンチレータ素子15に入射しないX線は遮光壁17に入射され、光に変換されることなくX線検出器5を透過する。その結果、遮光壁17のx方向の長さに応じてシンチレータ素子15に入射するX線の線量が制限される。従って、シンチレータ層11を遮光壁17で区画することにより、遮光壁17は検出マスクに設けられるX線吸収材と同様の機能を発揮するので、実施例1に係るX線撮影装置1において検出マスクを省略できる。
<実施例1におけるX線撮影の工程>
ここで実施例1に係るX線撮影装置1を用いて、EI−XPCiによるX線撮影を行う場合の工程について説明する。EI−XPCiの工程概要としては、まずX線検出器5および試料マスク7が所定の初期位置にある状態で、X線画像A1を撮影する(ステップS1)。次にX線検出器5をx方向に距離C移動させ、X線画像A2を撮影する(ステップS2)。そしてX線画像A1およびA2における各画素21の輝度値に基づいて、X線3aの屈折情報を算出する(ステップS3)。最後に屈折情報に基づいて、被検体MのX線屈折コントラスト像を映す、X線小角散乱画像を再構成する(ステップS4)。以下、工程の各々について詳細に説明する。
ステップS1の工程を実行するにあたり、まず載置テーブルに被検体Mを載置させる。そして初期位置においてX線画像A1の撮影を行うべく、X線管3から被検体Mに対してX線3aを照射させる。X線3aは試料マスク7に設けられるX線透過材R2の領域を透過し、y方向に延伸するファンビームに制限された状態でX線検出器5に入射する。
図4(a)に示すように、X線透過材R2を透過するX線3aのうち、被検体Mを透過しないX線P1は、屈折することなくX線検出器5に入射する。X線P1がX線検出器5に入射する領域は図4(b)において符号H1を付して示されている。X線P1は屈折しないので、シンチレータ素子15a(X線P1が入射するシンチレータ素子15)にX線P1が入射する領域Eaは、シンチレータ素子15aの右半分の領域に相当する。
従って領域H1は、シンチレータ素子15aの各々の右半分に相当する領域と重複する。すなわち領域H1の左端とシンチレータ素子15aのx方向の中心線とが一致する。その結果、シンチレータ素子15aの各々にはX線P1の半分に相当する線量のX線が入射され、シンチレータ光Wに変換される。そしてシンチレータ光Wは画素21a(シンチレータ素子15aに接する画素21)において光電変換され、電子信号であるX線検出信号として出力される。
一方、X線透過材R2を透過するX線3aのうち、被検体Mを透過するX線P2の多くは被検体Mの形状などに応じて屈折する。すなわち図4(a)に示すように、X線P2のうちX線P2aはx方向に左へ屈折し、X線P2bは右へ屈折する。そのためX線検出器5のX線入射面において、X線P2aが入射する領域H2aは領域H1と比べて符号Jaに相当する距離の分、x方向に左へ変位する。そしてX線P2bが入射する領域H2bは領域H1と比べて符号Jbに相当する距離の分、x方向に右へ変位する。
その結果、X線の屈折する角度に応じてシンチレータ素子15の各々に入射するX線の線量が増減する。X線画像A1の撮影時において、シンチレータ素子15b(X線P2aが入射するシンチレータ素子15)にX線P2aが入射する領域Ebは、X線P2aの屈折距離Jaに応じて広くなる。すなわちシンチレータ素子15bに入射するX線量は、X線P2aの屈折距離Jaに応じて増加する。そのため画素21b(シンチレータ素子15bに接する画素21)において出力されるX線検出信号は屈折距離Jaに応じて大きくなる。
そしてX線画像A1の撮影時においてシンチレータ素子15c(X線P2bが入射するシンチレータ素子15)にX線P2bが入射する領域Ecは、X線P2bの屈折距離Jbに応じて狭くなる。すなわちシンチレータ素子15cに入射するX線量は、X線P2bの屈折距離Jbに応じて減少する。そのため画素21c(シンチレータ素子15cに接する画素21)において出力されるX線検出信号は、屈折距離Jbに応じて小さくなる。画像生成部は画素21a〜21cの各々が出力するX線検出信号に対して各種画像処理を行い、X線画像A1を生成する。
X線画像A1を撮影した後、ステップS2の工程を行う。すなわちX線検出器5と試料マスク7との位置関係を変位させるべく、X線検出器5を初期位置からx方向に図4(c)において符号Cで示す距離だけ移動させる。距離Cはシンチレータ素子15のx方向の長さBと同様、シンチレータ素子15のピッチ長さTの半分であることが好ましい。またX線検出器5を移動する構成に限ることはなく、試料マスク7をx方向に移動させてもよい。実施例1ではX線検出器5をx方向に(T/2)の距離だけ移動させることとする。
X線検出器5をx方向に移動させた後、X線画像A2を撮影すべくX線管3から被検体Mに対してX線3aを照射させる。X線3aは試料マスク7に設けられるX線透過材R2の領域を透過し、X線検出器5に入射する。
図4(c)に示すように、X線透過材R2を透過するX線3aのうち、被検体Mを透過しないX線P1は、屈折することなくX線検出器5に入射する。X線検出器5はx方向に(T/2)の距離を移動しているので、図4(d)に示すように、X線P1がシンチレータ素子15aに入射する領域Eaは、シンチレータ素子15a左半分の領域に相当する。その結果、シンチレータ素子15aの各々にはX線P1の半分に相当する線量のX線が入射され、シンチレータ光Wに変換される。このように領域Eaの広さはX線検出器5の移動によって変化しないので、シンチレータ素子15aが出力するX線検出信号の大きさは、X線画像A1の撮影時とX線画像A2の撮影時とで変化しない。
しかし屈折するX線P2が入射する、シンチレータ素子15bおよびシンチレータ素子15cの各々では、X線検出器5を移動することによってX線の入射量が変化する。X線検出器5を(T/2)の距離だけx方向に移動させることにより、X線画像A2の撮影時においてシンチレータ素子15bにX線P2aが入射する領域Ebは、領域Eaと比べて距離Jaの分だけ狭くなる(図4(d))。すなわちシンチレータ素子15bが発光するシンチレータ光Wは屈折距離Jaに応じて弱くなる。そのため画素21bにおいて出力されるX線検出信号は屈折距離Jaに応じて小さくなる。
一方、X線検出器5を(T/2)の距離だけx方向に移動させることにより、X線画像A2の撮影時においてシンチレータ素子15cにX線P2bが入射する領域Ecは、領域Eaと比べてと比べて距離Jbの分だけ広くなる(図4(d))。すなわちシンチレータ素子15cが発光するシンチレータ光Wは屈折距離Jbに応じて強くなる。そのため画素21cにおいて出力されるX線検出信号は屈折距離Jbに応じて大きくなる。画像生成部8は画素21a〜21cの各々が出力するX線検出信号に対して各種画像処理を行い、X線画像A2を生成する。
このようにX線画像A1を撮影した後にX線検出器5と試料マスク7との相対位置を変位させ、さらにX線画像A2を撮影する。X線画像A1およびA2を撮影した後、ステップS3に係る工程を実行する。ステップS3において、まずX線画像A1およびA2の情報が屈折情報算出部9へ送信される。屈折情報算出部9は2枚のX線画像情報に基づいて、X線3aの屈折情報を算出する。X線3aの屈折情報を算出する手法としては、撮影された2枚のX線画像の差分をとり、X線画像A3を生成する方法などが挙げられる。
上述したように、シンチレータ素子15に入射するX線が屈折していない場合、画素21が出力するX線検出信号の大きさは、X線画像A1およびA2のいずれの撮影時においても同じである。従って、X線画像A3において、屈折しないX線が入射する画素21aの輝度値は0となる。
一方で、シンチレータ素子15に入射するX線が、被検体Mを透過することによって屈折している場合、画素21が出力するX線検出信号の大きさは、X線画像A1およびA2の各々において相違する。すなわちX線画像A1における画素21bの輝度値はX線画像A2における画素21bの輝度値より大きく、X線画像A1における画素21cの輝度値はX線画像A2における画素21cの輝度値より小さい。
そのためX線画像A3における輝度値の符号に従って、X線が屈折する方向の情報を得ることができる。またX線画像A3における画素21bおよび画素21cの輝度値の絶対値に基づいて、X線3aの屈折距離JaおよびJbを算出できる。X線3aの屈折角度の大きさは、屈折距離JaおよびJbに基づいて算出できる。このように屈折情報算出部9はX線画像A3における画素21の輝度値に基づいて、画素21の各々に入射するX線3aについて、屈折方向および屈折角度に関する情報を屈折情報として算出する。
屈折情報が算出されることによって、ステップS4に係る工程を実行する。ステップS4において、屈折情報は屈折情報算出部9から散乱画像再構成部10へ送信される。散乱画像再構成部10は屈折情報に基づいて、被検体MのX線小角散乱画像を再構成する。X線小角散乱画像は、被検体Mを透過することによるX線3aの屈折に関する情報を屈折コントラスト像として映す。X線屈折による効果はX線吸収による効果よりはるかに大きいので、被検体が軟骨など水分を多く含む軟部組織であっても、コントラストが大きく診断能の高い画像を取得できる。
なお、被検体MによるX線の吸収量については、X線画像A1における輝度値とX線画像A2における輝度値との平均に基づいて算出できる。被検体Mを透過しないX線の線量は、X線画像A1およびA2における画素21aの輝度値の平均によって求められる。そして、一例として被検体Mによって吸収されたX線P2aの線量は、X線画像A1およびA2における画素21aの輝度値の平均と、X線画像A1およびA2における画素21bの輝度値の平均の差分から求められる。
このように、屈折情報算出部9は被検体MのX線吸収量に基づくX線画像の情報と、被検体MによるX線の屈折に基づくX線小角散乱画像の情報とを区別して算出できる。そのため、散乱画像再構成部10はEI−XPCiに基づくX線小角散乱画像を再構成するとともに、吸収イメージング法に基づく一般的なX線画像(X線吸収画像)を再構成できる。
<実施例1の構成による効果>
実施例1に係るX線撮影装置1において、X線検出器5に設けられるシンチレータ素子15は格子状の遮光壁17によって区画される。このような構成のX線検出器5を用いることにより、従来は必須な構成であった検出マスクを省略できる。
従来の装置において検出マスクは、試料マスクによってファンビーム状となったX線の一部をさらに遮蔽する機能を有する。そして検出マスクおよびX線検出器と試料マスクとを相対移動させ、X線検出器にX線が入射する領域を適宜変更させつつX線撮影を複数回行う。X線撮影によって得られる複数のX線画像に基づいて、X線小角散乱画像を生成する。しかし十分な厚さを有する検出マスクを高精度かつ大面積で作成するのは困難であるので、X線撮影装置のコストが高騰する。また検出マスクとX線検出器との位置合わせを精度良く行うことは困難であるので、位置ズレに起因するX線小角散乱画像の診断能の低下が懸念される。
