以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、発明の実施形態に係るインバータ制御装置のブロック図である。詳細な図示は省略するが、本例のインバータ制御装置を電気自動車に設ける場合に、三相交流電力のモータ3は、走行駆動源として駆動し、電気自動車の車軸に結合されている。なお本実施形態に係るインバータ制御装置は、例えばハイブリッド自動車(HEV)等の電気自動車以外の車両にも適用可能である。また、インバータ制御装置は、車両に限らず他の装置にも適用可能である。
本実施形態に係るインバータ制御装置は、インバータ1と、バッテリ2と、モータ3と、コンデンサ4と、電圧センサ5と、電流センサ6、7と、回転子位置センサ8と、コントローラ10とを備えている。
インバータ1は、複数のスイッチング素子(絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBT)Q1〜Q6と、整流素子(還流ダイオード)D1〜D6とを有し、バッテリ2の直流電力を交流電力に変換して、モータ3に供給する電力変換回路である。複数のスイッチング素子Q1〜Q6は、整流素子(還流ダイオード)D1〜D6にそれぞれ並列接続されている。複数のスイッチング素子Q1〜Q6に流れる電流の導通方向は、整流素子D1〜D6の電流の導通方向とは逆向きになっている。2つのスイッチング素子Q1〜Q6を直列に接続した3対のアーム回路が並列に接続され、各対のスイッチング素子間とモータ3の三相入力部とがそれぞれ電気的に接続されている。各スイッチング素子Q1〜Q6には、同一のスイッチング素子が用いられ、例えば、絶縁ゲートパイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられる。
図1に示すように、スイッチング素子Q1とQ2、スイッチング素子Q3とQ4、スイッチング素子Q5とQ6がそれぞれ直列に接続され、スイッチング素子Q1とQ2の間とモータ3のU相、スイッチング素子Q3とQ4の間とモータ3のV相、スイッチング素子Q5とQ6の間とモータ3のW相がそれぞれ接続されている。高電位側のスイッチング素子Q1、Q3、Q5は、バッテリ2の正極側に電気的に接続されており、低電位側のスイッチング素子Q2、Q4、Q6は、バッテリ2の負極側に電気的に接続されている。各スイッチング素子Q1〜Q6のオン及びオフの切り換えは、図示しない駆動回路を介してコントローラ10により制御される。
バッテリ2は、モータ3に電力を供給するための電源であって、インバータ1に接続されている。バッテリ2には、例えばリチウムイオン電池などの二次電池が搭載されている。
モータ3は、車両を駆動するための駆動源であって、インバータ1に接続されている。モータ3には、三相交流同期モータ等が用いられる。また、モータ3は発電機としても機能し、モータ3の回生動作により発電した電力は、インバータ1を介して、モータ3に出力され、バッテリ2が充電される。
コンデンサ4は、平滑用のコンデンサであって、インバータ1とバッテリ2とを接続する一対の電源ライン間に接続されている。コンデンサ4は、バッテリ2の正極及び負極間に接続され、インバータ1に対して並列に接続されている。
電圧センサ5は、バッテリ2の電圧を検出するためのセンサであって、一対の電源ライン間に接続されている。電流センサ6は、バッテリ2の正極側で、バッテリ2とコンデンサ4の間に接続されている。電流センサ6は、バッテリ2の入出力電流に相当する、DC成分の電流値を検出するためのセンサである。電流センサ7は、インバータ1とモータ3との間に接続されており、各相にそれぞれ接続されている。電流センサ7は、インバータ1とモータ3との間の各相の交流電流を検出する。なお、電流センサ7は、UVWの三相のうち、少なくとも二相に接続されていればよい。電圧センサ5、電流センサ6、7の検出値は、コントローラ10に出力される。
回転子位置センサ8は、レゾルバやエンコーダなどのセンサであって、モータ3に設けられ、モータ3の回転子の位置(回転数の相当)を検出し、検出値をコントローラ10に出力する。
次に、コントローラ10の構成を説明する。図2は、コントローラ10の構成を示すブロック図である。コントローラ10は、CPU又はROM等により構成されており、CPU等で実行される各種の機能ブロックとして、以下の構成を有している。コントローラ10は、電流指令値演算部11、電圧指令値演算部12、変調率演算部13、スイッチング信号生成部14、判別部15、及び、スイッチング信号補正部16を有している。なお、コントローラ10は、インバータ1の制御のために、図2の構成に限らず、他の構成を有してもよい。
電流指令値演算部11は、トルク指令値(T*)及びモータ3の回転数(N)に基づき電流指令値(Idq *)を演算する。トルク指令値(T*)は、運転手又はシステムが要求するトルクを、モータ3から出力するために必要な出力トルクの目標値であって、アクセル開度等に基づき演算される値である。トルク指令値(T*)は、図示しない車両コントローラにより演算される。なお、コントローラ10がトルク指令値(T*)を演算してもよい。モータ3の回転数(N)は、回転子位置センサ8の出力値から演算により求められる値である。
電流指令値演算部11には、トルク指令値(T*)、モータ回転数(N)及び電流指令値の対応関係を示すマップが予め保存されており、電流指令値演算部11は当該マップを参照することで、電流指令値(Id *、Iq *)を演算し、電圧指令値演算部12に出力する。電流指令値(Id *、Iq *)は、現在のモータ3の状態に対して、トルク指令値(T*)に応じたトルクをモータ3から出力するために必要なモータ3の交流電流の目標値である。
電圧指令値演算部12は、モータ3のロータの位相(θ)、モータ3の相電流(Iu、Iw、Iq)及び電流指令値演算部11の電流指令値(Id *、Iq *)に基づいて、モータ3の交流電圧の指令値である交流電圧指令値(Vu *、Vv *、Vw *)を演算する。電圧指令値演算部12は、モータ3の電流センサにより検出される検出電流(u、v、w相の電流)を、ロータの位相で回転座標系に変換し、dq軸電流(Id、Iq)を演算する。そして、電圧指令値演算部12は、PI制御により、dq軸電流(Id、Iq)を、電流指令値(Id *、Iq *)に一致させる電圧指令値(Vu *、Vv *、Vw *)を演算し、変調率演算部13に出力する。
