JP6453510B1 - シート状高分子材料の製造方法及びこれにより製造されるシート状高分子材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】いわゆるパッキン材料として一般的に使用されている高分子材料系に対しても用いることができる、再資源化されたシート状高分子材料の製造方法及びこれにより製造されるシート状高分子材料を提供する。
【解決手段】本発明に係るシート状高分子材料の製造方法は、フェライトを含む高分子材料に対して圧延処理を行うことにより、脱磁化されたフェライトを含むシート状高分子材料とすることを特徴とする。また、本発明に係るシート状高分子材料は、ランダム配向となり脱磁化されたフェライトが高分子材料中に分散されシート状となっていることを特徴とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、シート状高分子材料の製造方法及びこれにより製造されるシート状高分子材料に関する。
冷蔵庫等の家電製品には食品等の保存対象物を出し入れする際に開閉するための扉が付されており、この扉には冷蔵庫内の冷気を外に逃がさないよういわゆるパッキンが設けられている。
上記パッキンは、一般に、磁石と、これに接合された高分子材料と、を備えており、扉開閉位置に鉄等の磁性材料を配置し、磁石による吸引と高分子材料による柔軟性によって内部空間の密着性を高めている。
ところで近年盛んに議論される環境問題の一環として、使われなくなった冷蔵庫等の家電製品の産業廃棄物としての処理が問題となっており、このパッキンも例外ではない。
例えば下記特許文献1には、リサイクルを考えた冷蔵庫用扉が開示されている。
特開2000−161842号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は扉に用いられる材料そのものに工夫を施すものであって、現在一般に使用されている家電製品に用いられているものについては対応できない。
また、一般に使用されるパッキンを産業廃棄物として処理しようとする場合、まずパッキン材料自体を破砕して細かな細片に切断するが、細片内部に磁力が残留しているため、鉄等の磁性材料を部品材料に用いた機械で処理しようとすると、この細片がくっついてしまい、脱磁処理が必要となる等、処理が極めて困難であるといった課題が生じていた。
また、上記材料には、磁石及びこのマトリクス材料だけではなく、ポリ塩化ビニル(PVC)等の他の材料が混入しているため、これら異物除去を行う必要がある等、処理をより困難にしている。
もちろん、上記処理に多大な費用がかかり、この点も大きな課題となっている。また、この処理の結果物の用途についても十分な検討がなされておらず、積極的な再資源化が進んでいるとは言えない状況である。
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、いわゆるパッキン材料として一般的に使用されている高分子材料系に対しても用いることができる、再資源化されたシート状高分子材料の製造方法及びこれにより製造されるシート状高分子材料を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の一観点に係るシート状高分子材料の製造方法は、フェライトを含む高分子材料に対して圧延処理を行うことにより、脱磁化されたフェライトを含むシート状高分子材料とするものである。
また、本発明の他の一観点に係るシート状高分子材料は、ランダム配向となり脱磁化されたフェライトが高分子材料中に分散されシート状となっているものである。
以上、本発明によって、いわゆるパッキン材料として一般的に使用されている高分子材料系に対しても用いることができる、再資源化されたシート状高分子材料の製造方法及びこれにより製造されるシート状高分子材料を提供することができる。
また、本発明によって提供されるシート状高分子材料は、様々な用途に応用が可能である。本材料は、例えば放射線遮蔽能が高く、鉛を用いない放射線遮蔽材料としての用途においても好適である。
本発明に係る破砕状のゴム廃材の一例の写真図である。 本発明に用いられる圧延装置のイメージ図である。 本発明に係るシート状高分子材料の一例の写真図である。 本発明に係るシートのγ線遮蔽性能について示す図である。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例に記載された具体的な例示にのみ限定されるわけではない。
本実施形態に係るシート状高分子材料の製造方法(以下「本製造方法」という。)は、フェライトを含む高分子材料に対して圧延処理を行うことにより、脱磁化されたフェライトを含むシート状高分子材料とするものである。
