以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
なお、本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「メッシュシート」は板やフィルムと呼ばれ得るような部材をも含む概念であり、したがって、「メッシュシート」は、「メッシュ板(基板)」や「メッシュフィルム」と呼ばれる部材と、呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
また、「シート面(板面、フィルム面)」とは、対象となるシート状(板状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材(板状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
図1〜図23は、本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち図1は、発熱板を備えた自動車を概略的に示す図であり、図2は、発熱板をその板面の法線方向から見た図であり、図3は、図2の発熱板の横断面図である。
図1に示されているように、乗り物の一例としての自動車1は、フロントウィンドウ、リアウィンドウ、サイドウィンドウ等の窓ガラスを有している。ここでは、フロントウィンドウ5が発熱板10で構成されている例を説明する。また、自動車1はバッテリー等の電源7を有している。
この発熱板10をその板面の法線方向から見たものを図2に示す。また、図2の発熱板10のIII−III線に対応する横断面図を図3に示す。発熱板10は、一対の湾曲したガラス板11,12と、一対の湾曲したガラス板11,12の間に配置されたメッシュシート20と、ガラス板11,12とメッシュシート20とを接合する接合層13,14とを有している。なお、図1および図2に示した例では、発熱板10は湾曲しているが、図3、図18、図22および図23では、図示の簡略化および理解の容易化のために、発熱板10およびガラス板11,12を平板状に図示している。
メッシュシート20は、基材30と、基材30上に形成された導電性メッシュ40と、導電性メッシュ40に通電するための配線部15と、導電性メッシュ40と配線部15とを接続する接続部16とを有している。
図2および図3に示した例では、バッテリー等の電源7から、配線部15および接続部16を介して導電性メッシュ40に通電し、導電性メッシュ40を抵抗加熱により発熱させる。導電性メッシュ40で発生した熱は接合層13,14を介してガラス板11,12に伝わり、ガラス板11,12が温められる。これにより、ガラス板11,12に付着した結露による曇りを取り除くことができる。また、ガラス板11,12に雪や氷が付着している場合には、この雪や氷を溶かすことができる。したがって、乗員の視界が良好に確保される。
一例として、この発熱板10を作製するには、ガラス板11、接合層13、メッシュシート20、接合層14、ガラス板12をこの順に重ね合わせ、加熱・加圧することで、ガラス板11、メッシュシート20およびガラス板12が、接合層13,14により接合される。
ガラス板11,12は、特に自動車のフロントウィンドウに用いる場合、乗員の視界を妨げないよう可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。このようなガラス板11,12の材質としては、ソーダライムガラス、青板ガラス等が例示できる。ガラス板11,12は、可視光領域における透過率が90%以上であることが好ましい。ここで、ガラス板11,12の可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV−3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm〜780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。なお、ガラス板11,12の一部または全体に着色するなどして、可視光透過率を低くしてもよい。この場合、太陽光の直射を遮ったり、車外から車内を視認しにくくしたりすることができる。
また、ガラス板11,12は、1mm以上5mm以下の厚みを有していることが好ましい。このような厚みであると、強度および光学特性に優れたガラス板11,12を得ることができる。
ガラス板11,12とメッシュシート20とは、それぞれ接合層13,14を介して接合されている。このような接合層13,14としては、種々の接着性または粘着性を有した材料からなる層を用いることができる。また、接合層13,14は、可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。典型的な接合層としては、ポリビニルブチラール(PVB)からなる層を例示することができる。接合層13,14の厚みは、それぞれ0.15mm以上0.7mm以下であることが好ましい。
なお、発熱板10には、図示された例に限られず、特定の機能を発揮することを期待されたその他の機能層が設けられても良い。また、1つの機能層が2以上の機能を発揮するようにしてもよいし、例えば、発熱板10のガラス板11,12、接合層13,14、後述するメッシュシート20の基材30の少なくとも1つに機能を付与するようにしてもよい。発熱板10に付与され得る機能としては、一例として、反射防止(AR)機能、耐擦傷性を有したハードコート(HC)機能、赤外線遮蔽(反射)機能、紫外線遮蔽(反射)機能、偏光機能、防汚機能等を例示することができる。
次に、メッシュシート20について説明する。図3に示された例では、メッシュシート20は、シート状の基材30と、基材30上に設けられた凹凸構造層40と、凹凸構造層40の凹凸面41上に設けられた導電性メッシュ50と、導電性メッシュ50に通電するための配線部15と、導電性メッシュ50と配線部15とを接続する接続部16とを有している。メッシュシート20は、ガラス板11,12と略同一の平面寸法を有して、発熱板10の全体にわたって配置されてもよいし、運転席の正面部分等、発熱板10の一部にのみ配置されてもよい。
図3に示された例では、基材30は、凹凸構造層40および導電性メッシュ50を支持する基材として機能する。基材30は、可視光線波長帯域の波長(380nm〜780nm)を透過する一般に言うところの透明である電気絶縁性の基板である。なお、基材30は、メッシュシート20における必須の構成要素ではなく、省略され得る。
