JP6443811B2 - Mrap2ノックアウト - Google Patents

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2013年7月10日に提出された米国仮出願第61/844,666号の恩典を主張するものであり、その内容は参照によりその全文が本明細書に組み入れられる。
政府支援
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金第T32DK07699号および第NIHP30-HD18655号の下で連邦政府資金によりなされた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出され、かつ参照によりその全体として本明細書に組み入れられる配列表を含有する。2014年6月27日に作成された該ASCIIコピーは、068570-078611-PCT_SL.txtと名付けられ、サイズが25,182バイトである。
技術分野
本明細書において記載される技術は、ノックアウトおよびトランスジェニック動物に関する。
背景
食料または繁殖などの目的のために動物を飼育する場合、付随するコストの大きな要因となるのは、動物を必要なサイズおよび/または重量まで成長させるのにかかる時間である。動物が必要なサイズおよび/または重量に達するのが速ければ速いほど、動物を飼育することに付随するコストは下がり、かつ機能的動物を作製するのに消費される資源は少なくなる。畜産は、急速な成長を助長するように餌、環境、および獣医学的ケアを調節することによって、この時間を最小化しようと努める場合が多い。加えて、動物を市場に出すコストの大部分が動物用飼料であり、したがって「餌効率(動物成長の重量/消費される飼料の重量)」の増加が、家畜のコストを減少させるために求められる。
概要
本明細書において記載されるように、本発明者は、動物におけるMrap2のレベルおよび/または活性を阻害することによって、該動物の重量が、野生型動物と比較して極めて急速な速度で増加することを発見した。実際、該動物は、野生型動物よりも50%程度速く成熟成体サイズに達し得る。さらに、Mrap2活性を欠いている動物は、より少ない食餌に制限された場合、野生型動物とちょうど同じくらいの迅速さで成長し得る。したがって、畜産物をより効率的に産出させるための、Mrap2の改変を有する細胞、それらの細胞を含む動物、およびそのような動物を用いる方法が本明細書において記載される。
一局面において、Mrap2遺伝子の改変を含む非ヒト哺乳動物細胞が本明細書において記載され、該細胞は検出可能なレベルの機能的Mrap2を発現しない。いくつかの態様において、改変は、Mrap2コード配列の欠失を含む。いくつかの態様において、改変は、Mrap2遺伝子のエクソン3の欠失を含む。いくつかの態様において、改変は、Mrap2の膜貫通ドメインの欠失を含む。いくつかの態様において、改変は、Mrap2の細胞内ドメインの欠失を含む。いくつかの態様において、改変は、SEQ ID NO: 1の少なくとも1個のアミノ酸の変異(または、そのようなアミノ酸をコードする少なくとも1個のヌクレオチド、例えば点変異、SNPなど)を含む。
いくつかの態様において、細胞は、改変に関してヘテロ接合性である。いくつかの態様において、細胞は、改変に関してホモ接合性である。いくつかの態様において、非ヒト哺乳動物細胞は、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウサギ、およびヤギからなる群より選択される種のものである。
いくつかの態様において、改変は、CRISPRヌクレアーゼ、TALENヌクレアーゼ、またはZFNヌクレアーゼの作用によって生じる。いくつかの態様において、改変は、リコンビナーゼの作用によって生じる。いくつかの態様において、リコンビナーゼはcreリコンビナーゼである。いくつかの態様において、リコンビナーゼは、組織特異的プロモーターの制御下にある。いくつかの態様において、プロモーターは、ニューロンまたは脳組織に特異的である。いくつかの態様において、プロモーターはSim1プロモーターである。
いくつかの態様において、改変は、操作された改変、例えば非天然の改変である。本明細書において使用するとき、「操作された」とは、人間の手によって操作された局面を指す。例えば、天然ではその順序で一緒に連結されていない2種またはそれを上回る種類の配列が、操作されたポリヌクレオチドにおいて互いに直接連結するように人間の手によって操作されている場合、ポリヌクレオチドは「操作されている」と見なされ得る。さらなる例として、ポリヌクレオチドの配列が、天然に見出されるものとは変わっているように(例えば、欠失によって)変更されている場合、ポリヌクレオチドは「操作された」と見なされ得る。通常行われ、当業者によって理解されるように、操作されたポリヌクレオチドの子孫およびコピーは、典型的に、たとえ実際の操作が以前の実体に対して実施されたとしても、「操作された」としてなお称される。
一局面において、本明細書において記載される細胞を含む非ヒト哺乳動物が本明細書において記載される。一局面において、本明細書において記載される細胞からなる非ヒト哺乳動物が本明細書において記載される。
一局面において、Mrap2遺伝子の改変を含むノックアウト非ヒト哺乳動物が本明細書において記載され、該哺乳動物は検出可能なレベルの機能的Mrap2を発現しない。
いくつかの態様において、改変は、Mrap2コード配列の欠失を含む。いくつかの態様において、改変は、Mrap2遺伝子のエクソン3の欠失を含む。いくつかの態様において、改変は、Mrap2の膜貫通ドメインの欠失を含む。いくつかの態様において、改変は、Mrap2の細胞内ドメインの欠失を含む。いくつかの態様において、改変は、SEQ ID NO: 1の少なくとも1個のアミノ酸の変異(または、そのようなアミノ酸をコードする少なくとも1個のヌクレオチド、例えば点変異、SNPなど)を含む。いくつかの態様において、哺乳動物は、改変に関してヘテロ接合性である。いくつかの態様において、哺乳動物は、改変に関してホモ接合性である。いくつかの態様において、非ヒト哺乳動物は、ブタ、ウシ、バイソン、ウマ、ヒツジ、ウサギ、およびヤギからなる群より選択される種のものである。
いくつかの態様において、改変は、CRISPRヌクレアーゼ、TALENヌクレアーゼ、またはZFNヌクレアーゼの作用によって生じる。いくつかの態様において、改変は、リコンビナーゼの作用によって生じる。いくつかの態様において、リコンビナーゼはcreリコンビナーゼである。いくつかの態様において、リコンビナーゼは、組織特異的プロモーターの制御下にある。いくつかの態様において、プロモーターは、ニューロンまたは脳組織に特異的である。いくつかの態様において、プロモーターはSim1プロモーターである。
一局面において、屠体の使用のための哺乳動物を作製する方法が本明細書において記載され、該方法は、本明細書において記載される哺乳動物に、種に適した飼料を与える工程、および該哺乳動物を、それが使用のために所望されるサイズに達した時点で屠殺する工程を含む。いくつかの態様において、哺乳動物は、野生型哺乳動物よりも80%程度早期に屠殺される。いくつかの態様において、哺乳動物は、野生型哺乳動物よりも50%程度早期に屠殺される。いくつかの態様において、哺乳動物に、実質的に随時(ad libitum)、餌を与える。いくつかの態様において、哺乳動物はブタである。本明細書において記載される方法での使用のための哺乳動物の他の非限定的な例には、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、バイソンなどが含まれる。
いくつかの態様において、哺乳動物は、約75〜約125日齢で屠殺される。他の態様において、哺乳動物は、4〜8ヶ月齢で(例えば、4ヶ月で、5ヶ月で、6ヶ月で、7ヶ月で、8ヶ月で、またはその間の任意の時期に)屠殺される。いくつかの態様において、哺乳動物に、制限されたレベルの飼料を与える。いくつかの態様において、制限されたレベルの飼料は、野生型哺乳動物に与えるレベルの約60%〜約95%である。いくつかの態様において、制限されたレベルの飼料は、野生型哺乳動物に与えるレベルの約80%〜約95%である。いくつかの態様において、哺乳動物はブタである。代替的な態様において、哺乳動物は、ウシ、ウマ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、バイソンなどである。
図1A〜1Bは、Mrap2-/-マウスの表現型を示している。図1Aは、標準固形飼料(固形飼料、上のパネル:雄 n=9対28対15、雌 n=12対18対10)または高脂肪の食餌(HFD、56〜95日齢、下のパネル、標準固形飼料の曲線に重ね合わせた:雄 n=10対8対10、雌 n=7対12対7)での、Mrap+/+マウス 対 Mrap+/-マウス 対 Mrap2-/-マウスに関する重量曲線を描写している。両性別に関して、標準固形飼料でのMrap+/+およびMrap+/-マウスの重量曲線は、より高齢(161〜175日)で、かつ高脂肪の食餌ではより若齢(56〜95日)で、有意に異なる。*p=.02、**p=.001、***p=.0003。図1Bは、標準固形飼料の食餌での脂肪蓄積についてのグラフを描写している。上のパネル:Mrap+/+対Mrap2-/-における白色脂肪組織(WAT)重量(雄および雌、117〜122日齢、それぞれn=5対4)。左下のパネル:Mrap+/+マウス 対 Mrap2-/-マウスにおけるBAT重量(雄および雌、117〜122日齢、n=5対4)。右下のパネル:Mrap+/+マウス 対 Mrap2-/-マウスにおけるWAT細胞サイズ(雌、各マウスから計数された50個の細胞)。*p=.009、**p=.003、***p=.0003、****p<.00001。 図2A〜2Bは、Mrap2-/-マウスにおけるエネルギー収支を示している。図2Aは、随時給餌されたMrap+/+対Mrap2-/-の雄(n=10対11)および雌(n=11対8)における累積飼料摂取量(上のパネル)および重量(下のパネル)についてのグラフを描写している。図2Bは、随時給餌されたMrap+/+マウス 対 Mrap2-/-マウスにおけるエネルギー消費量についてのグラフを描写している。上のパネル:3日間にわたる継続的測定結果、雄(n=3対4)、雌(n=4対3)、30〜34日齢。下のパネル:24時間にわたってまとめた体重 対 エネルギー消費量、雄(n=18対14、30〜45日齢)、雌(n=16対11、30〜42日齢)。ANCOVAによる解析は、遺伝子型間での差を示さなかった(雄、p=.38、雌、p=.67)。 図3A〜3Cは、Mrap2とMc4rとの間の相互作用を示している。図3Aは、Sim1ニューロンにおけるMrap2の条件付き欠失を実証する電気泳動ゲルを描写している。上段右、PCRによるCre DNA解析。Sim1CreBAC::Mrap2f/fマウス由来のHT DNAはCre(374bp)を含有するが、Mrap2f/fマウス由来のものは含有しない。右側に分子量マーカー(M)(bp)。上段左、PCRによる、Sim1CreBAC::Mrap2f/fおよびMrap2f/fマウスにおけるMrap2 DNA解析。両遺伝子型は、CX、HT、およびBSにおいてflox化された無傷Mrap2 DNAを含有する(上の電気泳動図において314bp、および下の電気泳動図において1013bp、左側に分子量マーカー)。Sim1CreBAC::Mrap2f/fマウスのみが、HTおよびBSにおいてのみMrap2Delを含有し、CXにおいては含有せず(400bp、下の電気泳動図)、これは蛍光レポーターのデータ(図S3A)と一致する。添加DNAなし(H2O)では、PCR産物は存在していない。下段、RT-PCRによる、Sim1CreBAC::Mrap2f/fおよびMrap2f/fマウスにおけるMrap2 mRNA発現。両遺伝子型は、CX、HT、およびBSにおいてflox化された無傷Mrap2 mRNAを発現する(247bp)。Sim1CreBAC::Mrap2f/fマウスのみが、HTにおいてのみ、Mrap2Del mRNAを発現する(147bp)。完全Mrap2Del/Delマウスは、3つすべての部位でMrap2Del mRNAを発現する。図3Bは、すべて133日齢の、Mrap2+/+(雄 n=6、雌 n=11)、Mrap2-/-(雄 n=11、雌 n=7)、Mrap2f/f(雄 n=8、雌 n=12)、および条件付きSim1CreBAC::Mrap2f/f(雄 n=8、雌 n=7)マウスの体重についてのグラフを描写している。*p=.04、**p=.007、***p=.0002、****p<.0001。図3Cは、Mc4rシグナル伝達に対するMrap2の効果についてのグラフを描写している。左のパネル:0〜10nM αMSHに曝露した5時間後の、CHO細胞単独における、またはMrap2もしくはMrap2ノックアウト構築物Mrap2delE3を伴うもしくは伴わないMc4rを同時トランスフェクトされたCHO細胞における、cAMPレポーター活性(CRELuc)のレベル(n=3/群)。右のパネル:0nM αMSHと比べた、0〜10nM αMSH後の誘導パーセントとして表現された、これら同じ構築物のcAMP活性。*p<.0001、同じ[αMSH]におけるMc4r+Mrap2対Mc4r、ANOVAによる。ほとんどのデータ点に関して、エラーバーは記号によって覆い隠されている。 図4A〜4Kは、Mrap2 mRNA発現およびMrap2-/-マウスの創出を実証している。図4Aは、RT-PCRによる、雄(M)および雌(F)マウスの脳および末梢組織におけるMrap2 mRNA(150塩基対(bp)、上のパネル)およびMc4r mRNA(171bp、下のパネル)についてのゲルの画像を描写している。図4Bは、18s RNAに対して補正されたqRT-PCRによる、視床下部におけるそれらの量を基準とする、雄マウス組織におけるMrap2 mRNAおよびMc4r mRNAのグラフによる比較を描写している。両mRNAは、主として脳で発現している。図4Cは、主要な発現部位が内側視索前核(MPN)、視床下部の室傍核(PVN)、橋、外側(laternal)網様核、巨細胞領域(LRNm)に、および散在的に小脳全体にある、マウス脳の冠状断面におけるMrap2 mRNAの発現についてのインサイチューハイブリダイゼーションによる画像を描写している。図4Dは、野生型マウスの視床下部における、145bpのエクソン1aを含有する少量のMrap2 mRNA変種の検出を描写している。図4Eは、Mrap2-/-(ヌル)マウスを創出するためのストラテジーの概略図を描写している。loxP部位(塗りつぶされた三角形)が隣接したMrap2エクソン3とともに、FRT部位(空の三角形)が隣接したネオマイシン耐性(neo)遺伝子カセット、およびチミジンキナーゼ(TK)遺伝子を含有するターゲティングベクターを、129Sv胚性幹細胞のゲノムMrap2遺伝子座内に相同組換えによって組み込んだ。インビトロでのCre介在性切除を用いてエクソン3およびneoカセットを取り去って、Mrap2ヌルES細胞を創出し、かつインビトロでのFlpe介在切除を用いてneoカセットのみを取り去って、Mrap2 flox化ES細胞を創出した。ES細胞をC56BL/6J偽妊娠マウスに移植し、かつ雄の後代を129S6/SvEvTac雌に対して繁殖させて、純粋な129バックグラウンドでのMrap2ヌルまたはMrap2 flox化マウスを創出した。図4Fは、Mrap2-/-マウスにおける視床下部Mrap2 mRNAを描写している。左上のパネル、Mrap+/+およびMrap2-/-マウスにおけるMrap2遺伝子およびmRNAの略図。Mrap2-/-マウスでは、100塩基対(bp)のエクソン3(膜貫通ドメインをコードする)がLoxP部位(三角形)で置き換えられており、それによりMrap2-/- mRNA(Mrap2Del mRNA)は、Mrap+/+ mRNAよりも100ヌクレオチド短い。右上のパネル、逆転写酵素の存在下(RT+)もしくは非存在下(RT−)における、Mrap2+/+もしくはMrap2-/-マウスにおける視床下部Mrap2 mRNA、またはRNAなしの対照(水)についてのRT-PCR。Mrap2-/-マウスの視床下部RNAから逆転写されたcDNAについてのRT-PCRは147bp長であり、これに対して247bp長である。下のパネル、Mrap2+/+マウスのエクソン2-エクソン3接合部を挟んだ(左)またはMrap2-/-マウスのエクソン2-エクソン4接合部を挟んだ(右)、視床下部Mrap2 mRNA配列。後者において、エクソン3の膜貫通ドメインは、終止コドンが後に続く異常な11アミノ酸をコードするアウトオブフレーム(out-of-frame)のエクソン4によって置き換えられている。配列は登場順に、それぞれSEQ ID NO: 67、69、66、および68として開示される。図4Gは、Mrap2-/-マウスが、正常量の視床下部Mrap2 mRNA変異体を発現することを実証している。エクソン1および2内の(かつ、Mrap2-/- mRNAにおいてエクソン3欠失を検出しない)プライマー(P1F、P1R)を用いると、半定量的RT-PCRにより、Mrap2+/+およびMrap2-/-マウス視床下部における同程度の量のMrap2 mRNA(主要な変種1および少量の変種2を含む)の存在が明らかとなる。図4Hは、HEK293細胞におけるMrap2のRNAおよびタンパク質のレベルを描写している。細胞に、何もなし[TF(−)]、空ベクター、Mrap2、またはMrap2delE3発現構築物をトランスフェクトし、その後Mrap2 mRNAおよび18S rRNAについてのRTPCR(左のパネル)、またはMrap2タンパク質についてのウェスタンブロット(中央および右のパネル)がそれぞれ続いた。WT Mrap2 cDNA、247 bp、変異体Mrap2delE3 cDNA、147 bp(図1Aにあるように)。中央のパネル、アミノ末端に向けられたMrap2 mAb-NH2を用いて検出したウェスタンブロット、右のパネル、カルボキシル末端に向けられたMrap2 rAb-COOHを用いて検出したウェスタンブロット。Mrap2タンパク質の予測サイズ、23.7kD、変異体Mrap2delE3タンパク質の予測サイズ、5.9kD。星印は、Mrap2の移動の箇所を示し、かつ水平の矢印は、変異体Mrap2delE3の移動の予測箇所を示す。各ブロットの右側に分子量マーカー(kD)。Mrap2およびMrap2delE3のmRNAから転写されたcDNAは、それらそれぞれの構築物のトランスフェクション有りでかつ逆転写酵素の存在下[RT(+)]でのみ検出される。Mrap2は両抗体によって検出されるが、Mrap2delE3タンパク質は両抗体によって検出されない。図4Iは、21日目(上向きの矢印)に離乳した若い雄(n=6対3)および雌(n=3対6)のMrap2+/+マウス 対 Mrap2-/-マウスにおける、体重(上のパネル、0〜32日齢)および累積飼料摂取量(下のパネル、23〜32日齢)についてのグラフを描写している。いずれの性別においても、体重または飼料摂取量における遺伝子型間での有意な差はないが、Mrap2-/-雄マウスは、加齢とともに重量および飼料摂取量がより多くなる傾向を有する。図4Jは、Mrap+/+対Mrap2-/-(84日齢、雄 n=9対15、雌 n=12対10)の体長についてのグラフを描写している。*p=.015、**p=.01。図4Kは、Mrap+/+対Mrap2-/-(雄 n=35対33、雌 n=34対40)マウスの脂肪量パーセンテージ(上のパネル)および除脂肪量(lean mass)パーセンテージ(下のパネル)を描写している。