ディーゼルエンジンを搭載したエンジン駆動発電機において,無負荷運転あるいは軽負荷運転時に発生した未燃焼ガスや未燃焼エンジンオイルの一部は,前述したように白煙やタール状の液体として排気ガスと共に機外に排出される。
しかし,エンジン内で発生した未燃焼ガスや未燃焼エンジンオイルは,その全てが排気ガスと共に排出される訳ではなく,前述したようにスス等と結合して粘り気のあるカーボンとして,ピストンの側面,バルブ,排気管の内面等に付着する。
このようにしてピストンの側面,バルブ,排気管の内面に付着したカーボンは,無負荷運転,あるいは軽負荷運転を継続する限りでは大きな問題を起こさないが,このようなカーボンが付着した状態でエンジン駆動作業機に高負荷運転,あるいは全負荷運転を行わせると,シリンダ内の燃焼温度や排気路内の排気温度が上昇して,ピストンの側面,バルブ,排気管の内面等に付着していたカーボンが炭化して固まる。
その結果,ピストンやバルブの摺動抵抗や排気管の排気抵抗が大幅に増大し,これらの抵抗の増大はエンジンの出力を低下させる結果,必要な電力を発生させることができなくなる。
また,付着したカーボンの量によっては,ピストンやバルブにかじりや焼き付きが発生し,また,排気管内で火炎が発生する等して,エンジンを故障させてしまうこともあり得る。
そのため,消費電力に対し余力のある比較的大型のエンジン駆動発電機を使用する等して,普段,高負荷運転や全負荷運転をさせる機会のないエンジン駆動発電機を高負荷運転,あるいは全負荷運転させる場合や,停電や災害の発生時等の有事においてしか使用しない非常用電源として設置しているエンジン駆動発電機を,定期的に行うメンテナンスで動作確認する際に,無負荷運転,あるいは軽負荷運転しか行っていない場合では,気付かないうちにカーボンの堆積が進行し,有事の際等に,いざ,エンジン駆動発電機を高負荷運転あるいは全負荷運転させようとすると,必要な電力が得られない,あるいは故障してしまうといった重大な問題が生じ得る。
このように,エンジン駆動発電機を無負荷運転,あるいは低負荷運転する場合に予想される弊害に対し,前掲の特許文献1として紹介した白煙低減装置を備えたエンジン駆動発電機では,ディーゼルエンジンが定格回転状態で,かつ,軽負荷状態にあるとき,排気経路内に設けた電気ヒータを作動させることで,排気経路内を通過する未燃焼ガスや未燃焼エンジンオイルを気化して燃焼させることで,白煙の発生を防止することができるようになっている。
しかし,特許文献1に記載のエンジン駆動発電機では,一旦発生した未燃焼ガスや未燃焼エンジンオイルを,排気経路内において『事後的』に気化,燃焼させて除去することにより白煙の低減を図るものであり,未燃焼ガスや未燃焼エンジンオイルの発生自体を防止,あるいは減少させるようというものではない。
その結果,排気経路内において気化した未燃焼ガスである白煙の発生については低減することができるかも知れないが,排気経路よりも上流側で生じるピストンの側面やバルブに対するカーボンの付着を防止できるものとはなっておらず,また,エンジンオイル等と結合して排気管の内壁にこびり付いたカーボン等,気化・燃焼させ難いものも除去できず,このようなカーボンの堆積によって無負荷運転あるいは低負荷運転を継続した後に,高負荷運転あるいは全負荷運転を行うと,必要な出力が得られない,あるいは,エンジンが破損するといった重大な問題が生じ得る。
しかも,ユーザは,白煙が混ざるといった排気ガスの異常を手掛かりの一つとして,未燃焼ガスや未燃焼エンジンオイルの発生を認識するのが一般的であるが,特許文献1に記載の発明では,未燃焼ガスや未燃焼エンジンオイルが発生しているにも拘わらず,ユーザがこれを認識するための手掛かりとする白煙の発生のみを低減させてしまっているために,ディーゼルエンジンに致命的な損傷を与えかねないピストンやバルブ,排気経路内壁に対する前述したカーボンの堆積を,ユーザが予測することを却って困難にしている。
