JP6441526B2 - Tie2活性化剤、血管の成熟化剤、及び血管の安定化剤、並びにTie2活性化用経口組成物 - Google Patents
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例えば、血管再生医療においては、Tie2の活性化により、血管における血管内皮細胞と血管壁細胞との接着を誘導して、血管を成熟化させることが知られている。
例えば、腫瘍や糖尿病性網膜症などで観察される血管壁細胞が血管内皮細胞に接着しないことによる無秩序な血管が増生するような疾患においては、Tie2の活性化により、血管壁細胞を内皮細胞に接着させ、血管を正常化させることが知られている。
このようなTie2の活性化により血管新生を抑制する天然物としては、桂皮の抽出物などが提案されている(特許文献1参照)。しかし、この提案の桂皮の抽出物のTie2活性では不十分である。また、血管新生を抑制する物質としては、例えば、スラミン(ポリスルホン化ナフチルウレア化合物)が知られている(特許文献2参照)。しかし、このスラミンは、合成品であり、安全性に劣るという問題がある。
本発明は、優れた血管新生抑制作用を有し、かつ安全性の高い血管新生抑制剤を提供することを目的とする。
本発明は、優れた血管の成熟化作用、血管の正常化作用、及び血管の安定化作用を有し、かつ安全性の高い血管の成熟化剤、血管の正常化剤、又は血管の安定化剤を提供することを目的とする。
本発明は、優れたTie2活性化作用、血管新生抑制作用、血管の成熟化作用、血管の正常化作用、及び血管の安定化作用の少なくともいずれかの作用を有し、かつ安全性の高い医薬品組成物を提供することを目的とする。
<1> ケイカの抽出物、アクテオシド、ボダイジュの抽出物及びマロニエの抽出物から選択される少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とするTie2活性化剤である。
<2> ケイカの抽出物、アクテオシド、ボダイジュの抽出物及びマロニエの抽出物から選択される少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする血管新生抑制剤である。
<3> ケイカの抽出物、アクテオシド、ボダイジュの抽出物及びマロニエの抽出物から選択される少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする血管の成熟化剤、血管の正常化剤、又は血管の安定化剤である。
<4> 前記<1>に記載のTie2活性化剤、前記<2>に記載の血管新生抑制剤、及び前記<3>に記載の血管の成熟化剤、血管の正常化剤、又は血管の安定化剤から選択される少なくともいずれかを含有することを特徴とする医薬品組成物である。
本発明の血管新生抑制剤によると、前記従来における諸問題を解決することができ、優れた血管新生抑制作用を有し、かつ安全性の高い血管新生抑制剤を提供することができる。
本発明の血管の成熟化剤、血管の正常化剤、又は血管の安定化剤によると、前記従来における諸問題を解決することができ、優れた血管の成熟化作用、血管の正常化作用、及び血管の安定化作用を有し、かつ安全性の高い血管の成熟化剤、血管の正常化剤、又は血管の安定化剤を提供することができる。
本発明の医薬品組成物によると、前記従来における諸問題を解決することができ、優れたTie2活性化作用、血管新生抑制作用、血管の成熟化作用、血管の正常化作用、及び血管の安定化作用の少なくともいずれかの作用を有し、かつ安全性の高い医薬品組成物を提供することができる。
本発明のTie2活性化剤、血管の成熟化剤、血管の正常化剤、血管の安定化剤、及び血管新生抑制剤は、ケイカの抽出物、アクテオシド、ボダイジュの抽出物及びマロニエの抽出物から選択される少なくとも1種を有効成分として含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記ケイカ(桂花)は、モクセイ科モクセイ属に属する常緑小高木であり、学名は、Osmanthus fragrans var. aurantiacusであり、日本名:キンモクセイと呼ばれ、中国南部が原産地であり、このような地域から容易に入手することができる。
前記ケイカの抽出部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、果実部、花部等の地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、花部が好ましい。
ここで、「花」とは、一般に、種子植物の有性生殖にかかわる器官の総体をいい、葉の変形である花葉と茎の変形である花軸とから構成され、花葉には、萼、花弁、雄しべ、心皮等の器官が含まれる。本発明において抽出原料として使用する「花部」には、種子植物の有性生殖にかかわる器官の総体の他、その一部、例えば、花葉、花被(萼と花冠)、花冠、花弁等も含まれる。
