実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1によるコイル装置の構成概念を説明する図であり、図2は本発明の実施の形態1による磁性粒子イメージング装置を示す図である。図3は図2の大口径コイルを示す図であり、図4は零磁界領域を発生する原理を説明する図である。図5及び図6は、図2の大口径コイルと小口径コイルとの配置位置を示す図である。図7及び図8は、人体の海馬の位置を示す図である。図9及び図10は、図2の大口径コイル及び小口径コイルの断面を示す図である。図11は比較例1のコイル装置における大口径コイル及び小口径コイルの断面を示す図である。図12は、比較例2のコイル装置における大口径コイル及び小口径コイルの断面を示す図であり、図11の比較例1のコイル装置に2つの円形コイルが追加された図である。図13は、比較例3のコイル装置における大口径コイル及び小口径コイルの断面を示す図であり、小口径コイルを移動した場合の配置位置を示す図である。図14は、図13の大口径コイル及び小口径コイルの断面を示す図である。
図2に示すように、実施の形態1の磁性粒子イメージング装置100は、大口径コイル1と小口径コイル2と小口径コイル2を移動する移動装置7を有するコイル装置10と、大口径コイル1と小口径コイル2とに逆向きの電流を流す駆動電源3と、被測定者15が載置される測定台55と、被測定者15に供給された磁性粒子の磁界の変化を示す変動磁界(磁性粒子情報信号)を測定する受信センサー11(図5参照)と、受信センサー11により測定された磁性粒子の磁性粒子情報信号に基づいて磁性粒子の分布を画像化する画像処理計算機4を備えている。磁性粒子イメージング装置100は、被測定者15に供給された磁性粒子の分布を画像化する装置である。大口径コイル1は、長軸18と短軸19(図5参照)を有する。小口径コイル2は、例えば円形コイルである。大口径コイル1と小口径コイル2のコイル軸16、17は同方向を向いており、小口径コイル2は移動装置7により大口径コイル1の長軸18に沿って移動可能な様に構成している。
大口径コイル1のコイル軸16は、長軸18及び短軸19の交点を通るZ方向の軸である。小口径コイル2のコイル軸17は、円の中心を通るZ方向の軸である。大口径コイル1及び小口径コイル2の座標系は、それぞれコイル座標系61及びコイル座標系62である。コイル座標系61において、Z方向はコイル軸16に平行な方向であり、X方向はZ方向に垂直で長軸18に平行な方向であり、Y方向はZ方向及びX方向に垂直な方向である。同様に、コイル座標系62において、Z方向はコイル軸17に平行な方向であり、X方向はZ方向に垂直でかつ大口径コイル1の長軸18に平行な方向であり、Y方向はZ方向及びX方向に垂直な方向である。なお、適宜、大口径コイル1を単にコイル1と呼び、小口径コイル2を単にコイル2と呼ぶことにする。
大口径コイル1は、例えば、直線部5と半円部6を備えたレーストラック型コイルである。図3に示すように、直線部5は、線71と線72の間に位置する部分と、線73と線74の間に位置する部分である。半円部6は、線71及び線74から外側(図3において右側)に位置する部分と、線72及び線73から外側(図3において左側)に位置する部分である。大口径コイル1は、開口部12が形成された開口面において、長軸18及び短軸19を有している。また、大口径コイル1は、開口部12が形成された開口面に平行な断面においても、長軸18及び短軸を有している。小口径コイル2は、開口部12を有しており、この開口部12が大口径コイル1の開口部12に対向して配置されている。
直線部5は図3においてY方向上側とY方向下側の2つがあり、区別する場合の符号には、図5、図6に示すようにY方向上側(正側)の直線部5a、Y方向下側(負側)の直線部5bを用いる。半円部6は図3において左右に2つあり、左右に位置する半円部6を区別する場合には、図5、図6に示すように、それぞれの符号においてX方向右側(負側)の半円部6a、X方向左側(正側)の半円部6bを用いる。すなわち、直線部の符号は、総括的に5を用い、区別する場合に5a、5bを用いる。同様に、半円部の符号は、総括的に6を用い、区別する場合に6a、6bを用いる。なお、図5、図6のX方向の配向(正側及び負側の配向)は、図3のX方向の配向と異なっている。
被測定者15の体内に供給された磁性粒子の磁界を測定し、磁性粒子の有無を高分解能で検出するには、後で詳しく述べるように、これらコイル(大口径コイル1、小口径コイル2)により所望の検出位置で零磁界領域45を生成し、かつ零磁界領域45以外の位置では強い磁界を発生させ、かつ零磁界領域45をX方向、Y方向、Z方向の広い領域で被測定者15においてスキャンさせる必要がある。零磁界領域45を生成するコイル数が2個の場合、コイル1とコイル2を同一平面に配置するのではなく、両コイルをZ方向に沿って離すことにより、これらコイルで挟まれたZ方向の領域に零磁界領域45を生成する。このようにすれば、両コイルを離した長さに応じて、零磁界領域45をZ方向に沿って広くスキャンできる。このため、被測定者15の頭部において磁性粒子を検出する場合は、コイル1とコイル2に挟まれた領域に頭部を配置する。コイル1またはコイル2のどちらかが頭部の胴体側に配置される。図1、図2では、被測定者15の頭13よりも大きな口径を有する大口径コイル1が頭13と胴体14の間に配置され、小口径コイル2が頭13の外に配置された例を示した。このように構成することにより、大口径コイル1を被測定者15の頭頂部から挿入することができ、又は被測定者15を頭13の側から大口径コイル1に挿入することができる。また、小口径コイル2は頭13の外にあるため、小口径コイル2の口径は極力小さくでき、口径を小さくすることにより極力インダクタンスを小さくすることができる。なお、図1では、駆動電源3、移動装置7、受信センサー11は省略した。
