JP6443314B2 - シートの帯電密着装置、シートの真空成膜装置および薄膜付きシートの製造方法 - Google Patents

シートの帯電密着装置、シートの真空成膜装置および薄膜付きシートの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、シートの帯電密着装置、シートの真空成膜装置および薄膜付きシートの製造方法に関する。
従来から、プラスチックフィルムに例示される電気絶縁性シート上に薄膜を形成することにより、フィルムコンデンサや磁気記録テープ、包装用フィルム等の素材となる金属蒸着フィルムが製造されている。この製造には、例えば真空槽内で巻状物のプラスチックフィルムを巻き出し、薄膜形成した後に再び巻き取る巻取式蒸着装置が用いられる。
その概要について図7を用いて説明する。図7は従来の巻取式真空蒸着装置の概略断面図であって、プラスチックフィルムなどのシート上に連続的に薄膜を形成する真空成膜装置の主要構成要素を示している。図7に示すように、長尺の電気絶縁性シート1は、原反ロール体2から繰り出され、シートの走行方向に沿って回転する円筒状シート案内面3に中間ローラ4、5によって所要の巻き付け角で巻き付いた状態で搬送され、巻取ロール体6として巻き取られる。電気絶縁性シート1がシート案内面3上に搬送される際に、蒸発源7の中にある蒸着材料8より蒸発した蒸気9がシート1上に付着し、薄膜10が形成される。なお蒸発には、例えば誘導加熱や抵抗加熱の原理を利用して蒸着材料を加熱する方式や、電子ビームを蒸着材料に照射して蒸着材料を加熱する方式がある。またシート案内面3は主にシート1をシワなく搬送する役目と、シート1が受けた熱負荷を効率よく逃がす役目を持つ。このためシート案内面3は、例えば公知の熱媒体の循環による温度制御により、所要の温度に制御される。
ところが、シート案内面3上のシート1が受ける熱負荷によりシート1の温度が過度に上昇した部位が大きい場合や、シート1とシート案内面3が接触していない部分がある場合には、シート1が熱変形(熱負け)を起こしてしまうことがある。特にシート案内面3上でシート1にしわが発生した場合、そのシワ発生部分がシート案内面3と接触しなくなり、そのシワの形状の熱変形(熱負け)を起こす場合がある。なおシート1が受ける主な熱負荷とは、この場合蒸発源7等から受ける輻射熱や、蒸着された薄膜10から受ける凝縮熱が挙げられる。
上記のような熱変形を起こさないようにするために、蒸着時にシート1の受けた熱を効率よくシート案内面3に逃がすべく、直流電源14によってアース電位とシート案内面3との間に10V以上1000V以下の電位差を与えて、プラズマ発生手段16から供給される荷電粒子のうちいずれかの極性の荷電粒子をシート1の薄膜形成面に誘導することにより、シート1の薄膜形成面とシート案内面3との間に働く静電気力でシート1をシート案内面3に強く貼り付かせる技術が用いられる。(特許文献1)。
また、図8に示すように、荷電粒子の供給源として電子線を照射する電子銃を用いて、フィルムを帯電させる技術が用いられる。(特許文献2)。図8は従来の別態様の巻取式真空蒸着装置の概略断面図である。
特許第5056114号公報 特開2000−17440号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている巻取式蒸着装置では、プラズマ発生手段16の荷電粒子放出口25からは、シート1の薄膜形成面を帯電させるのに必要十分な荷電粒子だけでなく、シート1の帯電に寄与しない余剰荷電粒子が大量に減圧室13内に放出されることが判った。減圧室13内に放出されて浮遊している余剰荷電粒子は、直流電源14により与えられているアース電位とシート案内面3の間の電位差により加速されながら他の原子や分子に衝突して電離を繰り返し、空間の電子密度が急増して、いわゆる電子なだれにより火花放電を引き起こす。火花放電により発生した突発的な過電流はシート案内面3の金属部を経由して直流電源14に流入し、アース電位とシート案内面3の間に与えている電位差を維持出来なくなるだけでなく、直流電源14の故障を引き起こすこともある。
また、シート案内面3の周囲に大量の余剰荷電粒子が浮遊していると、シート案内面3と周囲の接地電位の部材間における空間インピーダンスが低下している状態となり、シート案内面3に印加している電位差によって、定常的にグロー放電が発生することがある。グロー放電が発生すると、そのグロー放電で発生した正負の荷電粒子が周囲に拡散し、帯電処理した直後のシート1を除電し、シート1のシート案内面3に対する密着効果が不充分となる場合や、グロー放電で発生した電荷がシート案内面3に流れ込むことにより、アース電位とシート案内面3との電位差が高く維持できない場合がある。
また、突発的な火花放電や定常的なグロー放電発生まで至らない場合においても、大量の余剰荷電粒子が、電気絶縁性シート1によって覆われていないシート案内面3の金属露出部から、常に直流電源14に流入してくるために、アース電位とシート案内面3の間の電位差を維持するためには、定格電流の大きな直流電源14を用いる必要があり、経済的な面から好ましくない。よって、減圧室13内に大量の余剰荷電粒子が浮遊している状態ではシート案内面3に電位差を安定的に印加することができず、シート1の薄膜形成面とシート案内面3との間に働く静電気力でシート1をシート案内面3に強く貼り付かせて、シート1の熱変形を抑制することが出来ない。
