JP6441000B2 - 蒸気圧縮式冷凍サイクル - Google Patents

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Description

本発明は、低温側の熱を高温側に移動させる蒸気圧縮式冷凍サイクルに関する。
例えば特許文献1に記載の蒸気圧縮式冷凍サイクルでは、前段側圧縮要素及び後段側圧縮要素を有する二段圧縮式の圧縮機を複数備えるとともに、それら複数の圧縮機を並列に接続した状態で、熱負荷に応じて稼働させる圧縮機の台数を制御している。
そして、稼働中の圧縮機に対しては、常に、放熱器から流出して中間圧まで減圧された中間圧冷媒が、前段側圧縮要素の吐出口と後段側圧縮要素の吸入口とを繋ぐ中間冷媒管に注入(インジェクション)されている。つまり、特許文献1に記載の蒸気圧縮式冷凍サイクルでは、熱負荷によらず、常に、中間圧冷媒が圧縮機に注入されるインジェクション運転が実行される。
特開2009−270777号
インジェクション運転では、圧縮行程途中に中間圧冷媒を注入するので、圧縮機の消費動力を低減することができる。このため、外気温度が高い状態で冷熱を利用する場合等の高圧冷媒の圧力が高くなる場合に、インジェクション運転を用いると特に有効である。
しかし、冬等の外気温度が低い状態では高圧側冷媒の圧力が低くなるので、インジェクション運転が有効とならない場合がある。すなわち、高圧側冷媒の圧力が低くなると、圧縮行程途中に中間圧冷媒を注入することにより見込まれる消費動力の低減量により、中間圧冷媒を注入することにより必要とされる消費動力の方が大きくなる場合が発生する。
本発明は、上記点に鑑み、圧縮機の消費動力を更に低減可能なインジェクション方式の蒸気圧縮式冷凍サイクルを提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するために、低温側の熱を高温側に移動させる蒸気圧縮式冷凍サイクルにおいて、高温側の冷媒を冷却する高圧熱交換器(3)と、低温側の冷媒を加熱・蒸発させる低圧熱交換器(7)と、高圧熱交換器(3)から流出した高圧冷媒を減圧・膨張させる第1減圧器(5A)と、第1減圧器(5A)にて減圧された中間圧冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離する気液分離器(11)と、気液分離器(11)にて分離された液相冷媒を減圧・膨張させて低圧熱交換器(7)に供給する第2減圧器(5B)と、低圧熱交換器(7)側から流出した冷媒を吸引して圧縮するとともに、圧縮された冷媒を高圧熱交換器(3)側に吐出する第1圧縮機(9A)と、気液分離器(11)から気相冷媒を吸引して圧縮するとともに、圧縮された冷媒を第1圧縮機(9A)の吐出側に吐出する第2圧縮機(9B)と、第2圧縮機(9B)の作動を制御するインジェクション制御部(21)であって、第2圧縮機(9B)を稼働させるインジェクション運転と第2圧縮機(9B)を停止させる非インジェクション運転とを切替制御可能なインジェクション制御部(21)と、第2圧縮機(9B)の吸入側圧力に対する当該第2圧縮機(9B)の吐出側圧力の比を圧力比としたとき、非インジェクション運転からインジェクション運転に移行する場合であって圧力比が予めから設定された所定の範囲外の場合に、圧力比を所定の範囲内にする圧力比制御システム(21)と、非インジェクション運転時に、第1圧縮機(9A)の吐出側と第2圧縮機(9B)の吐出側とが連通することを阻止する第1バルブ(19)とを備えることを特徴とする。
これにより、本発明では、インジェクション運転と非インジェクション運転とを切り替えることが可能であるので、圧縮機の消費動力を更に低減可能なインジェクション方式の蒸気圧縮式冷凍サイクルを得ることができる。
すなわち、圧縮行程途中に中間圧冷媒を注入することにより見込まれる消費動力の低減量により、中間圧冷媒を注入することにより必要とされる消費動力の方が大きくなる場合には、インジェクション運転から非インジェクション運転に切り替えることにより、消費動力を低減でき得る。
