JP2008061940A - 電子スピン共鳴ct装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】空間分解能1mm以下で、マウス等の小動物の撮影時間が15分以下に抑え、所望の領域を空間分解能1mm以下で観察できる、漏れ磁場ライン(5Gライン)までも含めて軽量コンパクトで、使い勝手に優れる生体計測に使えるESR−CT装置を実現すること。
【解決手段】空間を介して対向した所定の面積を有するポールピースと、前記ポールピースと磁気結合したヨークと、前記ポールピース、前記ヨークおよび前記ポールピース間の空間とよりなる閉磁路中に磁極面が前記閉磁路に直交するように直列に挿入されて前記ヨークと磁気結合した永久磁石とよりなる磁場空間のための永久磁石系を導入することで、傾斜磁場コイル系をポールピース端から十分離せること、磁場掃引コイル系を小型にし、ポールピース端から十分離せるようにすることにあわせて傾斜磁場系を可動にする。
【選択図】図1

Description

本発明は磁場共鳴画像化装置に係わり、高分解能で高速撮影に好適な磁場共鳴画像化装置に関する。
新薬に対する候補化合物の減少や、ヒトへの安全性意識の高まりから、製薬企業の新薬開発コストが飛躍的に増加し、動物実験に用いられるマウスの数量も飛躍的に増大している。このプレクリニックというべき動物実験の段階で、コスト削減と小動物保護の観点から、実験用小動物の数を減らすこと、さらには、生体内の薬物効果の観察や、生体の特定部位に被着させて効力を発揮させる医薬品開発の支援ツールとして、生きたままで観察、実験できる画像診断ツールのニーズが高まっている。
これらに関わる従来技術として、核磁気共鳴(NMR)を用いたMRI(核磁気共鳴イメージング)や電子スピン共鳴(ESR)を用いたESR−CT(電子スピン共鳴イメージング)でも、小動物を対象にした商用装置が提供され始めている。ESR−CTはCW(連続波)方式が主流で、僅かにパルス方式が検討されている。生体内の画像化を目的とした磁気共鳴イメージング装置では、照射電磁波の生体中水分からの減衰のため、生体深部まで画像化するには、小動物でも1.2GHz(キガヘルツ)以下のラジオ波周波数帯に制限されている。
磁気共鳴−CTでは、MRIであれESR−CTであれ、均一な静磁場中に、信号発生場所を特定するための傾斜磁場コイル系を用い、傾斜磁場強度を変化させて画像化する。その場合、撮影画像の座標原点は、傾斜磁場コイル系の座標原点であることが特徴である。MRIの場合、水素原子核(プロトン)を撮影対象にするので、生体の形態画像が得られ、特定の病変部位を発見するには、膨大な形態画像の中から探し出すという問題があった。ESR−CTの場合、ESRに特有なラジカル造影剤を小動物に投与し、その分布を画像化する。そのため、形態画像は得にくいが、造影剤分布を直に画像化するので、病変に造影剤分布がリンクする場合には、その発見は容易であることに特徴がある。
以下、本発明は、電子スピン共鳴(ESR)を用いたESR−CT技術について適用されるので、ESR−CTを念頭においた発明の開示を行なう。
ESR−CTの構成要素は(A)小動物を測定する場所(被測定空間)としての均一磁場空間を生成する静磁場発生源、(B)画像化のための傾斜磁場コイルシステム、(C)ラジオ波の送受信RFプローブ、及び(D)これらを制御するコンソール系から構成される。CW方式の場合には、更に(E)掃引磁場コイル系が加わる。実際には、CW方式の場合磁場掃引に重畳して交流磁場強度変調を加える変調磁場コイル系が加わるが、本発明自体には関与しないので以下の発明の開示では省略する。
実験用小動物を生きたままの状態で画像診断するためには、生体への負担を軽くするため、麻酔下で画像診断を行なう場合、小動物の体力限界から、撮影時間は15分程度が限界である。弱く麻酔した場合や、麻酔無しで画像撮影を行なう場合には、動物が体を動かす危険性が出てくるので、更に短時間で撮影が終了することが望ましい。小動物を生きたままで、時間経過を追って同じ個体を観察しようとすると、一回あたりの撮影時間は短ければ短いほど価値がある。画像診断を効率的に行なう意味でも、撮影時間の短縮は急務の課題である。従来のMRIやESR−CTでは、実験用小動物を生きたままの状態で画像診断するというニーズがあまり大きくなかったので、共通の問題として、撮影時間が長いという問題点は、顕在化してこなかった。
一方、画像による生体内反応を可視化する「分子イメージング」ツールとしては、画像の鮮明さ、すなわち高い空間分解が要求される。生体全体を高分解能で高速撮影できれば、ベストであるが、実際のニーズは必ずしもこれを必要としない。例えば、生体反応の可視化は、小動物などの生体全体を俯瞰して見たい場合と、注目部位を詳細に見たい場合に分けられ、夫々を同一の装置で画像化できることが望ましい。生体全体を俯瞰して見たい場合には、ある程度空間分解能は犠牲にしても、高速撮影が要求される。注目部位を詳細に観察したい場合は、最初から観察したい部位が確定している場合(例えば、腎臓に病変があることが予め分かっている時や腎臓の機能を観察したい時など)と生体全体を俯瞰して見た画像から異変が発見され、その部分を観察したい場合(言わば光学顕微鏡やデジタルカメラのズームアップ機能)に分けられる。
このような要求に対して、従来開発されてきた電磁石を静磁場発生源に用いるESR−CT装置では、以下の三つの欠点があり、本発明の目的である高速撮影と高い空間分解能が実現できないでいる。
(1)傾斜磁場強度の高速スイッチングが出来ない。
(2)高速の磁場強度掃引が出来ない。
(3)測定したい所望の領域を1mm以下の高い空間分解能で画像化することが難しい。
上記(1)傾斜磁場強度の高速スイッチングが出来ない理由は以下の通りである。
被写体空間(マウスなどの撮像対象領域)を構成するためのポールピース間ギャップが狭い。そのため、傾斜磁場コイル系を設置する場合、傾斜磁場コイルがポールピース直近のヨークのすぐ近くに隣接して配置されることになる。その結果、傾斜磁場強度の高速スイッチングはヨーク内に渦電流を発生させることになり、画像に歪みや偽像が発生する。したがって、事実上高速スイッチングが実現できない。ヨーク内に発生する渦電流は、傾斜磁場コイルとヨークの距離が近いほど、傾斜磁場強度のスイッチング速度が速いほど大きくなる。
ESRの場合、傾斜磁場強度の高速スイッチングの上限を決める縦緩和時間Tは最大でも10μ秒であり、非常に速いので、これを生かした撮影高速化が期待される。そのためには傾斜磁場強度の切り替え時間を30〜50μ秒(周波数換算で20〜33.3KHz)と超高速に設定したいが、上記理由により実現していない。
上記(2)高速の磁場強度掃引が出来ない理由は以下の通りである。
(i)従来の商用ESR−CTでは、漏れ磁場ライン(5Gライン)を小さくするために、漏れ磁場をヨーク内に閉じ込め、電流磁場効率を高める為、ヨーク付の電磁石構造を採用している。ヨーク内に磁場を閉じ込めると、磁路の断面積あたりの磁束密度が大きくなり、コイル電流の時間変化の妨げとなり磁場強度の高速掃引ができなくなる。これは、コイルの実効的なインダクタンスが大きくなるからである。この結果、撮影時間が非常に長くかかっていた。
(ii)更に、被写体空間(マウスなどの撮像対象領域)を構成するためのポールピース間ギャップを広くすると、磁場均一性を保証するために、ポールピースの対向面の面積を大きくせざるを得ない。ヨーク付の電磁石では、このために、コイル径を大きくすることとなり、それに伴ってヨーク構造も大きくなる。このため、コイルの実効的なインダクタンスが大きくなるので、更に磁場強度の高速掃引が難しくなるとともに、重量も重くなる。
上記(1)、(2)に述べたことに対して、ヨーク付電磁石による商用ESR−CTを、ヨーク構造の無い空芯型電磁石が検討され始めている(G.A.Rinard他、Magnetic Resonance Engineering 15巻51〜58ページ、2002年)。この例では、共鳴磁場の磁場強度が90G(250MHz対応)の空芯コイルで被写体空間(マウスなどの撮像対象領域)の共鳴磁場均一性を確保しているので、
(A)大口径のコイル(たとえば800mm)を使う必要があり、10〜20Aの大電流を流すことが必要となる為、商用電源では磁場の安定性が確保できない。