基材30に含まれる樹脂としては、可視光を透過する樹脂であればいかなる樹脂でもよいが、好ましくは熱可塑性樹脂を用いることができる。この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、アモルファスポリエチレンテレフタレート(A−PET)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、トリアセチルセルロース(三酢酸セルロース)等のセルロース系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート樹脂、AS樹脂等を挙げることができる。とりわけ、アクリル樹脂やポリ塩化ビニルは、エッチング耐性、耐候性、耐光性に優れており、好ましい。
また、基材30は、導電性メッシュ50の保持性や、光透過性等を考慮すると、0.03mm以上0.15mm以下の厚みを有していることが好ましい。
図4および図5を参照して、導電性メッシュ50について説明する。図4は、導電性メッシュ50の配置パターンの一例を示す平面図である。図5は、導電性メッシュ50を有するメッシュシート20の法線方向に沿った断面図である。
図4に示されているように、導電性メッシュ50は、多数の開口領域55を画成するメッシュ状の材料である。図4および図5に示すように、導電性メッシュ50は、開口領域55を画成する導電性細線51、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル、チタン、パラジウム、インジウム、タングステンおよびこれらの合金の一以上から、構成されている。導電性細線51は、曲線状または直線状に延びるライン部52によって形成されている。図3および図5に示した例では、導電性メッシュ50は、基材30上に設けられた凹凸構造層40の凹凸面41上に形成されて、基材30および凹凸構造層40とともにメッシュシート20を形成する。
図3および図5に示された例では、導電性メッシュ50は、基材30上に設けられた凹凸構造層40上に形成されている。凹凸構造層40は、微小突起42により形成された凹凸面41を有している。そして、導電性メッシュ50をなす導電性細線51は、凹凸構造層40の凹凸面41のうちの微小突起42の間となる谷底部44に沿って延びている。したがって、図3および図5に示されたメッシュシート20は、凹凸構造層40の凹凸面41の凹凸に対応した凹凸面21を含むようになる。そして、メッシュシート20の凹凸面21の凹凸は、凹凸構造層40の凹凸面41をなす微小突起42に対応して形成された微小突起22によって形成される。メッシュシート20は、凹凸面21の凹凸に起因した機能、例えば、後述する反射防止機能や、拡散機能等を発揮することが可能となる。
可視光透過性を有した導電性メッシュ50は、その導電性細線51が視認されにくくなっていることが好ましい。また、導電性メッシュ50に期待される発熱機能を十分に発揮し得るよう、導電性メッシュ50の面抵抗は適切な範囲となっていることが好ましい。本発明による導電性メッシュ50においては、導電性細線51の線幅の平均が5nm以上500nm以下であり、隣り合う開口領域55の間隔の平均が50nm以上1000nm以下となっている。ここで開口領域55の間隔とは、1つのライン部52を介して隣り合う2つの開口領域55の配置間隔であり、例えば、開口領域55の重心間の直線距離とすることができる。また、導電性メッシュ50の導電性細線51の厚みは、導電性を確保する観点から、10nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましい。
なお、導電性細線51の線幅や隣り合う2つの開口領域55の間隔等の導電性メッシュ50の各寸法は、導電性メッシュ50の全領域を調べてその平均値を算出して特定する必要はなく、実際的には、調査すべき対象(導電性細線51の線幅や隣り合う2つの開口領域55の間隔等)の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ一区画内において、調査すべき対象のばらつきの程度を考慮して適当と考えられる数を調べてその平均値を算出することによって特定することができる。このようにして特定された値を、それぞれ、導電性細線51の線幅の平均値や、隣り合う2つの開口領域55の間隔の平均値として取り扱うことができる。例えば、直前で説明した値を目標として以降において説明する製造方法により製造される導電性メッシュ50においては、30mm×30mmの領域内に含まれる30箇所を電子顕微鏡により測定して平均を算出することにより、接続要素20の線幅や開口領域55の大きさ等を特定することができる。
一般的な導電性メッシュは、例えば、蒸着法、スパッタリング法、箔の転写、塗工法等により、金属膜を基材上に形成し、この金属膜を所望のフォトレジストパターンをマスクとしてエッチングする方法、導電性感光剤(たとえばハロゲン化銀粒子を拡散させた乳剤など)を所望のパターンに露光・現像する方法、あるいは、導電性インキ(例えば、導電性金属粒子を分散させた導電性インキ)を基材上に所望のパターンで印刷する方法等の方法によって、基材上に形成することができる。ただし、導電性細線51の線幅の平均値や隣り合う2つの開口領域55の間隔の平均値が、上述した微細な範囲に設定されている導電性メッシュ50は、これらの従来既知の方法では作製することが困難である。
図5に示されているように、凹凸構造層40の谷底部44に設けられた導電性細線51は、まず、基材30上に凹凸構造層40を形成する。凹凸構造層40は、一例として、後に詳述するように電離放射線硬化型樹脂を賦型することにより、作製することができる。
他の例として、樹脂組成物上にその頂部が樹脂組成物から露出するようにビーズを敷き詰め、その後に当該樹脂組成物を硬化させることにより、凹凸構造層40を作製することもできる。
