JP6441133B2 - 超音波加工装置用工具ホーン - Google Patents

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Description

本発明は、先端に取り付けた工具を超音波振動させることで、この工具と接触するワークを加工する超音波加工装置に関し、特に超音波加工装置の超音波振動子からの超音波振動を前記工具に伝達する超音波加工装置用工具ホーンに関するものである。
従来、カッター刃等の工具を超音波振動させることで当該工具と接触するワークを容易かつ効率的に加工することのできる超音波加工装置が広く使用されている。この種の超音波加工装置は、工具を超音波振動させることで、紙、革、合成樹脂、ゴム、木材等の被切断材料等との切断抵抗を大きく低下させ、当該被切断材料等を強く押圧しなくても容易かつ効率的に切断できるという優れた機能を備える。
一般的な超音波加工装置は、超音波振動の発生源である超音波振動体を備えた超音波振動子と、ワークと直接接触する工具と、当該工具を先端部に装着し前記超音波振動子からの超音波振動を工具に伝達する工具ホーンとから構成されている。前記各構成部品は、それらの中心軸が超音波振動体の中心軸上にくるよう直列的に配置されており、これによって超音波振動体の中心軸方向に沿って、工具を含む超音波加工装置全体を効率的に伸縮・振動させる構造となっている。
ところで、上記超音波加工装置においては、その工具が、前記超音波振動体の中心軸方向に振動するだけでなく、この中心軸と直交する方向にも振動(横振れ)してしまうという現象が確認されている。そして工具の横振れが生じると、ワークの切断機能が低下したり、異音が発生したり、工具寿命が短くなったりする等の問題が生じる。
前記横振れの原因は、工具ホーン先端の工具取付部に、固定用ネジによって工具を装着した状態(工具装着状態)において、工具取付部近傍の重量配分や形状が前記中心軸に対して不均衡、特に薄板状の工具の板面(その中心面)に対してその上下の部分の重量配分や形状が非対称となることが原因であることが、本願発明者の実験によって確認されている。
この点について詳述すると、薄板状の工具は、工具ホーン先端の工具取付部に設けられたスリットに挿入され、固定用ネジを用いて締め付けられ挟持される。ここで、前記固定用ネジには、これを回転等するための頭部が設けられている。このため固定用ネジの頭部を取り付けた側が重くなり、また頭部が工具取付部の表面から突出する等のためにその形状が不均衡になる。そして重量配分や形状が不均衡な状態で、工具を所定の加速度で超音波振動させると、工具取付部の工具を挟んだその両側部分の伸縮長さが異なってしまい、この結果、工具に横振れが生じる。
前記横振れの問題を解消するために、本願特許出願人は、特許文献1において、固定用ネジの頭部内に空間領域を設け、これによって頭部の重量を軽減し、これによって前記工具取付部近傍の重量配分の不均衡状態を改善した。
特開2010−167535号公報
しかしながら、上記固定用ネジの頭部の重量を軽減するだけでは、工具取付部近傍部分の重量配分及び形状の不均衡状態を改善するのに限界があった。即ち、固定用ネジの頭部に空間領域を設けて重量配分を均衡させたとしても、この固定用ネジの頭部は工具取付部の表面から突出していて中心軸に対して対称な形状ではない。例えば固定用ネジの頭部が突出していると、超音波振動時に前記頭部が往復する際に生じる慣性力等による影響が工具取付部の伸縮長さに影響を与え、超音波振動時の全体の振動バランスを乱してしまう。
このため、工具の超音波振動による振幅(伸縮長)が比較的小さい場合は横振れも小さいので問題ないが、前記振幅を従来よりも大きくしようとしたような場合は、工具の横振れが大きくなってしまうという問題があった。振幅を大きくできないと、より厚みのあるワークの切断などができない。また超音波振動時の全体の振動バランスが精密に均一でないと、工具の材質として従来から用いられている超硬合金、ハイス鋼、ステンレス鋼等の金属材料の代りに、脆さのあるセラミック系の材料を用いたくても割れ等が発生する恐れがあるため、これを用いることができなかった。
