JP6454850B2 - 振動型刃物研磨器及びこれを用いた刃物の研磨方法 - Google Patents

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Description

本発明は、振動型刃物研磨器、および、これを用いた刃物の研磨方法に関する。
一般に、包丁やナイフ、鋏のような刃物100は、例えば包丁であれば図13のように、刃先110と峰120および表面130と裏面140および先端150と中子160を有し、刃先110は、中子160側の終端152から先端150にかけて曲線又は直線状の刃線Lを描く。切れ味を蘇生させるため、刃物100を一般に峰120から刃先110に向けて研磨し、刃線Lに沿って刃先110側に鋭利な小刃112を刃付けする。
刃物100の切れ味は半永久的に持続するものではなく、研ぎ(研磨)のメンテナンスをしてその切れ味を蘇生させる必要がある。例えば包丁の場合、使用後の汚れや水気の拭き取りは毎回事であるが、少なくとも月に一度はしっかりした手入れ(研ぎ)を行う必要がある。刃先110の近傍において、小刃112を砥石で均一な平面にして刃先110側の断面が一定角度の直線状となるように砥ぐことにより鋭利な先端(刃先110)を得ることができ、理想的な切れ味を完成させることができる。
本格的に刃物を研ぐ場合は、例えば回転砥石を用い、この砥石が峰120から刃先110方向に回転するように回転砥石に刃物100を当てて刃先110を研磨する。しかし、刃先110は、一般に終端152から先端150にかけて長手方向に描く刃線Lは曲線となっており、刃先110の断面が一定角度になるように研磨するのは、職人でないと難しい。あるいは、回転砥石のような動力を用いた大型のものでなく、コンパクトな砥石を用いて同様に刃物100を研磨することもできるが、刃物100を峰120から刃先110方向に砥石に当てて刃先110を研磨する度毎に刃物100を砥石から離す必要があり、この場合も刃先110の断面が一定角度になるように研磨するのは、職人以外は難しい。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、以下便宜のため、刃物100の峰120から刃先110に向かう方向を「順方向」と、これとは逆の刃先110から峰120に向かう方向を「逆方向」ともいうものとする。
一般人でも手軽に刃物を研ぐ道具として、研ぎ棒や簡易シャープナーのようなハンディーな刃物研ぎ器も市販されているが、これらは一時しのぎに刃先110の切れ味を回復させることはできるが、上記のような砥石研ぎの場合のように、刃先110の断面を一定角度にし、刃先110の微細構造を新品刃物のような整然とした状態に再生することはできない。特に、簡易シャープナーを用いて刃先110を砥ぐ場合、刃先110の微細構造は粗雑に荒れてしまうため、一時的な切れ味は得られるものの、刃先110を痛めてしまう結果となる。
また、特許文献1乃至3には、モーターを内蔵させたグリップ型本体の先方に砥石や研磨体を突出させ、あるいは研磨面を装着して、当該モーターによりこれを微細振動させるタイプのハンディーな刃物研ぎ器が開示されている。これら特許文献1乃至3に記載の刃物研ぎ器は、グリップ型本体の先方に突出させた砥石、研磨体等を刃先110に当てて振動させ、刃線Lに沿ってこれを移動させて、刃線L全体にわたって刃先110を研磨する。
例えば、特許文献1には、「グリップ型本体と、この本体内に内蔵されたモーターと、前記モーターの駆動によって微細振動運動する研磨体とを有し、前記研磨体に研磨面を装着してなる刃物研ぎ器」が開示されており、研磨面に触れても怪我することなく、小型で簡素な刃物研ぎ器を提供している。しかし、特許文献1に記載の刃物研ぎ器については、グリップ型本体の先端に装着した研磨面が微細振動するというだけで、刃先110を刃線Lに沿って一定角の断面を得るように研磨して、理想的な刃先110を完成させるという課題には言及されていない。
また、特許文献2には、特許文献1に記載の構成と類似の構成を持つ刃物研ぎ器が開示されているが、特許文献2に記載の刃物研ぎ器では、モーターの回転を動力伝達機構により変換して、研磨体がグリップ型本体に対して直線往復振動をするように構成されている。しかし、特許文献2に記載の刃物研ぎ器により刃先110を研磨する際、研磨面を装着した研磨体は、刃線Lに対して平行に振動するように構成されており、順方向に刃先110を研ぐという、従来から職人が砥石を用いて行ってきた刃先110の研磨方法を再現することはできない。
これに対して、特許文献3に記載の研磨機は、特許文献2に記載の構成と類似の構成を用いて、刃先110を研磨する際、研磨体が刃線Lに対して垂直に往復振動するように構成されている。すなわち、特許文献3に記載の研磨機は、その先方に装着した研磨体が、峰120と刃先110間を往復振動する。しかし、研磨体を刃先110から離さずに刃線Lに沿って移動させて研磨を行うと、刃先110の研ぎの方向は、順方向と逆方向が半々に混ざってしまい、やはり上記従来のような正統的な研磨方法を再現することはできない。また、上記のように、研磨体を刃先110から離すと刃先110の断面が一定角度になるように研磨するのは困難であり、往復振動の周波数は20〜300HZであるので、そもそも研磨体を順方向にのみ刃先110に当てるようにすることは不可能である。
実用新案登録第3092580号公報 特開平10−6192号公報 特開2011−131368号公報
そこで本発明は、切れ味が低下した刃物の切れ味を容易に回復・蘇生させる、研磨面の振動を利用した簡易な研ぎ方法を確立し、当該研ぎ方法を実現する手軽で簡易な構成の振動型刃物研磨器を提供することを目的とする。
本発明に係る振動型刃物研磨器は、表面を有する本体と、前記本体に設けた振動機構と、
