本発明に係る水晶素子の製造方法で製造された水晶素子は、安定した機械振動を得ることができ、電子機器等の基準信号を発信するためのものである。また、本発明に係る水晶素子の製造方法で製造された水晶素子120は、図1に示したように、水晶片121と、第一金属パターン122と、位置情報部125と、から構成されている。
水晶片121は、安定した機械振動をする圧電材料が用いられ、例えば、水晶部材が用いられる。水晶片121は、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有しており、例えば、略矩形形状の平板状となっている。水晶片121の主面は、X軸およびZ軸と平行となっている面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに回転させた面と平行となっており、例えば、約37°回転させた面と平行となっている。特に図示しないが、水晶片121の側面には、Z軸に平行なm面が形成されている。m面は、水晶片121の主面となす角度が90°と回転角度を合わせた角度をなしており、例えば、約127°となっている。このため、水晶片121は、水晶片121の両主面に電圧を印加させると、厚みすべり振動を生じさせることができる。厚み滑り振動が生じたとき、m面では、厚みすべり振動を減衰させることができるため、水晶片121の側面付近で振動が減衰する量を大きくすることができ、水晶素子120のエネルギー閉じ込め効果を高めることが可能となる。
第一金属パターン122は、水晶素子120の外部から水晶片121へ電圧を印加するためのものである。第一金属パターン122は、図1に示したように、励振電極部123、引出部124から構成されている。
励振電極部123は、水晶片121に電圧を印加させ厚みすべり振動させるためのものである。励振電極部123は、一対となっており、水晶片121の両主面に互いが対向するように設けられている。励振電極部123に電圧が印加されると、励振電極部123には電荷が蓄えられる。このとき、電荷は、励振電極部123の中央付近で最も密な状態となり、励振電極部123の外縁側に向かうにつれて減少し、励振電極部123の縁部で最も疎の状態となっている。
引出部124は、水晶素子120の外部から、励振電極部123に電圧を印加するためのものである。引出部124は、一対となっている。一方の引出部124は、一端が水晶片121の上面(水晶片121の一方の主面)に設けられている励振電極部123に接続されており、他端が水晶片121の下面(水晶片121の他方の主面)の縁部に位置するように設けられている。他方の引出部124は、一端が水晶片121の下面(水晶片121の他方の主面)に設けられている励振電極部123に接続されており、他端が水晶片121の上面(水晶片121の一方の主面)の縁部に位置するように設けられている。また、引出部124は、水晶片121の上面(水晶片121の一方の主面)を平面視したとき、水晶片121の上面(水晶片121の一方の主面)の所定の一辺に沿って二つ並ぶように位置している。同様に、水晶片121の下面(水晶片121の他方の主面)を平面視したとき、水晶片121の下面(水晶片121の他方の主面)の所定の一辺に沿って二つ並ぶように位置している。
ここで、水晶素子120の動作について説明する。水晶素子120は、水晶素子120の外部から引出部124に電圧が印加されると、引出部124を介して励振電極部123に電圧が印加される。これにより、一対の励振電極部123には、異なる電荷が蓄積されることとなり、逆圧電効果によって励振電極部123に挟まれている水晶片121の一部に歪みが生じ、変形する。その結果、水晶片121は、変形前の姿に戻ろうとするため、圧電効果により励振電極部123に最初に蓄積された電荷と反対の電荷が蓄積される。つまり、励振電極部123に電圧が印加されると、水晶素子120は、圧電効果および逆圧電効果により、励振電極部123に挟まれている水晶片121の一部が振動する。従って、水晶素子120に交流電圧を印加すると、励振電極部123に異なる電荷が交互に蓄積され変形することとなり、励振電極部123に挟まれている水晶片121の一部を振動させることができる。
位置情報部125は、水晶ウエハ110(図9参照)内での水晶素子120の位置を識別するためのものである。位置情報部125は、例えば、水晶片121の上面(水晶片121の一方の主面)の、一対の引出部124が二つ並んで設けられている所定の一辺の縁部であって、一対の引出部124の間に設けられている。このように、水晶素子120に位置情報部125を設けることで、位置情報部125により水晶ウエハ110内のどの位置に形成されていた水晶素子120かを容易に識別することが可能となる。従って、品質不良が判明した場合、どの水晶ウエハ110のどの水晶素子120で発生したか、どの販路を通じて出荷されたか等を、位置情報部125により追跡することが可能となり、高いトレーサビリティを得ることができる。
また、位置情報部125は、第三金属パターンから形成されている。金属材料からなる第三金属パターンと水晶部材からなる水晶片121とでは光の反射率が異なるため、光の反射を利用したレーザー認識装置で容易に位置情報部125を認識させることが可能となる。従って、位置情報部125を第三金属パターンにより形成することで、位置情報部125をより小さくしても、光の反射を利用したレーザー認識装置で確実に認識させることができる。このため、水晶素子120が小型化された場合であっても、位置情報125を把握することができ、高いトレーサビリティを得ることが可能となる。