本発明は,上記従来技術における欠点を解消するために成されたものであり,駆動源としてディーゼルエンジンを備えたエンジン駆動発電機において,無負荷運転,あるいは,軽負荷運転を行った場合であっても,未燃焼ガスや未燃焼エンジンオイル,スス等の発生を防止,あるいは大幅に低減することができ,その結果,排気ガスに白煙が混ざり,あるいは排気ガスと共にタール状の液体等が飛散してボンネットを汚すといった問題の発生を防止できるだけでなく,未燃焼ガスや未燃焼エンジンオイル,スス等の発生に伴って生じるピストンやバルブ,排気管内面に対するカーボンの付着や堆積を防止でき,その結果,長期に亘り無負荷運転あるいは低負荷運転のみを行っていた状態から,高負荷運転あるいは全負荷運転を行った場合であっても,エンジンの出力低下や破損が発生するといった重大な問題の発生を防止できるエンジン駆動発電機を提供することを目的とする。
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
上記目的を達成するために,本発明のエンジン駆動発電機1は,
水冷式のディーゼルエンジンであるエンジン20と,前記エンジン20により駆動される発電機本体3と,前記発電機本体3に主供給回路70を介して接続された出力端子台71を備え,前記出力端子台71に接続された電気機器5に対し,前記発電機本体3で発生した電力を供給可能に構成したエンジン駆動発電機1において,
前記発電機本体3が発電した電力によって作動し,前記エンジン20の冷却水を加熱する電気ヒータ44と,
該電気ヒータ44のON,OFFを制御するヒータ制御手段30を設け,
該ヒータ制御手段30が,前記出力端子台71に接続された電気機器5の消費電力が所定の加熱開始基準値以下であるとき前記電気ヒータ44をONとし,前記エンジン20の負荷トルクを増大させて前記エンジン20のシリンダ内の燃焼温度を未燃焼ガス及び未燃焼オイルの発生を防止又は減少し得る温度に上昇させると共に,所定の加熱終了基準値を超えたとき,前記電気ヒータ44をOFFとすることを特徴とする(請求項1)。
上記構成のエンジン駆動発電機1において,前記加熱開始基準値を,前記加熱終了基準値に対し低く設定するものとしても良い(請求項2)。
前記ヒータ制御手段は,前記消費電力が加熱開始基準値以下の状態を所定時間継続したときに前記電気ヒータをONにするものとしても良く,及び/または,前記消費電力が加熱終了基準値を超えた状態を所定時間継続したときに前記電気ヒータをOFFにするものとしても良い(請求項3,4)。
更に,前記ヒータ制御手段30は,
前記出力端子台71に接続された電気機器5による消費電力の変化に応じて変化する可変信号を出力する可変信号出力手段(31,31’)と,
前記可変信号出力手段(31,31’)が出力した前記可変信号に基づいて,前記発電機本体3と前記電気ヒータ44間を接続するヒータ用電源回路74を開閉する開閉手段32を備えた構成とすることができる(請求項5)。
上記構成のヒータ制御手段30において,前記可変信号出力手段を,前記主供給回路70に取り付けた変流器31によって構成し,該変流器31の二次電流を前記可変信号として前記開閉手段32に出力するように構成しても良い(請求項6)。
また,前記可変信号出力手段として,前記エンジン20のエンジンコントロールユニット(ECU:Engine Control Unit)31’を使用することができ,該ECUの負荷率信号,又は燃料噴射量信号を前記可変信号として前記開閉手段32に出力するように構成しても良い(請求項7)。
以上で説明した本発明の構成により,本発明のエンジン駆動発電機1によれば,以下の顕著な効果を得ることができた。
エンジンの冷却水を加熱する電気ヒータ44と,前記電気ヒータ44のON,OFFを制御するヒータ制御手段30を設け,前記ヒータ制御手段30を,前記出力端子台71に接続された電気機器5の消費電力が所定の加熱開始基準値以下であるとき前記電気ヒータ44をONとするように構成したことで,出力端子台71に電気機器5を接続していない無負荷運転,あるいは,小消費電力の電気機器5のみを接続した低負荷運転の状態にある場合であっても,電気ヒータ44によって冷却水が加熱されることでエンジン20の温度が上昇し,シリンダ内の燃焼温度を上昇させることができた。
特に,エンジン駆動発電機1の始動直後では,エンジン20や冷却水の温度が低下していてシリンダ内の燃焼温度はより低いものとなるが,無負荷あるいは軽負荷運転状態の場合に電気ヒータ44をONとすることで,冷却水の温度,従ってエンジン20の温度を上昇させることでシリンダ内の燃焼温度を素早く高めることができ,未燃焼ガスや未燃焼エンジンオイル,スス等の発生を素早く抑制することができた。