変調率演算部13は、電圧指令値(Vu *、Vv *、Vw *)及びバッテリ2の検出電圧(Vdc)から変調率(MI)を演算し、変調率(MI)をスイッチング信号生成部14に出力する。変調率は、電源電圧(バッテリ電圧:Vdc)に対するデューティ指令信号の振幅を表している。
スイッチング信号生成部14は、変調率とキャリアとを比較することで、スイッチング素子Q1〜Q6のオン、オフを切り換えるためのスイッチング信号(SW信号)を生成し、スイッチング信号補正部16に出力する。スイッチング信号は、各スイッチング素子Q1〜Q6のオン期間及びオフ期間を定めた信号である。すなわち、スイッチング信号生成部14は、スイッチング信号を生成することで、各スイッチング素子Q1〜Q6のオン、オフの切り替えタイイングを設定している。
判別部15は、スイッチング素子Q1〜Q6の状態に応じて、コンデンサ4の電圧変化の傾きの符号を判別し、判別結果をスイッチング信号補正部16に出力する。
スイッチング信号補正部16は、各相の電圧指令値のうち、指令値の大きさが中間になる中間電圧指令値とキャリアとの比較により生成されるスイッチング信号を補正する。中間電圧指令値は、uvw相の電圧指令値(Vu *、Vv *、Vw *)のうち、最も大きい指令値と、最も小さい指令値との間の電圧指令値である。本実施形態では、電圧指令値は変調率に変換されて、スイッチング信号生成部14に出力される。そのため、本実施形態において、スイッチング信号補正部16は、各相の変調率のうち、変調率の大きさが中間になる中間変調率とキャリアとの比較により生成されるスイッチング信号を補正する。スイッチング信号補正部16は、判別部15の判別結果に応じて、スイッチング信号を補正する。スイッチング信号補正部16は、中間電圧指令値に対応する1相のスイッチング信号を補正し、他の2相のスイッチング信号を補正しない。2相のスイッチング信号は、各相の電圧指令値のうち、最も指令値の大きい相のスイッチング信号と、最も指令値の小さい相のスイッチング信号である。そして、スイッチング信号補正部は、補正した1相のスイッチング信号と、補正していない2相のスイッチング信号を、スイッチング素子制御部17に出力する。なお、判別部15及びスイッチング信号補正部16の具体的な制御については、後述する。
スイッチング素子制御部17は、スイッチング信号補正部16から出力されたスイッチング信号を、駆動回路を介してスイッチング素子Q1〜Q6の制御端子に出力することで、スイッチング素子Q1〜Q6のオン、オフを切り換える。スイッチング信号補正部16から出力されるスイッチング信号には、補正された1相のスイッチング信号と、補正されてないスイッチング信号を含んでいる。
ここで、本実施形態とは異なり、スイッチング信号生成部14で生成されたスイッチング信号に対して、スイッチング信号補正部16によるスイッチング信号の補正を行わずに、補正前のスイッチング信号のみで、インバータを制御した場合(一般のPWM制御)において、コンデンサ4の電圧変動について、図3及び図4を用いて説明する。
図3は、変調率の特性、キャリア、及び、コンデンサ4の電圧特性を示すグラフである。図3のグラフaが変調率の特性を示し、グラフbがキャリアを示し、グラフcがコンデンサの電圧を示す。横軸は、時間である。
PWM制御において、変調率がキャリアよりも大きいときに、スイッチング素子Q1〜Q6がオンになり、変調率がキャリアよりも小さいときに、スイッチング素子Q1〜Q6がオフになる。そして、グラフaで示される変調率と、グラフbで示されるキャリアとの比較により、スイッチング信号が生成され、当該信号スイッチング信号に基づき、スイッチング素子Q1〜Q6のオン、オフが切り替えられると、コンデンサ4の電圧は、グラフcのような特性で変化する。
図3に示すように、上アームのスイッチング素子Q1、Q3、Q5のうち、2つのスイッチング素子がオン状態に、1つのスイッチング素子がオフ状態になっている場合、上アームのスイッチング素子Q1、Q3、Q5の全てがオフ状態の場合、上アームのスイッチング素子Q1、Q3、Q5の全てがオン状態の場合に、充電電流がコンデンサ4に流れ、コンデンサ4の電圧が上昇する。また、上アームのスイッチング素子Q1、Q3、Q5のうち、1つのスイッチング素子がオン状態に、2つのスイッチング素子がオフ状態になっている場合に、放電電流がコンデンサ4から流れ、コンデンサ4の電圧が下降する。
コンデンサ4の充放電期間は、キャリアの半周期内で、コンデンサ4を放電する放電期間と、当該放電期間より前の時間である充電期間と、当該放電期間より後の時間である充電期間とを含んでいる。図3に示すコンデンサ4の電圧特性では、キャリアの半周期(T1)内で、充放電期間は、充電期間(tc1)、放電期間(td1)、及び充電期間(tc2)の順に並んでいる。また、キャリアの半周期(T2)内で、充放電期間は、充電期間(tc3)、放電期間(td2)、及び充電期間(tc4)の順に並んでいる。
PWM制御において、キャリアに対する変調率の大きさによって決まる。図3に示すように、放電期間(td1)の前の充電時間(tc1)と、放電期間(td1)の後の充電時間(tc2)が大きく異なり、充電時間(tc1)と充電時間(tc2)との時間差が大きい場合には、一方の充電期間が長くなる。キャリアの半周期(T2)でも同様に、充電時間(tc3)と充電時間(tc4)との時間差が大きい場合には、一方の充電期間が長くなってしまう。そして、充電時間(tc1)と充電時間(tc4)と加算した、キャリア1周期あたりの連続充電期間が長くなってしまうため、コンデンサの4の電圧の変動幅が大きくなってしまう。
図3のグラフに対して、コンデンサの電圧特性を示すグラフの谷と山が、逆になった場合の特性について、図4を用いて説明する。図4は、変調率の特性、キャリア、及び、コンデンサ4の電圧特性を示すグラフである。図4のグラフaが変調率の特性を示し、グラフbがキャリアを示し、グラフcがコンデンサの電圧を示す。横軸は、時間である。