前記振動機構と接続され、前記本体の表面外部に研磨面を露出させた、該研磨面を有する研磨体と、を含み、前記露出した研磨面を含む平面内で該研磨面が、始点(S)から終点(E)への往路(SE)及び終点(E)から始点(S)への復路(ES)からなる往復振動(SES)をするように、前記振動機構が前記研磨体を駆動する振動型研磨器であって、
前記研磨面の往復振動(SES)が、前記往路(SE)と前記復路(ES)とが異なる閉路(C)を描くことを特徴とする。
本発明に係る振動型刃物研磨器において、前記研磨体は、一方に前記研磨面を設け、他方を前記振動機構と接続した接続棒を備え、該接続棒を前記本体の表面から突出させ、該研磨面を、該本体から突出させた方向に対して平行に露出させるのが好適である。
本発明に係る振動型刃物研磨器において、前記研磨体は、一方に前記研磨面を設け、他方を前記振動機構と接続した接続棒を備え、該接続棒を前記本体の表面から突出させ、該研磨面を、該本体から突出させた方向に対して垂直に露出させてもよい。
本発明に係る振動型刃物研磨器において、前記振動機構が前記研磨体を駆動することにより前記研磨面が描く閉路(C)の往復振動(SES)は、該研磨面を含む平面内の第1方向の振動と、該研磨面を含む平面内で、第1方向とは異なる第2方向の振動と、からなることを特徴とする
本発明に係る振動型刃物研磨器において、前記振動機構は、前記第1方向に前記研磨体を周期Tの第1直線往復振動させる第1振動機構と、前記第2方向に前記研磨体を周期Tの第2直線往復振動させる第2振動機構と、から構成され、
前記振動機構が、前記第1振動機構と前記第2振動機構とを同時に駆動させることにより前記研磨体を前記始点(S)と終点(E)間で往復振動(SES)させ、いずれも周期をTとする前記第1直線往復振動と前記第2直線往復振動とを重ね合わせた該研磨体の往復振動(SES)が、往路(SE)と復路(ES)が異なる閉路(C)を描くことを特徴とする。
本発明に係る刃物の研磨方法は、刃先と峰および表面と裏面および先端と終端を備え、該刃先が該先端と該終端間で刃線Lを描き、該峰から該刃先に向かう方向を順方向とし、その反対の方向を逆方向とした刃物の該刃先を、研磨面を含む平面内で該研磨面が始点(S)と終点(E)間を往復振動(SES)をする研磨体を備えた振動型刃物研磨器により研磨する刃物の研磨方法であって、
前記研磨面の往復振動(SES)が往路(SE)と復路(ES)が異なる閉路(C)を描く、前記振動型刃物研磨器を準備するステップと、
前記刃物を所定の位置に固定するステップと、
前記往復振動(SES)の始点(S)から終点(E)へ向かう方向(D)が、前記順方向又は逆方向に向くように、前記振動型刃物研磨器の前記研磨面を前記刃先に当接させるステップと、
前記振動型刃物研磨器の前記研磨面を、前記方向(D)に沿って往路(SE)と復路(ES)が異なる閉路(C)を描く往復振動(SES)させて、前記刃先を研磨すると共に、前記刃先において前記研磨面が描く往路(SE)と復路(ES)の軌跡のうち、前記順方向に相当する軌跡が前記逆方向に相当する軌跡側に重なる方向に、前記研磨面を前記刃物の刃先の刃線Lに沿って移動させるステップと、を含む。
本発明に係る刃物の研磨方法は、刃先と峰および表面と裏面および先端と終端を備え、該刃先が該先端と該先端終端間で刃線Lを描き、該峰から該刃先に向かう方向を順方向とし、その反対の方向を逆方向とした刃物の該刃先を、研磨面を含む平面内で該研磨面が始点(S)と終点(E)間を往復振動(SES)をする研磨体を備えた振動型刃物研磨器により研磨する刃物の研磨方法であって、
前記研磨面の往復振動(SES)が往路(SE)と復路(ES)が異なる閉路(C)を描く、前記振動型刃物研磨器を準備するステップと、
前記振動型刃物研磨器を所定の位置に固定するステップと、
前記刃物の順方向又は逆方向を、前記往復振動(SES)の始点(S)から終点(E)へ向かう方向(D)に合わせて、前記刃物の刃先を前記固定した振動型刃物研磨器の前記研磨面に当接させるステップと、
前記振動型刃物研磨器の前記研磨面を、前記方向(D)に沿って往路(SE)と復路(ES)が異なる閉路(C)を描く往復振動(SES)させて、前記刃先を研磨すると共に、前記刃先において前記研磨面が描く往路(SE)と復路(ES)の軌跡のうち、前記順方向に相当する軌跡が前記逆方向に相当する軌跡側に重なる方向に、前記刃物の刃先を前記刃線Lに亘って移動させるステップと、を含む。
本発明に係る刃物の研磨方法は、上端と下端を有し、該下端から該上端方向を長手方向Yとするグリップ型本体と、前記グリップ型本体内に備えた振動機構と、下方を前記振動機構と接続させ、上方を該グリップ型本体の上端から長手方向Yに突出させた接続棒、および、該接続棒の上方に長手方向Yと平行に設けた研磨面、を有する研磨体と、を含み、
前記接振動機構を駆動させて、前記研磨面を、前記グリップ型本体の上端と該研磨面の重心との距離が長手方向Yに最短となる始点(S)(最近接点)から最長となる終点(E)(最遠接点)間で往復振動(SES)させ、該研磨面の往復振動(SES)が、往路(SE)と復路(ES)が異なる閉路(C)を描くことを特徴とする、上記振動型刃物研磨器を準備するステップと、
前記刃物の峰から刃先に向かう方向を順方向、その反対の方向を逆方向とした該刃物を固定するステップと、
前記長手方向Yを前記順方向又は逆方向に合わせて、前記振動型刃物研磨器の前記研磨面を前記刃先に当接させるステップと、
前記振動型刃物研磨器の前記研磨面を、前記長手方向Yに沿って往路(SE)と復路(ES)が異なる閉路(C)を描く往復振動(SES)させて、前記刃先を研磨すると共に、前記刃先において前記研磨面が描く往路(SE)と復路(ES)の軌跡のうち、前記順方向に相当する軌跡が前記逆方向に相当する軌跡側に重なる方向に、前記研磨面を前記刃物の刃先の刃線Lに沿って移動させるステップと、を含む。