また,電気ヒータ44をONとすることで,発電機本体3で発生した電力が電気ヒータ44によって消費されるため,電気ヒータ44の消費電力分,エンジン20にかかる負荷トルクが高まることによってもエンジン20のシリンダ内における燃焼温度が上昇する。
このように,冷却水の加熱によってエンジン20の温度が上昇することと,エンジン20にかかる負荷トルクが増加することの相乗効果によって,エンジン20のシリンダ内における燃焼温度を上昇させることができ,これにより未燃焼ガスや未燃焼エンジンオイル,スス等の発生を防止,あるいは大幅に減少させることができ,その結果,白煙の発生,タール状の液体の飛散に伴うボンネットの汚染が防止できるだけでなく,エンジン20に対し深刻なダメージを与えるおそれのあるピストンの側面,バルブ,排気経路等に対するカーボンの堆積を好適に防止することができた。
その結果,例えば長期間,無負荷運転あるいは軽負荷運転しか行っていない状態のエンジン駆動発電機1を,高負荷運転,あるいは全負荷運転させた場合であっても,エンジン20の出力低下や破損などが発生する危険性を大幅に低減させることができた。
前記加熱開始基準値を,前記加熱終了基準値に対し低く設定した構成にあっては,瞬間的な消費電力の増減によって電気ヒータ44のON,OFFが無駄に繰り返されることを防止でき,これにより構成機器の寿命を延ばすことができた。
また,前述のヒータ制御手段30は,前記消費電力が加熱開始基準値以下の状態を所定時間継続したときに前記電気ヒータをONにする,及び/または,前記消費電力が加熱終了基準値を超えた状態を所定時間継続したときに前記電気ヒータをOFFにする構成にあっては,瞬間的な消費電力の増減によって電気ヒータ44のON,OFFが無駄に繰り返されることを防止でき,これにより構成機器の寿命を延ばすことができた。
前述のヒータ制御手段30は,出力端子台71に接続された電気機器5の消費電力の変化に応じて変化する可変信号を出力する可変信号出力手段(31,31’)と,前記可変信号出力手段(31,31’)が出力した前記可変信号に基づいて前記発電機本体3と前記電気ヒータ44間を接続するヒータ用電源回路74を開閉制御する電磁接触器等の開閉手段32という,比較的簡単な構造によって実現可能である。
前述の可変信号出力手段として,主供給回路70に取り付けた変流器31を使用することができ,この変流器31の二次電流を前述の可変信号として利用することで,比較的簡単に消費電力の変化を計測することができた。
また,前述の可変信号出力手段として,エンジンのECU31’を使用すると共に,ECU31’が出力する負荷率信号,又は燃料噴射量信号を前述の可変信号として利用することで,既存のエンジン駆動発電機1が備えている構成であるECU31’を可変信号出力手段としても使用することができ,装置構成の簡略化と部品点数の減少に伴う低コスト化を実現することができた。
以下に,添付図面を参照しながら本発明のエンジン駆動発電機1について説明する。
図1は本発明のエンジン駆動発電機1の概略図であり,図示の例において,エンジン駆動発電機1は,フレーム11とボンネット12によって構成されたパッケージ10内に必要な機器を収容したパッケージ型のエンジン駆動発電機1として構成している。
パッケージ10を構成する前述のフレーム11は,エンジン駆動発電機1の構成機器を搭載するための基台であり,このフレーム11上に,水冷式のエンジン(ディーゼルエンジン)20,前記エンジン20によって駆動される発電機本体3の他,冷却ファン21,ラジエータ22,マフラー23,その他のエンジン駆動発電機1の構成機器を搭載すると共に,これらの機器を搭載したフレーム11上を箱型のボンネット12によって覆うことでパッケージ化している。
前述のパッケージ10内の空間は,仕切壁13によって作業機室10aと排風室10bの2室に区画されており,このうちの作業機室10a内にはエンジン20や発電機本体3を収容すると共に,排風室10b内にはマフラー23やテールパイプ24等の排気系統を構成する機器を収容している。
前述の排気系統は,本実施形態にあっては,エンジン20の排気口(図示せず)に接続された排気管(図示せず),前記排気管に接続されたマフラー23,前記マフラー23の出口に接続されて,マフラー23を通過した排気ガスを大気へ放出するテールパイプ24によって構成しているが,この構成に限定されず,前記マフラー23に替えてDPF(Diesel particulate filter)を設けてもよく,またはマフラーの一次側(エンジン側)にDPFを設ける等してもよい。