(B)コイルが大口径になりインダクタンスLが大きくなるため、時定数が100m秒近く(周波数換算で10Hz程度)まで長くなり、静磁場強度の掃引時間が、ヨーク付電磁石ほどではないが長くなる。
(C)大口径コイルと傾斜磁場コイルも含めたコイル系と電源系の総重量が重くなる。
(D)漏れ磁場ライン(5Gライン)が2mにもなり、操作性と設置場に大きな制限を受ける。
という問題点がある。電子機器や人体への影響を考えると漏れ磁場ライン(5Gライン)をコンパクトにできる構造が商用システムでは必要になる。
以上の問題点は、共鳴磁場の磁場強度が90G〜400G程度まで上がってくると、コイル径がさらに大きく、且つ、コイル電流が大電流になるので、より大きな問題となる。
コイル電流を一定とすると、コイル径の大きさにより被写体空間(マウスなどの撮像対象領域)の共鳴磁場均一空間の大きさが一義的に決まる。したがって、共鳴磁場の磁場強度を大きくした場合、同じ共鳴磁場均一空間の大きさを確保するためには、コイル径を大きくせざるを得ない。この場合、磁場強度掃引時間の更に長くなり、システム重量は更に重くなり、漏れ磁場ライン(5Gライン)も長くなる。
したがって、現在の空芯コイル系電磁石は、デモンストレーション用としての意義はあるが、商用で用いるESR−CT装置としては不向きである。
(3)従来のESR−CT装置で測定したい所望の領域を1mm以下の高い空間分解で画像化できない理由は以下の通りである。
従来のESR−CT装置では、静磁場均一領域に対して、傾斜磁場コイル系とRFプローブ系が固定された配置とされる。そのため、可動な部分は被写体(マウスなどの撮像対象)の並進と回転だけである。高分解能に観察できるのは、傾斜磁場コイル系で決まる中心付近の限られた領域だけであり、所望の部分を必ずしも高分解能で画像化できない。他の領域も高分解能な画像化するためには、被写体を並進回転させて、所望の部分を傾斜磁場コイル系で決まる中心付近に配置することが必要であった。
更に詳しく説明すると、従来のESR−CT装置では、測定対象となるラジカルの吸収線幅ΔHが1〜2G(ガウス)程度と広い。そのため、原理的空間分解能である吸収線幅ΔHと傾斜磁場強度Gとの比、ΔH/G(傾斜磁場強度)で空間分解能1mm以下を実現しようとすると、傾斜磁場強度Gを10〜20G/cm以上にする必要がある。その結果、傾斜磁場コイル系に投入する電力が高くなりすぎ、傾斜磁場コイル系の発熱による制限のため、空間分解能1mm程度が計測の上限であった。
一方、被測定空間(マウスなど小動物の測定領域)としては35mm程度が必要である。そのため、ESR−CT装置の典型的共鳴周波数250MHz(共鳴磁場強度H=90Gに対応)の場合、傾斜磁場強度が10G/cmとしたとき、35mm×10G/cm=35Gとなるから、磁場強度は、被測定空間の両端で、72.5G(=90−17.5)と107.5G(=90+17.5)と共鳴磁場から±19.4%もずれてしまう。このような状態では、被測定空間全体を画像化することは困難である。
この例で、空間分解能1mm以下で画像化できる領域は、被測定空間中心のH/(G・Q)(=90G/(10G/cm×80)=1.125mm)の狭い領域のみであった。ここで、QはRFプローブのQ値で、小動物が挿入された場合Q=80程度である。
そのため、広い領域を画像化したい場合には、傾斜磁場強度を下げて、空間分解能を犠牲にする他なく、被測定空間全体を高分解能に画像化することは困難であった。
さらに、電磁石の電流を変化させ、被測定空間の中心位置をZ方向(静磁場方向)に並進移動して画像化することは出来るがX,Y方向へは並進移動は出来ないので、高分解能に被測定空間の見たいところを観察することは不可能であった。
従来のESR−CT装置では、測定対象となるラジカルの吸収線幅に事実上制限を求めないCW法(連続波法:continuous wave method)であるため、静磁場強度を広い範囲で可変にする必要があり、磁場強度が固定される永久磁石は周波数が数GHzと高い可搬ESRなどの超小型システム(例えば、特許第2640377号公報)を除いて適用されていない。このような永久磁石型可搬ESRでは、オープンMRI(例えば、特開平9−299351号公報)と同じく一対の対向永久磁石を静磁場源に用いていた。その場合、一対のポールピースの対面する面積とほぼ同じ接合面積を有する永久磁石を配置するのが通例である。
永久磁石を用いるMRIはオープンMRIとも呼ばれ、超伝導などの筒型マグネットと異なり、開放スペースが多く取れ、ヒトに優しいシステムと言われてきた。しかしオープンMRIの場合でさえ、ポールピース間方向のヒトの寸法Lとポールピース間距離Laとの比L/Laは0.8前後であり、ポールピース間距離は狭いシステムである。この点は、永久磁石を用いた小型のMRIの場合でも被写体寸法とポールピース間距離との比は0.7〜0.9前後であり、依然としてポールピース間距離は狭いシステムである。この根本原因は、出来るだけ共鳴磁場強度を高くして磁気共鳴感度を上げることを最優先せざるを得なかったためである。
特許第2640377号公報 特開平9−299351号公報 G.A.Rinard他、Magnetic Resonance Engineering 15巻51−58ページ、2002年
本発明の目的は、マウス等小動物の所望の部分を空間分解能1mm以下で画像化できるズームアップ機能と、マウス等小動物の被測定空間の3次元画像撮影時間を15分以下に抑えることができ、漏れ磁場ライン(5Gライン)までも含めて軽量コンパクトで、使い勝手に優れる生体計測に使えるESR−CT装置を実現することである。具体的には、傾斜磁場強度の高速スイッチングが可能で、高速の磁場強度掃引が可能な構造と方式を実現することである。マウス等小動物の所望の部分を、空間分解能1mm以下で画像化できるズームアップ機能を実現することである。
最初に3次元画像撮影時間を15分以下にするための手段について開示する。
本発明では、生体用ESR−CTの静磁場強度が70〜420GとMRI(3000〜30000G)やESR(3000〜15000G)に比べて極端に小さいことに着目して、強い残留磁束密度Brと強い保持力Hcを有する永久磁石を静磁場源に適用し、これが発生する磁束を接合面積(磁束の通る面の面積)の小さい永久磁石の磁極面に対向させたヨークを介して対向するポールピースに導き、ポールピース間に安定した均一磁場空間を生成する静磁場を形成する。これにより安定した均一磁場空間を生成するとともに、ポールピース間隔を十分に大きくすることで上記課題を解決する。具体的には、本発明では、対向する一対のポールピースの対面する面積に比べて、約1/3〜1/30程度に小さい接合面積の永久磁石の磁極面に対向させたヨークを介してポールピースと静磁場源としての永久磁石を結合する。
上記ポールピース間隔を十分に大きくとることで、ポールピース端面から十分離して、傾斜磁場系コイルを配置することが可能となる。更に、上記空間に、ポールピース端面から十分離して、永久磁石による静磁場強度に比べて十分小さい磁場強度を掃引するコイル系(掃引磁場コイル系)を配置することが可能となる。
所望の被写体部分を空間分解能1mm以下で画像化する手段は、静磁場均一領域に対して、傾斜磁場コイル系とRFプローブ系のいずれか一方を可動にすることである。可動範囲は、稼動させる系の中心を永久磁石により形成された磁場均一被写体空間(マウスなどの撮像対象領域)内である。現実には、磁場均一被写体空間(マウスなどの撮像対象領域)の大きさを変えないで実行できるRFプローブ系を固定して傾斜磁場コイル系を可動にするのが有効である。一方、傾斜磁場コイル系を固定してRFプローブ系を可動にすることができるが、この場合には、磁場均一被写体空間としての所要の体積が8倍(=2倍)になるので、永久磁石系を大きくする必要がある。すなわち、縦横高さがそれぞれ2倍になると言うことである。
本発明によれば、対向する一対のポールピースの対面する面積に比べて、1/3〜1/30の接合面積の永久磁石の磁極面に結合させたヨークを介して静磁場源としての永久磁石とポールピースを結合し、ポールピース間距離を広く構成したので、永久磁石の残留磁束密度Brを70〜420G(共鳴周波数換算で約200〜1200MHz)にまで弱めた生体用ESR−CTに好適な静磁場空間を作り出せた。