図2に示すように、コイル装置10は、駆動電源3により流される上記2個のコイル1、コイル2の電流方向が異なるため、コイル1とコイル2に挟まれたZ方向のある位置で零磁界領域45が発生する。この零磁界領域45のZ方向の位置は、コイル1とコイル2とが同軸にある場合、すなわちコイル軸16とコイル軸17が重なる場合には、コイル1とコイル2の電流比の調整で変更可能である。駆動電源3は、例えば2つの電源ユニットを備えた駆動電源であり、1つの電源ユニットがコイル1に電流を流し、他の電源ユニットがコイル2に電流を流す。
一方、Z方向に沿った磁界は、零点(零磁界領域45を1点とした場合)を中心として、例えばZ方向の正側は零点からの距離とともに増大し、Z方向の負側は零点からの距離とともに増大する。即ち、Z方向に沿った磁界分布は傾斜磁界となる。この傾斜磁界は、磁性粒子の検出磁界の分解能を高めるためには、大きい方が良く、2T/m程度が必要とされる。
また、後で述べる様に、コイル1とコイル2を円形コイルで構成した場合、コイル軸に沿った方向(Z方向)以外のスキャン、すなわちコイル軸に垂直な方向(X方向、Y方向)のスキャンは、不得手である。人体の臓器には離れた2か所にあるものがある。更に、海馬の様に2か所に分かれた細長い臓器では、臓器の長手方向のスキャンを極力容易にするために、長手方向とコイル軸を合わせようとすると、コイル軸に垂直な垂直面に沿った方向は、零磁界領域のスキャンが難しいという問題があった。この問題を解決するには、図1のような構成が良い。以下に説明する。
被測定者15の頭13から足の軸(体軸)をZ方向に向け、頭13の前頭部と後頭部を結ぶ線をほぼY方向に向け、2個の目を結ぶ軸あるいは2個の海馬8、9(図5、図6参照)の中心位置を結ぶ線をX方向に向ける。
コイル1は図1において楕円形をしており、長軸18の延伸方向はX方向であり、短軸19の延伸方向はY方向である。この様な楕円形のコイルの場合、コイルが生成する、長軸18と短軸19の交点を通過するコイル軸16の延伸方向の磁界、すなわちZ方向の磁界は長軸18に沿って均一になる。このため、後で述べる様に、コイル2を長軸18に平行なX方向に沿って移動装置7(図2参照)により移動することで、零磁界領域をX方向に容易にスキャンできる。コイル装置10は、移動装置7を備えるので、図1に示す様にコイル1とコイル2のコイル軸16、17をずらして配置することができ、コイル2が2か所の海馬8、9に応じて長軸18に沿って動く様に構成されている。これにより、コイル装置10は、2か所の海馬8、9の位置で容易に零磁界領域45を発生できる。なお、前述したように、Z方向へのスキャンは、コイル1とコイル2との電流比を変更することにより容易に実行できる。移動装置7は、例えば、コイル2を移動可能に保持する保持棒と保持棒を移動するモータを備えている。
なお、上記では2か所の海馬8、9を検査対象(測定対象)、すなわち画像化する撮影対象とする例で説明したが、被測定者15の他の場所も画像化することもできる。コイル装置10は、コイル1とコイル2との電流比を変更することにより零磁界領域45におけるZ方向の位置を制御し、コイル2を移動装置7により移動することにより零磁界領域45におけるX方向の位置を制御する。コイル2が移動可能な範囲であれば、海馬8、9以外の点、例えばこれら2点を結ぶ軸(X軸)上の中間点でも零磁界領域45を生成可能である。したがって、零磁界領域を含む検査区域に近接して配置された受信センサー11(図5、図6参照)により、被測定者15に供給された磁性粒子の磁界の変化を示す磁性粒子情報信号を、検査区域において測定することが可能である。受信センサー11は、一般的にはコイルが使われるが、コイルである必要はなく、ホール素子等他の磁気センサーであっても良い。
次に、磁性粒子イメージングの信号測定の原理について述べる。まず、図4を用いて零磁界領域を発生する原理を説明する。図4において、円形コイル21、22がそれぞれのコイル軸がZ方向に重なって配置されている。円形コイル21、22には電流が同じ大きさで逆方向に流れており、円形コイル21、22により磁束線23が発生している。円形コイル21、22の中央部に向かう、円形コイル21による磁束線23と円形コイル22による磁束線23とは向きが逆であり、円形コイル21と円形コイル22との中央部では磁束線23が反発して存在しないので、円形コイル21と円形コイル22との中央部には零磁界領域20が生成されている。図4から分かる様に、これら円形コイル21、22の電流の向きが反対のため、零磁界領域20をコイル軸(図4のZ軸)上に生成することができる。
次に、磁性粒子イメージングにおける零磁界、零磁界領域の必要性について述べる。零磁界領域20に磁性粒子が存在すると、磁性粒子は高μ状態(高磁気モーメント状態)になる。即ち、高μ状態では、磁性粒子の磁気モーメントはフリーで自由に動ける状態になる。円形コイル21あるいは円形コイル22、又は両円形コイル21、22のコイル電流を振動させたり、円形コイル21及び円形コイル22とは異なる他のコイル(図示せず)で磁界を振動させたり(高周波磁界を発生させたり)すると、磁性粒子の磁気モーメントは磁界方向を向くため、磁界方向の変化に伴って磁性粒子の磁気モーメントが振動する。これにより、磁性粒子は外部に変動磁界を発生する。この磁性粒子の変動磁界を例えば受信コイル等の受信センサー11で測定することで、磁性粒子の有無を検出できる。このように、磁性粒子の有無を検出し、被測定者15における磁性粒子の分布を画像化することができる。画像処理計算機4は、通常行われる画像化方法により、被測定者15に供給された磁性粒子の分布を画像化する。