前述の仕切壁13には,作業機室10aと排風室10bとを連通する連通口14が開口しており,この連通口14に対向してエンジン20を冷却した冷却水を熱交換するラジエータ22を配置し,ラジエータ22に対しエンジン10側に,ラジエータ22に向かう冷却風を発生させる冷却ファン21を配置している。
従って,冷却ファン21が回転して冷却風が発生すると,作業機室10a内の空気がラジエータ22を通過して,ラジエータ22内の冷却水と熱交換された後,排風室10bに導入され,排風室10bの上部に設けられた放気口15を介してパッケージ10外に放出される。
本発明のエンジン駆動発電機1における冷却水流路の構成例を,図2の冷却水系統図に示す。
水冷式のエンジン20には,シリンダーブロック等にウォータジャケット25と呼ばれる冷却水を導入するための空間が形成されており,このウォータジャケット25と前述のラジエータ22間を配管によって連通することで,ウォータジャケット25を通過してエンジンと熱交換がされた後の冷却水を,ラジエータ22で冷却し,再度ウォータジャケット25に環流させる冷却水流路が形成されている。
この冷却水通路は,前述のウォータジャケット25を流路の一部とし,このウォータジャケット25に対する冷却水の循環を行うためのエンジン側流路40と,前述のラジエータ22を流路の一部とし,前記エンジン側流路40より導入された冷却水を,ラジエータ22を通過させた後に,再度,エンジン側流路40に戻すラジエータ側流路50によって構成されている。
前述のエンジン側流路40は,図示の例ではウォータジャケット25と,前記ウォータジャケットの入口25aに一端41aが連通された入口流路41,前記ウォータジャケット25の出口25bに一端42aが連通された出口流路42,及び,前記出口流路42の他端42bとサーモスタット26を介して一端43aを連通すると共に,前記入口流路41の他端41bに他端43bを連通するバイパス流路43を備えており,前述の入口流路41に,流路内で冷却水の流れを生じさせる冷却水ポンプ47を設けている。
このように構成されたエンジン側流路40には,更に,エンジン側流路40内を流れる冷却水を加熱する電気ヒータ44を設けており,図示の例では,前述の出口流路42に連通された分岐流路46と,バイパス流路43に連通されたる分岐流路45を設け,この分岐流路45,46間に電気ヒータ44を設けている。
この電気ヒータ44はヒータ本体441とこのヒータ本体441を包囲して内部に冷却水を導入するケース442を備え,このケース442を介して分岐流路45と分岐流路46を接続することで,出口流路42より分岐流路46を介してケース442内に導入された冷却水をヒータ本体441によって加熱した後,分岐流路45を介してバイパス流路43に導入することができるように構成されている。
なお,図2の例では電気ヒータ44を,出口流路42に連通した分岐流路46と,バイパス流路43に連通した分岐流路45間に設ける構成を示したが,電気ヒータ44は,前記構成に限定されず,入口流路41,出口流路42,あるいはバイパス流路43に設けるものとしても良く,また,分岐流路45,46を設けることなく,これらの流路41,42,43中に直接設けるものとしても良く,エンジン側流路40内の冷却水を加熱することができるものであれば,いずれの位置に設けても良い。もっとも,好ましくは,ウォータジャケット25に導入する前の冷却水を加熱することができるよう,バイパス流路43又は入口流路41に設ける。
前述のラジエータ側流路50は,図示の例ではラジエータ22と,このラジエータ22の導入口22aに一端51aが連通された導入流路51と,前記ラジエータ22の排出口22bに一端52aが連通された排出流路52によって構成され,このうちの導入流路51の他端51bを,サーモスタット26を介してエンジン側流路40の出口流路42の他端42bに連通すると共に,排出流路52の他端52bをエンジン側流路40の入口流路41の他端41bに連通している。