一方ポールピース間距離を広く形成できた結果、
(1)傾斜磁場系をポールピース端面から、十分離した距離に設置できる。その結果、30〜50μ秒(周波数換算で20〜33.3KHz)の超高速傾斜磁場強度の切り替え時間でも、渦電流の影響が極めて少ないESR画像が取得できるようになった。
(2)ポールピース端面から十分離して、永久磁石による静磁場強度に比べて一桁程度小さい磁場強度の掃引用コイル系を配置した構成により、静磁場H0の発生は永久磁石が分担し、時間依存性のある掃引磁場強度Hsは磁場空間内の小型コイルが分担できるものとすることができた。該小型コイルはポールピース直近ヨークとの磁気的相互作用が弱く、距離が離れているので渦電流の効果もきわめて少なく、それ自身のインダクタンスも小さく出来るので、数KHzの高速磁場強度掃引が可能になり、撮影時間が大幅に短縮できる様になった。
(3)RFプローブ系の位置をポールピース間の所定の位置に固定し、傾斜磁場コイル系を、磁場均一被写体空間(マウスなどの撮像対象領域)内で可動にし、所望の被写体部分に傾斜磁場コイル系を位置させて傾斜磁場原点をあわせることが出来る。この結果、装置は小型であっても、傾斜磁場強度を強くすることで、画像視野は小さくなるが、所望の被写体部分を高い空間分解能1mm以下で画像化することが出来るようになった。これは、見たいところを拡大して観察する磁気共鳴イメージングにおけるズームアップ機能の実現である。
最初に本発明の基本的な構成について説明する。
図1(A)は、静磁場源の永久磁石とこれを使用して形成された磁場空間を持つESR−CT装置の磁気系概念を示す斜視図である。図1でのX,Y,Z座標系は図に矢印で示す通りである。静磁場はZ方向である。図1(B)は永久磁石1切断して観測されるX−Z平面図である。以下空気中では磁束密度Bと磁場強度Hはほぼ同じ値をとるので、磁場空間内磁束密度と磁場強度は同じ値を取る。
1は柱状の永久磁石であり、図にN,Sで示すように磁極面が形成されている。Lは永久磁石1の長さである。2,3はヨークであり、L字状の構造を有する。ヨーク2,3は、永久磁石1の高さより大きいものとされる。10'はダミーヨークであり透磁率の低い材質で形成されている。ダミーヨーク10'は永久磁石1の上下に配置され、永久磁石1の部分の高さをヨーク2,3と一致させるために設けられる。ここで、永久磁石1の磁束をヨーク2,3の外に漏らさないようにするため、永久磁石1の厚さと高さは、ヨークとの接合近辺でヨークの厚さと高さより小さく設計するのが一般的である。L字状の構造のヨーク2,3は、L字の内面が互いに向き合う形で一つの端面が永久磁石1のそれぞれの端面(磁極面)116,117と接合面積Sで、対向して設けられる。6,7は対向するポールピースであり、対向する部分の面積66,67をSとし、ヨーク2,3の他端の内面に、互いに向き合う形で形成される。対向するポールピース6,7間距離はLaである。これにより、永久磁石1を静磁場源とする静磁場を持つ磁場空間が形成される。対向するポールピース6,7間に形成される静磁場の磁場空間中には、磁場が均一で時間変動も少ないESR−CTの被写体を配置する空間−被写体空間(撮像対象領域)がその中心部分に形成される。なお、図1(B)の一点鎖線で示す線は永久磁石1、ヨーク2,3および対向するポールピース6,7により構成される磁気回路のループである。
本発明の基本思想では、ESR−CT用の均一な静磁場を持つ磁場空間を作る場合、永久磁石1の発生する高い残留磁束密度Brをヨーク2,3により対向するポールピース6,7まで導き、上記接合面積Sとポールピースの面積Sの比S/Sで小さくし、更にポールピース間の空間距離Laを広くすることで弱め、低いESR−CT用共鳴磁場をつくり、被写体空間の磁場均一性を確保するとともに、永久磁石からの磁束をヨーク2,3に閉じ込めて、漏れ磁場ライン(5Gライン)を小さくする。
永久磁石1の残留磁束密度Bは大略11000G程度とする。すなわち、ESR−CTで目標にする共鳴磁場強度70〜420G(共鳴周波数換算で約200〜1200MHz)と比べ、26〜157倍強い物を用いる。これは、磁場源が安定したものとするためである。この結果、被写体空間(ポールピース6,7間)の磁場強度を如何に弱めるかが課題となり、従来のMRIや小型ESRが如何に磁場強度を強めるかに注力してきたことと決定的に異なるものとなる。
先ず、永久磁石1の残留磁束密度Bを被写体空間で弱めることを目的として、永久磁石1のヨークとの接合面117(または116)の面積(接合面積)をS、ポールピース6,7の対向面の面積をSaとすると、Sを小さくし、Saを大きく形成することが、上述の問題点を解決する意味で重要である。更に、永久磁石の残留磁束密度Bを被写体空間で弱めるためには対向するポールピース6,7間の距離Lを大きくとることが、上述の問題点を解決する意味で重要である。
磁場均一性についてみると、被写体空間内でのZ軸方向の磁場強度の最大値と最小値の差をΔHvとして、被写体を、例えばマウスなどの小動物として、これを対象に空間分解能1mmでESR−CT画像をとる場合、期待される被写体空間のZ軸方向の磁場均一性は、ラジカル造影剤の吸収線幅ΔHの値にも依存するが、少なくとも吸収線幅ΔHの1/5程度以下とすることが必要になる。たとえばΔH=20mGのときΔHv=4mG程度、ΔH=300mGのときΔHv=60mG程度である。ESR用ラジカルとしては最も吸収線が狭いΔH=20mGを計測できる磁場均一性を目標に永久磁石系を設計すれば申し分ないが、一般には、撮影対象となるラジカルの吸収線幅の最小値ΔHminを用いて、被写体空間の大きさをLとし、被写体空間でのZ軸方向磁場強度の最大値と最小値の差をΔHvとすると式(1)が要求される。
Figure 2008061940
以下、永久磁石1の発生する高磁場をヨーク2,3により対向するポールピース6,7まで導いて対向するポールピース6,7の対向面間に磁場を発生させる構成を、更に具体的に説明する。
先ず、最も単純化した場合を考える。永久磁石1が発生する総磁束Φ(=永久磁石1の残留磁束密度Br×永久磁石1の磁極がヨークに接する断面積S)が全てヨーク2,3により対向するポールピース6,7の表面に導かれる理想的な場合を考える。図1(A)で、117(又は116)が永久磁石1の磁局面であり、接合面Sとなる。この場合には、対向するポールピース6,7の対向する表面の面積をSとすると、対向するポールピース6,7間に式(2)で表されるZ方向の磁場Hが発生する。
Figure 2008061940
但し、μは真空の透磁率である。
対向するポールピース6,7間の距離をLとすると、対向するポールピース6,7間の磁場空間に蓄えられる磁場のエネルギーUは式(3)で表される。
Figure 2008061940
永久磁石自体は、永久磁石内の磁束密度と永久磁石内の磁場強度Hの積で表される最大エネルギー積(B・H)MAXで特徴付けられるので、永久磁石1の体積をVとすると式(4)を満たす体積Vを持つ永久磁石1を使えば、必要な磁場強度Hを発生させることができる。
Figure 2008061940
式(2)、(3)、(4)から分かることは、残留磁束密度Brの大きな永久磁石1を使って小さな磁場強度Hを作るには、対向するポールピース6,7の対向する表面の面積Sを永久磁石1の磁極とヨーク2,3の接する断面積Sに比べて十分に大きくし、対向するポールピース6,7間の距離Lを永久磁石1の長さLpに比べて十分に大きくとる。一方、永久磁石1の体積Vは小さな物を選び、残留磁束密度の大きな永久磁石を静磁場源とし、これから断面積の小さいヨークを介して、対向する表面の面積が大きく、対向する距離の大きいポールピースに磁束を導くことにより、ESR−CTに好都合な均一磁場を持つ磁場空間を構成することができる。
式(2)、(3)、(4)は、理想化した場合なので、図1(B)を参照してヨーク2,3の効果も取り入れた、より実際的な説明を行なう。
対向するポールピース6,7間の磁束密度をB、対向するポールピース6,7間の対向する表面の面積S、対向するポールピース6,7の対向面間の距離をL、ヨーク2,3部分の磁路の平均の長さをL、ヨーク2,3部分の磁路の断面積をS、ヨーク2,3部分の透磁率をμ、永久磁石部分1の磁路の長さをL、永久磁石部分1の磁場強度をH、永久磁石1が発生する総磁束をΦとすると、起磁力Fは、磁気回路での磁束Φの漏れを無視した近似では、磁気回路のキルヒホッフの法則から式(5)となる。ここで、Φ=B・Sである。
