JP6453144B2 - 損傷評価システム及び損傷評価プログラム - Google Patents
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Description
本実施形態においては、構造物に生じたき裂により損傷を評価する。例えば、構造物として、蒸気タービンや配管等、火力発電所における高温機器(設備)がある。
経過サイクル数は、損傷評価処理の開始から繰り返された運転サイクルの総数である。この経過サイクル数は、損傷評価処理の開始時にリセットされ、き裂進展計算処理が終了するまで、継続してカウントアップされる。
繰り返し数は、繰り返し計算における繰り返し回数(運転サイクル数)である。この繰り返し数は、繰り返し計算の開始時にリセットされ、繰り返し計算が終了するまでカウントアップされる。
FEM計算部211は、構造物の形状や構成要素に応じて、有限要素法(FEM)に適したメッシュを作成する。例えば、配管の軸方向あるいは周方向の突き合わせ溶接部を想定する場合は、母材部、溶接部、HAZ(熱影響部)から構成される配管のFEM用メッシュを作成する。
例えば、鋼管「エルボ」を解析対象とした事例においては、具体的には、下記の係数Aや指数を用いる。
本実施形態では、疲労損傷率算出式として、例えば、以下の関数を用いる。
また、本実施形態では、クリープ損傷率算出式として、例えば、以下の関数を用いる。
構造物の形状に関する情報には、構造物の全体形状、構造物の各要素における構成要素(母材部、溶接部、HAZ(熱影響部))の形状に関する情報が含まれている。
荷重条件に関する情報には、設備の稼働に伴う「停止→起動→停止」の各段階を含むサイクルにおいて、各段階で加える荷重(温度、所要時間)が含まれる。
次に、図3を用いて、損傷評価処理を説明する。
まず、損傷評価システム20の制御部21は、条件の取得処理を実行する(ステップS1−1)。具体的には、制御部21の管理部210は、出力部12に、評価対象指定画面を出力する。この場合、ユーザは、入力部11を用いて、予め準備しておいた計算対象の構造物の3次元形状を指定する。更に、ユーザは、入力部11を用いて、構造物の各領域について、構成要素(母材部、溶接部、HAZ(熱影響部))を指定する。更に、入力部11を用いて、構成要素の材料特性に関するデータを入力する。この材料特性は、経過時間毎に入力する。この場合、管理部210は、入力部11を用いて指定された構造物の形状、構成要素、材料特性に関する情報を、基礎情報記憶部22に記録する。
ここで、鋼管「エルボ」について損傷評価を行なう場合を例示する。
図5は、鋼管「エルボ」の管軸の垂直面の断面のメッシュを示す。このように、FEM計算部211は、その配管の形状に合わせたメッシュを生成する。例えば、図5に示すように、HAZ(熱影響部)33のメッシュが密となり、母材部31のメッシュが疎となるメッシュを作成する。そして、FEM計算部211は、メッシュの各要素(各格子点)の位置に対応して、各要素の材料(母材部、溶接部、HAZ(熱影響部))を識別する材料識別子を関連付けておく。
ここでは、鋼管「エルボ」について損傷評価を行なう場合について説明する。
この場合、鋼管「エルボ」の材料特性を、経年に応じて上述した表1に示す範囲で変化させた値を用いる。また、負荷として、温度(575度)を30万時間で加える場合を想定する。
ステップS1−2において、FEM計算部211は、鋼管「エルボ」に対して作成したメッシュの各要素(各格子点)の材料識別子を特定する。そして、FEM計算部211は、基礎情報記憶部22から、材料識別子と経過時間とに対応する材料特性(上述した表1に示す材料特性)を取得する。
ステップS1−3において、FEM計算部211は、鋼管「エルボ」のメッシュの要素毎(格子点毎)に、上述したクリープひずみ速度式や隣接する要素の関係式を用いた陰解法(FEM法)を利用して、ひずみ、温度及び応力を計算する。そして、FEM計算部211は、格子点毎に、ひずみ、温度及び応力をFEM解析結果記憶部23に記憶する。
ここで、図6(a)及び図6(b)には、算出した応力の最大主応力を、内表面からの距離とともに示した一例を示す。ここでは、90度「エルボ」の45度位置にあるHAZ(熱影響部)の中央部に生じる最大主応力について、内表面からの距離を変数とした分布を示している。図6(a)は、経過時間に依存せずに一定の材料特性を用いて最大主応力を算出した場合の分布を示している。具体的には、上述したクリープひずみ速度式における係数Aとして、表1における「荷重負荷後」の値を用いる。一方、図6(b)は、経過時間に応じた材料特性を用いて最大主応力を算出した場合の分布を示している。具体的には、クリープひずみ速度式における係数Aとして、表1における時間毎の値を用いる。図6(a)及び図6(b)における各線σ0、σ1、σ2、σ3、σ4は、荷重負荷後、7.5時間後、15万時間後、22.5万時間後、30万時間後の最大主応力を示している。なお、図6(a)及び図6(b)から、経過時間が長くなるに従って、最大主応力の最大値が、内表面から離れた位置に移動していることがわかる。
