以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
まず、図1乃至図5を用いて、本発明の実施形態に係る成膜方法を好適に実施可能な成膜装置の一例について説明する。ここで、成膜装置は、所謂回転テーブル式(後述)のサセプタを用いた成膜装置であって、原料ガスを含む処理ガスを所定の供給領域に向けて供給することによって、複数の基板の表面上に成膜を行う成膜装置を例に挙げて説明する。なお、基板が載置されるサセプタは必ずしも回転テーブル式である必要は無く、ノズルを用いた種々の成膜装置に適用可能である。
なお、図1は、成膜装置の断面図であり、図3のI−I'線に沿った断面を示している。図2及び図3は、処理室1(後述)内の構造を説明する図である。図2及び図3は、説明の便宜上、天板11(後述)の図示を省略している。
図4は、処理ガスノズル31(後述)から処理ガスノズル32(後述)までのサセプタ2(後述)の同心円に沿った処理室1の断面図である。図5は、天井面44(後述)が設けられる領域を示す一部断面図である。
図1乃至図3に示すように、成膜装置は、ほぼ円形の平面形状を有する扁平な処理室1と、処理室1内に設けられるサセプタ2と、成膜装置全体の動作(例えば処理ガスノズル31、32のガス供給タイミング)を制御する制御部100(制御手段)とを備える。
処理室1は、有底の円筒形状を有する容器本体12と、容器本体12の上面に気密に着脱可能に配置される天板11とを備える。天板11は、例えばOリングなどのシール部材13(図1)を介して気密に着脱可能に配置され、処理室1内の気密性を確保する。
サセプタ2は、処理室1の中心を回転中心に、ケース体20に収納されている円筒形状のコア部21に固定される。サセプタ2は、複数の基板(以下、「ウェハーW」という。)が載置される載置部を上面に有する。
ケース体20は、その上面が開口した筒状のケースである。ケース体20は、その上面に設けられたフランジ部分を処理室1の底部14の下面に気密に取り付けられている。ケース体20は、その内部雰囲気を外部雰囲気から隔離する。
コア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は、処理室1の底部14を貫通する。また、回転軸22の下端は、回転軸22を鉛直軸回りに回転させる駆動部23に取り付けられる。更に、回転軸22及び駆動部23は、ケース体20内に収納されている。
図3に示すように、サセプタ2の表面は、回転方向(周方向)に沿って複数(本実施形態では5枚)のウェハーWを載置するための円形状の複数の凹部24(基板載置領域)を有する。ここで、図3では、便宜上、1個の凹部24だけにウェハーWを図示する。なお、本発明に用いることができるサセプタ2は、複数の基板として、4枚以下又は6枚以上のウェハーWを載置する構成であってもよい。
凹部24は、本実施形態では、ウェハーWの直径(例えば300mm)よりも僅かに大きい内径(例えば4mm大きい内径)とする。また、凹部24は、ウェハーWの厚さにほぼ等しい深さとする。これにより、成膜装置は、凹部24にウェハーWを載置すると、ウェハーWの表面とサセプタ2の表面(ウェハーWが載置されない領域)とを略同じ高さにすることができる。
成膜装置において、処理ガスノズル31は、第1のガス供給部であり、サセプタ2の上方において区画される第1の処理領域(後述)に配置される。処理ガスノズル31は、第1のガス供給部であり、ウェハーWに原料ガスを供給する原料ガス供給ノズルとして用いられる。処理ガスノズル32は、第2のガス供給部であり、サセプタ2の周方向に沿って第1の処理領域から離間する第2の処理領域(後述)に配置される。分離ガスノズル41、42は、分離ガス供給部であり、第1の処理領域と第2の処理領域との間に配置される。なお、処理ガスノズル31等は、例えば石英からなるノズルを用いてもよい。
具体的には、図2及び図3に示すように、成膜装置は、処理室1の周方向に間隔をおいて、基板搬送用の搬送口15から時計回り(サセプタ2の回転方向)に処理ガスノズル32、分離ガスノズル41、処理ガスノズル31及び分離ガスノズル42の順に配列する。これらのノズル31、32、41及び42は、それぞれの基端部であるガス導入ポート31a、32a、41a及び42a(図3)を容器本体12の外周壁に固定している。また、ガスノズル31、32、41及び42は、処理室1の外周壁から処理室1内に導入される。更に、ガスノズル31、32、41及び42は、容器本体12の半径方向に沿ってサセプタ2の中心方向に、且つ、サセプタ2に対して平行に伸びるように取り付けられる。