上記のような公知文献に記載されたような直線往復振動する振動型刃物研ぎ器を含め、研磨体が本体に対して往復振動する刃物研ぎ器を用いて刃物の刃先の研磨を行うと、往復振動による研磨の最中に刃物から反作用を受け、刃先に当てる研磨前後の往復振動の軌跡は変化してしまう。さらに、研磨中に研磨体に装着した研磨面(研磨体)の当たり方によっても、その軌跡は大きく異なる。
本発明に係る刃物の研磨方法によれば、往復振動の軌跡がどんなに変化しても、刃先の刃線Lにおける刃先の各地点の研ぎ方向が必ず峰から刃先方向(順方向)になるように、意図的に往路(SE)と復路(ES)が異なる閉路(C)を描かさせる振動型刃物研磨器を刃線Lに沿って移動させるので、従来の直線往復振動する振動型刃物研ぎ器を用いる研磨方法より、刃先の切れ味の蘇生を大幅に改善することができる。
すなわち、従来の直線往復振動する振動型刃物研ぎ器を用いる研磨方法を用いても刃先の切れ味はある程度蘇生するが、蘇生度合いが低く、蘇生度合いのばらつきも大きくなる。しかし、本発明に係る振動型刃物研磨器によれば、確実に、そして大幅に刃先の切れ味を回復させることができる。
また、本発明に係る振動型刃物研磨器を用いた刃物の研磨方法によれば、コンパクトな研磨器を刃物の刃先に当てつつ、所定の方向に刃線Lに沿って移動させるだけでよいので、刃物(刃先)から振動型刃物研磨器の研磨面を離す必要がなく、刃先の断面が一定角度になるように研磨することを容易とすることができる。
(a)本発明に係る振動型刃物研磨器の斜視外観図、(b)本発明に係る別の実施形態の振動型刃物研磨器の斜視外観図。 本発明に係る振動型刃物研磨器の振動機構が描く閉路(C)の概略図。 本発明に係るグリップ型本体をもつ振動型刃物研磨器の斜視外観図。 本発明に係るグリップ型本体をもつ振動型刃物研磨器の正面図。 本発明に係る振動型刃物研磨器の短手振動機構の概略図。 本発明に係る振動型刃物研磨器の長手振動機構の概略図。 本発明に係る振動型刃物研磨器の別の実施形態の長手振動機構の概略図。 本発明に係る振動型刃物研磨器のさらに別の実施形態の長手振動機構の概略図。 本発明に係る振動型刃物研磨器の振動機構(長手振動機構+短手振動機構)の概略図。 (a)本発明の時計回り振動型刃物研磨器の長手方向を刃物表面の逆方向に合わせて研磨する場合の本発明に係る研磨方法、(b)本発明の反時計回り振動型刃物研磨器の長手方向を刃物表面の逆方向に合わせて研磨する場合の本発明に係る研磨方法、(c)本発明の時計回り振動型刃物研磨器の長手方向を刃物表面の順方向に合わせて研磨する場合の本発明に係る研磨方法、(d)本発明の反時計回り振動型刃物研磨器の長手方向を刃物表面の順方向に合わせて研磨する場合の本発明に係る研磨方法。 (a)本発明の時計回り振動型刃物研磨器の長手方向を刃物裏面の逆方向に合わせて研磨する場合の本発明に係る研磨方法、(b)本発明の反時計回り振動型刃物研磨器の長手方向を刃物裏面の逆方向に合わせて研磨する場合の本発明に係る研磨方法、(c)本発明の時計回り振動型刃物研磨器の長手方向を刃物裏面の順方向に合わせて研磨する場合の本発明に係る研磨方法、(d)本発明の反時計回り振動型刃物研磨器の長手方向を刃物裏面の順方向に合わせて研磨する場合の本発明に係る研磨方法。 実施例に係る本発明の振動型刃物研磨器の正面図。 刃物の正面概略図。 刃物の切れ味試験の模式図。 研磨前の包丁の切れ味試験結果のグラフ図。 研磨後の包丁の切れ味試験結果のグラフ図。 研磨前後の包丁の切れ味試験結果のグラフ図。
以下、図面を参照しながら本発明に係る振動型刃物研磨器及びこれを用いた刃物の研磨方法の実施形態、実施例について説明する。なお、本明細書において、「研磨」と「研ぎ」とは同一の意味で用いることとし、また、各図面を通して同一の構成要素には同一の符号を使用するものとする。

I.本発明に係る振動型刃物研磨器
図1(a)及び(b)に示すように、本発明に係る振動型刃物研磨器1は、表面(31、33、35)を有する本体30と、本体30の内部または外部に設けた(図示しない)振動機構50と、振動機構50と接続され、本体30の表面外部に研磨面12を露出させた、研磨面12を有する研磨体10と、を含み、露出した研磨面12を含む平面内で当該研磨面12が、始点(S)から終点(E)への往路(SE)及び終点(E)から始点(S)への復路(ES)からなる往復振動(SES)をするように、振動機構50が研磨体10を駆動する振動型刃物研磨器である。そして、このような構成の本発明の振動型刃物研磨器1は、研磨面12の往復振動(SES)が、上記往路(SE)と復路(ES)とが異なる閉路(C)を描くことを特徴とする。
図1(a)に示す本発明の振動型刃物研磨器1においては、研磨体10は、一方(上方)に研磨面12を設け、他方(下方)を振動機構50と接続した接続棒20を備え、接続棒20を本体30の上部表面31から突出させ、研磨面12を、本体30から突出させた方向に対して平行に露出させているので、研磨面12の本体30の上部表面31(図1(b))に対して垂直方向の往復振動(SES)が、往路(SE)と復路(ES)が異なる閉路(C)を描く。
また、図1(b)に示す本発明の振動型刃物研磨器1においては、研磨体10は、一方(上方)に研磨面12を設け、他方(下方)を振動機構50と接続した接続棒20を備え、接続棒20を本体30の上部表面31から突出させ、研磨面12を、本体30から突出させた方向(上方)に対して垂直に露出させたため、研磨面12の本体30の上部表面31に対して平行方向の往復振動(SES)が、往路(SE)と復路(ES)が異なる閉路(C)を描く。