ところで、非インジェクション運転においては、第2圧縮機(9B)が停止し、第1圧縮機(9A)が稼働しているので、第2圧縮機(9B)の吸入側圧力に対する当該第2圧縮機(9B)の吐出側圧力の比が、「第2圧縮機(9B)について予め設定された圧力比の範囲(以下、仕様圧力比という。)」を超えている場合がある。
仕様圧力比とは、第2圧縮機(9B)の設計仕様(スペック)である。このため、現実の圧力比が仕様圧力比を越えていると、第2圧縮機(9B)を起動させることができず、非インジェクション運転からインジェクション運転に切り替えることができない。これに対して、本発明では、圧力比制御システム(21)を備えているので、非インジェクション運転からインジェクション運転に確実に切り替えることができる。
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手段等に限定されるものではない。
本発明の第1実施形態に係る蒸気圧縮式冷凍サイクルの模式図である。 本発明の第1実施形態に係る蒸気圧縮式冷凍サイクルの制御系のブロック図である。 本発明の第2実施形態に係る蒸気圧縮式冷凍サイクルの模式図である。 本発明の第2実施形態に係る蒸気圧縮式冷凍サイクルの制御系のブロック図である。 本発明の第4実施形態に係る蒸気圧縮式冷凍サイクルの模式図である。 本発明の第4実施形態に係る蒸気圧縮式冷凍サイクルの制御系のブロック図である。 本発明の第5実施形態に係る蒸気圧縮式冷凍サイクルの制御系のブロック図である。
以下に説明する「発明の実施形態」は実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的手段や構造等に限定されるものではない。
本実施形態は、サーバ室の冷房を行う空調装置用の蒸気圧縮式冷凍サイクルに本発明を適用したものである。サーバ室には、ICT機器や非常用電源装置(バッテリー)等の電気機器が設置されている。
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。なお、少なくとも符号を付して説明した部材又は部位は、「複数」や「2つ以上」等の断りをした場合を除き、少なくとも1つ設けられている。
(第1実施形態)
1.蒸気圧縮式冷凍サイクルの構成
本実施形態に係る蒸気圧縮式冷凍サイクル1は、図1に示すように、高圧熱交換器3、第1減圧器5A、第2減圧器5B、低圧熱交換器7、第1圧縮機9A、第2圧縮機9B、及び気液分離器11等を備えている。
高圧熱交換器3は、第1圧縮機9A及び第2圧縮機9Bのうち少なくとも一方から吐出された高圧の冷媒(以下、吐出冷媒ともいう。)を冷却する。つまり、高圧熱交換器3は、室外空気と吐出冷媒とを熱交換して、吐出冷媒を冷却する。
なお、本実施形態では、吐出冷媒の圧力は、冷媒の臨界圧力より小さい。このため、気相状態の吐出冷媒は、高圧熱交換器3にて冷却されて凝縮(液化)する。
第1減圧器5Aは、高圧熱交換器3から流出した高圧冷媒を減圧・膨張させる。第1減圧器5Aにて減圧された冷媒(以下、中間圧冷媒という。)は、気液分離器11にて気相冷媒と気相冷媒とに分離される。
気液分離器11は、気相冷媒と液相冷媒との密度差を利用して冷媒を分離する。このため、気液分離器11の下方側に液相冷媒が溜まり、かつ、気液分離器11の上方側に気相冷媒が溜まる。
因みに、高圧熱交換器3から流出する冷媒の過冷却度は、過冷却器等を備えている場合等を除き、通常、小さい。このため、第1減圧器5Aにて減圧された冷媒は、気液二相状態となる。
第2減圧器5Bは、気液分離器11にて分離された液相冷媒を減圧・膨張させて低圧熱交換器7に供給する。低圧熱交換器7は、第2減圧器5Bにて減圧された低圧の液相冷媒を蒸発させる。つまり、低圧熱交換器7では、第2減圧器5Bにて減圧された冷媒を室内に供給される空気にて加熱することにより、主に液相冷媒を蒸発(気化)させて当該空気を冷却する。
