JP6450076B2 - 航空機、航空機のエンジンパイロン、および航空機の機体へのエンジン取付方法 - Google Patents
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Description
主翼にエンジンを取り付ける際は、エンジンを覆うナセルやフェアリングを開き、主翼に設けられたパイロンの下方までエンジンを台車で運ぶ。そして、エンジンを吊りながら、ファスナや工具を用いてエンジンをパイロンに固定する。
それらの補機の存在により、パイロンにエンジンを取り付ける際、ファスナや工具を挿入したり、工具を動かすための作業用スペースをパイロンとエンジンとの間やその付近に確保できない場合がある。
その場合、パイロンまたはエンジンから、補器を構成する部材(例えばダクト等)を取り外して作業に必要なスペースを空けることはできるが、補器の部材を取り外してから、エンジン取付後に、その補器部材をパイロンまたはエンジンに組み付ける戻り作業が発生する。この戻り作業に大きな手間が掛かることは避けたい。
そして、周囲の配管を取り外してから熱交換器ダクトを取り外し、エンジンを取り付けた後、熱交換器ダクトを元の位置に組み付けてから、周囲の配管も元の位置に組み付けることとなるので、多くの戻り作業が発生する。
しかし、熱交換器のダクトの先端のすぐ隣には、ファンケースがあり、エンジンの取り付けを終えた後、熱交換器のダクトの先端とファンケースとの間にそのフレーム状部材を差し込むスペースが足りない。そうすると、フレーム状部材の内側にダクト先端を挿入し、フレーム状部材によりダクト先端を取り囲むことができないので、ダクトにフレーム状部材を組み付けることができない。
そして、エンジンの取り付けを終えた後、補機部材を被組付部材に組み付けようとするとき、補機部材の包囲部の内側に筒体の端部を挿入するために必要なスペースが残されていない場合であっても、補機部材の分割された部品によりパイロンの左右両側から筒体の外周を取り囲み、被組付部材に組み付けることができる。
本発明では、他の部材を取り除くことなく、パイロンの左側と右側とから筒体の外周にアクセスできるので、補機部材を被組付部材から取り外して作業スペースを空けるにあたり、他の部材を取り外す作業が発生しない。
したがって、被組付部材から取り外した補機部材をエンジン取付後に組み戻すだけで済むので、戻り作業の工数を抑えることができる。
以上により、必要な作業スペースを確保しながら、作業効率よく機体にエンジンを取り付けることができる。
そうすると、補機部材を取り外すことによって生じるスペースが、筒体の蛇腹を縮めることによって拡がるので、エンジンの取り付けに必要な作業用スペースを余裕を持って確保することができる。
本発明における前・後は、航空機の機体の前・後を意味する。
ファンに対向する筒体がファンに近接していると、補機部材の包囲部の内側に筒体を挿入し、包囲部により筒体の端部を取り囲むために必要なスペースが不足しがちとなる。そのため、本発明の補機部材を好適に用いることができる。
本発明の航空機の機体へのエンジン取付方法は、上述の航空機の補機部材を被組付部材から予め外した状態としておき、エンジンをパイロンに取り付けるステップと、エンジンの取り付けを終えた後、筒体の少なくとも端部の外周を補機部材によりパイロンの左側と右側とから取り囲み、被組付部材に補機部材を組み付けるステップと、を備えることを特徴とする。
また、本発明は、上記の各ステップを経て、航空機を製造する方法にも展開される。
本発明の実施形態に係る航空機は、図1に示すターボファンエンジン10を備える。
ターボファンエンジン10は、図示しない主翼の下側にパイロン15を介して支持される。
ターボファンエンジン10には、図示を省略するが、燃料制御装置、燃料ポンプ、点火装置、複数の熱交換器などの種々のエンジン補機が装備される。
また、ターボファンエンジン10には、図示を省略するが、エンジン本体12およびファン13を包囲するナセルと、ナセルの内側でエンジン本体12を包囲する図示しないコアカウルとが設けられる。ナセルは、エアを取り込むエアインレット14の後側に連続する。ナセルとコアカウルとの間には、ファン13から吐出されたエアが流れるバイパス流路が形成される。
パイロン本体151の内部には、燃料、油圧、およびエンジン抽気の各々の配管(ユーティリティ配管)や電気配線等が収容される。
上記のエンジンオイルクーラ17は、パイロン本体151の前側で、パイロン本体151の下面に吊り下げられることで支持される。
プリクーラ18は、エンジンオイルクーラ17よりも後方で、パイロン本体151の下面に吊り下げられる。