図1(a)及び図1(b)において、本発明の振動型刃物研磨器1の本体30は円柱型であり、その表面は、上部表面31、下部表面33、側部表面35から構成されるが、本体30の形状は特に限定されず、その表面の形状も適宜選択することができる。また、図1(a)及び図1(b)において、接続棒20は上部表面31から上方に垂直に突出しているが、接続棒20を本体30から突出させる本体30の表面の位置と当該位置の表面に対する角度は、任意に選択することができる。
次に、図1(a)及び(b)では図示しなかった、本発明の振動型刃物研磨器1の本体30の内部または外部に設けた振動機構50について説明する。
本発明の振動型刃物研磨器1において、上述のような振動機構50が前記研磨体を駆動することにより研磨面12が描く閉路(C)の往復振動(SES)は、研磨面12を含む平面内の第1方向の振動と、当該研磨面12を含む平面内で第1方向とは異なる第2方向の振動と、を重ね合わせて形成することができる。
例えば、振動機構50は、図2に示すように、上記第1方向に研磨体10を周期Tの第1直線往復振動させる第1振動機構と、上記第2方向に研磨体10を周期Tの第2直線往復振動させる第2振動機構と、から構成され、振動機構50が、第1振動機構と第2振動機構とを同時に駆動させることにより研磨体10を上記始点(S)と終点(E)間で往復振動(SES)させ、いずれも周期をTとする第1直線往復振動と第2直線往復振動とを重ね合わせた研磨体10の往復振動(SES)が、往路(SE)と復路(ES)が異なる閉路(C)を描くようにすることができる。
以上のような本発明の振動型刃物研磨器1を用いて刃物を研磨する際は、往復振動(SES)をする研磨面12に刃物100の刃先110(図13参照)を当接してこれを研磨するが、例えば、本体30の下部表面33(図1(a)、図1(b)参照)を机に載置したり、壁に固着するなりして振動型刃物研磨器1を固定し、刃物100を手に持ってその刃先110を研磨面12に当接して研磨する。あるいは、刃物100を所定の位置に固定し、例えば振動型刃物研磨器1の側部表面35(図1(a)、図1(b)参照)を手で握って、その研磨面12を刃物100の刃先110に当接してこれを研磨してもよい。
なお、図1(a)及び(b)において、本体30は扁平型の円筒状としたが、その形状は上記のように特に限定されず、本体30を机上面等に固定する固定型か或は手で握るグリップ型にするか等の用途等に応じて適宜設計することができ、振動型刃物研磨器1は本体30の内部に設けても外部に設けてもよい。
次に、本発明に係る振動型刃物研磨器1の実施例について説明する。
実施例1に係る本発明の振動型刃物研磨器1は、図3及び図4に示すように、表面に上端32と下端34を有し、下端34から上端32方向を長手方向Y(第1方向)とするグリップ型本体30と、グリップ型本体30内に内蔵した振動機構50(図4)と、グリップ型本体30内部で下方24を振動機構50と接続させ、上方22をグリップ型本体30の上端32から長手方向Yに突出させた接続棒20、および、接続棒20の上方に長手方向Yと平行に設けた研磨面12、を有する研磨体10と、を含む。本実施例1における振動型刃物研磨器1のグリップ型本体30は、上記のように、その表面に上端32と下端34を有するが、手で握り易い形状に好適に設計することができ、下端34の表面を平面にして台や机の上に振動型刃物研磨器1を立てることができるようにしてもよい。
上記実施例1に係る振動型刃物研磨器1は、振動機構50を駆動させて、研磨面12を、グリップ型本体30の上端32と研磨面12の重心との距離が長手方向Yに最短となる始点(S)(最近接点)から最長となる終点(E)(最遠接点)間で往復振動(SES)させ、研磨面12の往復振動(SES)が、往路(SE)と復路(ES)が異なる閉路(C)を描くことを特徴とする。
実施例1に係る振動型刃物研磨器1において振動機構50は、例えば、長手方向Y(第1方向)に研磨体12を周期Tの第1直線往復振動させる第1振動機構と、当該研磨面12を含む平面内で、長手方向Y(第1方向)とは異なる第2方向に研磨体12を周期Tの第2直線往復振動させる第2振動機構と、から構成され、振動機構50が、上記第1振動機構と上記第2振動機構とを同時に駆動させることにより研磨体10を上記始点(S)と終点(E)間で往復振動(SES)させ、いずれも周期をTとする上記第1直線往復振動と上記第2直線往復振動とを重ね合わせた研磨体10の往復振動(SES)が、往路(SE)と復路(ES)が異なる閉路(C)を描くようにすることができる。
上記第2方向は、図3及び図4に示すように、上記露出させた研磨面12を含む平面内で、長手方向Y(第1方向)と直角となる短手方向Xであってもよく、振動機構50が、いずれも周期をTとする、長手方向Yの上記第1直線往復振動と短手方向Xの上記第2直線往復振動とを重ね合わせて上記研磨体を往復振動(SES)させ、往復振動(SES)が往路(SE)と復路(ES)が異なる閉路(C)を描くようにしてもよい。
次に、本発明に係る振動型刃物研磨器1の振動機構50の実施例について、上述のような短手振動機構と長手振動機構に分けて、それぞれ具体的に説明する。
[短手振動機構(1)]
図9に示す短手振動機構60は、発生する磁場が短手方向Xを向くように、グリップ型本体30内で下方を長手振動機構70と接続された接続棒20に直角に取り付けた磁石62と、入れ替え交互にS極又はN極となる一端と他端を有し、当該一端又は他端が、磁石62のいずれか一方の磁極と対向するようにグリップ型本体30内に配置した交流電磁石64と、から構成される。長手方向Yに上記第1直線往復振動する接続棒20に取り付けた磁石62が、当該交流電磁石64の影響により、短手方向Xに上記第2直線往復振動を行う。
[短手振動機構(2)]