前記ケイカの抽出部位の調製方法としては、そのまま又は粗砕機を用い粉砕して溶媒抽出に供することにより得ることができる。
前記アクテオシド(Acteoside)は、下記構造式(I)で表される化学構造を有するポリフェノール化合物である。
前記ボダイジュは、シナノキ科の落葉樹であり、学名は、Tilia cordataであり、別名シナノキとも呼ばれる。前記ボダイジュは、ヨーロッパに広く分布しており、これらの地域から容易に入手することができる。
前記ボダイジュの抽出部位の調製方法としては、そのまま又は粗砕機を用い粉砕して溶媒抽出に供することにより得ることができる。
前記マロニエは、トチノキ科トチノキ属の落葉広葉樹であり、学名は、Aesculus hippocastanumであり、「セイヨウトチノキ」とも言われる。前記マロニエは、世界各地で栽培されており、これらの地域から容易に入手可能である。
前記マロニエの抽出部位の調製方法としては、そのまま又は粗砕機を用い粉砕して溶媒抽出に供することにより得ることができる。
前記ケイカの抽出物、前記ボダイジュの抽出物、及び前記マロニエの抽出物は、植物の抽出に一般に用いられる方法を利用することによって、容易に得ることができる。また、前記ケイカの抽出物、前記ボダイジュの抽出物、及び前記マロニエの抽出物としては、市販品を使用してもよい。なお、前記ケイカの抽出物、前記ボダイジュの抽出物、及び前記マロニエの抽出物には、前記ケイカ、前記ボダイジュ、及び前記マロニエの抽出液、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又は、これらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水などが挙げられる。
前記水と前記親水性溶媒との混合溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、低級アルコールを使用する場合は、水10質量部に対して1質量部〜90質量部、低級脂肪族ケトンを使用する場合は、水10質量部に対して1質量部〜40質量部、多価アルコールを使用する場合は、水10質量部に対して1質量部〜90質量部、添加することが好ましい。なお、前記抽出溶媒は、室温乃至溶媒の沸点以下の温度で用いることが好ましい。
これらの中でも、前記としては、水、含水エタノールが好ましい。
具体的には、前記ケイカの抽出物、前記ボダイジュの抽出物、及び前記マロニエの抽出物の抽出方法としては、例えば、エタノール水溶液などの前記溶媒を満たした処理槽に、前記ケイカ、前記ボダイジュ、及び前記マロニエの抽出原料を投入し、必要に応じて適宜攪拌しながら、還流抽出器で80℃にて2時間加熱抽出し、熱時濾過して脂溶性成分を溶出した後、エバポレーターを用いて減圧下で濃縮し、更に同様の濾過処理を行う方法が挙げられる。
この際、抽出条件は、前記抽出原料などに応じて適宜調整し得るが、前記抽出溶媒量は、前記抽出原料に対して5倍量〜20倍量(質量比)が好ましく、抽出時間は1時間〜3時間が好ましく、抽出温度は20℃〜95℃が好ましい。
また、得られた前記ケイカの抽出物、前記ボダイジュの抽出物、及び前記マロニエの抽出物は、そのままでも前記Tie2活性化剤、前記血管新生抑制剤、前記血管の成熟化剤、前記血管の正常化剤、及び前記血管の安定化剤のいずれかとして使用することができるが、利用しやすい点で、前記濃縮液、前記乾燥物が好ましい。前記乾燥物を得るに当たって、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリンなどのキャリアーを加えてもよい。
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定化剤、矯味剤、矯臭剤、などが挙げられる。
前記アクテオシドは、アクテオシドを含有する植物抽出物(例えば、ケイカ(桂花)の抽出物)から単離・精製することにより製造することができる。このようなアクテオシドを含有する植物抽出物は、上述したとおりである。
得られた抽出液、当該抽出液の濃縮物又は当該抽出液の乾燥物からアクテオシドを単離・精製する方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、植物抽出物を、シリカゲルやアルミナ等の多孔質物質、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やポリメタクリレート等の多孔性樹脂等を用いたカラムクロマトグラフィーに付して、水、アルコールの順で溶出させることで、アルコールで溶出される画分としてアクテオシドを得ることができる。