一方、零磁界ではない、すなわち高磁界中では、磁性粒子の磁気モーメントは、静磁界の方向であるZ方向に向いて固定される。即ち、磁性粒子の磁気モーメントが飽和しており、磁性粒子は低μ状態であり、磁性粒子の磁気モーメントは高周波磁界を印加しても先の強力な静磁界方向に向いて固定されている。このため、磁性粒子の磁気モーメントは振動せず、受信センサー11で磁性粒子の変動磁界が測定できず、磁性粒子の変動磁界信号(磁性粒子情報信号)は出ない。以上のように、零磁界領域20に存在する磁性粒子のみを検出できる。この零磁界領域20を三次元的に被測定者15においてスキャンすることで、磁性粒子の三次元分布を測定できる。このように、磁性粒子の有無を検出し、被測定者15に供給された磁性粒子の分布を画像化することができる。
図5、図6を用いて、2つの海馬を検査対象とする場合のコイル1、2の配置位置を説明する。この説明に先立って、図7、図8を用いて、海馬の位置を説明する。図7は側頭部から見た場合の海馬の位置を示しており、図8は正面から見た場合の海馬の位置を示している。海馬は頭の中に左右2か所に存在し、2つの海馬8、9は互いに10cm程度離れている。また、海馬は前頭部から後頭部に向けて細長い。
図5、図6は、人体正面からコイル軸17(図2参照)の方向に見た場合のコイル1、コイル2、被測定者15の頭13を示している。図5は海馬9において零磁界領域45を生成する場合のコイル1及びコイル2の配置位置を示しており、図6は海馬8において零磁界領域45を生成する場合のコイル1及びコイル2の配置位置を示している。コイル1のコイル軸16は、前述したように、長軸18及び短軸19の交点を通るZ方向の軸である。コイル2のコイル軸17は、前述したように、円の中心通るZ方向の軸である。図5、図6から、コイル1のコイル軸16とコイル2のコイル軸17がずれている様子が分かる。図1に示した例ではコイル1は楕円形として一般的に述べたが、通常は直線部を有するレーストラック型コイルで良く、図5、図6において、太線でレーストラック型コイルを示した。実際のレーストラック型コイルは、複数回巻かれた巻線を有するので、図3のように巻線部が厚くなっているが、図5、図6では複雑にならないように簡略化している。
図5のコイル2aは海馬9のほぼ中心にコイル軸17がくるようにコイル2を配置した例であり、コイル軸17の中心はZ軸中心66である。図6のコイル2bは海馬8のほぼ中心にコイル軸17がくるようにコイル2を配置した例であり、コイル軸17の中心はZ軸中心65である。コイル1のコイル軸16の中心はZ軸中心67であり、Z軸中心67はコイル1のコイル軸16に垂直な面(前述した開口面)の中心である。なお、図5、図6において、コイル2a、コイル2bは、破線で示した。
例えば、海馬8の撮影終了後、コイル2のコイル軸17を移動装置7により海馬8から海馬9に移動して撮影する。この様に、移動装置7によってコイル2を移動することで、コイル2のコイル軸17は、海馬8、9の2か所とその中間点の任意の位置に移動可能である。図1、図2、図5、図6で示すコイル装置10では、コイル2をコイル1の長軸18に平行な軸上でX方向に移動することで、海馬8からの磁性粒子情報信号を測定した後にコイル2を海馬9へ移動し、海馬9からの磁性粒子情報信号を測定できる。なお、海馬からの磁性粒子情報信号は受信センサー11により測定するので、コイル装置10は受信センサー11(図5、図6参照)を備えている。前述したように、受信センサー11は零磁界領域45を含む検査区域に近接して配置される。
とくに、レーストラック型コイルは、直線部5と長軸18とが平行であり、Z方向から見た場合に長軸18は2つの海馬8、9を結ぶ線と重なる。この様に、被測定物(測定対象物)である2つの海馬8、9を結ぶ線と、レーストラック型コイル(コイル1)の直線部5及び長軸18とを並行に配置すれば、コイル2の移動は一次元方向のみであり、コイル2をX方向に移動することでX方向のスキャンができる。直線部5及び長軸18と被測定物を結ぶ線が長軸18に対して傾いているとコイル2の移動は二次元的に動かす必要がある等の問題が生じる。しかし、実施の形態1のコイル装置10は、被測定物である2つの海馬8、9を結ぶ線と、レーストラック型コイル(コイル1)の直線部5及び長軸18とを並行に配置したので、コイル2の移動は一次元方向のみであり、コイル2を二次元に移動するものよりも小型の装置にでき、コイル2の移動装置7も小型でき、コイル2の移動制御も容易に行うことができる。
次に、長軸を有するコイルが必要な理由を示すが、その前に2個の円形コイルで構成した場合の問題点について述べる。まず、図11の比較例(比較例1)を用いて説明する。図11には、コイル1相当の円形コイル21とコイル2相当の円形コイル22とが、コイル軸24に沿って同軸状に配置した場合の断面図を示した。コイル軸24の延伸方向はZ軸方向であり、図11において下向きが正方向である。なお、図4では円形コイル21と円形コイル22は大きさが同じであったが、図11では円形コイル21と円形コイル22とは、半径及び断面積等がそれぞれ異なる。図11において、円形コイル21が生成する磁束線30と、円形コイル22が生成する磁束線31を示した。
また、図11において、円形コイル21が生成するコイル軸24に沿った磁界32、円形コイル22が生成するコイル軸24に沿った磁界33、零磁界領域34を示した。図11に示す様に、コイル軸24上では、円形コイル21と円形コイル22が生成するZ方向の磁界(磁界32、磁界33)は反対方向のため、円形コイル21と円形コイル22の電流比の調整で零磁界領域34を発生できる。また、この電流比を変えることで、零磁界領域34のZ方向位置を容易にスキャンすることができる。
次に、図11の配置で零磁界領域34をX方向へスキャンすることを考える。この様子を示したのが図12の比較例(比較例2)である。図11では零磁界領域34がコイル軸24上にあったが、図12では、零磁界領域35がコイル軸24からX方向の円形コイル38側にずれている。図12において、円形コイル21が生成するX方向の磁界36と、円形コイル22が生成するX方向の磁界37を示した。コイル軸24からずれた位置では円形コイル21と円形コイル22はX方向の磁界36、37がそれぞれ発生する。