エンジンオイルクーラ17およびプリクーラ18の周囲には、ユーティリティ配管が取り回される。
プリクーラ18は、ファン13から流出するエアを熱源とし、エンジン本体12からの抽気を冷却する熱交換器である。高温・高圧のエンジン抽気をそのまま機内空調等における熱源として利用することは難しいため、プリクーラ18によりエンジン抽気を冷却してから、空調等に利用する。
矩形の環状に形成される吸気口フレーム21は、エンジン本体12のケースであるエンジンケース12Aに立設されており、ファン13から流出したエアの吸気口を形成する。
吸気口フレーム21および吸気ダクト171は、ファン13から流出したエアをエンジンオイルクーラ17のプレートフィンタイプの本体170に導く流路を形成する。
本体170には、排気ダクト173が接続されている。
エンジン本体12から吸気口フレーム21を介してエンジンオイルクーラ17へと伝わる振動を低減するため、吸気ダクト171は、長さ方向の少なくとも一部に蛇腹状に形成された振動減衰部172を有する。振動減衰部の形態は任意であり、複数のフランジ配管が連設された振動減衰部を構成することもできる。
ターボファンエンジン10の取り付けは、新規に設計された航空機を製造する際や、エンジンを換装した航空機を製造する際、あるいは、エンジンの不具合等に起因するエンジン交換の際に行われる。
ターボファンエンジン10を取り付ける際、ナセルおよびフェアリングが、各々の上部に前後方向に設けられたヒンジを中心として外側に開かれる。これによってパイロン本体151が露出する。
そのパイロン本体151の下方まで、台車19に載せたターボファンエンジン10を運搬する。
そして、ターボファンエンジン10をパイロン15に吊ることによって台車19から少し持ち上げ、パイロン本体151やパイロンの支柱にターボファンエンジン10をファスナで締結する。そのときに、ファスナや締結用の工具を挿入したり、工具を動かすことを可能とする作業用スペースが必要となる。
本実施形態は、ナセルの径に対するターボファンエンジン10の径が典型的なケースに比べて大きいため、ナセルの内周とエンジン本体12の外周との間の間隔が狭い。この狭い間隔に多数の補機類が配置されるために、補機類同士が近接している。ナセルの径は、地上高制限と、重量増を避けるために主脚を長くすることが難しいことから、上限が定まるので、ナセルとエンジン本体12との間の間隔を拡げるのは難しい。
ナセルとエンジン本体12との間の間隔が狭いために、パイロン15とエンジン本体12との間の間隔も狭い。このため、ターボファンエンジン10をパイロン本体151に取り付ける作業は、補機類と補機類との間に残された狭いスペースにファスナや工具を挿入し、工具を動かして行うこととなる。
また、同様に、プリクーラ18とエンジン側補機類20との間にも、工具やファスナを扱うためにクリアランス以上のスペースが必要となるので、台車19の台の高さを抑えることにより、それらの間に高さH2のスペースを確保している。
しかし、パイロン本体151の前端側には、吸気ダクト171および吸気口フレーム21が存在することにより、作業に必要なスペースが残されていない。
しかし、パイロン本体151の前端側には、工具やファスナを扱うための作業用スペースが必要である。
このため、吸気口フレーム21がエンジン本体12に対して着脱可能に構成されており、ターボファンエンジン10をパイロン15に取り付ける際には、図2に示すように、予め、吸気口フレーム21をターボファンエンジン10から取り外した状態としておく。それによって生じるスペースSを利用してターボファンエンジン10の取り付け作業を行う。
吸気口フレーム21は、図4(a)および(b)に示すように、吸気ダクト171の前端を取り囲む環状の包囲部211と、吸気ダクト171の前端よりも前方に突出し、ファン13のケースであるファンケース13Aの後端に対向する環状の突出部212と、突出部212よりも前方に延びるアーム部215と、包囲部211および突出部212の間に位置し、吸気ダクト171の前端に固定される固定部213と、エンジンケース12Aに固定される固定部214とを備える。
上述のスペースSの寸法は、突出部212およびアーム部215の前後方向の合計の寸法に相当する。
吸気口フレーム21は、固定部213が吸気ダクト171にファスナ等で締結されることにより、吸気ダクト171に対して着脱可能に固定される。
また、吸気口フレーム21は、固定部214がエンジンケース12Aにファスナ等で締結されることにより、エンジンケース12Aに対して着脱可能に固定される。