Figure 2008061940
外部から加える起磁力Fはゼロなので、F=0として、変換すると、式(6)が得られる。
Figure 2008061940
一方、永久磁石1の残留磁束密度Bと保磁力Hの間には、図2に示す永久磁石の減磁曲線に示すような関係がある。ここで、301は永久磁石1の作る磁気回路ループでの磁束密度Bと磁場強度Hの関係、302は永久磁石1の減磁曲線である。式(6)と図2に示す特性301と減磁曲線302の交点の磁場強度−Hと磁束密度Bとから、対向するポールピース6,7間の被写体空間の磁束密度BがB=Bとして求められ、式(7)として表される。
Figure 2008061940
式(7)から分かるように、被写体空間の磁束密度Bを小さくするには、式(7)の分子が小さくなるように永久磁石1の長さLpを小さくすることと、対向するポールピース間間隔Lを大きくとることが有効である。Lを大きくとれば、被写体空間(マウスなどの撮像対象領域)を大きくすることができる。被写体空間の磁束密度Bを小さくするにはヨーク2,3部分の磁路の断面積Sに比し対向するポールピース6,7の対向面の面積Sを大きくとることも有効である。
すなわち、本発明の永久磁石1を静磁場源とし、これの発生する磁束を対向するポールピース6,7間にヨーク2,3で導いて静磁場を形成させる構造は、本質的に、形成される静磁場の領域がESR−CTの被写体を配置する空間−被写体空間(撮像対象領域)に好都合なものといえる。ヨークの長さLと磁束が通る断面積Sと対向するポールピース対向面の面積Sなどの形状、大きさは、所望のESR共鳴磁場強度からの要請で決まる磁場強度Bpと要求される被写体空間(マウスなどの撮像対象領域)の大きさから決定されるが、式(7)から分かるように、本発明では、設計の自由度が高いものとできる。この点の詳細については後述する。
式(7)には、永久磁石1のヨークとの接合面117(または116)の面積Sが直接現れないが、これは図1(A)の永久磁石系の永久磁石1を切断するXZ面内の一次元磁気回路による近似解だからである。接合面117(または116)の面積Sは式(2)を通じて、永久磁石の残留磁束密度Brを弱める形で寄与することを実施例1で開示する。勿論、磁束密度と磁場強度の関係が非線形なシステムなので厳密な設計にはコンピュータシミュレーションによる確認が必要となるが、基本的な設計は式(2)〜(7)を出発点にできる。
図3は、ポールピース6,7間のコイル系を図示しており、340および350は、X,Y,Z傾斜磁場コイル系、320および330は磁場掃引コイル対としてのヘルムホルツコイルである。ともに、ポールピース6,7より十分に離れて設置されている。
そのため、MRIなどに比べて一桁程度高速な30〜50μ秒(周波数換算で20〜33.3KHz)の超高速傾斜磁場強度の切り替えを行なっても、ポールピース6,7や近接するヨーク2,3に渦電流がほとんど発生せずESR画像が取得できる。CW方式のESR−CTでは、静磁場強度に掃引磁場を重層して画像化を行なう。本発明では、静磁場源を永久磁石とすることにより、十分に大きな被写体空間(撮像対象領域)を持つことのできる磁場空間を構成するとともに、磁場空間内に撮像に必要な小型磁場掃引コイル系を装填することで超高速傾斜磁場強度の切り替え可能なシステム構成を提供する。
対向するポールピース6,7間に構成される磁場空間内に被写体の画像化のために設けられる磁場強度掃引コイル系としてのヘルムホルツコイルを、ヘルムホルツコイルの一般論(たとえば、NMR医学(丸善昭和59年1月20日発行)基礎と臨床)を基礎に説明する。ヘルムホルツコイル対320,330に流れる電流をI、コイルの半径をa、コイル間距離はコイルの半径と同じaにとる。ヘルムホルツコイル対320,330の中心軸上をz方向とし、ヘルムホルツコイル対320,330間の中点を原点にとり、XYZ座標系を設定し、z軸上の磁場強度Hを検討する。磁場強度Hは式(8)に示されるように、z軸上の位置によらない式(9)に示される一定部分Hと、zに対して式(10)に示される4次の項ΔHの和または差として示される。
Figure 2008061940
Figure 2008061940
Figure 2008061940
ただしγはコイルの半径a、ヘルムホルツコイル対320,330に流れる電流Iおよび被写体空間の大きさによらない定数で、γ=−18.432である。
本発明では、ヘルムホルツコイル対320,330により発生する磁場強度Hは、磁場強度掃引コイルであるから、永久磁石1を静磁場源として対向するポールピース6,7の対向面間に発生される磁場強度H0に比べて一桁以上小さい。しかも、掃引磁場強度は、磁場空間全域を対象として発生させる必要は無く、被写体空間がカバーできればよいので、コイル半径aを小さくできる。そのため、コイルのインダクタンスを下げられ、流す電流Iも非常に小さくでき、ヘルムホルツコイル対320,330を対向するポールピース6,7から距離を離して設置できるので、低消費電力で高速応答が可能な磁場強度掃引コイル系を構築できる。
従来の空芯型電磁石系でも、静磁場強度を形成するコイル系と磁場強度掃引コイル系を分離して形成することは考え方として可能であるが、磁場の発生方向を同じにする必要があるので、二つのコイルが相互インダクタンスのため干渉しあう結果、掃引磁場強度を高速に掃引すると静磁場強度に影響を与えてしまう。本発明では、静磁場形成が永久磁石で行われるので、相互インダクタンスが非常に小さいことと、ポールピース端面から十分離れて設置されているので渦電流の影響も少なく、200〜500μ秒(周波数換算で2〜5KHz)の高速掃引が可能となる。
具体的に、主たる磁場強度H0をヘルムホルツコイルで与える場合を考え、小型コイルの具体的メリットを以下に示す。
式(11)に示すように、ヘルムホルツコイルの電流制御による磁場強度変動部分ΔHの絶対値は式(1)の右辺を満足するように設計しなければならない。
Figure 2008061940
0を与えるコイルの半径をa、流す電流をIとし、二つのコイルが式(10)で示す磁場強度変動部分ΔHが、式(1)に示す同じ磁場強度変動幅ΔHvを与え、大小二つのコイルで同じ変動幅を要求すると、式(9)、(10)より、式(12)、(13)が得られる。
Figure 2008061940
Figure 2008061940
ここで、たとえば、H0=70G,H=3.5Gの場合、a/a=0.47、I/I=0.024となり、コイルの小型化と低電流化に大きく寄与する。式(12)、(13)より、主たる磁場強度H0が70Gより大きく(90〜400G)なると、この効果は更に増大する。
ヘルムホルツコイルの代わりに磁場均一性が良いダブルヘルムホルツコイルを用いても同様の効果を期待できる。
次に画像化手法とズームアップ機能について説明する。
一般に、傾斜磁場コイルによる傾斜磁場ベクトルGを式(14)と表す。
Figure 2008061940
ここに、GはX軸方向の場所に依存する傾斜磁場のZ方向成分であり、GはY軸方向の場所に依存する傾斜磁場のZ方向成分であり、GはZ軸方向の場所に依存する傾斜磁場のZ方向成分であり、それぞれX,Y,Z傾斜磁場コイルにより生成される。ベクトルGの絶対値をGとし、被写体空間の大きさをLとし、RFプローブのQ値と静磁場強度Hを用いて、式(15)を満たすとき、被測定空間内に存在するラジカル物質の分布が画像化できる。
Figure 2008061940
このとき、ラジカル分布の原理的な空間分解能はラジカル物質の吸収線幅をΔHと傾斜磁場強度Gを用いてΔH/Gで表すことができるが、式(15)から、式(16)の関係を導くことができる。
Figure 2008061940
図4(A)は被測定空間のX軸方向の大きさをLとして、X軸方向に傾斜磁場強度Gの傾斜磁場が印加されているときの位置に応じた磁場強度の変化の様子を示す図である。横軸はX座標を、縦軸は磁場強度Hを表し、式(17)に示す関係がある。図4(A)に参照符号401で示す線は式(17)を満足する線である。
Figure 2008061940