コイル軸24以外の位置で零磁界領域35を得るには、円形コイル21と円形コイル22が生成する磁界におけるZ方向成分及びX方向成分は、いずれも向きが反対方向で絶対値が等しくなければならない。ところが、一般にはこの条件は成立しない。例えば、コイル軸24以外の位置において、図11で示した条件、すなわちZ方向の磁界が反対方向で、かつ絶対値が等しくなる様に、円形コイル21と円形コイル22の電流比を設定すると、X方向成分の絶対値は等しくならない。即ち、X方向の磁界36、37が発生する。この状態が図12に示されており、この場合の零磁界領域35は仮想零磁界領域である。したがって、コイル軸24以外の位置において、零磁界領域35を実際に得るには、通常X方向の磁界を発生するコイルの配置が必要である。このコイルが、図12の円形コイル38と円形コイル39である。
これら円形コイル38、39は、円形コイル21、22とは異なり、コイル軸25がX方向を向いており、X方向の磁界を発生する。また、円形コイル38と円形コイル39の電流方向は同方向であり、円形コイル21、22の中心(コイル軸24とコイル軸25の交点)付近にX方向磁界を発生する。円形コイル21と円形コイル22が発生したX方向の合計磁界(X方向の磁界36とX方向の磁界37の差分)を、円形コイル38と円形コイル39が発生する磁界で打ち消す。これにより、比較例2のコイル装置は、X方向にずれた位置で零磁界領域35を発生できる。但し、比較例2のコイル装置は、円形コイル21と円形コイル22でキャンセルできなかったX方向磁界(X方向の磁界36とX方向の磁界37の差分)を評価し、このX方向磁界を零に設定する様に円形コイル38、39の電流値を決める必要がある。しかし、これを二次元的に、すなわちZ方向及びX方向で零磁界領域35をスキャンしようとすると、事前に評価すべき評価点が多くなり大変な手間である。
これを改良するコイルについて次に述べる。前述したように、海馬は図8に示した様に、頭の中に左右2か所、10cm程度離れて存在する。また、図7に示した様に、海馬は前頭部から後頭部に向けて細長い。ここでは、2つの海馬を撮影するのに適したコイルの例を説明する。
前述したように、傾斜磁界はZ方向に2T/m程度必要とされるので、X方向には1T/mの磁界が発生する。詳細は省くが、Z方向の磁界(dBz/dz)により発生するX方向の磁界(dBx/dx)の大きさが、Z方向の磁界の1/2になることがMaxwellの方程式から導出できる。10cm離れてX方向にスキャンをするには、図12の円形コイル38、39で1000G(=0.1T=1T/m×0.1m)のX方向磁界を発生させることが必要である。この磁界を常電導コイルで発生させるには、大きな電源と断面積の大きなコイルが必要になる問題が生じ、実現するにはかなり難しい。
このため、図12の円形コイル38、39を用いずに2つの円形コイル21、22のみで、零磁界領域を生成できるかどうかを考える。実施の形態1のコイル装置10と同様に、図1のコイル2に相当する図12の円形コイル22をX方向に機械的に移動させる比較例(比較例3)を考える。この比較例3を図13、図14を用いて説明する。図13は、図5及び図6と同じ方向から見た図である。円形コイル40は図1のコイル1相当であるが、楕円ではなく円形コイルである。図13において、破線で示したコイル2は、図5及び図6と同じ円形コイルである。図13と図14においてX軸の向きが異なっているので、図13と図14におけるコイル2の位置は同じである。コイル2はコイル軸26が海馬9の位置にある場合を示している。長破線で示したコイル29は、コイル軸26が海馬8の位置にある場合のコイル2を示している。
図12の比較例2においては、2つの円形コイル21、22が同軸であったが、比較例3は円形コイル40のコイル軸24とコイル2のコイル軸26がずれている点で比較例2と異なる。比較例3は、比較例2と同様に、Z方向へのスキャンが容易であるが、X方向へのスキャンが次に述べる理由で難しい。
この理由を図14で説明する。図14はコイル2をX方向に移動させた場合の図である。図14において、円形コイル40が生成する磁束線75と、コイル2が生成する磁束線76と、仮想の零磁界領域35を示した。また、図14において、図12と同様に、円形コイル40が生成するコイル軸26に沿った磁界32、コイル2が生成するコイル軸26に沿った磁界33を示した。図14に示す様にコイル2を移動した場合でも、図12と同様にX方向磁界が発生する。即ち、コイル軸24からずれた位置では円形コイル40とコイル2の生成する磁界はX方向の磁界36、37がそれぞれ発生する。
ところで、コイル軸24以外の位置で零磁界領域35を得るには、円形コイル40とコイル2が生成する磁界におけるZ方向成分及びX方向成分は、いずれも向きが反対方向で絶対値が等しくなければならない。ところが、一般にはこの条件は成立しない。即ち、Z方向の磁界が反対方向で絶対値が等しくなる様に円形コイル40とコイル2の電流比を設定すると、X方向成分の絶対値は等しくならない。この様子を図14に示した。図14に示すように、Z方向の磁界32、33は等しいが、X方向の磁界36、37は等しくない。即ち、X方向の磁界36、37が打ち消し合うことがないので、図14に示す様にX軸磁界成分が発生する。したがって、図14における零磁界領域35は仮想零磁界領域であり、実際に零磁界領域を得るには、図12と同様に、X方向の磁界を発生する円形コイル38、39を配置する必要がある。
次に、X方向の磁界を発生する円形コイル38、39を配置せずとも上記問題を解決できる方法、即ち、X方向磁界発生コイルである円形コイル38、39が不要な方法について述べる。この方法を実現したコイル装置が、実施の形態1のコイル装置10である。実施の形態1のコイル装置10において、2つのコイルで少なくとも一次元方向(X方向)に移動可能な零磁界領域が生成できる理由を、図3、図9、図10を用いて説明する。