その後、図5に点線で示されているように、凹凸構造層40の凹凸面41に金属薄膜58を成膜する。金属薄膜58の成膜方法としては、特に限定されることなく、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、CVD法等の気相法(ドライプロセス)が挙げられる。その後、凹凸構造層40を浸食することなく金属薄膜58のみを浸食するエッチングや研磨等によって、金属薄膜58の一部を除去する。このとき、エッチングや研磨によれば、金属薄膜58のうちの、凹凸構造層40の凹凸面41の頂部43上に位置する部分から除去することができる。そして、金属薄膜58の除去量を調節することにより、凹凸構造層40の谷底部44のみに残留する金属からなる導電性細線51を得ることができる。
なお、成膜による金属薄膜58の形成およびその一部除去に代えて、金属粒子を含有する組成物を凹凸構造層40の凹凸面41上に適量塗布し、さらに硬化させることにより、凹凸面41の谷底部44上に導電性細線51を形成することもできる。あるいは、金属粒子を含有する組成物を凹凸構造層40の凹凸面41上に塗布し、さらに硬化させ、さらに硬化した金属含有組成物を上述したエッチングや研磨等によって一部除去することにより、凹凸面41の谷底部44上に導電性細線51を形成することもできる。また、金属粒子を含有する組成物の凹凸面41上への塗布量は、凹凸構造層40の凹凸面41へ塗布された組成物を掻き取り除去することにより、調整してもよい。
以上のように、導電性細線51の線幅の平均が5nm以上500nm以下となり且つ隣り合う開口領域55の間隔の平均が1000nm以下となっている導電性メッシュ50によれば、一般に、人間の目で導電性メッシュ50を解像することが難しくなる。すなわち、ここで説明した導電性メッシュ50は、視認されることを効果的に回避され得る。これにより、導電性メッシュ50およびメッシュシート20の透過性を効果的に改善することができる。また、導電性メッシュ50が視認されることに起因した濃淡むらの発生も効果的に防止することができる。濃淡むらは、導電性メッシュのパターンにおける導電性細線51の密度分布の不均一性および導電性細線51の線幅の不均一性に起因して、局所的に透過率が減少する現象と考えられている。上述の導電性メッシュ50によれば、導電性細線51の線幅の平均が500nm以下にまで細くなっているため、導電性細線51のライン部52自体が十分に不可視化され、濃淡むらが視認されにくくなる。
次に、凹凸構造層40について説明する。上述したように、図3および図5に示された例では、凹凸構造層40の凹凸面41のうちの微小突起42の間となる谷底部44を延びる導電性細線51によって、導電性メッシュ50が形成されている。したがって、図5に示されたメッシュシート20は、凹凸構造層40の凹凸面41の凹凸に対応した凹凸面21を含むようになる。そして、メッシュシート20の凹凸面21の凹凸は、凹凸構造層40の凹凸面41をなす微小突起42に対応して形成された微小突起22によって形成される。そして、凹凸構造層40の微小突起42が、1000nm以下の平均間隔dAVGで配列されている。すなわち、凹凸構造層40は、いわゆるモスアイ構造体として形成されており、この結果、メッシュシート20の凹凸面21が優れた反射防止機能を発現し得るようになっている。以下、このような凹凸構造層40について詳細に説明する。
凹凸構造層40は、1000nm以下の平均間隔dAVGで配列された微小突起42によって形成された凹凸面41を有している。ここで、微小突起42の「微小」とは、1000nm以下の平均間隔dAVGで配列される程度に微小であることを意味している。なお、上述したように、導電性メッシュ50の導電性細線51は、凹凸構造層40の凹凸面41の谷底部44を延びている。したがって、導電性メッシュ50の導電性細線51に画成される開口領域55は、それぞれ、1つの微小突起42に対応して設けられている。したがって、上述した隣り合う2つの開口領域55の間隔の平均は、微小突起42の突起の配列間隔の平均と同一となり得る。このため、図3〜図5に示された例では、最終的なメッシュシート20に形成される凹凸面21をなす微小突起22が配列される平均間隔も、1000nm以下の間隔となる。
凹凸構造層40の厚さTは、特に限定されないが、一例として10〜300μmとすることができる。なお、この場合の凹凸構造層40の厚さTとは、図3および図5に示すように、凹凸構造層40の基材30側の界面から、当該凹凸構造層40の凹凸面41をなす微小突起42の頂部43までの導電性メッシュ50のフィルム面への法線方向ndに沿った高さを意味する。
凹凸構造層40は、樹脂を含有してなる層とすることができ、さらに、樹脂組成物の硬化物からなる層とすることができる。凹凸構造層40の形成に用いられる樹脂組成物は、少なくとも樹脂を含み、必要に応じて重合開始剤等その他の成分を含有する。
凹凸構造層40の凹凸面41について説明する。図6には、凹凸構造層40の凹凸面41が示されている。凹凸面41は、1000nm以下の平均間隔dAVGで配列された微小突起42によって形成されている。好ましくは、凹凸構造層40の凹凸面41をなす微小突起42の最大間隔dMAXが1000nm以下となっている。このため、凹凸構造層40の凹凸面41のうちの微小突起42の間となる谷底部44を延びる導電性細線51が視認されることが、効果的に回避され得る。
凹凸面41に起因した反射防止機能を期待する観点からは、凹凸構造層40に作製される微小突起42は、隣接する微小突起42の平均間隔dAVGが、反射防止を図ることとなる可視光波長帯域の最短波長Λmin以下(dAVG≦Λmin)となるよう密接して配置されることがさらに好ましい。より好ましくは、隣接する微小突起42の最大間隔dMAXがΛmin以下(dMAX≦Λmin)となるよう密接して配置される。上述したように、導電性メッシュ50が使用されている環境下に、特に制限されることなく種々の波長域の光が存在する場合には、可視光波長帯域の最短波長Λminを380nmに設定し、微小突起42の配列間隔dを、当該配列間隔dのばらつきを考慮して100〜300nmとすることができる。またこの間隔dに係る隣接する微小突起42は、いわゆる隣り合う微小突起42であり、基材30側の付け根部分である微小突起の谷底部44が接している突起である。メッシュシート20においては、上述しように、微小突起42の配列間隔dが、メッシュシート20の微小突起22の配列間隔であるとともに、導電性メッシュ50の開口領域55の間隔にも相当する。また、隣り合う微小突起42は、導電性メッシュ50の1つのライン部52によって区画されるようになる2つの微小突起42とも言える。