一方、実施例1に係るX線撮影装置1では図5(a)に示すように、シンチレータ層11は格子状の遮光壁17と、遮光壁17に区画されたセル内を充填するシンチレータ素子15とによって構成される。すなわち試料マスク7を透過してX線検出器5の表面(X線入射面)に入射するX線3aは、その一部がシンチレータ素子15に入射してシンチレータ光Wに変換される。そしてシンチレータ素子15に入射しない残りのX線3aは遮光壁17に入射され、光に変換されることなくX線検出器5を透過する。すなわち遮光壁17は従来の装置における検出マスクのX線吸収材と同様に、X線検出器5に入射するX線の一部について、シンチレータ光への変換を阻害する。従って、試料マスク7を透過したX線の一部を制限する検出マスクの機能を、シンチレータ層11に設けられる遮光壁17によって代替できる。
実施例1に係るX線撮影装置1では図5(a)に示すように、シンチレータ素子15のピッチの長さTに対して、シンチレータ素子15のx方向の長さB、および遮光壁17のx方向の長さはいずれも(T/2)となるように構成される。すなわちシンチレータ層11においてx方向の長さが(T/2)であるシンチレータ素子15と、x方向の長さが(T/2)である遮光壁17とが繰り返し並列している。
図5(a)に示すような実施例1の構成に相当する、従来の構成を図5(b)に示している。すなわち実施例1の構成は、x方向の長さがB(すなわちT/2)であるX線透過材R2とx方向の長さが(T/2)であるX線吸収材R1とがx方向に繰り返し並列する検出マスクVが、遮光壁17を設けないシンチレータ層11の表面に近接する位置に設置される構成に相当する。
検出マスクVを備える図5(b)の構成では、X線3aのうちX線吸収材R1に入射するX線は吸収されるのでシンチレータ光に変換されない。そしてX線透過材R2に入射するX線は検出マスクVを透過してシンチレータ層11を構成するシンチレータ素子に入射し、シンチレータ光Wに変換される。一方、シンチレータ層11が遮光壁17で区画される図5(a)の構成では、X線3aのうち遮光壁17に入射するX線はシンチレータ素子15に吸収されることなくX線検出器5を透過するのでシンチレータ光に変換されない。
そしてシンチレータ素子15に入射するX線はシンチレータ光に変換される。従って、図5(a)および図5(b)の各々において、シンチレータ光に変換されるX線3aの領域はいずれも、y方向に延伸しx方向の長さがB/2、すなわちT/4である矩形が長さTの周期でx方向に並列する領域Kとなる(図5(c))。また図5(a)および図5(b)のいずれの構成においても、X線3aが屈折することにより領域Kはx方向へ変位する。また試料マスク7とX線検出器5とを相対移動させることにより、シンチレータ層11における領域Kの位置はいずれの構成においても同様に変位する。
従って、図5(a)の構成と図5(b)の構成のいずれにおいても、初期位置と初期位置からx方向に距離C移動させた位置との各々においてX線画像を撮影することにより、被検体MのX線小角散乱画像を取得できる。このように実施例1に係る構成ではX線検出器のX線入射面は遮光壁とシンチレータ素子とがx方向について繰り返し配列されている。そしてこの繰り返し配列するX線入射面の構成は、検出マスクVにおいてX線吸収材とX線透過材とが繰り返し配列する構成に相当する。そのため、実施例1に係るX線撮影装置では、検出マスクVを省略した場合であっても好適に被検体MのX線小角散乱画像を取得できる。
すなわち大面積で製造することが困難であった検出マスクを必要としないので、大面積のX線検出器についてEI−XPCiを行い、サイズがより大きなX線小角散乱画像を取得することが容易となる。また大面積かつ高精度の検出マスクを作成する必要がないので、X線小角散乱画像の撮影を可能とするX線撮影装置の製造コストを低減できる。
さらに実施例1に係るX線撮影装置において、検出マスクのX線吸収材に相当する遮光壁17はX線検出器5と一体に形成されるので、遮光壁17とシンチレータ素子15との位置ずれが発生することがない。すなわち従来の装置で懸念されるような、検出マスクとX線検出器との位置ずれに起因してX線小角散乱画像の品質が低下するという問題を解決することができる。
また図5(b)に示す従来の構成ではシンチレータ層11において発光するシンチレータ光Wがx方向に散乱するためにX線画像の解像度が低下する一方、実施例1の装置ではシンチレータ層11を格子状の遮光壁17で区画するので、シンチレータ素子15で発生するシンチレータ光Wの散乱を好適に回避できる。そのため実施例1に係るX線撮影装置では、X線小角散乱画像の解像度を向上させ、画像の品質をより向上させることができる。
次に、この発明の実施例2を説明する。実施例2に係るX線撮影装置の全体構成、および初期位置の設定は実施例1と共通する。但し実施例2では、X線検出器5に設けられるシンチレータ素子15の配列パターンが実施例1と相違する。また実施例2では移動機構6を省略可能であるという点において実施例1と相違する。
<実施例2に特徴的なシンチレータ素子の配列パターン>
ここで実施例2に特徴的なシンチレータ素子15の配列パターンについて説明する。実施例2に係るX線撮影装置1において、シンチレータ層11は図6(a)に示すようなx方向に延伸したシンチレータアレイ23が、図6(b)に示すようにy方向に多数並列する構成を有している。シンチレータアレイ23の各々は、x方向に並列された多数のシンチレータ素子15が格子状の遮光壁17によって仕切られた形状を有している。
シンチレータアレイ23の各々に設けられるシンチレータ素子17のx方向における配列パターンは、隣接するシンチレータアレイ23同士の間でx方向にずれている。すなわち遮光壁17の格子パターンは、隣接するシンチレータアレイ23同士の間でx方向にずれている。その結果、シンチレータ層11は、シンチレータ素子15の配列パターンがx方向にずれている2種類のシンチレータアレイ23が、y方向へ交互に並列する構成となる。
なお、シンチレータ素子17の配列パターンが異なる2種類のシンチレータアレイ23について、一方をシンチレータアレイ23Aとし、他方をシンチレータアレイ23Bとして区別する(図6(b))。シンチレータアレイ23Aに設けられるシンチレータ素子15をシンチレータ素子15Aとし、シンチレータアレイ23Bに設けられるシンチレータ素子15をシンチレータ素子15Bとして区別する。シンチレータ素子15Aに接する画素21については画素21Aとし、シンチレータ素子15Bについては画素21Bとする。
そしてy方向に隣接する画素21Aと画素21Bとの間でユニットUnを構成する(図6(b))。後述するように、同一のユニットUnにおける画素21同士が出力するX線検出信号に対して演算処理をすることにより、1回のX線照射によってX線小角散乱画像が生成される。なお図6(b)において、各シンチレータ素子15の裏側に画素21の各々が1対1対応するように配列されているものとする。またX線3aはx方向について、2つのシンチレータ素子15、すなわちシンチレータ素子15Aおよび15Bの各々の一部に入射するように、X線検出器5および試料マスク7の初期位置が設定されている。
実施例2において、隣接するシンチレータアレイ15同士においてシンチレータ素子17がx方向にずれる距離D4はシンチレータ素子15のピッチ(周期)の長さTの1/2に等しいことが好ましい。この場合図6(b)に示すように、シンチレータ層11のX線入射面において、シンチレータ素子15の各々は千鳥配列となるように配置される。また実施例2におけるシンチレータ素子15のx方向の長さBは実施例1と同様に(T/2)であるものとする。
シンチレータアレイ23aとシンチレータアレイ23bの各々について、シンチレータ素子15の配列パターンが距離D4だけx方向にずれている。すなわちX線検出器5に対してX線を照射した場合、シンチレータアレイ23bのシンチレータ素子15において取得される情報は、X線検出器5をx方向にD4の距離を移動させてからX線を照射した場合にシンチレータアレイ23aのシンチレータ素子15において取得される情報と一致する。
従って、シンチレータ素子15の配列パターンがx方向にD4ずれているシンチレータアレイ23aおよび23bを交互に配置することにより、X線検出器5を移動させずに撮影した場合のX線画像情報と、X線検出器5をx方向にD4の距離だけ移動させて撮影した場合のX線画像情報とを、1回のX線照射によって取得できる。
<実施例2におけるX線撮影の工程>
ここで実施例2に係るX線撮影装置1を用いて、EI−XPCiによるX線撮影を行う場合の工程について説明する。実施例1では初期位置においてX線画像A1を撮影し、初期位置からX線検出器5をx方向にCの距離だけ移動させてから再度X線を照射してX線画像A2を撮影する。すなわち実施例1ではX線撮影を2回行う一方、実施例2では初期位置においてX線撮影を1回行うという点でX線撮影の工程は相違する。
X線撮影において、載置テーブルに被検体Mを載置させ、X線管3から被検体Mに対してX線3aを照射させる。X線3aは試料マスク7に設けられるX線透過材R2の領域を透過し、X線検出器5に入射する。なお、屈折せずにX線検出器5に入射するX線P1はシンチレータ素子15Aおよび15Bの各々へ、均等に入射するように試料マスク7およびX線検出器5の初期位置が予め定められる(図7(a)〜(c))。すなわち初期位置において、試料マスク7を透過するX線P1は、x方向について2つのシンチレータ素子15に入射する。
図7(b)は実施例2においてX線が入射する領域を示すX線検出器5の平面図である。シンチレータアレイ23aとシンチレータアレイ23bとはシンチレータ素子15の配列パターンがx方向にずれている。そのためシンチレータ素子15Aと、シンチレータ素子15BとではX線3aが入射する領域が相違する。
なお、シンチレータ素子15AのうちX線P1、X線P2a、およびP2bの各々が入射するシンチレータ素子15を、シンチレータ素子15Aa〜15Acとして区別する。そしてシンチレータ素子15BのうちX線P1、X線P2a、およびP2bの各々が入射するシンチレータ素子15を、シンチレータ素子15Ba〜15Bcとして区別する(図7(b))。
また図7(a)に示すように、シンチレータ素子15Aa〜15Acの各々にX線3aが入射する領域EAをそれぞれ領域EAa〜EAcとして区別する。シンチレータ素子15Aa〜15Acの各々にX線3aが入射する領域をそれぞれ領域EAa〜EAcとして区別する。シンチレータ素子15Ba〜15Bcの各々にX線3aが入射する領域EBをそれぞれ領域EBa〜EBcとして区別する。
シンチレータ素子15Aの各々においてX線3aが入射する領域EAは図7(a)に示す通りである。すなわち領域EAaはシンチレータ素子15Aaの右半分の領域に相当するので、シンチレータ素子15Aaの右半分にX線P1が入射する。X線P2aはx方向について左へ屈折するので、領域EAbの面積が広くなる。