処理ガスノズル31、32は、サセプタ2に向かって下方に開口する複数のガス吐出孔33(図4参照)を備える。処理ガスノズル31、32は、そのノズルの長さ方向に沿って、例えば10mmの間隔で開口を配列することができる。これにより、処理ガスノズル31の下方領域は、ウェハーWに第1の処理ガスを吸着させる領域(以下、「第1の処理領域P1」という。)となる。また、処理ガスノズル32の下方領域は、ウェハーWに吸着している第1の処理ガスに第2の処理ガスを反応させ、第1の処理ガスと第2の処理ガスとの反応生成物を堆積させる領域(以下、「第2の処理領域P2」という。)となる。なお、第1の処理ガスには、例えば、高誘電体膜(High-k膜)を成膜するために用いられる有機金属ガス等が原料ガスとして用いられてもよく、例えば、トリ(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム(C11H23N3Zr)等のガスが用いられてもよい。その他、アルミニウム、ハフニウム、チタン等の金属を含む有機金属ガスが原料ガスとして用いられてもよい。また、第2の処理ガスには、酸化ガス(例えばO2ガス又はO3ガス)、窒化ガス(例えばNH3ガス)等の反応ガスが用いられてもよい。一般に、自己分解は、高誘電体膜を成膜する際の有機金属ガスからなる原料ガスの供給において多く発生するので、High-k膜の成膜において、本実施形態に係る処理ガスノズル31を用いるのは非常に効果的である。但し、第1の処理ガスには、上述のガスに限定されるものではなく、種々のガスが用いられてよい。
第1の処理ガスは、キャリアガスとともに第1の処理ガスノズル31からウェハーWに供給されてもよい。キャリアガスは、処理ガスを運ぶ役割を果たすガスであり、第1の処理ガスと反応しない不活性ガス等から選択される。キャリアガスの流量は、割合的には第1の処理ガスの流量よりも多く、数倍程度の流量を有する。キャリアガスは、例えば、Arガスであってもよい。
処理ガスノズル32は、サセプタ2の上面の上方において区画される第2の処理領域P2に配置される。処理ガスノズル32は、不図示の配管等を介して、第2の処理ガスの供給源(不図示)に接続されている。すなわち、処理ガスノズル32は、サセプタ2の上面に向けて第2の処理ガスを供給する。処理ガスノズル32は、本実施形態では、開閉バルブ(不図示)を相補的に開閉することにより、第2の処理ガスを処理室1(第2の処理領域P2)内へ供給する。
分離ガスノズル41、42は、周方向に沿って離間して設けられた第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間に夫々設けられる。分離ガスノズル41、42は、不図示の配管等を介して、分離ガスの供給源(不図示)に接続されている。すなわち、分離ガスノズル41、42は、サセプタ2の上面に対して分離ガスを供給する。
第2の処理ガスとしては、第1の処理ガスと反応する種々の反応ガスが用いられてよいが、例えば、酸素を含有するガスを用いてもよい。酸素を含有するガスは、例えば酸素ガス又はオゾンガスである。すなわち、処理ガスノズル31から供給されて基板に吸着した第1の処理ガスは、処理ガスノズル32から供給された第2の処理ガスにより酸化され、酸化物を生成する。
成膜装置は、分離ガスとして、不活性ガスを用いる。不活性ガスは、例えばArやHeなどの希ガス又は窒素ガスである。分離ガスは、ウェハーWをパージするパージガスとして用いられる。なお、本実施形態においては、パージガスとして一般的に用いられるN2ガスを分離ガスとして用いた例を挙げて説明する。
図2及び図3に示すように、成膜装置の処理室1内には、2つの凸状部4が設けられている。凸状部4は、頂部が円弧状に切断された略扇型の平面形状を有する。凸状部4は、本実施形態では、内円弧が突出部5に連結する。また、凸状部4は、外円弧が処理室1の容器本体12の内周面に沿うように配置されている。
具体的には、凸状部4は、図4に示すように、天板11の裏面に取り付けられる。また、凸状部4は、その下面である平坦な低い天井面44(第1の天井面)と、この天井面44の周方向両側に位置する天井面45(第2の天井面)とを有する。ここで、凸状部4の天井面45は、天井面44よりも高い天井面である。これにより、凸状部4は、処理室1内に、狭い空間である分離空間Hと、分離空間Hからガスを流入される空間481及び空間482とを形成する。すなわち、凸状部4は、形成した狭い空間である分離空間Hを後述する図2に示す分離領域Dとして機能させる。