図4に示すように、上アームのスイッチング素子Q1、Q3、Q5のうち、1つのスイッチング素子がオン状態に、2つのスイッチング素子がオフ状態になっている場合、上アームのスイッチング素子Q1、Q3、Q5の全てがオフ状態の場合、上アームのスイッチング素子Q1、Q3、Q5の全てがオン状態の場合に、充電電流がコンデンサ4に流れ、コンデンサ4の電圧が上昇する。また、上アームのスイッチング素子Q1、Q3、Q5のうち、2つのスイッチング素子がオン状態に、1つのスイッチング素子がオフ状態になっている場合に、放電電流がコンデンサ4から流れ、コンデンサ4の電圧が下降する。
コンデンサ4の充放電期間は、キャリアの半周期内で、放電期間と、当該放電期間より前の時間である充電期間と、当該放電期間より後の時間である充電期間とを含んでいる。図4に示すコンデンサ4の電圧特性では、キャリアの半周期(T3)内で、充放電期間は、充電期間(tc5)、放電期間(td3)、及び充電期間(tc6)の順に並んでいる。また、キャリアの半周期(T4)内で、充放電期間は、充電期間(tc7)、放電期間(td4)、及び充電期間(tc8)の順に並んでいる。
図4に示すように、放電期間(td3)の前の充電時間(tc5)と、放電期間(td6)の後の充電時間(tc6)が大きく異なり、充電時間(tc5)と充電時間(tc6)との時間差が大きい場合には、一方の充電期間が長くなってしまう。また、キャリアの半周期(T4)でも同様に、充電時間(tc7)と充電時間(tc8)との時間差が大きい場合には、一方の充電期間が長くなってしまう。そして、充電時間(tc6)と充電時間(tc7)と加算した、キャリア1周期あたりの連続充電期間が長くなってしまうため、コンデンサの4の電圧の変動幅が大きくなってしまう。
上記のように、一般的なPWM制御では、コンデンサ4の電圧変動が大きいため、バッテリ2とコンデンサ4との間で、電流のリプルが発生する。本実施形態に係るインバータ制御装置は、第1充電時間におけるコンデンサ4の電圧変化量と、第2充電時間におけるコンデンサ4の電圧変化量が同程度になるように、スイッチング信号を補正することで、コンデンサ4の電圧変動を抑制している。第1充電期間は、キャリアの半周期内で、放電期間の前の時間であり、第2充電期間は、キャリアの半周期内で放電期間の後の時間である。以下、インバータ制御装置の判別部15、スイッチング信号補正部16、及びスイッチング素子制御部17の具体的な制御を説明する。
図5は、判別部15、スイッチング信号生成部14、及びスイッチング信号補正部16、スイッチング素子制御部17の制御フローを示すフローチャートである。なお、図5に示す制御フローは、コントローラ10により繰り返し実行されている。
ステップS1にて、判別部15は、変調率(MI)、DC電流(idc)、AC電流(ibb)及びコンデンサ電圧(C)に基づき、コンデンサ4の電圧変動量(ΔV)を演算する。変調率(MI)は、変調率演算部13で演算された変調率である。DC電流(idc)は、電流センサ6の検出電流である。コンデンサ電圧(C)は、電圧センサ5の検出電圧である。
AC電流(ibb)は、スイッチング素子Q1〜Q6のオン、オフにより発生する交流成分の電流であって、インバータ1からコンデンサ4への入出力電流である。例えば、スイッチング素子Q1、Q4、Q6がオン状態で、スイッチング素子Q2、Q3、Q5がオフ状態である場合に、AC電流(ibb)は、U相の相電流(iu)となる。また、例えば、上アームの全てのスイッチング素子Q1、Q3、Q5がオン状態で、下アームの全てのスイッチング素子Q2、Q4、Q6がオフ状態である場合には、AC電流(ibb)はゼロとなる。各スイッチング素子Q1〜Q6のオン、オフの状態は変調率により決まる。そのため、AC電流(ibb)は、変調率(MI)と電流センサ7で検出された相電流(Iu、Iv、Iw)から演算できる。
コンデンサ4の電圧変動量(ΔV)を演算するための演算式は、スイッチング素子Q1〜Q6の状態より異なる。図6は、変調率及びキャリアの特性を示すグラフであって、スイッチング素子Q1〜Q6の状態とコンデンサ4の電圧変動量(ΔV)との関係を説明するための図である。図6のグラフaが変調率を示し、グラフbがキャリアを示す。横軸は時間を示す。
図6に示すように、上アームの全てのスイッチング素子Q1、Q3、Q5がオン状態で、下アームの全てのスイッチング素子Q2、Q4、Q6がオフ状態である場合の電圧変動量をΔV0とする。上アームのスイッチング素子Q1、Q3、Q5のうち、2つのスイッチング素子がオン状態で、1つのスイッチング素子がオフ状態の場合(下アームのスイッチング素子Q2、Q4、Q6のうち、2つのスイッチング素子がオフ状態で、1つのスイッチング素子がオン状態の場合)の電圧変動量をΔV1とする。上アームのスイッチング素子Q1、Q3、Q5のうち、1つのスイッチング素子がオン状態で、2つのスイッチング素子がオフ状態の場合(下アームのスイッチング素子Q2、Q4、Q6のうち、1つのスイッチング素子がオフ状態で、2つのスイッチング素子がオン状態の場合)の電圧変動量をΔV2とする。また、上アームの全てのスイッチング素子Q1、Q3、Q5がオフ状態で、下アームの全てのスイッチング素子Q2、Q4、Q6がオン状態である場合の電圧変動量をΔV3とする。
電圧変動量ΔV
0、ΔV
1、ΔV
2、ΔV
3は、下記式(1)〜(4)でそれぞれ表される。
ただし、MI
minは、各相の変調率のうち、最も低い変調率を示し、MI
maxは、各相の変調率のうち、最も高い変調率を示し、MI
midは、MI
minとMI
maxとの間の変調率を示す。
判別部15は、変調率(MI)とキャリアから、スイッチング素子のオン、オフ状態を特定し、上記の式(1)〜式(4)の中から電圧変動量を求める式を選択する。そして、判別部15は、変調率(MI)、DC電流(idc)、AC電流(ibb)及びコンデンサ電圧(C)を、選択した式に代入して、スイッチング素子Q1〜Q6の状態に応じた、コンデンサ4の電圧変動量(ΔV0、ΔV1、ΔV2、ΔV3)を演算する。これにより、判別部15は、変調率(MI)等に対する上記式を用いた演算によって、スイッチング素子Q1〜Q6の状態に応じた、コンデンサ4の電圧変動量を特定する。
