JP6453627B2 - 耐震解析装置、方法及びプログラム - Google Patents
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応答スペクトル法の利点は、計算が簡易である点と、応答スペクトルを周期方向に拡幅することで入力地震波や対象機器の振動特性の不確かさを吸収し、耐震解析の評価を保守側とすることができる点と、である。
これに対して、構造物にダンパを設置した場合、局所的に大きな減衰力が作用するため、振動モードが、減衰を考慮しない状態と相違する。このため、実モーダル解析に基づく応答スペクトル法では、構造物にダンパを設置した場合、耐震解析の評価精度の低下が避けられない。
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお以下において、「"」の記号は、時間による二回微分を示す。
図1に示すように耐震解析装置10は、ダンパを介して支持される構造物の解析モデル(図2)の質点の運動方程式を構成する質量行列[M]、減衰行列[C]及び剛性行列[K]を入力する第1入力部11と、質量行列[M]、減衰行列[C]及び剛性行列[K]に基づいて構造物の複数の振動モードj(=1,2,…N)の各々における複素固有値λj及び複素固有モードVjを導出する導出部13と、複素固有値λj及び複素固有モードVjに基づいて振動モードjの各々における固有振動数ωj、モード減衰比ζj及び刺激係数βjを計算する計算部14と、地震波u"の応答スペクトルS(ω,ζ)を演算する演算部15と、固有振動数ωj及びモード減衰比ζjにおける応答スペクトルの値S(ωj,ζj)並びに刺激係数βjに基づいて振動モードj(=1,2,…N)毎の質点の最大応答値{x"j}maxを算出する算出部17と、複数の振動モードj(=1,2,…N)の各々に対応する最大応答値{x"j}maxを互いに加算させる加算部18と、を備えている。
質量行列[M]、減衰行列[C]及び剛性行列[K]を求める方法としては、有限要素法等が挙げられるが、特に限定されない。
第1入力部11は、このように構造物の解析モデルに基づき理論的に求めた質量行列[M]、減衰行列[C]及び剛性行列[K]を入力する。
導出部13における複素固有値λj及び複素固有モードVjの導出は、質量行列[M]、減衰行列[C]及び剛性行列[K]を入力し、一般に用いられているQR法などを用いて行うが、特に限定されない。
導出部13Aは複素固有値λjの実部λjR及び虚部λjIを出力し、導出部13Bはベクトル表示される複素固有モードVjを出力する。
計算部14Aは、実部λjR及び虚部λjIの二乗和の平方根をとることにより振動モードjの固有振動数ωjを計算する。
計算部14Bは、実部λjR及び虚部λjIの二乗和の平方根の逆数を実数部λjRに乗算し、さらに負号を乗じることにより振動モードjのモード減衰比ζjを計算する。
計算部14Cは、複素固有モードVjのベクトルと質量行列[M]と励振ベクトルeとの積をモード質量mjで除算して刺激係数βjを計算する。
演算部15には、地震波u"が入力され、入力された地震波u"の応答スペクトルS(ω,ζ)を演算する。
なお、応答スペクトルS(ω,ζ)の軌跡は、シャープなピークを複数有し、そのような箇所では、周波数ωの変動に対する軌跡の変化率が大きくなり、応答スペクトルS(ω,ζ)の値を過少評価してしまうおそれがある。
そして、このS(ωj,ζj)に、刺激係数βj及び複素固有モードVjを積算し、振動モードjにおける解析モデル(図2)の質点の最大応答値{x"j}maxを算出する。
なお、第1実施形態における加算部18Aは、互いに加算する前に各々の最大応答値{x"j}maxを二乗し、互いに加算した後で平方根をとって加算応答値x"maxを出力している。
このように、加算部18は、互いに加算する前後の最大応答値{x"j}maxに他の演算処理を実行することができる。
次に図3に基づいて本発明における第2実施形態について説明する。なお第2実施形態は、第1実施形態(図1)に機能追加したものであるが、図3は、第2実施形態に係る耐震解析装置の構成を選択的に図示している。また、図3において図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