図5に示す短手振動機構60は、グリップ型本体30内で下方を長手振動機構70と接続された可磁化材料からなる接続棒20と、S極又はN極となる一端と他端を有し、短手方向Xに向いた当該一端又は他端が、接続棒20と略直角に対向するようにグリップ型本体30内に配置した半波交流の電磁石66と、から構成される。長手振動機構70の駆動により、長手方向Yに上記第1直線往復振動する接続棒20の可磁化材料が半波交流の電磁石66の当該一端又は他端の磁場の影響を受けることによって、短手振動機構60は、短手方向Xに第2直線往復振動することを特徴とする。
なお、上記接続棒20の「可磁化材料」とは、例えば鉄などの金属からなる部分で、磁場が印加されると、例えば当該磁場の磁力線の方向に磁化される材料をいう。
[長手振動機構(1)]
図6又は図9に示す長手振動機構70は、長手方向YにS極とN極を有し、当該S極又はN極が、グリップ型本体30内で接続棒20の下方24と接続された棒状磁石72と、棒状磁石72のS極とN極間に3つの磁極が長手方向Yに並列して棒状磁石72に対向し、真ん中の磁極に交流電源と接続されたコイルを巻付けた交流電磁石74と、を含む。当該コイルに交流電流を流すことにより棒状磁石72を振動させ、棒状磁石72と接続棒20を介して接続した研磨体10を、長手方向Yに直線往復振動させることができる。
[長手振動機構(2)]
あるいは、長手振動機構70は、図7のように、グリップ型本体30に内蔵したモーター82と、モーター82の回転軸に取り付けた円盤84と、円盤84の縁の任意の一点と接続棒20の下方24とを結合し、円盤84の縁の一点と接続棒20の下方24間の運動を規制する規制手段86と、を含み、円盤84の回転面が短手方向Xと平行となるようにモーター82を配置し、モーター82を駆動して研磨体2を長手方向Yに直線往復振動させるようにしてもよい。図7において、上記規制手段86は、円盤84の縁の一点と接続棒20の下端24とを結合する棒であり、円盤84の縁の一点と接続棒20の下方24のそれぞれに対して回動自在に固定されている。
[長手振動機構(3)]
または、長手振動機構70は、図8のように、グリップ型本体30に内蔵したモーター82と、モーター82の回転軸に取り付けた傘歯車92と、傘歯車92と垂直に噛合うように配置し、偏心軸95を軸として回転する傘歯車94と、を含み、傘歯車94を上記研磨面12を含む平面内で偏心回転するように配置して、偏心軸95の上端に長手方向Yと垂直に接する板に下方を接続した上記接続棒20を長手方向Yに直線往復振動させる長手振動機構70であって、モーター82を駆動して傘歯車94及び偏心軸95を回転させ、研磨体2を長手方向Yに直線往復振動させるようにしてもよい。
以上、長手振動機構及び短手振動機構について実施例を用いて説明したが、長手振動機構及び短手振動機構によるそれぞれの直線往復振動間の位相差を90°とすると、第1直線往復振動と前記第2直線往復振動とを重ね合わせた研磨体12の往復振動(SES)を、往路(SE)と復路(ES)が異なる単純な閉路(C)とすることができる場合が多く、好適である。

II.本発明に係る振動型刃物研磨器を用いた刃物の研磨方法
上記Iにおいて、本発明に係る振動型刃物研磨器1の実施形態及び実施例について説明したが、本発明に係る刃物の研磨方法は、このような振動型刃物研磨器1を用いて、以下のように実施することができる。
すなわち、本発明に係る刃物の研磨方法は、図13に示すような刃先110と峰120および表面130と裏面140および先端150と終端152を備え、刃先110が先端150と終端152間で刃線Lを描き、峰120から刃先110に向かう方向を順方向とし、その反対の方向を逆方向とした刃物100の刃先110を、研磨面12を含む平面内で研磨面12が始点(S)と終点(E)間を往復振動(SES)をする研磨体10を備えた振動型刃物研磨器により研磨する刃物100の研磨方法であって、
(1)研磨面12の往復振動(SES)が往路(SE)と復路(ES)が異なる閉路(C)を描く、上記振動型刃物研磨器1を準備するステップ
(2)刃物100を所定の位置に固定するステップ
(3)上記往復振動(SES)の始点(S)から終点(E)へ向かう方向(D)が、上記順方向又は逆方向に向くように、振動型刃物研磨器1の研磨面12を刃先110に当接させるステップ
(4)振動型刃物研磨器1の研磨面12を、上記方向(D)に沿って往路(SE)と復路(ES)が異なる閉路(C)を描く往復振動(SES)させて、刃先110を研磨すると共に、
刃先110において研磨面12が描く往路(SE)と復路(ES)の軌跡のうち、上記順方向に相当する軌跡が上記逆方向に相当する軌跡側に重なる方向に、研磨面12を刃物100の刃先110の刃線Lに沿って移動させるステップ
を含む。
上記本発明に係る刃物の研磨方法は、主として振動型刃物研磨器1を手に持って、固定した刃物100を研磨する場合であり、ステップ(2)において「刃物100を所定の位置に固定する」とは、刃先110を研ぎやすい方向に向けて、刃物100を例えば台や机上に峰120等を固定する場合などである。
あるいは本発明に係る刃物の研磨方法は、上記(2)〜(4)のステップに代えて、
(1)研磨面12の往復振動(SES)が往路(SE)と復路(ES)が異なる閉路(C)を描く、上記振動型刃物研磨器1を準備するステップ
(2)’振動型刃物研磨器1を所定の位置に固定するステップ
(3)’刃物100の上記順方向又は逆方向を、上記往復振動(SES)の始点(S)から終点(E)へ向かう方向(D)に合わせて、刃物100の刃先110を上記固定した振動型刃物研磨器1の研磨面12に当接させるステップ
(4)’振動型刃物研磨器1の研磨面12を、上記方向(D)に沿って往路(SE)と復路(ES)が異なる閉路(C)を描く往復振動(SES)させて、刃先110を研磨すると共に、
刃先110において研磨面12が描く往路(SE)と復路(ES)の軌跡のうち、上記順方向に相当する軌跡が上記逆方向に相当する軌跡側に重なる方向に、刃物100の刃先110を上記刃線Lに亘って移動させるステップ
のようにステップ(2)’〜(4)’を含むようにしてもよい。