従って、シンチレータ素子15Abに入射するX線量は、シンチレータ素子15Aaに入射するX線量と比べて、X線P2aの屈折距離Jaに応じて増加する。領域EAcの面積は領域EAaと比べて狭くなるので、シンチレータ素子15Acに入射するX線量は、シンチレータ素子15Aaに入射するX線量と比べて、X線P2bの屈折距離Jbに応じて減少する。
このように、シンチレータアレイ23Aに設けられるシンチレータ素子15Aa〜15Acの各々に入射されるX線の線量は、実施例1で初期位置においてX線を照射した場合にシンチレータ素子15a〜15cの各々へ入射するX線の線量と同じである(図4(a))。従って、シンチレータ素子15Aa〜15Acの各々に接する画素21Aである、画素21Aa〜21Acが出力するX線検出信号に基づいて生成されるX線画像の情報は、実施例1において生成されるX線画像A1の情報と共通する。
一方で、シンチレータ素子15Bの各々においてX線3aが入射する領域は図7(c)の断面図に示す通りである。シンチレータアレイ23Bに設けられるシンチレータ素子15Bの配列パターンは、シンチレータ素子15Aの配列パターンと比べてx方向に距離B(距離T/2)だけずれている。従って、シンチレータ素子15Ba〜15Bcの各々に入射されるX線の線量は、実施例1で初期位置から距離T/2だけ移動させた後にX線を照射した場合にシンチレータ素子15a〜15cの各々へ入射するX線の線量と同じである(図4(c))。
すなわちシンチレータアレイ23Bにおいて、領域EBaはシンチレータ素子15Baの左半分の領域に相当するので、シンチレータ素子15Baの左半分にX線P1が入射する。そしてX線P2aはx方向について左へ屈折するので、領域EBbの面積は狭くなる。従って、シンチレータ素子15Bbに入射するX線量は、シンチレータ素子15Baに入射するX線量と比べて、X線P2aの屈折距離Jaに応じて減少する。
X線P2bはx方向について右へ屈折するので、領域EBcの面積は領域EBaと比べて狭くなる。その結果、シンチレータ素子15Bcに入射するX線量はシンチレータ素子15Baに入射するX線量と比べて、X線P2bの屈折距離Jbに応じて増加する。すなわちシンチレータ素子15Ba〜15Bcの各々に接する画素21Bである、画素21Ba〜21Bcが出力するX線検出信号に基づいて生成されるX線画像の情報は、実施例1において生成されるX線画像A2の情報と共通する。
このように実施例2において撮影される1枚のX線画像は、実施例1において撮影される、X線画像A1の画像情報とX線画像A2の画像情報とを有する。屈折情報算出部9は同一のユニットUnに属する画素21Aおよび画素21Bについて、X線検出信号に基づく輝度値の差分をとる演算処理を行う。演算処理により、各ユニットUnにおけるX線3aの屈折情報が算出される。
すなわち屈折しないX線P1が入射する領域について、同一のユニットUnに属する画素21Aaおよび画素21Baの各々における輝度値の差は0となる。一方、被検体Mによって屈折するX線P2が入射する領域について、X線検出信号の差は0とならない。左に屈折するX線P2aが入射する領域について、同一のユニットUnに属する画素21Abおよび画素21Bbの各々における輝度値の差はプラスの値をとる。そして右に屈折するX線P2bが入射する領域について、同一のユニットUnに属する画素21Acおよび画素21Bcの各々における輝度値の差はマイナスの値をとる。このように屈折情報算出部9は輝度値の差に基づいてX線3aの屈折する方向を算出する。
画素21Aおよび画素21の各々における輝度値の差がプラスまたはマイナスの値をとる場合、X線P2の屈折距離JaまたはJbが大きくなるにしたがって、輝度値の差の絶対値は大きくなる。そのため、同一のユニットUnに属する画素21Aおよび画素21Bの各々における輝度値の差に基づいて、X線P2が屈折する角度が算出される。
散乱画像再構成部10は各ユニットUnにおけるX線3aの屈折情報に基づいて、y方向に隣接する画素21Aおよび画素21BからなるユニットUnを1画素分とする、被検体MのX線小角散乱画像を再構成する。このように実施例2ではX線照射を1回行うことで、被検体MのX線小角散乱画像を取得できる。
<実施例2の構成による効果>
実施例2に係るX線撮影装置が備えるX線検出器5は、X線3aがx方向について2つのシンチレータ素子15にそれぞれ入射するように構成される。そしてX線検出器5は遮光壁17に区画されてx方向に配列するシンチレータ素子15Aを備え、x方向に延伸するシンチレータアレイ23Aと、遮光壁17に区画されてx方向に配列するシンチレータ素子15Bを備え、x方向に延伸するシンチレータアレイ23Bとがy方向に交互に並列する構成を有している。そしてシンチレータ素子15Aの配列パターンと、シンチレータ素子15Bの配列パターンはx方向にそれぞれD4の距離だけずれている。
実施例2に係るX線検出器5は実施例1と同様に、シンチレータ層11は格子状の遮光壁17によって区画されている。そのため実施例2に係るX線撮影装置を用いてEI−XPCiを行う場合、実施例1と同様に検出マスクを省略することができる。従って、製造が困難な検出マスクを必要としないので、X線撮影装置のコストを低減できる。またX線検出器における遮光壁の位置ずれを好適に回避できるので、高品質のX線小角散乱画像を取得できる。また、遮光壁17によってシンチレータ光の散乱を防止できるので、X線画像の解像度を向上できる。
さらに実施例2に係るX線検出器では、シンチレータ素子15の配列パターンがx方向にそれぞれ所定の距離D4ずれている2種類のシンチレータアレイ23Aおよび23Bが交互にy方向へ並列する構成を有する。そのため実施例2では、初期位置において撮影されたX線画像の情報と、X線検出器5を初期位置からx方向へ距離D4移動させて撮影されたX線画像の情報とを1回のX線撮影で取得できる。
そしてX線3aはx方向について2つのシンチレータ素子15Aおよび15Bに入射する。そのため1枚のX線画像を撮影する際において、領域EAa〜EAcおよび領域EBa〜EBcの各々について偏りを検出することにより、x方向についてX線3aが屈折する方向および距離を算出できる。
屈折情報算出部は1回のX線照射によって得られる2種類のX線画像情報に対して、差分をとるなどの演算処理によって、x方向に関するX線3aの屈折方向および屈折距離の情報を算出する。そして算出した情報に基づいて被検体MのX線小角散乱画像が再構成される。従って、X線小角散乱画像を取得するために要するX線撮影の回数は1回ですむ。その結果、X線小角散乱画像の撮影における被検体の被曝量を低減できるとともに、X線小角散乱画像の撮影に要する時間を短縮できる。
また一般的に距離D4は短い距離であるので、実際にX線検出器を移動させた場合、想定される距離D4と比べてX線検出器5が実際に移動する距離が異なることがある。またX線検出器5を実際に移動させることにより、X線検出器5の振動などに起因してX線管3、X線検出器5、および試料マスク7の相対位置が想定される位置からずれるという問題が懸念される。
実施例2では移動機構6を省略し、X線検出器5を移動させることなく、1回のX線照射によってX線小角散乱画像を生成する。従って、X線検出器5が実際に移動する距離のずれや、X線検出器5の振動など発生を防止できる。そのためX線管3やX線検出器5など各構成同士の相対位置がずれることをより確実に回避できるので、実施例2では各構成同士の相対位置ズレに起因する、X線小角散乱画像の診断能の低下を好適に回避できる。
実施例2に係るX線検出器5はX線入射面において、シンチレータ素子15の各々が千鳥配置となるように構成される。すなわちシンチレータ素子15の配列パターンがずれる距離D4は、シンチレータ素子15のピッチ長さTの半分に相当する。この場合、初期位置において撮影されるX線画像A1の情報と、X線検出器を初期位置から(T/2)の距離を移動させた状態で撮影されるX線画像A2の情報とを1回のX線撮影で取得できる。
従来のEI−XPCiは初期位置で撮影するX線画像と、初期位置から(T/2)の距離を移動させた状態で撮影されるX線画像とを用いて演算処理を行い、X線小角散乱画像を再構成することが一般的である。そのためX線検出器5においてシンチレータ素子15を千鳥配置することにより、従来の演算処理方法を用いて確実かつ正確なX線小角散乱画像を再構成することができる。
次に、この発明の実施例3を説明する。実施例3に係るX線撮影装置1Aの全体構成は図8(a)に示す通りである。実施例3に係る全体構成は実施例2と共通しており、移動機構6を省略可能であるという点で図1(a)に示す実施例1の全体構成と相違する。また実施例3に係るX線撮影装置1Aでは試料マスク7Aの構成、およびシンチレータ素子15と画素21との位置関係について、実施例1および実施例2に係るX線撮影装置と相違する。
実施例3における試料マスク7Aの構成を図8(b)に示す。試料マスク7Aは格子状に設けられたX線吸収材R1と、二次元マトリクス状に配列された正方形のX線透過材R2とを備えている。すなわち格子状のX線吸収材R1によって二次元マトリクス状に区画されたセルが試料マスク7Aに形成され、X線吸収材R1によって区画されたセル内を充填するようにX線透過材R2を配設する。
x方向およびy方向の各々におけるX線吸収材R2のピッチの長さをGとする。またx方向およびy方向におけるX線透過材R2の長さをNとする。この場合、X線管3から照射されるX線3aは、試料マスク7Aによって一辺の長さがNであるペンシルビームが、二次元マトリクス状に並ぶ形状に制限される。X線管3、X線検出器5、および試料マスク7の位置関係は実施例1と同様とする。
なお試料マスク7AはX線透過材R2が二次元マトリクス状に配列される構成に限ることはなく、図8(c)に示すようにX線吸収材R1およびX線透過材R2の配置を入れ替え、X線吸収材R1が二次元マトリクス状に配列される構成であってもよい。この場合、試料マスク7AはX線透過材R2が格子状となるように形成される。実施例3に係る試料マスク7Aは図8(b)に示す構成備えるものとする。
実施例3に係るシンチレータ層11は実施例1と同様に、格子状の遮光壁17によって区画されたシンチレータ素子15が二次元マトリクス状に配置された構成を有している(図9(a))。x方向およびy方向におけるシンチレータ素子15のピッチの長さをTとする。x方向およびy方向におけるシンチレータ素子15の長さをBとする。出力層13は画素21が二次元マトリクス状に配置された基板19によって構成される(図9(b))。
図9(c)の断面図で示すように、画素21の各々はシンチレータ素子15の各々と1対1に対応するように配列されている。x方向およびy方向の各々における、画素21のピッチ長さおよび画素21の長さはシンチレータ素子15と略同じであることが好ましい。但し図面においては説明の便宜上、画素21はシンチレータ素子15より大きく記載している。