*p=.001、**p=.0001。 図5A〜5Sは、Mrap2-/-マウスの表現型を実証している。図5Aは、雄および雌のMrap+/+およびMrap2-/-マウスの外見についての画像を描写している。左のパネル:標準固形飼料(175日齢)での外観。右のパネル:雌のMrap+/+およびMrap2-/-マウス(175日齢)における腸間膜脂肪。右下:雌のMrap+/+およびMrap2-/-マウス(175日齢)における褐色脂肪組織(BAT)。図5Bは、Mrap2+/+およびMrap2-/-マウスにおける血清レプチンのレベルを描写している。左のパネル:Mrap2+/+対Mrap2-/-の随時給餌された雄(n=4対6)および雌(n=8対4)マウス(302〜349日齢)。右のパネル:Mrap2+/+対Mrap2-/-の飼料制限された、重量が合わせられた雄(n=4対6、重量=27.4±0.6対24.8±0.2g)および雌(n=4対6、重量=21.5±0.6対20.8±0.2g)マウス(135〜151日齢)。*p=.005、**p<.00001。図5Cは、Mrap2+/+およびMrap2-/-の雄(n=4対6)および雌(n=6対8)マウス(88〜194日齢)における、空腹時血清インスリンのレベルを描写している。いずれの性別も遺伝子型間での有意な差はなかった。図5Dは、Mrap2+/+およびMrap2-/-の雄(n=4対6)および雌(n=6対8)マウス(88〜194日齢)における、グルコース負荷(tolerance)試験(腹腔内)の結果を描写している。いずれの性別も遺伝子型間での有意な差はなかった。図5Eは、Mrap2+/+およびMrap2-/-の雄(n=4対3)および雌(n=6対7)マウス(124〜178日齢)における、朝、夜、および拘束ストレスの30分後の血中コルチコステロンのレベルを描写している。3つすべての条件に関して、いずれの性別も遺伝子型間での有意な差はなかった。(G)Mrap2+/+対Mrap2-/-の雄(n=8対8)および雌(n=9対10)マウス(90日齢)における尿中カテコールアミン排出物。雄において、エピネフリンおよびノルエピネフリンは遺伝子型間で有意に異なったが、雌では異なっていなかった。*p=.02、**p<.006。図5Fは、22℃における(雄 n=4対4、雌 n=6対3)および4℃18時間後(雄 n=8対7、雌 n=7対5)のMrap2+/+マウス 対 Mrap2-/-マウス(3〜9ヶ月齢)由来のBATにおける脱共役タンパク質(Ucp1)mRNA含有量を描写している。*p=.1、**p=.02、***p=.003。図5Hは、1600時間で採取された、標準固形飼料の食餌を随時給餌された雄のMrap2+/+マウス 対 Mrap2-/-マウス(40日齢、n=5対6)の視床下部におけるAgrpおよびPomc mRNA含有量を描写している。Agrp mRNAは遺伝子型間で有意に異なったが、Pomc mRNAは異なっていった、*p=.03。図5Iは、Mrap2+/+対Mrap2-/-の雄(n=9対7)および雌(n=13対11)のマウス(42日齢)における、4日間の期間にわたって平均化した飼料摂取量(上のパネル)および体重(下のパネル)についてのグラフを描写している。両性別に関して、重量は2種の遺伝子型間で有意に異なったが、飼料摂取量は異なっていなかった。*p=.01、**p=.004。図5Jは、Mrap2+/+対Mrap2-/-の雄(n=14対19)および雌(n=18対15)のマウス(84日齢)における、4日間の期間にわたって平均化した飼料摂取量(上のパネル)および体重(下のパネル)についてのグラフを描写している。両性別に関して、重量は2種の遺伝子型間で有意に異なったが、飼料摂取量は異なっていなかった。*p<.00001。図5Kは、42および84日齢でのMrap2+/+およびMrap2-/-の雄(左のパネル、n=5対4)および雌(右のパネル、n=7対5)マウスにおける糞便中エネルギー含有量についてのグラフを描写している。両方の日齢において、いずれの性別も遺伝子型間での有意な差はなかった。図5Lは、随時給餌されたMrap+/+対Mrap2-/-の雄(n=10対11)および雌(n=11対8)における、34〜44日からの累積飼料摂取量(上のパネル)および重量増加(下のパネル)についてのグラフを描写している。下のパネルにおける挿入図は、Mrap+/+マウスに対して有意により大きな、Mrap2-/-における重量増加を立証している。図5Mは、随時給餌されたMrap+/+ 対 ペアフィードされた(pair-fed)(PF)Mrap2-/-の雄(n=10対11)および雌(n=11対10)における、累積飼料摂取量(上のパネル)および重量(下のパネル)についてのグラフを描写している。図5Nは、ペアフィードされたMrap+/+対Mrap2-/-の雄(n=10対11)および雌(n=11対10)における、50〜72日からの累積飼料摂取量(上のパネル)および重量増加(下のパネル)についてのグラフを描写している。下のパネルにおける挿入図は、Mrap+/+マウスに対して有意により大きな、Mrap2-/-マウスにおける重量増加を立証している。図5Oは、随時給餌されたMrap+/+ 対 制限給餌された(RF)Mrap2-/-の雄(n=16対30)および雌(n=16対21)における、累積飼料摂取量(上のパネル)および重量(下のパネル)についてのグラフを描写している。69日齢(上向きの矢印)において、10匹のRF Mrap2-/-の雄および7匹のRF Mrap2-/-の雌を随時給餌に開放し、残りはRFを継続した。図5Pは、38〜45日齢のMrap+/+対Mrap2-/-の雄(n=4対4)および雌(n=6対7)における、生理食塩水またはMTII(2μg/g体重、腹腔内(i.p.))後の飼料摂取量についてのグラフを描写している。*p=.056、**p=.019、***p=.016、****p<.008。図5Qは、27〜31日齢のMrap+/+対Mrap2-/-の雄(n=3対5)および雌(n=4対3)における呼吸交換比率(RER)についてのグラフを描写している。上のパネル、3日間にわたる継続的測定結果。下のパネル、昼間対夜間の、12時間の期間にわたってまとめられた測定結果。図5Rは、31〜43日齢のMrap+/+対Mrap2-/-の雄(n=18対14)および雌(n=20対22)における自発運動活性についてのグラフを描写している。上のパネル、3日間にわたる継続的測定結果。下のパネル、昼間対夜間の、12時間の期間にわたってまとめられた測定結果。両性別に関して、遺伝子型間で有意な差はなかった。図5Sは、Mrap+/+対Mrap2-/-マウス(243〜261日齢)における深部体温についてのグラフを描写している。上のパネル:雄(n=7対5)および雌(n=5対5)マウスにおける22℃での体温日周期リズム。下のパネル:16:00時、22℃(雄 n=7対14、雌 n=8対10)、およびそれに続く4℃での配置(下向きの矢印、雄 n=3対4、雌 n=2対2)における体温。両性別に関して、日周期リズムまたは4℃への応答のいずれにおいても、遺伝子型間で有意な温度差はなかった。 図6A〜6Dは、Mrap2とMc4rとの間の相互作用を実証している。図6Aは、雌のMrapflox/floxマウス 対 Sim1Cre::Mrap2flox/floxマウスにおける飼料摂取量(左のパネル)および体重(右のパネル)についてのグラフを描写している。Sim1Cre::Mrap2flox/floxマウスは、随時給餌するか、または、随時給餌させたMrap2flox/floxマウスに対してペアフィード(70日齢(上向きの矢印)で開始)した。体重は、3つすべての条件の間で有意に異なった。ANOVAによる、*p<.001。図6Bは、Mrap2およびMc4rの組み合わせノックアウトを有するマウスにおける体重についてのグラフを描写している。上段のパネル:混合Mrap+/-::Mc4r+/-遺伝子型における体重(雄のMrap+/-::Mc4r+/-、n=10;Mrap+/+::Mc4r+/-、n=10;Mrap+/-::Mc4r+/+、n=8;Mrap+/+:: Mc4r+/+、n=9;雌のMrap+/-::Mc4r+/-、n=9;Mrap+/+::Mc4r+/-、n=12;Mrap+/-::Mc4r+/+、n=8;Mrap+/+::Mc4r+/+、n=8)。下段のパネル:混合Mrap-/-::Mc4r-/-遺伝子型における体重(雄のMrap-/-::Mc4r-/-、n=9;Mrap+/+::Mc4r-/-、n=8;Mrap-/-::Mc4r+/+、n=8;Mrap+/+::Mc4r+/+、n=9;雌のMrap-/-::Mc4r-/-、n=7;Mrap+/+::Mc4r-/-、n=8;Mrap-/-::Mc4r+/+、n=9;Mrap+/+::Mc4r+/+、n=8)。ANOVAによる、*p<.05、**p<.001。図6Cは、Mrap2とMc4rとの間の共免疫沈降アッセイの結果を描写している。Mycタグ付きのMrap2およびGFPタグ付きのMc4rをCHO細胞へトランスフェクションした後に、抗Myc免疫沈降および抗GFP免疫ブロッティングを続けた。L:インプット溶解物;IP:免疫沈降。64kDのMc4r-GFPは、Mc4r-GFPをトランスフェクトされた細胞溶解物においてのみ、および両構築物をトランスフェクトされた免疫沈降物においてのみ存在している。左側に分子量マーカー(kD単位)。図6Dは、Mc3rシグナル伝達に対するMrap2の効果についてのグラフを描写している。左のパネル:0〜10nM αMSHに曝露した5時間後の、CHO細胞単独における、またはMrap2もしくはMrap2ノックアウト構築物Mrap2delE3を伴うもしくは伴わないMc3rを同時トランスフェクトされたCHO細胞における、cAMPレポーター活性(CRELuc)のレベル(n=3/群)。右のパネル:0nM αMSHを基準とする、0〜10nM αMSH後の誘導パーセントとして表現された、これら同じ構築物のcAMP活性。*p<.0001、同じ[αMSH]におけるMc3r+Mrap2対Mc3r、ANOVAによる。ほとんどのデータ点に関して、エラーバーは記号によって覆い隠されている。 ヒト肥満に関連した、MRAP2における変異を描写している。4つのMRAP2エクソンが、黒色のコード領域とともに長方形で描写されている。重度の肥満に関連した4種のミスセンス変種は、エクソン2および4に存在している。
詳細な説明
本明細書において記載されるように、本発明者らは、Mrap2のノックアウトが、ノックアウト動物が発達中に重量増加の加速を呈するように脳におけるメラノコルチン受容体シグナル伝達を変調させ、野生型動物よりもはるかに急速に成熟重量に達することを発見した。低下したかつ/または検出不能なレベルのMrap2および/またはMrap2活性を有する細胞および動物が、本明細書において提供される。そのような動物は、野生型動物よりも短い時間で、かつしたがってより少ない資源を消費することによって、成熟重量に達すると考えられ、これにより様々な畜産物(例えば、食肉、繊維、ミルク、および他の産物)のより効率的な産出が可能となる。
本明細書において使用するとき、「Mrap2」または「メラノコルチン受容体付属タンパク質2」とは、5種のメラノコルチン受容体(MCR)と相互作用してそれらのシグナル伝達を変調させる、脳、副腎、および視床下部において発現される膜貫通を指す。Mrap2遺伝子は、N末で(具体的には、N9で)N-結合型グリコシル化に供されるタンパク質をコードする、3つのエクソンを含む。Mrap2は、N末ドメイン(SEQ ID NO: 1のアミノ酸1〜44)、膜貫通ドメイン(SEQ ID NO: 1のアミノ酸45〜67)、およびC末ドメイン(SEQ ID NO: 1のアミノ酸68〜205)を含む。いくつかの種に対するMrap2の配列、例えばヒトMrap2(NCBI遺伝子ID No: 112609;ポリペプチド(NCBI Ref Seq: NP_612418、SEQ ID NO: 1);mRNA(NCBI Ref Seq: NM_138409、SEQ ID NO: 2))、およびブタMrap2(NCBI遺伝子ID No: 100515980;ポリペプチド(NCBI Ref Seq: XP_003353296、SEQ ID NO: 3);mRNA(NCBI Ref Seq: XM_003353248、SEQ ID NO: 4))が公知である。Mrap2の構造および機能についてのさらなる詳細は、例えばChan et al. PNAS 2009 106:6146-6151およびHofland et al. J Clin Endocrinol Metab 2012 97:E747-E754に見出され得、そのそれぞれは参照によりその全体として本明細書に組み入れられる。
Mrap2遺伝子は、Mrap2遺伝子座に関連した任意の配列と見なされる。ゆえに、それは、イントロン、エクソン、Mrap2コード配列および非コード配列を伴う5'上流配列、ならびにMrap2コード配列および非コード配列を伴う3'下流配列など、Mrap2を発現する任意の生物内に含有される染色体核酸を少なくとも含むと考えられる。Mrap2のエクソン1は、SEQ ID NO: 2の1〜183位に対応するヌクレオチドからなり;Mrap2のエクソン2は、SEQ ID NO: 2の184〜317位に対応するヌクレオチドからなり;Mrap2のエクソン3は、SEQ ID NO: 2の318〜417位に対応するヌクレオチドからなり;かつMrap2のエクソン4は、SEQ ID NO: 2の418〜2214位に対応するヌクレオチドからなる。Mrap2のコード配列は、SEQ ID NO: 2の191〜808位に対応するヌクレオチドからなる。
Mrap2は、メラノコルチン受容体、とくに脳におけるMc4rと相互作用することによって機能する。この相互作用を介して、それは、Mc4Rによって仲介されるサイクリックAMP(cAMP)の生成を増強する。いくつかの態様において、Mc4r活性に対するバイオアッセイ(bioassy)を用いて、Mrap2の機能性を測定することができる。例えば、Mc4rを発現する細胞を、α-メラニン細胞刺激ホルモンと接触させることができる。機能的Mc4rおよび機能的Mrap2が存在している場合、α-メラニン細胞刺激ホルモンの添加は、(例えば、cAMPのレベルを直接アッセイすることによって、またはcAMP産生に応答して誘導されるレポーター、例えばpCRE-LUCのレベルを測定することによって測定され得る)PKA活性を誘導すると考えられる。検出可能なレベルの機能的Mrap2を欠いている細胞は、α-メラニン細胞刺激ホルモン添加前の活性のレベルよりも大きいレベルのPKA活性誘導、例えば該ホルモン添加前のレベルの3×未満、2×未満、または1.5×未満であるレベルの誘導を呈しないと考えられる。
Mrap2の変更バージョンを細胞にトランスフェクトし、かつα-メラニン細胞刺激ホルモンによるPKA活性の誘導を測定することによって、その変更がMrap2を非機能的な状態にする改変であるかどうかを判定することが可能である。
いくつかの態様において、本明細書における他の箇所で記載されるように、Mrap2を非機能的な状態にする改変とは、Mrap2の発現の阻害をもたらす、または機能性に必要なドメインを欠いているMrap2の発現の阻害をもたらす、改変である。RT-PCR、qRT-PCR、ノーザンブロッティング、ウェスタンブロッティング、免疫化学などを含むがそれらに限定されない、核酸および/またはポリペプチドの発現のレベルを判定するための、当技術分野における公知の方法によって、Mrap2発現のレベルを測定することができる。Mrap2発現産物の増幅に適したプライマーは、本明細書における表4に提供されている。Mrap2の様々なドメインの検出に適した抗体は、本明細書における実施例に記載されている。いくつかの態様において、Mrap2に対する市販の抗体、例えばMrap2の膜貫通ドメインおよび/またはC末ドメインに特異的な抗体(Abcam, Cambridge, MA製のab129397)を、本明細書において記載される方法に用いることができる。
本明細書において使用するとき、「機能的な」とは、それが由来する天然ポリペプチドの活性の少なくとも検出可能なレベルを保持する、ポリペプチドの一部分および/または変種を指す。例えばMrap2の活性および/または機能性を検出する方法は、本明細書における他の箇所で記載されている。いくつかの態様において、機能的フラグメントは、天然ポリペプチドの活性の少なくとも50%、例えば天然ポリペプチドの活性の50%もしくはそれを上回る、該活性の60%もしくはそれを上回る、該活性の75%もしくはそれを上回る、または該活性の90%もしくはそれを上回る割合を保持し得る。本明細書において称される「変種」とは、天然または参照ポリペプチドと実質的に相同であるが、1つまたは複数の欠失、挿入、または置換が理由で、該天然または参照ポリペプチドのものとは異なるアミノ酸配列を有する、ポリペプチドである。
本明細書において使用するとき、「検出可能な」とは、統計的に有意な量で、バックグラウンドまたは陰性対照のレベルと区別され得るレベル(例えば、濃度または活性)を指す。いくつかの態様において、Mrap2および/またはMrap2活性の低下したレベルは、同じタイプの野生型細胞および/または動物において見出されるレベルの10%未満、例えば10%もしくはそれを下回る、9%もしくはそれを下回る、8%もしくはそれを下回る、7%もしくはそれを下回る、6%もしくはそれを下回る、5%もしくはそれを下回る、4%もしくはそれを下回る、3%もしくはそれを下回る、2%もしくはそれを下回る、または1%もしくはそれを下回る割合である。
「改変」とは、動物における遺伝物質の検出可能な変化であり、それは該動物の子孫に伝えられる。改変とは、通常、1個または複数個のデオキシリボヌクレオチドの変化であり、該改変は、例えばヌクレオチドを付加する、欠失させる、反転させる、または置換することによって得られる。本明細書において記載されるように、Mrap2の改変は、少なくともある状況下でMrap2遺伝子を非機能的な状態にし、「ノックアウト」動物を作製する。いくつかの態様において、Mrap2は、改変を含む任意の細胞において非機能的な状態にされる。いくつかの態様において、本明細書において以下で記載されるように、Mrap2は、改変を含む特定の細胞タイプにおいて、例えば組織特異的リコンビナーゼ改変の場合において非機能的な状態にされる。
いくつかの態様において、細胞および/または動物のゲノムは、該細胞および/または動物において検出可能なレベルのMrap2が産生されないような、Mrap2の改変を含み得る。いくつかの態様において、細胞および/または動物のゲノムは、Mrap2の1つまたは複数のエクソンにおいて1つまたは複数の欠失を含み得る。いくつかの態様において、細胞および/または動物のゲノムは、ペプチドの翻訳が、早期に、例えば膜貫通ドメインおよび/またはC末ドメインが翻訳される前に終結するような、Mrap2配列内に挿入された終止コドンを含み得る。
本明細書において記載されるノックアウト細胞または動物は、Mrap2の一方または両方のコピーに存在している、Mrap2の改変を有し得る。ホモ接合性改変が存在している後者の場合、変異は「ヌル」変異と称される。Mrap2の一方のコピーのみが改変される場合、ノックアウト動物は「ヘテロ接合性ノックアウト動物」と称される。本発明のノックアウト動物は、典型的に、Mrap2の両方のコピーの破壊に関してホモ接合性である。
いくつかの態様において、トランスジェニック非ヒト動物のゲノムは、ヘテロ接合性の選択可能なマーカー遺伝子、例えばMrap2の改変とともにゲノム内に導入されるマーカーをさらに含み得る。