なお,前述したサーモスタット26は冷却水の温度に応じてラジエータ側流路50へ導入する冷却水量を調整するもので,エンジン20内の冷却水温度が所定の温度(例えば80℃)以上となるまで,ラジエータ側流路50に対する冷却水の導入を行わずに,エンジン側流路40内のみで冷却水を環流させる。
図3に,本発明のエンジン駆動発電機1における電気回路の構成例を示す。
三相交流発電機である発電機本体3で発生した交流電力は,エンジン駆動発電機1のボンネット等に設けた出力端子台71を介して,機外に設けた電気機器5に対し供給できるように構成されている。
発電機本体3で発生した電力を,前記出力端子台71を介して出力することができるようにするために,発電機本体3と出力端子台71間は,遮断器72を備えた主供給回路70によって接続されていると共に,前述した電気ヒータ44のヒータ本体441に対し発電機本体3で発生した電力を供給するために,前記主供給回路70より分岐したヒータ用電源回路74を設け,エンジン20の冷却水を加熱する前述の電気ヒータ44に対し,発電機本体3で発生した電力を供給することができるように構成している。
図示の実施形態にあっては,前述の主供給回路70中に,発電機本体3の結線端子と接続された中継端子台73を設け,この中継端子台73において主供給回路70よりヒータ用電源回路74を分岐させている。
このようにして,発電機本体3に接続された電気ヒータ44は,ヒータ制御手段30によって,出力端子台71に接続された電気機器5の消費電力に応じてON,OFF制御されており,消費電力が所定の加熱開始基準値以下であるとき前記電気ヒータをON,所定の加熱終了基準値を超えたとき,OFFとするよう制御されている。
このような制御を可能とするため,ヒータ制御手段30には,出力端子台71に接続された電気機器が消費する消費電力の変化に応じて変化する可変信号を出力する可変信号出力手段31と,前記可変信号出力手段31が出力した可変信号に基づいてヒータ用電源回路74を開閉制御する開閉手段32を設けている。
図3に示す実施形態では,主供給回路70に取り付けた変流器31を前述の可変信号出力手段としている。この変流器31は,主供給回路70を流れる電流値を,所定の変流比に従い(小電流値に)変成した二次電流を出力するもので,本実施形態にあっては,この変流器31が出力した二次電流値を前述した可変信号として開閉手段32に出力している。
また,図3に示す実施形態において前述の開閉手段は,ヒータ用電源回路を開閉する電磁接触器32によって構成しており,電磁接触器32の動作電流値を適切に設定することで,変流器31の二次電流値に応じて電磁接触器32を動作させることでヒータ用電源回路74を開閉し,電気ヒータ44のON,OFFを,出力端子台71に接続された電気機器5の消費電力に応じて制御できるように構成している。
なお,図3の例では,中継端子台73と遮断器72間における主供給回路70に変流器31を取り付ける構成を示したが,変流器31は,発電機本体3と中継端子台73間で主供給回路70に取り付けるものとしても良く,あるいは遮断器72と出力端子台71間で主供給回路70に取り付けるものとしても良い。
また,上記説明では,主供給回路70に変流器31を設け,出力端子台71に接続された電気機器5の消費電力を,主供給回路70を流れる電流値の変化として検出する構成について説明したが,出力端子台71に接続された電気機器5の消費電力は,主供給回路70を流れる電流値の変化の他,電圧値の変化として検出するものとしても良く,消費電力の変化を検出することができるものであれば前述した構成に限定されない。
以上のように構成された本発明のエンジン駆動発電機1の動作について,以下に説明する。
なお,以下の説明では,一例として,前述の加熱開始基準値及び加熱終了基準値の消費電力をいずれも5kWに設定すると共に,電気ヒータ44として,消費電力が5kWのものを設けた場合を例に挙げて説明する。
上記設定のエンジン駆動発電機1において,エンジン20を始動して発電機本体3の運転を開始しても,遮断器72が開いている状態では出力端子台71に接続した電気機器5の消費電力は0(ゼロ)で,主供給回路70内を流れる電流値も0であるから,変流器31からは二次電流が出力されていない状態(二次電流値は0)となっている。
従って,変流器31の二次電流値は,電気機器5の消費電力が加熱開始基準値以下であることを示しており,ヒータ制御手段30に設けた開閉手段(電磁接触器)32は,ヒータ用電源回路74を閉じている。