なお微小突起42に関しては、より詳細には以下のように定義される。いわゆるモスアイ構造による反射防止機能では、モスアイ構造体とこれに隣接する媒質との界面における有効屈折率を、厚み方向に連続的に変化させて反射防止を図るものであることから、モスアイ構造体の突起に関しては一定の条件を満足することが必要である。この条件のうちの1つであるモスアイ構造体の突起の間隔に関して、例えば特開昭50−70040号公報、特許第4632589号公報等に開示のように、微小突起が一定周期で規則正しく配置されている場合、隣接する微小突起の間隔dは、突起配列の周期P(d=P)となる。これにより可視光線帯域の最長波長をλMAX、最短波長をλminとした場合、最低限、可視光線帯域の最長波長において反射防止効果を奏し得る必要最小限の条件は、Λmin=λMAXであるため、P≦λMAXとなり、可視光線帯域の全波長に対して反射防止効果を奏し得る必要十分の条件は、Λmin=λminであるため、P≦λminとなる。
なお波長λMAX、λminは、観察条件、光の強度(輝度)、個人差等にも依存して多少幅を持ち得るが、標準的には、λMAX=780nmおよびλmin=380nmとされる。これらにより可視光線帯域の全波長に対する反射防止効果をより確実に奏し得る好ましい条件は、d≦300nmであり、より好ましい条件は、d≦200nmとなる。なお反射防止効果の発現および反射率の等方性(低角度依存性)の確保等の理由から、周期dの下限値は、通常、d≧50nm、好ましくは、d≧100nmとされる。これに対して突起の高さHは、十分な反射防止効果を発現させる観点より、H≧0.2×λMAX=156nm(λMAX=780nmとして)とされる。
一方、微小突起42が不規則に配置されている場合には、隣接する微小突起42間の間隔dはばらつきを有することになる。より具体的には、図7に示すように、基材30の表面または裏面への法線方向から見た平面視において、微小突起42が一定周期で規則正しく配列されていない場合、以下のように算定される。
(1)すなわち先ず、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)または走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて突起の面内配列(突起配列の平面視形状)を検出する。なお図7は、実際に原子間力顕微鏡により求められた拡大写真である。
(2)続いてこの求められた面内配列から各突起の高さの極大点(以下、単に極大点と呼ぶ)を検出する。なお極大点を求める方法としては、平面視形状と対応する断面形状の拡大写真とを逐次対比して極大点を求める方法、平面視拡大写真の画像処理によって極大点を求める方法、AFMから得られた微小突起群の高さデータの解析等、種々の手法を適用することができる。図8は、図7に示した拡大写真に対応した高さの面内分布データ(図7のAFM画像濃淡データとも大略対応関係は有り)の処理による極大点の検出結果を示す図であり、この図において黒点により示す個所がそれぞれ各突起の極大点である。なおこの処理では4.5×4.5画素のガウシアン特性によるローパスフィルタにより事前に高さデータを処理し、これによりノイズによる極大点の誤検出を防止した。また8画素×8画素による最大値検出用のフィルタを順次スキャンすることにより1nm(=1画素)単位で極大点を求めた。
(3)次に検出した極大点を母点とするドロネー図(Delaunay diagram)を作成する。ここでドロネー図とは、各極大点を母点としてボロノイ分割を行った場合に、ボロノイ領域が隣接する母点同士を隣接母点と定義し、各隣接母点同士を線分で結んで得られる三角形の集合体からなる網状図形である。各三角形は、ドロネー三角形と呼ばれ、各三角形の辺(隣接母点同士を結ぶ線分)は、ドロネー線と呼ばれる。図9は、図8から求められるドロネー図(白色の線分により表される図である)を図8による原画像と重ね合わせた図である。ドロネー図は、ボロノイ図(Voronoi diagram)と双対の関係にある。またボロノイ分割とは、各隣接母点間を結ぶ線分(ドロネー線)の垂直二等分線同士によって画成される閉多角形の集合体からなる網状図形で平面を分割することを言う。ボロノイ分割により得られる網状図形がボロノイ図であり、各閉領域がボロノイ領域である。
(4)次に、各ドロネー線の線分長の度数分布、すなわち隣接する極大点間の距離(以下、隣接突起間距離と呼ぶ)の度数分布を求める。図10は、図9のドロネー図から作成した度数分布のヒストグラムである。なお、微小突起42の頂部43に溝状等の凹部が存在する、あるいは、頂部43が複数の峰に分裂している場合は、求めた度数分布から、このような突起の頂部に凹部が存在する微細構造、頂部が複数の峰に分裂している微細構造に起因するデータを除去し、突起本体自体のデータのみを選別して度数分布を作成する。
具体的には、微小突起42の頂部43に凹部が存在する微細構造、頂部43が複数の峰に分裂している多峰性の微小突起42に係る微細構造においては、このような微細構造を備えていない単峰性の微小突起42の場合の数値範囲から、隣接極大点間距離が明らかに大きく異なることになる。これによりこの特徴を利用して対応するデータを除去することにより突起本体自体のデータのみを選別して度数分布を検出する。より具体的には、例えば図7に示すような微小突起(群)の平面視の拡大写真から、5〜20個程度の互いに隣接する単峰性微小突起を選んで、その隣接極大点間距離の値を標本抽出し、この標本抽出して求められる数値範囲から明らかに外れる値(通常、標本抽出して求められる隣接極大点間距離平均値に対して、値が1/2以下のデータ)を除外して度数分布を検出する。図10の例では、隣接極大点間距離が56nm以下のデータ(矢印Aにより示す左端の小山)を除外する。なお図10は、このような除外する処理を行う前の度数分布を示すものである。因みに上述の極大点検出用のフィルタの設定により、このような除外する処理を実行してもよい。
(5)このようにして求めた隣接突起間距離dの度数分布から平均値(平均間隔)dAVGおよび標準偏差σを求める。ここでこのようにして得られる度数分布を正規分布とみなして平均値dAVGおよび標準偏差σを求めると、図10の例では、平均値dAVG=158nm、標準偏差σ=38nmとなった。これにより隣接突起間距離の最大値dMAXを、dMAX=dAVG+2σとし、この例ではdMAX=234nmとなる。