次に、本発明の実施形態に係る水晶素子の製造方法について説明する。本発明の実施形態に係る水晶素子の製造方法は、図2〜図9に示したように、水晶ウエハ形成工程、識別用素子形成工程、数字情報部形成工程、ウエハ識別工程、水晶片部形成工程、第一金属パターン形成工程、位置情報部形成工程、および、個片化工程から構成されている。
(水晶ウエハ形成工程)
水晶ウエハ形成工程は、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有した平板状の水晶ウエハ110を形成する工程である。水晶ウエハ形成工程では、例えば、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有したランバード人工水晶を準備し、このランバード人工水晶を所定のカットアングルで切断し、所定の厚みとなるまで研磨加工を施すことで、水晶ウエハ110を形成している。
ここで、ランバード人工水晶とは、種水晶と呼ばれる直方体形状の水晶板が水熱合成法により育成された人工水晶、具体的には、アズグロウン人工水晶の表面が研削された人工水晶のことである。
水晶ウエハ形成工程後の水晶ウエハ110は、図3に示したように、その主面が、例えば、略矩形形状となっている。水晶ウエハ110の主面は、X軸およびZ軸に平行となっている面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに回転させた面と平行となっており、例えば、約37°回転させた面となっている。
また、水晶ウエハ形成工程後の水晶ウエハ110は、図3に示したように、種水晶部110aと育成部110bとから構成されている。種水晶部110aは、アズグロウン人工水晶が育成される前の種水晶と呼ばれていた水晶板だった部分であり、育成部110bは、アズグロウン人工水晶の種水晶と呼ばれる水晶板から育成された部分である。つまり、水晶ウエハ110には、別々の状態で育成された二つの部分、種水晶部110aと育成部110bとが存在している。水晶ウエハ110から形成される水晶片121の振動特性や透過特性は、含有分の割合等により依存しているため、育成されるときの条件に依存している。従って、水晶ウエハ110は、種水晶部110aから水晶片を形成した場合と、育成部110bから水晶片121を形成した場合とでは、形成された水晶片の振動特性および透過特性が異なることとなる。
本実施形態では、水晶ウエハ形成工程において形成される水晶ウエハ110が種水晶部110aと育成部110bとから構成されている。従って、水晶ウエハ形成工程において、ランバード人工水晶から切断する際に、種水晶と呼ばれていた水晶板の部分を避けて切断する必要がない。このため、種水晶と呼ばれていた水晶板の部分を避けて切断する場合と比較して、水晶ウエハ110の主面の大きさをより大きくすることができる。この結果、水晶ウエハ110から形成する水晶片121の数量をより多くすることができ、生産性を向上させることが可能となる。
(識別用素子形成工程)
識別用素子形成工程は、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、水晶ウエハ110の所定の位置に、一部分が固定されている識別用素子部111を複数形成する工程である。識別用素子形成工程では、図4に示したように、水晶ウエハ110の種水晶部110aに識別用素子部貫通孔113が形成され、平面視して、略矩形形状の識別用素子部111が水晶ウエハ110の種水晶部110aに形成される。また、識別用素子部111は、水晶ウエハ110の中央部に1行または1列に形成されている。
ここで、識別用素子形成工程について、具体例を挙げて説明する。識別用素子形成工程では、まず、水晶ウエハ110の表面に、金属膜が形成され、この金属膜上に感光性レジストが塗付される。次に、この感光性レジストに光を照射し、所定のパターン、例えば、識別用素子部貫通孔113の部分の感光性レジストを変質させる。その後、所定のパターンとなる部分の水晶ウエハ110が露出するように所定のパターンの感光性レジストおよび金属膜を剥離し現像し、所定のエッチング液に浸漬させて、露出している水晶ウエハ110の部分をエッチングする。最後に、水晶ウエハ110の表面に残留している感光性レジストおよび金属膜を剥離させる。このようにして、水晶ウエハ110に識別用素子部111を形成している。
識別用素子部貫通孔113は、例えば、図4に示したように、第一識別用素子部貫通孔113aと第二識別用素子部貫通孔113bとからなる。第一識別用素子部貫通孔113aは、識別用素子部111の三辺の縁部に沿って形成されている。第二識別用素子部貫通孔113bは、第一識別用素子貫通孔113aが形成されていない識別用素子部111の一辺の縁部に沿って形成されている。このとき、第一識別用素子部貫通孔113aと第二識別用素子部貫通孔113bとは連結されておらず、第二識別用素子部貫通孔113aが形成されている識別用素子部111の一辺の両端部が一対の識別用素子部連結腕112によって水晶ウエハ110に連結された状態となっている。従って、識別用素子部形成工程後の水晶ウエハ110は、図4に示したように、平面視すると、水晶ウエハ110の種水晶部110aに複数の識別用素子部111が形成されており、識別用素子部111の所定の一辺の両端部が識別用素子部連結腕112により水晶ウエハ110に連結され保持されている状態となっている。つまり、識別用素子形成工程では、形成された識別用素子部111を容易に折り取りまたは切断することができる構成となっている。