特許文献1の巻取式蒸着装置は、プラズマ放電領域27を減圧室13内に極力放出しないようにするために、荷電粒子放出口25をシート1に近づけることによりシート1の帯電に寄与しない余剰荷電粒子を、減圧室13内に放出しない役目を果たすと考えられるが、不用意にシート1にプラズマを近づけると、放出口25から漏出したプラズマによりシート1の表面が改質されたり、イオンアタックによるダメージを受けたりすることがある。
また、シート1と放出口25との間隙を離すと、シート1の帯電に寄与しない余剰荷電粒子が多く放出されることとなり、前述したとおり異常放電や電位差不足の要因となる。特許文献1に、余剰荷電粒子を吸収するためと考えられるスリットやピンホールを設ける技術が開示されているが、スリットやピンホールを設けた部材が電気的に接地されている場合はプラズマによって生じた荷電粒子が吸収されてしまい放出口25から必要量の荷電粒子が放出されない可能性があり、逆に接地されていない場合は荷電粒子を多く放出しすぎてしまう可能性がある。これを制御するにはスリットやピンホールの大きさを機械的に変更する必要があり、最適化調整が困難であるだけでなく、生産条件等によって部材をいくつも準備しておく必要がある。
また、プラズマ発生手段16においてプラズマを生成するためのプラズマ用電源17の出力を低くして、生成する荷電粒子の総量を減らすことにより、シート1の帯電に寄与しない余剰荷電粒子の量を減らす手段もあるが、プラズマ放電を維持できる最低の放電出力程度でもシート1を帯電させるには十分すぎるほどの荷電粒子が生成されているため、そのうちの吸収量と放出量のバランスを最適化するには極めて精密な出力制御が必要であり、現実的ではない。
また、特許文献2に開示されている荷電粒子の供給源である電子ビーム照射装置やイオンビーム照射装置は、一般的に数kVから数十kVの加速電圧を印加して電子またはイオンの荷電粒子をシート薄膜形成面に向けて照射するため、シートの表面状態が改質されてしまい、シート上に形成する薄膜の密着力低下を引き起こすことがある。
以上説明したように従来技術では、減圧室内に放出される余剰荷電粒子によって、シート案内面に電位差を与えて、安定的にシートをシート案内面に強く貼り付かせることが困難である。また、数kVの高い加速電圧でシートに荷電粒子を照射することにより、シートの表面状態を変化させてしまう問題がある。
そこで本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑み、シートの帯電に必要な荷電粒子を適正量だけ放出し、帯電に寄与しない余剰荷電粒子が減圧室内に放出しないようにして、シートの表面状態を変化させずに、シート案内面に安定的に高い電位差を与えて、シートをシート案内面に強く貼り付かせるシートの帯電密着装置と、このシートの帯電密着装置を用いて薄膜を形成するシートの真空成膜装置および薄膜付きシートの製造方法を提供する。
上記課題を解決する本発明の第1のシートの帯電密着装置は、減圧室と、この減圧室内の空気を排気する排気手段と、前記減圧室内に設置され、シートと接触しながらシートを搬送するシート案内面を有し、このシート案内面の移動に伴ってシートを搬送するシート搬送手段と、前記シート案内面上のシートを帯電させる帯電手段と、を備え、
前記帯電手段が、プラズマ発生手段と、アース電位と前記シート案内面電位との間に10V以上1000V以下の電位差を付与できる電位差付与手段と、で構成され、
前記プラズマ発生手段が、電流調整手段を介して電気的に接地された筐体と、この筐体の内部に設置されプラズマを発生させるプラズマ電極と、前記筐体の前記シート案内面と対向する位置に設けられプラズマで発生した荷電粒子を前記筐体の外部に放出するための放出口と、で構成されている。
上記課題を解決する本発明の第2のシートの帯電密着装置は、減圧室と、この減圧室内の空気を排気する排気手段と、前記減圧室内に設置され、シートと接触しながらシートを搬送するシート案内面を有し、このシート案内面の移動に伴ってシートを搬送するシート搬送手段と、前記シート案内面上のシートを帯電させる帯電手段と、を備え、
前記帯電手段が、プラズマ発生手段と、アース電位と前記シート案内面電位との間に10V以上1000V以下の電位差を付与できる電位差付与手段と、で構成され、
前記プラズマ発生手段が、電気的に接地された筐体と、この筐体の内部に設置されプラズマを発生させるプラズマ電極と、前記筐体の前記シート案内面と対向する位置に設けられプラズマで発生した荷電粒子を前記筐体の外部に放出するための放出口と、この放出口に設けられ電流調整手段を介して電気的に接地された開口を有する板状金属部材と、で構成されている。
本発明のシートの真空成膜装置は、本発明のシートの帯電密着装置を用い、前記プラズマ発生手段よりもシート搬送方向下流側に、前記シート案内面上のシート上に薄膜を形成するためにシートに向かって微粒子を飛散させる微粒子発生源が配置されている。