本明細書において記載される細胞または動物は、任意の非ヒト種、例えば哺乳動物種のものであり得る。いくつかの態様において、細胞または動物は、農業目的のために、例えば該動物によって産出される産物(例えば、ミルクまたは繊維)の使用のために、またはその屠体の使用(例えば、食用の肉として)のために飼育される種であり得る。いくつかの態様において、細胞または動物は、家畜化された種および/または品種であり得る。いくつかの態様において、細胞または動物は、例えば魚類、鳥類、または爬虫類であり得る。いくつかの態様において、細胞または動物は非ヒト哺乳動物であり得る。哺乳動物の非限定的な例には、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、アルパカ、バッファロー、バイソン、ラクダ、ネコ、シカ、ロバ、イヌ、ガヤル、モルモット、ウマ、ラマ、ラバ、トナカイ、ヘラジカ、ヤクが含まれ得る。
本明細書において記載される細胞は、胚性幹細胞、胚細胞、生殖系列細胞、体細胞、脳細胞、ニューロン、培養され得る細胞(例えば、ES細胞)、前駆細胞、幹細胞などを含むがそれらに限定されない、任意のタイプの細胞であり得る。
いくつかの局面において、例えばMrap2コード配列は改変されていないが機能的Mrap2の発現は検出不能である、トランスジェニックMrap2ノックアウト細胞および/または動物が、本明細書において記載される。いくつかの態様において、改変は、Mrap2遺伝子以外の位置でゲノム内に導入され得る。そのようなトランスジェニックMrap2ノックアウトは、Mrap2遺伝子を標的とするアンチセンス分子を含み得る。
いくつかの態様において、改変されたMrap2遺伝子は、リコンビナーゼによる組換えのための部位を含み、例えば該部位はlox部位であり、かつ該リコンビナーゼはcreリコンビナーゼである。リコンビナーゼが存在している場合、リコンビナーゼ部位間の核酸配列がゲノムから切除され、これにより、本明細書における他の箇所で記載されるように非機能的な状態を付与する、例えばMrap2の一部分の欠失が創出される。
いくつかの態様において、改変は、リコンビナーゼの作用によって生じる。いくつかの態様において、リコンビナーゼはcreリコンビナーゼである。いくつかの態様において、リコンビナーゼは、組織特異的プロモーターの制御下にある。いくつかの態様において、プロモーターは、ニューロンまたは脳組織に特異的であり、例えばSim1プロモーターである。ニューロンおよび/または脳組織に特異的なプロモーターは、当技術分野において公知であり、例えばミエリン塩基性タンパク質、プロラクチン、GFAP、NSE、ネスチン、シナプシンI、プレプロエンケファリン、およびドーパミンβヒドロキシラーゼのプロモーターである。例えば、参照によりその全体として本明細書に組み入れられる、Papadakis et al. Current Gene Therapy 2004 4:89-113を参照されたい。
いくつかの局面において、本明細書において記載される細胞を含むかまたはそれらからなる動物が本明細書において記載される。いくつかの態様において、動物は非ヒト哺乳動物である。
一局面において、Mrap2遺伝子の改変を含む動物が本明細書において記載され、哺乳動物は検出可能なレベルの機能的Mrap2を発現しない。いくつかの態様において、動物は非ヒト哺乳動物である。いくつかの態様において、動物はトランスジェニック動物である。いくつかの態様において、動物はノックアウト動物である。
本明細書において記載される細胞および/または動物を取得するための技法は、当技術分野において周知である。細胞および/または動物のゲノム内に改変を導入する方法の非限定的な例には、微量注入、ウイルス送達、リコンビナーゼ技術、相同組換え、TALENS、CRISPR、および/またはZFNが含まれ得、例えば、参照によりその全体として本明細書に組み入れられる、ClarkおよびWhitelaw. Nature Reviews Genetics 2003 4:825-833を参照されたい。
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、Cas9/ CRISPRシステム、および転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)はメガヌクレアーゼである。メガヌクレアーゼは、微生物種に一般に見出され、かつ極めて長い認識配列(>14bp)を有することにより、所望の位置における切断に対してそれらを天然に極めて特異的にする固有の特性を有する。これを活用して、例えばゲノムにおいて、部位特異的な二本鎖断裂を作製することができる。これらのヌクレアーゼは、ゲノムにおける所望の位置で切断し得かつ特異的な二本鎖断裂を創出し得、次いでそれは、相同組換え(HR)、相同指向性修復(homology directed repair)(HDR)、および非相同末端接合(non-homologous end-joining)(NHEJ)など、細胞の内因性過程によって修復される。NHEJは、二本鎖断裂においてDNA末端を直接接合し、一方でHDRは、断裂地点における欠落したDNA配列を再生するための鋳型として相同配列を利用する。ゆえに、Mrap2に特異的なZFN、CRISPR、および/またはTALENを細胞内に導入することによって、Mrap2において少なくとも1つの二本鎖断裂が作製され、Mrap2遺伝子の少なくとも一部の切除がもたらされる(すなわち、本明細書において記載される改変が導入される)(例えば、Gaj et al. Trends in Biotechnology 2013 31:397-405;Carlson et al. PNAS 2012 109:17382-7;およびWang et al. Cell 2013 153:910-8を参照されたく、そのそれぞれは参照によりその全体として本明細書に組み入れられる)。代替的に、DSBの修復には、内因性部位における変化した数個のヌクレオチド、または断裂部位における新たなかつ/もしくは改変された遺伝子の付加が含まれ得るため、特異的に設計された相同的ドナーDNAを、例えばZFNと組み合わせて提供した場合、この鋳型は遺伝子修正または挿入をもたらし得る。当技術分野における技能の1つは、これらの天然に存在するメガヌクレアーゼを使用し得るが、そのような天然に存在するメガヌクレアーゼの数は限られている。
この課題を克服するために、突然変異誘発およびハイスループットスクリーニング法を用いて、一意的配列を認識するメガヌクレアーゼ変種が創出されている。例えば、様々なメガヌクレアーゼを融合させて、新たな配列を認識するハイブリッド酵素が創出されている。代替的に、メガヌクレアーゼのアミノ酸と相互作用するDNAを変更して、配列特異的メガヌクレアーゼを設計することができる(例えば、米国特許第8,021,867号を参照されたい)。例えば、それぞれの内容は参照によりそれらの全体として本明細書に組み入れられる、Certo, MT et al. Nature Methods (2012) 9:073-975;米国特許第8,304,222号;第8,021,867号;第8,119,381号;第8,124,369号;第8,129,134号;第8,133,697号;第8,143,015号;第8,143,016号;第8,148,098号;または第8,163,514号に記載されている方法を用いて、メガヌクレアーゼを設計することができる。代替的に、部位特異的切断特徴を有するメガヌクレアーゼを、市販の技術、例えばPrecision BiosciencesのDirected Nuclease Editor(商標)ゲノム編集技術を用いて取得することができる。
ZFNおよびTALEN制限エンドヌクレアーゼ技術は、ジンクフィンガーおよび転写活性化因子様エフェクター(TALE)などの特異的DNA配列認識ペプチドに連結されている非特異的DNA切断酵素を利用する。典型的に、そのDNA認識部位および切断部位が互いに離れているエンドヌクレアーゼが選択され、かつその切断部分は切り離されて、次いで配列認識ペプチドに連結され、それによって、所望の配列に極めて高い特異性を有するエンドヌクレアーゼが産出される。そのような特性を有する例示的な制限酵素はFokIである。加えて、FokIは、ヌクレアーゼ活性を有するために二量体化を要するという利点を有し、このことは、各ヌクレアーゼパートナーが一意的DNA配列を認識するために特異性が劇的に増加することを意味する。この効果を増強するために、ヘテロ二量体としてのみ機能し得かつ増加した触媒活性を有し得るFokIヌクレアーゼが遺伝子工学で作製されている。ヘテロ二量体機能性ヌクレアーゼは、不要なホモ二量体活性の可能性を回避し、ゆえに二本鎖断裂の特異性を増加させる。
ZFNおよびTALENの両方のヌクレアーゼ部分は同様の特性を有するが、これら遺伝子工学で作製されたヌクレアーゼ間の違いは、それらのDNA認識ペプチドにある。ZFNはCys2-His2ジンクフィンガー、TALENはTALEを利用する。これらDNA認識ペプチドドメインは共に、それらが天然において組み合わせでそれらのタンパク質中に見出されるという特徴を有する。Cys2-His2ジンクフィンガーは、典型的に、3bp離れた反復で生じ、かつ転写因子などの多種多様な核酸相互作用タンパク質において多様な組み合わせで見出される。他方でTALEは、アミノ酸と認識されるヌクレオチド対との間の1対1の認識比率を有する反復で見出される。ジンクフィンガーおよびTALEの両方は反復パターンで生じるため、種々の組み合わせを試して、幅広い配列特異性を創出することができる。部位特異的ジンクフィンガーエンドヌクレアーゼを作製するための手法には、中でもとくに、例えばモジュラーアセンブリ(トリプレット配列と相関するジンクフィンガーが一列につなげられて、要求される配列を網羅する)、OPEN(細菌系における、ペプチドドメイン対トリプレットヌクレオチドの低ストリンジェンシー選択に続いて行う、ペプチド組み合わせ対最終標的の高ストリンジェンシー選択)、およびジンクフィンガーライブラリーについての細菌ワンハイブリッドスクリーニングが含まれる。本明細書において記載される方法および組成物での使用のためのZFNを、例えばSangamo Biosciences(商標)(Richmond, CA)から商業的に入手することができる。
いくつかの態様において、本明細書において記載されるように、Cas9/CRISPRシステムを用いて、Mrap2遺伝子における改変を創出することができる。規則的な間隔でクラスター化された短い反復回文配列(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)システムは、例えばRNAでプログラム可能なゲノム編集に有用である(例えば、MarraffiniおよびSontheimer. Nature Reviews Genetics 2010 11:181-190;Sorek et al. Nature Reviews Microbiology 2008 6:181-6;KarginovおよびHannon. Mol Cell 2010 1:7-19;Hale et al. Mol Cell 2010:45:292-302;Jinek et al. Science 2012 337:815-820;BikardおよびMarraffini. Curr Opin Immunol 2012 24:15-20;Bikard et al. Cell Host & Microbe 2012 12:177-186を参照されたく、そのすべては参照によりそれらの全体として本明細書に組み入れられる)。ゲノムにおける所望の位置にCas酵素を標的とし得るCRISPRガイドRNAが用いられ、そこでそれは二本鎖断裂を作製する。この技法は当技術分野において公知であり、かつ例えば、参照によりその全体として本明細書に組み入れられる、Mali et al. Science 2013 339:823-6に記載されており、かつCRISPR介在性ゲノム編集の設計および使用のためのキットが市販されている、例えばSystem Biosciences, Mountain View, CA製のPRECISION X CAS9 SMART NUCLEASE(商標)System(カタログ番号CAS900A-1)。
いくつかの態様において、CRISPR、TALEN、またはZFN分子(例えば、ペプチドおよび/またはペプチド/核酸複合体)を、CRISPR、TALEN、またはZFN分子の存在が一過性であり、かつその細胞の子孫またはそれに由来する動物において検出可能でないように、細胞内、例えば培養ES細胞内に導入することができる。いくつかの態様において、CRISPR、TALEN、またはZFN分子をコードする核酸(例えば、ペプチド、および/またはペプチド/核酸複合体の一部をコードする複数の核酸)を、該核酸が細胞内に一過性に存在し、かつCRISPR、TALEN、またはZFN分子をコードする核酸、ならびにCRISPR、TALEN、またはZFN分子それ自体が、その細胞の子孫またはそれに由来する動物において検出可能でないように、細胞内、例えば培養ES細胞内に導入することができる。いくつかの態様において、CRISPR、TALEN、またはZFN分子をコードする核酸(例えば、ペプチド、および/またはペプチド/核酸複合体の一部をコードする複数の核酸)を、該核酸が細胞内で維持され(例えば、ゲノム内に組み込まれ)、かつCRISPR、TALEN、もしくはZFN分子をコードする核酸、および/またはCRISPR、TALEN、もしくはZFN分子が、その細胞の子孫またはそれに由来する動物において検出可能であるように、細胞内、例えば培養ES細胞内に導入することができる。
非限定的な例として、Mrap2のエクソン3の5'末端を標的とするTALEN、およびMrap2のエクソン3の3'末端を標的とするTALENを細胞内に導入することができ、それによって、エクソン3が欠失しているMrap2改変が引き起こされる。
代替的に、生きた哺乳動物細胞のゲノム内へのDNA配列の挿入、欠失、または置換を可能にする組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターの使用を中心としたゲノム編集プラットフォームである、rAAVに基づくゲノム操作を用いて、Mrap2における改変を細胞のゲノム内に導入することができる。rAAVゲノムは、約4.7キロベース長である、プラス鎖またはマイナス鎖のいずれかの一本鎖デオキシリボ核酸(ssDNA)分子である。これらの一本鎖DNAウイルスベクターは、高い形質導入率を有し、かつ、ゲノム中で二本鎖DNA断裂を引き起こすことなく内因性の相同組換えを刺激するという固有の特性を有する。当業者であれば、所望のゲノム遺伝子座を標的とし、かつ欠失など、細胞における著しいおよび/またはわずかな内因性遺伝子変更の両方を実施する、rAAVベクターを設計することができる。rAAVゲノム編集は、それが単一の対立遺伝子を標的とし、かつ標的外のいかなるゲノム変更をももたらさないという点で利点を有する。rAAVゲノム編集技術は商品化されており、例えばHorizon(商標)(Cambridge, UK)製のrAAV GENESIS(商標)システムである。
本明細書において記載される様々な局面のいくつかの態様において、ターゲティングベクターを用いて、Mrap2の改変を導入することができる。「ターゲティングベクター」とは、例えば相同組換えによって、破壊される対象である遺伝子内に挿入され得る配列を含むベクターである。ターゲティングベクターは、概して、関心対象の遺伝子のセグメントに相同な5'隣接領域および3'隣接領域であって、遺伝子内に挿入される対象である改変および/または外来DNA配列を含むDNA配列を取り囲んでいる5'隣接領域および3'隣接領域を有する。例えば、外来DNA配列は、抗生物質耐性遺伝子などの選択可能なマーカーをコードし得る。適切な選択可能なマーカーの例は、ネオマイシン耐性遺伝子(NEO)およびハイグロマイシンβ-ホスホトランスフェラーゼ遺伝子である。5'隣接領域および3'隣接領域は、非関連のDNA配列で置き換えられる対象である遺伝子の部分を取り囲む遺伝子内の領域に相同である。いくつかの態様において、ターゲティングベクターは、選択可能なマーカーを含まない。ターゲティングベクターを含むDNAと関心対象の天然遺伝子を含むDNAとを、相同組換えに好都合な条件下で接触させる。例えば、ターゲティングベクターを用いて胚性幹(ES)細胞を形質転換することができ、それらは後に相同組換えを受け得る。
典型的なターゲティングベクターは、改変される対象である遺伝子(例えば、Mrap2)をコードするゲノム遺伝子座の5'および3'末端の両方から、約0.5kb以上約10.0kb以下の核酸フラグメントを含有する。これら2つのフラグメントは、導入される対象である改変をコードする核酸の介在フラグメントによって隔てられている。結果として生じる構築物が、この遺伝子座において染色体と相同的に組換えを生じる場合、それは、改変の導入、例えばエクソンの欠失または終止コドンの挿入をもたらす。
上記のターゲティングベクターの相同組換えは、往々にして稀であり、そのような構築物は、ゲノムのランダムな領域内に非相同的に挿入し得、そこではそれは、欠失のために標的とされている遺伝子に対する効果を有せず、かつそれは、そうでなければ変更されることを意図されていなかった別の遺伝子を破壊するように潜在的に組換えを生じ得る。いくつかの態様において、上述のターゲティングベクターを、それらがいずれかの末端で陰性選択可能なマーカーに隣接するように改変することによって、そのような非相同組換え事象が選択され得る(特に、当技術分野において周知の適当な組織培養培地中、すなわち5-ブロモデオキシウリジンなどの薬物を含有する培地中で細胞株を発現させた際にそのポリペプチド産物が選択され得る、チミジンキナーゼ遺伝子の2種の対立遺伝子変種の使用による)。陰性選択可能なマーカーを含む、得られたターゲティングベクターと、ゲノムとの間の非相同組換えは、通常、これら陰性選択可能なマーカー遺伝子の一方または両方の安定した組み込みをもたらすと考えられ、それゆえ非相同組換えを受けている細胞は、適当な選択培地(例えば、5-ブロモデオキシウリジンなどの薬物を含有する培地)中での成長によって選択され得る。陽性選択可能なマーカーおよび陰性選択可能なマーカーに対する同時選択は、変異することを意図された遺伝子の遺伝子座において、ターゲティングベクターが相同的に組換えを生じているクローンの著しい濃縮をもたらすと考えられる。
いくつかの態様において、細胞内に挿入される対象である各ターゲティングベクターを線状化する。線状化は、ベクター配列内でのみ切断し、かつ5'もしくは3'相同領域または改変領域では切断しないように選択された適切な制限エンドヌクレアーゼでDNAを消化することによって達成される。
ゆえに、ターゲティングベクターとは、細胞における内因性DNA配列によってコードされるタンパク質の発現を減少させるまたは抑制するために用いられ得る核酸を指す。簡単な例では、ノックアウト構築物は、ポリヌクレオチドの重要な部分(例えば、膜貫通ドメイン)における欠失を有するMrap2ポリヌクレオチドから構成され、そのため機能的Mrap2はそこから発現され得ない。代替的に、いくつかの終結コドンを天然ポリヌクレオチドに付加して、タンパク質の早期終結を引き起こすことができ、またはイントロン接合部を不活性化することができる。適切な相同組換えは、遺伝子の非改変領域をプローブとして用いて、制限エンドヌクレアーゼにより消化されたDNAについてのサザンブロット解析によって確認され得る。天然遺伝子は、破壊された遺伝子のものとは異なる制限パターンを呈すると考えられるため、破壊された遺伝子の存在を、プローブにハイブリダイズする制限フラグメントのサイズから判定することができる。