上記実施形態に係る刃物の研磨方法は、主として刃物100を手に持って、固定した振動型刃物研磨器1を研磨する場合であり、ステップ(2)’において「振動型刃物研磨器1を所定の位置に固定する」とは、例えば台上や壁等に振動型刃物研磨器1を載置して固定する場合などである。
以下具体的に、上記した[実施例1]の振動型刃物研磨器1を用いて、本発明に係る刃物の研磨方法を説明する。
本発明に係る刃物の研磨方法は、
(11)[実施例1]の振動型刃物研磨器1を準備するステップ
(12)上記刃物の峰から刃先に向かう方向を順方向、その反対の方向を逆方向とした該刃物を固定するステップ
(13)上記長手方向Yを上記順方向又は逆方向に合わせて、上記振動型刃物研磨器の上記研磨面を上記刃先に当接させるステップ
(14)上記振動型刃物研磨器の上記研磨面を、上記長手方向Yに沿って往路(SE)と復路(ES)が異なる閉路(C)を描く往復振動(SES)させて、上記刃先を研磨すると共に、
上記刃先において上記研磨面が描く往路(SE)と復路(ES)の軌跡のうち、上記順方向に相当する軌跡が上記逆方向に相当する軌跡側に重なる方向に、上記研磨面を上記刃物の刃先の刃線Lに沿って移動させるステップ
を含む。
上述のように、長手方向Yは、振動型刃物研磨器1のグリップ型本体30の下端34から上端32に向かう方向である。また、短手方向Xは、研磨面12と平行で、かつ、上記長手方向Yと直角となる方向である(図3、図4参照)。
以下、実施例を用いて、本発明に係る刃物の研磨方法を具体的に説明する。なお、以下の説明においては、上述のように、「順方向」は刃物100の峰120から刃先110に向かう方向、「逆方向」は順方向とは逆の刃先110から峰120に向かう方向をいう。
[刃物100の表面130を研磨する場合]
本実施例1では、図10(a)〜(d)のように、刃物100の表面130を正面視するように刃物100を、例えば台などに固定し、研磨面10が楕円運動する振動型刃物研磨器1を用いて表面130側の刃先110を研磨する場合について説明する。なお、以下「左方向」、「右方向」とは、紙面に向かってそれぞれ左の方向、右の方向を表すものとする。
(i)振動型刃物研磨器1の長手方向を刃物100の逆方向に向ける場合(図10(a)、図10(b))
図10(a)は、振動型刃物研磨器1の研磨体10の紙面裏側に装着した研磨面12を刃先110に当接して、研磨体10が時計回りに運動する場合である。この場合は、上記ステップ(4)の「順方向の軌跡が逆方向の軌跡に重なる方向」とは、紙面に向かって左方向である。従って、本発明の刃物の研磨方法を実施するためには、研磨体10を刃線Lに略垂直になるように刃先110に当接させ、振動型刃物研磨器1を刃線Lに沿って左方向に移動させればよい。
図10(b)は、振動型刃物研磨器1の研磨体10の紙面裏側に装着した研磨面12を刃先110に当接して、研磨体10が反時計回りに楕円運動する場合である。すなわち、図10(a)に図示された研磨体10(又は振動型刃物研磨器1)を、紙面に対して反転させた場合と同様である。この場合は、上記ステップ(4)の「順方向の軌跡が逆方向の軌跡に重なる方向」とは、紙面に向かって右方向である。従って、本発明の刃物の研磨方法を実施するためには、研磨体10を刃線Lに垂直になるように刃先110に当接させ、振動型刃物研磨器1を刃線Lに沿って右方向に移動させればよい。
(ii)振動型刃物研磨器1の長手方向を刃物100の順方向に向ける場合(図10(c)、図10(d))
図10(c)は、振動型刃物研磨器1の研磨体10の紙面裏側に装着した研磨面12を刃先110に当接して、研磨体10が時計回りに楕円運動する場合である。この場合は、上記ステップ(4)の「順方向の軌跡が逆方向の軌跡に重なる方向」とは、紙面に向かって左方向となる。従って、本発明の刃物の研磨方法を実施するためには、研磨体10を刃線Lに垂直になるように刃先110に当接させ、振動型刃物研磨器1を刃線Lに沿って左方向に移動させればよい。
図10(d)は、振動型刃物研磨器1の研磨体10の紙面裏側に装着した研磨面12を刃先110に当接して、研磨体10が反時計回りに楕円運動する場合である。すなわち、図10(c)に図示された研磨体10(又は振動型刃物研磨器1)を、紙面に対して反転させた場合と同様である。この場合は、上記ステップ(4)の「順方向の軌跡が逆方向の軌跡に重なる方向」とは、紙面に向かって右方向である。従って、本発明の刃物の研磨方法を実施するためには、研磨体10を刃線Lに垂直になるように刃先110に当接させ、振動型刃物研磨器1を刃線Lに沿って右方向に移動させればよい。
[刃物100の裏面140を研磨する場合]
本実施例1では、図11(a)〜(d)のように、刃物100の裏面140を正面視するように刃物100を、例えば台などの上に水平に固定し、振動型刃物研磨器1を用いて裏面140側の刃先110を研磨する場合について説明する。
(i)振動型刃物研磨器1の長手方向を刃物100の逆方向に向ける場合(図11(a)、図11(b))
図11(a)は、振動型刃物研磨器1の研磨体10の紙面裏側に装着した研磨面12を刃先110に当接して、研磨体10が時計回りに楕円運動する場合である。この場合は、上記ステップ(4)の「順方向の軌跡が逆方向の軌跡に重なる方向」とは、紙面に向かって左方向である。従って、本発明の刃物の研磨方法を実施するためには、研磨体10を刃線Lに垂直になるように刃先110に当接させ、振動型刃物研磨器1を刃線Lに沿って左方向に移動させればよい。
図11(b)は、振動型刃物研磨器1の研磨体10の紙面裏側に装着した研磨面12を刃先110に当接して、研磨体10が反時計回りに楕円運動する場合である。すなわち、図11(a)に図示された研磨体10(又は振動型刃物研磨器1)を、紙面に対して反転させた場合である。この場合は、上記ステップ(4)の「順方向の軌跡が逆方向の軌跡に重なる方向」とは、紙面に向かって右方向である。従って、本発明の刃物の研磨方法を実施するためには、研磨体10を刃線Lに垂直になるように刃先110に当接させ、振動型刃物研磨器1を刃線Lに沿って右方向に移動させればよい。