第1圧縮機9Aは、低圧熱交換器7側から流出した冷媒を吸引して圧縮するとともに、圧縮された冷媒を高圧熱交換器3側に吐出する。第2圧縮機9Bは、気液分離器11から気相冷媒を吸引して圧縮するとともに、圧縮された冷媒を第1圧縮機9Aの吐出側に吐出する。
第1アキュムレータ17Aは、低圧熱交換器7から流出する冷媒から気相冷媒を分離抽出して気相冷媒を第1圧縮機9Aの吸入側に供給する。第2アキュムレータ17Bは、気液分離器11から第2圧縮機9Bに供給される冷媒から気相冷媒を分離抽出して気相冷媒を第2圧縮機9Bの吸入側に供給する。
第1バルブ19は、後述する非インジェクション運転時に、第1圧縮機9Aの吐出側と第2圧縮機9Bの吐出側とが連通することを阻止する。なお、本実施形態に係る第1バルブ19は、第1圧縮機9Aから吐出された高圧の冷媒が第2圧縮機9Bに逆流することを規制する逆止弁にて構成されている。
第1送風機3Aは、高圧熱交換器3に冷却用空気(室外空気)を送風する。第2送風機7Aは、低圧熱交換器7に室内空気を送風する。
2.蒸気圧縮式冷凍サイクルの制御
2.1 制御系の構成
第1圧縮機9A、第2圧縮機9B、第1減圧器5A、及び第2減圧器5B等の作動は、図2に示すように、制御装置21により制御されている。制御装置21は、CPU、ROM及びRAM等を有するマイクロコンピュータにて構成されている。
第1圧縮機9A等の制御を実行するためのプログラム(ソフトウェア)は、ROM等の不揮発性記憶部に予め記憶されている。第1圧縮機9A等の制御が実行される際には、当該プログラムが読み込まれてCPUにて実行される。
制御装置21には、第1吐出圧センサS1、第2吐出圧センサS2、中間圧センサS3、低圧温度センサS4、蒸発温度センサS5、外気温度センサS6、及び室内温度センサS7からの検出信号が入力されている。
第1吐出圧センサS1は、第1圧縮機9Aの吐出冷媒の圧力(以下、第1吐出圧Pd1という。)を検出する。第2吐出圧センサS2は、第2圧縮機9Bの吐出冷媒の圧力(以下、第2吐出圧Pd2という。)を検出する。なお、本実施形態に係る制御装置21は、第1吐出圧センサS1が検出した冷媒圧力を、高圧熱交換器3内の冷媒圧力とみなしている。
中間圧センサS3は、第2圧縮機9Bの吸入側冷媒圧力、つまり中間圧冷媒の圧力を検出する。低圧温度センサS4は、低圧熱交換器7の冷媒出口側の冷媒温度を検出する。蒸発温度センサS5は、低圧熱交換器7の温度、つまり低圧熱交換器7での冷媒蒸発温度を検出する。
外気温度センサS6は、高圧熱交換器3に供給される冷却用空気、つまり外気の温度を検出する。室内温度センサS7はサーバ室内の空気の温度を検出する。なお、本実施形態に係る室内温度センサS7は、低圧熱交換器7側に吸い込まれる室内空気の温度を検出する。
なお、低圧温度センサS4及び蒸発温度センサS5は、低圧熱交換器7の冷媒出口側の冷媒加熱度、つまり低圧熱交換器7での冷却負荷(熱負荷)を検出するためのセンサである。したがって、蒸発温度センサS5に代えて、低圧熱交換器7での蒸発圧力を検出してもよい。
2.2 第1圧縮機の制御
制御装置21は、低圧熱交換器7にて必要な冷凍能力(冷房能力)が発生するように、第1圧縮機9Aの回転数を制御する。具体的には、制御装置21は、室内温度(室内温度センサS7の検出温度)が予め設定された温度範囲(例えば、10℃〜30℃)となるように、第1圧縮機9Aの作動を制御する。
なお、室内温度を低下させる際には、制御装置21は、第1圧縮機9Aの回転数を増大させて低圧熱交換器7で発生する冷凍能力を増大させる。このとき、制御装置21は、少なくとも低圧熱交換器7の表面温度が露点より高くなるまで第2送風機7Aの送風量を増大させる。
