JP6448995B2 - 電気自動車のモータ駆動装置 - Google Patents
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Description
電気自動車の走行用のモータには、種々のモータを使用可能であるが、性能面を考慮し永久磁石を用いた同期モータを用いるのが一般的である。また、このモータを駆動する際、回転センサを用いずに駆動する方法も存在するが、多くの場合はモータの出力軸か、増速・減速された後の近傍の回転軸に回転センサを取り付け、モータ内のコイルと磁石の位置関係を取得し、そこから最適な電流量を決定する方法を用いるのが一般的である。
一つ目は、任意の位置関係で組み付けた後に、制御上でセンサ原点P1と電気角原点P2の成す角を加える方法である。具体的な方法を示す。回転センサとステータ、ロータの3つの位置関係を任意に置くと、センサ原点P1と電気角原点P0の間はθo という角度を持つ。回転センサ4はセンサ原点P1から検出点P2の間のθを検出するものであり、制御上必要な角度は、電気角原点P0から検出点P2までの角度であるため、θ+θo を制御に用いればよいことになる。そこで、実験により求めたθo をオフセット量としてプログラム内に保存し、制御時に逐次測定したθに加えてθ+θo とすることにより、必要な角度を得る方法である。
2つ目は、2つの原点P1,P0をずれ無く組み付ける方法である。この方法であれば、上記のオフセット量θoを考慮する必要がない。具体的には、回転センサとステータ、ロータの3つの位置関係が崩れないように固定する治具を用意し、θo =0となるように回転センサ4を取り付ける。
同期モータは電気自動車だけでなく、産業用(大型機械用)として多く用いられてきた。そこでも同様に、上記の2つの原点P1,P0のずれが生じ、正しいオフセット量θoを用いて制御を行っている。この時のオフセット量θoの適応方法は、産業用においてはモータ駆動装置にインターフェイスが取り付けられているのが一般的であり、そのインターフェイスを用いてオフセット量θoを入力し、不揮発性の記憶領域(EEPROM等)に保存することが多い。
一方電気自動車においては、耐久性の問題や、安易な操作による事故防止の観点から、このようなインターフェイスがモータ駆動装置本体および電気自動車内に設置されることはほとんどない。そのため、プログラム内のオフセット量θoを示す変数を変更の上、機械語に変換(一般的にはビルドと呼ぶ)し、モータ駆動装置の制御プログラムを実行するCPU の命令記憶領域に保存する方法を取る必要があった。
上述の理由により、プログラムの一部をモータの個体に適した値に書き換え、ビルドによって機械語に変換されたものをCPUに焼き込むことは難しいが、モータ駆動装置が制御に必要なパラメータを保存する不揮発性記憶装置(例えばEEPROM)を備えている場合、そこにオフセット量を保存することは容易である。具体的には、汎用の外部接続装置をモータ駆動装置と接続し、外部接続装置とモータ駆動装置のCPUと通信させ、外部接続装置からの指令によりCPUがEEPROMに所定のパラメータを保存する方法である。
また、モータ制御に必要な定数(例えばオフセット量や、回転の向き)は、必ず必要なものであるが、従来の各技術は、モータとモータ制御装置を製造した時点では不定な数値を、外部から追記(書き換え)を行うことを前提として製造するものではない。上記のように特に不具合がない場合は走行できるように製造されたモータ駆動装置につき、更新やカスタマイズを行う技術である。
上記モータ2の制御に用いる定数を記憶する記憶手段14と、情報を送信可能な外部接続装置17に接続解除自在に接続されて上記外部接続装置17と通信が可能な外部通信インターフェイス18と、上記記憶手段14に記憶する上記定数のうちの、互いに構成が同じ上記モータ2の個体に特有の値となる定められた定数を、上記外部接続装置17から上記外部通信インターフェイス18を介して送信される数値に設定する定数設定処理手段19とを有し、上記外部接続装置17により上記記憶手段14の設定内容を変更する変更可能な上記定数の項目が定められており、
上記モータ2が回転角センサ4を備え、この回転センサ4の測定基準となるセンサ原点P1と、上記モータ2の制御上必要となるモータ2の制御基準点である電気角原点P0とにオフセット量θoがあり、上記変更可能な定数の項目として上記オフセット量θoを含み、上記定数設定処理手段19は、上記外部接続装置17から送信されて設定する定数として、少なくとも上記オフセット量θoを含むことを特徴とする。