試料マスク7とX線検出器5との位置関係の詳細は、図9(c)および図9(d)に示す通りである。X線管3から照射されるX線3aは、屈折せずに直進した場合、試料マスク7のX線透過材R2を透過した後、2行2列に配列される4つのシンチレータ素子15の中央に入射されるように、試料マスク7とX線検出器5との相対的な位置関係が設定される。
すなわちX線透過材R2を透過したX線3aが、x方向およびy方向の各々について、2つのシンチレータ素子15の各々の一部kに入射するように試料マスク7とX線検出器5との初期位置が定められる。この場合、X線透過材R2を透過してX線検出器5に入射するX線3aの領域Hは図9(d)に示すように、4つのシンチレータ素子15a〜15dからなる領域の中央部において、4つのシンチレータ素子の各々に跨がるように位置する。
図9(d)において実線で示す4つのシンチレータ素子15a〜15dと、各シンチレータ素子15a〜15dに接する画素21である、点線で示す画素21a〜21dとを、太点線で囲んで示している1つのユニットUnとする。この場合、X線検出器5はユニットUnがx方向およびy方向に繰り返し並列された構成であるとみなすことができる。そして被検体Mのない状態でX線管3からX線検出器5へX線3aを照射した場合、X線3aは屈折しないので領域Hは各ユニットUnの中央領域に位置する。また領域Hの端部はシンチレータ素子15a〜15dの各々と重複している。
なお図10(a)に示すユニットUnの構造について、遮光壁17のうち、X線3aが入射する領域(領域Hと重複する十字型の領域)については遮光壁17の厚さを薄くすることが好ましい。そして遮光壁17のうち、X線3aが入射しない領域については遮光壁17の厚さを厚くすることが好ましい。
ここでユニットUnの1つに着目し、実施例3において画素21〜21dの輝度値の変化に基づいてX線3aの屈折を判定する手法について説明する。なおシンチレータ素子15a〜15dの各々について、領域Hと重複する領域をHa〜Hdとする。X線3aが屈折しない場合、図10(a)に示すように領域HはユニットUnの中央領域に位置する。そのためシンチレータ素子15a〜15dの各々について、領域Hと重複する面積は等しくなる。すなわち領域Ha〜Hdの面積はすべて等しい。従って、X線3aがシンチレータ素子15a〜15dの各々に入射するX線3aの線量は等しいので、画素21a〜21dの輝度値はそれぞれ等しい。
一方、X線3aが屈折した場合、X線3aの屈折する方向に応じて同一のユニットUnにおける画素21a〜21dの輝度値がそれぞれ変化する。X線3aが被検体Mを透過することによってx方向に左へ屈折した場合、領域Hの位置は図10(b)に示すように、二点鎖線で示すユニットUnの中央領域から、実線で示す左寄りの領域へx方向に変位する。そのためx方向に屈折するX線3aの屈折距離Jxの大きさに応じて、領域Hbおよび領域Hdと比べて、領域Haおよび領域Hcの面積が広くなる。
その結果、画素21bおよび画素21dの輝度値と比べて画素21aおよび画素21cの輝度値が大きくなる。一方でX線3aが右側へ屈折した場合、領域Hは右へx方向に変位するので、画素21bおよび画素21dの輝度値が大きくなる。従って、画素21aの輝度値および画素21cの輝度値の和と、画素21bの輝度値および画素21dの輝度値の和との差分をとることにより、x方向においてX線3aが屈折する方向および屈折する角度(屈折距離)を算出できる。
実施例3では試料マスク7においてX線透過材R2は二次元マトリクス状に配列され、領域Hはx方向およびy方向の各々について、複数のシンチレータ素子15を跨ぐように位置づけられる。そのため実施例1および実施例2では1方向、すなわちx方向におけるX線3aの屈折を検出できる。一方で、実施例3では直交する2方向、すなわちx方向およびy方向の各々におけるX線3aの屈折を検出できる。
X線3aが被検体Mを透過することによってy方向に上側へ屈折した場合、領域Hの位置は図10(c)に示すように、二点鎖線で示すユニットUnの中央領域から、実線で示す上寄りの領域へy方向に変位する。そのためy方向に屈折するX線3aの屈折距離Jyの大きさに応じて、領域Hcおよび領域Hdと比べて、領域Haおよび領域Hbの面積が広くなる。
その結果、画素21cおよび画素21dの輝度値と比べて画素21aおよび画素21bの輝度値が大きくなる。X線3aが下側へy方向に屈折した場合、領域Hは下寄りへy方向に変位するので、画素21cおよび画素21dの輝度値が大きくなる。従って、画素21aの輝度値および画素21bの輝度値の和と、画素21cの輝度値および画素21dの輝度値の和との差分をとることにより、y方向においてX線3aが屈折する方向および屈折距離を算出できる。
X線3aが被検体Mを透過することによってxy平面において左上側へ屈折した場合、領域Hの位置は図10(d)に示すように、二点鎖線で示すユニットUnの中央領域から、実線で示す左上の領域へ変位する。この場合、屈折距離JxおよびJyの大きさに応じて領域Haの面積が特に広くなり、領域Hdの面積が特に狭くなる。その結果、画素21a〜21dのうち、画素21aの輝度値が特に大きくなり、画素21dの輝度値が特に小さくなる。また屈折距離JxおよびJyの大きさに応じて、画素21bおよび画素21cにおける輝度値が変化する。このように、同一のユニットUnに属する画素21a〜21dの各々における輝度値の変化量に基づいてX線3aの屈折する方向および屈折距離を1回のX線撮影によって算出できる。
実施例3に係るX線撮影装置1Aを用いてEI−XPCiを行う場合、試料マスク7Aを透過するX線3aがx方向およびy方向の各々において、2つのシンチレータ素子15に入射するように試料マスク7AおよびX線検出器5の初期位置を設定する(ステップS1)。そして初期位置においてX線管3から被検体MへX線3aを照射させ、X線画像Aを撮影する(ステップS2)。画像生成部8は各々の画素21から出力されるX線検出信号に基づいてX線画像Aを生成する。
屈折情報算出部9はX線画像Aについて、各ユニットUnにおける画素21a〜21dの輝度値を算出する。そして各々の輝度値の差分をとるなどの演算処理により、x方向およびy方向のそれぞれについて、各ユニットUnにおけるX線3aの屈折方向および屈折距離を算出する(ステップS3)。
散乱画像再構成部10は各ユニットUnについて算出されたX線3aの屈折情報に基づいて、2行2列に配列される4つの画素21a〜21d(ユニットUn)を1画素分とする、被検体MのX線小角散乱画像を生成する(ステップS5)。なお実施例1および実施例2と同様に、被検体MのX線吸収量に基づくX線吸収画像の情報をX線画像Aから取得できる。すなわち画像生成部8は、各ユニットUnにおいて画素21a〜21dの輝度値の和が減少する量に基づいて、X線小角散乱画像の情報と別に吸収イメージング法に基づくX線吸収画像を生成できる。
<実施例3に係る構成による効果>
このように実施例3に係るX線撮影装置において、試料マスク7Aは二次元マトリクス状に配列され、X線を透過するX線透過材R2を備えている。そして試料マスク7Aを透過するX線3aがx方向およびy方向の各々において2つのシンチレータ素子15に入射するように構成される。すなわち試料マスク7Aによってペンシルビーム状に制限されたX線3aは、x方向についてシンチレータ素子15aおよび15b(並びに、シンチレータ素子15cおよび15d)の各々に入射する。そしてy方向についてシンチレータ素子15aおよび15c(並びに、シンチレータ素子15bおよび15d)の各々の一部に入射する。
このような構成により、x方向についてX線3aが屈折した場合、シンチレータ素子15aおよび15bの各々に入射するX線3aの線量の偏りが変化する。従って、x方向についてX線3aが屈折する方向および角度の情報は、シンチレータ素子15aおよび15bの各々に入射するX線3aの差分に基づいて検出できる。そしてy方向についてX線3aが屈折した場合、シンチレータ素子15aおよび15cの各々に入射するX線3aの線量の偏りが変化する。従って、y方向についてX線3aが屈折する方向および角度の情報は、シンチレータ素子15aおよび15cの各々に入射するX線3aの差分に基づいて検出できる。
従って、X線3aが入射するシンチレータ素子15a〜15dの各々に接する画素21である、画素21a〜21dの輝度値の変化に基づいて、被検体Mを透過したX線3aが屈折する方向および屈折する距離を2次元的に算出できる。すなわち1回のX線照射によって撮影されるX線画像において、画素21a〜21dの輝度値を算出することにより、X線3aの屈折に関する情報をx方向およびy方向の各々について算出できる。
このように実施例3に係るX線撮影装置1AではX線3aが屈折する方向および屈折する距離は直交する2方向の各々について算出できる。そのため、X線3aの屈折に関する情報を1方向についてのみ算出できる従来のEI−XPCiと比べ、実施例3ではより精密で診断能の高いX線小角散乱画像を取得することができる。また1回のX線撮影によってX線小角散乱画像を取得できるので、被検体の被曝量をより低減できるとともに、X線小角散乱画像の撮影に要する時間をより短縮できる。
次に、この発明の実施例4を説明する。実施例4に係るX線撮影装置の全体構成は実施例3と共通する。実施例4に係る構成は、X線撮影装置において発生する振動などに起因する試料マスク7とX線検出器5との相対位置のズレである、相対位置ズレを補正する機構をさらに有する点において実施例3と相違する。
実施例3において説明した通り、X線検出器5に入射するX線3aは被検体Mを透過する際に屈折することにより、同一ユニットUnに属するシンチレータ素子15a〜15dの各々に入射する線量の偏りが変化する。しかしシンチレータ素子15の各々に入射する線量の偏りの変化は、X線3aの屈折以外によっても発生する。
すなわち試料マスク7とX線検出器5との相対位置のズレが発生する場合、シンチレータ素子15a〜15dの各々に入射するX線3aの線量の偏りは変化する。このような相対位置のズレは、一例として図11(a)に示すように、点線で示す位置から実線で示す位置へX線検出器5がxy平面に沿って平行移動することによって発生する。また他の例として図11(b)に示すように、点線で示す位置から実線で示す位置へX線検出器5がz方向の軸回りに回転移動することによって、相対位置のズレが発生する。
実施例4に係るX線検出器5Bは図12に示すように、X線入射面の4隅に配設されるユニットUnの各々を、相対位置ズレ補正用のユニットUnとして用いる。位置ずれ補正に用いられるユニットUnについて、X線入射面の左上隅に位置するユニットUnをユニットUn1として区別する。そしてX線入射面の右上隅、左下隅、および右下隅のそれぞれに位置する相対位置ズレ補正用のユニットUnを、それぞれユニットUn2〜Un4として区別する。