本発明の薄膜付きシートの製造方法は、本発明のシートの真空成膜装置を用い、減圧雰囲気下において、シート案内面に接触しながら搬送方向に搬送されている電気絶縁性シート上に、微粒子発生源から飛来させた微粒子を堆積させ、薄膜を形成する薄膜付きシートの製造方法であって、シート案内面上のシート薄膜形成面に、プラズマ発生手段から供給される荷電粒子のうちいずれかの極性の荷電粒子を、アース電位と前記シート案内面電位との電位差が10V以上1000V以下となるよう電位差を付与し誘導することにより、前記シート薄膜形成面を帯電させた後、前記シート案内面上の前記シート薄膜形成面に前記薄膜を形成する。
本発明において「減圧雰囲気下」とは、本発明が適用される薄膜形成方法である真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、CVD法が好ましく適用される圧力である1,000Pa以下の圧力の環境のことをいう。
本発明が好ましく適用される電気絶縁性シートとして、代表的なものには、プラスチックフィルムや紙等のシートがある。特に電気絶縁性の高いプラスチックフィルムが本発明を適用するには好適である。プラスチックフィルムの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類や、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、アラミド、ナイロンなどの高分子プラスチックフィルムなどが例示できるがこれらに限定されるものではない。また、プラスチックフィルムは単層でもよく、また2層以上の積層体フィルムでもよい。
本発明における薄膜形成方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、CVD法が挙げられる。中でも特に真空蒸着法は、成膜速度が数百nm/sと高く、その分シート搬送速度も数百m/分と速いため、シートに与える熱負荷やシートの冷却が難しいことなどから、本発明の対象としては好適である。
本発明において「微粒子」とは、前述の薄膜形成方法においてシート上に薄膜を形成する際にシート上に飛来し付着する薄膜材料をいう。例えば真空蒸着法においては、微粒子発生源、いわゆる蒸発源で加熱され蒸発した薄膜材料の蒸気粒子をいう。真空蒸着法の蒸発源としては、誘導加熱方式の他、抵抗加熱方式、電子ビーム方式などあるが、いずれでも適用可能である。
本発明において「シート案内面」とは、前述の薄膜形成方法においてシート上に薄膜を形成する際に、シートの薄膜形成面の反対面に接触しながらシートを搬送する薄膜形成装置の構成要素をいう。この「シート案内面」は主にシートをシワなく搬送する役目と、シートが受けた熱を効率よく逃がす役目を持つ。代表的なものとしては、図1に示すように円筒形状のものでこの軸を中心に回転しながらシートを搬送するものがある。安定した電位差を薄膜との間に付与するため、シート案内面の表面またはその近傍は、導電性を有しているのが好ましい。
本発明において「シート薄膜形成面」とは、シートが前述のシート案内面上で薄膜が形成される側の面をいう。薄膜の形成の有無に関わらず、形成される側の面をこのように呼ぶ。
本発明において「プラズマ発生手段」とは、減圧雰囲気下において、導電性の電極に直流、交流、矩形波などの電圧を印加して、電極の周囲の気体をグロー放電させ、その気体の少なくとも一部を電子とイオンに電離した状態にする装置のことをいい、特に電圧を印加する電極自体は赤熱や発光はせず、電極周囲の気体雰囲気のみをグロー放電させ発光させる原理のものを指す。
本発明において「交流電圧」とは、時間により電圧の大きさが常に変化する電圧のことをいう。時間とともに正弦波状に電圧値が変化するものが一般的であるが、この他にも矩形波状やパルス波状に電圧値が変化するものも例示される。
本発明において「荷電粒子」とは、プラズマ発生手段によって気体の一部の原子や分子、が電離して生成されたイオンや電子のことをいう。またこれらの電子やイオンが他の原子や分子に衝突することによって2次的に発生する電子やイオンもこれに含まれる。
本発明における薄膜形成材料としては、特に限定されるものではなく、金属または金属アロイ、金属化合物などいずれでもよい。具体的には単体金属としては、Al、Cu、Zn、Co、Fe、Snが例示される。また、金属アロイとしては、Al−Zn、Al−Cu、Co−Cr、などが挙げられ、さらに金属化合物としては、AlOx、CuOx、ZnS、ZnO、SiOx、ITOなどが例示される。
本発明によれば、真空下でのシート搬送においてシートとシート案内面とを密着させることが出来るシートの帯電密着装置が提供される。そして、このシートの帯電密着装置を用いて、薄膜形成中における電気絶縁性シートの熱変形(熱負け)を抑制することができるシートの真空成膜装置および薄膜付きシートの製造方法が提供される。
本発明のシートの帯電密着装置を用いた巻取式真空蒸着装置の概略断面図である。 本発明におけるプラズマ発生手段の概略断面図である。 本発明におけるプラズマ発生手段の部分断面斜視図である。 本発明における別態様のプラズマ発生手段の概略断面図である。 本発明における別態様のプラズマ発生手段の概略断面図である。 本発明における別態様のプラズマ発生手段の概略断面図である。 本発明における別態様のプラズマ発生手段の概略断面図である。 本発明における別態様のプラズマ発生手段の概略断面図である。 本発明における別態様のプラズマ発生手段の概略断面図である。 従来の巻取式真空蒸着装置の概略断面図である。 従来の巻取式真空成膜装置の概略断面図である。