つまり、第1圧縮機9Aの回転数が増大すると、蒸発温度が低下して低圧熱交換器7の表面温度が露点以下となる可能性がある。表面温度が露点以下となると、低圧熱交換器7で発生する冷凍能力の多くが、空気中の蒸気を凝縮させるために消費される。このため、室内温度を低下させるに必要な消費電力が大きくなる。
そこで、本実施形態では、第1圧縮機9Aの回転数を増大させた場合には、第2送風機7Aの送風量、つまり低圧熱交換器7の熱負荷を増大させて顕熱比(SHF)が予め設定された値(例えば、0.95)以上となるようにしている。
冷房能力を低下させる際には、制御装置21は、第1圧縮機9Aの回転数を低下させて低圧熱交換器7で発生する冷凍能力を低下させるとともに、低下した冷凍能力に応じて第2送風機7Aの送風量を低下させる。
2.3 第2圧縮機の制御
制御装置21は、低圧熱交換器7での熱負荷の大きさ及び外気温度に基づいて、第2圧縮機9Bを稼働させるインジェクション運転と第2圧縮機9Bを停止させる非インジェクション運転とを切替制御する。
つまり、夏場のように熱負荷が大きく、外気温度も高い場合には、制御装置21はインジェクション運転を実行する。逆に、冬場のように熱負荷が小さく、外気温度も低い場合には、制御装置21は非インジェクション運転を実行する。
具体的には、本実施形態では、外気温度が予め決められた温度(以下、第1外気温度という。)以上となった場合、及び室内温度が予め決められた温度(以下、第1室内温度という。)以上のなった場合のうちいずれかの場合にインジェクション運転が実行される。
本実施形態では、外気温度が予め決められた温度(以下、第2外気温度という。)より低くなった場合、及び室内温度が予め決められた温度(以下、第2室内温度という。)より低くなった場合のうちいずれかの場合に非インジェクション運転が実行される。
なお、第1外気温度と第2外気温度とは、同一の温度及び異なる温度のうちいずれであってもよい。第1室内温度と第2室内温度とは、同一の温度及び異なる温度のうちいずれであってもよい。
インジェクション運転の実行時においては、制御装置21は、中間圧冷媒に含まれる気相冷媒量と第2圧縮機9Bの吸引冷媒量とが同一となるように第2圧縮機9Bの回転数を制御する。これにより、低圧熱交換器7に流入する冷媒に含まれる気相冷媒を減らして、低圧熱交換器7で発生する冷凍能力を大きくする。
2.2 第1減圧器の制御について
第1減圧器5Aは可変絞り装置にて構成されている。可変絞り装置は、絞り開度を変更調節する電気式のアクチュエータ(図示せず。)を有する。制御装置21は、上記アクチュエータの作動を制御して第1減圧器5Aの絞り開度を変更する。
制御装置21は、第1減圧器5Aの絞り開度の制御モードとして、少なくとも通常制御モード及び移行制御モードを実行することができる。このため、制御装置21は、通常制御部、及び移行制御部を有している。
通常制御部は通常制御モードを実行する。移行制御部は移行制御モードを実行する。なお、本実施形態に係る通常制御部、及び移行制御部は、プログラム(ソフトウェア)にて実現されている。当該プログラムは、ROM等の不揮発性記憶部に予め記憶されている。
<通常制御モード>
本実施形態に係る通常制御モードは、移行制御モードが実行されていないときに実行される。制御装置21は、通常制御モード時には、第1吐出圧センサS1及び中間圧センサS3からの検出信号を利用して第1減圧器5Aの絞り開度を制御する。つまり、制御装置21は、第1減圧器5Aから流出する冷媒の湿り度(液相冷媒の割合)が大きくなるように絞り開度を制御する。
<移行制御モード>
移行制御モードは、非インジェクション運転からインジェクション運転に移行する場合であって、第2圧縮機9Bの圧力比が予めから設定された所定の範囲(以下、仕様圧力比という。)外の場合に実行される。
圧力比とは、第2圧縮機9Bの吸入側圧力Psに対する圧縮機の吐出側圧力Pdの比(=Pd/Ps)をいう。仕様圧力比とは、圧縮機の設計仕様(スペック)である。このため、圧縮機を起動させる時の圧力比が当該圧縮機の仕様圧力比を越えていると、当該圧縮機を起動させることができない。