なお、相対位置ズレ補正に用いるユニットUnの位置および数は図11に示す構成に限られず、適宜変更してよい。但しx方向およびy方向の各々についてX線検出器5が平行移動することなどによる相対位置ズレ、並びにz方向の軸回りにX線検出器5が回転移動することなどによる相対位置ズレを補正できるという点で、一直線上に並ばない3つ以上のユニットUnを相対位置ズレ補正に用いることが好ましい。またX線撮影においてユニットUnに入射するX線3aが被検体Mをより確実に透過しないという点で、相対位置ズレ補正に用いるユニットUnの位置はX線検出器5の端部により近いことが好ましい。
実施例4に係るX線撮影装置を用いてEI−XPCiを行う場合、実施例3と同様に、試料マスク7Aを透過するX線3aがx方向およびy方向の各々において、2つのシンチレータ素子15に入射するように試料マスク7AおよびX線検出器5の初期位置を設定する(ステップS1)。そして初期位置においてX線管3から被検体MへX線3aを照射させ、X線画像Aを撮影する(ステップS2)。X線撮影によって、画像生成部8はX線画像Aを生成する。
屈折情報算出部9はX線画像Aについて、各ユニットUnにおける画素21a〜21dの輝度値を算出する。そして各々の輝度値の差分をとるなどの演算処理により、x方向およびy方向のそれぞれについて、各ユニットUnにおけるX線3aの屈折方向および屈折距離を算出する(ステップS3)。
そして実施例4に特徴的な工程として、屈折情報算出部9はさらに相対位置ズレ補正用のユニットUn1〜Un4における画素21の輝度値に基づいて、ステップS4で算出したX線3aの屈折に関する情報を補正する(ステップS4)。散乱画像再構成部10はステップS5で補正した屈折情報に基づいて、2行2列に配列される4つの画素21a〜21d(ユニットUn)を1画素分とする、被検体MのX線小角散乱画像を生成する(ステップS5)。
ここで、ユニットUn1〜Un4を用いてX線3aの屈折方向および屈折距離の情報を補正するステップS5の工程について説明する。図11(a)に示すようにX線検出器5がX線入射面(xy平面)に沿って平行移動した場合、試料マスク7AとX線検出器5との相対位置もxy平面に沿って移動する。
この場合図13(a)に示すように、ユニットUn1〜Un4の各々においてX線3aがX線検出器5に入射する領域Hの位置は、いずれも同じ方向へ同じ距離だけ移動する。ユニットUn1〜Un4において領域Hがx方向およびy方向へ移動する距離をそれぞれLx1〜Lx4、およびLy1〜Ly4とする。画像生成部8は、距離Lx1〜Lx4が等しく、かつ距離Ly1〜Ly4がそれぞれ等しいことに基づいて、X線検出器5と試料マスク7との相対位置が平行移動したことを判別できる。Lx1〜Lx4およびLy1〜Ly4の各々は、ユニットUn1〜Un4の各々における画素21a〜21dの輝度値に基づいて算出される。
被検体Mを透過したX線3aが入射するユニットUnについて、屈折情報算出部9がステップS3で算出したX線3aの屈折距離がx方向にJx、y方向にJyである場合、X線検出器5と試料マスク7との相対位置自体がx方向にLx、y方向にLy移動している。そのためユニットUnに入射するX線3aが実際に屈折した距離は、x方向については(Jx−Lx)であり、y方向については(Jy−Ly)である。このような演算処理により、X線検出器5と試料マスク7との相対位置の平行移動に起因する相対位置ズレを補正できる。
図11(b)に示すようにX線検出器5がz方向に平行な軸の軸回りに回転移動した場合、試料マスク7AとX線検出器5との相対位置も回転移動する。この場合図13(b)に示すように、X線検出器5の回転軸の位置、回転方向、および回転角度に応じて、ユニットUn1〜Un4の各々における領域Hの位置はそれぞれ異なる方向へ移動する。
屈折情報算出部9は距離Lx1〜Lx4、およびLy1〜Ly4に基づいてX線検出器5の回転軸の位置、回転方向、および回転角度を算出する。そして屈折情報算出部9は算出したX線検出器5の回転に関する情報に基づいて、ステップS4で算出された、x方向およびy方向の各々におけるX線3aの見掛けの屈折距離JxおよびJyを補正する。
実施例4ではこのように、複数の画素からなるユニットUn1〜Un4の各々を用いて相対位置ズレ補正を行う。ユニットUn1〜Un4は一直線上にない3以上のユニットであるので、ユニットUn1〜Un4の各々を構成する画素21の輝度値に基づいて、X線検出器5と試料マスク7との相対位置のズレを検出できる。そして被検体Mを透過してX線検出器5に入射するX線3aの見掛けの屈折方向および屈折距離を、検出した相対位置のズレの値に基づいて補正する。
相対位置のズレを補正することにより、X線撮影装置における振動などによりX線検出器5と試料マスク7との相対位置にズレが発生した場合であっても。被検体Mの透過によるX線の屈折方向および屈折距離を正確に算出できる。従って、相対位置のズレを補正した後における、X線の屈折方向および屈折距離に基づいてX線小角散乱画像を生成することにより、被検体Mについて診断能が高く、かつより精密なX線小角散乱画像を取得できる。
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
(1)上述した実施例1において、移動機構6はX線検出器5を移動させる構成としたが、X線検出器5と試料マスク7とをx方向に相対移動させる構成であるならば、移動機構6の構成はこれに限られない。すなわち移動機構6は試料マスク7をx方向に移動させる構成であってもよい。試料マスク7を移動させることによって、試料マスクX線検出器5と試料マスク7とのx方向における位置関係は相対的に変位する。そのため試料マスク7をx方向に移動させた後にX線照射を行うことによって、X線画像A2を撮影できる。
(2)上述した実施例1または実施例2において、試料マスク7は図1(b)に示すようにx方向に延伸するX線吸収材R1がy方向に並列する構成としたがこれに限られない。すなわち試料マスク7の構成として、実施例3に係るような構成を適用してもよい。すなわち図8(a)に示すような、格子状にX線吸収材R1が設けられる構成、または図8(b)に示すような、二次元マトリクス状にX線吸収材R1が設けられる構成を用いてもよい。
(3)上述した実施例4に係る、相対位置ズレ補正を行うユニットUnを用いる構成は、実施例3に限られず実施例1または実施例2に適用できる。実施例1に適用する場合はシンチレータ素子15のうち、入射するX線3aが被検体Mを確実に透過しない位置に配設される素子を選択して相対位置ズレ補正に用いる。実施例2に適用する場合はシンチレータ素子15Aおよび15BからなるユニットUnのうち、入射するX線3aが被検体Mを確実に透過しない位置に配設される素子を選択して相対位置ズレ補正に用いる。
そしてX線画像を撮影した後、相対位置ズレ補正用に選択されたシンチレータ素子15において領域Hの境界線がずれている方向および距離を、画素21の輝度値に基づいて検出する。相対位置がずれていない場合、領域Hの境界線はシンチレータ素子15を均等に分断する位置にある。一方で相対位置がずれている場合は領域Hの位置がx方向にずれるので、画素21の輝度値が想定されている値と比べて増減する。従って、屈折情報算出部9は選択されたシンチレータ素子15に接する画素21の輝度値に基づいて、試料マスク7とX線検出器5との相対位置のズレを検出し、X線小角散乱画像に対する相対位置のズレの影響を補正できる。
(4)上述した実施例2では、シンチレータ素子15が千鳥配置されている構成を用いたがこれに限ることはない。すなわち図13に示すように、y方向に延伸する角錐状ビームとしてX線検出器5に入射するX線3aが、x方向について2以上のシンチレータ素子15に入射するようにX線検出器5および試料マスク7の初期位置が設定されていればよい。このように初期位置が設定されているならば、シンチレータアレイ23Aおよび23Bにおけるシンチレータ素子15の配列パターンがx方向に一致する構成であっても実施例2に係る効果を奏することができる。
このような実施例2の変形例について図14を用いて説明する。図14(a)はX線検出器5のX線検出面を示す図であり、図14(b)は図14(a)のA−A断面におけるX線撮影装置1を示す図である。変形例に係るX線検出器5において、シンチレータ素子15の各々は碁盤目状に配列されている。そしてX線3aはx方向について2つのシンチレータ素子15に入射するようにX線検出器5の初期位置が定められる。
すなわち図14(a)に示すように、X線P1、P2aおよびP2bの各々が入射する領域である領域H1,H2a、およびH2bの各々は、x方向について隣接する2つのシンチレータ素子15Lおよび15Rのそれぞれに跨がるように重複する。なお、X線3aがx方向に屈折しない場合、X線3a(X線P1)はシンチレータ素子15Lおよび15Rの各々へ均等に入射するようにX線検出器5の初期位置を定めることが好ましい。
なおX線P1、P2a、およびP2bの各々が入射するシンチレータ素子15Lについてはシンチレータ素子15aL〜15cLとして区別する。またX線P1、P2a、およびP2bの各々が入射するシンチレータ素子15Rについてはシンチレータ素子15aR〜15cRとして区別する。そしてシンチレータ素子15aL〜15cLの各々にX線が入射する領域をそれぞれ領域EaL〜EcLとし、シンチレータ素子15aR〜15cRの各々にX線が入射する領域をそれぞれ領域EaR〜EcRとする。シンチレータ素子15Lに接する画素21については画素21Lとし、シンチレータ素子15Rに接する画素21については画素21Rとする。
実施例2の変形例に係るX線撮影装置を用いてEI−PCiを行う場合、実施例2と同様に初期位置においてX線照射を1回行い、X線画像Aを撮影する。x方向に屈折しないX線P1はシンチレータ素子15Lおよび15Rの各々へ均等に入射するので、領域EaLおよびEaRの面積は等しい。その結果、シンチレータ素子15aLに接する画素21aLの輝度値と、シンチレータ素子15aRに接する画素21aRの輝度値とは等しくなる。画像生成部8はX線画像Aにおいて画素21Lの輝度値と画素21Rの輝度値の差が0であることによって、シンチレータ素子15Lおよび15Rに入射するX線が屈折していないことを判定できる。
一方、X線P2は被検体Mを透過する際にx方向へ屈折するので、シンチレータ素子15Lおよび15Rの各々にX線が入射する領域の面積が相違する。すなわち領域EbLは領域EbRより広くなるので、画素21bLの輝度値は画素21bRの輝度値より大きくなる。屈折情報算出部9は画素21Lの輝度値と画素21Rの輝度値の差がプラスの値であることによって、シンチレータ素子15Lおよび15Rに入射するX線が左へ屈折していることを判定できる。また屈折距離Jaが大きくなるに従って、輝度値の差が大きくなるので、屈折情報算出部9は画素21Lおよび画素21Rの輝度値の差に基づいてX線P2aの屈折距離Jaを算出できる。