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、超音波振動時の振動バランスを精密に均一化でき、これによって従来より超音波振動の振幅を大きくしても工具の横振れが生じず、また材質としてセラミック等からなる工具を用いても割れ等が発生しない超音波加工装置用工具ホーンを提供することにある。
本発明は、先端部に工具取付部を備え、この工具取付部に取り付けた工具に超音波振動子からの超音波振動を伝達する超音波加工装置用工具ホーンにおいて、前記工具の前記工具取付部への取り付けは、前記工具取付部の先端に設けたスリットに前記工具の一端部分を挿入すると共に、この工具取付部の前記スリットを挟んだその両側の工具取付片にそれぞれ設けた取付穴に、一方に頭部を有する固定用ネジを挿入して締め付け、これによって前記工具を前記両工具取付片で挟持して行い、前記締め付けた固定用ネジの頭部の一部は、当該頭部が存する側の前記工具取付片の表面から突出しており、一方、前記両工具取付片の内の前記固定用ネジの頭部が存する側とは反対側の工具取付片の前記取付穴を設けた位置よりもこの工具取付片の根元側の外周面に、超音波振動の振動方向に直交する方向であって且つ前記スリットの面と平行な方向に向けて溝状に切り欠くことでこの工具取付片の厚みを薄くして、この工具取付片の超音波振動方向の剛性を低下させる剛性調節部を設けることで、両工具取付片の超音波振動時の伸縮長さを同一にしたことを特徴としている。
固定用ネジの頭部が取り付く側の工具取付片と、もう一方の工具取付片とを比較した場合、前記頭部による重量増加及び頭部が突出している形状の点から、前記頭部が取り付く側の工具取付片の方が、もう一方の工具取付片よりも、超音波振動時の振動の振幅が長くなる。そこでこの発明では、頭部が取り付かない側の工具取付片に剛性調節部を設け、これによって剛性調節部を設けた部分の工具取付片の厚みを薄くしてその部分の剛性を弱くし、その分超音波振動時の振動の振幅を長くし、これによって両工具取付片の超音波振動時の伸縮長さを同一にした。これによって、従来より超音波振動の振幅を大きくしても横振れが生じず、また材質としてセラミック等からなる工具を用いても割れ等が発生しない。剛性調節部は、工具取付片の外周面を切り欠くという簡単な加工で形成でき、また容易且つ精密に工具取付片の剛性の調整を行うことができる。
また本発明は、前記スリットの根元部分にスリットの隙間寸法を大きくしてなる大径部を設け、この大径部の近傍に前記剛性調節部を設けたことを特徴としている。
また本発明は、前記剛性調節部が、前記スリットの中心面内で、前記超音波振動の振動方向に直交する方向から見て、円弧凹状に形成されていることを特徴としている。
剛性調節部を円弧凹状に形成したので、超音波振動時に、剛性調節部中の所定の部分のみに応力が集中することを防止でき、この超音波加工装置用工具ホーンの耐久性を向上することができる。また、剛性調節部は円弧状なので、その加工は容易に行える。
また本発明は、前記両工具取付片の内の前記固定用ネジの頭部が存する側の工具取付片の外周面に、前記固定用ネジの頭部を当接する面取り部を設け、この面取り部を設けた工具取付片の超音波振動時の伸縮長さと、前記剛性調節部を有する側の工具取付片の超音波振動時の伸縮長さを同一にしたことを特徴としている。
面取り部を設けることで、固定用ネジの工具取付部への取付作業を容易に行うことができる。一方、面取り部を設けた側の工具取付片は、その分、重量が軽くなるが、一方で剛性が弱くなるので、やはりもう一方の工具取付片よりも超音波振動時の伸縮長さが長くなる傾向にある。そのため、この場合も、もう一方の工具取付片に剛性調整部を設けることが効果的である。即ち、面取り部を設けることで、固定用ネジの取付作業が容易且つ確実に行えるようになると同時に、剛性調節部を設けることによって、両工具取付片の超音波振動時の伸縮長さを容易に同一にすることができる。