また、図4に示すように、凸状部4は、周方向中央に溝部43を有する。溝部43は、サセプタ2の半径方向に沿って延びている。また、溝部43は、分離ガスノズル42が収容されている。もう一つの凸状部4にも同様に溝部43が形成され、ここに分離ガスノズル41が収容されている。
なお、分離ガスノズル42の下面、即ちサセプタ2との対向面には、ガス吐出孔42hが形成されている。ガス吐出孔42hは、分離ガスノズル42の長手方向に沿って所定の間隔(例えば10mm)をあけて複数個形成されている。また、ガス吐出孔42hの開口径は、例えば0.3から1.0mmである。図示を省略するが、分離ガスノズル41にも同様にガス吐出孔42hが形成されている。
更に、図4に示すように、成膜装置は、高い天井面45の下方の空間に、処理ガスノズル31、32をそれぞれ設ける。これらの処理ガスノズル31、32は、天井面45から離間してウェハーWの近傍に設けられている。なお、図4に示すように、処理ガスノズル31は空間481(高い天井面45の下方の空間)内に設けられ、処理ガスノズル32は空間482(高い天井面45の下方の空間)に設けられている。
処理ガスノズル31、32は、ウェハーWの表面近傍に設けられ、吐出孔33は、ウェハーWの表面と対向するように、処理ガスノズル31、32の下面に形成される。処理ガスノズル31、32の吐出孔33とサセプタ2の凹部24が形成されていない表面との距離は、例えば、1〜5mmの範囲に設定され、好適には3mm前後に設定される。また、原料ガスを供給する処理ガスノズル31は、図4に示すように、長方形の断面形状に構成されてもよい。なお、他方の処理ガスノズル32及び分離ガスノズル41、42は、円環状の断面形状に構成される。処理ガスノズル31とサセプタ2との距離を十分接近させることにより、縦型熱処理炉等を用いた成膜方法と異なり、処理ガスノズル31から供給するキャリアガスの流量を低減させることができる。処理ガスノズル31から供給するキャリアガスの流量を低減させると、これにより運搬される原料ガスの流量も低減する。つまり、原料ガスの流量も低減するが、処理ガスノズル31の吐出孔33とウェハーWとの間の空間は非常に狭く、原料ガスの供給量低減の割合は、キャリアガスの供給量低減の割合よりも低いので、原料ガスの濃度は逆に高くなり、高濃度を保った状態で原料ガスの流量を低減させることができる。そして、原料ガスの流量を低減させても、ウェハーWに吸着する原料ガスが飽和吸着状態を保つように設定しておけば、成膜に必要な原料ガスの流量を確保することができる。また、上述のように、原料ガスの濃度は高くなっているので、原料ガスの消費量を抑制しつつ、膜の品質を低下させずに、と言うよりはむしろ向上させる成膜が可能となる。なお、飽和吸着状態とは、ウェハーWの表面上の吸着サイトが総て吸着分子(又は吸着原子)に覆われている状態を意味する。この状態では、これ以上原料ガスを供給しても、原料はウェハーWの表面上に吸着することができない。よって、飽和吸着状態を満たしていれば成膜のために供給する原料ガスの量としては十分であり、それ以上原料ガスを余分に供給しても、必ずしも成膜には寄与せず、無駄な供給となってしまう。よって、本実施形態に係る成膜方法では、かかる性質を利用して高品質な成膜を保ちつつ原料ガスの消費を抑制する効率的な原料ガスの供給を行うが、この点の詳細については、後述する。
低い天井面44は、狭い空間である分離空間Hをサセプタ2に対して形成している。分離ガスノズル42から不活性ガス(例えばN2ガス)が供給されると、この不活性ガスは、分離空間Hを流通して、空間481及び空間482へ向かって流出する。ここで、分離空間Hの容積は空間481及び482の容積よりも小さいため、成膜装置は、空間481及び482の圧力と比較して、供給した不活性ガスを用いて分離空間Hの圧力を高くすることができる。すなわち、空間481及び482の間隙において、分離空間Hは圧力障壁を形成する。