ステップS2にて、判別部15は、電圧変動量(ΔV1)がゼロ以上であるか否かを判別し、判別結果をスイッチング信号補正部16に出力する。電圧変動量ΔV1は、スイッチング素子Q1〜Q6が所定の状態である場合の、コンデンサ4の電圧変化の傾きを表している。所定の状態とは、上アームのスイッチング素子Q1、Q3、Q5のうち、2つのスイッチング素子がオンで状態あり、1つのスイッチング素子がオフ状態である場合を示す。
電圧変動量(ΔV1)がゼロ以上である場合、すなわちコンデンサ4の電圧変化の傾きの符号が正である場合には、ステップS3にて、スイッチング信号補正部16は、パルスを分割する。分割されるパルスは、各相の変調率のうち、変調率の大きさが中間になる中間変調率とキャリアとの比較により生成されるスイッチング信号である。スイッチング信号補正部16は、スイッチング信号のパルスを分割することで、スイッチング信号を補正している。
以下、ステップS3の制御フローについて、図7及び図8を用いて説明する。図7は、変調率の特性、キャリア、スイッチング信号、及び、コンデンサ4の電圧特性を示すグラフであって、(a)はパルス分割前の特性を示し、(b)はパルス分割後の特性を示す。図7(a)の変調率の特性、キャリア、及び、コンデンサ4の電圧特性は、図3と同様である。図7の横軸は時間を示す。そして、横軸に表された電圧変動量(ΔV0、ΔV1、ΔV2、ΔV3)は、該当する期間において変動する、コンデンサ4の電圧変動量である。なお、図7の例では、u相が最も変調率の高い相で、w相が最も変調率の低い相とする。
パルス分割前のスイッチング信号(補正前のスイッチング信号)で、インバータ1が制御された場合に、コンデンサ4の電圧は、図7(a)のグラフcのような特性となる。コンデンサ4の全体の電圧変動量(図7(a)の矢印Pで示される幅の大きさ)を小さくするためには、放電期間の前後に位置する充電期間におけるコンデンサ電圧の変動量が、同程度になればよい。例えば、図7(a)のグラフでは、キャリアの半周期(T1)内で、放電期間より前の充電時間が、当該放電期間より後の充電期間と比べて、極端に長くなっている。キャリアの半周期(T1)内で、放電時間が、図7(a)の時間より前の時間であれば、前後の充電時間におけるコンデンサ電圧の変動量が同程度になる。
図7(a)に示すスイッチング信号では、キャリアの半周期(T
1)内で、v相のパルスは1つになっているが、v相の1つのパルスが分割されて、2つになれば、キャリアの半周期(T
1)内で、放電期間により隔てられた2つの充電期間を、それぞれ同程度の長さにすることができ、コンデンサ4の電圧変動量を抑制できる。そして、コンデンサ4の全体の電圧変動量を抑制するためには、各充電期間の電圧変動量の関係が下記式(5)を満たすとよい。
ただし、xは、分割係数であって、v相のスイッチング信号で表されるオン期間の分配比を示す。
式(5)を展開して、式(1)、式(2)、及び式(4)を代入することで、xは下記式(6)で表される。
スイッチング信号補正部16は、DC電流(idc)、AC電流(ibb)、及び変調率を用いて、式(6)より、分割係数(x)を演算する。また、スイッチング信号補正部16は、分割係数(x)を用いて、下記式(7)及び(8)より、分割パルスを生成するための変調率(MI000、MI180)を演算する。
図8は、変調率(MI000、MI180)、キャリア及び分割されたスイッチング信号(補正後のスイッチング信号)を示すグラフである。
スイッチング信号補正部16は、変調率(MI000、MI180)を演算した後、変調率(MI000)とキャリアとを比較することでパルスPaを生成する。スイッチング信号補正部16は、変調率(MI000)がキャリアより高い期間を、パルスPaのハイレベルの期間とする。図8(a)に示す実線のパルスが、パルスPaを表している。
スイッチング信号補正部16は、変調率(MImax)とキャリアとを比較することでパルスPbを生成する。図8(a)に示す点線のパルスが、パルスPbを表している。
また、スイッチング信号補正部16は、変調率(MI180)とキャリアとを比較することでパルスPcを生成する。変調率(MI180)と比較されるキャリアは、変調率(MI000)と比較されたキャリアに対して、π/2分ずれている。スイッチング信号補正部16は、変調率(MI180)がキャリアより高い期間を、パルスPcのハイレベルの期間とする。図8(b)に示す点線パルスが、パルスPcを表している。
スイッチング信号補正部16は、パルスPbとパルスPcとの論理積をとる。そして、スイッチング信号補正部16は、論理積で得られるパルスとパルスPaとの論理和をとることで、変調率の大きさが中間になる相(v相)のスイッチング信号を生成する。図8(c)に示すパルスが、補正後のスイッチング信号を表している。これにより、補正前のv相のスイッチング信号が分割される。そして、スイッチング信号補正部16は、分割されたv相のスイッチング信号と、u相及びw相のスイッチング信号を、スイッチング素子制御部17に出力する。
ステップS4にて、スイッチング素子制御部17は、スイッチング信号補正部16から出力されたスイッチング信号に基づき、インバータ1を制御する。
上記のように、ステップS3の制御フローにおいて、スイッチング信号補正部16は、キャリアの半周期でみたときに、放電期間より前の充電期間における電圧変動量と、放電期間より後の充電期間における電圧変動量が同程度になるように、中間変調率の相のスイッチング信号を補正する。図7に示すように、インバータ1が補正後のスイッチング信号で制御された場合に、コンデンサ4の電圧変動量(図7(b)の矢印Qで示される幅の大きさ)は、スイッチング信号を補正しないときの電圧変動量(図7(a)の矢印Pで示される幅の大きさ)よりも小さくなる。
ステップS2の判定で、電圧変動量(ΔV1)がゼロ未満である場合には、ステップS5にて、判別部15は、電圧変動量(ΔV2)がゼロ以上であるか否かを判別し、判別結果をスイッチング信号補正部16に出力する。電圧変動量ΔV2は、スイッチング素子Q1〜Q6が所定の状態である場合の、コンデンサ4の電圧変化の傾きを表している。所定の状態とは、上アームのスイッチング素子Q1、Q3、Q5のうち、1つのスイッチング素子がオンで状態あり、2つのスイッチング素子がオフ状態である場合を示す。