ターゲティングベクターは、Mrap2のゲノム配列の全体またはフラグメント、および任意で、選択マーカー、例えば陽性選択マーカーを含み得る。(5'および3'末端の両方における)数キロベースの変更されていない隣接DNAがベクター内に含まれ得る(相同組換えベクターの説明に関しては、例えばThomasおよびCapecchi, (1987) Cell, 51:503を参照されたい)。本発明の一局面において、Mrap2遺伝子のゲノム配列は、Mrap2のエクソンの少なくとも一部を含む。
本発明の選択マーカーには、陽性選択マーカー、陰性選択マーカーが含まれ得、または陽性および陰性選択マーカーの両方が含まれ得る。陽性選択マーカーの例には、例えばネオマイシン耐性遺伝子(neo)、ハイグロマイシン耐性遺伝子などが含まれるが、それらに限定されるわけではない。一態様において、陽性選択マーカーはネオマイシン耐性遺伝子である。本発明のある特定の態様において、ゲノム配列は、陰性選択マーカーをさらに含む。陰性選択マーカーの例には、例えばジフテリア毒素遺伝子、HSV-チミジンキナーゼ遺伝子(HSV-TK)などが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
「改変因子」という用語は、本明細書において、Mrap2の改変をもたらし得る任意の分子、例えばターゲティングベクター、あるいはTALEN、CRISPR、もしくはZFN分子、複合体、および/またはそのような分子もしくはそのような複合体の一部をコードする1種もしくは複数種の核酸を集合的に指すために用いられる。
改変因子は、核遺伝物質内への外因性遺伝物質の付加を可能にする任意の技法によって細胞内に導入され得、それが細胞、核膜、または他の既存の細胞構造もしくは遺伝子構造を損なわない限り利用され得る。そのような技法には、トランスフェクション、スクレープローディング(scrape-loading)、またはベクターを用いたインフェクション、前核微量注入(米国特許第4,873,191号、第4,736,866号、および第4,870,009号);生殖系列へのレトロウイルス介在性移入(an der Putten, et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 82:6148-6152 (1985));胚性幹細胞における遺伝子ターゲティング(Thompson, et al., Cell, 56:313-321 (1989));遺伝子トラップベクターを用いた非特異的挿入による不活性化(米国特許第6,436,707号);胚のエレクトロポレーション(Lo, Mol. Cell. Biol., 3:1803-1814 (1983));リポフェクション;および精子介在性遺伝子移入(Lavitrano, et al., Cell, 57:717-723 (1989))が含まれるがそれらに限定されるわけではなく、そのそれぞれは参照によりその全体として本明細書に組み入れられる。これらの方法および組成物を、2つの分類:ウイルスベースの送達システムおよび非ウイルスベースの送達システム、に大きく分けることができる。例えば、改変因子は、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、プラスミド、ウイルスベクター、ウイルス核酸、ファージ核酸、ファージ、コスミド、または細胞における物質の移入もしくはカチオン性リポソームなどのキャリアを介してなど、多数の直接送達システムにより送達され得る。ウイルスベクター、化学的トランスフェクタント、またはエレクトロポレーションおよびDNAの直接拡散などの物理力学的方法を含めた、トランスフェクションのための適当な手段は、例えばWolff, J. A., et al., Science, 247, 1465-1468, (1990);およびWolff, J. A. Nature, 352, 815-818, (1991)によって記載されており、そのそれぞれは参照によりその全体として本明細書に組み入れられる。そのような方法は当技術分野において周知であり、かつ本明細書において記載される組成物および方法での使用のためにすぐに適応可能である。本明細書において記載される方法を用いて、改変因子を任意の細胞タイプに、例えば生殖系列細胞、接合子、胚、または体細胞に送達することができる。細胞はインビトロで培養され得、またはインビボで存在し得る。非限定的な例は、本明細書における下記で提供されている。
一例において、改変因子を、微量注入によって核遺伝物質内に挿入する。細胞および細胞構造体の微量注入は、当技術分野において公知でありかつ用いられている。胚内への導入遺伝子ヌクレオチド配列の導入後、胚を、様々な時間、インビトロでインキュベートしてもよく、もしくは代理宿主内に再移植してもよく、またはその両方であり得る。成熟までのインビトロでのインキュベーションは、本発明の範囲内である。一般的な一方法は、胚を、種に応じて約1〜7日間インビトロでインキュベートし、次いでそれらを代理宿主内に再移植することである。いくつかの態様において、接合子を微量注入する。宿主遺伝子の改変のための標的としての接合子の使用は、ほとんどの場合、注入されたDNAが、最初の切断前に宿主遺伝子内に組み込まれるという点で利点を有する(Brinster et al. (1985) PNAS 82:4438-4442)。結果として、トランスジェニック動物の全細胞は、ターゲティングベクターの組み込まれた核酸を保持すると考えられる。このことは、一般的に、創始者の後代への効率的な伝達にも反映され得る。なぜなら、生殖細胞の50%は改変を保持すると考えられるためである。生殖系列内に外来DNAを導入する一経路は、受精した1細胞卵子の前核への線状DNA分子の直接微量注入を伴う。微量注入された卵子を、その後、偽妊娠した育ての母体の卵管内に移入して、発達させる。子孫の約25%は、微量注入されたDNAの1つまたは複数のコピーを受け継ぐ。トランスジェニック動物を取得するのに適した技法は、十分に記載されている。ES細胞に完全に由来するトランスジェニック非ヒト動物を取得するための適切な技法は、WO 98/06834に記載されている。
いくつかの態様において、改変因子は、エレクトロポレーションによって細胞内に導入され得る。細胞およびターゲティングベクターを、エレクトロポレーション機器を用いかつ使用のためのメーカーのガイドラインに従って、電気パルスに供することができる。エレクトロポレーションの後、典型的には、細胞を適切なインキュベーション条件下で回復させる。次いで、本明細書において解説されるように、細胞をターゲティングベクターの存在についてスクリーニングする。
レトロウイルスインフェクションを用いて、細胞内、例えば非ヒト動物細胞内に、核酸改変因子(例えば、ターゲティングベクター)または改変因子をコードする核酸を導入することもできる。
いくつかの態様において、レトロウイルスを用いて、1つまたは複数の細胞、例えば胚に、Mrap2改変を導入することができる。例えば、発生中の非ヒト胚をインビトロで胚盤胞期まで培養することができる。この時期の間、割球は、レトロウイルスインフェクションの標的であり得る(Jaenich, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 73:1260-1264 (1976))。割球の効率的なインフェクションは、透明帯を取り去る酵素処理によって得られる(Manipulating the Mouse Embryo, Hogan, ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1986))。改変因子を導入するために用いられるウイルスベクターシステムは、典型的に、導入遺伝子を保持する複製欠損レトロウイルスである(Jahner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:6972-6931 (1985);およびVan der Putten et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:6148-6152 (1985))。トランスフェクションは、ウイルス産生細胞の単層上で割球を培養することによって容易にかつ効率的に得られる(Van der Putten et al.、上記参照;およびStewart et al., EMBO J., 6:383-388 (1987))。代替的に、インフェクションは、より後期の段階で実施され得る。ウイルスまたはウイルス産生細胞を卵割腔内に注入することができる(Jahner et al., Nature, 298:623-628(1982))。組み込みは、トランスジェニック非ヒト動物を形成した細胞の部分集団においてのみ生じるため、創始者のほとんどは導入遺伝子に関してモザイクであると考えられる。加えて、妊娠中期胚の子宮内レトロウイルスインフェクションによって、導入遺伝子を生殖系列内に導入することも可能である(Jahner et al. (1982)、上記参照)。
他のウイルスベクターには、アデノウイルスベクター(Mitani et al., Hum. Gene Ther. 5:941-948, 1994)、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(Goodman et al., Blood 84:1492-1500, 1994)、レンチウイルスベクター(Naidini et al., Science 272:263-267, 1996)、シュードタイプレトロウイルスベクター(Agrawal et al., Exper. Hematol. 24:738-747, 1996)が含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。
いくつかの態様において、リポソーム、例えばカチオン性リポソーム(例えば、DOTMA、DOPE、DC-コレステロール)またはアニオン性リポソームの使用によって、改変因子を細胞に導入することができる。リポソームは、所望に応じて、特定の細胞のターゲティングを促すタンパク質をさらに含み得る。リポソームに関して、例えばBrigham et al. Am. J. Resp. Cell. Mol. Biol. 1:95-100 (1989);Feigner et al. Proc. Natl. Acad. Sci USA 84:7413-7417 (1987);米国特許第4,897,355号を参照されたく、そのそれぞれは参照によりその全体として本明細書に組み入れられる。市販のリポソーム調製物には、例えばLIPOFECTIN、LIPOFECTAMINE(GIBCO-BRL, Inc., Gaithersburg, MD)、SUPERFECT(Qiagen, Inc. Hilden, Germany)、およびTRANSFECTAM(Promega Biotec, Inc., Madison, WI)、ならびに当技術分野における標準的な手法に従って開発された他のリポソームが含まれる。
細胞に添加される改変因子(例えば、ターゲティングベクターまたはTALEN分子)のコピーの数は、添加される外因性遺伝物質の総量に依存し、遺伝子の形質転換が生じるのを可能にする量である。理論的には1コピーのみを要するが、一般的には、多数のコピー、例えば1,000〜20,000コピーのターゲティングベクターを利用して、1コピーが機能的であることを確実にする。
いくつかの態様において、改変因子と接触した細胞を、正確なターゲティングについてその後スクリーニングして、Mrap2遺伝子座で適切に改変されているものを同定しかつ単離する。
本明細書において記載される方法により、Mrap2の改変を含む細胞がいったん作製されると、幹細胞技術またはクローニング技術のいずれかにより、この細胞から動物を作製することができる。例えば、核酸がトランスフェクトされた細胞が生物に対する幹細胞(例えば、胚性幹細胞)であった場合には、トランスフェクションおよび培養の後にこの細胞を用いて、生殖系列細胞に遺伝子改変を含有すると考えられる生物を作製することができ、次いで今度はそれを用いて、細胞すべてに遺伝子の改変または破壊を有する別の動物を作製することができる。細胞すべてに遺伝子の改変または破壊を含有する動物の作製のための他の方法では、クローニング技術を用いることができる。これらの技術は、一般的に、トランスフェクトされた細胞の核を採取し、融合または置き換えのいずれかにより、トランスフェクトされた核と卵母細胞とを融合させ、次いでそれを操作して、動物を作製することができる。ES技術の代わりにクローニングを用いる手法の利点は、ES細胞以外の細胞がトランスフェクトされ得ることである。例えば、培養することが極めて容易である線維芽細胞を、トランスフェクトされかつMrap2改変事象が起きる細胞として用いることができ、次いでこの細胞に由来する細胞を用いて、動物全体をクローン化することができる。
概して、ノックアウト動物を作製するために用いられる細胞(例えば、ES細胞)は、作製される対象であるノックアウト動物と同じ種のものである。ゆえに、例えばブタ胚性幹細胞は、通常、ノックアウトブタの作製に用いられる。様々な細胞タイプを単離する、培養する、および操作する方法が、当技術分野において公知である。非限定的な例として、Doetschman et al. (1985) J. Embryol. Exp. Mol. Biol. 87:27-45によって記載されているものなど、当業者に周知の方法を用いて、胚性幹細胞は作製されかつ維持される。Robertsonによって(Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, E. J. Robertson, ed. IRI. Press, Washington, D.C. [1987]);Bradleyらによって((1986) Current Topics in Devel. Biol. 20:357-371);およびHoganらによって(Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1986))明示されているものなど、当業者に周知の方法を用いて、細胞は培養されかつノックアウト構築物挿入のために調製される。
いくつかの態様において、Mrap2改変を含む細胞を作製し、かつ任意で選択した後に、該細胞を胚内に挿入することができる。挿入は、当業者に公知の多種多様なやり方で達成され得るが、典型的な方法は微量注入によるものである。微量注入に関しては、約10〜30個の細胞をマイクロピペット中に採取し、発生中の胚へのMrap2改変を含有するES細胞の組み込みを可能にする、発生の適切な段階にある胚内に注入する。例えば、ES細胞を胚芽細胞(blastocyte)内に微量注入することができる。ES細胞の挿入に用いられる胚に対する適切な発生の段階は、極めて種依存的であるが、マウスに関して、それは約3.5日である。胚は、妊娠した雌の子宮を灌流することによって得られる。これを達成するための適切な方法は、当業者に公知である。
いくつかの態様において、Mrap2を非機能的な状態にするその改変は、リコンビナーゼによって作製され得る。例えば、リコンビナーゼ用の部位を、Mrap2を非機能的な状態にするために欠失され得るエリア(例えば、エクソン3)に隣接するように、天然Mrap2遺伝子内に挿入することができる。リコンビナーゼの存在下で、Mrap2の隣接エリアは欠失する。これにより、例えば脳のみにおける、誘導可能なまたは組織特異的なMrap2改変が可能となる。
広く用いられる部位特異的DNA組換えシステムは、動物における使用にも適応している、例えばバクテリオファージP1由来のCreリコンビナーゼ、またはS.セレビシエ(S. cerevisiae)由来のFlpリコンビナーゼを用いる。loxP-Creシステムは、PIファージCreリコンビナーゼの発現を利用して、隣接するlox部位の間に位置するDNAの切除を触媒する。組織特異的プロモーターの制御下で発現されるCreまたはFlpリコンビナーゼによる作用を受け得る、改変された内因性遺伝子を有するバイナリ―遺伝子導入動物を作製する遺伝子ターゲティング技法を用いることにより、部位特異的組換えを採用して、空間的または時間的に制御された様式で内因性遺伝子を不活性化し得る。例えば、米国特許第6,080,576号、第5,434,066号、および第4,959,317号;ならびにJoyner, A. L., et al. Laboratory Protocols for Conditional Gene Targeting, Oxford University Press, New York (1997)を参照されたい。例えば、loxP部位と称される34byの反復間の組換えを促進するバクテリオファージCre遺伝子を保持した、トランスジェニックマウスの能力に基づく手法であるcre-loxシステムにより、組織特異的なかつ発生的に調節された様式での所定の遺伝子の除去が可能となる(Orban et al. (1992) PNAS 89:6861-6865)。Cre-loxシステムは、組織特異的な導入遺伝子発現(Orban PC, Chui D, Marth JD. Proc Natl Acad Sci USA. 1992 Aug 1;89(15):6861-5)に、部位特異的な遺伝子ターゲティングに、および「ノックイン」法による遺伝子配列の交換(Aguzzi A, Brandner S, Isenmann S, Steinbach JP, Sure U. Glia. 1995 Nov;15(3):348-64、総説)に成功裏に適用されている。
リコンビナーゼは、種々の段階で送達され得る。例えば、リコンビナーゼを、キメラの作製または動物への移植の前に、破壊された遺伝子を含有する胚性幹細胞に添加することができる。本発明のある特定の態様において、導入されたリコンビナーゼ部位を有する少なくとも1つの遺伝子対立遺伝子を含有する動物の作製後に、リコンビナーゼを送達する。例えば、リコンビナーゼ部位を有する遺伝子を含有する動物と、リコンビナーゼを発現する動物とを交配繁殖することによって、リコンビナーゼは送達される。リコンビナーゼを発現する動物は、例えば普遍的に、組織限定的な様式で、または時間限定的な様式でそれを発現し得る。Cre/Flp活性は、ウイルスベクターにおけるcre/FLPコード導入遺伝子を送達することによって、変異したリガンド結合ドメインに融合させたcre遺伝子からなるキメラ導入遺伝子を保持する動物に外因性ステロイドを投与することによって、またはcre/FLP発現を制御する転写トランス活性化を用いることによっても時間的に制御され得る。本発明のある特定の態様において、変異したリコンビナーゼ部位が用いられ得る。例えばCreリコンビナーゼの発現を制御するための、組織特異的な、時間的に調節された、および誘導可能なプロモーターが、当技術分野において公知である。非限定的な例として、Creリコンビナーゼの脳特異的発現を可能にする、Sim1プロモーターにより制御されるCreが、本明細書における実施例に記載されている。
所望の改変を含む生殖系列細胞を有する動物は、例えば、生殖系列細胞および/または子孫におけるMrap2を遺伝子型判定するまたはMrap2のレベルもしくは活性をアッセイすることによって選択され得る。そのような遺伝子型判定またはアッセイのための方法の非限定的な例には、RNA解析(ノーザンブロッティング、またはqRT-PCRを含めたRT-PCR)、本明細書における他の箇所で記載される、Mrap2の活性を判定するためのアッセイ、タンパク質解析(例えば、ウェスタンブロッティング)、組織染色、フローサイトメトリー解析などが含まれ得る。本明細書において記載される動物における改変細胞の寄与の程度は、改変細胞(例えば、改変されると考えられるES細胞)および胚芽細胞について、異なる毛色を有する動物系統を選定することによって視覚的にも評価され得る。