図3は、長軸18と短軸19を有するコイル1をコイル軸16(図1参照)の正方向から負方向に見た図である。コイル1は、XY断面においてZ方向の磁界Bzを発生する。図3には、前述したように長軸18に平行な直線部5を有するレーストラック型コイルを示した。図3に示す様に、レーストラック型コイルであるコイル1はX方向に直線部5を有するため、長軸18の周囲であって、2つの直線部5で挟まれた領域には、磁界Bzが均一になる均一磁界領域41が形成できる。長軸18をX方向に配置することで、X方向に磁界Bzが均一になる均一磁界領域41が形成できる。
次に、図9、図10を用いて、均一磁界領域41の任意の位置で零磁界領域が生成できることを説明する。図9は図5に示したコイル1及びコイル2におけるZX断面を示しており、図10は図6に示したコイル1及びコイル2におけるZX断面を示している。図9、図10において、コイル2が2か所の位置で、コイル1の磁界を打ち消す様子を示した。前述したように、海馬9にコイル2のコイル軸17がある場合のコイル2の符号を2aとしており、海馬8にコイル2のコイル軸17がある場合のコイル2の符号を2bとしている。
図9、図10において、均一磁界領域41の磁界43をベクトルで示した。図9において、零磁界領域45aがコイル2aのコイル軸17上に発生している。同様に、図10において、零磁界領域45bがコイル2bのコイル軸17上に発生している。図9、図10において、コイル1が生成する磁束線48と、コイル2a、2bが生成する磁束線49を示した。
なお、コイル1はX方向には均一な磁界を生成するが、Z方向には均一な磁界ではない。図9、図10では、Z方向に大きさの異なるベクトルを示しており、X方向には同じ大きさのベクトルを示した。このため、コイル1とコイル2(図9のコイル2a、図10のコイル2b)との磁界合計で零磁界領域を生成する場合、Z方向において零磁界領域近傍で1次の傾きを有する磁界が生成される。
コイル1は、コイル1の発生する磁界43が、少なくともX方向に異なる2か所の位置を含むように長軸18に沿って均一な磁界を発生する様に構成している。このため、コイル1よりも小さいコイル2を、上記2か所の位置にそれぞれ移動しながら配置しても、コイル1が生成する磁界43がZ方向の磁界(Bz磁界)のみのため、この磁界43をコイル2により打ち消すことが可能である。すなわち、コイル装置10は、コイル1及びコイル2により、コイル2のコイル軸17が移動可能な任意の位置において零磁界領域を生成できる。
したがって、図9に示すように、コイル1が生成する磁界43を、コイル2aの磁界44で打ち消すことが可能である。同様に、図10に示すように、コイル1が生成する磁界43を、コイル2bの磁界47で打ち消すことが可能である。このコイル1が生成する磁界が均一なX軸方向の範囲(均一磁界領域41のX方向範囲)を、離れた臓器(海馬、目、腎臓)よりも大きい範囲に設定すれば、コイル2を移動することで、零磁界領域45(図2参照)をX方向に移動できる。一般には、コイル1の直線部5の長さを、検査対象(撮影対象)である離れた臓器よりも長く設定すればこの条件は満足できる。更に、コイル1とコイル2の電流比の調整でZ軸方向磁界を容易にスキャンすることができる。
この様に、実施の形態1のコイル装置10は、長軸18と短軸19を有するコイル1と、コイル1よりも小口径のコイル2と、コイル2を移動する移動装置7を備え、コイル2を移動装置7によりコイル1の長軸18の延伸方向(X方向)に移動することで、前述した1000Gもの大きなX方向磁界を発生させる円形コイル38、39を不要とでき、比較例2のコイル装置よりも小型にすることができる。実施の形態1のコイル装置10は、極端に大型化することなく、コイル軸16、17の方向に垂直な方向(X方向)に零磁界領域45を被測定者15においてスキャンすることができる。
図2に示した実施の形態1の磁性粒子イメージング装置100は、実施の形態1のコイル装置10を用いて、被測定者15の頭13を検査(撮影)するのに適した例である。図2において、50は被測定者15に体軸であり、53は海馬8、9の長手方向軸である。体軸50は、被測定者15の足から頭頂部を貫く軸である。海馬8、9の海馬長手方向軸53は、体軸50に対し傾いている。図2では、海馬8にコイル2のコイル軸17が位置する場合を示している。図2の被測定者15を人体正面からコイル軸17の方向に見ると、コイル1、2は図6のように配置されている。
前述したように、コイル1とコイル2が生成する零磁界領域45は、Z方向へは容易にスキャンすることできる。従って、海馬8、9の長手方向と、コイル2のコイル軸17とを極力合わせたい。磁性粒子イメージング装置100は、コイル装置10が被測定者15の頭13を覆うようにして、撮影対象を撮影する。コイル装置10が被測定者15の頭13を覆うことができるように、コイル1を頭13と肩の間に配置し、コイル1よりも小さいコイル2を頭13の外に配置する。コイル1が被測定者15の肩に接触しない様に、かつ海馬8、9の海馬長手方向軸53にコイル軸17を極力合わせようとすると、コイル軸17と体軸50とは異なる方向を向くことになる。この様に、コイル1、2を体軸50に対し斜めに配置し、コイル2のコイル軸17と海馬8、9の海馬長手方向軸53とが極力一致する様に配置することで、磁性粒子イメージング装置100は、コイル1、2の電流比を変更することにより海馬8、9のZ方向のスキャンを行うことができる。磁性粒子イメージング装置100は、コイル2を移動装置7によりコイル1の長軸18の延伸方向(X方向)に移動することにより、海馬8、9のX方向のスキャンを行う。磁性粒子イメージング装置100は、コイル1、2の電流比の変更制御とコイル2のX方向移動制御とを併用することにより、XZ平面画像を撮影することができる。したがって、実施の形態1の磁性粒子イメージング装置100は、2箇所に離れた細長い海馬8、9を、比較例2のコイル装置を備えた磁性粒子イメージング装置よりも、小型にすることができる。