また本発明は、先端部に工具取付部を備え、この工具取付部に取り付けた工具に超音波振動子からの超音波振動を伝達する超音波加工装置用工具ホーンにおいて、前記工具の前記工具取付部への取り付けは、前記工具取付部の先端に設けたスリットに前記工具の一端部分を挿入すると共に、この工具取付部の前記スリットを挟んだその両側の工具取付片にそれぞれ設けた取付穴に、一方に頭部を有する固定用ネジを挿入して締め付け、これによって前記工具を前記両工具取付片で挟持して行い、さらに前記スリットの根元部分にスリットの隙間寸法を大きくしてなる大径部を設けると共に、このスリットの大径部を、前記両工具取付片の内の前記固定用ネジの頭部が存する側とは反対側の工具取付片側に張り出して、前記大径部を張り出した側の工具取付片の超音波振動方向の剛性を低下させることで、両工具取付片の超音波振動時の伸縮長さを同一にしたことを特徴としている。
これによって前記大径部を張り出した側の工具取付片の厚みを薄くしてその剛性を弱くし、その分超音波振動時の振動の振幅を長くし、これによって両工具取付片の超音波振動時の伸縮長さを同一にした。これによって、従来より超音波振動の振幅を大きくしても横振れが生じず、また材質としてセラミック等からなる工具を用いても割れ等が発生しない。
本発明によれば、超音波振動時の振動バランスを精密に均一化でき、これによって従来より超音波振動の振幅を大きくしても工具の横振れの発生を防止でき、また材質としてセラミック等からなる工具を用いても割れ等の発生を防止することができる。
超音波加工装置1−1を示す図である。 工具取付部11へのカッター刃40の取付方法を示す要部拡大側面図である。 カッター刃40の平面図である。 超音波加工装置1−1の振動状態を示す図である。 従来の超音波加工装置100の振動状態を示す図である。 超音波加工装置1−1の工具取付部11近傍部分の拡大図である。 超音波加工装置100の工具取付部11近傍部分の拡大図である。 工具ホーン10−2の工具取付部11近傍部分の要部拡大側面図である。 工具ホーン10−3の工具取付部11近傍部分の要部拡大側面図である。 工具ホーン10−4の工具取付部11近傍部分の要部拡大側面図である。 工具ホーン10−5の工具取付部11近傍部分の要部拡大側面図である。
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態にかかる超音波加工装置用工具ホーン(以下単に「工具ホーン」という)10を用いて構成された超音波加工装置1−1を示す図であり、図1(a)は側面図、図1(b)は底面図である。これらの図に示すように、超音波加工装置1−1は、工具ホーン10と、工具ホーン10の先端部に設けた工具取付部11に装着される工具(以下「カッター刃」という)40と、この工具ホーン10の前記先端部の反対側端部に連結した超音波を発生させる超音波振動子60とを具備して構成されている。なお、以下の説明において、工具ホーン10の中心軸C1方向を長手方向又は振動方向ということとする。
前記超音波振動子60は、ピエゾ圧電素子層(超音波振動体)などを備えており、前述したように、超音波振動子60の一端側が工具ホーン10と連結している。
工具ホーン10は、略円柱形状に形成され、その中央には外径寸法を先端側で細くする段部21が設けられ、さらにその先端に工具取付部11が設けられている。工具ホーン10は、例えばチタン合金からなる。チタン合金は、軽く、剛性があって伸縮し、超音波振動に対してロスの少ない金属である。
図2は、工具取付部11近傍部分の要部拡大側面図であり、工具取付部11にカッター刃40を取り付ける取付方法を示している。図2に示すように、略円柱状の工具取付部11の先端面中央には、この工具取付部11を縦割りに2つの部分に分割するように、1つのスリット12が形成されている。スリット12は、円柱形状の工具ホーン10の中心軸C1を含む平面(以下「中心面」という)と平行に形成される凹部であり、カッター刃40の厚みと略同一の幅に形成されている。ここで工具ホーン10の中心軸C1は、前記超音波振動子の中心軸と一致している。スリット12内の根元方向に向かう所定位置には、スリット12の隙間寸法を小さくしてなる工具係止部13が設けられ、さらにスリット12の根元部分には、スリット12の隙間寸法を大きくしてなる大径部15が設けられている。大径部15は、円形の貫通孔であり、スリット12の一部として工具取付部11の中央部分を貫通している。