本実施形態では、識別用素子形成工程において、識別用素子部111を水晶ウエハ110の種水晶部110aに形成している。前述したように、水晶ウエハ110の種水晶部110aと育成部110bとは、育成された環境が異なるため、種水晶部110aから形成される場合と育成部110bから育成される場合とで水晶片121の振動特性および透過特性が異なってしまので、本実施形態の水晶片部形成工程において、水晶片121の振動特性および透過特性のばらつきを低減させるために、水晶片121を水晶ウエハ110の育成部110bから形成している。この結果、本実施形態では、識別用素子部1111を種水晶部110aに形成することで、水晶ウエハ110に識別用素子部111を形成しても、水晶ウエハ110から形成することができる水晶片121の数量が減少することを低減させることが可能となり、生産性を向上させることができる。
また、本実施形態では、識別用素子部111が水晶ウエハ110の中央部に形成されている。このため、水晶ウエハ110の中央部に水晶片部111を形成し識別用素子部111を水晶ウエハ110の外縁部に形成した場合と比較して、水晶ウエハ110の強度を向上させることができる。従って、水晶ウエハ110の強度を向上させることができるので、各工程において水晶ウエハ110が破損することを低減させることができ、生産性を向上させることが可能となる。
また、識別用素子部111を水晶ウエハ110の中央部に1行または1列に形成することで、識別用素子部111が形成される水晶ウエハ110の種水晶部110aを水晶ウエハ110の中央部に位置するように水晶ウエハ110を形成することができる。このため、水晶ウエハ形成工程においてランバード人工水晶から水晶ウエハを切断する際に、種水晶とよばれていた水晶板の部分を避けて切断する必要がない。このため、種水晶と呼ばれていた水晶板の部分を避けて切断する場合と比較して、水晶ウエハ110の主面の大きさをより大きくすることができ、この結果、水晶ウエハ110から形成する水晶片121の数量をより多くすることができ、生産性を向上させることが可能となる。
なお、本実施形態では、第一識別用素子部貫通孔113aおよび第二識別用素子部貫通孔113bを形成することで、一対の識別用素子部連結腕112により識別用素子部111を水晶ウエハ110に連結させた状態にしているが、識別用素子部111の所定の一辺側で水晶ウエハ110に連結させた状態にすることができれば、例えば、識別用素子部貫通孔113を形成し一つの識別用素子部連結腕112により水晶ウエハ110に連結させてもよいし、識別用素子部貫通孔113を形成し識別用素子部111の所定の一辺と水晶ウエハ110とを連結させてもよい。
(数字情報部形成工程)
数字情報部形成工程は、識別用素子部111にそれぞれ別々の数字情報部114を形成する工程である。数字情報部114は、図5に示したように、識別用素子部111に形成されている数値である。数字情報部114は、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術により、水晶ウエハ110を平面視して、識別用素子部111に数値と同じ形状となるように形成される。本実施形態では、数字情報部114は、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術により、水晶ウエハ110を平面視して、識別用素子部111に数値と同じ形状となるように第二金属パターンが形成される。なお、ここで、数字情報部114が第二金属パターンからなる場合について説明しているが、例えば、水晶ウエハ110を平面視して、識別用素子部111に数値と同じ形状となるように、凹部を形成してもよい。
ここで、数字情報部114が第二金属パターンからなる場合の数字情報部形成工程について、具体例を挙げて説明する。まず、水晶ウエハ110の表面に第二金属パターンを構成する金属材料と同一の金属膜が形成され、この金属膜上に感光性レジストが塗付される。次に、この感光性レジストに光を照射し、所定のパターン、具体的には、数字情報部114の数値となる部分に感光性レジストが残留しているように現像する。その後、露出している金属膜を除去した後、最後に残留している感光性レジストを除去する。このようにして、このようにして、識別用素子部111に第二金属パターンからなる数字情報部114を形成する。本実施形態では、数字情報部形成工程を独立して説明しているが、数字情報部114が第二金属パターンからなる場合には、数字情報部形成工程と第一金属パターン形成工程とを同時に行ってもよいし、数字情報部形成工程と位置情報部形成工程とを同時に行ってもよいし、数字情報部形成工程、第一金属パターン形成工程および位置情報部形成工程を同時に行ってもよい。
数字情報部114が凹部からなる場合の数字情報部形成工程について具体例を挙げて説明する。まず、水晶ウエハ110の表面に金属膜が形成され、この金属膜上に感光性レジストが塗付される。次に、この感光性レジストに光を照射し、所定のパターン、具体的には、数字情報部114の数値となる部分の感光性レジストが除去するように、現像する。その後、感光性レジストが除去され露出している金属膜を除去し、水晶ウエハ110の表面を露出させる。最後に、所定のエッチング溶液に浸漬させて露出している水晶ウエハ110をエッチングし、凹部からなる数字情報部114を形成し、残留している感光性レジストおよび金属膜を除去する。このようにして、識別用素子部111に凹部からなる数字情報部114を形成する。本実施形態では、数字情報部形成工程を独立して説明しているが、数字情報部114が凹部からなる場合には、数字情報部形成工程と識別用素子形成工程と同時に行ってもよいし、数字情報部形成工程と水晶片部形成工程と同時に行ってもよいし、数字情報部形成工程、識別用素子部形成工程および水晶片部形成工程を同時に行ってもよい。
第二金属パターンは、例えば、金、銀、金を主成分とする金属または銀を主成分とした金属からなっており、識別用素子部111との間に下地層として、ニッケル、クロム、チタン、ニクロムのいずれか一つからなる金属が用いられた積層構造となっている。