制御装置21は、第1吐出圧センサS1及び中間圧センサS3の検出信号を利用して第2圧縮機9Bの圧力比が仕様圧力比を越えていると判断したときには、第1減圧器5Aの絞り開度を大きくして中間圧冷媒の圧力、つまり第2圧縮機9Bの吸入側圧力Psを上昇させる。
つまり、制御装置21は、移行制御モード時には、第2圧縮機9Bの吸入側圧力Psを上昇させて第2圧縮機9Bの圧力比が仕様圧力比以下にする制御モードを実行する。そして、制御装置21は、第2吐出圧Pd2が第1吐出圧Pd1に基づいて決定された圧力(以下、停止圧力Pdsという。)になったときに、移行制御モードを停止させる。
本実施形態に係る停止圧力Pdsは第1吐出圧Pd1である。つまり、本実施形態に係る制御装置21は、第2吐出圧Pd2が第1吐出圧Pd1と同一となったとき、換言すれば、第1バルブ19が開くときに移行制御モードを停止させる。なお、移行制御モードが停止された後は、通常制御モードが実行される。
2.3 第2減圧器の制御について
第2減圧器5Bは、可変絞り装置(図示せず。)にて構成されている。可変絞り装置は、絞り開度を変更調節する電気式のアクチュエータ(図示せず。)を有する。制御装置21は、上記アクチュエータの作動を制御して第2減圧器5Bの絞り開度を変更する。具体的には、制御装置21は、低圧熱交換器7の冷媒出口側の冷媒加熱度が、0以上の値であって予め設定された所定の値となるように第2減圧器5Bの絞り開度を制御する。
3.本実施形態に係る蒸気圧縮式冷凍サイクルの特徴
本実施形態では、インジェクション運転と非インジェクション運転とを切り替えることが可能であるので、第1圧縮機9A及び第2圧縮機9Bの消費動力を更に低減可能なインジェクション方式の蒸気圧縮式冷凍サイクル1を得ることができる。
すなわち、圧縮行程途中に中間圧冷媒を注入することにより見込まれる消費動力の低減量により、中間圧冷媒を注入することにより必要とされる消費動力の方が大きくなる場合には、インジェクション運転から非インジェクション運転に切り替えることにより、消費動力を低減でき得る。
ところで、非インジェクション運転においては、第2圧縮機9Bが停止し、第1圧縮機9Aが稼働しているので、第2圧縮機9Bの吸入側圧力に対する当該第2圧縮機9Bの吐出側圧力の比が第2圧縮機9Bの仕様圧力比を超えている場合がある。
第2圧縮機9Bを起動させる直前の圧力比が仕様圧力比を越えていると、第2圧縮機9Bを起動させることができず、非インジェクション運転からインジェクション運転に切り替えることができない。
これに対して、本実施形態に係る移行制御部は、第2圧縮機9Bの圧力比を仕様圧力比以下にする圧力比制御システムとして機能するので、非インジェクション運転からインジェクション運転に確実に切り替えることができる。
(第2実施形態)
本実施形態に係る移行制御モードは、第2圧縮機9Bの吐出圧Pd2を第2圧縮機9Bの吸入側に導入することにより、第2圧縮機9Bの吸入圧Ps2を上昇させるものである。
すなわち、図3に示すように、本実施形態に係る蒸気圧縮式冷凍サイクルでは、均圧回路15及び第2バルブ15Aを有している。均圧回路15は、第2圧縮機9Bの吐出側と第2圧縮機9Bの吸入側とを繋ぐ圧力導入回路である。
第2バルブ15Aは均圧回路15の連通状態を調節する。第2バルブ15Aの作動は、図4に示すように、制御装置21により制御される。制御装置21は、移行制御モード時には、第2バルブ15Aを開いて吐出圧Pd2少なくとも一部を吸入側に導く。
制御装置21は、第2吐出圧Pd2が停止圧力Pdsになったときに、第2バルブ15Aを閉じて移行制御モードを停止させた後、通常制御モードを実行する。これにより、第2圧縮機9Bの吸入側圧力を上昇させることができるので、現実の圧力比を仕様圧力比以内とすることができる。
(第3実施形態)