電圧変動量(ΔV2)がゼロ以上である場合には、ステップS6にて、スイッチング信号補正部16は、パルスを分割する。分割されるパルスは、各相の変調率のうち、変調率の大きさが中間になる中間変調率とキャリアとの比較により生成されるスイッチング信号である。
以下、ステップS6の制御フローについて、図9及び図10を用いて説明する。図9は、変調率の特性、キャリア、スイッチング信号、及び、コンデンサ4の電圧特性を示すグラフであって、(a)はパルス分割前の特性を示し、(b)はパルス分割後の特性を示す。図9(a)の変調率の特性、キャリア、及び、コンデンサ4の電圧特性は、図3と同様である。図9の横軸は時間を示す。そして、横軸に表された電圧変動量(ΔV0、ΔV1、ΔV2、ΔV3)は、該当する期間において変動する、コンデンサ4の電圧変動量である。なお、図9の例では、u相が最も変調率の高い相で、w相が最も変調率の低い相とする。
パルス分割前のスイッチング信号(補正前のスイッチング信号)で、インバータ1が制御された場合に、コンデンサ4の電圧は、図9(a)のグラフcのような特性となる。コンデンサ4の全体の電圧変動量(図9(a)の矢印Pで示される幅の大きさ)を小さくするためには、放電期間の前後に位置する充電期間におけるコンデンサ電圧の変動量が、同程度になればよい。
図9(a)に示すスイッチング信号では、キャリアの半周期(T
1)内で、v相のパルスは1つになっていないが、v相の1つのパルスが分割して、2つのパルスにする。そして、分割された2つのパルスのうち、一方のパルスを、w相のスイッチング信号のオン期間と重ねて、他方のパルスを、電圧変動量(ΔV
2)に対応する充電時間を分けるような時間に割り当てる。これにより、キャリアの半周期(T
1)内で、放電期間により隔てられた2つの充電期間が、それぞれ同程度の長さになり、コンデンサ4の電圧変動量が抑制される。そして、コンデンサ4の全体の電圧変動量を抑制するためには、各充電期間の電圧変動量の関係が下記式(9)を満たすとよい。
ただし、xは、分割係数である。
式(9)を展開して、式(1)、式(3)、及び式(4)を代入することで、xは下記式(10)で表される。
スイッチング信号補正部16は、DC電流(idc)、AC電流(ibb)、及び変調率を用いて、式(10)より、分割係数(x)を演算する。また、スイッチング信号補正部16は、分割係数(x)を用いて、下記式(11)及び(12)より、分割パルスを生成するための変調率(MI000、MI180)を演算する。
図10は、変調率(MI000、MI180)、キャリア及び分割されたスイッチング信号(補正後のスイッチング信号)を示すグラフである。
スイッチング信号補正部16は、変調率(MI000、MI180)を演算した後、変調率(MI000)とキャリアとを比較することでパルスPdを生成する。スイッチング信号補正部16は、変調率(MI000)がキャリアより高い期間を、パルスPdのハイレベルの期間とする。図8(a)に示す実線のパルスが、パルスPdを表している。
スイッチング信号補正部16は、変調率(MImin)とキャリアとを比較することでパルスPeを生成する。図8(a)に示す点線のパルスが、パルスPeを表している。
また、スイッチング信号補正部16は、変調率(MI180)とキャリアとを比較することでパルスPfを生成する。変調率(MI180)と比較されるキャリアは、変調率(MI000)と比較されたキャリアに対して、π/2分ずれている。スイッチング信号補正部16は、変調率(MI180)がキャリアより高い期間を、パルスPfのハイレベルの期間とする。図8(b)に示す点線パルスが、パルスPfを表している。
スイッチング信号補正部16は、パルスPeとパルスPfとの論理和をとる。そして、スイッチング信号補正部16は、論理和で得られるパルスとパルスPdとの論理積をとることで、変調率の大きさが中間になる相(v相)のスイッチング信号を生成する。図10(c)に示すパルスが、補正後のスイッチング信号を表している。これにより、補正前のv相のスイッチング信号が分割される。そして、スイッチング信号補正部16は、分割されたv相のスイッチング信号と、u相及びw相のスイッチング信号を、スイッチング素子制御部17に出力する。
ステップS7にて、スイッチング素子制御部17は、スイッチング信号補正部16から出力されたスイッチン信号に基づき、インバータ1を制御する。
上記のように、ステップS6の制御フローにおいて、スイッチング信号補正部16は、キャリアの半周期でみたときに、放電期間より前の充電期間における電圧変動量と、放電期間より後の充電期間における電圧変動量が同程度になるように、中間変調率の相のスイッチング信号が補正される。図9に示すように、インバータ1が補正後のスイッチング信号で制御された場合に、コンデンサ4の電圧変動量(図9(b)の矢印Qで示される幅の大きさ)は、スイッチング信号を補正しないときの電圧変動量(図9(a)の矢印Pで示される幅の大きさ)よりも小さくなる。
ステップS5の判定で、電圧変動量(ΔV2)がゼロ未満である場合には、ステップS8にて、スイッチング信号補正部16は、スイッチング信号を補正することなく、スイッチング信号をスイッチング素子制御部17に出力する。そして、スイッチング素子制御部17は、補正されてないスイッチング信号に基づき、インバータ1を制御する。
上記のように、本実施形態では、モータの電圧指令値とキャリアとを比較して、複数のスイッチング素子Q1〜Q6のオン及びオフを切り換えるスイッチング信号を生成し、各相の変調率のうち変調率の大きさが中間になる中間変調率とキャリアとの比較により生成されるスイッチング信号を補正し、補正されたスイッチング信号よりインバータ1を制御し、コンデンサ4の充放電期間に、キャリアの半周期内で、コンデンサ4の放電期間と、当該放電期間より前の時間である第1充電期間と、前記放電期間より後の時間である第2充電期間とを含ませて、第1充電期間におけるコンデンサの電圧変化量と、第2充電期間におけるコンデンサの電圧変化量とを同程度にする。これにより、キャリアの1周期内で、コンデンサ4の連続充電期間が短くなるため、充電期間で変動するコンデンサ電圧の変動幅が小さくなり、コンデンサの電圧変動を抑制できる。