なお同様の手法を適用して突起の高さを定義する。この場合、上述の(2)により求められる極大点から、特定の基準位置からの各極大点位置の相対的な高さの差を取得してヒストグラム化する。図11は、このようにして求められる突起付け根位置を基準(高さ0)とした突起高さHの度数分布のヒストグラムを示す図である。このヒストグラムによる度数分布から突起高さの平均値HAVG、標準偏差σを求める。ここでこの図11の例では、平均値HAVG=178nm、標準偏差σ=30nmである。これによりこの例では、突起の高さは、平均値HAVG=178nmとなる。なお図11に示す突起高さHのヒストグラムにおいて、多峰性の微小突起の場合は、頂部を複数有していることにより、1つの突起に対してこれら複数のデータが混在することになる。そこでこの場合は麓部が同一の微小突起に属するそれぞれ複数の頂部の中から高さの最も高い頂部を、当該微小突起の突起高さとして採用して度数分布を求める。
なお上述した突起の高さを測る際の基準位置は、隣接する微小突起の間の谷底部44を高さ0の基準とする。但し、係る谷底部44の高さ自体が場所によって異なる場合(例えば、図15に示すように、谷底部44の高さが微小突起の隣接突起間距離に比べて大きな周期でウネリを有する場合等)は、(1)先ず、基材30の表面または裏面から測った各谷底部44の高さの平均値を、該平均値が収束するに足る面積の中で算出する。(2)次いで、該平均値の高さを持ち、基材30の表面または裏面と平行な面を基準面として考える。(3)その後、該基準面を改めて高さ0として、該基準面からの各微小突起の高さを算出する。
隣接する微小突起42の間の谷底部44の高さ自体が場所によって異なる場合、例えば図15に示すように、各微小突起間の谷底を連ねた包絡面が、可視光線帯域の最長波長λMAX以上の周期D(すなわちD>λMAXである)でうねることもある。該周期的なうねりは、基材30の表裏面に平行な平面(図15におけるXY平面)における1方向(例えばX方向)のみでこれと直交する方向(例えばY方向)には一定高さであっても良いし、あるいは基材30の表裏面に平行な平面(図15におけるXY平面)における2方向(X方向およびY方向)共にうねりを有していても良い。D>λMAXを満たす周期Dでうねった凹凸面46が多数の微小突起からなる微小突起群に重畳することによって、微小突起群で完全に反射防止し切れずに残った反射光を散乱させ、殘留反射光、とくに鏡面反射光をさらに視認し難くし、以って、導電性メッシュ50の透過視認性を一段と向上させることができる。
尚、係る凹凸面46の周期Dが全面に渡って一定では無く分布を有する場合は、該凹凸面について凸部間距離の度数分布を求め、その平均値をDAVG、標準偏差をΣとしたときの、
Dmin=DAVG−2Σ
として定義する最小隣接突起間距離をもって周期Dの代わりとして設計する。すなわち、微小突起群の殘留反射光の散乱効果を十分奏し得る条件は、
Dmin>λMAX
である。通常、DまたはDminは200μm以下とすることができる。
突起が不規則に配置されている場合には、このようにして求められる隣接突起間距離の平均値dAVG、突起の高さの平均値(平均高さ)HAVGが、規則正しく配置されている場合の上述の条件を満足することが、凹凸構造層40に有効な反射防止機能を付与する観点においてある程度有効であることがわかった。具体的には、反射防止効果を発現する微小突起間距離の条件は、dAVG≦Λminとなる。最低限、可視光線帯域の最長波長において反射防止効果を奏し得る必要最短限の条件は、Λmin=λMAXであるため、dAVG≦λMAXとなり、可視光線帯域の全波長に対して反射防止効果を奏し得る必要十分の条件は、Λmin=λminであるため、dAVG≦λminとなる。そして、可視光線帯域の全波長に対する反射防止効果をより有効に奏し得る好ましい条件は、dAVG≦300nmであり、さらに好ましい条件は、dAVG≦200nmである。また反射防止効果の発現の確保等の理由から、通常、dAVG≧50nmであり、好ましくは、dAVG≧100nmとされる。このような条件は、上述した導電性メッシュ50を不可視化するための開口領域55の間隔に関する条件、すなわち、隣り合う2つの開口領域55または微小突起42の間隔の平均を50nm以上1000nm以下とする条件を満足する。
また突起高さについては、十分な反射防止効果を発現する為には、HAVG≧0.2×λMAX=156nm(λMAX=780nmとして)とされる。導電性メッシュ50が形成されたメッシュシート20においても優れた反射防止機能を発揮し得るようにする観点からは、メッシュシート20の微小突起22の突起高さが156nm以上となるよう、導電性メッシュ50の導電性細線51の厚み分を考慮して、凹凸構造層40の微小突起42の突起高さを決定することが好ましい。
因みに、図7〜図11の例により説明するとdMAX=234nm≦λMAX=780nmとなり、dMAX≦λMAXの条件を満足し、凹凸構造層40およびメッシュシート20が十分に反射防止効果を奏し得ることがわかる。また可視光線帯域の最短波長λminが380nmであることから、凹凸構造層40およびメッシュシート20が、可視光線の全波長帯域において反射防止効果を発現する十分条件dMAX≦λminも満たすことがわかる。また平均突起高さHAVG=178nmであることにより、平均突起高さHAVG≧0.2×λMAX=156nmとなり(可視光波長帯域の最長波長λMAX=780nmとして)、導電性メッシュ50が十分な反射防止効果を実現するための突起の高さに関する条件も満足していることがわかる。なお標準偏差σ=30nmであることから、HAVG−σ=148nm<0.2×λMAX=156nmとの関係式が成立することから、統計学上、全微小突起42の50%以上、84%以下が、突起の高さに係る条件(178nm以上)の条件を満足していることがわかる。