また、コイル装置10をY方向に移動するか又は測定台55をY方向に移動することにより、磁性粒子イメージング装置100は、三次元画像を撮影することができる。したがって、コイル装置10をY方向に移動する移動装置(図示せず)又は測定台55をY方向に移動する移動装置(図示せず)を備えた磁性粒子イメージング装置100は、三次元の撮影対象を三次元画像として撮影することができる。
海馬の位置は個体差があり、かつ体軸50に対する海馬長手方向軸53のなす角度も個体差がある。従って、コイル装置10は、コイル1とコイル2の位置調整機能や角度調整機能を持たせるのが良い。コイル2のX方向への移動装置7も個体差で微調整することは同様である。
なお、実施の形態1のコイル装置10ではコイル1及びコイル2が1個ずつの例を示したが、コイル1及びコイル2は、それぞれ複数のコイルで構成しても良い。駆動電源3は1台でコイル1及びコイル2に1台の駆動電源3により電流を流しても良いし、コイル1、コイル2毎に個別の駆動電源により電流を流しても良い。コイル2は、円形コイルの例を示したが、コイル2もコイル1と同様に長軸と短軸を有するコイルであっても良い。この場合は、コイル2が円形コイルであるコイル装置よりも、一度に広い範囲の磁性粒子情報信号が得られる。移動箇所は2か所である例を示したが、前述したようにコイル2は移動範囲内の任意の位置に移動できる。したがって、実施の形態1のコイル装置10は、海馬以外を撮影する場合、例えば、海馬と目を同時に撮影するような場合も可能であり、移動箇所が2か所以上の複数個所であっても良い。
実施の形態1では、主に海馬について述べたが、海馬ではなくても良い。実施の形態1のコイル装置10及び磁性粒子イメージング装置100は、複数あり器官(例えば、目、腎臓、耳など)にも有効である。
受信センサー11は、前述したように、一般的にはコイルが使われるが、コイルである必要はなく、ホール素子等他の磁気センサーであっても良い。また、コイル1あるいはコイル2自身を受信センサーとして使うことも可能である。コイル1あるいはコイル2自身を受信センサーとして使う場合は、供給した電流の変化(微振動、位相変化等)を測定すればよい。
以上のように、実施の形態1のコイル装置10は、互いに逆向きに電流が流れると共に、開口部12が対向して配置された第一コイル(コイル1)と第二コイル(コイル2)を有し、被測定者15に供給された磁性粒子の分布を画像化する磁性粒子イメージング装置に用いる磁性粒子イメージング用コイル装置であって、第二コイル(コイル2)を移動する移動装置7を備える。第一コイル(コイル1)は、開口部12が形成された開口面において、長軸18及び短軸19を有するコイルであり、長軸18と短軸19との交点を通過し、かつ長軸18及び短軸19に垂直な第一コイル軸(コイル軸16)を有する。第二コイル(コイル2)は、第一コイル(コイル1)よりも口径の小さなコイルであり、第二コイル(コイル2)における開口部12が形成された開口面に垂直で、かつ開口部12の中心を通過する第二コイル軸(コイル軸17)を有する。実施の形態1のコイル装置10は、第二コイル軸(コイル軸17)が第一コイル軸(コイル軸16)に平行であり、移動装置7が第二コイル(コイル2)の第二コイル軸(コイル軸17)が第一コイル(コイル1)の長軸18に沿うように第二コイル(コイル2)を移動することを特徴とする。実施の形態1のコイル装置10は、この特徴により、極端に大型化することなく、コイル軸16、17の方向に垂直な方向(X方向)に零磁界領域45を被測定者15においてスキャンすることができる。
実施の形態1の磁性粒子イメージング装置100は、互いに逆向きに電流が流れると共に、開口部12が対向して配置された第一コイル(コイル1)と第二コイル(コイル2)を有する磁性粒子イメージング用コイル装置(コイル装置10)を備え、被測定者15に供給された磁性粒子の分布を画像化する磁性粒子イメージング装置である。実施の形態1の磁性粒子イメージング装置100は、磁性粒子イメージング用コイル装置(コイル装置10)と、被測定者15を載置する測定台55と、磁性粒子イメージング用コイル装置(コイル装置10)の内部に挿入された被測定者15に近接して配置され、磁性粒子が発生する磁界を測定する受信センサー11と、受信センサー11により測定された磁性粒子の磁界に基づいて磁性粒子の分布を画像化する画像処理計算機4を備えたことを特徴とする。磁性粒子イメージング用コイル装置(コイル装置10)は、第一コイル(コイル1)と、第二コイル(コイル2)と、第二コイル(コイル2)を移動する移動装置7を備える。第一コイル(コイル1)は、開口部12が形成された開口面において、長軸18及び短軸19を有するコイルであり、長軸18と短軸19との交点を通過し、かつ長軸18及び短軸19に垂直な第一コイル軸(コイル軸16)を有する。第二コイル(コイル2)は、第一コイル(コイル1)よりも口径の小さなコイルであり、第二コイル(コイル2)における開口部12が形成された開口面に垂直で、かつ開口部12の中心を通過する第二コイル軸(コイル軸17)を有する。磁性粒子イメージング用コイル装置(コイル装置10)は、第二コイル軸(コイル軸17)が第一コイル軸(コイル軸16)に平行であり、移動装置7が第二コイル(コイル2)の第二コイル軸(コイル軸17)が第一コイル(コイル1)の長軸18に沿うように第二コイル(コイル2)を移動することを特徴とする。実施の形態1の磁性粒子イメージング装置100は、このような特徴により、極端に大型化することなく、コイル軸16、17の方向に垂直な方向(X方向)に零磁界領域45を被測定者15においてスキャンすることができる。
実施の形態2.