トランスジェニック後代を、任意の適切な方法によって、導入遺伝子の存在および/または発現についてスクリーニングすることができる。スクリーニングはしばしば、導入遺伝子の少なくとも一部分に相補的であるプローブを用いたサザンブロットまたはノーザンブロット解析によって、達成される。典型的には、DNAを例えば尾部組織から調製し、かつ導入遺伝子についてサザン解析またはPCRによって解析する。代替的に、Mrap2の改変を有すると思われる組織または細胞が、改変Mrap2の存在および発現についてサザン解析またはPCRを用いて試験されるが、任意の組織または細胞タイプがこの解析に用いられ得る。例えば、サザンハイブリダイゼーション(Southern J. Mol. Biol. 98:503-517 (1975))、ノーザンハイブリダイゼーション(例えば、Freeman et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:4094-4098 (1983)を参照されたい)、制限エンドヌクレアーゼマッピング(Sambrook et al. (2001) Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd Ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)、RNaseプロテクションアッセイ(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, New York, 1997)、DNA配列解析、およびポリメラーゼ連鎖反応増幅(PCR;米国特許第4,683,202号、第4,683,195号、および第4,889,818号;Gyllenstein et al. Proc Natl. Acad. Sci. USA 85:7652-7657 (1988);Ochman et al. Genetics 120:621-623 (1988);ならびにLoh et al. Science 243:217-220 (1989))を参照されたい。当技術分野においてよく知られている他の増幅方法を採用することができる。ノーザンまたはサザンブロット解析に関するハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーを、用いられる特異的プローブと所望の程度の関連性を有する核酸の検出を確実にするように操作することができる。細胞または組織サンプルにおける遺伝子の発現を、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, New York, 1997に従い、インサイチューハイブリダイゼーション技法を用いて検出しかつ定量することもできる。
タンパク質レベルは、タンパク質に特異的な抗体を用いた免疫アッセイによって検出され得る。例えば、Mra2、または導入遺伝子によってコードされる改変Mrap2に対する抗体を用いたウェスタンブロット解析が、導入遺伝子産物の存在についてのスクリーニングのための代替的または付加的な方法として採用され得る。放射免疫アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、免疫放射線測定アッセイ、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、インサイチュー免疫アッセイ(コロイド金、酵素、または放射性同位体標識を用いた)、ウェスタンブロット解析、沈降反応、凝集アッセイ(例えば、ゲル凝集アッセイ、赤血球凝集(hernagglutination)アッセイ)、補体結合(complement fixation)アッセイ、免疫蛍光アッセイ、プロテインAアッセイ、免疫電気泳動アッセイなどの技法を用いた、競合および非競合アッセイシステムを含むがそれらに限定されない、当技術分野において公知の様々な免疫アッセイを用いることができる。一態様において、抗体結合は、一次抗体上の標識を検出することによって検出される。別の態様において、一次抗体は、該一次抗体への二次抗体または試薬の結合を検出することによって検出される。さらなる態様において、二次抗体が標識される。免疫アッセイにおける結合を検出するための多くの手段が当技術分野において公知であり、かつ本発明の範囲内である。
トランスジェニック動物の子孫は、トランスジェニック動物と適切なパートナーとを交配させることによって、またはトランスジェニック動物から得られた卵子および/もしくは精子のインビトロ受精によって取得され得る。パートナーとの交配が実施される場合、パートナーはトランスジェニックおよび/またはノックアウトであってもなくてもよく;それがトランスジェニックである場合、それは、同じもしくは異なるノックアウト、またはその両方を含有し得る。代替的に、パートナーは親系統であり得る。インビトロ受精が用いられる場合、受精した胚は、代理宿主内に移植され得もしくはインビトロでインキュベートされ得、またはその両方であり得る。いずれかの方法を用いると、子孫は、上記で記載される方法または他の適当な方法を用いて評価され得る。
いくつかの態様において、本明細書において記載される細胞および/または動物は、1つまたは複数の付加的な改変または導入遺伝子(例えば、Mrap2以外の遺伝子を標的とする付加的な導入遺伝子および/または第2のノックアウト)を含み得る。1種を上回る種類のノックアウト構築物および/または1種を上回る種類の導入遺伝子発現構築物を含有する細胞および/または動物は、いくつかのやり方のいずれかで調製され得る。典型的な調製の様式は、それぞれが所望のトランスジェニック表現型の1つを含有する一連の哺乳動物を作製することである。そのような動物を一連の交配、戻し交配、および選択を通じて一緒に繁殖させて、すべての所望のノックアウト構築物および/または発現構築物を含有する単一動物を最終的に作製し、該動物は、該ノックアウト構築物および/または導入遺伝子の存在を除くとその他の点では野生型と類遺伝子性(遺伝子的に同一)である。
本明細書において記載されるMrap2の改変を含む核酸分子、例えば本明細書において記載される態様に従ったMrap2の改変変種を含むターゲティングベクターが本明細書において記載される。記載される核酸のいずれかで細胞を形質転換する過程によって作製された細胞が本明細書において記載される。非天然の記載される核酸のいずれかで細胞を形質転換する過程によって作製された細胞が本明細書において記載される。記載される核酸のいずれかを発現させる過程によって産生されたペプチドが本明細書において記載される。記載される核酸のいずれかを発現させる過程によって産生された非天然ペプチドのいずれかが、本明細書において記載される。非天然の記載される核酸のいずれかを発現させる過程によって産生された記載されるペプチドのいずれかが、本明細書において記載される。本明細書において記載される核酸分子のいずれかを動物内の細胞にトランスフェクトする過程によって作製された動物が、本明細書において記載される。本明細書において記載される核酸分子のいずれかを動物内の細胞にトランスフェクトする過程によって作製された動物が、本明細書において記載され、該動物は哺乳動物である。本明細書において記載される細胞のいずれかを動物に添加する過程によって作製された動物が、本明細書において記載される。
一局面において、使用のための動物を作製する方法が本明細書において記載される。動物は、例えば競技会、繁殖、生きた動物から得られる産物(例えば、乳畜からのミルク、または例えばヒツジもしくはアルパカからの繊維)、または労働(例えば、役畜)のために用いられ得る。動物が果たすべき用途が何かにかかわらず、その動物に対して、用いられる前に達していることが所望される最低限のサイズが存在する。動物がそのサイズまで成長するのにかかる時間を最低限に抑えることによって、資源および時間が節約され、有用な動物を作製するコストが低減される。
いくつかの態様において、動物の屠体が、使用される対象である。動物の屠体は、ヒトによる摂取ならびに他の目的(例えば、革、肥料、化粧品、薬物、毛髪製品、香水、ゼラチン、膠などを産生する)に用いられ得る。いくつかの態様において、屠体の使用のために動物を作製する方法が本明細書において記載され、該方法は、本明細書において記載される動物に、種に適した飼料を与える工程、および該動物を、それが使用のために所望されるサイズに達した時点で屠殺する工程を含む。本明細書において記載される動物のいずれかについての、種に適した飼料および使用のために所望されるサイズは、例えば当技術分野において周知であり、例えばPond et al.「Basic Animal Nutrition and Feeding」5th Edition, Wiley, Hoboken, NJ, 2004またはMarshall et al.「Animal Feeding and Nutrition」11th Edition, Kendall Hunt Publishing 2012を参照されたく、そのそれぞれは参照によりその全体として本明細書に組み入れられる。動物が屠殺される(すなわち、「屠畜される」)場合、所望されるサイズは、当技術分野において「屠重量」または「仕上げ重量」と称され得る。非限定的な例として、ブタは典型的に、重量約240〜約280ポンドの時に屠殺され、かつ推奨される食餌は当技術分野において周知であり、例えば、参照によりその全体として本明細書に組み入れられる、Albrecht et al.「Swine Feeding Suggestions」Circular 509; Clemson Extension; (1995)。代替的に、種に適した飼料を商業的に購入することができる、例えばPURINA MILLS(商標)NATURE'S MATCH(商標)Sow and Pig Complete Feed、カタログ番号0034068;Purina, St. Louis, MO。
いくつかの態様において、本明細書において記載される動物は、野生型動物よりも80%程度早期に、例えば10%早期に、20%早期に、30%早期に、40%早期に、50%早期に、60%早期に、70%早期に、または80%早期に、使用のために所望されるサイズに達し得る。いくつかの態様において、本明細書において記載される動物は、野生型動物よりも50%程度早期に、使用のために所望されるサイズに達し得る。いくつかの態様において、本明細書において記載される動物は、野生型動物よりも80%程度早期に、例えば10%早期に、20%早期に、30%早期に、40%早期に、50%早期に、60%早期に、70%早期に、または80%早期に、屠殺され得る。いくつかの態様において、本明細書において記載される動物は、野生型動物よりも50%程度早期に屠殺され得る。いくつかの態様において、動物は、実質的に随時餌を与えられ得る。いくつかの態様において、動物は非ヒト哺乳動物である。いくつかの態様において、哺乳動物はブタであり得る。
いくつかの態様において、ブタは、約50〜約150日齢で屠殺され得る。いくつかの態様において、ブタは、約75〜約125日齢で屠殺され得る。いくつかの態様において、ブタは、75〜125日齢で屠殺され得る。
いくつかの態様において、動物、例えば哺乳動物および/またはブタに、野生型動物と比較して制限されたレベルの飼料を与え得る。制限された食餌では、本明細書において記載される動物は、野生型動物と同じ時間で、使用のために所望される所定のサイズに達し得る。いくつかの態様において、制限されたレベルの飼料は、野生型哺乳動物に与えるレベルの約60%〜約95%である。いくつかの態様において、制限されたレベルの飼料は、野生型哺乳動物に与えるレベルの約80%〜約95%である。
便宜上、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲において用いられる一部の用語および語句の意味を、下記に提供する。別様に明記されていない、または文脈から黙示されない限り、以下の用語および語句は、下記で提供される意味を含む。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、定義は、特定の態様を説明するのを助けるために提供されるものであり、特許請求される発明を限定することを意図したものではない。別様に定義されていない限り、本明細書において用いられるすべての技術的および科学的な用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。当技術分野における用語の使用法と本明細書において提供されるその定義との間に明らかな矛盾が存在する場合、本明細書内で提供される定義が優先する。
便宜上、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲における、本明細書において採用される特定の用語を、ここに集約する。
「減少」、「低下した」、「低下」または「阻害する」という用語はすべて、統計的に有意な量の減少を意味するために本明細書において用いられる。いくつかの態様において、「低下させる」、「低下」もしくは「減少」、または「阻害する」は、典型的に、参照レベル(例えば、所定の処理なし)と比較して少なくとも10%の減少を意味し、かつ例えば少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれを上回る割合の減少を含み得る。本明細書において使用するとき、「低下」または「阻害」とは、参照レベルと比較して完全な阻害または低下を包含するわけではない。「完全な阻害」とは、参照レベルと比較して100%の阻害である。
本明細書において使用するとき、「トランスジェニック動物」とは、外因性DNAが導入されている動物を指す。ほとんどの場合、トランスジェニック手法は、例えば転写単位全体をゲノム内に導入することによる、または既存の細胞遺伝子を上方調節もしくは下方調節することによる、ゲノムの特異的改変を目指す。これらの手法のうちあるものの目的とされた特徴により、トランスジェニック技術は、化学的突然変異原の投与またはイオン化溶液での処理などの、生殖系列にランダム変異を与える実験方法とは差別化される。
本明細書において使用するとき、「ノックアウト」とは、細胞における内因性DNA配列によってコードされるタンパク質の発現の部分的または完全な抑制を指す。「ノックアウト」は、細胞におけるあるタンパク質をコードする遺伝子の全体または一部の目的とされた欠失によって影響を受け得る。いくつかの態様において、欠失は、機能的タンパク質の発現を、通常それが発現される動物全体における任意の細胞において阻止し得るかまたは低下させ得る。例えば、「Mrap2ノックアウト動物」とは、機能的Mrap2の発現が、Mrap2遺伝子の配列における改変を導入する組換え改変因子の導入によって低下しているまたは抑制されている動物を指す。ノックアウト動物はトランスジェニック動物であってもよく、トランスジェニック法を用いずに、例えば、Mrap2遺伝子の一部またはすべての欠失は生じるがゲノムへの外因性DNAの導入は伴わないようなTALEN分子の一過性の導入によって、創出されてもよい。
「動物」という用語は、ヒトを除いたすべての脊椎動物を含むために本明細書において用いられる。それは、胚および胎仔の段階を含めたすべての発生段階における、動物個体も含む。「生殖細胞系列トランスジェニック動物」という用語は、遺伝子変更または遺伝情報が生殖系列細胞内に導入され、それによって後代に遺伝情報を伝え得る能力が与えられた、トランスジェニック動物を指す。そのような後代がその変更または遺伝情報を実際に所有している場合、それらは同様にトランスジェニック動物である。「キメラ」、「モザイク」、「キメラ動物」などという用語は、そのゲノム含有細胞の一部において、外因性DNAおよび/またはMrap2の改変を有するトランスジェニックおよび/またはノックアウト動物を指す。
「ヘテロ接合体」、「ヘテロ接合哺乳動物」などという用語は、そのゲノム含有細胞のすべてにおいて、染色体対の一方に外因性DNAおよび/またはMrap2の改変を有するトランスジェニックおよび/またはノックアウト動物を指す。「ホモ接合体」、「ホモ接合哺乳動物」などという用語は、そのゲノム含有細胞のすべてにおいて、染色体対の両方に外因性DNAおよび/またはMrap2の改変を有するトランスジェニック哺乳動物を指す。
「相同組換え」という用語は、相同なヌクレオチド配列の部位における2つのDNA分子間または染色分体間でのDNAフラグメントの交換を指す。「遺伝子ターゲティング」という用語は、ゲノムDNAのフラグメントが哺乳動物細胞内に導入されそのフラグメントが内因性相同配列とともに位置しかつそれと組換えを生じた場合に生じる、相同組換えのタイプを指す。相同組換えによる遺伝子ターゲティングは、組換えDNA技術を採用して、特定の設計の外因性DNAおよび/または改変配列で特定のゲノム配列を置き換える。
「天然発現」という用語は、野生型細胞および/または動物に存在している発現レベルでの、遺伝子、例えばMrap2遺伝子によってコードされる全長ポリペプチドの発現を指す。ゆえに、内因性遺伝子、例えばMrap2遺伝子の「天然発現がない」破壊とは、動物の単一細胞の、選択された細胞の、または全細胞の内因性遺伝子、例えば内因性Mrap2遺伝子によってコードされるポリペプチドの少なくとも一部分の発現の部分的または完全な低下を指す。
「制御配列」という表現は、特定の宿主生物における機能的に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。原核生物に適している制御配列には、例えばプロモーター、任意でオペレーター配列、およびリボソーム結合部位が含まれる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用することが知られている。核酸は、それが別の核酸配列と機能的な関係に置かれた場合、「機能的に連結」されている。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、それがあるポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、該ポリペプチドのDNAに機能的に連結されている;プロモーターもしくはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を与える場合、コード配列に機能的に連結されている;またはリボソーム結合部位は、それが翻訳を促すように配置されている場合、コード配列に機能的に連結されている。概して、「機能的に連結された」とは、連結されているDNA配列が接していること、および分泌リーダーの場合には、接しておりかつ読み取り相(reading phase)にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは接している必要はない。連結は、好都合な制限部位でのライゲーションによって達成される。そのような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが、慣行に従って用いられる。