本実施形態では、数字情報部114が第二金属パターンから構成されている場合には、数字情報部114をフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて形成することで、数字情報部114を蒸着技術またはスパッタリング技術を用いて形成する場合と比較して、精度よく形成することができる。従って、数字情報部114をフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて形成することで、より数字情報部114を小さくすることが可能となり、数字情報部114が形成される識別用素子部111を小さくすることができる。この結果、識別用素子部111を小さくすることができるので、識別用素子部111を形成することにより水晶ウエハ110の強度が弱くなることを低減させることが可能となる。また、識別用素子部111を小さくすることができるので、より識別用素子部111を水晶ウエハ110内に数多く形成することが可能となり、組合せの種類が増やすことができ、同じ識別用素子部111の数でより数多くロット管理番号を表すことができ、生産性を向上させることが可能となる。
数字情報部114が、識別用素子部111に形成された凹部からなる場合には、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いることで、識別用素子部形成工程と同時に形成することができ、生産性を向上させることができる。また、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いることで、レーザー等の装置を用いて研削した場合のように、研削屑が発生しないので、研削屑が付着し水晶ウエハ110に形成される水晶素子120の周波数が変動し周波数ずれによる不良を低減させることができ、生産性を向上させることができる。
数字情報部114は、例えば、金属材料からなる第二金属パターンから構成されている。このように、金属材料からなる第二金属パターンを用いることで、金属材料からなる第二金属パターンと水晶部材からなる識別用素子部111との反射率が異なるので、光の反射率を利用し識別しているレーザー識別装置等で数字情報部114を確実に認識させることが可能となる。従って、数字情報部114を第二金属パターンから構成させることで、識別用素子部111が水晶片121と比較し小さい場合であっても、
光の反射率を利用し識別しているレーザー識別装置等で確実に認識させることができ、高いトレーサビリティを得ることが可能となる。
数字情報部114には、数値の“2”の累乗数が表示されている。本実施形態では、例えば、図5に示したように、水晶ウエハ110に識別用素子部111が10個形成されており、数値の“2”の0乗である数値の“1”、数値の“2”の1乗である数値の“2”、数値の“2”の2乗である数値の“4”、数値の“2”の3乗である数値の“8”、数値の“2”の4乗である数値の“16”、数値の“2”の5乗である数値の“32”、数値の“2”の6乗である数値の“64”、数値の“2”の7乗である数値の“128”、数値の“2”の8乗である数値の“256”、数値の“2”の9乗である数値の“512”が表示されている。このように数字情報部114に数値の“2”の累乗数を表示することで、水晶ウエハ110に識別用素子部111に、数値の“0”、数値の“1”、数値の“2”、数値の“3”、数値の“4”、数値の“5”、数値の“6”、数値の“7”、数値の“8”、数値の“9”が表示されている場合と比較して、組合せ数を増やすことができる。この結果、水晶ウエハ110に形成する識別用素子部111の数量を少なくすることができるので、識別用素子部111を形成することによる水晶ウエハ110の強度が弱くなることを低減させることができ、水晶ウエハ110の破損を低減させ生産性を向上させることが可能となるまた、数値の“2”の累乗数とすることで、組合せの種類が増やすことができ、同じ識別用素子部111の数でより数多くロット管理番号を表すことができ、生産性を向上させることが可能となる 。
数字情報部形成工程において、識別用素子部111に数字情報部114を形成することで、複数個形成されている識別用素子部111にそれぞれ別々の意味を持たせることが可能となる。従って、数字情報部114により、それぞれの識別用素子部111の有する数字情報を水晶ウエハ110から確認することが可能となる。
(ウエハ識別工程)
ウエハ識別工程は、複数あるうちの所定の識別用素子111を折り取り、または、切断し、水晶ウエハ110を識別するための工程である。ウエハ識別工程では、まず、所定の識別用素子111が折り取られ、次に、水晶ウエハ110に連結されている識別用素子部111に形成されている数字情報部114の和が算出され、最後に、10進法となっている数字情報部114の和を、2進法表示に変換する。この2進法表示に変換された数値がロット管理番号となる。
ウエハ識別工程を、具体例を挙げて説明する。ウエハ識別工程前の水晶ウエハには、10個の識別用素子部111が形成されており、この識別用素子部111には、数値の“2”の累乗数が表示されている。従って、識別用素子部111には、数値の“1”、数値の“2”、数値の“4”、数値の“8”、数値の“16”、数値の“32”、数値の“64”、数値の“128”、数値の“256”、数値の“612”が表示されている。まず、所定の識別用素子部111、例えば、図6に示したように、数値の“2”および数値の“64”が表示されている識別用素子部111が折り取られる。次に、水晶ウエハ110に連結されている残りの識別用素子部111に形成されている数字情報部114の和を算出すると、その和は、“948”となる。最後に、この10進法で表現されている“948”を2進法表示に変換する。10進法で表現されている“948”を2進法に変換すると、“1110111101”となるので、この“1110111101”がロット管理番号となる。