スリット12の上下両側の部分は、それぞれ工具取付片31,33となっている。工具取付片31,33は、スリット12にカッター刃40を挿入した際にこれを上下から挟持する部分であり、前記大径部15によって所定の弾性変形ができるように構成されている。図2に示す上側の工具取付片31の表面には、円柱状の外周面の一部を平面状に切り欠いた形状の面取り部35が形成されている。面取り部35の面と、前記スリット12の面とは平行になっている。この面取り部35には、下記する固定用ネジ50の頭部53が当接する。一方、下側の工具取付片33の表面には、円柱状の外周面の一部を円弧状の溝状に切り欠いた形状の剛性調節部37が形成されている。この溝の方向は、工具取付部11の長手方向(超音波振動の振動方向)に直交する方向であって、且つ前記スリット12の面と平行な方向、言い換えれば、下記する薄板状のカッター刃40の中心面(厚み方向の中心面、即ち前記中心軸C1を含む面)内で、前記超音波振動の振動方向に直交する方向から見て、円弧凹状に形成されている。
工具取付部11には、スリット12を挟んだその両側の工具取付片31,33にそれぞれ取付穴32,34が設けられている。両取付穴32,34は、前記工具ホーン10の中心軸C1と交差し、且つ取り付けるカッター刃40の中心面(スリット12の中心面)に垂直(即ち面取り部35の面に垂直)で、両取付穴32,34が同一直線上に位置するように形成されている。さらに言えば、両取付穴32,34は、工具取付部11を先端側(図2の左側)から見てその中央位置に上下方向に向かって設けられている。上側の取付穴32の面取り部35側の端部近傍には、その内径を徐々に拡大する傾斜面からなる傾斜面部挿入部32aと、傾斜面部挿入部32aの上部に連続する円周状の本体部挿入部32bとを形成している。傾斜面部挿入部32aは、下記する固定用ネジ50の傾斜面部55を収納する寸法形状に形成され、本体部挿入部32bは、下記する固定用ネジ50の頭部本体部57を挿入する寸法形状に形成されている。また、下側の取付穴34の内周面には、メネジ34aが形成されている。
図3はカッター刃40の平面図である。同図及び図1,図2に示すように、カッター刃40は、薄板状の略三角形をした例えば超硬合金からなり、根元側の辺41の略中央には半円弧状の切り欠き43が設けられている。切り欠き43は、このカッター刃40を前記工具取付部11のスリット12に挿入した際に、前記取付穴32,34に対向する位置に設けられている。
前記取付穴32,34に挿入される固定用ネジ50は、円柱の外周にオネジを形成してなるネジ部51の一方に頭部53を設けて構成されている。頭部53は、ネジ部51側から、傾斜面部55と頭部本体部57と突起部59とを有している。頭部本体部57は、ネジ部51の外径寸法よりも大きい円柱形状に形成されている。傾斜面部55は、ネジ部51から頭部本体部57に向かってその外径寸法を徐々に大きくしていく円錐台形状に形成されている。突起部59は、矩形状であり、図示しない治具に係合して、固定用ネジ50を回転するために形成されている。固定用ネジ50は、例えば鉄やステンレス、もしくはチタン合金等の各種材料によって構成される。
カッター刃40の工具取付部11への取り付けは、図2において、工具取付部11の先端に設けたスリット12にカッター刃40の一端部分(切り欠き43側の部分)を挿入すると共に、この工具取付部11のスリット12を挟んだその両側の工具取付片31,33にそれぞれ設けた取付穴32,34に、面取り部35側から固定用ネジ50を挿入し、取付穴34側に設けたメネジ34aにねじ込むことで締め付け、これによってカッター刃40を両工具取付片31,33で挟持することで行う。このとき、固定用ネジ50の傾斜面部55と頭部本体部57は、それぞれ前記取付穴32の傾斜面部挿入部32aと本体部挿入部32bに挿入される。即ち、面取り部35から突出するのは、頭部53中の突起部59の部分のみである。