本製造方法において「フェライト」とは、磁性を備えることのできる磁石材料であって、具体的には、酸化鉄そのもの又は酸化鉄を主成分としてバリウム、ストロンチウム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、マグネシウム、リチウム、イットリウム、ルテチウム、亜鉛及びカドミウムの少なくともいずれかを含む磁石材料をいう。
また本製造方法において「高分子材料」は、圧延処理を行うことで一体化できるものであれば限定されるわけではないが、例えばエラストマーであることが好ましく、エラストマーとしてはゴムであることが好ましい。またゴムとしても限定されるわけではないが、塩素化ポリエチレン及びエチレン・プロピレンジエンゴム(EPDM)の少なくともいずれかを含んでいることが好ましい。
また、本製造方法において「高分子材料」には、上記材料の他、多少の異物が混入していてもよい。例えば後述のとおり、廃材を原材料として用いる場合には、ポリ塩化ビニルやポリエチレンスポンジ等のパッキンとして用いられる他の材料が混入する場合がある。本製造方法では圧延処理を行う際、これらの相溶剤として用いることができるため、むしろ好ましく機能する。限定されるわけではないが、例えば上記材料であれば70wt%以下の範囲であれば含んでいてもよく、より好ましくは50wt%以下、更に好ましくは30wt%以下である。
また、本製造方法の高分子材料は、破砕状のゴム廃材に対して好適に適用することができる。ここで「破砕状」とは、破砕され細片化された状態の高分子材料を意味する。この場合の例の写真図を図1に示しておく。このように破砕状となったゴム廃材は上記の課題において述べた通り非常に処理が困難であるが、後述の通り本製造方法によると簡便に再資源化が可能となる。
また、高分子材料において圧延処理は、高分子材料に対して圧力をかけつつ引き延ばす処理を行うことができるものであり、具体的には圧延するための装置に投入する前の材料に熱を加えず(熱を加えず溶融させない状態で)、破砕状の高分子材料に対して直接圧延を行う冷間圧延であることが好ましい。ただし、後述の通り、材料投入後の圧延装置自体を熱する処理自体は否定されるものではない。
また、本製造方法において圧延処理は、限定されるわけではないが、例えば二軸のローラーを所定間隔で配置した圧延装置を用い、この二軸間に高分子材料を供給し、圧延をかけることでシート状とすることが好ましい。この場合のイメージ図を図2に示しておく。この所定の間隔としては、限定されるわけではないが、高分子材料に十分な圧力を印加することができる観点として1cm以下であることが好ましく、より好ましくは5mm以下である。また、この場合において、材料においてPVC等の他の材料が混入している場合、ローラー自体を加熱することでより圧延処理がしやすくなる。
そして、上記処理によって、本製造方法では、脱磁化されたフェライトを含むシート状高分子材料とすることができる。「シート状」とは、薄く平らな状態となっていることをいう。図3に、シート状となった高分子材料の例について図面を示しておく。すなわち、本製造方法によって製造されるシート状高分子材料(以下「本材料」ともいう)は、フェライトがランダム配向となり分散させているため、脱磁化されたシート状となっているものである。
また、本製造方法によって製造されるシート状高分子材料は、脱磁化されている。これは、圧延処理によってフェライト内の磁力方向がランダムになることによって脱磁されるものと考えられる。この結果、処理装置の金属部品に付着することなくシート状にでき、再資源化が容易となる。
また、本製造方法では、マトリクスとなる高分子材料を用いることで一体化が可能であり、具体的にはエラストマー、より具体的には塩素化ポリエチレン等のゴムを用いることで、圧延処理と同時に脱磁処理が可能となる。特に、塩素化ポリエチレンの場合、主鎖に二重結合を含まない構造であるため、耐熱老化性、耐オゾン性、耐候性に優れ、低温状態においても非常に安定的である。
なお、本製造方法によって製造されたシート状高分子材料に対しては、再磁化処理を行うことも好ましい。再磁化処理を行うことで、再び磁石材料としての資源化が可能である。
また本材料は、様々な用途に応用が可能である。例えば、放射線遮蔽シート、電磁シールド、防振シート、遮音シート、放熱シート、その他一般的な導電性材料として再資源化を図ることができる。
特に、本製造方法では、原材料として産業廃棄物を用いることができる。また、主成分において鉄系粉末が高濃度に充填されているため、鉄を多量に含むことが必要な様々な材料に適用可能である。しかも、材料に鉛などの有害となる金属を含まず処理が可能である。