更に、分離空間Hから空間481及び482へ流出した不活性ガスは、第1の処理領域P1の第1の処理ガスと、第2の処理領域P2の第2の処理ガスとに対してカウンターフローとして働く。従って、成膜装置は、分離空間Hを用いて、第1の処理領域P1の第1の処理ガスと、第2の処理領域P2の第2の処理ガスとを分離する。即ち、成膜装置は、処理室1内において第1の処理ガスと、第2の処理ガスとが混合して反応することを抑制する。
なお、サセプタ2の上面に対する天井面44の高さh1は、成膜時の処理室1内の圧力、サセプタ2の回転速度及び/又は供給する分離ガス(N2ガス)の供給量などに基づいて、分離空間Hの圧力を空間481及び482の圧力に比べて高くするのに適した高さとすることができる。また、サセプタ2の上面に対する天井面44の高さh1は、成膜装置の仕様及び供給するガスの種類に対応した高さとすることができる。更に、サセプタ2の上面に対する天井面44の高さh1は、予め実験又は計算等で定められる高さとすることができる。
また、処理ガスノズル31、32及び分離ガスノズル41、42は、用途に応じて種々の形状に構成されてよいが、図4に示すように、原料ガスを供給する処理ガスノズル31のみ長方形断面を有するように構成され、他の処理ガスノズル32及び分離ガスノズル41、42は、円環形断面を有するように構成されてもよい。
図2及び図3に示すように、天板11の下面には、サセプタ2を固定するコア部21の外周を囲むように突出部5が設けられている。突出部5は、本実施形態では、凸状部4における回転中心側の部位と連続しており、その下面が天井面44と同じ高さに形成されている。
図2に示すように、略扇型の凸状部4の周縁部(処理室1の外縁側の部位)には、サセプタ2の外端面に対向するようにL字型に屈曲する屈曲部46が形成されている。屈曲部46は、サセプタ2と容器本体12の内周面との間の空間を通して、空間481及び空間482の間でガスが流通するのを抑制する。扇型の凸状部4は天板11に設けられる。
成膜装置は、天板11を容器本体12から取り外すことができるので、屈曲部46の外周面と容器本体12との間には僅かな隙間を有する。成膜装置は、屈曲部46の内周面とサセプタ2の外端面との隙間、及び、屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間を、例えばサセプタ2の上面に対する天井面44の高さと同様の寸法に設定することができる。
再び図3を参照すると、サセプタ2と容器本体の内周面との間において、空間481(図4)と連通する第1の排気口610と、空間482(図4)と連通する第2の排気口620とが形成されている。第1の排気口610及び第2の排気口620は、図1に示すように、各々排気管630を介して、真空排気手段(例えば真空ポンプ640)に接続されている。なお、排気管630の真空排気手段640までの経路中に圧力調整器650が設けられる。
サセプタ2と処理室1の底部14との間の空間には、図1及び図5に示すように、加熱手段であるヒータユニット7が設けられる。サセプタ2を介してサセプタ2上のウェハーWが、プロセスレシピで決められた温度(例えば450℃)に加熱される。サセプタ2の周縁付近の下方側には、サセプタ2の下方の空間へガスが侵入するのを抑えるために、リング状のカバー部材71が設けられている。
図2に示すように、カバー部材71は、サセプタ2の外縁部及び外縁部よりも外周側を下方側から臨むように設けられた内側部材71aと、この内側部材71aと処理室1の内壁面との間に設けられた外側部材71bと、を備えている。外側部材71bは、凸状部4の外縁部に形成された屈曲部46の下方にて、屈曲部46と近接して設けられる。内側部材71aは、サセプタ2の外縁部下方(及び外縁部よりも僅かに外側の部分の下方)において、ヒータユニット7を全周に亘って取り囲んでいる。
図6は、処理ガスノズル31に原料ガスを供給するための原料供給システムの一例を示した図である。原料供給システム80は、気化器81を備えるアンプルシステムとして構成される。原料供給システム80は、気化器81と、マスフローコントローラ(質量流量制御器)84と、圧力計85と、マスフローメータ(質量流量計)86と、自動圧力制御器87と、配管88と、バルブ89とを備える。