ウエハ識別工程では、複数あるうち所定の識別用素子部111を折り取り、または、個片化することで、水晶ウエハ110に連結されている残りの識別用素子部111を用いて、ロット管理番号としている。このため、識別用素子部111の数字情報部114に数値の“2”の累乗数を表示することで、水晶ウエハ110に連結されている残りの識別用素子部111に表示されている数字情報部114の和が同じ番号となることを避けることができる。従って、折り取り、または、切断する識別用素子部111を選択することで、10進法から2進法に変換した際の番号が必ず異なることとなり、ロット管理番号として用いることができる。
(水晶片部形成工程)
水晶片部形成工程は、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、水晶ウエハ110の所定の位置に、略矩形形状の平板状に形成しつつ、主面の所定の一辺側に固定されている水晶片部を形成する工程である。ここで、水晶片部は、個片化されると水晶片121(図1参照)となるので、水晶片121と同じ符号を付して説明をする。水晶片部形成工程では、図7に示したように、水晶ウエハ110の育成部110bに水晶片部貫通孔116が形成され、平面視して、略矩形形状の水晶片部121が水晶ウエハ110の育成部110bに形成される。
ここで、水晶片部形成工程について、具体例を挙げて説明する。水晶片部形成工程では、まず、水晶ウエハ110の表面に、金属膜が形成され、この金属膜上に感光性レジストが塗付される。次に、この感光性レジストに光を照射し、所定のパターン、例えば、水晶片部貫通孔116となる部分に光を照射し、所定のパターンとなる部分の感光性レジストを変質させる。その後、所定のパターンとなる部分の水晶ウエハ110が露出するように所定のパターンの感光性レジストおよび金属膜を剥離し現像し、所定のエッチング液に浸漬させて、露出している水晶ウエハ110の部分をエッチングする。最後に、水晶ウエハ110の表面に残留している感光性レジストおよび金属膜を剥離させる。このようにして、水晶ウエハ110に水晶片部121を形成している。
水晶片部貫通孔116は、例えば、図7に示したように、第一水晶片部貫通孔116aと第二水晶片部貫通孔116bとからなる。第一水晶片部貫通孔116aは、水晶片部121の三辺の縁部に沿って形成されている。第二水晶片部貫通孔116bは、第一水晶片部貫通孔116aが形成されていない水晶片部121の一辺の縁部に沿って形成されている。このとき、第一水晶片部貫通孔116aと第二水晶片部貫通孔116bとは連結されておらず、第二水晶片部貫通孔116bが形成されている水晶片部121の一辺の両端部が一対の水晶片部連結腕115によって水晶ウエハ110に連結された状態となっている。従って、水晶片部形成工程後の水晶ウエハ110は、図7に示したように、平面視すると、水晶ウエハ110の育成部110bに水晶片部121が形成されており、水晶片部121の所定の一辺の両端部が水晶片部連結腕115により水晶ウエハ110に連結され保持されている状態となっている。つまり、水晶片部形成工程では、形成された水晶片部121を容易に折り取りまたは切断することができる構成となっている。
なお、本実施形態では、第一水晶片部貫通孔116aおよび第二水晶片部貫通孔116bを形成することで、一対の水晶片部連結腕115により水晶片部121を水晶ウエハ110に連結させた状態にしているが、水晶片部121の所定の一辺側で水晶ウエハ110に連結させた状態にすることができれば、例えば、水晶片部貫通孔を形成し一つの水晶片部連結腕により水晶ウエハ110に連結させてもよいし、水晶片部貫通孔を形成し水晶片部121の所定の一辺と水晶ウエハ110とを連結させてもよい。
また、本実施形態では、水晶片部形成工程と識別用素子部形成工程とを別々に分けて説明しているが、水晶片部形成工程と識別用素子部形成工程とを同時に行ってもよい。
(第一金属パターン形成工程)
第一金属パターン形成工程は、前記水晶片部121の所定の位置に、励振電極部123および引出部124からなる第一金属パターン122を形成する工程である。第一金属パターン形成工程では、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いられる。なおここで、第一金属パターン形成工程で、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いている場合について説明しているが、蒸着技術、または、スパッタリング技術を用いてもよい。
ここで、第一金属パターン形成工程について、具体例を挙げて説明する。第一金属パターン形成工程では、まず、水晶ウエハ110の表面に、第一金属パターンを構成する金属膜と同じ金属膜、例えば、ニッケル、クロム、チタン、ニクロムのいずれか一つを含む金属膜上に、金、銀、金を主成分とする金属、銀を主成分とする金属のいずれか一つを含む金属膜が積層されている金属膜、形成される。次に、この金属膜上に感光性レジストが塗付され、所定のパターン、具体的には、第一金属パターン122となる部分に光が照射され、感光性レジストが変質させ、現像を行い、露出している金属膜を剥離させる。最後に、残留している感光性レジストを除去することで、水晶片部121に所定のパターンの金属膜、つまり、第一金属パターン122が形成される。なお、本実施形態では、第一金属パターン形成工程を独立して行った場合について説明しているが、数字情報部122が第二金属パターンから構成されている場合には、第一金属パターン形成工程と数字情報部形成工程とを同時に行ってもよいし、位置情報部125が第三金属パターンから構成されている場合には、第一金属パターン形成工程と位置情報部形成工程とを同時に行っても良いし、第一金属パターン形成工程、数字情報部形成工程および位置情報部形成工程を同時におこなってもよい。