以下、本発明の最良の実施形態の例を巻取式蒸着装置に適用した場合を例にとって、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明を巻取式蒸着装置に適用した第1の実施形態の概略断面図である。また図2は本発明のプラズマ発生手段16を拡大した概略断面図である。なお、図7に示した従来技術である特許文献1の巻取式蒸着装置と同一または同等の機能を有する構成要素には同一番号を付け、詳細な説明を省略する。
図7に記載した従来技術の装置との大きな相違点は、図2に示すように、プラズマ発生手段16の筐体19をアース11に電気的に接地してプラズマ中の荷電粒子の一部を逃がす構造としており、その電流経路に電流調整手段26として可変抵抗を配している点である。電流調整手段26の抵抗値を調整することにより、筐体19からアース11に流れる電流を調整することが出来、結果として荷電粒子放出口25から減圧室13内部に放出される荷電粒子の量を調整することが出来る。このためシート案内面3の近傍における荷電粒子量を制御することが出来るため、安定的にシート案内面3に必要な電位差を与え、シート1を必要な量だけ帯電させることが出来、かつ火花放電等の異常放電を抑制することが出来る。特に薄膜形成が行われることが多い0.1Paから100Paの圧力範囲においてシート案内面3に300V以上の高い電位差を与える場合、シート1の帯電に必要な荷電粒子の量が多い分だけ減圧室内に荷電粒子をたくさん放出する必要があり、それだけ余剰荷電粒子が増加しやすく、火花放電や定常的なグロー放電の発生頻度が多くなりやすいので、放出荷電粒子量を制御できる本発明の効果が顕著となる。
また、図1に示すように荷電粒子の供給源としてプラズマ発生手段16を使用しており、シート案内面3に印加した電位差に応じてプラズマ中から必要な荷電粒子が誘引される。潤沢な荷電粒子を有するプラズマを荷電粒子供給源とすることにより、図8に記載した電子ビーム照射装置34を荷電粒子供給源とした、従来技術である特許文献2の巻取式成膜装置のように、数kVから数十kVの加速電圧を印加してシート1に荷電粒子を供給する装置と比較して、1000V以下の低い電位差でも帯電に必要な荷電粒子をシート1に供給することが出来る。そのため、シート1への荷電粒子の照射によるシート表面状態の改質を引き起こしにくいため好ましい。
また、放出口25以外の開口を設けない筐体19の内部にガスノズル28を設け放電に必要なガスを導入することにより、より少ないガス量でプラズマ電極18の近傍を放電に適した圧力帯に維持することが出来る。これにより減圧室内の圧力をいたずらに高めることなく放電が出来るため好ましい。ガスノズル28から導入するガスは、窒素ガス、炭酸ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスや酸素から選択でき、またこれらの混合ガスも好適に用いることが出来る。
放出口25は大きいほど荷電粒子を多く供給することが出来るが、荷電粒子供給量が多すぎる場合には異常放電の発生頻度が増えてしまうのは前述のとおりであり、適宜設計されるべきである。矩形開口、スリット状の開口、穴状の開口などが好適に用いられる。放出口25にメッシュ状部材やパンチングメタルのような開口を有する別部材を設けると、プラズマ電極18がスパッタされた際に生じるフラックス等を捕捉することが出来、シート1へのコンタミ防止の観点から好ましい。
なお、電流調整手段26は放出荷電粒子量の最適化のため適宜調整すればよい。放出荷電粒子量が少ない場合はシート1に必要な帯電量が得られずシート案内面3にシート1を密着させる力が得られない。この場合は電流調整手段26の抵抗値を上げることにより、プラズマからアース11に流れる荷電粒子が少なくなり、その結果放出される荷電粒子の量が増加し、シート1の帯電に要する荷電粒子が多く供給されることとなる。逆に放出荷電粒子量が多すぎて火花放電等の異常放電が発生するような場合には、電流調整手段26の抵抗値を下げることによりプラズマから多くの荷電粒子がアース11に流れることとなり、結果として減圧室13内に放出される荷電粒子の量が減少し、異常放電の発生が抑制されるのである。
図3は、本発明のプラズマ発生手段の部分断面斜視図である。プラズマ発生手段は、図3に示すようにシートの幅方向に長さを持つように配置すれば、シート1が大面積であってもシートの幅方向に均一に帯電に必要な荷電粒子を供給するとともに、効率的に放出する荷電粒子量を制御でき、シートの幅方向および走行方向に均一に帯電させることができるので好ましい。
電流調整手段26の抵抗値調整範囲は、プラズマ電極18の物理的な大きさや投入電力、減圧室内圧力、必要なバイアス電圧等の各種プロセスパラメータや装置条件等に応じて適宜選定されるべきである。電流調整手段26に可変抵抗を用いているのは、これらの条件に応じて抵抗値を簡単に変更出来るようにする目的がある。各種条件が固定であるなどの理由により、一度決定した抵抗値を変更する必要がない場合などには、抵抗値が固定された抵抗を用いることもある。また抵抗を交換できるようにしておいて、状況に応じて適宜抵抗値が固定された抵抗を入れ替えて用いることも可能である。また抵抗に限らず、半導体等を用いた回路で制御するものなど、結果として流れる電流値が制御出来るものであればどのようなものを用いてもよい。