また本実施形態では、電圧変動量(ΔV1)がゼロ以上である場合には、上記の式(5)を満たすように、スイッチング信号を補正する。これにより、コンデンサの電圧変動量が同程度になるような、スイッチング信号を生成できる。
また本実施形態では、電圧変動量(ΔV1)がゼロ未満であり、かつ、ΔV2がゼロ以上である場合には、上記の式(9)を満たすように、スイッチング信号を補正する。これにより、コンデンサの電圧変化量が同程度になるような、スイッチング信号を生成できる。
上記スイッチング素子制御部17が本発明に係る「制御部」に相当する。
《第2実施形態》
図11は、発明の他の実施形態に係るインバータ制御装置のコントローラ10のブロック図である。本例では上述した第1実施形態に対して、コントローラ10が変調率補正部18を有している点が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、その記載を援用する。
コントローラ10は、電流指令値演算部11等の他に、変調率補正部18を有している。変調率補正部18は、判別部15の判別結果に応じて、変調率を補正する。電圧変動量(ΔV1)がゼロ以上である場合には、変調率補正部18は、各相の変調率のうち最も大きい変調率が上限値になるように、各相の変調率を、それぞれ同じ大きさのオフセット値で補正する。また、電圧変動量(ΔV1)がゼロ未満であり、かつ、電圧変動量(ΔV2)がゼロ以上である場合には、変調率補正部18は、各相の変調率のうち最も小さい変調率が下限値になるように、各相の変調率を、それぞれ同じ大きさのオフセット値で補正する。
スイッチング信号生成部14は、変調率補正部18により補正された変調率とキャリアとを比較して、スイッチング信号を生成する。スイッチング信号補正部16は、判別部15の判別結果に応じて、補正された各相の変調率のうち、変調率の大きさが中間になる中間変調率とキャリアとの比較により生成されたスイッチング信号を補正する。そして、スイッチング素子制御部17は、スイッチング信号補正部16により補正されたスイッチング信号を含む各相のスイッチング信号に基づいて、インバータ1を制御する。
図12は、判別部15、スイッチング信号生成部14、スイッチング信号補正部16、スイッチング素子制御部17、及び変調率補正部18の制御フローを示すフローチャートである。なお、図12に示す制御フローは、コントローラ10により繰り返し実行されている。
ステップS11及びステップS12の制御フローは、実施形態1で説明したステップS1及びステップS2の制御フローと、それぞれ同様である。
ステップS12の判定で、電圧変動量(ΔV1)がゼロ以上である場合には、ステップS13にて、変調率補正部18は、オフセット値(γ)を演算する。オフセット値(γ)は、変調率(MI)のオフセット値である。変調率演算部13で演算された各変調率(MI)のうち、最も高い変調率(MImax)を最大値(1)に固定し、残りの相の変調率(MImid、MImin)を、変調率(MImax)と最大値(1)との差分(1−MImax)だけ、オフセットする。すなわち、変調率補正部18は、最大値(変調の上限値)から変調率(MImax)を減算することで、オフセット値(γ)を演算する。
ステップS14にて、変調率補正部18は、変調率演算部13で演算された各変調率(MI)に対して、正のオフセット値(γ)をそれぞれ加算することで、変調率をオフセットする。
ステップS15にて、スイッチング信号生成部14は、オフセット後の変調率とキャリアとを比較することで、スイッチング素子Q1〜Q6のスイッチング信号を生成する。
ステップS16にて、スイッチング信号補正部16は、変調率の大きさが中間になる相のスイッチング信号を分割する。そして、スイッチング信号補正部16は、各相のスイッチング信号のうち、変調率(電圧指令値に相当)が最も高い相のスイッチング信号と、変調率が最も低い相のスイッチング信号を、スイッチング素子制御部17に出力する信号とする。これにより、3相のうち、2相のスイッチング信号が決まる。また、スイッチング信号補正部16は、分割されたスイッチング信号を、残り1相のスイッチング信号とする。
ステップS14からステップS16までの制御フローについて、図13及び図14を用いて説明する。
図13(a)〜(c)は、キャリア、変調率、各相のスイッチング信号、及び、コンデンサ4の電圧変動の特性を示したグラフである。図13(a)はオフセット前の特性を示し、図13(b)はオフセット後の特性を示し、図13(c)はスイッチング信号の分割後の特性を示す。図13(a)、(b)、(c)において、グラフaが変調率を示し、グラフbがキャリアを示し、グラフcがコンデンサの電圧を示す。また、パルスは、各相のスイッチング信号を示す。なお、図11を用いた説明では、説明の便宜上、最も高い電圧指令値の相をU相とし、最も低い電圧指令値の相をW相としている。横軸は時間を示す。
図13(c)に示すコンデンサ電圧の特性が、本実施形態において、コンデンサ4の電圧変動量を小さくしたときの特性である。オフセット後の変調率から得られる電圧変動量(ΔV1)を、電圧変動量(x・ΔV1)と電圧変動量((1−x)・ΔV1)に分割する。xは、オフセット後の変調率に対して、分割された電圧変動量の割合を表す係数であって、v相のスイッチング信号で表されるオン期間の分配比を示す。分割された電圧変動量を用いて、スイッチング信号を分割した後のコンデンサ4の電圧変動量を表すと、キャリアの半周期内で前に位置する電圧変動量は、ΔV0+xΔV1となり、後に位置する電圧変動量は、(1−x)ΔV1となる。
オフセット後の変調率とスイッチング信号との比較から得られる電圧変動量(ΔV0、ΔV1、ΔV2、ΔV3)は、下記式(13)〜下記式(16)で表される。
そして、コンデンサ4の全体の電圧変動量を抑制するためには、各充電期間の電圧変動量の関係が下記式(17)を満たすとよい。
式(17)を展開して、式(13)及び式(14)を代入することで、xは下記式(18)で表される。
スイッチング信号補正部16は、DC電流(i
dc)、AC電流(i
bb)、及び変調率を用いて、式(18)より、分割係数(x)を演算する。また、スイッチング信号補正部16は、分割係数(x)を用いて、下記式(19)及び(20)より、分割パルスを生成するための変調率(MI