第一金属パターン122は、例えば、金、銀、金を主成分とした金属または銀を主成分とした金属からなっており、水晶片部121との間に下地層として、ニッケル、クロム、チタン、ニクロムのいずれか一つからなる金属が用いられた積層構造となっている。また、第一金属パターン122は、励振電極部123と引出部124とから構成されている。
励振電極部123は、一対となっており、水晶片部121の両主面に互いが対向するように形成されている。また、引出部124は、一端が励振電極部123に接続されており、他端が水晶片部121の端部に位置するように形成されている。
(位置情報部形成工程)
位置情報部形成工程は、水晶片部121の主面の所定の一辺の縁部に、水晶ウエハ110内の水晶片部121の位置情報を示す位置情報部125を形成する工程である。また、位置情報部125は、第三金属パターンから構成されており、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術により形成されている。このように位置情報部125を水晶片部121に形成することで、水晶ウエハ110内での位置まで追跡することが可能となり、より高いトレーサビリティを得ることができる。
ここで、位置情報部125が第三金属パターンからなる場合に位置情報部形成工程について、具体例を挙げて説明する。まず、水晶ウエハ110の表面に、金属膜が形成され、この金属膜上に感光性レジストが塗付される。次に、この感光性レジストに所定のパターンとなる部分、具体的には、位置情報部125の数値となる部分に光を照射し、感光性レジストを変質させる。次に、所定のパターンとなる部分の感光性レジストが残留するように現像し、露出している金属膜を剥離させる。最後に、残っている感光性レジストを除去することで、位置情報部125を形成している。
位置情報部125は、前述したように、金属材料からなる第三金属パターンから構成されている。金属材料からなる第三金属パターンと水晶部材からなる水晶片部121との反射率が異なるので、光の反射率を利用し識別しているレーザー識別装置等で位置情報部125を確実に認識させることが可能となる。従って、位置情報部125を第三金属パターンから構成させることで、位置情報部125をより小さくすることができ、位置情報部125が目視できないほど小さくとも、光の反射率を利用し識別しているレーザー識別装置等で確実に認識させることができ、高いトレーサビリティを得ることが可能となる。
(個片化工程)
個片化工程は、水晶ウエハ110に形成されている水晶片部121の主面の所定の一辺側を折り取り、または、切断し、水晶片121となる部分を個片化する工程である。個片化工程前の水晶ウエハ110は、励振電極部123および引出部124からなる第一金属パターン122が形成されている水晶片部121が、水晶片部121の所定の一辺の両端部が一対の水晶片部連結腕116によって水晶ウエハ110に連結されている状態となっている。個片化工程では、水晶片部121となる部分ごとに個片化され、第一金属パターン122が形成されている水晶片121、つまり、水晶素子120が形成される。
本実施形態に係る水晶素子120の製造方法では、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有した平板状の水晶ウエハ110を形成する水晶ウエハ形成工程と、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、水晶ウエハ110の所定の位置に、一部分が固定されている識別用素子部111を複数形成する識別用素子部形成工程と、複数あるうちの所定の識別用素子部111を折り取り、または、切断し水晶ウエハ110を識別する水晶ウエハ識別工程と、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、水晶ウエハ110の所定の位置に、略矩形形状の平板状に形成しつつ、主面の所定の一辺側で固定されている水晶片部121を形成する水晶片部形成工程と、水晶片部121の所定の位置に、励振電極部123および引出部124からなる第一金属パターン122を形成する第一金属パターン形成工程と、水晶ウエハ110に形成されている水晶片部121の主面の所定の一辺側を折り取り、または、切断し、水晶片121となる部分を個片化する個片化工程と、からなる。
従って、本発明に係る水晶素子の製造方法では、従来の水晶素子の製造方法のように、レーザーを照射し複数の溝部を設ける必要がないため、レーザーが水晶ウエハの端部へ照射されることで破損した水晶ウエハ110の一部が、水晶片121となる部分に付着することを低減させることが可能となる。このため、本発明に係る水晶素子の製造方法では、レーザーが照射されることで破損した水晶ウエハ110の一部が水晶片121となる部分に付着し、水晶素子120の周波数が所定の周波数から変動する周波数ずれによる不良を低減させることができる。よって、本発明に係る水晶素子の製造方法は、従来の水晶素子の製造方法と比較し、生産性を向上させることが可能となる。また、本発明に係る水晶素子の製造方法では、キャリアケースを用いることなく、容易に水晶ウエハを識別することが可能となり、キャリアケースへ出し入れする際に、水晶ウエハ110に異物が付着することを低減させることができる。