以上、本発明によって、いわゆるパッキン材料として一般的に使用されている高分子材料系に対しても用いることができる、再資源化されたシート状高分子材料の製造方法及びこれにより製造されるシート状高分子材料を提供することができる。
ここで、上記製造方法について、実際に材料を用いて効果を確認した。以下具体的に説明する。
(実施例1)
まず、原材料として、粗破砕機(株式会社モリタ環境テック製、PMG−E600)に装着グリッド径φ12mmを装着し、冷蔵庫パッキン材料を投入して破砕することで、上記図1で示される破砕状のフェライト磁石を含む高分子材料を得た。
次に、上記材料を、2軸のローラーを備えた圧延装置に破砕状のまま未加熱にて投入し、圧延装置によって混錬させることにより、上記図3で示す厚さ1mmのシート状の高分子材料を得た。原材料のプラスチックマグネット自体には磁力があるため、相互にくっつきあってはいるが、圧延装置への投入及び圧延処理時における障害は発生しなかった。また、得られたシート状高分子材料は非常になめらかであった。
(磁束密度測定)
このシート状高分子材料の磁束密度測定を行い磁力を確認したところ、平均で0.05mTであって、金属部品に付着せず十分に脱磁されていることを確認した。一方で、処理前の原材料の磁束密度が平均で19.8mTであって金属部品に付着したところを考慮すると、十分に脱磁されていることを確認した。なお、破砕前の棒状磁石において磁束密度は平均36.8mTであった。
(放射線遮蔽性能試験)
このシートを用いてγ線遮蔽性能について確認を行った。なお、γ線遮蔽性能については照放射線量標準γ線源として462CE(放射能1.00×10Bq)を、測定器としてNaI(Tl)シンチレーション式サーベイメータ(TechnoAP TN100型)を用いて測定を行った。この結果を図4に示しておく。なおこの場合においては、比較として市販されている硫酸バリウム充填ゴムを用い、γ線源から測定器までの距離を30cmとし、その間に上記シートを挿入し、都度線量率を読み遮蔽経過を確認した。この結果、比較品に対して約2倍の性能であることを確認した。また、セメントの場合におけるγ線半減肉厚が64.7mm程度であるが、本シートによると26mm程度で達成できることが確認できた。すなわち、この結果によると、一般的な従来品としての性能と比較して約2倍以上の性能を示していることができた。特に、本製品は鉛や重金属を含まず酸化鉄を主成分とする材料のみで構成されており、非常に安価である一方ここまでの性能を発揮することができる点において非常に有用であることを確認した。
(実施例2)
上記実施例1と同様であるが、上記フェライト磁石を含む高分子材料に、あえて他の材料成分を含ませることでその効果の変化がどのようになるかを確認した。
まず、上記フェライト磁石を含む材料に対し、ゴムとしてEPDMを下記表で示すように割合を変えて投入した。ただし、EPDMの投入に当たり、ローラーは180℃に加熱しながら行った。もちろん、材料投入時においては破砕状のままである。この結果を下記表に示す。
この結果、EPDMを投入した場合において52重量%であっても十分に磁力を焼失させたシート状の高分子材料を得ることができることを確認した。特に、EPDMを混入させることで比重や硬度を下げるとともに伸び率を向上させることができるのを確認し、必要な用途に応じて材料の質を調整することができることを確認した。
本発明は、シート状高分子材料及びその製造方法として産業上の利用可能性がある。



























Claims (5)

  1. フェライトを含む高分子材料に対して圧延処理を行うことにより、脱磁化されたフェライトを含むシート状高分子材料とする、シート状高分子材料の製造方法であって、
    前記高分子材料は破砕状のゴム廃材であるシート状高分子材料の製造方法。
  2. 前記高分子材料は塩素化ポリエチレンを含む請求項1記載のシート状高分子材料の製造方法。
  3. フェライトを含む高分子材料に対して圧延処理を行うことにより、脱磁化されたフェライトを含むシート状高分子材料とする、シート状高分子材料の製造方法であって、
    前記圧延処理は、溶融していない破砕状の前記高分子材料を圧延する処理であるシート状高分子材料の製造方法。
  4. シート状高分子材料に対し、再磁化処理を行う請求項1記載のシート状高分子材料の製造方法。
  5. 前記フェライトは、ストロンチウム系フェライト及びバリウム系フェライトの少なくともいずれかを含む、請求項1記載のシート状高分子材料の製造方法。
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