これにより,発電機本体3で発生した電力がヒータ用電源回路74を介して電気ヒータ44に供給され,電気ヒータ44はONとなり冷却水の加熱を開始する。
図3に示した構成では,変流器31を中継端子台73と遮断器72間に設けているため,中継端子台73で主供給回路70より分岐したヒータ用電源回路74を介して電気ヒータ44に対する電力の供給が行われても,中継端子台73と遮断器72間の主供給回路70には電流が流れず,従って,変流器31の二次電流値は依然として0の状態を維持する。
電気ヒータ44の通電によって加熱された冷却水は,冷却水ポンプ47を介してエンジン20のウォータジャケット25内に導入されてエンジン20の温度を上昇させる。
また,電気ヒータ44に対する通電によって5kwの電力が消費されることから,エンジン20にかかる負荷トルクはこの消費電力量(発電量)に相応して増大する。
これにより,遮断器が開放状態にあり,出力端子台71に接続された電気機器5による一切の電力消費が行われていない無負荷運転の状態においても,冷却水の加熱と,エンジンにかかる負荷トルクの増大によってシリンダ内の燃焼温度を高めることができ,未燃焼ガスや未燃焼エンジンオイル,スス等の発生を抑制することができる。
特にエンジン20の始動直後には,エンジン20が冷えた状態にあることから,燃焼温度が一層低くなって未燃焼ガスや未燃焼エンジンオイル,スス等が発生しやすい状態にあるが,本発明のエンジン駆動発電機1では,電気ヒータ44による冷却水の加熱によってエンジン20の温度を素早く上昇させることで,エンジン20の始動直後においても未燃焼ガス,未燃焼エンジンオイル,スス等の発生を効果的に抑制することが可能である。
出力端子71に接続された電気機器5に対し電力を供給するために,遮断器72を閉じて電気機器5に対する電力の供給を開始すると,中継端子台73と出力端子台71間の主供給回路70に電流が流れ,この電流に対し所定の変流比で変成された二次電流が変流器31より出力される。
しかし,変流器31が二次電流の出力を開始しても,出力端子台71に接続された電気機器5の消費電力が,加熱終了基準値である5kW未満であることを示す二次電流値が出力されている場合,開閉手段32はヒータ用電源回路74を閉状態に維持し,電気ヒータ44に対する通電を継続する。
その結果,エンジン20の冷却水に対する加熱が継続されると共に,電気ヒータ44の消費電力(5kw)と,出力端子台71に接続された電気機器の消費電力(αkw)の合計(5kw+αkw)によって,発電機本体3は,5kwを超える電力を発電し,この合計消費電力に対応した負荷トルクがエンジン20にかかることから,エンジン20のシリンダ内の燃焼温度は,更に上昇する。
その後,出力端子台71に接続された電気機器5の消費電力が,加熱終了基準値である5kW以上となったことを示す二次電流を変流器31が出力すると,ヒータ制御手段30に設けた開閉手段(電磁接触器)32はヒータ用電源回路74を開き,電気ヒータ44への通電を停止して電気ヒータ44をOFFにする。
そして,出力端子台71に接続された電気機器5の消費電力が,加熱開始基準値である5kW未満になったことを示す二次電流値を変流器31が出力したときには,開閉手段(電磁接触器)32は再びヒータ用電源回路74を閉じて,電気ヒータ44に対する通電を開始し,エンジン駆動発電機の作動中,上記動作を繰り返す。
以上の動作説明では,電気ヒータ44のON,OFF動作の基準とする加熱開始基準値と加熱終了基準値を,いずれ共に5kwに設定した場合を例に挙げて説明したが,例えば,加熱終了基準値を5kw,加熱開始基準値を3kwと設定する場合のように,加熱終了基準値に対し,加熱開始基準値を低く設定するものとしても良い。
このように構成することで,出力端子台71に接続された電気機器5の消費電力が加熱開始基準値(3kW)以下から加熱終了基準値(5kW)を超えるまで開閉手段である電磁接触器32はヒータ用電源回路74を閉じ続け,前記消費電力が加熱終了基準値(5kW)を超えると前記電磁接触器32はヒータ用電源回路を開く。その後,前記消費電力が加熱終了基準値(5kW)を超えてから加熱開始基準値(3kW)以下へ下降するまで前記電磁接触器32はヒータ用電源回路74を開き続け,前記消費電力が加熱開始基準値(3kW)以下になると前記電磁接触器32はヒータ用電源回路74を閉じる。これにより,開閉手段である電磁接触器32が無駄な開閉動作を繰り返すことを防止することができ,電磁接触器32の寿命を延ばすことができると共に,電気ヒータ44のON,OFFが繰り返されることで,冷却水の温度が不安定になり,サーモスタット26が無駄に動作することがないようにすることができる。