このため、本発明に係る水晶素子の製造方法では、水晶ウエハ110に異物が付着し、異物の付着により水晶素子120の周波数が所定の周波数から変動する周波数ずれによる不良を低減させることができる。よって、本発明に係る水晶素子の製造方法は、従来の水晶素子の製造方法と比較し、水晶素子120の生産性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態に係る水晶素子の製造方法は、識別用素子部111にそれぞれ別々の数字情報部114を形成する数字情報部形成工程を、備えている。このように識別用素子部111に数字情報部114を形成することで、複数個ある識別用素子部111のそれぞれに数値情報を持たせることができ、それぞれの識別用素子部111の有する数値情報を数値情報部114により確認することができる。従って、本実施形態に係る水晶素子の製造方法のウエハ識別工程において、折り取りまたは切断する識別用素子部111を選択することによって、水晶ウエハ110に連結されている識別用素子部111の数値情報が異なることとなり、連結されている識別用素子部111の数値情報から水晶ウエハ110を容易に管理すること可能となる。また、数値情報部114が識別用素子部114に形成されていることから、所定の識別用素子部111を折り取りまたは切断し、水晶ウエハ110に連結されている残りの識別用素子部111を確認することで、水晶ウエハ110の数字情報(管理番号)を容易に確認することが可能となる。この結果、水晶ウエハ識別工程後の水晶ウエハ110を確認することで、水晶ウエハ110の数字情報を容易に確認することが可能となり、生産性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、数字情報部形成工程において形成される数字情報部に、数値の“2”の累乗数が表示されている。従って、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、ウエハ識別工程において複数あるうちの所定の識別用素子部111を折り取りまたは切断し水晶ウエハ110に連結されている残りの識別用素子部111の数字情報部114を、水晶ウエハ110の数字情報としているので、折り取りまたは切断される識別用素子部111の組合せを2進法にあてはめることにより、水晶ウエハ110に連結されている残りの識別用素子部111の数字情報部114の和が同じにならないようにすることができる。このため、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、ウエハ識別工程において、折り取りまたは切断する識別用素子部111を選択することで、それぞれ異なる水晶ウエハ110の数字情報を付与することが可能となる。この結果、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、折り取りまたは切断する識別用素子部111を選択することで、水晶ウエハ110のロット管理番号とすることが可能となり、トレーサビリティを高めることができ、生産性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、数字情報部114を、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって形成している。従って、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、蒸着技術またはスパッタリング技術を用いて数字情報部114を形成した場合と比較して、精度よく、かつ、小さく形成することができる。このため、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、数字情報部114が形成される識別用素子部111をより小型化することができ、水晶ウエハ110に形成する識別用素子部111の面積が小さくなり、識別用素子部110を形成することによる水晶ウエハ110の強度が弱くなることを低減させることが可能となる。この結果、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、各工程において水晶ウエハ110の破損を低減させることができ、生産性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、数字情報部114が形成される識別用素子部111をより小型化することができるので、水晶ウエハ110内に形成する識別用素子部111の数量を増やすことも可能となる。従って、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、水晶ウエハ110内に形成される識別用素子部111の数量を増えることにより組合せの種類を増やし、ロット管理番号を大きくすることができるようになる。このため、識別用素子部形成工程において、所定のパターンの部分に光を照射する際に使用するフォトマスク等の治工具を、組合せパターンが多いので、より共通して使用することが可能となり、生産性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る水晶素子の製造方法は、数字情報部114が第二金属パターンから構成されている。従って、本実施形態に係る水晶素子の製造方法は、数字情報部114に金属材料が用いることとなり、数字情報部114が形成される識別用素子部111に用いられる水晶部材と反射率を異なるようにすることができるので、光の反射率を利用し識別しているレーザー識別装置等で、数字情報部114をより確実に認識させることが可能となる。このため、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、数字情報部114を第二金属パターンから構成させることで、数字情報部114が形成される識別用素子部111をより小型化することができる。この結果、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、識別用素子部111が小さく数字情報部114が小さくても、光の反射率を利用し識別しているレーザー識別装置等で確実に認識させることができ、高いトレーサビリティを得ることが可能となる。