吸気口フレーム21が環状に一体に構成されているとすると、包囲部211の内側に吸気ダクト171の前端をセットするには、吸気ダクト171よりも前方に吸気口フレーム21を配置して、そこから吸気口フレーム21を後側に動かすことが必要となる。
その場合、スペースSに吸気口フレーム21を側方から差し込めなければ、吸気口フレーム21を吸気ダクト171に接続してエンジン本体12に組み付けることは不可能である。
左側フレーム部品21Lおよび右側フレーム部品21Rは、図4(a)の矢印で示すように、パイロン15の左側と右側とに分離可能であり、吸気ダクト171を包囲して一体に組み付けられる。
そうすると、スペースSに吸気口フレーム21を差し込めなくても、左側フレーム部品21Lおよび右側フレーム部品21Rを吸気ダクト171に対してパイロン15の左右両側からアクセスして一つに合わせることにより、包囲部211の内側に吸気ダクト171の前端をセットすることができる。その状態で固定部213を吸気ダクト171の前端に固定すると、吸気ダクト171に吸気口フレーム21が接続され、スペースSには突出部212およびアーム部215が配置される。
そして、エンジンケース12Aに固定部214を固定すると、エンジン本体12に吸気口フレーム21が組み付けられる。
そのため、吸気口フレーム21をエンジン本体12から取り外すにあたって他の補機類を取り除く作業が発生しない。
まず、機体が設置された場所に搬入されたターボファンエンジン10のエンジン本体12から、吸気口フレーム21を左側フレーム部品21L、右側フレーム部品21Rともに取り外す(ステップS11)。
但し、これらのフレーム部品21L,21Rがエンジン本体12に取り付けられておらず、ターボファンエンジン10とは分離した状態で搬入されれば、ステップS11は不要となる。
そして、パイロン15にターボファンエンジン10を吊り下げ、取り付け作業を開始する(ステップS13)。
もし、吸気口フレーム21がエンジン本体12から未だ取り外されていなければ、エンジンの取り付け作業を開始する前に、吸気口フレーム21を取り外す。
このとき、パイロン本体151とエンジン本体12との間には、エンジンオイルクーラ17やプリクーラ18とエンジン側補機類20との間のスペース、エンジンオイルクーラ17とプリクーラ18との間のスペースに加えて、吸気ダクト171の前端とファンケース13Aの後端との間のスペースS(図2)も残される。このスペースSを含めて、パイロン本体151とエンジン本体12との間の空きスペースにファスナや工具を挿入して締結作業を行う。
ここで、吸気ダクト171の振動減衰部172が蛇腹状に形成されていると、振動減衰部172を縮め、余裕を持ってスペースSを確保することができる。
このステップS14と前後して、吸気口フレーム21をエンジンオイルクーラ17の吸気ダクト171に接続し、エンジン本体12に組み付ける(ステップS15)。
ステップS15では、左側フレーム部品21Lおよび右側フレーム部品21Rにより、吸気ダクト171の外周を左右両側から取り囲み、包囲部211の内側に吸気ダクト171の前端をセットする。そして、固定部213を吸気ダクト171に締結することにより、吸気ダクト171に吸気口フレーム21を接続する。
さらに、固定部214をエンジンケース12Aに締結することにより、吸気口フレーム21をエンジン本体12に取り付ける。
以上のステップを経て、ターボファンエンジン10の取り付けを完了する。
仮に、吸気ダクト171を取り外すことでスペースSを空けるとなると、吸気ダクト171の周囲に取り回されたユーティリティ配管を分割構造としておき、ユーティリティ配管を部分的に取り除いてから吸気ダクト171を取り外すこととなる。その場合、ターボファンエンジン10の取付後に多くの戻り作業が生じるが、本実施形態では最小限の戻り作業しか生じない。
したがって、必要な作業スペースを確保しながら、作業効率よく機体にエンジンを取り付けることができる。
吸気口フレーム21は、パイロン15の左側と右側とに分割されている限り、二分割にかぎらず、例えば四分割されていてもよく、部品の数は任意である。例えば、左側フレーム部品21Lおよび右側フレーム部品21Rの各々が上下に二分割されていてもよい。この場合、吸気口フレーム21の左右両側に位置する他の部材を上または下にかわしながら、各部品を吸気ダクト171に対して着脱することができる。
上下方向の作業用スペースを確保する必要がある場合は、上下に延出するダクトに接続される補機部材をエンジン取付前に取り外すことができる。
12 エンジン本体
12A エンジンケース(被組付部材)
13 ファン
13A ファンケース
15 パイロン
17 エンジンオイルクーラ(エンジン補機)
18 プリクーラ
19 台車
20 エンジン側補機類
21 吸気口フレーム(補機部材)