本実施形態は第2実施形態の変形例である。すなわち、第2実施形態では、移行制御モード時における第2バルブ15Aの開度は、予め設定された圧力損失が発生する一定の開度であった。これに対して、本実施形態は、第2吐出圧Pd2が停止圧力Pdsに近づくほど第2バルブ15Aの開度を小さくするものである。
具体的には、制御装置21は、第2吐出圧Pd2の上昇変化、現実の圧力比(Pd2/Ps2)の低下変化、及び第2吐出圧Pd2と第2吸入圧Ps2との差圧(Pd2−Pds2)の縮小変化のうち少なくとも1つの変化に応じて第2バルブ15Aの開度を小さくするように可変制御する。
(第4実施形態)
上述の実施形態に係る移行制御モードは、第2吸入圧Ps2を上昇させることにより、第2圧縮機9Bの圧力比を仕様圧力比以内にするものであった。これに対して、本実施形態は、現実の圧力比が仕様圧力比以内になるように高圧冷媒の圧力を制御するものである。
すなわち、本実施形態に係る移行制御モード時においては、制御装置21は、(a)高圧熱交換器3の放熱能力を増大させる制御、及び(b)通常制御モード時に比べて第1圧縮機9Aの吐出冷媒量を減少させる制御(以下、第1制御という。)のうち少なくとも一方の制御を実行する。
具体的には、図5及び図6に示すように、本実施形態に係る蒸気圧縮式冷凍サイクルは、高圧熱交換器3に水を散水する散水器23を有している。散水器23の作動は制御装置21により制御される。
高圧熱交換器3の放熱能力を増大させる制御においては、制御装置21は、(a)第1送風機3Aの送風量を増大させる制御(以下、第2制御という。)、及び(b)散水器23にて高圧熱交換器3に水を散水する制御(以下、第3制御という。)のうち少なくとも一方の制御を実行する。
本実施形態に係る制御装置21は、第2圧縮機9Bを起動する直前の圧力比に基づいて、第1〜第3制御のうちいずれの制御を実行するかを決定する。例えば、圧力比が所定圧力比より大きい場合には、第1〜第3制御の全てを実行する。そして、第2吐出圧Pd2の上昇に応じていずれかの制御を停止させる。
なお、本実施形態においては、(a)第2吐出圧Pd2の上昇に応じて第1送風機3Aの送風量を低下させる可変制御、(b)第2吐出圧Pd2の上昇に応じて散水器23の散水量を低下させる可変制御、及び(c)第2吐出圧Pd2の上昇に応じて第1圧縮機9Aの回転数制御を通常制御モード時の回転数制御に近づける可変制御のうち少なくとも1つの可変制御を併用してもよい。
ところで、第2圧縮機9Bの圧力比が仕様圧力比以内であっても、高圧冷媒の圧力が第2圧縮機9Bの仕様最大吐出圧を越えている場合には、非インジェクション運転からインジェクション運転に移行する際に、第2圧縮機9Bを起動させることができない。
これに対して、本実施形態では、上記(a)〜(c)のいずれの可変制御を用いても、高圧冷媒の圧力を低下させることが可能である。このため、本実施形態では、非インジェクション運転からインジェクション運転に移行する際に、高圧冷媒の圧力が第2圧縮機9Bの仕様最大吐出圧を越える可能性が高い場合であっても第2圧縮機9Bを起動させることができる。
因みに、第1送風機3A及び散水器23は、高圧熱交換器3の放熱能力を調整する放熱力調整部として機能する。移行制御部、つまり制御装置21は、高圧冷媒の圧力を制御する高圧制御部、及び熱力調整部の作動を制御する放熱力制御部として機能する。
(第5実施形態)
本実施形態に係る制御装置21は、低圧熱交換器7から室内に供給される吹出空気の温度が予め設定された温度範囲となるように第1圧縮機9Aの作動を制御する。このため、図7に示すように、制御装置21には、吹出空気の温度を検出する吹出温度センサS8からの出力信号が入力される。
そして、本実施形態においては、第2送風機7Aの送風量は、室内温度(室内温度センサS7の検出温度)と吹出空気温度(吹出温度センサS8の検出温度)との差に基づいて制御される。
なお、図7は、第1実施形態に本発明を適用したものであるが、本実施形態に係る第1圧縮機9A及び第2送風機7Aの制御手法は、第2〜第4実施形態に係る蒸気圧縮式冷凍サイクルにも適用可能である。