なお上記の「定数」は、フラグのような2値のいずれかを示す数を含む意味である。
モータ2の制御上必要な定数のうち、個体差が生じる代表的な定数は、上記センサ原点P1と電気角原点P0のオフセット量θoである。このオフセット量θoは、モータ2の製造時に計測してモータ自体に刻印等で記録しておくことで、既知の値となる。モータ2の故障やモータ駆動装置3の故障等でこれらモータ2とモータ駆動装置3との組み合わせを変更したときは、上記既知のオフセット量θoを上記外部接続装置17からモータ駆動装置3に入力することで、モータ2の個体差となるセンサ原点P1と電気角原点P0のオフセット量θoが問題となることなく、モータ2とモータ駆動装置3との組み合わせの変更が行える。
これらの場合に、上記定数設定処理手段19により定数を設定する上記記憶手段14が不揮発性記憶装置14であっても良い。
不揮発性記憶装置14に上記オフセット量θoを記憶しておくことで、上記オフセット量θoの記憶が不測に消失することを回避できる。
不揮発性記憶装置14からの情報の読み出し速度は、一般的には比較的に遅く、高速回転するモータ2の制御時に読み出すのではモータ制御が高精度に行えない場合がある。しかし、モータ駆動装置3の電源投入時に、モータ制御に使用する適宜の記憶領域16、例えばモータ駆動装置3を構成するCPU中のレジスタ等に記憶しておくことで、高速制御が可能となる。このように、オフセット量θoの不測の消失の回避と、読み出し速度の高速化による高精度な制御とを両立させることができる。
モータ2の形式によっては、単独では回転方向の正方向をいずれの方向にも設定可能なものがあり、特にインホイールモータ駆動装置7では、同じ構成のインホイールモータ駆動装置7を左右の車輪9に互いに向きを逆として用いることがある。このような場合に、上記定数設定処理手段19が、上記外部接続装置17から送信されて設定する数値として、上記モータ2の回転方向の正方向を指定する値を含むようにしてあると、同じ構成のモータ2を設置箇所に応じて任意の向きに設置しても、正逆の回転方向を適正に認識して制御可能となる。
なお、電気自動車1は、前後の車輪8,9にインホイールモータ駆動装置7を搭載した4輪駆動であっても良く、前輪の車輪8のみにインホイールモータ駆動装置7を搭載した前輪駆動であっても良く、またモータ2を車台(図示せず)上に搭載した1モータ型または2モータ型の車両であっても良い。1モータ型の場合、独立したECU10を設けずに、モータ駆動装置3にECU10の機能を備えるように構成される場合もある。
なお、CPU内に不揮発性の特徴を持ちながら書き換えが容易(プログラム動作により内容を変更可能)な領域があれば、CPUの外部に不揮発性記憶領域を持つ必要はなく、上記不揮発性記憶装置14は、CPU内に設けられた上記の不揮発性の特徴を持ちながら書き換えが容易な領域で構成される。
上記記憶定数読出手段20は、より具体的には図4(B)に示された流れ図の処理を行う。
上記記憶定数読出手段20は、より具体的には図5に示された流れ図の処理を行う。
モータ2の個体差により決定されるオフセット量θo は、モータ製造時に算出され、例えば刻印により明記されたり、データシートにより記録されたりしているものとする。モータ2を車両に組み付ける作業者(車両組み立て作業者、もしくは車両修理工場の作業者)は、モータ駆動装置3に外部接続装置17を接続し通信を行う。実際には外部接続装置17は、モータ駆動装置3内の制御演算部12の定数設定処理手段19等と外部通信インターフェイス18を介して通信する。
具体的には、上記通信の開始の後、外部接続装置17は変更許可の依頼を行い(ステップQ2)、変更許可を持つ(ステップQ3)。モータ駆動装置3では、上記変更許可の依頼を受信すると(ステップR2)、適正な通信か否かを判断し(ステップR3)、適正な通信であると通信許可を送信する(ステップR4)。
オフセット量θo を受信(ステップR5)した制御演算部12は、揮発性保存領域16に保存したり、保存に適した数値形式に変換したりするなどの処理を行った後、不揮発性記憶装置14の指定されたアドレスに保存する(ステップR6)。作業者は外部接続装置17とモータ2との通信を切断し作業を終了する。説明の簡単のため、モータ駆動装置3は一度電源がオフになったとして説明する。