本明細書において使用するとき、「マーカー」という用語は、レポーター、陽性選択マーカー、および陰性選択マーカーを指す。レポーターとは、細胞におけるその発現が、検出可能なシグナル、例えば検出可能なシグナル、例えば発光を生成する任意の分子を指す。例示的なマーカーは、例えばSambrook, J., et al., (2001) Molecular Cloning: A Lbaroratory Manual, 2nd ed. (2001), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;ならびに米国特許第5,464,764号および第5,625,048号に開示されている。マーカーを選択するおよび検出するための多くの手法が、当技術分野において公知である。例えばJoyner, A. L., (2000) Gene Targeting: A Practical Approach, 2nd ed., Oxford University Press, New York, N.Y.を参照されたい。本明細書において使用するとき、「選択マーカー」および「陽性選択マーカー」という用語は、その発現が遺伝子を含有する細胞の同定を可能にする遺伝子、例えば抗生物質耐性遺伝子および検出可能な、例えば蛍光の分子を指す。本発明のある特定の態様において、産物をコードする遺伝子は、該遺伝子を保持する細胞のみが、ある特定の条件下で生存しかつ/または成長するのを可能にする。例えば、導入されたネオマイシン耐性(Neor)遺伝子を発現する植物および動物細胞は、化合物G418に耐性である。Neor遺伝子マーカーを保持しない細胞は、G418によって殺滅される。他の陽性選択マーカーは、当業者に公知であるまたは当業者の権限内にある。「陰性選択マーカー」とは、その発現が遺伝子を含有する細胞の同定を阻害する遺伝子、例えばHSV-tk遺伝子を指す。
本明細書において使用するとき、「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、隣接残基のα-アミノ基とカルボキシ基との間のペプチド結合によって互いに接続された、一連のアミノ酸残基を指定するために本明細書において互換可能に用いられる。「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、そのサイズまたは機能にかかわらず、修飾された(例えば、リン酸化された、糖化された、グリコシル化されたなど)アミノ酸およびアミノ酸類似体を含めた、アミノ酸のポリマーを指す。「タンパク質」および「ポリペプチド」は、しばしば、比較的大きなポリペプチドに対して用いられ、一方で「ペプチド」という用語は、しばしば、小さなポリペプチドに対して用いられるが、当技術分野におけるこれらの用語の使用法は重複する。「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、遺伝子産物およびそのフラグメントを指す場合、本明細書において互換可能に用いられる。ゆえに、例示的なポリペプチドまたはタンパク質には、遺伝子産物、天然に存在するタンパク質、ホモログ、オルソログ、パラログ、フラグメント、ならびに前述のものの他の同等物、変種、フラグメント、および類似体が含まれる。
本明細書において使用するとき、「核酸」または「核酸配列」という用語は、リボ核酸、デオキシリボ核酸、またはその類似体の単位を組み込んだ任意の分子、好ましくはポリマー分子を指す。核酸は、一本鎖または二本鎖のいずれかであり得る。一本鎖核酸は、変性した二本鎖DNAの一方の核酸鎖であり得る。代替的に、それは、任意の二本鎖DNAに由来しない一本鎖核酸であり得る。一局面において、核酸はDNAであり得る。別の局面において、核酸はRNAであり得る。適切な核酸分子は、ゲノムDNAまたはcDNAを含めたDNAである。他の適切な核酸分子は、mRNAを含めたRNAである。
「単離された」核酸分子とは、同定され、かつ、それが該核酸の天然源において通常結び付いている少なくとも1種の不純物核酸分子から分離されている、核酸分子である。単離された核酸分子は、天然においてそれが見出される形態や状況にあるもの以外である。したがって、単離された核酸分子は、天然細胞内に存在しているような核酸分子とは区別される。
「遺伝子」という用語は、(a)タンパク質、例えばMrap2をコードするDNA配列を含有する遺伝子;(b)タンパク質、例えばMrap2アミノ酸配列をコードする任意のDNA配列;および/または(c)タンパク質のコード配列の相補体にハイブリダイズする任意のDNA配列を指す。ある特定の態様において、該用語には、コードならびに非コード領域が含まれ、好ましくは、正常な遺伝子発現に必要なすべての配列が含まれる。
「標的遺伝子」(代替的に、「標的遺伝子配列」または「標的DNA配列」と称される)という用語は、例えば相同組換えまたはメガヌクレアーゼを介した改変法によって改変される対象である、任意の核酸分子、ポリヌクレオチド、または遺伝子を指す。標的配列には、例えば無傷遺伝子、エクソンもしくはイントロン、調節配列、または遺伝子間の任意の領域が含まれ得る。標的遺伝子は、個々のゲノムDNAにおける特定の遺伝子または遺伝子座の一部分を含み得る。
「統計的に有意な」または「有意に」という用語は、統計的有意性を指し、概して、2標準偏差(2SD)またはより大きな差を意味する。
実施例中にある場合または別様に示されている場合を除き、本明細書において用いられる成分または反応条件の分量を表現するすべての数は、すべての例において、「約」という用語によって修飾されたものとして理解されるべきである。「約」という用語は、パーセンテージと関連して用いられる場合、±1%を意味し得る。
本明細書において使用するとき、「含んでいる(comprising)」または「含む(comprise)」という用語は、組成物、方法、および該方法または組成物に必須であるそのそれぞれの構成要素に対して用いられるが、必須であるか否かにかかわらず、指定されていない要素を含むことを許容する。
「からなる」という用語は、態様についてのその説明に列挙されていないいかなる要素も含まない、本明細書において記載される組成物、方法、およびそのそれぞれの構成要素を指す。
本明細書において使用するとき、「から本質的になる」という用語は、所定の態様に要求されるそうした要素を指す。該用語は、その態様の基本的かつ新規なまたは機能的な特徴に大きく影響を与えない要素の存在を許容する。
「1つの」、「ある」、および「その」という単数形の用語は、文脈上別様に明確に示されていない限り、複数形の指示対象を含む。同様に、「または」という単語は、文脈上別様に明確に示されていない限り、「および」を含むことを意図される。本明細書において記載されるものと同様または同等の方法および材料を、本開示の実践または試験において用いることができるものの、適切な方法および材料が下記で記載されている。「例えば(e.g.)」という略語は、ラテン語の例えば(exempli gratia)に由来し、非限定的な例を示すために本明細書において用いられる。ゆえに、「例えば(e.g.)」という略語は、「例えば(for example)」という用語と同義である。
細胞生物学および分子生物学における共通用語の定義は、Blackwell Science Ltd.によって刊行されたThe Encyclopedia of Molecular Biology, 1994(ISBN 0-632-02182-9);Jones & Bartlett Publishingによって刊行されたBenjamin Lewin, Genes X, 2009(ISBN-10:0763766321);VCH Publishers, Inc.によって刊行されたKendrew et al. (eds.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, 1995(ISBN 1-56081-569-8)、およびCurrent Protocols in Protein Sciences 2009, Wiley Intersciences, Coligan et al., edsにおいて見出され得る。
別様に明記されていない限り、本発明は、例えば、すべてが参照によりその全体として本明細書に組み入れられる、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3 ed.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., USA (2001);Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier Science Publishing, Inc., New York, USA (1995);Current Protocols in Protein Science (CPPS) (John E. Coligan, et. al., ed., John Wiley and Sons, Inc.);Current Protocols in Cell Biology (CPCB) (Juan S. Bonifacino et. al. ed., John Wiley and Sons, Inc.);およびCulture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique by R. Ian Freshney, Publisher: Wiley-Liss; 5th edition (2005);Animal Cell Culture Methods (Methods in Cell Biology, Vol. 57, 編集者Jennie P. MatherおよびDavid Barnes, Academic Press, 1st edition, 1998)に記載されている標準的手法を用いて実施された。
他の用語は、本明細書において、本発明の様々な局面についての説明の中で定義される。
本出願を通して引用される、文献参照、発行済み特許、公開された特許出願、および同時係属の特許出願を含めた、すべての特許および他の刊行物は、本明細書において記載される技術と関連して用いられ得る、例えばそのような刊行物に記載される方法論を記載しかつ開示する目的のために、参照により本明細書に明示的に組み入れられる。これらの刊行物は、本出願の出願日より前のそれらの開示のためだけに提供される。この点に関する全ては、先行発明ということでまたは他の任意の理由で本発明者らがそのような開示に先行する権利を与えられないことを承認していると、解釈されるべきではない。日付に関するすべての記述、またはこれらの文書の内容に関する表示は、本出願者らにとって入手可能な情報に基づくものであり、かつこれらの文書の日付または内容の正しさに関するいかなる承認もなすものではない。
本開示の態様についての説明は、包括的であることまたは開示される正確な形態に本開示を限定することを意図されるわけではない。本開示の具体的態様および本開示に対する例が例証目的のために本明細書において記載されている一方で、関連技術分野における当業者が認識するであろうように、様々な同等の改変が本開示の範囲内であり得る。例えば、方法工程または機能は所定の順序で提示されているが、代替的な態様は異なる順序で機能を果たし得る、または機能は実質的に同時に実施され得る。本明細書において提供される本開示の教示を、必要に応じて他の手法または方法に適用することができる。本明細書において記載される様々な態様を組み合わせて、さらなる態様を提供することができる。本開示の局面を、必要な場合には、上記の参照および適用の組成物、機能、および概念を採用するように改変して、本開示のなおさらなる態様を提供することができる。さらに、生物学的な機能等価性の検討により、種類または量の点で生物学的または化学的な作用に影響を与えることなく、タンパク質構造にいくらかの変化をなすことができる。詳細な説明に照らして、これらおよび他の変化を本開示になすことができる。そのようなすべての改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることを意図される。
前述の態様のいずれかの特定の要素を組み合わせることができる、または他の態様における要素の代わりに置換することができる。さらに、本開示のある特定の態様に関連した利点が、これらの態様の文脈において記載されている一方で、他の態様もそのような利点を呈し得、かつすべての態様が、本開示の範囲内に入るために、必ずしもそのような利点を呈する必要はない。
本明細書において記載される技術は、さらなる限定的なものとして決して解釈されるべきではない以下の実施例によってさらに例証される。
本明細書において記載される技術のいくつかの態様は、以下の番号付けされたパラグラフのいずれかに従って規定され得る。
1. Mrap2遺伝子の改変を含む非ヒト哺乳動物細胞であって、検出可能なレベルの機能的Mrap2を発現しない、非ヒト哺乳動物細胞。
2. 改変がMrap2コード配列の欠失を含む、パラグラフ1の細胞。
3. 改変がMrap2遺伝子のエクソン3の欠失を含む、パラグラフ1〜2のいずれか一つの細胞。
4. 改変がMrap2の膜貫通ドメインの欠失を含む、パラグラフ1〜3のいずれか一つの細胞。
5. 改変がMrap2の細胞内ドメインの欠失を含む、パラグラフ1〜4のいずれか一つの細胞。
6. 改変が、SEQ ID NO: 1内の少なくとも1個のアミノ酸の変異を含む、パラグラフ1〜5のいずれか一つの細胞。
7. 改変に関してヘテロ接合性である、パラグラフ1〜6のいずれか一つの細胞。
8. 改変に関してホモ接合性である、パラグラフ1〜6のいずれか一つの細胞。
9. 前記非ヒト哺乳動物細胞が、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウサギ、およびヤギからなる群より選択される種のものである、パラグラフ1〜8のいずれか一つの細胞。
10. 改変がCRISPRヌクレアーゼ、TALENヌクレアーゼ、またはZFNヌクレアーゼの作用によって生じる、パラグラフ1〜9のいずれか一つの細胞。
11. 改変がリコンビナーゼの作用によって生じる、パラグラフ1〜9のいずれか一つの細胞。
12. リコンビナーゼがcreリコンビナーゼである、パラグラフ11の細胞。
13. リコンビナーゼが組織特異的プロモーターの制御下にある、パラグラフ11〜12のいずれか一つの細胞。
14. プロモーターがニューロンまたは脳組織に特異的である、パラグラフ13の細胞。
15. プロモーターがSim1プロモーターである、パラグラフ14の細胞。
16. パラグラフ1〜15のいずれか一つの細胞を含む、非ヒト哺乳動物。
17. パラグラフ1〜16のいずれか一つの細胞からなる、非ヒト哺乳動物。
18. Mrap2遺伝子の改変を含むノックアウト非ヒト哺乳動物であって、検出可能なレベルの機能的Mrap2を発現しない、ノックアウト非ヒト哺乳動物。
19. 改変がMrap2コード配列の欠失を含む、パラグラフ18の哺乳動物。
20. 改変がMrap2遺伝子のエクソン3の欠失を含む、パラグラフ18〜19のいずれか一つの哺乳動物。
21. 改変がMrap2の膜貫通ドメインの欠失を含む、パラグラフ18〜20のいずれか一つの哺乳動物。
22. 改変がMrap2の細胞内ドメインの欠失を含む、パラグラフ18〜21のいずれか一つの哺乳動物。
23. 改変が、SEQ ID NO: 1内の少なくとも1個のアミノ酸の変異を含む、パラグラフ18〜22のいずれか一つの哺乳動物。
24. 改変に関してヘテロ接合性である、パラグラフ18〜23のいずれか一つの哺乳動物。
25. 改変に関してホモ接合性である、パラグラフ18〜23のいずれか一つの哺乳動物。
26. 前記非ヒト哺乳動物が、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウサギ、およびヤギからなる群より選択される種のものである、パラグラフ18〜25のいずれか一つの哺乳動物。
27. 以下の工程を含む、屠体の使用のための哺乳動物を作製する方法:
パラグラフ16〜26のいずれか一つの哺乳動物に、種に適した飼料を与える工程;
該哺乳動物を、使用のために所望されるサイズに達した時点で屠殺する工程。
28. パラグラフ16〜26のいずれか一つの哺乳動物が、野生型哺乳動物よりも80%程度早期に屠殺される、パラグラフ28の方法。
29. パラグラフ16〜26のいずれか一つの哺乳動物が、野生型哺乳動物よりも50%程度早期に屠殺される、パラグラフ27の方法。
30. 哺乳動物に、実質的に随時餌を与える、パラグラフ27〜29のいずれか一つの方法。
31. 哺乳動物がブタである、パラグラフ27〜30のいずれか一つの方法。
32. 哺乳動物が約75〜約125日齢で屠殺される、パラグラフ31の方法。
33. 哺乳動物に、制限されたレベルの飼料を与える、パラグラフ27の方法。
34. 制限されたレベルの飼料が、野生型哺乳動物に与えるレベルの約60%〜約95%である、パラグラフ33の方法。
35. 制限されたレベルの飼料が、野生型哺乳動物に与えるレベルの約80%〜約95%である、パラグラフ33の方法。
36. 哺乳動物がブタである、パラグラフ33〜35のいずれか一つの方法。
実施例1:メラノコルチン2受容体付属タンパク質2の機能喪失は、哺乳動物肥満に関連している
メラノコルチン受容体付属タンパク質(MRAP)は、インビトロでメラノコルチン受容体のシグナル伝達を変調させる。脳で発現するメラノコルチン2受容体付属タンパク質2(MRAP2)の生理学的役割を調べるために、どちらも若齢で重度の肥満を発生させる、Mrap2の全身のおよび脳特異的な的を絞った欠失を有するマウスを特徴付けした。Mrap2は、哺乳動物肥満に先に関わるタンパク質であるメラノコルチン4受容体(Mc4r)と直接相互作用し、かつそれは、セカンドメッセンジャーであるサイクリックAMPのMc4rを介した生成を増強し、Mc4rシグナル伝達の変更が、Mrap2破壊と肥満との間の関連性の根底にある1つのメカニズムであり得ることを示唆している。重度の早期発症型肥満を有するヒトの研究において、MRAP2の4種の希少な潜在的な病因性遺伝子変種が見出され、該遺伝子が、ヒトにおける体重調節にも寄与し得ることを示唆した。
膜に発現するGタンパク質共役受容体(GPCR)は、無数の生理学的刺激に対する細胞応答を変調させる。メラノコルチン受容体(MCR)は、プロオピオメラノコルチン由来ペプチド、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、およびα-メラニン細胞刺激ホルモン(αMSH)、ならびにそれらの競合的アンタゴニストであるアグーチおよびアグーチ関連タンパク質に応答したシグナル伝達を仲介するGPCRのサブファミリーである。MCRは、広範な生理学的機能を仲介する:MC1Rは皮膚色素沈着に関与し、MC2Rは視床下部-下垂体-副腎系において重大な役割を担い、MC3RおよびMC4Rはエネルギー恒常性に関与し、かつMC5Rは外分泌機能に関わる(1)。
付属タンパク質はGPCR輸送ならびにリガンド結合およびシグナル伝達を変調させ得るという認識が、広まりつつある(2)。MC2Rに対する付属タンパク質である、MC2R付属タンパク質(MRAP)は、副腎細胞の表面へのMC2Rの輸送、およびACTHに応答したシグナル伝達に必要とされる(3、4)。ヒトにおけるMC2RまたはMRAPのいずれかの喪失は、ACTHへの重大な耐性を引き起こし、結果としてグルココルチコイド欠損症をもたらす(5、6)。