また、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、数字情報部114に金属材料を用いることでより高精度に読み取りさせることができ、その結果、数字情報部114を小さくすることができるので、識別用素子部111を小さくすることができ、識別用素子部111を形成することによる水晶ウエハ110の強度が弱くなることを低減させることができ、生産性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、水晶ウエハ110の種水晶であった部分(種水晶部110a)に識別用素子部111を形成している。従って、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、水晶ウエハ110が種水晶部110aと育成部110bとからなることとなり、水晶ウエハ形成工程において水晶ウエハを形成する際に種水晶であった部分ごと切断することが可能となる。このため、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、水晶ウエハ110の主面の大きさを、より大きくすることができ、水晶ウエハ110から形成することができる水晶片121、ひいては水晶素子120の数量を多くすることが可能となり、生産性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、水晶ウエハ110の種水晶部110aに識別用素子部111が形成される。従って、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、水晶ウエハ110の種水晶部110aと育成部110bとでは透過特性や振動特性が異なることから、識別用素子部111を水晶素子120として使用しない種水晶部110aに形成し、水晶片部121を育成部110bに形成することで、水晶片121の透過統制や振動特性のばらつきを抑えつつ、識別用素子部111を形成しても水晶片121、ひいては、水晶素子120の形成される数量が減少することを低減させることができ、生産性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、識別用素子部111を水晶ウエハ110の中央部に形成している。従って、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、水晶ウエハ110の全面に、水晶片部121を形成する場合と比較して、水晶ウエハ110の強度を向上させることが可能となる。このため、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、各工程において水晶ウエハ110が破損することを低減させることができ、生産性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、水晶ウエハ110の中央部に識別用素子部111を形成することで、種水晶部110aが水晶ウエハ110の中央部に位置してもよいこととなり、ランバード人工水晶を切断する際の水晶ウエハ110の主面の大きさをより大きくすることが可能となる。この結果、水晶ウエハ110から形成する水晶片121の数量を多くすることができ、一回の製造でより多くの水晶素子120を製造することが可能となり、生産性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る水晶素子の製造方法は、水晶片部121の主面の所定の一辺の縁部に、水晶ウエハ110内の水晶片部121の位置情報を示す位置情報部125を形成する位置情報部形成工程を備えている。従って、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、このように位置情報部125を水晶片部121に形成することで、水晶ウエハ110内での位置まで追跡することが可能となり、より高いトレーサビリティを得ることができる。
また、本実施形態に係る水晶素子の製造方法は、位置情報部125が、第三金属パターンから構成されている。従って、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、第三金属パターンから構成されている位置情報部125と水晶部材からなる水晶片部121との反射率が異なるので、光の反射率を利用し識別しているレーザー識別装置等で位置情報部125を確実に認識させることが可能となる。このため、本実施形態に係る水晶素子の製造方法では、位置情報部125を第三金属パターンから構成させることで、位置情報部125をより小さくすることができ、位置情報部125が目視できないほど小さくとも、光の反射を利用し識別しているレーザー識別装置等で確実に認識させることができ、高いトレーサビリティを得ることが可能となる。
なお、本実施形態では、水晶片が直方体形状となっている場合について説明しているが、平面視して、水晶片が略矩形形状となっていれば、例えば、水晶片の中央部の上下方向(水晶片の一方の主面から水晶片の他方の主面に向かう向き)の厚みが厚くなっていてもよいし、水晶片の中央部の上下方向の厚みが薄くなっていてもよいし、水晶ウエハに連結されている水晶片の所定の一辺側の上下方向の厚みが厚くなっていてもよい。