以上のようにしてカッター刃40を取り付けた超音波加工装置1−1を駆動すると、超音波振動子60がその中心軸C1方向に振動し、工具ホーン10とカッター刃40を含む超音波加工装置1−1全体が、前記中心軸C1方向に沿って伸縮・振動する。
図4は上記超音波加工装置1−1を駆動した際のカッター刃40の振動状態を、有限要素法による振動解析(CAE)した結果を示す図である。また図5は従来の超音波加工装置100の振動状態を、有限要素法による振動解析(CAE)した結果を示す図である。超音波加工装置100は、超音波加工装置1−1から剛性調節部37を省略し、その部分をその周囲と同じ円柱状に形成したものであり、その他の部分の構造は超音波加工装置1−1と同一である。図4、図5においては、横振れ(矢印C2方向への振動)の変位を、1200倍に拡大して表示している。両者を比較すると分かるように、工具取付部11に剛性調節部37を設けた場合は、カッター刃40の横振れが大きく改善されることが分かる。
次に、剛性調節部37によってカッター刃40の横振れが大きく改善される理由について説明する。図6は、上記超音波加工装置1−1の工具取付部11近傍部分の拡大図、図7は上記超音波加工装置100の工具取付部11近傍部分の拡大図である。ここでまず、従来の超音波加工装置100について説明する。工具取付部11には、固定用ネジ50の工具取付部11への治具による取付作業を容易且つスムーズに行うため、工具取付部11の表面を平面状に切り欠いた形状の面取り部35を設けている。そして面取り部35を設けると、その分、もう一方の工具取付片33よりも軽量化されると同時に、面取り部35を設けた側の工具取付片31の厚みが薄くなる。上記軽量化は振動振幅が小さくなるように作用し、一方、厚みの薄型化は振動方向に対する剛性の低下となり振動振幅が大きくなるように作用する。一方で、面取り部35上には、固定用ネジ50の頭部53の一部である突起部57が突出していてその重さや突出しているという形状の特徴(振動時に突起部57に力のモーメントが加わる)により、この点からは、振動振幅が大きくなるように作用する。そして全体としては、図7に示すように、工具取付片33に対して工具取付片31は、面取り部35を設けることでその分軽量になっていてこの点からは振動振幅が小さくなるが、逆に剛性が弱くなっている上に、固定用ネジ50の頭部53の重量が加算されると同時に頭部53が面取り部35の面から突出しているという形状の特徴により、全体としては、工具取付片33の振動振幅b2に対して工具取付片31の振動振幅b1の方が大きくなる。このため、図5に示すように、カッター刃40の横振れが大きくなる。
次に、本実施形態にかかる超音波加工装置1−1について説明する。工具取付部11については、上記の説明と同様である。一方、工具取付片33には、剛性調節部37が設けられており、この剛性調節部37を設けた部分の工具取付片33の厚みを薄くしている。特にこの例では、大径部15が設けられているので、この大径部15と剛性調節部37間の厚みを薄くしている。これによって前記剛性調節部37によって薄くなっている部分の振動方向の剛性が弱くなり、それよりも先端側の工具取付片33の振動振幅B2を大きくすることができる。そして全体としては、図6に示すように、両工具取付片31,33の両者の振動振幅B1,B2を同一にすることができる。このため、図4に示すように、カッター刃40の横振れを小さくすることができる。これによって、従来より超音波振動の振幅を大きくしても横振れが生じず、また材質としてセラミック等からなる工具を用いても割れ等が発生しなくなる。
本実施形態においては、剛性調節部37を工具取付片33の根元側の外周面に設け、この根元部分よりも先端側の部分の重量を重いまま保っているので、重量を維持しながら同時に振動方向の剛性を低下させることができる。これによって効果的に工具取付片33の振動振幅を増加させることができる。特にこの実施形態では、剛性調節部37を大径部15に対向する位置近傍に設けたので、剛性調節部37の深さをそれほど大きくしなくても(工具取付片33の重量をそれほど小さくしなくても)、工具取付片33の厚みを薄くでき、効果的である。