次に、凹凸構造層40の製造方法について説明する。図12は、この凹凸構造層40の製造方法の一例を示す図である。図示された製造方法では、樹脂供給工程において、ダイ92により帯状フィルム形態の基材30に凹凸構造層40を構成するようになる未硬化で液状の紫外線硬化性樹脂を塗布する。なお紫外線硬化性樹脂の塗布については、ダイ92による場合に限らず、各種の手法を適用することができる。続いて、押圧ローラ94により、凹凸構造層の賦型用金型であるロール版(金型)93の周側面に基材30を押圧し、これにより基材30に未硬化状態で液状のアクリレート系紫外線硬化性樹脂を密着させると共に、ロール版93の周側面に作製された微細な凹凸形状の凹部に紫外線硬化性樹脂を充分に充填する。この状態で、紫外線の照射により紫外線硬化性樹脂を硬化させ、これにより基材30の表面に微小突起42を有した凹凸構造層40を作製する。次に、剥離ローラ95を用いてロール版93から、硬化した紫外線硬化性樹脂からなる凹凸構造層40と一体に基材30を剥離する。その後、上述したようにして、凹凸構造層40の凹凸面41の凹凸を利用して導電性メッシュ50を形成する。これにより、導電性メッシュ50が得られる。
図13は、ロール版93の構成を示す斜視図である。ロール版93は、円筒形状の金属材料である母材の周側面に、陽極酸化処理およびエッチング処理の繰り返しにより、凹凸構造層40の凹凸面41を賦型するための微細な凹凸形状が作製される。このため母材は、少なくとも周側面に純度の高いアルミニウム層が設けられた円柱形状または円筒形状の部材が適用される。一例として、母材に中空のステンレスパイプが適用され、直接にまたは各種の中間層を介して、純度の高いアルミニウム層が設けられる。ステンレスパイプに代えて、銅やアルミニウム等のパイプ材等を適用してもよい。ロール版93は、陽極酸化処理とエッチング処理との繰り返しにより、母材の周側面に微細穴が密に作製され、この微細穴を掘り進めると共に、開口部に近付くにしたがってより大きな径となるようにこの微細穴の穴径を徐々に拡大して凹凸形状が作製される。これによりロール版93は、深さ方向に徐々に穴径が小さくなる微細穴が密に作製され、凹凸構造層40には、この微細穴に対応して、頂部43に近付くにしたがって徐々に径が小さくなる多数の微小突起42からなる凹凸面41が作製される。その際に、アルミニウム層の純度(不純物量)や結晶粒径、陽極酸化処理および/またはエッチング処理等の諸条件を適宜調整することによって、上述してきた凹凸面41を賦型し得るロール版93を作製することができる。
図14は、ロール版93の製造方法を示す図である。この製造方法では、まず、電解溶出作用と、砥粒による擦過作用の複合による電解複合研磨法によって、母材の周側面を超鏡面化する(電解研磨)。続いて、母材の周側面にアルミニウムをスパッタリングし、純度の高いアルミニウム層を作製する。次に、陽極酸化工程A1、…、AN、エッチング工程E1、…、ENを交互に繰り返して母材を処理し、ロール版93を作製する。
この製造方法において、陽極酸化工程A1、…、ANでは、陽極酸化法により母材の周側面に微細な穴を作製し、さらにこの作製した微細な穴を掘り進める。ここで陽極酸化工程では、例えば負極に炭素棒、ステンレス板材等を使用する場合のように、アルミニウムの陽極酸化に適用される各種の手法を広く適用することができる。また溶解液についても、中性、酸性の各種溶解液を使用することができ、より具体的には、例えば硫酸水溶液、シュウ酸水溶液、リン酸水溶液等を使用することができる。この製造工程A1、…、ANは、液温、印加する電圧、陽極酸化に供する時間等の管理により、微細な穴を、作製対象となる微小突起42の形状に対応した形状に形成することができる。
続くエッチング工程E1、…、ENは、金型をエッチング液に浸漬し、陽極酸化工程A1、…、ANにより作製、掘り進めた微細な穴の穴径をエッチングにより拡大し、深さ方向に向かって滑らか、かつ徐々に穴径が小さくなるように、これら微細な穴を整形する。
なおエッチング液については、この種の処理に適用される各種エッチング液を広く適用することができ、より具体的には、例えば硫酸水溶液、シュウ酸水溶液、リン酸水溶液等を使用することができる。これらによりこの製造工程では、陽極酸化処理とエッチング処理とを交互にそれぞれ複数回実行することにより、賦型に供する微細穴を母材の周側面に作製する。
なお、図15を参照しながら説明した凹凸構造層40、すなわち、隣接する微小突起42の間の谷底の高さ自体が場所によって異なる凹凸構造層40を作製するためのロール版93は、次のようにして製造され得る。すなわち、ロール版93の製造工程において、円筒(または円柱)形状の母材の表面にサンドブラストまたはマット(つや消し)メッキによって凹凸面46の凹凸形状に対応する凹凸形状を賦形する。次いで、該凹凸形状の面上に、直接あるいは必要に応じて適宜の中間層を形成した後、アルミニウム層を積層する。その後、該凹凸形状表面に対応した表面形状を賦形されたアルミニウム層に上述の方法と同様にして陽極酸化処理およびエッチング処理を施し、微小突起42を含む凹凸面41を形成するためのロール版93が得られる。
このようにして作製されたロール版93を用いることによって、凹凸構造層40を作製することができる。そして、上述したように、凹凸構造層40の微細な凹凸面41を利用して、導電性細線51の線幅が細く且つ開口領域55の間隔が狭い導電性メッシュ50を容易に作製することが可能となる。このようにして作製された導電性メッシュ50は、導電性細線51の線幅の細さおよび開口領域55の間隔の狭さに起因して視認されることを効果的に回避され得る。
次に、図3および図16〜図18を参照して、発熱板10の製造方法の一例について説明する。図16〜図18は、発熱板10の製造方法の一例を順に示す断面図である。
まず、基材30を準備する。基材30は、可視光線波長帯域の波長(380nm〜780nm)を透過する一般に言うところの透明である電気絶縁性の基材である。次に、基材30上に、微小突起42により形成された凹凸面41を有する凹凸構造層40を形成する。図16に、基材30上に凹凸構造層40を形成したものを示す。凹凸構造層40の凹凸面41は、1000nm以下の平均間隔dAVGで配列された微小突起42によって形成されている。この凹凸構造層40は、一例として、図12を参照して説明したように、微細穴が密に形成された上述のロール版93を用いて電離放射線硬化型樹脂を賦型することにより作製され得る。なお、図12を参照して説明した上述の方法に限らず、他のナノインプリント技術を用いて凹凸構造層40を作製することもできるし、樹脂組成物上にその頂部が樹脂組成物から露出するようにビーズを敷き詰め、その後に当該樹脂組成物を硬化させることにより凹凸構造層40を作製することもできる。