すべての哺乳動物はパラロガス遺伝子であるMRAP2を有し、これは、MC3RおよびMC4Rのように、主に脳で(7)、最も顕著には、視床下部および脳幹などのエネルギー恒常性に関与する領域を含むが橋および小脳で、発現する(図4A〜4C)。視床下部の室傍核(PVN)内において、Mrap2およびMc4rのmRNAは多くの細胞で共発現している(データ示さず)。本発明者は、Mrap2が、メラノコルチン受容体を介したシグナル伝達を変調させ得、かつエネルギー恒常性に潜在的に影響を与え得るという仮説を立てた。100bpのエクソン3(高度に保存された膜貫通ドメインをコードする(7))のCre-loxを介した切除を用いて、マウスにおけるMrap2の的を絞った欠失を実施し、Mrap2の最初の55アミノ酸と、アウトオブフレームのエクソン4に規定される異常な11アミノ酸によって置き換えられた膜貫通ドメインと、それに続く終止コドンとを含む、切断型タンパク質をコードすることが予測される正常レベルのmRNAを有する、マウスを創出した(図4D〜4G)。正常レベルの変異体mRNAは、ヌルマウスにおいてMrap2含有ニューロンが保存されていることを示すが、該ヌルマウスを創出するために用いられた正に同じMrap2変異体構築物でトランスフェクトした細胞内には変異体Mrap2の(タンパク質ではなく)mRNAが存在しているため、これらのニューロンは、予測される変異体タンパク質を発現しない可能性がある(図4H)。
Mrap2ヌルマウスは、出生時に正常であるように見え、生後早期に正常な重量増加および離乳後飼料摂取量(それぞれ、0〜32日目および23〜32日目)を有するが、若いMrap2-/-雄マウスは、加齢とともに重量および飼料摂取量がより多くなる傾向を示した(図4I)。しかしながら、両性別のヌルマウスは、通常の固形飼料の随時食餌で、次第に極度の肥満になった(図1A、5A)。ヘテロ接合性マウスは、標準固形飼料で(160〜175日目;雄、Mrap2+/+ 26.0±0.4g、Mrap2+/- 29.9±0.9g;雌、Mrap2+/+ 24.5±0.9g、Mrap2+/- 28.1±0.7g)、および高脂肪の食餌ではより若齢で(56〜95日目)、野生型動物よりも有意に重かった(図1A)。加えて、Mrap2-/-マウスは、体長の伸び(図4J)および脂肪による重量パーセントの増加、ならびに除脂肪量による重量パーセントの減少を有した(図4K)。両性別のMrap2-/-マウスは、通常の固形飼料の食餌で、正常な白色脂肪組織細胞サイズの2倍を上回る内臓脂肪症の増加、褐色脂肪組織蓄積の拡大、正常な肝組織像を有したが、高脂肪の食餌で、野生型マウスと比べてはるかに大きな脂肪肝を有した(図1B、図5A)。
成体Mrap2ヌルマウスは予想どおり、それらの脂肪量の増加に対応するレプチン濃度の上昇を有し、これは、食餌による重量正常化によって正常化された(図5B)。肥満の成体マウスは、正常な空腹時インスリン(図5C)および腹腔内グルコース注射に対する正常な寛容を有した(図5D)。Mrap2は、ACTHに対する副腎応答において役割を担うと仮定されている(8)。副腎系の日周期性およびストレス応答性をMrap2ヌルマウスにおいて測定し、それらは正常であった(図5E)。甲状腺ホルモンレベルも正常であった(表2)。エピネフリンおよびノルエピネフリンの排出は、雄のMrap2-/-マウスにおいてのみ低下したが(図5F)、Ucp1 mRNA濃度は、4℃18時間に曝露後のヌルマウスの両性別において適度に増加した(図5G)。視床下部Agrp mRNA濃度は、Mrap2ヌルマウスにおいて低下したが、一方でPomc mRNAは正常であった(図5H)。
これらのマウスにおける肥満の根底にあるメカニズムを特徴付けするために、飼料摂取量を多種多様な条件下で測定した。Mrap2-/-マウスが明らかに過重量である42日齢(図5I)および84日齢(図5J)において、4日間にわたって解析した場合、2種の遺伝子型間で飼料摂取量の差は検出されなかった。ヌルマウスにおいて、肥満はカロリーのより効率的な吸収によって引き起こされたものではなかった(図5K)。ヌル動物において累積飼料摂取量のわずかな増加が認められたのは50日間(34〜84日齢)にわたって毎日モニターした場合のみであり(図2A)、過食症より前に肥満の発症が起こっていた(図2Aおよび図5L)。Mrap2-/-マウスにおける肥満への過食症の寄与をさらに理解するために、それらの飼料摂取量を、それらの正常な同胞によって消費されるその量に制限した(ペアフィード)。同じ量の固形飼料を給餌された場合でさえ、ヌルマウスの重量は、野生型マウスよりも多く増加した(図5M〜5N)。ヌルマウスにおける飼料摂取量の量を、野生型マウスよりも10%(雌)および13%(雄)少なくさらに制限した場合にのみ、2種の遺伝子型において同等の重量増加があった(図5O)。Mrap2-/-マウスにおける遅発性過食症(図2A)が単に、独立した代謝欠陥によって引き起こされるこの高齢における体重増加の結果であり得るのかどうかを判定するために、ヌルマウスを、40日間の制限給餌の後に、固形飼料への随時アクセスに切り替えた(上向きの矢印、図5O)。随時給餌の最初の24時間の間、対応する体重の著しい増加とともに、飼料摂取量はヌルマウスにおいてほぼ倍増した(雄において2.9±0.1から5.6±0.5g/dに、および雌において2.8±0.1から5.3±0.2g/dに)。ゆえに、過食症は、体重とは無関係に、高齢マウスにおいて齢依存的様式で進行する。これと一致して、若い(38〜45日齢)Mrap2-/-マウスは、この齢におけるそれらの通常の随時飼料摂取量に対応する、メラノコルチン受容体(Mc4rおよびMc3r)アゴニストであるMTIIに対する無傷の食欲抑制応答を有した(図5P)。
肥満は、過食症発症前の随時給餌の早期に発生し、通常の食餌摂取量にペアフィードされた変異体マウスにおいて持続し、かつ減食によってのみ消失するため、若いMrap2-/-マウスが異常なエネルギー消費を呈し得るという仮説を立てた。これを探るために、それらの重量がちょうど分岐し始めるときの、若い(30〜45日齢)野生型およびMrap2ヌルのマウスにおいて、自発運動活性および深部体温だけでなく、エネルギー消費量および呼吸交換比率(RER)を間接熱量測定法によって測定した(図2A)。驚くべきことに、ANCOVA(9)によって解析されたとおり、野生型と変異体のマウスの24時間の総エネルギー消費量は見分けがつかなかった(図2B)。Mrap2+/+マウスおよびMrap2-/-マウスの間で、RER(図5Q)、自発運動活性(図5R)、または22℃での深部体温(図5S)の違いも存在せず、どちらの遺伝子型も、活動中の夜間に3つすべてのパラメーターの予想される増加を呈した。18時間にわたり4℃に曝露した後、ヌルおよび野生型のマウスは、同じ程度に有意に低体温になった(図5S)。
1)MRAPは、MC2Rを介したシグナル伝達に必須であり(3、4)、2)MRAPのパラログのMrap2は、主として脳で発現しており、かつ3)Mc2rのパラログのMc4rは、Sim1含有ニューロンでエネルギー収支における主要な役割を有する(10)ため、Mrap2の欠失が、中枢に発現しているMc4rを介したシグナル伝達を一部変更することによって肥満を引き起こすかどうかを問うた。本発明者らは、これらのニューロンに限ったMrap2の条件付き欠失、および大脳皮質または脳幹ではなく視床下部のみにおけるMrap2Del mRNAの発現を有する、Sim1Cre::Mrap2flox/floxマウスを創出した(図3A)。完全ヌルマウスのように、条件付き変異体は同程度の肥満であり(図3B)、かつ通常の食餌摂取量に対するペアフィードは、それらの肥満を部分的にのみ逆転させた(図6A)。
Mrap2がMc4rの作用を促すならば、Mrap2がMc4r機能を干渉する程度に応じて、Mc4r欠損は、Mrap2欠損が創出するのと同等のまたはより重度の肥満表現型を創出するはずである。これを支持して、両性別のMrap2+/-マウスは、Mc4r+/-および二重ヘテロ接合性のマウスのいずれよりも肥満でなかった(図6B)。Mc4r+/-および二重ヘテロ接合性のマウス間の差は統計的に有意でなかったが、後者は、より重い傾向を示した。ホモ接合性ノックアウトのうち、Mc4r欠損のみを有するものは、Mrap2欠損のみを有するものよりも肥満であった(図6B)。Mc4rノックアウトマウスは、Mc4rおよびMrap2の両方の欠失を有するマウスよりも肥満であり(雄において、雌では傾向を有する)、Mrap2は、Mc4r依存的およびMc4r非依存的な作用の両方を介して重量増加を促進し得ることが示唆された。
マウスMrap2およびMc4rが直接相互作用し得るかどうかを判定するために、一過性に発現させたN末Mycタグ付きのMrap2およびN末GFPタグ付きのMc4rを、(内因性のMrap、Mrap2、およびメラノコルチン受容体を欠いている)CHO細胞において共免疫沈降させた。以前のデータ(7)と一致して、マウスMrap2およびMc4rは相互作用することが見出された(図6C)。Mc4r(図3C)およびMc3r(図6D)シグナル伝達に対するMrap2の影響を調べた。CHO細胞におけるMc4rおよびMrap2の組み合わせ発現は、ヒトオルソログに関して以前に報告されているように(7)、Mc4r単独と比較して、基礎PKAシグナル伝達を抑制した(図3C、左のパネル)。しかし、(NDP-MSHを用いた)その報告とは対照的に、Mc4r単独、またはMc4r+Mrap2ヌル構築物のMrap2delE3(Mrap2のインビボ破壊のインビトロモデル)に関する2倍未満の増加と比較して、αMSHは、基礎PKA活性よりも5倍高い増加を引き起こすことが見出された(図3C、右のパネル)。Mrap2の存在は、2つの最も高いαMSH用量で、Mc3rを介したシグナル伝達を増加させた(図6C)。これらの知見は、Mrap2が、Mc4rおよびおそらく他の受容体を介したシグナル伝達を変更し得ることを示唆している。
MRAP2の変更がヒト肥満に関連しているかどうかを調べるために、肥満の遺伝学研究(Genetics of Obesity Study)(GOOS)コホート(11)およびスウェーデン人肥満児のコホート(12)からの肥満および対照の個体における、MRAP2のコード領域およびイントロン/エクソン境界をシーケンシングした。コホート特異的対照および1000個のゲノムには存在していない、4種の希少なヘテロ接合性変種が、非血縁の非症候性の重度肥満の個体において見出され(表1)、1つを除いてすべては該タンパク質のC末領域にある(図7)。これらの対象のうちの3人では、すべての公知の非症候性ヒト肥満遺伝子のコード領域にもイントロン/エクソン境界にも病因性変種は見出されなかった(表3)。変種のうちの1種(E24X)のみが明確に破壊性であり、全体としては、肥満コホートにおいて希少な変種はほとんど見出されず、これによりMRAP2変異は、それらが重度のヒト肥満に寄与しているとしても滅多にそうであることはないと示された。
要約すると、完全なまたは脳特異的なMrap2の不活性化はマウスにおいて肥満を引き起こすこと、および、MRAP2における希少なヘテロ接合性変種はヒトにおける早期発症型の重度の肥満に関連していることが、本明細書において実証されている。Mrap2が体重調節に対してその効果を発揮するメカニズムは、まだ確固として確立されてはいないが、Mc4rおよびおそらく他のメラノコルチン受容体を介したシグナル伝達の変更を伴う可能性がある。
参考文献および注記:
Figure 0006443811
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(表1)肥満対象および対照において検出されたMRAP2変種
Figure 0006443811
*対象の性別(男性[M]、女性[F])/年齢(年)/BMI(kg/m2)/SDS(標準偏差スコア)
**MAF(マイナー対立遺伝子頻度、NHLBIエクソーム変種サーバーhttp://evs.gs.washington.edu/EVS/)
***Polyphen(http://genetics.bwh.harvard.edu/pph2/)
実施例2:材料および方法
動物
別様に注記されていない限り、0700に点灯される12時間:12時間の明:暗サイクルで、22℃でマウスを収容した。マウスに、標準的齧歯類固形飼料(Isopro RMH 3000、PMI Nutrition International, St. Louis, MO)または高脂肪固形飼料(D12451、Research Diets, New Brunswick, NJ)のいずれかを給餌した。随時の飼料摂取量は、個々に収容されたマウスでは、翌日ケージ床にこぼれている飼料を計算しつつ、吊るされた飼料用ビン内の飼料間での重量の差として、最高55日間毎日、または群で収容されたマウス(同じ性別の4匹/ケージ)では4日間にわたってのいずれかで、測定した。個々に収容されたマウスのペアフィードに関しては、野生型マウスによって毎日消費される飼料の平均量を、翌日同じ性別の実験用遺伝子型に与えた。飼料摂取量を測定するのと同時に体重を測定した。制限給餌に関しては、野生型マウスによって毎日消費される飼料の平均量より10〜15%少ない量を、翌日同じ性別の実験用遺伝子型に与えて、2群間で同じ体重を維持した。飼料摂取量に対するメラノタンII(MTII:アセチル-(Nle4, Asp5, D-Phe7, Lys10)-シクロ-□-MSH(4-10)酢酸アミド塩、Bachem Americas, Torrance, CA)の効果を、記載されているように(13)、個々に収容されたマウスにおいて行った。1800に、飼料をマウスから取り去った。1830に、生理食塩水またはMTII(2μg/g体重)を腹腔内注射によって投与した。1900に、事前に計量した飼料を提供し、かつ2030に再計量した。(エネルギー測定のための)糞便を、個々に収容されたマウスのケージ床から24時間の期間にわたって回収し、かつ糞便重量が安定するまで22℃で16〜24時間凍結乾燥させた。糞便および固形飼料のエネルギーを、2つの別個の群の動物および研究室(アーカンソー大学およびノースカロライナ州立大学)において、Parr断熱熱量計(14)を用いて測定し、同一の結果を有した。代謝ケージ内で個々に収容されたマウスから、(カテコールアミン測定のための)尿を、ドライアイス中で24時間の期間にわたって冷却されたチューブ内に回収した。1900から0700に、グルコース(2g/kg体重)の腹腔内注射に対する応答を、臨床用血糖測定器(glucometer)を用いて尾部静脈血を測定することによって、12時間の断食後の朝に実施した。4℃に曝露後の意識のあるマウスにおいて1分間肛門を越えて1cm挿入される携帯型直腸プローブ(シリーズ500プローブを有するYSIモデル43遠隔温度計、Yellow Springs Instrument Co., Yellow Springs, OH)、または22℃に曝露中の体温日周期リズムを測定する、皮下に埋め込まれたマイクロチップ応答装置(DAS-5002、BioMedic Data Systems, Seaford, DE)のいずれかを用いて、深部体温を測定した。総エネルギー消費量および呼吸交換比率を、Oxymaxの包括的実験動物モニタリングシステム(CLAMS、Columbus Instruments, Columbus, OH)を用いた間接熱量測定法によって、随時のまたは飼料制限されたマウスのいずれかにおいて測定した。24時間の順応期間の次に、熱量測定ケージにおける48時間の測定(17分間に1回のサンプル採取)を行い、光フォトセル回路の遮断の割合によって、自発運動活性も測定した(1分間に1回のサンプル採取)。除脂肪量および脂肪量を、二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA、Lunar PIXImus Densitometer, Fitchburg, WI)によって測定した。静脈切開術を、麻酔なしの後眼窩の静脈穿刺によって実施し、マウスケージに触れることから静脈切開術までの間隔は60秒未満であった。血中コルチコステロンの日周期性およびストレス応答性を、高脂肪の食餌を給餌されたマウスにおいて、1900、0800における逐次的静脈切開術によって、および0830における30分間の拘束ストレス後に実施した。すべてのマウスプロトコールは、ボストン小児病院(Boston Children's Hospital)の動物実験委員会によって承認された。
Mrap2-/-およびMrap2flox/floxマウスの創出
一般的なターゲティングベクターおよび組換え工学(recombineering)を用いて(15、16)、Mrap2-/-およびMrap2flox/floxマウスの両方を作製した。必要とされる全プラスミド(PL253、PL452、およびPL451)、および組換え誘導性(recombinogenic)細菌系統(EL350)を、David Conner(ハーバード大学医学大学院遺伝学部門)から入手した。DH10B内にMrap2(アクセッション番号XM_147017、NM_001101482によって置き換えられている)を含有する129Sv BACクローン(bMQ-392015)をサンガー研究所(Sanger Institute)(http://www.sanger.ac.uk/)から入手した。Mrap2ゲノム領域を読み出すPL253に対するミニアーム、上流へのLoxP挿入のためのPL452に対するミニアーム、および下流へのFRT-Neo-FRT-LoxP挿入のためのPL451に対するミニアームを創出するように、プライマーを設計した。最終的なターゲティングベクターをNotIで線状化し、129Sv ES細胞内にエレクトロポレーションし、かつG418(Invitrogen, Carlsbad, CA)で選択した。G418耐性ES細胞株を単離し、かつLA Tag(商標)(TAKARA, Otsu, Japan)、それに加えて5'および3'末端の両方における、外側のMrap2ゲノムプライマーおよび内側のベクタープライマーを用いたロングレンジPCRによって解析して、適正なMrap2ゲノム遺伝子座内への構築物の正しい5'および3'組み込みをDNA配列解析によって確認した。Mrap2+/- ES細胞を作製するために、クローンにCMV-CreをコードするpOG231をトランスフェクトした。Mrap2+/flox ES細胞を作製するために、クローンにpCAGGS-Flpeをトランスフェクトした。検証されたES細胞を核型分析し、かつC57BL/6偽妊娠雌マウスに外科的に移植した。雄のキメラ動物を入手し、かつ129S6/SvEvTac雌マウス(Taconic, Hudson, NY)と交配した。F1ヘテロ接合性雄マウスをF1ヘテロ接合性雌マウスと交配して、純粋な129バックグラウンドのF2コロニーを作製した。次いで、これらのマウスを繁殖させて、後続の研究のための、野生型(Mrap2+/+)、ヘテロ接合性(Mrap2+/-)、およびヌル(Mrap2-/-)マウスを1:2:1の予想される頻度で作製した。また、Mrap2ヌル対立遺伝子を、C57BL/6J(Jackson Laboratories, Bar Harbor, ME)バックグラウンドに対して10世代戻し交配した。Mrap2ヌルマウスは、正常な生殖能を有する。
Sim1CreBAC::Mrap2f/fマウスの創出
Mrap2flox/floxマウスをSim1CreBACマウス(006451、Jackson Laboratories, Bar Harbor, ME)と交配させて、Sim1CreBAC::Mrap2f/fマウスを作製した。これらのマウスを、Creを介した組換えによってtdTomato発現が誘導されて脳におけるSim1-Cre発現をマッピングする、R26flox-終止-tdTomatoレポーターマウス(007576、Jackson Laboratories, Bar Harbor, ME)に対して繁殖させた。ゲノムDNAについてのMrap2特異的PCR、ならびに頭頂皮質、視床下部、および脳幹におけるRNAについてのRT-PCRによって、脳におけるMrap2エクソン3の部位特異的欠失も査定した(表2)。Mrap2flox/floxおよびSim1CreBAC::Mrap2f/f同胞の体重および飼料摂取量を、35〜89日齢に毎日測定した。70日齢までマウスに随時給餌し、そこで、Sim1CreBAC::Mrap2f/fマウスの半分を、随時給餌されたMrap2flox/floxマウスの飼料摂取量にペアフィードされるように切り替えた。