図4aは本発明のプラズマ発生手段の別の一例を示す概略断面図である。図4aの形態のプラズマ発生手段は、開口を設けた板状金属部材30が放出口25に設置されており、板状金属部材30と筐体19との間に絶縁部材31を設けて電気的に切り離し、板状金属部材30をアース接地した形態である。これにより板状金属部材30がプラズマ電極18の対向電極としての機能を受け持ち放電の安定化に寄与する。また筐体19に接続された可変抵抗26は余剰荷電粒子の抑制効果と放出荷電粒子量のバランスを指標に調整することが出来る。絶縁部材31には各種樹脂やセラミックスなど電気絶縁性を有する素材が好適に用いられる。板状金属部材30には、ピンホールや矩形穴、スリット等の開口部を設けた金属板のほか、金属メッシュや繊維状金属を板状にしたものや線状の金属を平面的に並べたものも好適に用いることが出来る。
図4bは本発明のプラズマ発生手段の別の一例を示す概略断面図である。図4bの形態のプラズマ発生手段は、筐体19を直接アース接地し、放出口25に設けた板状金属部材30に電流調整手段26を介してアース接地した形態である。このように構成することにより筐体19はプラズマ電極18の対向電極としての機能を受け持ち放電の安定化に寄与する。また板状金属部材30に接続された電流調整手段26は余剰荷電粒子量と放出荷電粒子量のバランスを最適に調整することが出来るため好ましい。
図4cは本発明のプラズマ発生手段の別の一例を示す概略断面図である。図4cの形態のプラズマ発生手段は、図4aの形態のプラズマ発生手段のうち、放出口25に設けた板状金属部材30に電流調整手段26を介してアース接地した形態である。このように構成することにより図4aの構造または図4bの構造のものよりも多くの荷電粒子を放出しながら、放出荷電粒子量と余剰荷電粒子量のバランスを調整することが出来るため好ましい。
図4dは本発明のプラズマ発生手段の別の一例を示す概略断面図である。図4dの形態のプラズマ発生手段は、図4cの形態のプラズマ発生手段のうち、放出口25に少なくとも2つの板状金属部材30を設けた形態である。2つの板状金属部材30は、1つはシート案内面3に近い側に設けられ、もう1つはプラズマ電極18に近い側に設けられている。そして、2つの板状金属部材30はお互いが電気的に接続されておらず、そのうちの少なくとも1つは電流調整手段26を介してアース接地されており、別の少なくとも1つは直接アース接地されている。図4d中ではシート案内面30側の板状金属部材30が直接アース接地されているが、プラズマ電極18側の板状金属部材30が直接アース接地され、シート案内面30側の板状金属部材30が電流調整手段26を介してアース接地された構造でもかまわない。また、3つ以上の板状金属部材30を設けてもよい。3つ以上の板状金属部材30を設ける場合は、少なくとも1つが電流調整手段26を介してアース接地され、少なくとも1つが直接アース接地されていさせすれば、どの板状金属材30が電流調整手段26を介してアース接地されていても直接アース接地されていてもよい。このように構成することにより直接アース接地された板状金属部材30がプラズマ電極18の対向電極として機能し放電の安定化に寄与する。また電流調整手段26を介してアース接地された板状金属部材30と筐体19とは余剰荷電粒子量と放出荷電粒子量とのバランスを指標に電流調整手段26を最適に調整することが出来るため好ましい。また直接アース接地された板状金属部材30はシート案内面3との間の空間に直流電源14による電界を生じさせる効果を発現する。このため空間中の浮遊荷電粒子をシート案内面3に効率的に誘引させる効果がある。
図5は本発明のプラズマ発生手段の別の一例を示す概略断面図である。図5の形態のプラズマ発生手段は、図4dの形態のプラズマ発生手段のうち、プラズマ電極18と筐体19とに冷却水経路32を設け、冷却水や油等の冷媒を流すことにより冷却する構造となっている。これにより高い放電出力でもプラズマ電極18や筐体19を比較的低温に保つことが出来る。このため絶縁部材31に安価で加工性が良好ではあるが比較的耐熱性の低い樹脂材料を用いることが出来るため好ましい。
図6は本発明のプラズマ発生手段の別の一例を示す概略断面図である。図6の形態のプラズマ発生手段は、図5の形態のプラズマ発生手段のうち、プラズマ電極18内部にマグネトロン磁場を形成するための磁石33を設けた構造である。減圧雰囲気下の比較的広い圧力範囲でプラズマ発生手段の筐体19の中にプラズマを生成することが可能となること、また電離度の高いプラズマを比較的低い印加電圧で形成できること、また図3に示すように、プラズマ発生手段をシート1の幅方向に長さを持つようにした場合においても、シート1の幅方向に均一なプラズマを生成できること、またプラズマ発生手段の筐体19内において、プラズマ生成領域27を荷電粒子放出口25に近い場所に局在化して、低いプラズマ放電電力においても効率よく荷電粒子を放出することができること、などの理由で好ましい。