(ii)振動型刃物研磨器1の長手方向を刃物100の順方向に向ける場合(図11(c)、図11(d))
図11(c)は、振動型刃物研磨器1の研磨体10の紙面裏側に装着した研磨面12を刃先110に当接して、研磨体10が時計回りに楕円運動する場合である。この場合は、上記ステップ(4)の「順方向の軌跡が逆方向の軌跡に重なる方向」とは、紙面に向かって左方向となる。従って、本発明の刃物の研磨方法を実施するためには、研磨体10を刃線Lに垂直になるように刃先110に当接させ、振動型刃物研磨器1を刃線Lに沿って左方向に移動させればよい。
図11(d)は、振動型刃物研磨器1の研磨体10の紙面裏側に装着した研磨面12を刃先110に当接して、研磨体10が反時計回りに楕円運動する場合である。すなわち、図11(c)に図示された研磨体10(又は振動型刃物研磨器1)を、紙面に対して反転させた場合である。この場合は、上記ステップ(4)の「順方向の軌跡が逆方向の軌跡に重なる方向」とは、紙面に向かって右方向である。従って、本発明の刃物の研磨方法を実施するためには、研磨体10を刃線Lに垂直になるように刃先110に当接させ、振動型刃物研磨器1を刃線Lに沿って右方向に移動させればよい。

III.実験
[刃物の切れ味実験]
以下、同一ロットの市販のステンレス鋼製の両刃包丁(X1〜X5、Y1〜Y5、Z1の合計11本)を準備して、本発明の振動型刃物研磨器1を用いた本発明に係る刃物の研磨方法を実施し、研磨前と研磨後の上記両刃包丁の切れ味実験を行った。
[振動型刃物研磨器1]
本実験で用いた本発明に係る振動型刃物研磨器1は、図12に示すように、振動型研磨器5、5’が長手振動機構70のみから成り、それぞれの研磨体10が共に直線往復振動する一の振動型研磨器5と他の振動型研磨器5’を、それぞれの長手方向Yが直角に交差するようにそれぞれのグリップ型本体30を広げ、それぞれの研磨体10の接続棒20の上端に共通の研磨面12を設けた振動型刃物研磨器であって、一の振動型研磨器5と他の振動型研磨器5’のそれぞれの研磨体10は、それぞれの長手方向Yに直線往復振動可能なように直角に結合させ、それぞれの研磨体10の直線往復振動間の位相差を90°にして、往路(SE)と復路(ES)が異なる往復振動(SES)をするようにした。往復振動(SES)は、各直線往復振動の振幅を異ならせたため、長軸約0.6mm、短軸約0.45mmの楕円形の閉路(C)を描いた。また、研磨面12には、粒度約800番の砥石を用いた。
[切れ味試験方法]
切れ味試験方法は、図14のように、刃先を上向きにして包丁(X1〜X5、Y1〜Y5、Z1)を固定し、10mm幅の試験紙束を載せて約10Nの荷重をかけながら、スピード約40mm/Sで、ストローク約40mmの往復振動をさせた。1ストローク後に完全に切断された紙の枚数を数えた。試験紙は3種類用い、軟らかい方から順に試験紙A、試験紙B、試験紙Cとした。
[実験1]公知の研磨方法と本発明の研磨方法との比較
上記市販のステンレス鋼製両刃包丁(X1〜X5、Y1〜Y5)を準備し、以下の順序で実験を行った。
(1) 試験紙Aを用いて、上記切れ味試験を20回繰り返して行う。
(2) 試験紙Bに変えて、上記切れ味試験を1回行う。
(3) 試験紙Aに変えて、上記切れ味試験を1回行う。
(4) X1〜X5を公知の研磨器(直線往復振動;全振幅約0.6mm)、Y1〜Y5を本発明の研磨器(楕円往復振動;長軸約0.6mm、短軸約0.45mm)で研磨する。研磨は、片面につき1回約5秒で5回研磨し、両面行う。
(5) 試験紙Aを用いて、上記切れ味試験を20回繰り返して行う。
上記実験順序(1)は新品の包丁の切れ味を評価するため、上記実験順序(2)は包丁の切れ味を大幅に落とすため、上記実験順序(3)はどの程度包丁の切れ味が落ちているか評価するため、上記実験順序(4)は包丁の落ちた切れ味を蘇生させるため、上記実験順序(5)は各研磨方法(公知の研磨方法と本発明の研磨方法)の効果を評価するため、にそれぞれ行った。
新品の包丁の切れ味を評価するために行った、上記実験順序(1)の結果を図15に示す。市販品10本(X1〜X5、Y1〜Y5)の新品時の切れ味は略同一であった。また、切れ味試験20回の合計切断枚数については、X1〜X5の平均は2117枚で、相対的なバラつきを示す変動係数は0.036であり、Y1〜Y5の平均は2117枚で、変動係数は0.035であった。
包丁の切れ味を大幅に落とすため上記実験順序(2)を行った後、その切れ味評価である上記実験順序(3)を行った。その結果、各切断枚数は、X1=19枚、X2=21枚、X3=13枚、X4=23枚、X5=14枚、Y1=16枚、Y2=12枚、Y3=20枚、Y4=20枚、Y5=19枚であった。市販品の包丁の切れ味は、新品から1/6〜1/10程度まで落ちたことが分かる。
包丁の切れ味を蘇生させるため上記実験順序(4)を行った後、その切れ味評価である上記実験順序(5)を行った。その結果を図16に示す。合計切断枚数については、X1〜X5の平均は1175枚で、変動係数は0.128であり、Y1〜Y5の平均は1515枚で、変動係数は0.089であった。これより、直線往復振動する公知の振動型刃物研磨器を用いても、包丁の切れ味はある程度蘇生するが、その蘇生度合いが低く、蘇生度合いのバラつきが大きい。それに対して、本発明に係る振動型刃物研磨器を用いた刃物の研磨方法を実施すれば、切れ味の蘇生度合いをより高く、蘇生度合いのバラつきをより小さくすることができる。
[実験2]切れ味を完全に落とした包丁に対する本発明研磨器および研磨方法の有効性