図15は、本発明の実施の形態2による磁性粒子イメージング装置を示す図である。実施の形態2の磁性粒子イメージング装置100は、図2に示した実施の形態1の磁性粒子イメージング装置100とは、コイル(大口径コイル)1におけるコイル軸方向の厚さが薄く形成されている点で異なる。コイル1におけるコイル軸方向の厚さが薄く、すなわち扁平に形成されていることにより、実施の形態2の磁性粒子イメージング装置100は、コイル装置10の内部に被測定者15の頭13を挿入した際に、実施の形態1の磁性粒子イメージング装置100よりもコイル1を被測定者15の肩に近い位置に配置することができる。したがって、実施の形態2の磁性粒子イメージング装置100は、コイル装置10のZ方向長(コイル1のZ方向最小端部からコイル(小口径コイル)2のZ方向最大端部までの長さ)が実施の形態1の磁性粒子イメージング装置100におけるコイル装置10のZ方向長と同じ場合でも、Z軸方向に広いスキャン領域を確保することができる。
コイル1がコイル軸16の延伸方向(Z方向)に長い(コイル軸方向の厚さが厚い)と、被測定者15の肩に接触し、被測定者15の頭13をコイル装置10の内部の充分な深さまで挿入できなくなる場合がある。零磁界を発生できるのは、すなわち零磁界領域45を生成できるのは、コイル1とコイル2の中間位置のため、コイル1を頭13の充分な深さまで挿入できないと測定領域が狭まる問題が生じる。コイル1のアンペアーターンを確保しながら測定領域を確保するには、扁平型のコイルが適している。
実施の形態2のコイル装置10は、実施の形態1のコイル装置10と同様の効果を奏する。また、実施の形態2のコイル装置10は、実施の形態1のコイル装置10に比べて、コイル1を被測定者15の肩に近い位置に配置することができ、Z軸方向に広いスキャン領域を確保することができ、小型にできる。実施の形態2のコイル装置10を用いた、実施の形態2の磁性粒子イメージング装置100も、実施の形態1の磁性粒子イメージング装置100と同様の効果を奏する。また、実施の形態2の磁性粒子イメージング装置100は、実施の形態2のコイル装置10が実施の形態1よりも小型にできるので、実施の形態1の磁性粒子イメージング装置100よりも小型にできる。
実施の形態3.
図16は、本発明の実施の形態3による磁性粒子イメージング装置を示す図である。図17は図16の大口径コイルと小口径コイルとの配置位置を示す図であり、図18は図16の大口径コイルと小口径コイルとの配置位置を示す図である。図19、図20は、他のコイル装置と人体の頭との配置位置を示す図である。本発明の実施の形態3の磁性粒子イメージング装置100は、コイル(小口径コイル)2がコイル(大口径コイル)1に対してX方向の位置が固定されたコイル装置60と、測定台移動装置57によりX方向に移動可能な測定台56を備えた点で、実施の形態1及び実施の形態2の磁性粒子イメージング装置100とは異なる。実施の形態3の磁性粒子イメージング装置100は、測定台移動装置57により測定台56をX方向に移動することで、極端に大型化することなく、コイル軸方向に垂直な方向(X方向)に零磁界領域を被測定者15においてスキャンすることができる。図16では、コイル1が実施の形態2のコイル1と同様に扁平である例を示した。測定台移動装置57は、例えば、測定台56を移動可能に保持する保持体と保持体を移動するモータを備えている。
まず、図19、図20を用いて、他のコイル装置を説明する。円形コイル40とコイル2は、コイル軸が同軸であり、かつ2つのコイルの相対位置はX方向、Y方向、Z方向において固定である。図19、図20では、人体(被測定者15)を動かして海馬8、9の撮影を行う例である。図19に示した頭13aは、海馬9の中心にコイル軸がくるように被測定者15を配置した場合の頭に相当する。同様に、図20に示した頭13bは、海馬8の中心にコイル軸がくるように被測定者15を配置した場合の頭に相当する。図19、図20において、コイル軸の中心はZ軸中心68である。円形コイル40の半径をRとする。図19、図20において、互いにZ軸中心68で交差したX方向に延伸した水平軸27及びY方向に延伸した垂直軸28を示した。
図19、図20に示した円形コイル40及びコイル2を備えた他のコイル装置は、次の問題点がある。大口径の円形コイル40は従来の円形コイルなので、人体(被測定者15)をX方向に動かして、例えば2個の海馬8、9の撮影を小口径の円形コイルであるコイル2でカバーしようとすると、円形コイル40はコイル2が移動する径方向(X方向)に大きなコイルが必要になる。即ち、円形コイル40の半径Rが大きくなる。