第2実施形態では、第1実施形態において外部生成していた減衰行列[C]を、耐震解析装置10で内部生成することを示す。
そして仮-モード減衰比ζsjの定義から成立する次式(3)を変形して、第1生成部26で実行される仮-減衰行列[Cs]の生成式が得られる。
[2ζsj,msj,ωsj]=[Φ]T[[Cz][Φ] (3)
ここで仮-減衰行列[Cs]に減衰係数cの行列を加算する方法としては、図2においてダンパが設置される質点の位置に対応する仮-減衰行列[Cs]の要素に減衰係数cが加えられる。
x={x1,x2,…xn,…xm,…xN}T (4)
ここで、質点nと質点mの間にダンパが設置される場合には、第2生成部27に示すように、減衰行列[Cs]のn行n列およびm行m列にcを加え、n行m列およびm行n列に−cを加える。
次に図4に基づいて本発明における第3実施形態について説明する。なお第3実施形態は、第1実施形態(図1)に機能追加したものである。このため、図4において図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
図4に示す第3実施形態の耐震解析装置10は、最大応答値{x"j}maxと地震波u"の最大値u"maxとの差分信号{z"j}maxを出力する差分出力部19をさらに備えている。
そして、加算部18Bは、複数の振動モードj(=1,2,…N)の各々に対応する差分信号{z"j}maxを互いに加算し、さらに地震波u"maxを加算する演算を実行する。
この場合、図5に示すように、ダンパを適用した構造物は、非適用である場合に比べ、地震波が入力される固定面(地盤、床、壁など)に対する相対応答加速度が小さくなる。このため、構造物の絶対応答加速度における入力加速度の占める割合が大きくなる。
すると、構造物の絶対応答加速度を加算する処理において、入力加速度を多重して加算する可能性がある。
ここでx"jは絶対応答加速度、u"は入力加速度、z"jは相対加速度に相当する。
そして、加算部18Bにおいて、複数の振動モードj(=1,2,…N)の各々に対応する差分信号{z"j}maxの二乗和をとり、これに地震波u"maxの二乗を加算してから平方根をとって、加算応答値x"maxを出力している。
図6(A)は第1実施形態を検証する検証式を示し、図6(B)は第3実施形態を検証する検証式を示している。
第3実施形態の効果が顕著に表れる、ダンパ減衰が大きく構造物の相対応答加速度が限りなく零となる場合(図5の横軸方向の領域)を検討する。この場合、理想的には、構造物の絶対応答加速度x"jは、入力加速度u"に等しい計算結果となる。
この式(7)より、絶対応答加速度x"maxと入力加速度u"maxとは一致せず、第1実施形態の場合は評価の精度が充分とは言えないことが分かる。
ダンパの減衰係数cが大きく構造物の相対応答加速度z"jが限りなく零となる場合、相対加速度z"jの応答スペクトルSr(ωj,ζj)は、ほぼ零となる(数式(10))。このため、式(11)に示すように、絶対応答加速度x"jと入力加速度u"maxとは一致して、第3実施形態の場合は高精度の評価が可能なことが分かる。
ここで、質点の質量mを1kgに設定し、質点を結ぶ剛性要素のバネ定数kを104Nmに設定し、ダンパの粘性定数cを50Ns/m、80Ns/mに設定する。
図8は、模擬的な地震波u"の入力に対する第1実施形態の耐震解析装置10(図1)の加算応答値x"max(絶対応答加速度)の出力結果を実施例1とし、第3実施形態の耐震解析装置10(図4)の加算応答値x"max(絶対応答加速度)の出力結果を実施例2とし、精度に対する信頼性の高い直接積分法による出力結果を比較例として示している。
これより、実施例2は、直接積分法による比較例に対して概略一致する結果を示し、実施例1は、比較例に対し安全側に偏向して安定した結果を出力することが明らかになった。なお、実モーダル解析による従来例の検証結果の記載を省略するが、実施例1及び実施例2は共にこの従来例よりも優れた結果となっている。
また、耐震解析装置の構成要素は、コンピュータのプロセッサで実現することも可能であり、耐震解析プログラムにより動作させることが可能である。
Claims (6)