次に、図17に示されているように、凹凸構造層40の谷底部44に、導電性メッシュ50をなす導電性細線51を形成して、メッシュシート20を作製する。一例として、図5を参照して説明したように、凹凸構造層40の凹凸面41に金属薄膜58を成膜し、その後、凹凸構造層40を浸食することなく金属薄膜58のみを浸食するエッチングや研磨等によって、金属薄膜58の一部を除去して、凹凸構造層40の谷底部44のみに残留する金属からなる導電性細線51を作製することができる。また、図5を参照して説明した上述の方法に限らず、金属粒子を含有する組成物を凹凸構造層40の凹凸面41上に適量塗布し、さらに硬化させることにより、凹凸面41の谷底部44上に導電性細線51を形成することもできる。あるいは、金属粒子を含有する組成物を凹凸構造層40の凹凸面41上に塗布し、さらに硬化させ、さらに硬化した金属含有組成物を上述したエッチングや研磨等によって一部除去することにより、凹凸面41の谷底部44上に導電性細線51を形成することもできる。
上述のように、凹凸構造層40の凹凸面41は、1000nm以下の平均間隔dAVGで配列された微小突起42によって形成されている。したがって、凹凸構造層40の谷底部44に形成された、導電性メッシュ50をなす導電性細線51は、多数の微小突起42にそれぞれ対応した多数の開口領域55を画成するようになる。このため、隣り合う2つの開口領域55の間隔の平均は、微小突起42の配列間隔の平均dAVGと同一となる。すなわち、隣り合う2つの開口領域55の間隔の平均は1000nm以下となる。したがって、最終的なメッシュシート20に形成される凹凸面21をなす微小突起22が配列される平均間隔も、1000nm以下の間隔となる。
その後、ガラス板11、接合層13、メッシュシート20、接合層14、ガラス板12をこの順に重ね合わせ、加熱・加圧する。図18に示された例では、ます、接合層13をガラス板11に、接合層14をガラス板12に、それぞれ仮接着する。次に、ガラス板11,12の接合層13,14が仮接着された側が、それぞれメッシュシート20に対向するようにして、接合層13が仮接着されたガラス板11、メッシュシート20、接合層14が仮接着されたガラス板12をこの順に重ね合わせ、加熱・加圧する。これにより、ガラス板11、メッシュシート20およびガラス板12が、接合層13,14を介して接合され、図3に示す発熱板10が製造される。
図3に示された発熱板10は、一対のガラス板11,12と、一対のガラス板11,12の間に配置された導電性メッシュ50と、各ガラス板11,12と導電性メッシュ50との間に配置され且つガラス板11,12と導電性メッシュ50とを接合する接合層13,14と、を備え、導電性メッシュ50は、多数の開口領域55を画成する導電性細線51を有し、導電性細線51の線幅の平均が5nm以上500nm以下であり、隣り合う開口領域55の間隔の平均が1000nm以下となっている。このような導電性メッシュ50および発熱板10によれば、人間の目で導電性メッシュ50を解像することが難しくなる。すなわち、導電性メッシュ50は、視認されることを効果的に回避され得る。これにより、導電性メッシュ50の透過性を効果的に改善することができる。また、導電性メッシュ50が視認されることに起因した濃淡むらの発生も効果的に防止することができる。
また、図3に示された発熱板10は、一対のガラス板11,12と、一対のガラス板11,12の間に配置されたメッシュシート20と、各ガラス板11,12とメッシュシート20との間に配置され且つガラス板11,12とメッシュシート20とを接合する接合層13,14と、を備え、メッシュシート20は、基材30と、基材30上に設けられた導電性メッシュ50と、を有し、導電性メッシュ50は、多数の開口領域55を画成する導電性細線51を有し、導電性細線51の線幅の平均が5nm以上500nm以下であり、隣り合う開口領域55の間隔の平均が1000nm以下となっている。このようなメッシュシート20および発熱板10によれば、基材30と、基材30上に設けられた導電性メッシュ50と、を有するメッシュシート20を有しているので、導電性メッシュ50の取り扱いが容易になる。とりわけ、基材30をロール状の巻体から供給し、作製されたメッシュシート20を巻取る、いわゆるロール・ツー・ロール方式でメッシュシート20を作製することができる。したがって、製造効率を向上させ、製造コストを低減させることが可能となる。
さらに、図3に示された発熱板10は、一対のガラス板11,12と、一対のガラス板11,12の間に配置されたメッシュシート20と、各ガラス板11,12とメッシュシート20との間に配置され且つガラス板11,12とメッシュシート20とを接合する接合層13,14と、を備え、メッシュシート20は、微小突起42により形成された凹凸面41を有する凹凸構造層40と、凹凸構造層40の凹凸面41のうちの微小突起42間となる谷底部44に沿って延びる導電性細線51により形成された導電性メッシュ50と、を有し、導電性細線51の線幅の平均が5nm以上500nm以下であり、隣り合う微小突起42の間隔の平均が1000nm以下となっている。このようなメッシュシート20および発熱板10によれば、導電性メッシュ50の隣り合う2つの開口領域の間隔の平均値は、凹凸構造層40の隣り合う微小突起42の間隔の平均値と同一となり得る。したがって、導電性細線51の線幅の平均が5nm以上500nm以下であり、隣り合う開口領域の間隔の平均が1000nm以下である導電性メッシュ50を容易に作製することができる。また、このようなメッシュシート20および発熱板10によれば、いわゆるモスアイ構造を有する凹凸構造層40を有することにより、接合層13と凹凸構造層40との界面の反射が抑制される。したがって、メッシュシート20および発熱板10の透過率を効果的に改善することができる。
次に、図19〜図23を参照して、発熱板10の製造方法の変形例について説明する。図19〜図23は、発熱板10の製造方法の変形例を順に示す断面図である。
まず、図19に示す第1中間体120を作製する。この第1中間体120は、シート状の基材130と、基材130上に設けられた凹凸構造層140と、凹凸構造層140の凹凸面141上に設けられた導電性メッシュ150とを有している。基材130は、凹凸構造層140および導電性メッシュ150を支持する基材として機能する。なお、基材130は、第1中間体120における必須の構成要素ではなく、省略され得る。