また剛性調節部37は、面取り部35や傾斜面部挿入部32aや本体部挿入部32bを形成するという複雑な加工を行う必要がない工具取付片33側に加工でき、またその加工も工具取付片33の外周面を切り欠くという簡単な加工なので、その形成を容易に行うことができる。また工具取付片33の外周面を切り欠くという簡単な加工なので、容易に精度の良い加工ができ、工具取付片33の剛性の調整を精密に行うことができる。さらに、 剛性調節部37は円弧凹状なので、超音波振動時に、剛性調節部37の所定の部分のみに応力が集中することを防止でき、この工具ホーン10の耐久性を向上することができる。
図8は、本発明の他の実施形態にかかる工具ホーン10−2の工具取付部11近傍部分の要部拡大側面図である。同図に示す工具ホーン10−2において、前記図1〜図7に示す工具ホーン10と同一又は相当部分には同一符号を付す。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図1〜図7に示す実施形態と同じである。この工具ホーン10−2において、前記工具ホーン10と相違する点は、剛性調節部37の形状のみである。即ち、この剛性調節部37は、矩形溝状に切り欠いた形状に形成されている。このように構成しても、上記工具ホーン10の剛性調節部37と同様の作用効果を発揮する。但し、この剛性調節部37においては直角に屈曲する部分を内部に2か所に有しているので、上述のように、超音波振動時にそれらの部分に応力が集中し易く、この点で言えば上記円弧状の剛性調節部37の方がより好ましい。
図9は、本発明のさらに他の実施形態にかかる工具ホーン10−3の工具取付部11近傍部分の要部拡大側面図である。同図に示す工具ホーン10−3において、前記図1〜図7に示す工具ホーン10と同一又は相当部分には同一符号を付す。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図1〜図7に示す実施形態と同じである。この工具ホーン10−3において、前記工具ホーン10と相違する点は、剛性調節部37を設ける代わりに、スリット12の大径部15を、両工具取付片31,33の内の固定用ネジ50の頭部53が存する側とは反対側の工具取付片33側に張り出すように、長円形状に形成した点のみである。このように構成すれば、大径部15が張り出すことで、工具取付片31の根元近傍部分の厚みよりも工具取付片33の根元近傍部分の厚みの方を薄くできる。これによって工具取付片33の根元の薄くなっている部分の振動方向の剛性を弱くでき、それよりも先端側の工具取付片33の振動振幅B2を大きくすることができる。これによって全体として、工具取付片31,33の両者の振動振幅を同一にすることができる。このため、図4に示す場合と同様、カッター刃40の横振れを小さくすることができる。これによって、従来より超音波振動の振幅を大きくしても横振れが生じず、また材質としてセラミック等からなる工具を用いても割れ等が発生しなくなる。但し、上記図1〜図7に示す工具ホーン10のように、剛性調節部37を工具取付片33の外周面に形成する場合に比べて、加工が多少困難になる。
図10は、本発明の参考例にかかる工具ホーン10−4の工具取付部11近傍部分の要部拡大側面図であり、図10(a)は固定用ネジ50とナット70の取付前の状態を示す図、図10(b)は固定用ネジ50とナット70を取り付けた状態を示す図である。なお、図示の都合上、カッター刃40の記載は省略している。同図に示す工具ホーン10−4において、前記図1〜図7に示す工具ホーン10と同一又は相当部分には同一符号を付す。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図1〜図7に示す実施形態と同じである。