円形コイル40の半径Rが大きくなると、X軸方向と同じ距離のY軸方向にも巻線が存在し、頭13a、13bが存在しない不要な領域まで磁界を発生させてしまう。この場合、円形コイル40の半径Rが大きくなるので、円形コイル40のインダクタンスが大きくなる。円形コイル40で振動磁界を発生させる場合があり、円形コイル40の半径Rが大きくなるので、コイル両端に大きな電圧が発生する。この場合は、大きな電源が必要になるので、磁性粒子イメージング装置が大型になってしまう。したがって、磁性粒子イメージング装置を小さくするためには、小さな電源で電力供給ができるように、円形コイル40は極力小さくしたい。
頭13a、13bが存在しない不要なY軸方向の領域まで磁界を発生させない様にするには、コイル1を、例えば、長軸18及び短軸19を有するレーストラック型コイルとすれば良い。コイル1をレーストラック型コイルとすることで、コイル1のインダクタンスを下げることが可能である。
図19、図20における円形コイル40を、レーストラック型のコイル1に変更した図を、図17、図18に示した。コイル1は、実施の形態1で説明した通りである。実施の形態3のコイル装置10は、コイル1とコイル2は、コイル軸が同軸である、すなわちコイル1のコイル軸16とコイル2のコイル軸17とが重なっているが、実施の形態1のコイル装置10と異なり、2つのコイルの相対位置はX方向、Y方向、Z方向において固定である。なお、図17、図18において、図5、図6と同様に、受信センサー11を記載した。
実施の形態3のコイル装置10は、他のコイル装置に比べて、コイル1のコイル軸16(図1参照)に垂直な面(開口面)におけるY方向の長さが小さいので、コイル1が磁界を発生させる領域が小さくなる。実施の形態3のコイル1は、磁界を発生させる領域が小さくなり、コイル鎖交磁束が少なくなるので、インダクタンスを小さくできる。コイル1の直線部5a、5bの延伸方向、すなわち長軸18に沿って人体(被測定者15)を動かせば、海馬8、9の中心にコイル軸16を一致させることが可能である。具体的には、コイル1の長軸18の方向(X方向)に移動可能な測定台56に載置された被測定者15を、海馬8の中心にコイル軸16が一致するように測定台移動装置57により測定台56と共に移動して、海馬8を撮影する。その後、海馬9の中心にコイル軸16が一致するように測定台移動装置57により測定台56と共に移動して、海馬9を撮影する。
実施の形態3の磁性粒子イメージング装置100は、測定台移動装置57により測定台56をX方向に移動することで、極端に大型化することなく、コイル軸方向に垂直な方向(X方向)に零磁界領域を被測定者15においてスキャンすることができる。
以上、図19、図20の円形コイルの欠点について述べたが、円形コイルは直線部を有するコイルに比べ、コイルが大きくなるものの、巻線が容易である利点がある。コイルが高価になるか電源が高価になるかは、コイルの大きさなどに依存しており、どちらも選択可能である。すなわち、図19、図20の円形コイル40をコイル1の代わりに適用しても構わない。
以上のように、実施の形態3の磁性粒子イメージング装置100は、互いに逆向きに電流が流れると共に、開口部12が対向して配置された第一コイル(コイル1、円形コイル40)と第二コイル(コイル2)を有する磁性粒子イメージング用コイル装置(コイル装置60)を備え、被測定者15に供給された磁性粒子の分布を画像化する磁性粒子イメージング装置である。実施の形態3の磁性粒子イメージング装置100は、被測定者15を載置する測定台56と、測定台56を移動する測定台移動装置57と、磁性粒子イメージング用コイル装置(コイル装置60)の内部に挿入された被測定者15に近接して配置され、磁性粒子が発生する磁界を測定する受信センサー11と、受信センサー11により測定された磁性粒子の磁界に基づいて磁性粒子の分布を画像化する画像処理計算機4を備えたことを特徴とする。磁性粒子イメージング用コイル装置(コイル装置60)の第一コイル(コイル1、円形コイル40)は、第一コイル(コイル1、円形コイル40)における開口部12が形成された開口面に垂直で、かつ開口部12の中心を通過する第一コイル軸(コイル軸16)を有する。磁性粒子イメージング用コイル装置(コイル装置60)の第二コイル(コイル2)は、第一コイル(コイル1、円形コイル40)よりも口径の小さなコイルであり、第二コイル(コイル2)における開口部12が形成された開口面に垂直で、かつ開口部12の中心を通過する第二コイル軸(コイル軸17)を有する。磁性粒子イメージング用コイル装置(コイル装置60)は、第二コイル軸(コイル軸17)が、第一コイル軸(コイル軸16)と重なっており、測定台移動装置57が、第一コイル(コイル1、円形コイル40)に垂直な軸(長軸18、水平軸27)の延伸方向に測定台56を移動することを特徴とする。実施の形態3の磁性粒子イメージング装置100は、このような特徴により、極端に大型化することなく、コイル軸16、17の方向に垂直な方向(X方向)に零磁界領域45を被測定者15においてスキャンすることができる。
なお、本発明は、矛盾のない範囲内において、各実施の形態の内容を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。