モータ駆動装置3に電源が投入されると、起動を確認し(ステップS1)、その後にプログラムメモリに保存されたプログラムを実行し始める。プログラムが各種変数の初期設定を行っている中に(ステップS2)、オフセット量θo の読み出しが規定されており、不揮発性記憶装置14からオフセット量θo を読み出す(ステップS3)。読み出したオフセット量θo を揮発性記憶領域16に保存し以後の制御に用いる。
まず、市場での修理が容易になることである。先述の通り、オフセット量を必要とする制御方法を採用している場合、モータ2かモータ駆動装置3のどちらかが故障し、交換が必要となった場合でも、外部接続装置17を用いればオフセット量θoを変更することができるためである。
次に、モータ2およびモータ駆動装置3の組み合わせと紐付に留意する必要が無くなることである。これは、動力線や回転角センサ、制御方法が共通化されていれば、モータ2とモータ駆動装置3のいくつかの選択肢のうち、どの組み合わせも採ることができるためである。また、モータ2を制御する上で問題となり得る個体差であるオフセット量θoを、簡単にモータ駆動装置3に記憶させることができるため、モータ2とモータ駆動装置3の紐付に留意する必要が無くなるためである。
これに対して、この実施形態では、モータ2の制御に必要な定数(ここではオフセット量θoや、回転の向き)は、必ず必要なものであるが、モータ2とモータ制御装置3を製造した時点では不定な数値を、外部から追記(書き換え)を行うことを前提として製造する。
この実施形態の構成を用いることで、必要な変更を行うことができるが、変更可能な項目があらかじめ決められているため、プログラムを直接書き換えることにより起こり得る、変更してはならない制御定数の不要な変更によりモータ駆動装置3やモータ2が暴走したり、プログラムの通信機能に関する部分を変更してしまい通信機能を喪失してしまったりすることを予防することができる。
2…モータ
3…モータ駆動装置
4…回転センサ
7…インホイールモータ駆動装置
8,9…車輪
10…ECU
11…回転角算出部
12…制御演算部
13…モータ駆動部
14…不揮発性記憶装置(記憶手段)
15…モータ駆動演算部
16…揮発性記憶領域
17…外部接続装置
18…外部通信インターフェイス
19…定数設定処理手段
20…記憶定数読出手段
21…トルク指令手段
P0…電気角原点
P1…センサ原点
θo…オフセット量
Claims (5)
- 電気自動車の走行駆動源となるモータを駆動するモータ駆動装置において、
上記モータの制御に用いる定数を記憶する記憶手段と、情報を送信可能な外部接続装置に接続解除自在に接続されて上記外部接続装置と通信が可能な外部通信インターフェイスと、上記記憶手段に記憶する上記定数のうちの、互いに構成が同じ上記モータの個体に特有の値となる定められた定数を、上記外部接続装置から上記外部通信インターフェイスを介して送信される数値に設定する定数設定処理手段とを有し、上記外部接続装置により上記記憶手段の設定内容を変更する変更可能な上記定数の項目が定められており、
上記モータが回転角センサを備え、この回転センサの測定基準となるセンサ原点と、上記モータの制御上必要となるモータの制御基準点である電気角原点とにオフセット量があり、上記変更可能な定数の項目として上記オフセット量を含み、上記定数設定処理手段は、上記外部接続装置から送信されて設定する定数として、少なくとも上記オフセット量を含むことを特徴とする電気自動車のモータ駆動装置。 - 請求項1に記載の電気自動車のモータ駆動装置において、上記外部接続装置は、上記変更可能な項目から選択した項目の定数の数値を変更する電気自動車のモータ駆動装置。
- 請求項1または請求項2に記載の電気自動車のモータ駆動装置において、上記定数設定処理手段により定数を設定する上記記憶手段が不揮発性記憶装置である電気自動車のモータ駆動装置。
- 請求項3に記載の電気自動車のモータ駆動装置において、上記不揮発性記憶装置に記憶された上記オフセット量を、上記モータ駆動装置の電源投入に応答して、モータ制御に使用する記憶領域に読み出す記憶定数読出手段を設けた電気自動車のモータ駆動装置。
- 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電気自動車のモータ駆動装置において、上記モータが、単独では回転方向の正方向をいずれの方向にも設定可能であり、車両への取付方向によって上記正方向が定まる形式であり、上記定数設定処理手段は、上記外部接続装置から送信されて設定する定数の数値として、上記モータの回転方向の正方向を指定する値を含む電気自動車のモータ駆動装置。
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