この工具ホーン10−4において、前記工具ホーン10と相違する点は、剛性調節部37を設ける代わりに、工具取付部11の両工具取付片31,33を、スリット12を挟んで対称形状に形成し、且つ、カッター刃40の工具取付部11への取り付けを、工具取付部11のスリット12にカッター刃40の一端部分を挿入すると共に、工具取付片31に設けた取付穴32側から、一方に頭部53を有する固定用ネジ50を挿入し、さらにこの固定用ねじ50の先端に他方の取付穴34側から、前記頭部53と同形状の頭部71を有するナット70を締め付けることで、スリット12に挿入した図示しないカッター刃40を両工具取付片31,33で挟持することで行っている。
ここで固定用ネジ50の形状は、前記図1〜図7に示す固定用ネジ50の形状と同一である。一方、ナット70も前記固定用ネジ50の頭部53の形状と同一の形状を有し、その中央に設けた上下に貫通する挿入穴71の内周面に、前記固定用ネジ50のネジ部51を螺合するメネジ部73を設けている。また、取付穴32は前記工具ホーン10と同じ形状に形成されている。一方、工具取付片33のナット70を装着する側の外周面には、工具取付片31側の面取り部35と同じ形状の面取り部35Aを設け、また取付穴34内には、メネジを加工せず、且つ前記工具取付片31側の傾斜面部挿入部32a及び本体部挿入部32bと同じ形状の傾斜面部挿入部34c及び本体部挿入部34bを設け、これによって両工具取付片31,33を、スリット12を挟んで対称形状に形成している。ナット70に螺合した固定用ネジ50の先端部分は、ちょうどナット70の挿入穴71内を満たすようにする。固定用ネジ50とナット70は同一材質とする。このような構成とすれば、スリット12を挟んだその両側の工具取付片31,33の重量及び形状と、固定用ネジ50及びナット70の重量及び形状とを同一にでき、これによって両工具取付片31,33の超音波振動時の振動振幅を同一にすることができる。このため、図4に示す場合と同様、カッター刃40の横振れを小さくすることができる。但し、ナット70を用いるので、上記図1〜図7に示す工具ホーン10に比べて部品点数が多くなる。
図11は、本発明のさらに他の参考例にかかる工具ホーン10−5の工具取付部11近傍部分の要部拡大側面図であり、図11(a)は固定用ネジ50とナット70の取付前の状態を示す図、図11(b)は固定用ネジ50とナット70を取り付けた状態を示す図である。なお、図示の都合上、カッター刃40の記載は省略している。同図に示す工具ホーン10−5において、前記図10に示す工具ホーン10−4と同一又は相当部分には同一符号を付す。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図10に示す実施形態と同じである。
この工具ホーン10−5において、前記工具ホーン10−4と相違する点は、固定用ネジ50として、市販の六角ボルトを用い、ナット70として、市販の六角ナットを用い、これに合わせて前記工具ホーン10−4で設けていた取付穴32,34内部の傾斜面部挿入部32a,34c及び本体部挿入部32b,34bを省略した点である。このように構成しても、前記工具ホーン10−4と同様の効果を奏する。但し、前記工具ホーン10−4に用いた固定用ネジ50とナット70の方が、締め付けたネジがゆるみ難く、より好適である。
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記例では工具ホーン10の材質としてチタン合金を用いたが、その代りに他の各種材質のものを用いても良い。またカッター刃10の材質も、超硬合金に限定されず、ハイス鋼、ステンレス鋼、セラミック等の他の各種硬質の材料を用いても良い。また上記例では超音波加工用の工具としてカッター刃10を用いたが、ダイヤモンドヤスリなどの他の各種超音波加工用工具であっても良い。要は工具取付部に形成した工具挟持用のスリットに挟持される超音波加工用の工具であればよい。また面取り部35はこれを設けなくても良い。また凹状の溝で形成される剛性調節部37を、円弧状や矩形状以外の各種形状で形成しても良い。また工具係止部13を設けず、スリット12をストレートに大径部15に接続しても良い。また単純なスリット12ではなく、例えば四角穴に刃物をはめるタイプのスリット等、スリットの構造も種々の変更が可能である。また切り欠き43の形状・構造も種々の変更が可能であり、半円弧状以外の形状でも良く、また切り欠きではなく貫通孔としても良い。