そして領域EcLは領域EcRより狭くなるので、画素21cLの輝度値は画素21cRの輝度値より小さくなる。屈折情報算出部9は画素21Lの輝度値と画素21Rの輝度値の差がマイナスの値であることによって、シンチレータ素子15Lおよび15Rに入射するX線が右へ屈折していることを判定し、輝度値の差の値に基づいてX線P2bの屈折距離Jbを算出する。このように屈折情報算出部9は1枚のX線画像Aにおける同一のユニットUnに属する各画素21の輝度値に基づき、y方向に延伸するファンビーム状に制限されたX線3aの各々について、x方向における屈折情報を取得する。そして取得した屈折情報に基づいて、散乱画像再構成部10は被検体MのX線小角散乱画像を再構成する。
実施例2に係るX線検出器5ではシンチレータ素子15が千鳥配置されるので、画素21の各々もシンチレータ素子15に合わせて千鳥配置する必要がある。一方、実施例2の変形例に係るX線検出器5では、シンチレータ素子15が碁盤目状であっても1回のX線撮影で被検体MのX線小角散乱画像を生成できる。すなわち画素21が碁盤目状に配列される一般的な構成であっても実施例2に係る効果を奏することができる。
但し実施例2ではシンチレータ素子15を千鳥配置するので、x方向における、シンチレータ素子15Aの右端の座標とシンチレータ素子15Bの左端の座標とを一致させることができる。そのためX線P1がシンチレータ素子15Aおよび15Bに均等に入射するような、X線検出器5の初期位置を設定することが容易となる。またX線画像Aを撮影する場合、X線P1が入射する領域はシンチレータ素子15Aおよび15Bの各々の半分に相当するので、被検体MのX線小角散乱画像を生成するために行う画像生成部8の演算処理が容易になる。
(5)上述した実施例3において、X線検出器5に入射するX線3aはx方向およびy方向の各々において2以上のシンチレータ素子15に入射する構成となるように初期位置を定めているが、これに限られない。すなわちX線3aがX線検出器5に入射する領域Hは、x方向およびy方向の各々において、2以上のシンチレータ素子15の各々に外接する構成であってもよい。
このような実施例3の変形例に係る、X線検出器5の構成の一例を説明する。図15(a)に示すように、X線検出器5に設けられるシンチレータ素子15の各々は鉤形となっている。そして2行2列に配列されたシンチレータ素子15a〜15dがそれぞれ凹部を中央部CHに向けてなるユニットUnが、x方向およびy方向に連なっている。シンチレータ素子15a〜15dの各々に接する画素21a〜21dの形状についてはシンチレータ素子15と同じ鉤形であってもよいし、実施例3と同様に正方形であってもよい(図9(b)参照)。ここではシンチレータ素子15a〜15dの形状は鉤形であり、画素21a〜21d形状は正方形である構成を例にとって説明する。
X線検出器5の初期位置については、屈折せず直進するX線3aが入射する領域Hと、同一のユニットUnに属するシンチレータ素子15a〜15dの各々とが接するように設定される。領域HはユニットUnの中央部CHに位置しており、x方向およびy方向の各々において、2つのシンチレータ素子15に接する構成となっている。x方向については2つのシンチレータ素子15aおよび15bの各々に接しており、y方向については2つのシンチレータ素子15aおよび15cの各々に接している(図15(b))。
このような実施例3の変形例についてEI−XPCiを行う場合、実施例3と同様に初期位置においてX線3aの1回照射し、X線画像Aの撮影を行う。X線3aが屈折しない場合、図15(b)に示すように、領域Hはシンチレータ素子15a〜15dの各々に外接する位置にある。そのためシンチレータ素子15a〜15dの各々にはX線3aが入射しないので、画素21a〜21dの輝度値はいずれも0である。
X線3aが被検体Mの透過によって屈折した場合、屈折した方向のシンチレータ素子15にX線3aが入射する。一例としてxy平面において左上へX線3aが屈折した場合、図15(c)に示すように領域Hの位置は左上へ変位する。この場合、領域Hは右下にあるシンチレータ素子15dと重複しない一方、シンチレータ素子15a〜15cと一部重複する。
図15(c)に示す状態において、領域Hとシンチレータ素子15bとが重複する領域Hbの面積は、X線3aがy方向に屈折する距離Jbに比例する。領域Hとシンチレータ素子15cとが重複する領域Hcの面積は、X線3aがx方向に屈折する距離Jaに比例する。領域Hとシンチレータ素子15aとが重複する領域Haの面積は、屈折距離JaおよびJbに応じて変化する。シンチレータ素子15a〜15cにX線3aが入射することにより、画素21dの輝度値は0である一方、画素21a〜21cの輝度値は入射するX線量に応じた値となる。
屈折情報算出部9は画素21a〜21dのうち、輝度値が0でない画素21の組み合わせに基づいてX線3aの屈折する方向を判定する。そして輝度値の各々に基づいて、x方向におけるX線3aの屈折距離Jaと、y方向におけるX線3aの屈折距離Jbとを算出する。そして散乱画像再構成部10はX線画像Aにおいて算出されたX線3aの屈折情報に基づいて、被検体MのX線小角散乱画像を生成する。
このような実施例3の変形例では、屈折することなく直進するX線3aの入射範囲が、x方向およびy方向の各々において2以上のシンチレータ素子15と外接するように構成される。この場合、画素21の輝度値の初期値は0であるので、実施例3のように各画素21の輝度値の差分をとる演算を行うことなく、屈折距離Jaおよび屈折距離Jbを算出できる。従って、X線小角散乱画像を生成するための演算処理をより単純化できる。
なお、このような変形例は実施例3に限られず、他の実施例および変形例に適用できる。一例として試料マスク7を透過するX線3aがファンビーム状である、実施例2の変形例に適用する構成を図15(d)に示している。試料マスク7によって、y方向に延伸するファンビーム状に制限されたX線3aがX線検出器5に入射する。そしてX線3aがx方向に屈折しない場合、X線3aが入射する領域Hはx方向において2つのシンチレータ素子15Lおよび15Rの各々に外接するようにX線検出器5の初期位置が設定される。
X線3aが屈折しない場合、領域Hとシンチレータ素子15Lおよび15Rと重複しないので、シンチレータ素子15Lに接する画素21L、およびシンチレータ素子15Rに接する画素21Rはいずれも輝度値が0である。一方でX線3aがx方向に左へ屈折する場合、領域Hが左へ移動するのでX線3aの一部がシンチレータ素子15Lに入射する(図15(e))。X線3aがシンチレータ素子15Lに入射する領域ELの面積はX線3aの屈折距離Jaに応じて大きくなるので、屈折情報算出部9は画素21Lの輝度値の大きさに基づいて、屈折距離Jaを算出できる。
X線3aがx方向に右へ屈折する場合、X線3aの一部がシンチレータ素子15Rに入射するので、屈折情報算出部9は画素21Rの輝度値に基づいて、屈折距離Jbを算出できる。この場合、画素21Lおよび21Rの輝度値の初期値はいずれも0であるので、各画素21の輝度値の差分をとる演算を行うことなく、x方向におけるX線3の屈折方向と屈折距離とを算出できる。従って、x方向における被検体Mの屈折コントラスト像を映すX線小角散乱画像を再構成するための演算処理をより単純化できる。
(6)上述した各実施例では、X線検出器5は1層構造であったがこれに限ることはなく、2層以上の構造であってもよい。2層構造である場合は図16(a)に示すように、遮光壁17の設けられる位置がxy平面に沿ってずれるように2つのX線検出器5を積層させる。このように複数のX線検出器5を積層させることによって、複数のX線検出器5に設けられるシンチレータ素子15は、X線を検出できない遮光壁17の範囲を互いに補うように位置する。
従って、X線検出器5が1層構造である場合、遮光壁17に入射するX線P3はシンチレータ素子15によってシンチレータ光に変換されないので、X線P3は検出されることなくX線検出器5を通過する。そのため遮光壁17の設けられる領域はX線を検出できない盲点とも呼ぶべき領域となる(図16(b))。一方、X線検出器5が2層以上の構造である場合、1層目のX線検出器5において遮光壁17を通過したX線P3は2層目以降のX線検出器5においてシンチレータ素子15へ入射する。従って、図16に示すような検出器の場合、1層目でX線屈折コントラスト像を取得し、2層目以降のX線検出器でX線吸収像を取得することができる。あるいは、1層目のX線検出器と2層目のX線検出器との位置関係が異なることを利用し、X線検出器の各々を動かすことなく、お互いの画像を演算することで、X線屈折コントラスト像を取得することが可能となる。
このような変形例(6)に係るX線検出器では、1層目のX線検出器5におけるシンチレータ素子15の配列パターンと、2層目のX線検出器5におけるシンチレータ素子15の配列パターンとを、x方向にD4の距離ずれるように2つのX線検出器5を積層させることもできる。この場合、2層構造のX線検出器5に対してX線を照射した場合、2層目のX線検出器5において取得される画像情報は、1層目のX線検出器5をx方向にD4の距離を移動させてからX線を照射した場合に取得される画像情報と一致する。
従って、変形例(6)に係るX線検出器では、X線検出器5を移動させずに撮影した場合のX線画像情報と、X線検出器5をx方向にD4の距離だけ移動させて撮影した場合のX線画像情報とを、1回のX線照射によって取得できる。すなわち、実施例1に係るX線検出器5を2つ用いることによって、X線検出器5と試料マスク7とを相対的に移動させることなく、1回のX線照射によってX線小角散乱画像を好適に撮影できるという、実施例2に係るX線検出器5の効果を奏することが可能となる。
なお、複数のX線検出器5をz方向に積層させる構成(積層構造)を有する各変形例において、1層目のX線検出器5とは、積層された複数のX線検出器5のうち、X線管3からの距離が最も近いX線検出器5を意味する。以下、1層目のX線検出器5に設けられる各構成については符号Aを番号の後に付し、2層目のX線検出器5に設けられる各構成については符号Bを番号の後に付すことによってそれぞれを区別することとする。
(7)上述した各実施例では、X線をシンチレータ素子などで光に変換し、さらに光を電気信号に変換する間接変換型のX線検出器を用いる構成を例として説明したが、本発明に係るX線検出器の構成は、X線を直接電気信号に変換する直接変換型のX線検出器においても適用できる。すなわち各実施例に係る構成において、シンチレータ素子の代わりにa−Se(アモルファス・セレン)などで構成され、X線を電荷に変換するX線変換素子を用いる。