凹凸構造層140は、1000nm以下の平均間隔で配列された多数の微小突起142により形成された凹凸面141を有している。そして、導電性メッシュ150をなす導電性細線151は、凹凸構造層140の凹凸面141のうちの微小突起142の間となる谷底部144に沿って延びている。したがって、図19に示された第1中間体120は、凹凸構造層140の凹凸面141の凹凸に対応した凹凸面121を含むようになる。そして、第1中間体120の凹凸面121の凹凸は、凹凸構造層140の凹凸面141をなす微小突起142に対応して形成された微小突起122によって形成される。また、凹凸構造層140の谷底部144に形成された、導電性メッシュ150をなす導電性細線151は、多数の微小突起142にそれぞれ対応した多数の開口領域155を画成するようになる。したがって、隣り合う2つの開口領域155の間隔の平均は、微小突起142の配列間隔の平均と同一となる。すなわち、隣り合う2つの開口領域155の間隔の平均は1000nm以下となる。また、導電性細線151の線幅の平均は5nm以上500nm以下である。
このような第1中間体120は、上述のメッシュシート20と同様の材料を用いて、同様の方法により作製され得る。ただし、基材130および凹凸構造層140は、光透過性を有しない材料で作製されてもよい。
次に、図20に示されているように、第1中間体120の凹凸面121上に、後述の接合層113を構成するようになる未硬化で液状の樹脂を塗布する。これにより、この樹脂は、第1中間体120の凹凸面121の微細な凹凸の内部に入り込む。そして、この状態で、加熱や電離放射線の照射等によりこの樹脂を仮硬化させて、接合層113を構成するようになる樹脂層165を形成する。なお、接合層113を構成するようになる未硬化の樹脂は上述の液状のものに限られず、シート状(板状、フィルム状)の未硬化の樹脂を第1中間体120の凹凸面121上に配置し、シート状の樹脂を第1中間体120に押圧して、この樹脂が第1中間体120の凹凸面121の微細な凹凸の内部に入り込むようにしてもよい。その後、シート状の未硬化の樹脂を仮硬化させてもよい。
その後、基材130および凹凸構造層140を除去することにより、図21に示す第2中間体160が得られる。例えば、凹凸構造層140の凹凸面141上に、離型層等の密着性低下層を形成し、この密着性低下層上に導電性メッシュ150および樹脂層165を形成すると、基材130および凹凸構造層140を密着性低下層で剥離して除去することができる。また、これに限らず、基材130および凹凸構造層140を溶解して除去してもよい。
第2中間体160は、後述の接合層113を構成するようになる樹脂層165と導電性メッシュ150をなす導電性細線151とを有する。図示された例では、第2中間体160は、凹凸構造層140の凹凸面141と相補形状をなす凹凸面161を有している。すなわち、凹凸面161は、凹凸構造層140の凹凸面141の多数の微小突起142に対応して微小突起142と相補形状をなす多数の微小凹部162を有している。したがって、微小凹部162の配列間隔の平均は、凹凸構造層140の微小突起142の配列間隔の平均と同一となる。すなわち、微小凹部162の配列間隔の平均は1000nm以下となる。また、凹凸面161は、凹凸構造層140の凹凸面141の谷底部144に対応して谷底部144と相補形状をなす稜線部164を有している。そして、凹凸面161の稜線部164には、導電性メッシュ150をなす導電性細線151が形成されている。また、第2中間体160の稜線部164に形成された、導電性メッシュ150をなす導電性細線151は、多数の微小凹部162にそれぞれ対応した多数の開口領域155を画成する。
その後、ガラス板111、第2中間体160、接合層114、ガラス板112をこの順に重ね合わせ、加熱・加圧する。この際、第2中間体160の樹脂層165は、ガラス板111と導電性メッシュ150とを接合する接合層113として機能する。図22に示された例では、ます、接合層114をガラス板112に仮接着する。次に、第2中間体160の凹凸面161が、接合層114が仮接着されたガラス板112に対向するようにし、ガラス板112の接合層114が仮接着された側が第2中間体160に対向するようにして、ガラス板111、第2中間体160、接合層114が仮接着されたガラス板112をこの順に重ね合わせ、加熱・加圧する。これにより、ガラス板111、導電性メッシュ150、ガラス板112が、接合層113(樹脂層165)、接合層114を介して接合され、図23に示す発熱板110が製造される。
図23に示された発熱板110は、一対のガラス板111,112と、一対のガラス板111,112の間に配置された導電性メッシュ150と、各ガラス板111,112と導電性メッシュ150との間に配置され且つガラス板111,112と導電性メッシュ150とを接合する接合層113,114と、を備え、導電性メッシュ150は、多数の開口領域155を画成する導電性細線151を有し、導電性細線151の線幅の平均が5nm以上500nm以下であり、隣り合う開口領域155の間隔の平均が1000nm以下となっている。このような導電性メッシュ150および発熱板110によれば、人間の目で導電性メッシュ150を解像することが難しくなる。すなわち、導電性メッシュ150は、視認されることを効果的に回避され得る。これにより、導電性メッシュ150の透過性を効果的に改善することができる。また、導電性メッシュ150が視認されることに起因した濃淡むらの発生も効果的に防止することができる。また、図23に示された発熱板110は、導電性メッシュ150を支持する基材や凹凸構造層を有しないので、発熱板110全体の厚さを効果的に薄くすることができる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。
例えば、メッシュシート20の導電性メッシュ50は、基材30のガラス板11側の面上ではなく、ガラス板12側の面上に設けてもよい。また、基材30のガラス板11側およびガラス板12側の両面に設けてもよい。
発熱板10,110は、自動車1のリアウィンドウ、サイドウィンドウやサンルーフに用いてもよい。また、自動車以外の、鉄道、航空機、船舶、宇宙船等の乗り物の窓に用いてもよい。
さらに、発熱板10,110は、乗り物以外にも、特に室内と室外とを区画する箇所、例えばビルや店舗、住宅の窓等に使用することもできる。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。