気化器81は、液体原料を気化するための装置であり、貯留槽82と、加熱手段83とを備える。具体的には、貯留槽82に貯留された有機金属からなる液体原料を加熱手段83により加熱し、気化した液体原料がキャリアガスと混合され、原料ガスとして配管88を介して処理容器1に供給される。なお、キャリアガスは、圧力計85で圧力が測定され、マスフローコントローラ84で流量制御が行われる。キャリアガスは、希ガス等の反応性を有しないガスが用いられてよく、例えば、アルゴンガスが用いられてもよい。キャリアガスは、バルブ89の開閉により、気化器81で気化された原料ガスと混合され、配管88を介して処理ガスノズル31から処理容器1内に供給される、気化された原料ガスは、キャリアガスによって運搬され、処理容器1内にキャリアガスとともに供給される。なお、原料供給システム80は、真空ポンプ640で処理容器1内を排気するために設けられた排気管630の経路に、圧力を自動調整する自動圧力制御器87を備えてよく、更に配管88の経路にマスフローメータ86を備えてもよい。
図1に示される制御部100は、成膜装置の各構成に動作を指示し、各構成の動作を制御する手段である。成膜装置では、制御部100は、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータから構成される。制御部100は、例えば記憶部101に記憶されたプログラムを実行し、ハードウェアと協働することで、複数の基板の表面を成膜する。なお、制御部100は、一般的なCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)及びメモリ(例えば、ROM、RAM)等を含む演算処理装置で構成することができる。
具体的には、制御部100は、内蔵するメモリ内に、後述する成膜方法を成膜装置に実施させるためのプログラムを格納することができる。このプログラムは、例えばステップ群を組まれている。制御部100は、媒体102(ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなど)に記憶されている上記プログラムを記憶部101へ読み込み、その後、制御部100内にインストールすることができる。
制御部100は、原料供給システム80における原料ガスの流量及びキャリアガスの流量も制御するように構成されてもよい。例えば、制御部100は、原料供給システム80の全体を制御することにより、原料ガスの供給量を適切に設定及び制御してもよい。具体的には、マスフローコントローラ84、自動圧力制御器87等の更に上流側でこれらを制御し、原料ガスの流量を制御してもよい。
次に、かかる成膜装置を用いた本発明の実施形態に係る成膜処理方法について説明する。
まず、サセプタ2の上面に設けられた複数の凹部24上の各々に、ウェハーWが載置される。具体的には、先ず、図示しないゲートバルブを開き、搬送アーム10(図3)を用いて、搬送口15を介して、ウェハーWをサセプタ2の凹部24内に受け渡す。凹部24が搬送口15に臨む位置に停止したときに凹部24の底面の貫通孔を介して、処理室1の底部側から不図示の昇降ピンを昇降させることによって、基板Wの受け渡しを行ってもよい。また、サセプタ2を間欠的に回転させ、サセプタ2の複数(本実施形態では、5つ)の凹部24内に夫々ウェハーWを載置する。
次に、処理室1内の所定の圧力に設定した後、分離ガスが処理室1内に供給される。より具体的には、ゲートバルブを閉じ、真空ポンプ640を用いて真空容器1を最低到達真空度まで排気した後に、分離ガスノズル41,42から分離ガス(例えばN2ガス)を所定の流量で供給させる。このとき、分離ガス供給管51及びパージガス供給管72、72(図1)からも分離ガスを所定の流量で供給させる。また、圧力調整器650を用いて、処理室1内を予め設定した処理圧力に調整することができる。次に、サセプタ2を例えば時計回りの方向に回転させながら、ヒータユニット7を用いてウェハーWを加熱する。
次に、第1の処理ガスノズル31及び第2の処理ガスノズル32から、処理ガスの供給が開始される。第1及び第2の処理ガス供給の開始により、ウェハーWの処理が行われる。第1の処理領域P1内で第1の処理ガスノズル31から原料ガスがキャリアガスとともに供給されてウェハーWの表面に吸着し、第2の処理領域P2内で第2の処理ガスノズル32からウェハーW上に吸着した原料ガスと反応する反応ガスが供給される。そして、原料ガスと反応ガスとの反応生成物がウェハーW上に堆積し、分子層がウェハーW上に堆積する。なお、サセプタ2の回転により、ウェハーWは、第1の処理領域P1、分離領域D、第2の処理領域P2、分離領域Dを周期的に通過し、通過する度に成膜が行われてゆく。