カラムクロマトグラフィーにて溶出液として用いられるアルコールは、特に限定されるものではなく、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール又はそれらの水溶液等が挙げられる。さらに、カラムクロマトグラフィーにより得られたアルコール画分を、ODSを用いた逆相シリカゲルクロマトグラフィー、再結晶、液−液向流抽出、イオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィー等の任意の有機化合物精製手段を用いて精製してもよい。
また、本発明のTie2活性化剤、血管の成熟化剤、血管の正常化剤、血管の安定化剤、及び血管新生抑制剤は、消化管で消化されるようなものではないことが確認されているので、美容用飲食品、健康用飲食品などの飲食品として好適に用いることができ、その配合量、用法、及び剤型としては、その使用目的に応じて適宜選択することができる。
本発明の医薬品組成物は、上述した本発明のTie2活性化剤、血管新生抑制剤、血管の成熟化剤、血管の正常化剤、及び血管の安定化剤の少なくともいずれかを含有し、更に必要に応じて医薬品に通常使用される添加剤を含有してもよい。
また、本発明の医薬品組成物は、消化管で消化されるようなものでないことが確認されているため、美容用飲食品、健康用飲食品等の飲食品として、幅広く用いることができる。
−アクテオシドの製造−
桂花エキスパウダー(丸善製薬株式会社製)8.9gをクロロホルム/メタノール/水=10:5:1の混合溶液に溶解し、シリカゲル(商品名:シリカゲル60,メルク社製)を充填したガラス製のカラム上部より流入して、シリカゲルに吸着させた。ガラス製のカラムに移動層としてクロロホルム/メタノール/水=10:5:1を流し、その溶出液を集め、溶媒を留去して、精製物(2.5g)を得た。
[M−H]− m/z 623(理論値:C29H36O15−H=623)
[M+Na]+ m/z 647(理論値:C29H36O15+Na=647)
6.69(1H,d,J=2.0Hz,H−2),6.67(1H,d,J=8.1Hz,H−5),6.55(1H,dd,J=2.0,8.1Hz,H−6),2.78(2H,t−like,H−7),4.01(1H,overlapped,H−8a),3.70(1H,overlapped,H−8b),7.05(1H,d,J=2.2Hz,H−2’),6.77(1H,d,J=8.3Hz,H−5’),6.94(1H,dd,J=2.2,8.3Hz,H−6’),7.58(1H,d,J=15.9Hz,H−7’),6.27(1H,d,J=15.9Hz,H−8’),4.36(1H,d,J=7.8Hz,GlcH−1),3.39(1H,dd,J=7.8,8.1Hz,Glc H−2),3.80(1H,br.t,J=9.0Hz,Glc H−3),4.88(1H,br.t,J=9.2Hz,Glc H−4),3.58(1H,overlapped,Glc H−5),3.48(2H,overlapped,Glc H−6),5.18(1H,br.s,Rha H−1),3.9 (1H,m,Rha H−2),3.58(2H,overlapped,Rha−H−3andRha H−5),3.30(1H,overlapped,Rha−H−4),1.08.(3H,d,J=6.1Hz,Rha H−6)
131.1(s,C−1),116.1(d,C−2),146.5(s,C−3),144.3(s,C−4),116.8(d,C−5),121.0(d,C−6),36.4(t,C−7),72.0(t,C−8),127.3(s,C−1’),114.9(d,C−2’),145.8(s,C−3’),149.4(s,C−4’),116.2(d,C−5’),122.9(d,C−6’),147.7(d,C−7’),114.4(d,C−8’),167.9(s,C−9’),103.9(d,Glc C−1), 75.9(d,Glc C−2), 81.4(d,Glc C−3),70.7(d,Glc C−4),75.8(d,Glc C−5),62.1(t,Glc C−6),102.7(d,Rha C−1),72.1(d,Rha C−2),71.8(d,Rha C−3),73.5(d,Rha C−4),70.2(d,RhaC−5),18.3(q,Rha C−6)
−ELISA法によるTie2活性化促進作用試験(ケイカ(桂花)の抽出物)−