次に、損傷評価システム20の制御部21は、初期き裂が発生したか否かの判定処理を実行する(ステップS1−7)。具体的には、制御部21の管理部210は、出力部12にき裂発生確認画面を出力する。
前述した鋼管「エルボ」について損傷評価を行なった場合のき裂発生確認画面に表示されるクリープ損傷率の分布の具体例を説明する。
図7(a)及び図7(b)には、90度エルボにおける45度位置において、30万時間の経過後のクリープ損傷率の分布を示している。図7(a)及び図7(b)において、下側円弧がエルボの内表面側であり、上側円弧がエルボの外表面側である。図7(a)及び図7(b)において、母材部31と溶接部32の間にHAZ(熱影響部)33が存在する。
図7(a)には、経過時間に係らず一定の材料特性を用いて算出したクリープ損傷率の分布、図7(b)には、経過時間に応じた材料特性を用いて算出したクリープ損傷率の分布を示している。
図7(a)においては、内表面側において、溶接部32を中心として、クリープ損傷率が高くなっていることを示している。図7(b)においては、溶接部32の内部が、若干クリープ損傷率が高くなっていることを示している。ただし、最もクリープ損傷率が高い領域の絶対値は、図7(b)の方が低い。また、図7(b)において、溶接部32やHAZ(熱影響部)33は、母材部31に比べてクリープ損傷率が高くなっているが、この断面においては、図7(a)の場合に比べて、クリープ損傷率が高い部分が少なくなっている。
図7(b)には、前述した鋼管「エルボ」についての損傷評価の場合にき裂発生確認画面に含まれる一例の損傷分布画面を示している。ここで、ユーザが、クリープ損傷率に基づいて、初期き裂が発生したと判定した場合、初期き裂の発生「あり」の選択ボタンを選択する。
ここで、初期き裂の発生「あり」の選択ボタンが選択され、初期き裂が発生したと判定した場合(ステップS1−7において「YES」の場合)、制御部21の進展計算部213は、き裂進展計算処理(ステップS1−8)を実行する。このき裂進展計算処理については、図4を用いて、後述する。
次に、図4を用いて、き裂進展計算処理(ステップS1−8)について説明する。
まず、損傷評価システム20の制御部21は、初期き裂位置、き裂想定面の取得処理を実行する(ステップS2−1)。具体的には、制御部21の進展計算部213は、き裂情報入力画面を出力部12に表示する。
ここで、ユーザは、き裂情報入力画面において、初期き裂位置を指定するとともに、き裂想定面の方向を選択する。ここで、例えば、初期き裂位置として、内表面からの距離を指定する。
次に、制御部21は、経過サイクル数、繰り返し数に「1」を加算する。そして、繰り返し数が、第2継続サイクル数に達するまで、以上の処理を繰り返す。
ここでは、上述した鋼管「エルボ」について損傷評価を行なう場合について説明する。
ステップS2−1において、き裂情報入力画面において、HAZ(熱影響部)の内表面近傍の内部き裂であって、HAZ(熱影響部)に沿った面に進展するき裂を想定する。この場合、進展計算部213は、設定された初期き裂位置に対応し、鋼管「エルボ」に対して作成した各要素(各格子点)を特定する。更に、進展計算部213は、鋼管「エルボ」において、き裂想定面の方向に存在する各要素(各格子点)を特定する。
ステップS2−2において、進展計算部213は、FEM解析結果記憶部23に記録され、経過時間(30万時間)に対応する材料特性を用いて算出された各要素の応力分布を用いる。
ステップS2−3において、進展計算部213は、き裂位置にある、鋼管「エルボ」に対して作成した各要素(各格子点)と、鋼管「エルボ」の表面(外表面又は内表面)との距離を算出し、この内の最小距離を算出する。そして、進展計算部213は、最小距離が基準深さ値以下の場合には、表面き裂と判定する。一方、最小距離が基準深さ値を超えている場合には、埋没き裂と判定する。
ステップS2−8において、進展計算部213は、き裂想定面において、現在のき裂寸法に、き裂が進展する各方向のき裂進展量を加算して、予想されるき裂の外縁位置(き裂の形状及び大きさ)を算出する。そして、進展計算部213は、この予想されるき裂の外縁位置に近似する楕円の中心位置(き裂位置)とき裂寸法とを算出して、き裂状態記憶部24に記録する。