そして遮光壁の代わりに電荷の散乱を遮蔽する溝部を格子状に形成させることによって、直接変換型のX線検出器においても本発明の効果を得ることができる。このような変形例(7)に係る直接変換型のX線検出器において溝Fは、本発明における遮蔽部に相当する。なお、間接変換型のX線検出器において、遮蔽壁17の代わりに溝部でシンチレータ素子15を区画する構成であってもよい。
(8)上述した各実施例において、X線吸収材R1のピッチ長さG、X線透過材の長さN、シンチレータ素子15の長さB、シンチレータ素子15のピッチ長さTの各々は、各実施例において定めた長さに限ることはなく、X線撮影に係る条件に応じて適宜変更してよい。また実施例1においてX線検出器5を移動させる距離Cについても適宜変更してよい。
(9)上述の変形例(6)の構成では、シンチレータ層11に遮光壁17が設けられたX線検出器を2つ積層させる構成となっていたが、本発明はこの構成に限られない。すなわち図20(a)に示すように、特に2層目以降のX線検出器5Bにおいて、シンチレータ層11の遮光壁17を省いた構成とすることもできる。なお、変形例(9)に係るX線検出器5の各々は、各実施例の構成について適応することができる。このような構成とすることで、装置構成はより単純となるので、より安価なX線検出器を提供できる。
なお、上述のような、積層構造を有する実施例および変形例において、2層目のX線検出器5Bに設けられる画素21Bの各々は、1層目のX線検出器5Aに設けられる遮光壁A17の各々の位置に対応するように配置されることが好ましい。具体的には、画素21Bの各々における光電変換素子の中心軸21mは、遮光壁17Aの中心軸17mと一致していることがより好ましい。
シンチレータ素子15Bによってシンチレータ光Wに変換されるX線とは、X線検出器Aによって検出されることなくX線検出器5Bに入射するX線、すなわちX線検出器Aにおいて遮光壁17Aに入射するX線P3である。そのため、画素21Bの光電変換素子を遮光壁A17の各々の位置に対応するように配置することにより、X線検出器5Bにおいて変換されるシンチレータ光Wは、より確実に各画素21Bの中心に近い位置で検知される。その結果、X線検出器5Bにおいて、より正確な画像情報を取得できる。
(10)上述のような、積層構造を有する各変形例において、各々のX線検出器5における画素21のピッチは同一となっていたが、本発明はこの構成に限られない。すなわち図20(b)に示すように、2層目のX線検出器5Bにおける画素21Bのピッチを1層目のX線検出器5Aにおける画素21Aのピッチより大きくしてもよい。
このような変形例(10)に係る構成において、遮光壁17Aを有する1層目のX線検出器5Aでは、画素21Aのピッチがより小さい。そのため、X線検出器5Aにおいて、X線小角散乱の情報を含む、より精密な画像情報を取得できる。一方で画素21Bのピッチが比較的大きい。そのため、X線検出器5Bにおいて情報量の過多による処理時間の長期化を回避できるので、X線画像の取得に要する時間を短縮できる。また、X線検出器5Bにおいて装置構成がより単純となるので、装置の製造に要するコストをより低くできる。
(11)上述の各実施例では、試料マスク7のX線透過材R2を透過したX線3aは、X線検出器5に入射する場合に遮光壁17とシンチレータ素子15との両方に跨がって入射するように構成されている。一例として実施例1では図4(a)に示すように、X線透過材R2を透過するX線3aのうち被検体Mを透過しないX線P1は、遮光壁17およびシンチレータ素子15へ均等に入射するように、試料マスク7およびX線検出器5の初期位置が予め定められる。
しかしX線3aがX線検出器5へ入射する領域はこのような構成に限られない。すなわち図21(a)に示すように、試料マスク7によってy方向に延びるファンビーム状に制限されたX線3aが、y方向に延びる遮光壁17へ入射するように、試料マスク7およびX線検出器5の初期位置を定めてもよい。この場合、X線検出器5にX線3aが入射する領域のパターン(自己像の縞のパターン)は、X線検出器5に設けられる遮光壁17の形成パターンと略一致している。すなわち、屈折することなく入射するX線3aの入射領域H1の各々は、x方向において隣接しているシンチレータ素子15の各々に外接するように、試料マスク7およびX線検出器5の初期位置が設定される。そのため、x方向へ屈折するX線X線3aの入射領域H2は、その一部がシンチレータ素子15と重複する。
そして積層構造を有する実施例および変形例について、1層目のX線検出器5Aに変形例(11)の構成を適用することにより、X線吸収量に基づく通常のX線画像と、X線散乱量に基づくX線小角散乱画像とを取得できる。具体的にはX線検出器5AにおいてX線小角散乱画像の情報を取得しつつ、X線検出器5Bにおいて通常のX線画像情報を取得できる。
すなわち図21(b)に示すように、試料マスク7のX線透過材R2を透過するX線3aのうち、x方向に屈折しないX線P1は、シンチレータ素子15Aに入射することなく遮光壁17Aに入射する。そのためX線P1はX線検出器5Aを通過してシンチレータ素子15Bにおいてシンチレータ光Wに変換され、画素21Bに検出される。
一方、被検体Mを通過することなどによってx方向に屈折したX線P2は、x方向における屈折距離Jaに応じてシンチレータ素子15Aに入射し、変換されたシンチレータ光は画素21Aに検出される。X線P2のうち大部分はX線検出器5Aを通過して画素21Bに検出される。従って、画素21AによってX線3aの屈折距離Jaに関する情報が得られ、画素21BによってX線吸収量の情報が得られる。そのため、変形例(11)に係る構成により、通常のX線画像とX線小角散乱画像とを同時に取得できるX線検出器を実現できる。
(12)上述の変形例(11)に係る構成において、図21(a)では屈折しないX線が入射する領域H1のx方向におけるピッチHpは、シンチレータ素子15のx方向におけるピッチTと一致する構成となっている。しかし、入射領域H1のピッチHp、すなわちX線が試料マスク7を透過することによってできる自己像の縞のピッチは、シンチレータ素子15のピッチTと異なっていてもよい。特に図22(a)に示すように、入射領域H1のピッチHpはシンチレータ素子15のピッチTより長くなるように、試料マスク7およびX線検出器5を構成することが好ましい。
図21(a)に示すような、ピッチHpとピッチTとが一致する構成では、X線3aの屈折方向によっては正確なX線小角散乱画像を得ることが困難な場合が考えられる。すなわち図22(b)に示すように、異なるX線透過材R2を透過したX線P2aおよびX線P2bが、被検体Mを透過することによってそれぞれ異なる方向に屈折し、同じシンチレータ素子15Aに入射することがある。この場合、当該シンチレータ素子15Aに接する画素21Aが検出する情報に基づいて、X線P2aの屈折距離JaとX線P2bの屈折距離Jbの情報とを区別することはできない。その結果、正確なX線小角散乱画像を取得することが困難となる。
そこで、変形例(12)のように、自己像の縞のピッチHpをシンチレータ素子15のピッチTより長くなるように試料マスク7およびX線検出器5を構成させることにより、異なるX線3aのビームが同一のシンチレータ素子15へ入射することを、より確実に回避できる(図22(c))。その結果、X線P2aの屈折距離JaとX線P2bの屈折距離Jbの情報とを正確に検出できるので、より正確なX線小角散乱画像を取得できるX線検出器5を実現することが可能となる。
(13)上述の変形例(11)では、試料マスク7によってy方向に延びるファンビーム状に制限されたX線3aが、y方向に延びる遮光壁17へ入射する構成となっているがこれに限ることはない。すなわち図23(a)に示すように、y方向に延びるファンビーム状のX線3aが、y方向に延びるシンチレータ素子15へ入射する構成としてもよい。
変形例(13)に係る構成において、自己像の縞のパターンはシンチレータ素子15の配列パターンと略一致している。すなわち、屈折することなく入射するX線3aの入射領域H1の各々は、x方向において隣接している遮光壁17の各々に外接するように、試料マスク7およびX線検出器5の初期位置が設定される。そのため、x方向へ屈折するX線X線3aの入射領域H2は、その一部が遮光壁17と重複する。
そして積層構造を有する実施例および変形例について、1層目のX線検出器5Aに変形例(13)の構成を適用することにより、デュアルエナジーX線撮影とX線小角散乱画像の撮影とを同時に実行できる。すなわち図23(b)に示すように、試料マスク7のX線透過材R2を透過するX線3aのうち、x方向に屈折しないX線P1は遮光壁17Aに入射することなくシンチレータ素子15Aに入射する。
そのためX線P1のうち、低エネルギーのX線Prはシンチレータ素子15Aを透過できずにシンチレータ光Wに変換され、画素21Aによって検出される。そしてX線P1のうち高エネルギーのX線Psは、X線検出器5Aを透過してシンチレータ素子15Bにおいてシンチレータ光Wに変換され、画素21Bによって検出される。すなわちx方向に屈折しないX線P1に対して、変形例(13)に係るX線検出器5は全体としてデュアルエナジー型のX線検出器として作用する。
一方、被検体Mを通過することなどによってx方向に屈折したX線P2は、x方向における屈折距離Jaに応じてシンチレータ素子15Aに入射し、変換されたシンチレータ光は画素21Aに検出される。従って、隣接する画素21A間の演算によってX線3aの屈折距離Jaに関する情報が得られ、当該情報に基づいてX線小角散乱画像を生成できる。すなわち変形例(11)に係る構成により、デュアルエナジーX線撮影によるX線画像と、X線小角散乱画像とを同時に取得できるX線検出器を実現できる。
(14)また、積層構造を有する上述の変形例では、シンチレータ素子15Aおよび遮光壁17Aがy方向に延伸する構成であったがこれに限られない。すなわち図24(a)に示すように、x方向およびy方向の各々に並ぶ二次元マトリクス状に遮光壁17Aを配設してもよい。そして、y方向に延びるファンビーム状のX線3aがX線検出器5Aに入射する領域Hの各々は、x方向についてシンチレータ素子15Aおよび遮光壁17Aに跨がるように試料マスク7およびX線検出器5の初期位置を設定する。
このような変形例(14)に係る構成において、X線検出器5AのX線入射面は図24(a)に示すように、領域F1と領域F2とがy方向に交互に並ぶ構造となる。領域F1とは、遮光壁17Aとシンチレータ素子15Aとがx方向に交互に並んでいる領域である。領域F2とは、遮光壁17Aが設けられずシンチレータ素子15Aのみが設けられている領域である。
領域F1における断面図、すなわち図24(a)のA−A矢視断面図は、図4(a)に示すような実施例1と同様の構造となる。そのため領域F1に入射するX線3aは、x方向に屈折する方向および距離に応じて、シンチレータ素子15Aへ入射する線量が変化する。その結果、領域F1においてX線小角散乱の情報を取得できる。