参照符号403で示す線は、マウスなどの被測定物をRFプローブ中に挿入したとき、X=0の場所でのRFプローブの共鳴特性の静磁場依存性の概念を示している。磁場強度Hのところでピークをもち、磁場強度H=H±H/(2Q)で、共鳴特性が1/2になる。RFプローブの共鳴特性を利用できる領域は、共鳴点を中心に幅H/Qの範囲内(以下、半値幅H/Qと呼ぶ)である。即ち、この範囲の外側は、画像化できない。ここでQは、RFプローブの共鳴特性の半値幅を与える物理量Q値で、Qが大きいほど共鳴特性が鋭くなり、測定領域は狭まる。一方、被測定空間に傾斜磁場が印加されているので、被測定空間両端(X=±L/2)での傾斜磁場強度による静磁場強度差分はG・Lの大きさである。傾斜磁場強度Gが小さいときには、式(15)が成立し、H/Qの値がG・Lより大きく、被測定空間全体をRFプローブで画像化できる。
傾斜磁場コイルの電流を上げ、Gの値を大きくすると、式(15)で等号の成立する事態になり、更に大きくすると、傾斜磁場強度が強い部分は、共鳴点を中心に幅H/Qの範囲を超えるので画像化領域は、原点を中心からH/(2QG)の狭い範囲のみになる。図4(A)に示しているのは、式(15)で等号の成立する場合である。
次に傾斜磁場強度がG・L≧H/Qになった場合、即ち式(15)の不等号が逆になった場合の被測定空間全体を画像化する手法について開示する。この場合、基本的には測定空間全体をX,Y,Z軸方向に分割して、各分割ブロック毎に画像化していき、全てのブロックの画像データを取得した後、全体の画像を構成する。分割ブロック数が少ないほど画像化に要する時間が少なくなるので、合理的な最小分割数を求めることが必要になる。
先ず、一次元の場合について図4(B)を用いて被測定空間の分割を説明する。X軸方向に原点を中心に±L/2の被測定空間に傾斜磁場強度Gを持つ線形傾斜磁場すなわち参照符号401で示す線の磁場強度を持つ系(図4(B))をn個の領域に等分割する場合を考える。n個の領域に左端から、1,2、…、nと番号を付ける。各領域の長さ402はL/nであるので、i番目の分割領域、すなわち、位置iから位置i+1の分割領域の中点をXiと定義すると、簡単な計算から、Xiは式(18)と表される。図4(B)で、i番目の分割領域の位置iから位置i+1での磁場をH、Hi+1で定義し、Xiでの磁場をH で定義した。
Figure 2008061940
Y軸方向、Z軸方向に傾斜磁場強度Gを印加した場合も同様に、Y軸方向j番目、Z軸方向k番目の分割領域の中点をYj,Zkとすると、式(18)と同じく式(19)、式(20)と表される。
Figure 2008061940
Figure 2008061940
今、RFプローブの半値幅H/Qと傾斜磁場強度Gの比をL0と定義すると式(21)が得られる。
Figure 2008061940
今、問題としているのは、Lが被測定空間の大きさをLに比べて小さい場合(L≦L)である。式(21)を用いると、一次元の場合、分割数nは式(22)で表される。
Figure 2008061940
但し、[L/L]は式(23)で定義され、mを超えない最大の整数を表す。
Figure 2008061940
式(22)で分割数nが決まる理由は、L/Lでは、整数になれずL/L以上の最小の整数で分割すればよいからである。
二次元、三次元の場合は、少し複雑になる。以下簡単のために、X,Y,Z方向への最大傾斜磁場強度が同じ場合(等方的な傾斜磁場)を考える。まず二次元の場合を(Xi,Yj)の分布を図4(C)に図示した。被測定空間の大きさLをn個に分割した場合、それぞれの分割中心から、X軸、Y軸方向でお互いの円が接する様子を点線411−414で示している。また±45°の方向でお互いの円が接する場合を実線421−424で示している。
二次元の場合、領域を分割してそれぞれの領域を画像かする場合、最低でも421−424の実線で示す領域より広く重なり合う必要がある。実線の円と点線の円では直径が√2倍だけ異なるので、二次元の場合、分割数nは式(24)で表される。
Figure 2008061940
同様にして、三次元の場合、実線の円と点線の円では直径が√3倍だけ異なるので、分割数nは式(25)で表される。
Figure 2008061940
X,Y,Z方向への最大傾斜磁場強度が異なる場合(異方的な傾斜磁場)には、容易に拡張できる。X,Y,Z方向への最大傾斜磁場強度をそれぞれGxmax、Gymax、Gzmaxとすると、X,Y,Z方向に対応するLは、式(21)で、GをそれぞれGxmax、Gymax、Gzmaxに変更したものでLx、Ly、Lzを定義すると、空間分割数nを決定する式(25)を次の式(26)に変更すればよい。
Figure 2008061940
実際の計測の場合、傾斜磁場強度Gを決めてから画像化するので、上記式(25)、式(18)、式(19)および式(20)で決まるX,Y,Z方向の空間分割点に傾斜磁場の原点を移動させて分割ブロック毎に画像化していき、全てのブロックの画像データを取得した後、全体の画像を構成する。
以下更に具体的に画像化手法について説明する。
磁気共鳴画像を撮る場合、画像の原点は、傾斜磁場の原点である。傾斜磁場の原点とは、静磁場が均一な被測定空間(そのZ方向の静磁場強度はH0である。)内で、傾斜磁場ベクトルGが印加されているときに、静磁場強度がH0と同じ磁場強度を与える点である。即ち傾斜磁場の原点とは、傾斜磁場強度が実効的にゼロの点であり、通例、傾斜磁場コイル系はZ軸周りに幾何学的対称性を有し、Z方向には、一対の傾斜磁場コイル系の中に設計することが多い。静磁場強度が均一な被測定空間の座標軸も一対のとなるポールピースの幾何学的な中心に一致させて設計する場合が多い。
このように、傾斜磁場強度が強く、式(15)の不等号が逆になる場合には、傾斜磁場強度の中心からH/(2QG)の狭い範囲のみ画像化される対象となり、これを外れる領域にあるラジカル分布空間を画像化するには、傾斜磁場強度の原点を画像化したい被写体の領域中心まで移動する手法が有効である。
図5(A)に示すように、ポールピース6,7間のLaの領域内に、磁場強度掃引コイル対320,330、RFプローブ系360を固定する。ここで、コイル対、RFプローブ系をポールピース6,7間に固定する方法については、従来方法がそのまま適用されるので、説明はしない。一方、X,Y,Z傾斜磁場コイル対340、350を非磁性治具551を用いて保持する。この非磁性治具551を傾斜磁場強度の原点位置を中心に、測定被写体の設置されたポールピース6,7間のLaの領域内の均一磁場空間内をX,Y,Z方向に精度良く可動させる装置552を設置することで、測定したい領域を1mm以下の高い空間分解で画像化することが可能になる。RFプローブ系360の円形に示されている空間が、測定試料(マウスやラットなどの生体)の装填場所を示しており、十字印が、Z方向静磁場強度の中心位置(被測定空間の原点)を示している。
傾斜磁場コイル系を可動にするときは、静磁場強度の中心位置と傾斜磁場強度の原点を、最初、精度良くあわせておく必要がある。そのためには、永久磁石の設計から分かる静磁場強度の中心位置と傾斜磁場コイル系の設計から分かる傾斜磁場強度の原点を最初に合わせる。これは永久磁石と傾斜磁場コイル系の幾何学的形状を使って合わせることが出来る。その後、吸収線幅の20mGと狭い材料のESR共鳴を測定することで、モニターでき両者の原点を補正することができる。通例、1mm以内で合わせることができる。
3次元の場合、X,Y,Zの方向で、最大傾斜磁場強度Gが同じ場合について、図5(B)に球状の被測定空間のZ=0面を切り出して示してある。この場合、傾斜磁場コイルによる傾斜磁場ベクトルGを示す式(27)において、
Figure 2008061940
傾斜磁場ベクトルGの値を一定にして、Gx、Gy、Gzの範囲を同一に設定した球対称の場合、式(25)、式(18)〜式(20)にしたがって、決まる空間分割点(Xi,Yj,Zk)に傾斜磁場強度の原点を移動させて、全ての分割点(Xi,Yj,Zk)で画像化を行なえば、被測定空間全体の画像化が行なえる。
図5(B)には、Z=0面の被測定空間領域405と、分割点404(Xi,Yj)(但しZ=0の面上)が表示されている。このように被測定空間領域405内にある空間分割点(Xi,Yj,Zk)に、傾斜磁場強度原点を移動させて、順次画像化データを取得することで、被測定空間全体に亘る高分解能な画像を合成できる。