図8では、き裂状態記憶部24に記録されているき裂寸法の時間依存性を示している。この場合、サイクル数に対応する時間を横軸にしている。ここでは、HAZ(熱影響部)の内表面近傍に内部き裂を想定し、30万時間の応力分布を用いて、HAZ(熱影響部)に沿って進展すると仮定している。図8における実線a0は、経過時間に係らず一定の材料特性を用いて算出した30万時間における応力を用いてき裂進展解析を行なった結果である。また、同図における実線b0は、経過時間に応じた材料特性を用いて算出した30万時間における応力を用いてき裂進展解析を行なった結果である。き裂寸法が急激に大きくなる時期は、材料劣化を考慮せず一定の材料特性を用いた場合(実線a0)より、材料劣化を考慮し経過時間に応じた材料特性を用いた場合(実線b0)の方が遅いことを示している。
この図9から、母材部への到達以降は、母材部におけるき裂進展の速度が遅くなり、例えば、限界き裂寸法を「30mm」と仮定すると、構造物の寿命が長くなる(70年から90年に延びる)と評価することができる。このように、き裂進展速度を切り替えて、損傷を評価することができる。更に、経過時間(図9の保持時間)に応じた材料特性の変化(例えば、変形し易い材料特性に変化)を考慮して、応力を計算し、き裂寸法や寿命を評価することができる。
(1)本実施形態では、基礎情報記憶部22には、計算対象の構造物に関する基礎情報(構造物の形状、荷重条件、構造物の材料特性)に関する情報が記録される。制御部21の管理部210は、出力部12に、評価対象指定画面を出力する。そして、FEM計算部211は、構造物の形状や構成要素に応じて、有限要素法に適したメッシュを作成する。これにより、異なる構成要素から構成された構造物において、有限要素法による解析を行なって、異なる構成要素を横断したき裂状態を効率的に評価することができる。
・上記実施形態においては、損傷評価システム20の制御部21は、火力発電所における高温機器(設備)の損傷を評価した。評価対象となる構造物は、火力発電所において用いられる構造物に限定されるものではない。また、上記実施形態においては、溶接部、HAZ(熱影響部)、母材部を異なる材料特性として説明したが、必ずしもこれに限定されることなく、異なる材料特性を有する複数の部分から構成される構造物全般に適用することができる。
Claims (5)
- 材料特性が異なる複数の部分から構成された構造物について、前記部分毎の経過時間に応じた材料特性及び位置に関するデータを記憶した基礎情報記憶部に接続され、前記構造物におけるき裂状態を評価する制御部を備えた損傷評価システムであって、
前記制御部は、
前記基礎情報記憶部に記憶されたデータを用いて、前記構造物を構成する各要素の位置に応じて経過時間に応じた材料特性を特定し、前記構造物に荷重を負荷して前記各要素の応力を算出し、
前記算出した応力に基づいて、き裂のき裂進展速度を算出し、
前記き裂進展速度から前記き裂のき裂状態を特定して出力することを特徴とする損傷評価システム。 - 前記荷重は、前記構造物の運転及び停止からなる運転サイクルに応じた荷重であって、
前記制御部は、
前記基礎情報記憶部に記憶されたデータを用いて、前記構造物の各要素の位置に応じて材料特性を特定し、前記運転サイクルにおける荷重を負荷して、前記各要素の応力を算出し、
前記算出したき裂状態に応じて、き裂の要素の材料特性を取得し、
前記材料特性に基づいて、き裂進展速度を算出することを特徴とする請求項1に記載の損傷評価システム。 - 前記制御部は、
前記基礎情報記憶部に記憶されたデータを用いて、前記構造物の各要素の位置に応じて材料特性を特定し、前記荷重を負荷した有限要素解析によって、前記各要素のひずみ、温度及び応力を算出し、
前記各要素のひずみ、温度及び応力を用いて、前記運転サイクルにおける各要素における損傷率を算出し、
前記損傷率を用いて予測された初期き裂発生位置を含む最初のき裂状態を特定し、
き裂状態と、算出した前記各要素の応力とを用いて、き裂進展速度を算出し、このき裂進展速度から新たなき裂状態を特定する処理を繰り返し実行して、き裂状態を特定することを特徴とする請求項2に記載の損傷評価システム。 - 前記制御部は、前記損傷率がき裂発生判定値を超えた箇所を、初期き裂発生位置として特定することを特徴とする請求項3に記載の損傷評価システム。
- 材料特性が異なる複数の部分から構成された構造物について、前記部分毎の経過時間に応じた材料特性及び位置に関するデータを記憶した基礎情報記憶部に接続された制御部を備えた損傷評価システムを用いて、前記構造物におけるき裂状態を評価する損傷評価プログラムであって、
前記制御部を、
前記基礎情報記憶部に記憶されたデータを用いて、前記構造物を構成する各要素の位置に応じて経過時間に応じた材料特性を特定し、前記構造物に荷重を負荷して前記各要素の応力を算出し、
前記算出した応力に基づいて、き裂のき裂進展速度を算出し、
前記き裂進展速度から前記き裂のき裂状態を特定して出力する手段
として機能させることを特徴とする損傷評価プログラム。
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