一方、領域F2における断面図、すなわち図24(a)のB−B矢視断面図は、図24(b)に示すような構造となる。そのため、領域F2に入射するX線3aのうち、比較的低エネルギーのX線Prは画素21Aによって検出され、比較的高エネルギーのX線Psは画素21Bによって検出される。その結果、領域F2においてデュアルエナジーX線撮影によるX線画像の情報を取得できる。このように、変形例(12)に係る構成では、y方向にそれぞれ隣接している、領域F1における画素21と領域F2における画素21とを1ユニットとすることにより、各ユニットにおける画素値に基づいて、デュアルエナジーX線撮影によるX線画像と、X線小角散乱画像とを同時に取得できる。
(15)上述の実施例4などにおいて、熱膨張や振動などに起因する、試料マスク7とX線検出器5との相対位置のズレを検出する構成を説明したが、相対位置のズレを検出する構成はこれに限られない。すなわち、図25(a)に示すように、y方向に延びる自己像の縞H(X線の入射領域)とy方向に延びるシンチレータ素子15と重複する領域が、x方向に並ぶシンチレータ素子15の各々について周期的に変化する構成であってもよい。図25(a)では、x方向に並ぶシンチレータ素子15a〜15jについて、自己像の縞Hと重複する領域の広さが周期的に変化する構成を示している。
このような変形例(15)に係る構成の詳細について、図25(b)を用いて説明する。ここで、シンチレータ素子15の各々において、自己像の縞Hと重複している領域の割合を「重複率」として以下、説明する。図25(b)は図25(a)において太い点線で示す領域Qを拡大した図である。
変形例(15)では、自己像の縞Hの幅Hbとシンチレータ素子15の幅Bとを等しくなる一方、自己像の縞HのピッチHpとシンチレータ素子15のピッチTとが異なるように構成されている。すなわち、x方向に隣接する縞H同士の間隔Hcと、x方向に隣接するシンチレータ素子15同士の間隔Cとは異なる。その結果、シンチレータ素子15aにおける重複率とシンチレータ素子15bにおける重複率とはそれぞれ異なる。
一例として、シンチレータ素子15同士の間隔Cはシンチレータ素子15のx方向の幅Bと等しく、縞H同士の間隔Hcは縞Hのx方向の幅Hbの0.9倍に等しいものとする。この場合、シンチレータ素子15のピッチTはシンチレータ素子15の幅Bの2倍に等しく、縞HのピッチHpはシンチレータ素子15の幅Bの1.9倍に等しい。
そのため、x方向に隣接するシンチレータ素子15同士の間において、重複率は10%変化する。すなわちシンチレータ素子15aの重複率が0%である場合、シンチレータ素子15bの重複率は10%となる。従って、シンチレータ素子15の重複率は、x方向にならぶ6列のシンチレータ素子15(シンチレータ素子15a〜15f)において、0%から50%に変化する。
そしてシンチレータ素子15f以降は、縞Hの間隔Hcを縞Hの幅Hbの1.1倍に等しいものとする。そのため、シンチレータ素子15g〜15kにおいて、シンチレータ素子15の重複率は40%から0%へと変化する。このようなシンチレータ素子15a〜15kにおける重複率の変化を繰り返すように、シンチレータ素子15k以降も間隔Hcを変化させる。
なお、重複率を周期的に変化させる構成であれば、間隔Hcと間隔Cとの比率、および間隔Hcを変化させるパターンは適宜変更してもよい。一例として、常に間隔Hcが間隔Cの0.9倍に等しい構成では、x方向に並ぶ11列のシンチレータ素子15において重複率は0%から100%へ変化する。そして次の10列のシンチレータ素子15において、重複率は90%から0%へ変化する。このように自己像の縞Hおよびシンチレータ素子15が等間隔に並ぶ構成であっても、0%から100%を経由して0%へ戻るという重複率の周期的な変化を実現できる。
変形例(15)に係る重複率の周期的な変化は、試料マスク7とX線検出器5との相対位置がズレることによって位置が変化する。例えば試料マスク7に対するX線検出器5の相対位置がxy平面に沿って回転するようにずれた場合、自己像の縞Hとシンチレータ素子15との位置関係は図25(c)に示す通りとなる。図25(a)に示す初期位置では、y方向の座標がそれぞれ異なる領域F1および領域F2において、重複率の周期的な変化はいずれも同じである。
しかし、図25(c)に示すような、相対位置が回転するようにずれた状態では、領域F1における重複率の周期的な変化と領域F2における重複率の周期的な変化はそれぞれ異なる。そのため、領域F1およびF2における重複率を比較することにより、回転方向のズレを検出できる。
なお、相対位置がxy平面に沿って平行方向にずれた場合、図25(a)に示す初期位置と比較して、領域F1およびF2における重複率はいずれも同じ値だけ変化する。また、相対位置がz方向にずれた場合、重複率が変化する周期の長さが初期状態と比べて異なる。従って、y方向の座標がそれぞれ異なる領域F1および領域F2において、重複率の周期的な変化を算出することにより、試料マスク7とX線検出器5との相対位置のズレを正確に検出し、当該相対位置のズレがX線画像に与える影響を補正できる。
そのため、変形例(15)に係る構成では、相対位置のズレがX線画像に与える影響をより迅速かつ容易に補正し、より精度の高いX線画像を取得することができる。なお、この例ではシンチレータ素子15の間隔Cを一定として縞Hの間隔Hcを変化させることで重複率を周期的に変化させたが、縞Hの間隔Hcを一定としてシンチレータ素子15の間隔Cを変化させる構成でも同様の効果が得られる。また、画素21の領域全体で重複率が変化する例と用いて説明したが、画素21の一部領域のみ重複率が変化する構成とすることも可能である。特に画素領域の両端に重複率が変化する領域を設けることで被検体注目部分外にて、相対位置のズレを検出可能となる。
(16)上述の実施例の構成では、1層目のX線検出器5に設けられる遮光壁17の配列ピッチと、2層目以降のX線検出器5に設けられる遮光壁17の配列ピッチとが同一となっていたが、本発明はこの構成に限られない。図26に示すように1層目のX線検出器5Aにおける遮光壁17、すなわち遮光壁17Aの配列ピッチと、2層目のX線検出器5Bにおける遮光壁17、すなわち遮光壁17Bの配列ピッチとを違えるようにしてもよい。
この場合、X線検出器5Aにおけるシンチレータ素子15Aの配列ピッチおよび画素21Aの配列ピッチは、遮光壁17Aの配列ピッチと同一となる。同様に、X線検出器5Bにおけるシンチレータ素子15Bの配列ピッチおよび画素21Bの配列ピッチは、遮光壁17Bの配列ピッチと同一となる。従って、画素21Aの配列ピッチと画素21Bの配列ピッチは、互いに異なることになる。
特に、遮光壁17Bの配列ピッチを遮光壁17Aの配列ピッチよりも大きくすれば、図26に示すように、X線源が有するX線焦点pと遮光壁17Aとを結ぶ直線上に遮光壁17Bを配置することができる。X線が放射状に広がる場合、シンチレータ層11Bを透過するX線の広がりは、シンチレータ層11Aを透過したときの広がりよりも広くなる。
したがって、図26はこの事情に即して、X線のビーム幅に合わせて1層目のX線検出器5Aにおけるシンチレータ層11Aの幅を狭く、2層目のX線検出器5Bにおけるシンチレータ層11Bの幅を広くしている。そして遮光壁17の配列ピッチもX線ビーム幅に即して、1層目のX線検出器5Aにおける遮光壁17Aの配列ピッチを狭く、2層目のX線検出器5Bにおける遮光壁17Bの配列ピッチを広くしている。
具体的には、変形例(16)の構成において、遮光壁17Aのピッチと遮光壁17Bのピッチとの比は、X線管3から照射されたX線3aがシンチレータ層11Aに到達したときの広がり幅と、X線管3から照射されたX線3aがシンチレータ層11Bに到達したときの広がり幅との比に等しくなるように構成されていることがより好ましい。
したがって、放射状に広がるX線ビームからすれば、遮光壁17Bは、遮光壁17Aを延伸したように配列されていることになる。本変形例に係るX線検出器5の各々は、各実施例の構成について適応することができる。なお、各々のX線検出器5について、画素21の配列ピッチを一定にしながら、遮光壁17の配列ピッチを変えるようにすることもできる。
(17)上述の実施例では、遮光壁が互いに平行に配置された構成となっていたが、本発明はこの構成に限られない。図27に示すように、シンチレータ層11の中心から端部に向かうに従って次第に傾斜するように遮光壁を構成するようにしても良い。なお図27において、画素21を含む出力層13の構成は省略して図示している。図27の場合、X線源の焦点pを通過する直線に沿うように遮光壁17が伸びた構成をしている。これにより、X線3aが隣接する画素21の両方で検出されることを回避できるので、精度の高いX線検出器が提供できる。なお、図27のような遮光壁17の構成は、各実施例に係るX線検出器5の構成について適応できる。本発明に係る遮光壁17は、格子の中央部から端部に向かうに従って次第に傾斜するように構成されている。
(18)上述の各実施例では、隣り合う画素は端部が接した構成となっていたが、本発明はこの構成に限られない。図28に示すように、遮光壁17が画素21の側面まで延伸した構成とすることもできる。図28において画素21は、遮光壁17の格子により形成されるセルの内部に位置している。このような変形例(18)の構成により、互いに隣り合う画素21を確実に光学的に隔絶できる。また、遮光壁17が配置される領域に画素21の光電変換素子が配設されないので、画素21の光電変換素子は無駄なくシンチレータ光Wを検出できる。
なお、変形例(18)の構成は遮光壁17の格子の内部に画素21を配置させる構成に限ることはない。すなわち互いに隣り合う画素21の光電変換素子が光学的に隔絶できる構成であれば、各々の画素21の全体を遮光壁17で隔絶させなくともよい。その一例として、画素21の光電変換素子が遮光壁17の格子によって形成される区画の内部に位置している構成であればよい。本変形例に係るX線検出器5の各々は、各実施例の構成について適応できる。
(19)上述の各実施例において、本発明の遮光壁17はX線や紫外線を用いたリゾグラフィー(LIGA)で製造してもよい。このような方法を用いることにより、より精密かつ複雑な形状の遮光壁17を容易に製造できる。特に変形例(17)に係る構成の遮光壁17を製造する場合、LIGAを用いることがより好ましい。すなわちシンチレータ層11の中心から端部に向かうに従って次第に傾斜するようにX線などを照射させることにより、シンチレータ層11の中心から端部に向かうに従って次第に傾斜するように構成された遮光壁17を容易に製造できる。
(20)上述の各実施例において、被検体Mを試料マスク7とX線検出器5との間に置く構成を例にとって説明したが、被検体MをX線管3と試料マスク7との間に置いてもよい。このような構成では、拡大率をより高くすることができる。そのため非破壊検査用途において、より有用なX線撮影装置を提供できる。