1−1 超音波加工装置
10 工具ホーン(超音波加工装置用工具ホーン)
11 工具取付部
12 スリット
15 大径部
31,33 工具取付片
32,34 取付穴
35 面取り部
37 剛性調節部
40 カッター刃(工具)
50 固定用ネジ
51 ネジ部
53 頭部
60 超音波振動子
10−2 工具ホーン
10−3 工具ホーン
10−4 工具ホーン
70 ナット
10−5 工具ホーン

Claims (5)

  1. 先端部に工具取付部を備え、この工具取付部に取り付けた工具に超音波振動子からの超音波振動を伝達する超音波加工装置用工具ホーンにおいて、
    前記工具の前記工具取付部への取り付けは、前記工具取付部の先端に設けたスリットに前記工具の一端部分を挿入すると共に、この工具取付部の前記スリットを挟んだその両側の工具取付片にそれぞれ設けた取付穴に、一方に頭部を有する固定用ネジを挿入して締め付け、これによって前記工具を前記両工具取付片で挟持して行い、
    前記締め付けた固定用ネジの頭部の一部は、当該頭部が存する側の前記工具取付片の表面から突出しており、
    一方、前記両工具取付片の内の前記固定用ネジの頭部が存する側とは反対側の工具取付片の前記取付穴を設けた位置よりもこの工具取付片の根元側の外周面に、超音波振動の振動方向に直交する方向であって且つ前記スリットの面と平行な方向に向けて溝状に切り欠くことでこの工具取付片の厚みを薄くして、この工具取付片の超音波振動方向の剛性を低下させる剛性調節部を設けることで、両工具取付片の超音波振動時の伸縮長さを同一にしたことを特徴とする超音波加工装置用工具ホーン。
  2. 請求項1に記載の超音波加工装置用工具ホーンであって、
    前記スリットの根元部分にスリットの隙間寸法を大きくしてなる大径部を設け、この大径部の近傍に前記剛性調節部を設けたことを特徴とする超音波加工装置用の工具ホーン。
  3. 請求項1又は2に記載の超音波加工装置用工具ホーンであって、
    前記剛性調節部は、前記スリットの中心面内で、前記超音波振動の振動方向に直交する方向から見て、円弧凹状に形成されていることを特徴とする超音波加工装置用の工具ホーン。
  4. 請求項1又は2又は3に記載の超音波加工装置用工具ホーンであって、
    前記両工具取付片の内の前記固定用ネジの頭部が存する側の工具取付片の外周面に、前記固定用ネジの頭部を当接する面取り部を設け、
    この面取り部を設けた工具取付片の超音波振動時の伸縮長さと、前記剛性調節部を有する側の工具取付片の超音波振動時の伸縮長さを同一にしたことを特徴とする超音波加工装置用工具ホーン。
  5. 先端部に工具取付部を備え、この工具取付部に取り付けた工具に超音波振動子からの超音波振動を伝達する超音波加工装置用工具ホーンにおいて、
    前記工具の前記工具取付部への取り付けは、前記工具取付部の先端に設けたスリットに前記工具の一端部分を挿入すると共に、この工具取付部の前記スリットを挟んだその両側の工具取付片にそれぞれ設けた取付穴に、一方に頭部を有する固定用ネジを挿入して締め付け、これによって前記工具を前記両工具取付片で挟持して行い、
    さらに前記スリットの根元部分にスリットの隙間寸法を大きくしてなる大径部を設けると共に、このスリットの大径部を、前記両工具取付片の内の前記固定用ネジの頭部が存する側とは反対側の工具取付片側に張り出して、前記大径部を張り出した側の工具取付片の超音波振動方向の剛性を低下させることで、両工具取付片の超音波振動時の伸縮長さを同一にしたことを特徴とする超音波加工装置用工具ホーン。


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