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、第1圧縮機9Aと第2圧縮機9Bとは、冷媒流れに対して並列に配置されていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1圧縮機9Aと第2圧縮機9Bとは、冷媒流れに対して直列に配置してもよい。
なお、第1圧縮機9Aと第2圧縮機9Bとを冷媒流れに対して直列に配置した場合には、非インジェクション運転時に第1圧縮機9Aから吐出された冷媒を、第2圧縮機9Bを迂回させて高圧熱交換器3に導く迂回路を設ける必要がある。
上述の実施形態では、高圧側の冷媒圧力が冷媒の臨界圧力より低くかったが、本発明はこれに限定されるものではなく、高圧側の冷媒圧力が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍機にも適用できる。なお、超臨界冷凍機においては、高圧熱交換器3にて冷媒は凝縮しない。
上述の実施形態では、第1圧縮機9Aと第2圧縮機9Bとが独立した圧縮機であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、インジェクションポートを備える1台の圧縮機等にて構成してもよい。なお、圧縮機の形式は、不問である。つまり、レシプロ方式、ロータリ方式、ベーン方式及びスクロール方式等のいずれの方式であってもよい。
上述の実施形態では、第2アキュムレータ17Bを設けたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、気液分離器11から第2圧縮機9Bに至る冷媒通路における圧力損失は小さい場合や当該冷媒通路で冷却が小さい場合等、当該冷媒通路にて気相冷媒が凝縮(液化)するおそれが無い場合には、第2アキュムレータ17Bを廃止してもよい。
上述の実施形態では、第1アキュムレータ17Aを設けたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第2減圧器5Bにて低圧熱交換器7の出口における冷媒過熱度を0以上に確保できる場合、つまり過渡的な変化に対しても第2減圧器5Bが追従できる場合には、第1アキュムレータ17Aを廃止してもよい。
上述の実施形態では、第1圧縮機9Aの回転数を制御することより高圧熱交換器3で発生する冷凍能力を制御したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えは、第2減圧器5Bの絞り開度、及び第1圧縮機9Aの回転数を調整して冷凍能力を制御する、第2送風機7Aの回転数を制御して室内に吹き出す空気の温度を制御する等してもよい。
本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。したがって、第1〜第5実施形態に示された蒸気圧縮機式冷凍サイクルのうち、少なくとも2つの蒸気圧縮機式冷凍サイクルを組み合わせてもよい。特に、第3実施形態と第4実施形態とを組み合わせてもよい。
1… 蒸気圧縮式冷凍サイクル 3… 高圧熱交換器 5A… 第1減圧器
5B… 第2減圧器 7… 低圧熱交換器 9A… 第1圧縮機
9B… 第2圧縮機 11… 気液分離器 19… 第1バルブ

Claims (11)

  1. 低温側の熱を高温側に移動させる蒸気圧縮式冷凍サイクルにおいて、
    高温側の冷媒を冷却する高圧熱交換器と、
    低温側の冷媒を加熱・蒸発させる低圧熱交換器と、
    前記高圧熱交換器から流出した高圧冷媒を減圧・膨張させる第1減圧器と、
    前記第1減圧器にて減圧された中間圧冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離する気液分離器と、
    前記気液分離器にて分離された液相冷媒を減圧・膨張させて前記低圧熱交換器に供給する第2減圧器と、