Mrap2およびMc4r欠損の組み合わせを有するマウスの創出
Mc4rヌルマウス(006414、混合型C57BL/6-129バックグラウンド、Jackson Laboratories, Bar Harbor, ME)とMrap2ヌルマウスとを交配させて、両遺伝子のノックアウトのヘテロ接合性およびホモ接合性の組み合わせを有するマウスを創出した。上記で記載されるように、同腹の同胞において、体重を28〜84日齢まで毎日測定した。
組織学
組織を採取し、かつ4%パラホルムアルデヒド中に漬けた。パラフィン包埋した組織の切片(5〜7μm)を切り取り、かつヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。Nikon Eclipse 800(商標)顕微鏡を用いて、画像を撮影した。所定の組織の全画像を、その後操作することなく、同じ倍率および露光条件で記録した。
RT-PCR
TRIZOL(商標)試薬(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、およそ50mgの組織/細胞からトータルRNAを単離した。RNAサンプルをDNase(6.8 Kunitz unit/サンプル)(Qiagen, Valencia, CA)で処理してゲノムDNA混入を取り除き、かつメーカーのプロトコールに従ってRNeasy(商標)Mini kit(Qiagen)を用いて精製した。精製されたRNAサンプルを、iScript(商標)cDNA Synthesis kit(Biorad, Hercules, CA)を用いた逆転写に供した。従来的RT-PCRに関して、50ngのRNAと同等量のcDNAを、94℃2分間、(94℃10秒間、60℃30秒間)×35サイクル、72℃7分間というプログラムに従って、遺伝子特異的プライマーセットを用いて35サイクルでPCR増幅した。PCR産物を、エチジウムブロマイドで染色された2.0%アガロースゲルで電気泳動した。同じ遺伝子特異的プライマーセットを用い、かつiQ SYBR green Supermix(Biorad)を用いて、95℃3分間、(95℃10秒間、60℃40秒間)×45サイクルというプログラムおよびΔΔCT法(17)に従って、リアルタイムqPCRを行った。遺伝子特異的プライマーセットは、表4に挙げられている。
二重標識35S/ジゴキシゲニン(DIG)インサイチューハイブリダイゼーション
組織切片(10μm)をSuperFrost(商標)スライド(Fisher Scientific, Pittsburgh, PA)上に融解-マウントさせ、かつ-20℃で保存した。ハイブリダイゼーション前に、切片を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中4%パラホルムアルデヒド中で氷上15分間固定した。インサイチューハイブリダイゼーション(18)のための521bpのMc4r鋳型プラスミド、およびcRNAを35S-UTP(Perkin Elmer, Waltham, MA)で標識した。Mrap2プローブ鋳型に関して、443bpのMrap2 cDNA PCRフラグメント(表S1)をPCRII TOPO(商標)(Invitrogen, Carlsbad, CA)内にクローニングし、かつcRNAアンチセンスプローブを、メーカーのプロトコールに従ってDIG RNA Labeling Mix(商標)(Roche)およびT7 RNAポリメラーゼ(Roche)を用いて、ジゴキシゲニン(DIG)で標識した。cRNAプローブを90℃で3分間変性させた後に、50%脱イオン化ホルムアミド、10%硫酸デキストラン、0.5M NaCl、1×デンハルト液、10mM Tris(pH8)、1mM EDTA(pH8)、500μg/ml酵母tRNA、10mM DTTを含有するハイブリダイゼーション溶液に添加した。切片を、2×SSC(0.3M塩化ナトリウム、0.03Mクエン酸ナトリウム)で2分間、0.1Mトリエタノールアミン(TEA)で2分間、0.1M TEA中0.25%無水酢酸で10分間、および2×SSCで2分間、順々に、すべて室温(RT)で前処理した。切片を漸増濃度のエタノールで脱水し、かつクロロホルム中で5分間の脱脂に供した。切片を95%エタノール中で2分間リンスし、かつ空気乾燥させた。およそ150μlのハイブリダイゼーション溶液を切片上に広げ、かつ65℃で一晩インキュベートした。ハイブリダイゼーション後、切片を、22℃で15分間2×SSC/1mMジチオスレイトール(DTT)中に2回浸し、続いて37℃で30分間RNase消化溶液(20μg/ml RNAase A(Roche)、0.5M NaCl、10mM Tris (pH8)、および1mM EDTA)中に浸した。切片を、10分間22℃の2×SSC/1mM DTTで、10分間 RTの0.5×SSC/1mM DTTで3回、30分間65℃の0.5×SSC/1mM DTTで、そして2分間22℃の2×SSCで、洗浄した。切片を、ブロッキング溶液(2×SSC、2%正常ヒツジ血清、0.05% Triton X-100)中にて22℃で2時間インキュベートし、GB1バッファー(100mM Tris-HCl、pH7.5、150mM NaCl)中で5分間2回リンスし、かつ抗DIG-アルカリホスファターゼ抗体溶液(100mM Tris-HCl、pH7.5、150mM NaCl、1%正常ヒツジ血清、0.3% Triton X-100、抗DIG-アルカリホスファターゼ、Roche, Indianapolis, IN)中で一晩インキュベートした。切片を、GB1で10分間、GB3(100mM Tris-HCl、pH9.5、100mM NaCl、50mM MgCl2-6H2O)で10分間洗浄し、かつ250mlのGB3中レバミゾール溶液(250mg塩酸レバミゾール(Sigma, St. Louis, MO))中で5分間インキュベートした。7.5mlのGB3、2.5mlのレバミゾール溶液、33.8mlの100mg/mlニトロブルーテトラゾリウム(NBT)クロライド溶液(Roche)、および35mlの50mg/ml 5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-ホスフェート(BCIP)溶液(Roche)を混合することによって、色素原(chromagen)溶液を調製した。切片を、アルミホイルで包んだガラス製コプリンジャー中の色素原溶液中に48時間浸した。10mM Tris-HCl、pH8.0、1mM EDTA、pH8.0で2回、および1×PBS中4% PFA、および蒸留水でリンスすることによって、呈色反応を止めた。切片を完全に空気乾燥させ、酢酸アミル中2% Parlodion(SPI Supplies, West Chester, PA)でコーティングし、かつ空気乾燥させた。切片を、蒸留水で1:1に希釈した事前に温めた銀乳剤NTB2(Kodak, Rochester, NY)中に42℃で浸漬した。浸漬しかつ空気乾燥させた切片を、アルミホイルで包んだスライド用ボックス内に置き、かつ4℃で1ヶ月間保存した。現像液D-19(Kodak, Rochester, NY)中にスライドを4分間浸し、蒸留水で10秒間リンスし、かつProfessional Fixer(Kodak)で5分間固定することによって、切片を現像した。切片を蒸留水でリンスし、乾燥させ、かつカバースリップで覆った。
ホルモン測定
レプチンおよびインスリンを、メーカーのプロトコールを用いて、ELISA(Crystal Chem, Downers Grove, IL)によって測定した。コルチコステロンを、放射免疫アッセイ(MP Biomedicals, Santa Ana, CA)によって測定した。尿およびノルエピネフリンを、C-18逆相カラム、それに続く電気化学的検出を用いたHPLCによって測定した。
共免疫沈降およびウェスタンブロッティング
CHO細胞(ATCC, Manassas, VA)を、10%ウシ胎仔血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したF12培地中で成長させた。プラスミド(Mrap2-pCDNA-Myc-HisおよびMc4r-pEGFP-N1)を、FuGENE 6(商標)(Promega, Madison, WI)を用いた一過性トランスフェクションによってCHO細胞内に導入した。トランスフェクションの24時間後に、細胞をリン酸緩衝生理食塩水中で洗浄し、かつそれらをRIPAバッファー(40mM Hepes pH7.4、2mM EDTA、10mMピロリン酸ナトリウム、10mMグリセロリン酸ナトリウム、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.3% CHAPS、0.1% SDS、それとともにプロテアーゼ阻害剤)中で超音波処理することによって溶解物を調製した。免疫沈降のために、溶解物を抗GFP(290、Abcam, Cambridge, MA)または抗Myc(9106、Abcam, Cambridge, MA)抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。プロテインA Sepharoseビーズ(CL-4B17-0963-03、GE Healthcare Biosciences, Pittsburgh, PA)を添加し、かつ4℃で2時間インキュベートした。ビーズを高塩(150mM NaCl)溶解バッファーで洗浄し、上清を取り去り、かつビーズをSDSローディングバッファー(Laemmle)中に再懸濁した。Mycエピトープを検出するために、サンプルを100℃で5分間加熱した。Mc4r-GFPを検出するためには、サンプルを加熱しなかった。タンパク質をSDS-PAGEによって分解した。ウェスタンブロッティングを、抗GFPまたは抗Myc一次抗体、およびHRP連結型プロテインA二次抗体(NA9120、GE Healthcare Biosciences, Pittsburgh, PA)を用いて実施した。
Mrap2効果に対するMc4rバイオアッセイ
マウスMrap2およびMc4rのコード配列を、脳cDNA(Mrap2)またはゲノムDNA(Mc4r)のPCRによって単離し(表S4)、TOPO-pCRII(商標)(Invitrogen, Carlsbad, CA)内にサブクローニングし、配列を確かめ、かつpRC/CMV(Invitrogen, Carlsbad, CA)内にライゲーションした。Mrap2-/-マウスの産物と同一であるMrap2delE3も創出し、かつpRC/CMV内にライゲーションした。6:1比のMrap2:Mc4r DNA(3μg Mrap2:0.5μg Mc4r)を、20μLのFugene HD(商標)(Promega)を用いて、1μgのpCRE-Luc(Clontech, Mountain View, CA)および0.5μgのpRL-TK(ウミシイタケルシフェラーゼ、Promega, Madison, WI)とともに、60mmディッシュにおける50万個のCHO細胞(ATCC, Manassas, VA)にトランスフェクトした。翌日、トランスフェクトされた細胞(12万個の細胞/ウェル)を12ウェルプレートに播種した。24時間後、血清飢餓の7時間後に、細胞を0〜10nMのα-メラニン細胞刺激ホルモン(αMSH、M4135-1MG、Sigma, St. Louis, MO)で5時間処理し、続いてルシフェラーゼアッセイを行った。
HEK293細胞におけるマウスMrap2の発現
HEK293細胞(ECACC、DS Pharma Biomedical, Osaka, Japan)に、何もなし、空ベクター、Mrap2、またはMrap2delE3発現構築物(表4)をトランスフェクトし、続いて、Mrap2 mRNAおよび18S rRNAのRT-PCR(図1Aにおいて用いられた同じMrap2特異的RTPCRプライマーを用いた)、または、アミノ末端(アミノ酸
Figure 0006443811
)に向けられた抗マウスMrap23〜12マウスモノクローナル抗体(Mrap2 mAb-NH2)もしくはカルボキシル末端(アミノ酸
Figure 0006443811
)に向けられた抗ラットMrap2189〜204ウサギポリクローナル抗体(Mrap2 rAb-COOH)のいずれかを用いた(7)、Mrap2タンパク質のウェスタンブロッティングを行った。次いで、ウェスタンブロットを剥離し、かつ1:5,000希釈の抗βアクチン抗体(Sigma、A1978)を用いて再検出した。
ヒト研究
肥満の遺伝学研究(GOOS)(11)プロトコールは、アングリアおよびオックスフォードの多領域倫理委員会によって承認された。各対象または親(<16歳の子ども)は、書面によるインフォームドコンセントを提供した(未成年者自身から口頭での同意を得た)。臨床研究は、ヘルシンキ宣言の原則に従って行われた。スウェーデン人肥満児コホートは以前に記載されており(12)、カロリンスカ大学病院およびカロリンスカ研究所のNational Childhood Obesity Centreに紹介された376人の肥満の子どもおよび若者(年齢6〜21歳、BMI>30kg/m2、または+3 SDS)、ならびに民族性および社会経済的地位に関して肥満群と一致する、ストックホルム周辺の17箇所の中等学校から募集され、かつ彼らの保健室の先生(school nurse)によって参加することを要請された376人の肥満でない若者(年齢15〜20歳、BMI 20〜25kg/m2)の群からなる。研究はストックホルムの地域倫理委員会によって承認され、かつすべての対象からインフォームドコンセントを得た。MRAP2、および重度の肥満に関連した他の9種の遺伝子(LEP、LEPR、POMC、MC4R、PC1/3、BDNF、TRKB、SIM1、およびSH2B1)に対するDNA配列解析を、ジデオキシヌクレオチド(サンガー)方法論を用いて実施した。
統計解析
2つまたはそれを上回る数のサンプルの比較に適当であるように、それぞれスチューデントt検定によって、またはANOVAに引き続くボンフェローニのポストホック検定によって、データを解析した(Statview 5.0, SAS Institute Inc.)。エネルギー消費量に関しては、それぞれの性別のMrap2+/+およびMrap2-/-マウスにおける総エネルギー消費量に対する体重の効果を、共分散の解析を用いて比較した(SAS, SAS Institute Inc.)(9)。すべてのデータは平均±SEMとして示されており、p<0.05は統計的に有意と見なされる。
(表2)Mrap+/+およびMrap2-/-マウスにおける甲状腺ホルモン濃度
Figure 0006443811
(表3)希少なMRAP2変種を有する肥満対象における他の肥満関連遺伝子の変種
Figure 0006443811
(表4)本研究において用いられたオリゴヌクレオチドプライマー
Figure 0006443811
Figure 0006443811
Figure 0006443811

Claims (34)

  1. 改変を有するMrap2遺伝子含む非ヒト哺乳動物の幹細胞または生殖系列細胞であって、検出可能なレベルの機能的Mrap2を発現しない、非ヒト哺乳動物の幹細胞または生殖系列細胞
  2. 改変がMrap2コード配列の欠失を含む、請求項1記載の細胞。
  3. 改変がMrap2遺伝子のエクソン3の欠失を含む、請求項1〜2のいずれか一項記載の細胞。
  4. 改変がMrap2の膜貫通ドメインの欠失を含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の細胞。
  5. 改変がMrap2の細胞内ドメインの欠失を含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の細胞。
  6. 改変に関してヘテロ接合性である、請求項1〜5のいずれか一項記載の細胞。
  7. 改変に関してホモ接合性である、請求項1〜5のいずれか一項記載の細胞。
  8. 前記非ヒト哺乳動物細胞が、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウサギ、およびヤギからなる群より選択される種のものである、請求項1記載の細胞。
  9. 改変がCRISPRヌクレアーゼ、TALENヌクレアーゼ、またはZFNヌクレアーゼの作用によって生じる、請求項1〜8のいずれか一項記載の細胞。
  10. 改変がリコンビナーゼの作用によって生じる、請求項1〜8のいずれか一項記載の細胞。
  11. リコンビナーゼがcreリコンビナーゼである、請求項10記載の細胞。
  12. リコンビナーゼが組織特異的プロモーターの制御下にある、請求項1011のいずれか一項記載の細胞。
  13. プロモーターがニューロンまたは脳組織に特異的である、請求項12記載の細胞。
  14. プロモーターがSim1プロモーターである、請求項13記載の細胞。
  15. 請求項1〜14のいずれか一項記載の細胞を含む、非ヒト哺乳動物。
  16. 請求項1〜14のいずれか一項記載の細胞からなる、非ヒト哺乳動物。
  17. 改変を有するMrap2遺伝子含むノックアウト非ヒト哺乳動物であって、検出可能なレベルの機能的Mrap2を発現しない、ノックアウト非ヒト哺乳動物。
  18. 改変がMrap2コード配列の欠失を含む、請求項17記載の哺乳動物。
  19. 改変がMrap2遺伝子のエクソン3の欠失を含む、請求項1718のいずれか一項記載の哺乳動物。
  20. 改変がMrap2の膜貫通ドメインの欠失を含む、請求項1719のいずれか一項記載の哺乳動物。
  21. 改変がMrap2の細胞内ドメインの欠失を含む、請求項1720のいずれか一項記載の哺乳動物。
  22. 改変に関してヘテロ接合性である、請求項1721のいずれか一項記載の哺乳動物。
  23. 改変に関してホモ接合性である、請求項1721のいずれか一項記載の哺乳動物。
  24. 前記非ヒト哺乳動物が、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウサギ、およびヤギからなる群より選択される種のものである、請求項17〜23のいずれか一項記載の哺乳動物。
  25. 以下の工程を含む、屠体の使用のための哺乳動物を作製する方法:
    請求項1524のいずれか一項記載の哺乳動物に、種に適した飼料を与える工程;
    哺乳動物を、使用のために所望されるサイズに達した時点で屠殺する工程。
  26. 請求項1524のいずれか一項記載の哺乳動物が、野生型哺乳動物よりも少なくとも80%早期に屠殺される、請求項25記載の方法。
  27. 請求項1524のいずれか一項記載の哺乳動物が、野生型哺乳動物よりも少なくとも50%早期に屠殺される、請求項25記載の方法。
  28. 哺乳動物に、随時餌を与える、請求項2527のいずれか一項記載の方法。
  29. 哺乳動物がブタである、請求項25〜28のいずれか一項記載の方法。
  30. 哺乳動物が75125日齢で屠殺される、請求項29記載の方法。
  31. 哺乳動物に、制限されたレベルの飼料を与える、請求項25記載の方法。
  32. 制限されたレベルの飼料が、野生型哺乳動物に与えるレベルの60%95%である、請求項31記載の方法。
  33. 制限されたレベルの飼料が、野生型哺乳動物に与えるレベルの80%95%である、請求項31記載の方法。
  34. 哺乳動物がブタである、請求項31〜33のいずれか一項記載の方法。
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