図1に戻る。以上に説明したプラズマ発生手段16を用い、シート案内面3に電位差を付与してシート1を帯電させる帯電密着手段は、図1に示すような巻取式蒸着装置に好適に用いることが出来る。プラズマ発生手段16を、蒸発源7よりもシート搬送方向上流側に設けることにより、シート1をシート案内面3に密着させた状態で蒸着膜を成膜することが出来、蒸着による熱負荷でフィルムがダメージを受けにくいため好ましい。なお、蒸着工程のみならず、例えばスパッタリングやCVD等の他の成膜手段を用いる真空成膜装置の場合でも、あるいは搬送安定化が目的の場合でも、シート案内面3とシート1との密着力を増加させる目的に対して好適に用いることが出来る。
以下に示す実施例および比較例において、シート案内面3に安定的に付与できる電位差を比較した。また、帯電させたシートに薄膜を形成した後に、シートと薄膜の密着力を評価した。
[実施例1]
電気絶縁性シートとして、厚さ12μm、幅200mmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製「ルミラー(登録商標)」)の片面を、図2に示すプラズマ発生手段を用いた図1に示す巻取式真空蒸着装置にて、以下に示す条件で帯電させた。
(減圧室条件)
(1)減圧室圧力:2Pa。
(プラズマ電極条件)
接地した筐体内にマグネトロン電極を内蔵するプラズマ発生手段を用いた。各条件は以下の通り。
(1)プラズマ電極のシート幅方向の長さ:300mm
(2)プラズマ用直流電源の電力出力:100W
(3)プラズマ電極の筐体の荷電粒子放出口:シート走行方向の開口3mm、シート幅方向の開口280mm
(4)シート案内面と荷電粒子放出口との距離:10mm
(5)荷電粒子放出口の向き:プラズマ電極であるマグネトロン電極の中心と、荷電粒子放出口の中心を結んだ直線の延長線が円筒形シート案内面の表面にほぼ垂直に入射する向き。
(6)プラズマ生成用ガス種:アルゴン
(7)プラズマ生成用ガス流量:100cc/分
(8)筐体に接続された抵抗の抵抗値:10Ω。
(シート案内面条件)
図1に示すように円筒形のシート案内面を使用した。各条件は以下の通り。
(1)円筒形シート案内面の直径:600mm
(2)シート搬送速度:5m/分。
以上の条件下のもとプラズマ放電を発生させながら、シート案内面に直流電源を用いて印加する電圧を上昇させていった結果、アース電位に対してシート案内面の電位が+500[V]になるまで安定して電圧を印加することができた。
さらに、シート案内面の電位を+500Vに維持したまま連続的にシートに薄膜を形成した。薄膜形成の条件は以下の通り。
(薄膜形成条件)
(1)蒸発源:抵抗加熱ボート
(2)蒸発材料:アルミニウム
(3)蒸着室圧力:2×10−2Pa
(4)膜厚:30nm。
以上の条件で蒸着を完了した電気絶縁性シートの、薄膜が形成された領域を切り出し、はく離接着強さ試験方法(JIS K 6854−3)に準じてシートと薄膜の密着力を評価したところ、密着力は162g/15mmであった。はく離界面は蒸着膜内部であり、蒸着膜とシートとの界面が強固に密着していた。
[実施例2]
プラズマ発生手段を図4aに示すプラズマ発生手段へ変更した以外は、使用した電気絶縁性シート、減圧室条件およびシート案内面条件は実施例1と同じ条件で帯電させた。
プラズマ放電を発生させながら、実施例1と同じ条件で薄膜を形成しつつシート案内面に直流電源を用いて印加する電圧を上昇させていった結果、アース電位に対してシート案内面の電位が+250Vになるまで安定して電圧を印加することができた。
さらに、アース電位とシート案内面3との電位差を150Vに設定して成膜した薄膜とシートの密着力を評価したところ、密着力は153g/15mmであった。はく離界面は蒸着膜内部であり、蒸着膜とシートとの界面が強固に密着していた。
[実施例3]
プラズマ発生手段を図4bに示すプラズマ発生手段へ変更した以外は、使用した電気絶縁性シート、減圧室条件およびシート案内面条件は実施例1と同じ条件で帯電させた。実施例1で使用したプラズマ発生手段との違いは以下のとおりである。
(1)板状金属部材に接続された抵抗の抵抗値:10Ω。
以上の条件下のもとプラズマ放電を発生させながら、実施例1と同じ条件で薄膜を形成しつつシート案内面に直流電源を用いて印加する電圧を上昇させていった結果、アース電位に対してシート案内面の電位が+200Vになるまで安定して電圧を印加することができた。
さらに、アース電位とシート案内面3との電位差を150Vに設定して成膜した薄膜とシートの密着力を評価したところ、密着力は163g/15mmであった。はく離界面は蒸着膜内部であり、蒸着膜とシートとの界面が強固に密着していた。
[実施例4]
実施例3の、板状金属部材に接続された抵抗の抵抗値のみを変更し、実施例3と同じ条件で帯電させた。
(1)板状金属部材に接続された抵抗の抵抗値:100Ω。
以上の条件下のもとプラズマ放電を発生させながら、実施例1と同じ条件で薄膜を形成しつつシート案内面に直流電源を用いて印加する電圧を上昇させていった結果、アース電位に対してシート案内面の電位が+220Vになるまで安定して電圧を印加することができた。
さらに、アース電位とシート案内面3との電位差を150Vに設定して成膜した薄膜とシートの密着力を評価したところ、密着力は153g/15mmであった。はく離界面は蒸着膜内部であり、蒸着膜とシートとの界面が強固に密着していた。