一方,出力端子台71に接続された電気機器5による消費電力が大きい時には冷却水温やシリンダ内の燃焼温度も高く,未燃焼ガスや未燃焼エンジンオイル,煤等の発生が抑制されていると共に,その状態から消費電力値が下がっても,エンジンや冷却水の温度は直ぐには低下せず,高い温度を維持することから,加熱開始基準値を加熱終了基準値に対し低く設定した場合であっても,未燃焼ガスや未燃焼エンジオイル,煤等の発生が抑制される。
なお,図3に示した構成では,変流器31を,中継端子台73と出力端子台71間の主供給回路70に設けているが,この構造に代えて,前述したように,変流器31を発電機本体3と中継端子台73間の主供給回路70に設けるようにしてもよい。
この構成では,電気ヒータ44がONの時,変流器31は,出力端子台71に接続された電気機器5の消費電力と電気ヒータ44の消費電力を合計した電力値に対応する二次電流値を出力する一方,電気ヒータ44がOFFの時,出力端子台71に接続された電気機器5のみの消費電力に対応する二次電流値を出力することになる。
従って,変流器31の二次電流によって直接,電磁接触器32を作動させる場合,10kW(加熱終了基準値5kW+ヒーター消費電力5kW)を超える消費電力に対応した二次電流を変流器31が出力した場合に電磁接触器32が開き,加熱開始基準値である5kW対応する消費電力に対応した二次電流値以下の二次電流値を変流器31が出力したときに電磁接触器を閉じるように,電磁接触器32の作動電流値を設定する。
なお,ヒーター制御手段30は,出力端子台71に接続された電気機器5による消費電力値が加熱開始基準値よりも高い状態から加熱開始基準値以下へ下がり,加熱開始基準値以下の消費電力に対応する二次電流を変流器31が所定時間,例えば30秒間,継続して出力したとき,電磁接触器32を閉じて電気ヒータ44に対する通電を開始し,前記所定時間を経過する前に前記消費電力値が加熱開始基準値よりも超えたときには前記所定時間のカウントをリセットして電磁接触器32を開いた状態を継続するようにしてもよい。
また,ヒーター制御手段30は,消費電力値が加熱終了基準値よりも低い状態から加熱終了基準値を超え,前記加熱終了基準値を超えた状態を所定時間継続したとき,電磁接触器32を開いて電気ヒータ44に対する通電を遮断し,所定時間を経過する前に前記消費電力が加熱終了基準値以下になったときには前記所定時間のカウントをリセットして電磁接触器32を閉じた状態を継続するようにしてもよい。
これにより,開閉手段である電磁接触器32が無駄な開閉動作を繰り返すことを防止することができ,電磁接触器32の寿命を延ばすことができると共に,電気ヒータ44のON,OFFが繰り返されることで,冷却水の温度が不安定になり,サーモスタット26が無駄に動作することがないようにすることができる。
図4は,エンジン駆動発電機1に設けた発電機本体3の巻線の接続パターンを切り換え可能に構成して,発電機本体3の出力電圧を可変とする,電圧切替手段75を設けた構成である。
図3に示した構成例では,主供給回路70中に設けた中継端子台73において主回路よりヒータ用電源回路74を分岐する構成を採用していたが,図4に示す実施形態では,発電機本体3に設けられている電気子巻線(u1,u2,v1,v2,w1,w2)の結線状態を,一例として200V,400Vのいずれかの接続パターンに切り換える電圧切替手段75を備え,この電圧切替手段75に,出力端子台71に接続された電気機器5に対する電力を供給する主供給回路70と,電気ヒータ44に対し発電機本体3で発生した電力を供給するヒータ用電源回路74を接続している。
前述の電圧切替手段75は,一例として,多数のカム接点を備えたカムスイッチによって構成することができ,切替位置の変更により,主供給回路用端子台76に接続された主供給回路70に対し,スイッチの切替によって選択された200V,又は400Vのいずれかの出力が行えるように構成すると共に,ヒータ電源回路用端子台77に接続されたヒータ用電源回路74に対し,スイッチの切替に拘わらず,常に一定電圧,例えば200Vの出力が行えるように構成している。