上記市販のステンレス鋼製両刃包丁(Z1)を準備し、以下の順序で実験を行った。
(1) 試験紙Aを用いて、上記切れ味試験を100回行う。
(2) 試験紙Cに変えて、上記切れ味試験を5回行う。
(3) 試験紙Aに変えて、上記切れ味試験を1回行う。
(4) 本発明の研磨器(楕円往復振動;長軸約0.6mm、短軸約0.45mm)で研磨する。研磨は、片面につき1回約5秒で10回研磨し、両面行う。
(5) 試験紙Aを用いて、上記切れ味試験を100回行う。
上記実験順序(1)は新品の包丁の切れ味を評価するため、上記実験順序(2)は包丁の切れ味を完全に落とすため、上記実験順序(3)は包丁の切れ味が完全に落ちたか確認評価するため、上記実験順序(4)は包丁の落ちた切れ味を蘇生させるため、上記実験順序(5)は各研磨方法の効果を評価するため、にそれぞれ行った。
包丁の切れ味を完全に落とすため上記実験順序(2)を行った後、その評価である上記実験順序(3)を行った。その結果、切断枚数はZ1=0枚であった。さらに、上記実験順序(1)および(5)の結果を図17に示す。これより、本発明に振動型研磨器を用いた刃物研磨方法を実施すれば、包丁の切れ味を略完全に蘇生できることができ、さらに、刃物の刃付け工程等にも使用が可能であることがわかった。またこの結果から、実験1の実験順序(4)の研磨回数を増やせば、図16の蘇生度合いをさらに高くすることが可能であることが分かった。
以上、本発明に係る振動型刃物研磨器及びこれを用いた刃物の研ぎ方法について実施形態および実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではない。本発明に係る振動型刃物研磨器の研磨体、研磨面、接続棒、本体及びその表面等の外観、形状、材料等は特に限定されず、振動機構も、これと接続した研磨体が交錯しない閉路(C)を描くものであればよく、その機構は特に限定されない。
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
本発明に係る振動型刃物研磨器及びこれを用いた刃物の研磨方法は、包丁やナイフ、鋏、工業用刃物のような刃を付けた器具一般に利用することが出来る。
1:振動型刃物研磨器
5、5’:直線振動型研磨器
10:研磨体
12:研磨面
20:接続棒
22:(接続棒)上方(上端)
24:(接続棒)下方(下端)
30:本体(グリップ型本体)
31:上部表面
32:(グリップ型本体)上端
33:下部表面
34:(グリップ型本体)下端
35:側部表面
40:他方側
50:振動機構
60:短手振動機構
62:磁石
64、74:交流電磁石
66:半波交流の電磁石
70:長手振動機構
72:棒状磁石
82:モーター
84:円盤
86:規制手段
92、94:傘歯車
95:偏心軸
100:刃物
110:刃先
120:峰
130:表面
140:裏面
150:先端
152:終端
160:中子
C:閉路
S:始点
E:終点
D:始点(S)から終点(E)へ向かう方向
Y:長手方向
X:短手方向
L:刃線

Claims (2)

  1. 刃先と峰および表面と裏面および先端と終端を備え、該刃先が該先端と該終端間で刃線Lを描き、該峰から該刃先に向かう方向を順方向とし、その反対の方向を逆方向とした刃物の該刃先を、
    研磨面を含む平面内で該研磨面が始点(S)と終点(E)とを往復振動(SES)をする研磨体を備えた振動型刃物研磨器により研磨する刃物の研磨方法であって、
    前記研磨面の往復振動(SES)が往路(SE)と復路(ES)が異なる閉路(C)を描く、前記振動型刃物研磨器を準備するステップと、
    前記刃物を所定の位置に固定するステップと、
    前記往復振動(SES)の始点(S)から終点(E)へ向かう方向(D)が、前記順方向又は逆方向に向くように、前記振動型刃物研磨器の前記研磨面を前記刃先に当接させるステップと、
    前記振動型刃物研磨器の前記研磨面を、前記方向(D)に沿って往路(SE)と復路(ES)が異なる閉路(C)を描く往復振動(SES)させて、前記刃先を研磨すると共に、
    前記刃先において前記研磨面が描く往路(SE)と復路(ES)の軌跡のうち、前記順方向に相当する軌跡が前記逆方向に相当する軌跡側に重なる方向に、前記研磨面を前記刃物の刃先の刃線Lに沿って移動させるステップと、
    を含む刃物の研磨方法。
  2. 刃先と峰および表面と裏面および先端と終端を備え、該刃先が該先端と該先端終端間で刃線Lを描き、該峰から該刃先に向かう方向を順方向とし、その反対の方向を逆方向とした刃物の該刃先を、
    研磨面を含む平面内で該研磨面が始点(S)と終点(E)とを往復振動(SES)をする研磨体を備えた振動型刃物研磨器により研磨する刃物の研磨方法であって、
    前記研磨面の往復振動(SES)が往路(SE)と復路(ES)が異なる閉路(C)を描く、前記振動型刃物研磨器を準備するステップと、
    前記振動型刃物研磨器を所定の位置に固定するステップと、
    前記刃物の順方向又は逆方向を、前記往復振動(SES)の始点(S)から終点(E)へ向かう方向(D)に合わせて、前記刃物の刃先を前記固定した振動型刃物研磨器の前記研磨面に当接させるステップと、
    前記振動型刃物研磨器の前記研磨面を、前記方向(D)に沿って往路(SE)と復路(ES)が異なる閉路(C)を描く往復振動(SES)させて、前記刃先を研磨すると共に、
    前記刃先において前記研磨面が描く往路(SE)と復路(ES)の軌跡のうち、前記順方向に相当する軌跡が前記逆方向に相当する軌跡側に重なる方向に、前記刃物の刃先を前記刃線Lに亘って移動させるステップと、
    を含む刃物の研磨方法。
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