一方、高分解能に観測したい領域が決まっている場合には、関心領域の大体の中心位置に傾斜磁場コイルの原点を合わせて、その領域周辺で傾斜磁場強度を変えながら画像化することで、高分解能な画像を撮ることが可能になる。
以上、本発明で所望の場所をズームアップして空間分解能1mm以下の高分解能を実現する方法を開示してきたが、本発明を実現するために課せられる具体的条件を図5(A)により説明する。RFプローブ系360の円形に示されている空間が、測定試料(マウスやラットなどの生体)の装填場所を示しており、十字印が、Z方向静磁場強度の中心位置(被測定空間の原点)を示している。RFプローブ系には送受信コイルが形成されており、式(1)の磁場均一性が保障されている空間領域は、具体的にポールピース6,7間の距離をLa、RFプローブ系の受信コイルの内径をR、RFプローブ系360の横幅をLpb、傾斜磁場コイル対340,350の対向間隔をLGC、磁場掃引コイル対320,330の対向間隔をLSC、磁場掃引コイル系とポールピース間の距離をLPSと表示すると、ポールピース6,7間に形成される各コイル系の配置は、図5(A)に示すとおりである。図5(A)に示す傾斜磁場コイル系では、傾斜磁場コイルを基板に展開しているので、実装厚みをもつ。この場合傾斜磁場コイル対340,350の対向間隔LGCに実装厚みを加えた距離を傾斜磁場コイル対の横幅と呼びLGC’で表し、対向間隔LGCと区別する。これは場掃引コイル系でも同様である。
傾斜磁場の原点を少なくとも被測定空間内で自由に可動できるためには、傾斜磁場コイル対340,350の対向間隔LGCは、RFプローブ系360の横幅Lpbより大きくすることが肝要である。具体的には式(28)の条件を満たす事が必要である。
Figure 2008061940
傾斜磁場コイル系の原点を被測定空間内の所望の場所に移動させズームアップ撮影できるためには、RFプローブ系の受信コイル内径Rで規定される空間を傾斜磁場コイル系の原点が自由に可動できる事を保証する式(28)の要件を満たせば十分である。
更に、傾斜磁場コイル対340,350を可動とするためには、磁場掃引コイル対320,330の対向間隔LSCとのRFプローブ系360の横幅Lpbの和が傾斜磁場コイル対340,350の対向間隔LGCと傾斜磁場コイル対340,350の横幅LGC'の和より大きくすることが肝要である。具体的には式(29)の条件を満たす事が必要である。
Figure 2008061940
式(29)は、式(28)に従って傾斜磁場コイル系の原点を稼動させたときに、傾斜磁場コイル系が、磁場掃引コイル系に接触しない条件を与えている。
一方、磁場掃引コイル対320,330を数KHzまでの高速掃引させるためには、ヨークやポールピースに渦電流を発生させないように、磁場掃引コイル系とポールピース間の距離LPSを約50mm以上分離する必要がある。具体的には式(30)の条件を満たす事が必要である。
Figure 2008061940
このようにして、ポールピース6,7間の距離Laは、磁場掃引コイル対320,330間の対向間隔LSCに磁場掃引コイル対の厚さの和(磁場掃引コイル系の横幅)に加え、100mm以上加えた長さにすることが肝要である。
以上はCW法(連続波法、continuous wave method)ESR−CTを念頭に、具体的説明を行なった。パルス法ESR−CTの場合には、磁場掃引コイルの系は不要になるので、式(29)、(30)の条件が、次のように変更になる。式(29)では、磁場掃引コイル対320,330の対向間隔LSCの代わりにポールピース間距離Laが用いられ、式(30)では、磁場掃引コイル系とポールピース間の距離LPSの代わりに傾斜磁場コイル系とポールピース間距離LPgが用いられる。
従来のESR−CT技術では、測定対象となるラジカルの吸収線幅に事実上制限を求めないCW法(連続波法、continuous wave method)であるため、吸収線幅の広いラジカルでも、撮影時間は長くなるが画像化できる。通例使用されるラジカルの吸収線幅の最大値は、ΔH=5.5Gより小さいので、本発明でも、吸収線幅ΔHに関する制限は事実上問題にならないことを以下開示する。
磁場空間永久磁石内に形成されるヘルムホルツコイルあるいはダブルヘルムホルツコイルで形成できる掃引磁場強度の最大値をHmaxとすると、三次元の場合、分割数nは式(25)で決まるので、分割空間の中を画像化するためには、Hmaxに対して式(31)に示す制限が付く。
Figure 2008061940
この式(31)から分かるように、Hmaxは0.76G(H=70G,Q=80)、4.5G(H=420G,Q=80)、ΔHの最大値として5.5GをとってもHmax=3.1G(H=70G)、Hmax=5.0G(H=420G)と、静磁場強度Hに比べて一桁以上小さな値であり、本発明の目的の障害にはならない。
一方、掃引磁場強度にかける変調磁場強度Hmodは、一般に式(32)により制限を受ける。
Figure 2008061940
しかしながら、Hmodは、Hmaxより小さいため、本発明の目的を阻害する要因にはならない。
最後に、ズームアップ機能の実現方法について補足する。上記発明の記載では、傾斜磁場コイル系は一個であったが、傾斜磁場コイル系は複数あっても良い。主として被測定空間全体を画像化する固定傾斜磁場コイル系とズームアップ機能を担当する、画像化できる領域は小さいが、傾斜磁場強度が強い可動傾斜磁場コイル系に分けて傾斜磁場コイル系を構成するのである。固定傾斜磁場コイル系は、式(15)で記述される範囲を担当させる。つまり、固定傾斜磁場コイル系は、被写体空間全体を画像化する機能をもたせるので式(17)で示す磁場の線形性を被写体空間全体で保証するため、コイル系は大きくなる。一方、可動傾斜磁場コイル系は、画像化できる領域は小さくなるが、傾斜磁場強度を強くして、空間分解能を上げるズームアップ機能を持たせる。この場合可動傾斜磁場コイル系では、式(15)の不等号が逆になる場合に対応する。
一次元の場合について図6を参照して説明する。固定傾斜磁場コイル系により、傾斜磁場401を印加しておき、被写体空間全体で画像化を行い、ズームアップして見たい場所(空間分解能良く見たい場所)を決める。例えばXiの周辺を詳しく見たい場合には、固定傾斜磁場コイル系の傾斜磁場を切り、可動傾斜磁場コイル系の傾斜磁場原点をXiに移動させ、より強い傾斜磁場Gg407を印加すると、Xiの点に式(33)で記述される傾斜磁場が印加される。
Figure 2008061940
Xi点での静磁場Hに応じて式(33)に従う画像化を行なうXi点での、ズームアップしたい領域406(図6)のズームアップ画像が得られる。
二次元,三次元の場合も同様にズームアップ画像が得られる。例えば、固定傾斜磁場コイル系により被測定空間を画像化後、所望の場所(Xi,Yj,Zk)に可動傾斜磁場コイル系の傾斜磁場原点を(Xi,Yj,Zk)に移動させ、固定傾斜磁場コイル系の傾斜磁場を切り、より強い傾斜磁場ベクトル(Ggx、Ggy、Ggz)を印加するとことでズームアップして見たい場所(空間分解能良く見たい場所)を画像化する。
以上、本発明を開示してきたが、永久磁石系に工夫をすることで、磁場分布の均一性の高い磁場空間を創生でき、本発明の目的を達成できる。
(実施例1)
図7(A)は、本発明の永久磁石1を磁場源とする実施例の200MHzESR−CT用の磁石システムの外観を示す斜視図である。図1に示す構成要素と同じものには同じ参照符号を付した。図1と対比して分かるように、実際の構造では、ヨーク2,3の端部は半円状とし、ポールピース6,7も円板状としている。40,41は磁石移動用の車である。1’は永久磁石部分であるが、図1を参照して明らかなように、永久磁石1はヨーク内に埋め込まれた形となっているので、永久磁石1とは異なる参照符号で示した。
実施例1では永久磁石1に由来する主たる静磁場強度H0は、71.4G程度である。今回、被写体空間(マウスなどの撮像対象領域)Lの大きさとして35mmを設定した。この被写体空間内で、静磁場強度の長時間安定性を確保するため、永久磁石1としては、室温付近で磁場強度の温度変化が少ないSmCo系永久磁石(磁場強度変化の温度係数−300ppm/℃)を用いた。永久磁石10の磁束をヨーク2,3の外に漏らさないようにするため、永久磁石1の幅と高さは、ヨークとの接合近辺でヨークの幅と高さより小さく設計した。