- ダンパを介して支持される構造物の解析モデルの質点の運動方程式を構成する質量行列、減衰行列及び剛性行列を入力する第1入力部と、
前記質量行列、減衰行列及び剛性行列に基づいて前記構造物の複数の振動モードの各々における複素固有値及び複素固有モードを導出する導出部と、
前記複素固有値及び複素固有モードに基づいて前記振動モードの各々における固有振動数、モード減衰比及び刺激係数を計算する計算部と、
地震波の応答スペクトルを演算する演算部と、
前記固有振動数及び前記モード減衰比における前記応答スペクトルの値並びに前記刺激係数に基づいて前記振動モード毎の前記質点の最大応答値を算出する算出部と、
複数の前記振動モードの各々に対応する前記最大応答値を互いに加算させる加算部と、を備えることを特徴とする耐震解析装置。 - 請求項1に記載の耐震解析装置において、
前記振動モードの各々に関するモードベクトルを入力する第2入力部と、
前記モードベクトル及び前記質量行列に基づきモード質量を定義する定義部と、
前記解析モデルの質点に接続される前記ダンパの減衰係数を入力する第3入力部と、を備え、
前記導出部に、前記減衰行列を考慮せず前記質量行列及び剛性行列に基づいて仮-固有値を導出させ、
前記計算部に、前記仮-固有値に基づいて仮-固有振動数及び仮-モード減衰比を計算させ、
前記モード質量、前記仮-固有振動数及び前記仮-モード減衰比に基づいて仮-減衰行列を生成する第1生成部と、
前記仮-減衰行列の要素に前記減衰係数を加算して前記減衰行列を生成する第2生成部と、を備えることを特徴とする耐震解析装置。 - 請求項1又は請求項2に記載の耐震解析装置において、
前記最大応答値と前記地震波の最大値との差分信号を出力する差分出力部をさらに備え、
前記加算部は、複数の前記振動モードの各々に対応する前記差分信号の二乗和をとり、さらに前記地震波の最大値の二乗を加算し、この加算結果の平方根を算出して加算応答値とする演算を実行することを特徴とする耐震解析装置。 - 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の耐震解析装置において、
前記演算部において演算された前記応答スペクトルを周波数方向に拡幅して前記算出部に出力する拡幅処理部をさらに備えることを特徴とする耐震解析装置。 - 第1入力部により、ダンパを介して支持される構造物の解析モデルの質点の運動方程式を構成する質量行列、減衰行列及び剛性行列を入力するステップと、
導出部が、前記質量行列、減衰行列及び剛性行列に基づいて前記構造物の複数の振動モードの各々における複素固有値及び複素固有モードを導出するステップと、
計算部が、前記複素固有値及び複素固有モードに基づいて前記振動モードの各々における固有振動数、モード減衰比及び刺激係数を計算するステップと、
演算部が、地震波を入力し、入力された前記地震波の応答スペクトルを演算するステップと、
算出部が、前記固有振動数及び前記モード減衰比における前記応答スペクトルの値並びに前記刺激係数に基づいて前記振動モード毎の前記質点の最大応答値を算出するステップと、
加算部が、複数の前記振動モードの各々に対応する前記最大応答値を互いに加算させるステップと、を含むことを特徴とする耐震解析方法。 - コンピュータに、
ダンパを介して支持される構造物の解析モデルの質点の運動方程式を構成する質量行列、減衰行列及び剛性行列を入力するステップ、
前記質量行列、減衰行列及び剛性行列に基づいて前記構造物の複数の振動モードの各々における複素固有値及び複素固有モードを導出するステップ、
前記複素固有値及び複素固有モードに基づいて前記振動モードの各々における固有振動数、モード減衰比及び刺激係数を計算するステップ、
地震波を入力し、入力された前記地震波の応答スペクトルを演算するステップ、
前記固有振動数及び前記モード減衰比における前記応答スペクトルの値並びに前記刺激係数に基づいて前記振動モード毎の前記質点の最大応答値を算出するステップ、
複数の前記振動モードの各々に対応する前記最大応答値を互いに加算させるステップ、を実行させることを特徴とする耐震解析プログラム。
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