[実施例5]
実施例3の、板状金属部材に接続された抵抗の抵抗値のみを変更し、実施例3と同じ条件で帯電させた。
(1)板状金属部材に接続された抵抗の抵抗値:1000Ω。
以上の条件下のもとプラズマ放電を発生させながら、実施例1と同じ条件で薄膜を形成しつつシート案内面に直流電源を用いて印加する電圧を上昇させていった結果、アース電位に対してシート案内面の電位が+200Vになるまで安定して電圧を印加することができた。
さらに、アース電位とシート案内面3との電位差を150Vに設定して成膜した薄膜とシートの密着力を評価したところ、密着力は153g/15mmであった。はく離界面は蒸着膜内部であり、蒸着膜とシートとの界面が強固に密着していた。
[実施例6]
プラズマ発生手段を図4dに示すプラズマ発生手段へ変更した以外は、使用した電気絶縁性シート、減圧室条件およびシート案内面条件は実施例1と同じ条件で帯電させた。実施例1で使用したプラズマ発生手段との違いは以下のとおりである。
(1)板状金属部材に接続された抵抗の抵抗値:100Ω
(2)筐体に接続された抵抗の抵抗値:10Ω。
以上の条件下のもとプラズマ放電を発生させながら、実施例1と同じ条件で薄膜を形成しつつシート案内面に直流電源を用いて印加する電圧を上昇させていった結果、アース電位に対してシート案内面の電位が+170Vになるまで安定して電圧を印加することができた。
さらに、アース電位とシート案内面3との電位差を150Vに設定して成膜した薄膜とシートの密着力を評価したところ、密着力は163g/15mmであった。はく離界面は蒸着膜内部であり、蒸着膜とシートとの界面が強固に密着していた。
[実施例7]
実施例6の各抵抗値を変更した以外は、使用した電気絶縁性シート、減圧室条件およびシート案内面条件は実施例6と同じ条件で帯電させた。実施例6で使用したプラズマ発生手段との違いは以下のとおりである。
(1)板状金属部材に接続された抵抗の抵抗値:100kΩ
(2)筐体に接続された抵抗の抵抗値:100kΩ。
以上の条件下のもとプラズマ放電を発生させながら、実施例1と同じ条件で薄膜を形成しつつシート案内面に直流電源を用いて印加する電圧を上昇させていった結果、アース電位に対してシート案内面の電位が+150Vになるまで安定して電圧を印加することができた。
さらに、アース電位とシート案内面3との電位差を150Vに設定して成膜した薄膜とシートの密着力を評価したところ、密着力は163g/15mmであり、はく離界面は蒸着膜内部であり、蒸着膜とシートとの界面が強固に密着していた。
[実施例8]
実施例7の各抵抗値を変更した以外は、使用した電気絶縁性シート、減圧室条件およびシート案内面条件は実施例7と同じ条件で帯電させた。実施例7で使用したプラズマ発生手段との違いは以下のとおりである。
(1)板状金属部材に接続された抵抗の抵抗値:0.1Ω
(2)筐体に接続された抵抗の抵抗値:0.1Ω。
以上の条件下のもとプラズマ放電を発生させながら、実施例1と同じ条件で薄膜を形成しつつシート案内面に直流電源を用いて印加する電圧を上昇させていった結果、アース電位に対してシート案内面の電位が+250Vになるまで安定して電圧を印加することができた。
さらに、アース電位とシート案内面3との電位差を150Vに設定して成膜した薄膜とシートの密着力を評価したところ、密着力は163g/15mmであった。はく離界面は蒸着膜内部であり、蒸着膜とシートとの界面が強固に密着していた。
[比較例1]
実施例1で用いたプラズマ発生手段のうち、筐体とアース電位との電気的接続を切り離した状態にて、使用した電気絶縁性シート、減圧室条件およびシート案内面条件は実施例1と同じ条件で帯電させた。筐体が浮遊電位となることが実施例1で使用したプラズマ発生手段との違いである。
以上の条件下のもとプラズマ放電を発生させながら、シート案内面に直流電源を用いて印加する電圧を上昇させていった結果、アース電位に対してシート案内面の電位が+100Vを超えたところで荷電粒子の放出口25にてグロー放電が発生し、安定的に電位差を与えることができなかった。
[比較例2]
実施例3で用いたプラズマ発生手段のうち、板状金属部材をアース接地した状態で放電出力30Wにて、使用した電気絶縁性シート、減圧室条件およびシート案内面条件は実施例3と同じ条件で帯電させた。板状金属部材がアース電位となること、放電出力が30Wであることが実施例3で使用したプラズマ発生手段との違いである。
以上の条件下のもとプラズマ放電を発生させながら、シート案内面に直流電源を用いて印加する電圧を上昇させていった結果、アース電位に対してシート案内面の電位が+500Vになるまで安定して電圧を印加することができたが、蒸着を実施したところ熱負けが発生した。
[比較例3]
荷電粒子供給源を図7に示す電子ビーム照射装置へ変更し、シート案内面を接地電位に変更した以外は、使用した電気絶縁性シート、減圧室条件およびシート案内面条件は実施例1と同じ条件で帯電させた。実施例1で使用したプラズマ発生手段との違いは以下のとおりである。
(1)電子ビーム照射装置の放電電圧:9kV
(2)電子ビーム照射装置の放電電流:700mA。