ここで、第1の処理ガスノズル31から供給される原料ガスは、例えば、図6で説明した原料供給システム80を用いて供給される。具体的には、原料ガスが、高誘電体膜(いわゆるHigh-k膜)を成膜可能な有機金属ガスの場合には、有機金属の液体原料を原料とし、原料供給システム80を用いて原料ガスの供給を行う。その際、気化器81を用いて生成された原料ガスは、Ar等のキャリアガスと混合されて供給されるが、キャリアガスの流量を十分に低く設定する。これにより、キャリアガスに運ばれて供給される原料ガスの流量も低下する。キャリアガスの設定は、原料ガスの供給量が、ウェハーWの飽和吸着量を下回らない範囲内で設定され、ウェハーWの表面上への成膜速度を低下させない範囲で行う。これにより、ウェハーWの表面上の吸着サイトを飽和させるのに十分な原料ガスは供給されるので、成膜速度、膜の品質を低下させることなく成膜を行うことができる。また、上述のように、原料ガスの流量を低減させても、第1の処理ガスノズル31の吐出孔33がウェハーW表面の近傍に配置されており、キャリアガス供給量低減の割合が原料ガス供給量低減の割合よりも大きいので、原料ガスの濃度は相対的に高くなり、成膜される膜の品質を低下させることはなく、むしろ向上させることができる。これにより、成膜速度(デポレート)及び成膜品質(膜密度等)を低下させることなく原料ガスの消費量を減少させることができ、成膜にようするコストを低減させることができる。なお、この点の詳細については、実施例を用いて後述する。
成膜を継続し、所定の膜厚に到達したら、第1の処理ガスノズル31から第1の処理ガスである原料ガスの供給が停止され、第2の処理ガスノズル32からは必要に応じて酸化ガスの供給が継続して行われ、膜のトリートメントが行われる。なお、トリートメントは、不要であれば行わず、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの供給を同時に停止してもよい。
第1の処理ガスノズル31及び第2の処理ガスノズル32から処理ガスの供給を終了した後には、ウェハーWの搬入と逆の手順でウェハーWが処理室1から搬出される。具体的には、図示しないゲートバルブを開き、搬送アーム10(図4)を用いて、搬送口15を介して、成膜された基板Wを搬出する。搬入工程と同様に、不図示の昇降ピンなどを用いて、ウェハーWを搬出する。
このようにして成膜が行われるが、高い成膜速度及び成膜品質を維持しつつ、原料ガスの消費量を低減させて成膜を行うことができ、効率的な成膜を行うことができる。
次に、図7〜図10を用いて、本発明の実施形態に係る成膜方法の実施例について説明する。
図7は、本発明の実施例に係る成膜方法の実施結果の原料ガスの流量と原料ガス濃度との関係を示した図である。図7において、横軸はキャリアガスの流量(sccm)、縦軸は原料ガスの流量(左側、g/min)及び濃度(右側、%)を示している。なお、原料ガスとしては、高誘電体膜を成膜可能なトリ(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム(C11H23N3Zr)を用い、キャリアガスとしてはArガスを用いた。
また、縦軸右側に示された原料ガス濃度は、下記の(1)式より算出している。
図7において、原料ガスの流量変化は曲線Aで示され、原料ガスの濃度変化は曲線Bで示されている。図7に示されるように、キャリアガスの流量が低下するにつれて、曲線Aで示される原料ガスの流量は(原料供給レート)は低減するので、ウェハーW1枚当たりの原料コストを低減させることができる。一方、キャリアガス流量が低下するにつれて、曲線Bで示される原料ガスの濃度は高くなる。よって、成膜速度(デポレート)及び膜質(膜密度)は、原料ガスの流量が低下しても悪化しない。このように、図7のシミュレーション結果から、キャリアガスの流量を低減させることにより、原料ガスの流量を低下させつつ、成膜速度及び膜質を維持することが可能であることが示された。
図8は、本発明の実施例に係る成膜方法の実施結果のキャリアガスの流量と膜厚との関係を示した図である。図8において、横軸がキャリアガスの流量(sccm)、縦軸左側が膜厚(nm)、縦軸右側が膜厚面内均一性(range%)を示している。また、図8において、曲線Eが膜厚変化、曲線Fが膜厚面内均一性の変化を示している。なお、成膜は、酸化ジルコニウム(ZrO)の成膜を行った。