000、MI
180)を演算する。
図14は、変調率(MI000、MI180)、キャリア及び分割されたスイッチング信号を示すグラフである。
変調率(MI000、MI180)を演算した後、スイッチング信号補正部16は、変調率(MI000)とキャリアとを比較することでパルスPaを生成する。スイッチング信号補正部16は、変調率(MI000)がキャリアより高い期間を、パルスPaのハイレベルの期間とする。図14(a)に示すパルスが、パルスPaを表している。
また、スイッチング信号補正部16は、変調率(MI180)とキャリアとを比較することでパルスPbを生成する。変調率(MI180)と比較されるキャリアは、変調率(MI000)と比較されたキャリアに対して、π/2分ずれている。スイッチング信号補正部16は、変調率(MI180)がキャリアより高い期間を、パルスPbのハイレベルの期間とする。図14(b)に示すパルスが、パルスPbを表している。
そして、スイッチング信号補正部16は、パルスPaとパルスPbとの論理和をとることで、変調率の大きさが中間になる相のスイッチング信号を生成する。図12(c)に示すパルスが、変調率の大きさが中間になる相のスイッチング信号である。これにより、スイッチング信号補正部16は、変調率の大きさが中間になる相のスイッチング信号を分割する。
ステップS17にて、スイッチング素子制御部16は、ステップS15の制御フロー及びステップS16の制御フローで生成されたスイッチング信号を、各スイッチング素子Q1〜Q6に出力して、インバータ1を制御する。
上記のように、ステップS16の制御フローにおいて、スイッチング信号補正部16は、キャリアの半周期でみたときに、放電期間より前の充電期間における電圧変動量と、放電期間より後の充電期間における電圧変動量が同程度になるように、中間変調率の相のスイッチング信号が補正される。図13に示すように、インバータ1が補正後のスイッチング信号で制御された場合に、コンデンサ4の電圧変動量(図13(c)の矢印Qで示される幅の大きさ)は、スイッチング信号を補正しないときの電圧変動量(図13(b)の矢印P2で示される幅の大きさ)よりも小さく、かつ、変調率を補正しないときの電圧変動量(図13(a)の矢印P1で示される幅の大きさ)よりも小さくなる。
ステップS12の判定で、電圧変動量(ΔV1)がゼロ未満である場合には、ステップS18にて、判別部15は、電圧変動量(ΔV2)がゼロ以上であるか否かを判別し、判別結果を変調率補正部18及びスイッチング信号補正部16に出力する。
電圧変動量(ΔV2)がゼロ以上である場合には、ステップS19にて、変調率補正部18は、オフセット値(δ)を演算する。オフセット値(δ)は、変調率(MI)のオフセット値である。
変調率演算部13で演算された各変調率(MI)のうち、最も低い変調率(MImin)を最小値(−1.0)に固定し、残りの相の変調率(MImid、MImax)を、変調率(MImin)と最小値(−1.0)との差分(−1−MImin)だけ、オフセットする。すなわち、変調率補正部18は、最小値(変調の下限値)から変調率(MImin)を減算することで、オフセット値(δ)を演算する。オフセット値(δ)は、負の値となる。
ステップS20にて、変調率補正部18は、変調率演算部13で演算された各変調率(MI)に対して、負のオフセット値(δ)をそれぞれ加算することで、変調率をオフセットする。すなわち、変調率補正部18は、最も低い変調率(MImin)と下限値との差分である補正値を、各相の変調率からそれぞれ減算することで、各相の変調率を補正する。
ステップS21にて、スイッチング信号生成部14は、オフセット後の変調率とキャリアとを比較することで、スイッチング素子Q1〜Q6のスイッチング信号を生成する。
ステップS22にて、スイッチング信号補正部16は、変調率の大きさが中間になる相のスイッチング信号を分割する。そして、スイッチング信号補正部16は、各相のスイッチング信号のうち、変調率(電圧指令値に相当)が最も高い相のスイッチング信号と、変調率が最も低い相のスイッチング信号を、スイッチング素子制御部17に出力する信号とする。これにより、3相のうち、2相のスイッチング信号が決まる。また、スイッチング信号補正部16は、分割されたスイッチング信号を、残り1相のスイッチング信号とする。
ステップS20からステップS22までの制御フローについて、図15及び図16を用いて説明する。
図15(a)〜(c)は、キャリア、変調率、各相のスイッチング信号、及び、コンデンサ4の電圧変動の特性を示したグラフである。図15(a)はオフセット前の特性を示し、図15(b)はオフセット後の特性を示し、図15(c)はスイッチング信号の分割後の特性を示す。図15(a)、(b)、(c)において、グラフaが変調率を示し、グラフbがキャリアを示し、グラフcがコンデンサの電圧を示す。また、パルスは、各相のスイッチング信号を示す。なお、図13を用いた説明では、説明の便宜上、最も高い電圧指令値の相をU相とし、最も低い電圧指令値の相をW相としている。横軸は時間を示す。
ステップS20の制御フローによって、オフセット後の変調率(MI’ max、MI’ mid、MI’ min)は、変調率演算部13で演算された各変調率(MImax、MImid、MImin)に、負のオフセット値(δ)を加えた値となる。オフセット後の変調率(MImin ’)は、インバータ制御における変調の下限値(−1.0)となる。
ステップS21の制御フローにより、オフセット後の変調率(MI’ max)とキャリアとの比較により演算されるスイッチング信号が、U相のスイッチング信号となる。また、オフセット後の変調率(MI’ min)とキャリアとの比較により演算されるスイッチング信号が、W相のスイッチング信号となる。なお、W相のスイッチング素子は常にオフ状態となる。
変調率をオフセットした後のコンデンサ4の電圧変動量を小さくするためには、キャリアの半周期内で、放電期間の前後に位置する充電期間におけるコンデンサ電圧の変動量が、同程度になればよい。