さらに、荷電粒子供給源を電子ビーム照射装置に変更し、シート案内面を接地電位に変更した以外は、実施例1と同じ条件で薄膜を形成し、シートと薄膜の密着力を評価したところ、密着力は57g/15mmであった。はく離界面は蒸着膜とシートの界面であり、蒸着膜とシートとの界面の密着が弱かった。
本発明の帯電密着装置は、電気絶縁性のプラスチックフィルムを対象とする巻取式真空蒸着装置に非常に好適に用いられるが、スパッタ装置やCVD装置などにも応用でき、その応用範囲が、これらに限られるものではない。
1 シート
2 原反ロール体
3 シート案内面
4 中間ローラ(巻出側)
5 中間ローラ(巻取側)
6 巻取ロール体
7 蒸発源(微粒子発生手段)
8 蒸着材料
9 蒸気
10 薄膜
11 アース
12 シート搬送方向
13 減圧室
14 直流電源(電位差付与手段)
15 電気抵抗
16 プラズマ発生手段
17 プラズマ用電源
18 プラズマ電極
19 プラズマ発生手段の筐体
20 真空ポンプ
21 バルブ
22 プラズマ電極排気経路
25 荷電粒子放出口
26 電流調整手段
27 プラズマ放電領域
28 ガス導入ノズル
29 ガス導入経路
30 板状金属部材
31 絶縁部材
32 冷却水経路
33 磁石
34 電子ビーム照射装置

Claims (8)

  1. 減圧室と、
    前記減圧室内の空気を排気する排気手段と、
    前記減圧室内に設置され、シートと接触しながらシートを搬送するシート案内面を有し、前記シート案内面の移動に伴ってシートを搬送するシート搬送手段と、
    前記シート案内面上のシートを帯電させる帯電手段と、を備えたシートの帯電密着装置であって、
    前記帯電手段が、
    プラズマ発生手段と、
    アース電位と前記シート案内面電位との間に10V以上1000V以下の電位差を付与できる電位差付与手段と、で構成され、
    前記プラズマ発生手段が、
    電気的に接地された筐体と、
    前記筐体の内部に設置され、プラズマを発生させるプラズマ電極と、
    前記筐体の前記シート案内面と対向する位置に設けられ、プラズマで発生した荷電粒子を前記筐体の外部に放出するための放出口と、
    前記放出口に設けられ、電流調整手段を介して電気的に接地された開口を有する板状金属部材と、で構成された、シートの帯電密着装置。
  2. 前記放出口に少なくとも2つの前記板状金属部材が設けられ、
    前記2つの板状金属部材の1つは前記シート案内面に近い側に設けられ、もう1つは前記プラズマ電極に近い側に設けられており、
    前記2つの板状金属部材は、お互いが電気的に接続されておらず、いずれか一方が電気的に接地されている、請求項1のシートの帯電密着装置。
  3. 減圧室と、
    前記減圧室内の空気を排気する排気手段と、
    前記減圧室内に設置され、シートと接触しながらシートを搬送するシート案内面を有し、前記シート案内面の移動に伴ってシートを搬送するシート搬送手段と、
    前記シート案内面上のシートを帯電させる帯電手段と、を備えたシートの帯電密着装置であって、
    前記帯電手段が、
    プラズマ発生手段と、
    アース電位と前記シート案内面電位との間に10V以上1000V以下の電位差を付与できる電位差付与手段と、で構成され、
    前記プラズマ発生手段が、
    電流調整手段を介して電気的に接地された筐体と、
    前記筐体の内部に設置され、プラズマを発生させるプラズマ電極と、
    前記筐体の前記シート案内面と対向する位置に設けられ、プラズマで発生した荷電粒子を前記筐体の外部に放出するための放出口と、で構成された、シートの帯電密着装置。
  4. 前記放出口に開口を有する板状金属部材が設けられ、この記板状金属部材が前記電流調整手段を介して、前記電流調整手段とは別の電流調整手段を介して、または電流調整手段を介さずに電気的に接地された、請求項3のシートの帯電密着装置。
  5. 前記プラズマ電極が、その内部にプラズマ発生面の表面にマグネトロン磁場を形成するための磁石を備えた、請求項1〜4のいずれかのシートの帯電密着装置。
  6. 前記電流調整手段が可変抵抗である、請求項1〜5のいずれかのシートの帯電密着装置。
  7. 請求項1〜6のシートの帯電密着装置を用いたシートの真空成膜装置であって、
    前記プラズマ発生手段よりもシート搬送方向下流側に、前記シート案内面上のシート上に薄膜を形成するためにシートに向かって微粒子を飛散させる微粒子発生源が配置された、シートの真空製膜装置。
  8. 請求項7のシートの真空成膜装置を用い、減圧雰囲気下において、シート案内面に接触しながら搬送方向に搬送されている電気絶縁性シート上に、微粒子発生源から飛来させた微粒子を堆積させ、薄膜を形成する薄膜付きシートの製造方法であって、
    シート案内面上のシート薄膜形成面に、プラズマ発生手段から供給される荷電粒子のうちいずれかの極性の荷電粒子を、アース電位と前記シート案内面電位との電位差が10V以上1000V以下となるよう電位差を付与し誘導することにより、前記シート薄膜形成面を帯電させた後、前記シート案内面上の前記シート薄膜形成面に前記薄膜を形成する、薄膜付きシートの製造方法。
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