    前記低圧熱交換器側から流出した冷媒を吸引して圧縮するとともに、圧縮された冷媒を前記高圧熱交換器側に吐出する第1圧縮機と、
    前記気液分離器から気相冷媒を吸引して圧縮するとともに、圧縮された冷媒を前記第1圧縮機の吐出側に吐出する第2圧縮機と、
    前記第2圧縮機の作動を制御するインジェクション制御部であって、前記第2圧縮機を稼働させるインジェクション運転と前記第2圧縮機を停止させる非インジェクション運転とを切替制御可能なインジェクション制御部と、
    前記第2圧縮機の吸入側圧力に対する当該第2圧縮機の吐出側圧力の比を圧力比としたとき、前記非インジェクション運転から前記インジェクション運転に移行する場合であって前記圧力比が予め設定された所定の範囲外の場合に、前記圧力比を前記所定の範囲内にする圧力比制御システムと、
    前記非インジェクション運転時に、前記第1圧縮機の吐出側と前記第2圧縮機の吐出側とが連通することを阻止する第1バルブと
    を備えることを特徴とする蒸気圧縮式冷凍サイクル。
  2. 前記圧力比制御システムは、
    前記圧力比が前記所定の範囲内になるように前記第1減圧器の開度を制御する移行制御部
    を有することを特徴とする請求項1に記載の蒸気圧縮式冷凍サイクル。
  3. 前記移行制御部は、前記第2圧縮機の吐出圧が、前記第1圧縮機の吐出圧に基づいて決定される圧力になったときに停止することを特徴とする請求項2に記載の蒸気圧縮式冷凍サイクル。
  4. 前記圧力比制御システムは、
    前記第2圧縮機の吐出側と前記第2圧縮機の吸入側とを繋ぐ均圧回路に設けられ、当該均圧回路の連通状態を調節する第2バルブ、及び
    前記第2バルブの作動を制御する第2バルブ制御部であって、前記均圧回路を連通させて前記第2圧縮機の吐出圧を前記吸入側に導く第2バルブ制御部
    を有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の蒸気圧縮式冷凍サイクル。
  5. 前記第2バルブ制御部は、前記第2圧縮機の吐出圧が、前記第1圧縮機の吐出圧に基づいて決定される圧力(以下、停止圧力という。)になったときに、前記第2バルブを閉じることを特徴とする請求項4に蒸気圧縮式冷凍サイクル。
  6. 前記第2バルブ制御部は、前記第2圧縮機の吐出圧が前記停止圧力に近づくほど前記第2バルブの開度を小さくすることを特徴とする請求項5に記載の蒸気圧縮式冷凍サイクル。
  7. 前記圧力比制御システムは、
    前記圧力比が前記所定の範囲内になるように前記高圧冷媒の圧力を制御する高圧制御部
    を有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の蒸気圧縮式冷凍サイクル。
  8. 前記高圧制御部は、
    前記高圧熱交換器の放熱能力を調整する放熱力調整部、及び
    前記高圧熱交換器の放熱能力を増大させるように前記放熱力調整部の作動を制御する放熱力制御部
    を有することを特徴とする請求項7に記載の蒸気圧縮式冷凍サイクル。
  9. 前記放熱力調整部は、前記高圧熱交換器に冷却風を送風する送風機であることを特徴とする請求項8に記載の蒸気圧縮式冷凍サイクル。
  10. 前記放熱力調整部は、前記高圧熱交換器に水を散水する散水器であることを特徴とする請求項8に記載の蒸気圧縮式冷凍サイクル。
  11. 前記非インジェクション運転から前記インジェクション運転に移行する場合であって前記圧力比が前記所定の範囲外の場合に実行される制御モードを移行制御モードとしたとき、
    前記高圧制御部は、前記移行制御モード時に当該移行制御モードが実行されていない場合に比べて前記第1圧縮機の吐出冷媒量を減少させることを特徴とする請求項7に記載の蒸気圧縮式冷凍サイクル。
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