実施例1では、図7(B)に示すように、永久磁石1は3分割された永久磁石10を積層し、その上下にダミーとなるヨーク10’、10’’を設ける構成とした。10'はダミーヨークであり、透磁率の低い材質(アルミニウムなど)で形成されている。永久磁石部分10を挟んで保温ヒーター(図には表れていない)を設け、これを温度センサー42、43で挟みつけて温度検出をする。44,45は、保温ヒーターと温度センサー42,43の制御線を模式的に示す線である。制御線44,45には連なる温度制御のためのコンピュータ(図示しない)が接続される。永久磁石10の温度は室温より数度高い30℃に設定し、その温度変化は±0.01℃以内になるように制御している。永久磁石10とヨーク2,3の間には断熱材46,46’を装てんする。
ヨークの長さLyは1300mm、永久磁石の長さLp(図1B)は50mm、厚さ35mm、高さhは309mmとした。鉄ヨークの比透磁率μ/μ=1000程度である。鉄ヨーク2、3の厚さは40mmとした。鉄ヨーク2、3の高さhは550mmとした。
図8(A)は、ポールピース6,7の中心位置で断面にしてX方向に見た磁場空間永久磁石系のコイル配置を示す断面図である。2,3はヨーク、15,16は小磁石片磁性シム、17,18は微小磁場強度調整のシムコイル、19,20はポールピースカバー、340,350は傾斜磁場コイル、360はRFプローブ系である。ここでも、コイル系およびRFプローブ系の固定については図示しない。
以上は、パルス法によるESR−CTの場合に用いる。320および330はヘルムホルツコイル対、125は変調磁場コイルであり、CW法ESR−CTの場合に用いる。変調磁場コイル125は、ヘルムホルツコイル対320,330による磁場強度掃引に数KHzから50KHzの磁場強度変調をかける時に用いる。ESR吸収曲線の微分値を測定することで、CW法によるESR感度を上げるため、通例用いられている。ポールピース6,7の直径は550mm、ポールピースカバー19,20間の距離Laは250mm、ヘルムホルツコイル対320,330の対向間隔Lsc(磁場空間)は140mmであり、その中に設置された傾斜磁場コイル対340,350対向間隔LGC(磁場空間)は105mmであり、RFプロー360系の横幅Lpbは61mmで、この横幅はRFシールド箱の幅で決まり、中には送受信コイルと変調磁場コイル125から形成されている。傾斜磁場コイル対340,350とヘルムホルツコイル対320,330のそれぞれの厚さ(コイルを非磁性板に展開したときの厚さ)は、5mmであり、RFプローブ系360の受信コイルの内径Rは39mmであり、傾斜磁場コイル対340,350の横幅LGC'は115mmであり、これらの値は式(27)(28)(29)を満足している。ヘルムホルツコイル対320,330の直径は280mmであり、傾斜磁場コイル対340,350の直径は300mmである。このとき、ヘルムホルツコイル対320,330とポールピース6,7間の距離Lpsは50mm以上離して設置できたので、ポールピース6,7やヨーク2,3内に渦電流の生成を防止でき、傾斜磁場や磁場掃引コイルの高速化が実現し、ESR−CT画像に偽像や画像のボケは生じなかった。
このように、ポールピース間距離が大きく構成できたことにより、RFプローブ系、傾斜磁場コイル系、磁場掃引コイル系をポールピース間にゆったり形成でき、傾斜磁場コイル系、磁場掃引コイル系の高速応答が可能になり、マウスなど小動物の高速撮影が可能になった。
本発明では、試料空間の大きさ(受信コイル内磁場均一空間の大きさ)Lが35mmであり、ポールピース間距離Laが250mmなので、その比L/Laは0.14である。従来技術に引用した特許文献1および特許文献2では、その比が0.7−0.9なので、従来技術に比較して5−6.4倍大きいポールピース間の空間ということが出来る。
SmCo系磁石では保持力H=857KA/m、残留磁束密度B=11,000G程度なので、式(7)は、磁気回路中で永久磁石と左右に配置されるヨークが同じ高さ(550mm)の場合に適用される式であるが、その場合には対向するポールピースの表面での磁束密度B(=μ)表面で定義される磁場強度H(以下、単に磁場強度という)を用いて、磁場強度換算で1700G程度になる。この式(7)では、永久磁石のヨークとの接合面積とポールピースの面積を考慮していないので、この面積比S/Sa=約1/22.0を考慮すると式(2)より、Hは77.3Gとなり、目標の71.4Gに近くなる。この荒い見積もりをベースに、実際の形状を入れた磁気回路でのコンピュータシミュレーションにより、具体的寸法を詰めていき、磁石小片15、16を用いたシミング行い、被写体空間(マウスなどの撮像対象領域)Lを35mmとして、式(1)を満たす図8(B)に示す被写体空間での磁場強度分布を得た。ここで、プレーンNo.は、図4(B)を用いて説明した被測定空間の分割位置に対応するものである。この場合、磁石系の共鳴周波数は202.11816MHz、自由電子換算で共鳴磁場強度は72.1208Gであった。
このとき、被写体空間中心部での磁場強度の温度依存性を調べると−317.7ppm/℃であった。この値は、SmCo系永久磁石10の小さな温度係数−300ppm/℃にきわめて近く、室温が23℃±5℃程度変化しても、永久磁石部分の温度が30±0.01℃で制御されているので、磁場強度の変化が非常に小さくできる。その理由は、低磁場強度の磁場空間永久磁石システムでは、式(7)からわかるように、ヨーク部分からの磁場強度Hへの寄与が少なく、ヨーク材料の透磁率μの温度依存性が多少存在しても磁場強度Hの変動が少なく、室温の変動があっても永久磁石部分を恒温に保てば磁場強度Hの長時間安定性が保証されることになる。
吸収線幅20mGのラジカルを用いた場合には被写体空間(マウスなどの撮像対象領域)Lを35mmとして、共鳴磁場強度は72.1208G、RFプローブのQ値はマウス計測の場合Q=80程度であった。式(15)から分かるように、この場合空間分解能は0.78mm程度であった。吸収線幅20mGのラジカルを用いた場合、CW法は必要なく、パルスESR−CT法による画像化が高速にできる。この場合、磁場掃引コイル対320,330は使用しない。パルスESR−CT法による3次元画像化撮影時間は、一回のスピンエコーを4048回積算した場合で約14分であった。
傾斜磁場コイル対340,350がヨークから遠く離れているために傾斜磁場コイル内に設置したRFプローブ360には、アースシールドで覆う以外の特別な渦電流対策講じなくても、高速応答に支障がなかった。
実施例1では、ヘルムホルツコイルを示したが、ダブルヘルムホルツコイルでも、同様な効果を期待できる。
吸収線幅ΔHが20〜50mGのラジカルでは、緩和時間TおよびT2が数μ秒〜10μ秒であり、パルスESR−CTが可能になり、スピンエコー計測時間は30〜100μ秒とMRIに比べて4桁近く早い、そのため、スピンエコー観察の積算時間を数千回のオーダーにしたとしても、画像化の計測時間は10数分以内に収めることができる。特に、積算時間が一桁程度に収められるラジカル分布の場合には、画像化の計測時間は数秒以内となる超高速撮影も可能になる。積算回数はラジカルの信号強度と画質との兼ね合いで決まるが、積算回数を数千回のオーダーにしても、3次元画像化観測時間が10数分以内に収めることができることは、MRIに比べて大幅に長所である。本実施例の説明では、パルスESR法による、画像化を主として説明したが、無論ESR−CTの主流であるCW法による、画像化が出来る事は言うまでもない。
本装置は、超伝導磁石を使うMRIなどと異なり、メンテナンスが少なく、厳密な管理区域を設定した実験動物施設(例えばバイオ区分の厳しい実験室)にも設置できるという長所が存在する。
(実施例2)
次に、本発明の基本思想を示す他の形態の実施例を以下に示す。実施例2は、マウスより一回り大きいラットを対象にしたESR−CTである。この実施例2では、傾斜磁場コイル系を可動にした場合の400MHzESR−CTに関する技術例を図9(A)(B)及び図10に示す。永久磁石系の外形主要部分を図9(A)に、永久磁石系101'を通る磁力線のラインに沿ってY−Z面での磁気回路ループを一点鎖線で図9(B)に示す。図9(A)では、永久磁石系の磁石設置面はX−Z面であり、ヨーク2,3を外側から支える部分は省略している。図10は、永久磁石101の中心位置で断面にしてX方向に見た磁場空間永久磁石系のコイル配置を示す断面図である。図10では、図5に示したのと同様に、傾斜磁場コイル系を設置する台551とX,Y,Zに可動させる装置552を有している。−Y方向にはヨークがなく傾斜磁場コイル系を設置する台551とX,Y,Zに可動させる装置552を設置できる空間を広く取れるところが実施例1と異なる配置である。無論、実施例1の配置でも可動傾斜磁場コイル系を配置できるのは言うまでもない。