図8において、曲線Eが示すように、キャリアガスの流量を低減させると、膜厚は増加することが分かる。これは、原料の濃度が高くなるためであると考えられる。このように、キャリアガスの流量を低下させることにより、膜厚速度(デポレート)を向上させることができる。
また、図8の曲線Fに示すように、キャリアガスの流量を変化させても、膜厚面内均一性はほぼ一定に保つことができる。よって、キャリアガスの流量を低減させても、膜厚面内均一性に悪影響を及ぼすことは無く、膜質を維持することができることが分かる。なお、図8において、キャリアガスの流量を1000sccmに設定したときを基準としており、これから徐々にキャリアガスの流量を低減させ、500sccm、300sccm、100sccmの場合をキャリアガス流量低減の実施例としている。
図9は、本発明の実施例に係る成膜方法の実施結果のキャリアガスの流量と膜密度との関係を示した図である。図9において、横軸はキャリアガスの流量(sccm)、縦軸は膜密度(g/cm3)を示している。
図9に示されるように、キャリアガスの流量を変化させても、膜密度は6.00g/cm3付近で一定しており、キャリアガスの流量を低減させても、膜密度を維持できることが分かる。なお、図9においても、キャリアガスの流量を1000sccmに設定したときを基準としており、これから徐々にキャリアガスの流量を低減させ、500sccm、300sccm、100sccmの場合をキャリアガス流量低減の実施例としている。また、成膜対象はZrO膜である点も、今までと同様である。
図10は、縦型熱処理炉を用いてZrO膜を成膜した場合と、本発明の実施例に係る成膜方法により成膜した場合とで、ウェハーW1枚当たりのキャリアガスの流量と原料ガスの消費量との関係を各々示した図である。図10において、横軸はキャリアガスの流量(sccm)、縦軸はZrを含有する原料ガスの消費量を示している。
図10において、縦型熱処理炉における原料ガスの消費量を1.0とし、本実施例に係る成膜方法においてキャリアガスの流量を変化させた場合のウェハーW1枚当たりの原料ガスの消費量を比較すると、キャリアガスが300sccm以上の場合には、本実施例に係る成膜方法における原料ガスの消費量の方が高いが、キャリアガスの流量を300sccm未満とすると、本実施例に係る成膜方法の方が、原料ガスの消費量が少なくなることが示されている。そして、キャリアガスの流量を300sccm未満とした場合の膜厚速度及び膜質は、図8、9に示すように、満足な結果が得られている。
よって、原料ガスのウェハーW上における飽和吸着状態を保ちつつ、キャリアガスの流量を十分に低くすることにより、膜質及び成膜速度(デポレート)を同等以上に保ちつつ、バッチ処理を行う縦型熱処理炉よりもウェハーW1枚当たりの原料コストの消費量を低減させ、原料ガスコストを低減できることが本実施例により示された。特に、成膜対象をZrO膜とし、原料ガスとしてトリ(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム(C11H23N3Zr)を用いた場合、キャリアガスの流量を300sccm未満に設定することにより、縦型熱処理炉よりも原料ガスコストを低減させることができる。
なお、キャリアガスの設定流量は、原料ガス及び成膜する膜の種類により異なるので、用途に応じて適切なキャリアガスの流量を設定することができる。
また、本実施形態及び本実施例においては、回転テーブル式のサセプタ2を有し、ALD法を用いた成膜装置に本実施形態及び本実施例に係る成膜方法を適用する例を挙げて説明したが、原料ガスを供給する原料ガス供給手段の原料ガス吐出孔が基板の表面近傍に配置して成膜を行うことが可能であれば、種々の成膜装置に本発明に係る成膜方法を適用することが可能である。例えば、ノズルではなく、シャワーヘッドとして構成された原料ガス供給手段を用いる場合にも本発明に係る成膜方法は適用可能であるし、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置を用いて成膜を行う場合にも、本発明に係る成膜方法を適用することが可能である。
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施形態及び実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態及び実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。