また,電圧切替手段75の切り換えによって発電機本体3の出力電圧が切り替わった場合であっても,出力端子台71に接続された電気機器5の消費電力を正しく検出できるようにするために,例えば,選択された出力電圧を表す電圧識別信号が電圧切替手段75より出力されるように構成し,ヒータ制御手段30に設けた開閉手段32に,電圧切替手段75より受信した電圧識別信号に基づいて,電磁接触器の作動電流値の設定を変更する手段を設ける。
図5に,本発明のエンジン駆動発電機1の更なる変形例を示す。
図3及び図4を参照して説明したエンジン駆動発電機では,ヒータ制御手段30の可変信号出力手段31として,変流器を採用した構成について説明した。
これに対し,図5に示すエンジン駆動作業器1の構成では,図3及び図4に示した実施例における変流器31に代え,エンジンのECU31’に,前述した可変信号出力手段としての役割を持たせている。
出力端子台71に電気機器5が接続されていない,又は接続された電気機器5が電力を消費していない無負荷運転や,電気機器5の消費電力が僅かである軽負荷運転の状態では,エンジン20にかかる負荷トルクは小さく,出力端子台71に接続された電気機器5による電力消費量が増大するに従い,エンジン20にかかる負荷トルクが増大することは既に述べた。
一方,エンジン20の電子制御を行うECU31’は,各種センサ類より得た情報に基づいてエンジン20の負荷率を算出し,制御対象とする機器,あるいは連携する機器に負荷率信号を出力する。
またECU31’は,エンジン20にかかる負荷トルクの増大に伴い,燃料噴射装置(図示せず)に対し,燃料噴射量の増加を指令する制御信号を出力する制御を行う。
従って,ECU31’が出力する負荷率信号や,燃料噴射量信号は,エンジンに掛かる負荷トルクの増減,従って,出力端子台71に接続された電気機器5によって行われる消費電力の増減に対応して変化する。
上記の点に着目し,図5に示す実施形態にあっては,前述した変流器に代えて,ECU31’を,出力端子台71に接続された電気機器5の消費電力の変化に応じて変化する可変信号を出力する可変信号出力手段として使用すると共に,ECU31’が出力する負荷率信号又は燃料噴射量信号を,ヒータ制御手段30に設けた開閉手段32の動作を制御する可変信号としても使用するものである。
この負荷率信号や燃料噴射量信号が,負荷率の変化,あるいは燃料噴射量の変化に応じて出力信号の電流値が変化するものである場合,これをそのまま電磁接触器である開閉手段32の作動電流として使用しても良く,又は,負荷率信号や燃料噴射信号を受信し,受信した負荷率信号や燃料噴射量信号に基づいて,これに対応する電流に変換する構成を,開閉手段32に設けても良い。
なお,ECU31’が出力する負荷率信号又は燃料噴射量信号は,電気ヒータ44がOFFの時には出力端子台71に接続された電気機器5のみの消費電力に対応して変化するが,電気ヒータ44がONの時には出力端子台71に接続された電気機器5の消費電力と電気ヒータ44の消費電力の合計電力発電時におけるエンジンの負荷率又は,燃料噴射量に対応することから,電気ヒータ44がONの時の負荷率信号或いは燃料噴射率信号に基づいて,出力端子台71に接続した電気機器5の消費電力を判定する場合,電気ヒータ44の消費電力分を減算する処理が必要となる。
図5に示したエンジン駆動発電機1の構成例では,エンジン20のECU31’に可変信号出力手段の役割をさせたことで,図3,4に示した実施形態において可変信号出力手段として採用していた変流器31を設けることが不要となり,部品点数の減少と構造の簡略化によって,エンジン駆動発電機のコストを低減することができた。
また,ECU31’が出力する負荷率信号,又は燃料噴射量信号は,エンジン20にかかる負荷トルクを反映したものであり,出力端子台71に接続した電気機器5の力率の変化等によって主供給回路70を流れる電流値が変化しても,エンジン20にかかる負荷トルクが変化しない場合には,変化しない。
その結果,エンジン20にかかる負荷トルクを正確に反映させたものとなっていることから,電気ヒータ44を無駄に通電することがなく,燃料消費量を減らすことができた。