コンフルエントまで培養した正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を、96ウェルプレートへ2.0×104細胞/0.1mL/ウェルとなるように播種し、低血清血管内皮細胞増殖用培地(倉敷紡績株式会社製、Humedia−EG2)を用いて一晩培養した。次に、一晩培養後の前記HUVECを、細胞刺激(被験試料添加)の3時間前に0.1mLの血管内皮細胞基礎培地(倉敷紡績株式会社製、Humedia−EB2)に置換し、再度培養を行った。その後、前記ウェル内に、被験試料として前記Humedia−EB2で表1に記載の濃度に調製した桂花エキスパウダー(丸善製薬株式会社製)を0.1mL添加し、20分間のインキュベーションを行った。インキュベーション後、イムノアッセイキット(R&D Systems社製、Human Phospho−Tie2(Y992)Immunoassay)を用いてプロトコールに従い、細胞内のリン酸化型Tie2量を測定した。
また、陰性コントロールとして被験試料の溶解に用いたジメチルスルホキシド(DMSO)についても、同様にしてリン酸化型Tie2量を測定した。
そして、下記式(1)に従い、Tie2活性化促進率を計算し、リン酸化作用を評価した。結果を表1に示した。
−ELISA法によるTie2活性化促進作用試験(アクテオシド)−
実施例1において、前記桂花エキスパウダーを、製造例1のアクテオシドに変更し、表1に記載の濃度を用いた以外は、実施例1と同様にして、Tie2リン酸化作用を評価した。結果を表1に示す。
−ELISA法によるTie2活性化促進作用試験(ボダイジュの抽出物)−
実施例1において、前記桂花エキスパウダーを、ボダイジュエキス(丸善製薬株式会社製)に変更し、表1に記載の濃度を用いた以外は、実施例1と同様にして、Tie2リン酸化作用を評価した。結果を表1に示す。
−ELISA法によるTie2活性化促進作用試験(マロニエの抽出物)−
実施例1において、前記桂花エキスパウダーを、マロニエ抽出液の凍結乾燥品(丸善製薬株式会社製)に変更し、表1に記載の濃度を用いた以外は、実施例1と同様にして、Tie2リン酸化作用を評価した。結果を表1に示す。
−ウエスタンブロッティング法によるTie2活性化促進作用試験(マロニエの抽出物)−
マウスpro−B細胞(Ba/F3)にhuman Tie2(Ba/F3−human Tie2)を過剰発現させた細胞をTie2リン酸化解析に用いた。被験試料によるBa/F3−human Tie2の刺激は、FBSを含まないRPMI−1640培地(SIGMA−ALDRICH社製)で溶解した被験試料としてのマロニエ抽出液の凍結乾燥品(丸善製薬株式会社製)を添加して10分間後に細胞をPBSで洗浄した後、PhosphoSafeTMExtraction Reagent(Novagen社製)にて細胞抽出液を回収した。これを7.5%SDSゲルにて電気泳動し、PVDF膜に転写した。ブロッキングone−P(ナカライテスク社製)で60分間非特異的蛋白をブロックした後、抗リン酸化Tie2抗体(Cell Signaling Technology社製)及びHRP標識2次抗体を用いてリン酸化型Tie2のバンドを検出した。また、陰性コントロールとして被験試料の溶解に用いたジメチルスルホキシド(DMSO)についても、同様にリン酸化型Tie2のバンドを検出した。バンドの検出及び解析は、画像撮影装置ChemiDoc XRS Plus(Bio−Rad Laboratories社製)及びImage Lab Software version 2.0(Bio−Rad Laboratories社製)にて行い、下記式(2)に従って、Tie2活性化促進作用率を求めた。結果を表2に示した。
Tie2活性促進化率(%)=
[(被験試料添加時のリン酸化型Tie2のバンド強度)/(陰性コントロールでのリン酸化型Tie2のバンド強度)]×100 ・・・式(2)
また、本発明のTie2活性化剤、血管の成熟化剤、血管の正常化剤、血管の安定化剤、及び血管新生抑制剤は、消化管で消化されるようなものではないことが確認されているので、美容用飲食品、健康用飲食品などの飲食品として、幅広く用いることができる。
Claims (4)
- ボダイジュの花部の水抽出物、親水性溶媒抽出物、又は水と親水性溶媒との混合溶媒抽出物を有効成分として含有することを特徴とするTie2活性化剤。
- Tie2をリン酸化してリン酸化Tie2に変換するTie2活性化作用を有する請求項1に記載のTie2活性化剤。
- ボダイジュの花部の水抽出物、親水性溶媒抽出物、又は水と親水性溶媒との混合溶媒抽出物を有効成分として含有し、Tie2活性化作用に基づく血管の成熟化作用又は血管の安定化作用を有することを特徴とする血管の成熟化剤又は血管の安定化剤。
- 請求項1から2のいずれかに記載のTie2活性化剤を含有することを特徴とするTie2活性化用経口組成物。
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