21L 左側フレーム部品
21R 右側フレーム部品
151 パイロン本体
170 本体
171 吸気ダクト(筒体)
172 振動減衰部
211 包囲部
212 突出部
213 固定部
214 固定部
215 アーム部
L 中心線
S スペース
S11〜S15 ステップ
Claims (13)
- エンジンを機体に支持するために用いられるパイロンと、前記エンジンとの間に、前記パイロンおよび前記エンジンの少なくとも一方である被組付部材に組み付けられた状態で配置されるエンジン補機を構成する補機部材を備える航空機であって、
前記補機部材は、
前記補機部材に接続される筒体の少なくとも端部を取り囲む包囲部と、
前記筒体の端部から突出する突出部と、を有し、
前記補機部材は、
前記包囲部および前記突出部を含む全体として、前記パイロンの左側と右側とに分離可能に分割され、
他の部材を取り除くことなく、前記パイロンの左側と右側とから前記筒体の外周にアクセスし、前記被組付部材に対して着脱可能である、
ことを特徴とする航空機。 - 前記筒体の少なくとも一部は、蛇腹状に形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の航空機。 - 前記エンジンは、
エンジン本体およびファンを備えるターボファンエンジンであり、
前記エンジン補機は、
前記パイロンと前記エンジン本体との間に配置され、前記ファンから流出するエアを熱源とする熱交換器であり、
前記包囲部により、
前記熱交換器を構成する前記筒体の少なくとも端部が取り囲まれる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の航空機。 - 前記パイロンと前記エンジン本体との間には、前記熱交換器である第1熱交換器と、前記エアを熱源とする第2熱交換器とが前後に配置され、
前記パイロンの前側および後側の少なくとも一方で、前記第1熱交換器または前記第2熱交換器を構成する前記筒体の端部が、前記包囲部により取り囲まれる、
ことを特徴とする請求項3に記載の航空機。 - 前記包囲部により、
前記ファンに対向する前記筒体の端部が取り囲まれる、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の航空機。 - 前記エンジン補機は、
前記パイロンと前記エンジンのエンジン本体との間に配置される熱交換器であり、
前記筒体は、前記熱交換器の吸気ダクトである、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の航空機。 - 前記熱交換器は、エンジンオイルクーラーである、
ことを特徴とする請求項6に記載の航空機。 - 前記熱交換器は、前記パイロンに吊り下げられる、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の航空機。 - 前記吸気ダクトは、前記補機部材としての吸気口フレームと接続される、
ことを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の航空機。 - 前記被組付部材は前記エンジンである、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の航空機。 - エンジン本体およびファンを備えるターボファンエンジンを航空機の機体に支持するために用いられるパイロンであって、
前記パイロンと前記エンジン本体との間に前後に配置され、前記ファンから流出するエアを熱源とする2つの熱交換器を支持し、
請求項1から10のいずれか一項に記載の航空機の前記補機部材が組み付けられ、
2つの前記熱交換器のうち前方に配置される前記熱交換器は、
前記ファンに対向する筒体を有し、
前記筒体の少なくとも前端は、
前記包囲部により取り囲まれる、
ことを特徴とする航空機のエンジンパイロン。 - 請求項1から10のいずれか一項に記載の航空機の前記補機部材を利用して航空機の機体にエンジンを取り付ける方法であって、
前記補機部材を前記被組付部材から予め外した状態としておき、前記エンジンを前記パイロンに取り付けるステップと、
前記エンジンの取り付けを終えた後、前記筒体の少なくとも端部の外周を前記補機部材により前記パイロンの左側と右側とから取り囲み、前記被組付部材に前記補機部材を組み付けるステップと、を備える、
ことを特徴とする航空機の機体へのエンジン取付方法。 - 請求項12に記載の航空機の機体へのエンジン取付方法における各ステップを経て、航空機を製造する方法。
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