図15(c)に示すコンデンサ電圧の特性が、本実施形態において、コンデンサ4の電圧変動量を小さくしたときの特性である。オフセット後の変調率から得られる電圧変動量(ΔV2)を、電圧変動量(x・ΔV2)と電圧変動量((1−x)・ΔV2)に分割する。xは、オフセット前の変調率に対して、分割された電圧変動量の割合を表す係数である。分割された電圧変動量を用いて、スイッチング信号を分割した後のコンデンサ4の電圧変動量を表すと、キャリアの半周期内で前に位置する電圧変動量は、(1−x)ΔV2となり、後に位置する電圧変動量は、xΔV2+ΔV3となる。
オフセット後の変調率とスイッチング信号との比較から得られる電圧変動量(ΔV0、ΔV1、ΔV2、ΔV3)は、下記式(21)〜下記式(24)で表される。
そして、コンデンサ4の全体の電圧変動量を抑制するためには、各充電期間の電圧変動量の関係が下記式(25)を満たすとよい。
式(25)を展開して、式(23)及び式(24)を代入することで、xは下記式(26)で表される。
スイッチング信号補正部16は、DC電流(i
dc)、AC電流(i
bb)、及び変調率を用いて、式(26)より、分割係数(x)を演算する。また、スイッチング信号補正部16は、分割係数(x)を用いて、下記式(27)及び(28)より、分割パルスを生成するための変調率(MI
000、MI
180)を演算する。
図16は、変調率(MI000、MI180)、キャリア及び分割されたスイッチング信号を示すグラフである。
変調率(MI000、MI180)を演算した後、スイッチング信号補正部16は、変調率(MI000)とキャリアとを比較することでパルスPcを生成する。スイッチング信号補正部16は、変調率(MI000)がキャリアより高い期間を、パルスPcのハイレベルの期間とする。図16(a)に示すパルスが、パルスPcを表している。
また、スイッチング信号補正部16は、変調率(MI180)とキャリアとを比較することでパルスPdを生成する。変調率(MI180)と比較されるキャリアは、変調率(MI000)と比較されたキャリアに対して、π/2分ずれている。スイッチング信号補正部16は、変調率(MI180)がキャリアより高い期間を、パルスPdのハイレベルの期間とする。図16(b)に示すパルスが、パルスPdを表している。
そして、スイッチング信号補正部16は、パルスPcとパルスPdとの論理積をとることで、変調率の大きさが中間になる相のスイッチング信号を生成する。図16(c)に示すパルスが、変調率の大きさが中間になる相のスイッチング信号である。これにより、スイッチング信号補正部16は、変調率の大きさが中間になる相のスイッチング信号を分割し、分割されたスイッチング信号を、残り1相(V相)のスイッチング信号に設定する。スイッチング信号補正部16は、ステップS21の制御フロー及びステップS22の制御フローで生成されたスイッチング信号を、各スイッチング素子Q1〜Q6に出力して、インバータ1を制御する。
ステップS23にて、スイッチング素子制御部17は、スイッチング信号補正部16から出力されたスイッチング信号に基づき、インバータ1を制御する。
上記のように、ステップS22の制御フローにおいて、スイッチング信号補正部16は、キャリアの半周期でみたときに、放電期間より前の充電期間における電圧変動量と、放電期間より後の充電期間における電圧変動量が同程度になるように、中間変調率の相のスイッチング信号を補正する。図15に示すように、インバータ1が補正後のスイッチング信号で制御された場合に、コンデンサ4の電圧変動量(図15(b)の矢印Qで示される幅の大きさ)は、スイッチング信号を補正しないときの電圧変動量(図15(a)の矢印P2で示される幅の大きさ)よりも小さく、かつ、変調率を補正しないときの電圧変動量(図15(a)の矢印P1で示される幅の大きさ)よりも小さくなる。
ステップS18の判定で、電圧変動量(ΔV2)がゼロ未満である場合には、ステップS24にて、変調率補正部18は変調率を補正せず、スイッチング信号補正部16は、スイッチング信号を補正することなく、スイッチング信号をスイッチング素子制御部17に出力する。そして、スイッチング素子制御部17は、補正されてないスイッチング信号に基づき、インバータ1を制御する。
上記のように本実施形態では、各相の変調率のうち最も大きい変調率と変調率の上限値との差分である補正値を、各相の変調率にそれぞれ加算することで、各相の変調率を補正し、補正された変調率とキャリアとを比較してスイッチング信号を生成し、補正された各相の変調率のうち、指令値の大きさが中間になる変調率とキャリアとの比較により生成されるスイッチング信号を補正する。これにより、キャリアの1周期内で、コンデンサ4の連続充電期間が短くなるため、充電期間で変動するコンデンサ電圧の変動幅小さくなり、コンデンサの電圧変動を抑制できる。
上記のように本実施形態では、各相の変調率のうち最も小さい変調率と変調率の下限値との差分である補正値を、各相の変調率からそれぞれ減算することで、各相の変調率を補正し、補正された変調率とキャリアとを比較してスイッチング信号を生成し、補正された各相の変調率のうち、指令値の大きさが中間になる変調率とキャリアとの比較により生成されるスイッチング信号を補正する。これにより、キャリアの1周期内で、コンデンサ4の連続充電期間が短くなるため、充電期間で変動するコンデンサ電圧の変動幅小さくなり、コンデンサの電圧変動を抑制できる。
また、スイッチング信号を分割することによるスイッチング回数の増加を防ぎ、スイッチング損失を抑制することができる。すなわち、第1実施形態に係るインバータ制御装置では、スイッチング信号を分割することで、スイッチング回数が増加している。一方、本実施形態では、変調率を上限値又は下限値に固定するため、高電位側のスイッチング素子のうち、1つのスイッチング素子は常にオン状態になる。そして、本実施形態では、1つのスイッチング素子を常時オンにした状態で、スイッチング信号を分割する。これにより、オフセット前の変調率とキャリアとの比較で得られるスイッチング信号によるスイッチング回数と、同等の回数にすることができる。
上記の変調率補正部18が本発明に係る「指令値補正部」に相当する。なお、本実施形態では、電圧指令値を変調率に変換しているため、変調率をオフセットしたが、電圧指令値をオフセットしてもよい。