なお、図10において、図5、図8における構成要素と同じものには同じ参照符号を付した。ヘルムホルツコイル対320,330とRFプローブ系360をポールピースカバー19に非磁性治具で固定しているが、図10には図8と同じく示していない。125は変調磁場コイルでありCW法ESR−CTの場合に用い、ルヘルムホルツコイルによる磁場強度掃引に数KHzから50KHzの磁場強度変調をかける時に用いる。ESR吸収曲線の微分値を測定することで、CW法によるESR感度を上げるため用いることは実施例1と同じである。本実施例では、マウスより一回り大きいラットを対象にしたので被写体空間(ラットなどの撮像対象領域)Lを40mmとした。
ポールピース6,7の直径は600mm、ポールピースカバー19,20間の距離Laは300mmである。ヨークの長さLyは1500mm、永久磁石の長さLp(図9B)は60mm、厚さ25mm、高さhは400mmとした。鉄ヨークの比透磁率μ/μ=1000程度である。鉄ヨーク2、3の厚さは40mmとした。鉄ヨーク2、3の高さhは600mmである。永久磁石系101’の構造は、図7(B)の永久磁石系1’と同様な構造をして、永久磁石101を温度制御している。
SmCo系磁石では保持力H=1591KA/m、残留磁束密度B=11,000G程度なので、式(7)は、磁気回路中で永久磁石と左右に配置されるヨークが同じ高さ(600mm)の場合に適用される式であるが、その場合には対向するポールピースの表面での磁束密度B(=μ)表面で定義される磁場強度H(以下、単に磁場強度という)を用いて、磁場強度換算で2780G程度になる。この式(7)では、永久磁石のヨークとの接合面積とポールピースの面積を考慮していないので、この面積比S/Sa=約1/18.9を考慮すると式(2)より、Hは147.5Gとなり、目標の142.8Gに近くなる。この荒い見積もりをベースに、実際の形状を入れた磁気回路でのコンピュータシミュレーションにより、具体的寸法を詰めていき、磁石小片15、16を用いたシミング行い、被写体空間(ラットなどの撮像対象領域)Lを40mmとして、5mG以下の均一な磁場強度分布を得た。静磁場均一空間の温度特性は、室温が25℃のとき、−318ppm/℃であった。
対向するポールピース6,7間に形成される静磁場の磁場空間中には、磁場強度が均一で時間変動も少ないESR−CTの被写体を配置する空間−被写体空間(撮像対象領域)がその中心部分に形成される。
傾斜磁場コイルを可動にすると、静磁場強度の中心位置と傾斜磁場強度の原点を最初あわせておく必要がある。そのためには、永久磁石の設計から分かる静磁場強度の中心位置と傾斜磁場コイル系の設計から分かる傾斜磁場強度の原点を最初あわせておき、吸収線幅の20mGと狭い材料のESR共鳴を測定することで、両者の原点を補正することができる。通例1mm以内で合わせることができる。
図10の傾斜磁場コイル系を非磁性固定治具551に固定して、X,Y,Z方向にパソコン制御で動かせる装置552を装着している。本装置552はステップモーターにより、X,Y,Z方向に50μmピッチで可動させる。
ヘルムホルツコイル対320,330の対向間隔Lsc(磁場空間)は170mmであり、その中に設置された傾斜磁場コイル対340,350の対向間隔LGC(磁場空間)は125mmであり、RFプローブ系360の横幅Lpbは70mmで、この横幅はRFシールド箱の幅で決まり、中には送受信コイルと変調磁場コイル125から形成されている。RFプローブ系360の受信コイルの内径Rは48mmであり、傾斜磁場コイル対340,350とヘルムホルツコイル対320,330のそれぞれの厚さ(コイルを非磁性板に展開したときのコイルの厚さ)は、5mmであり、傾斜磁場コイル対340,350の横幅LGC'は135mmであり、これらの値は式(27)、(28)、(29)を満足している。ヘルムホルツコイル対320,330間の距離は340mmであり、傾斜磁場コイル対340,350間の距離は360mmである。このようにポールピース間距離を大きく構成できたことにより、RFプローブ系、傾斜磁場コイル系、磁場掃引コイル系をポールピース間にゆったり形成でき、傾斜磁場コイル系、磁場掃引コイル系の高速応答が可能になり、ラットなど小動物の高速撮影が可能になった。
実施例2では、試料空間の大きさ(受信コイル内磁場均一空間の大きさ)Lが40mmであり、ポールピース間距離Laが300mmなので、その比L/Lpは0.133である。実施例1と同様、従来技術に比較して5.25−6.75倍広いポールピース間の空間の大きさが実現できる。
掃引磁場強度Hsは3.5Gであり、式(11)に示す、ΔHsは3.7mGと小さく、式(3)の条件を十分満たしている。ヘルムホルツコイル対320,330はポールピース端面から60mm程度離してあり、渦電流の影響は無視できる。
RFプローブ360で円形に表示されている部分がラット挿入スペースで、直径44mmである。RFプローブ360の横幅は70mmあり、傾斜磁場コイル対340,350とは、両脇がそれぞれ27.5mm近く空いておりXYZステージ551をX,Y,Z方向に、中心位置から被測定空間の大きさLの1/2、即ち20.0mmは50μmピッチで可動でき、最高25mm可動できるように設計した。
傾斜磁場コイルの可動化による空間分解能向上の例としては、傾斜磁場強度G=2G/cm、マウスに投与する造影剤の線幅ΔHが20mGのものを使う場合、原理的空間分解能は0.1mmであり、Q値は80、被写体空間の大きさ40mmだったので、式(21)からL=8.9mmとなり、式(25)からX,Y,Z軸方向の空間分割数nは8となり、最大空間分割点8=512個の空間分割点に傾斜磁場コイル系の原点を移動させることで、空間分解能0.1mmで被写体空間全体の画像化が出来た。しかしながら、空間分解能0.1mmの高分解能で40mmの被写体空間全体での画像が必要なことはあまりないので、ズームアップ機能と言うべき必要な空間分割点だけに傾斜磁場コイル系の原点を移動させることで高分解能な画像を得ている。
CW法による400MHzESR−CTでは、磁場空間を永久磁石で構成する特徴がよく生かされる。ヘルムホルツコイル対320,330から副たる磁場強度Hを発生させる搬送波アンプとその周波数を高速(5KHzまで)に振動させる搬送波発生器を用いて、磁場強度掃引を行う。この磁場強度掃引に50KHzの磁場強度変調を変調磁場コイル125にかける。変調磁場強度は、±3.5mGから±100mGの範囲で設定できるようにしている。対象とするラジカルの混和時間Tの最大値が10−20μ秒を上限と考え、その逆数以下の周波数にする必要があり、50KHzの周波数を選んでいる。400MHzの発信周波数と共鳴周波数を一致させるAFC(Auto Frequency Control)回路は、35KHzで駆動させている。400MHzのRF発信器には、35KHzでFM変調できる機能を持たせ、傾斜磁場コイル340、350はDSP(デジタル信号プロセッサ)により制御している。
本CW−ESR−CTの特徴は、磁場強度Hの掃引が、永久磁石による磁場空間構造を用いたことで5KHzまでの超高速掃引が可能になり、40mm被測定空間内のマウス画像が13分程度で撮影でき、ESR−CTの観測時間が大幅に短縮できた。
以上、実施例2のように、傾斜磁場コイル系を可動させることで、見たい場所に試料を運べるので、本発明の目的のように所望の場所を選んで空間分解の1mm以下で、ズームアップ機能をESR−CT装置で実現した。
(実施例3)
本発明のズームアップ機能の他の実施形態について実施例3で説明する。
実施例3は、実施例2の別形態である。永久磁石系は同じにして、ポールピース間に形成した傾斜磁場コイル系が固定傾斜磁場コイル系と可動傾斜磁場コイル系の二つから構成されている点が異なる。図11は、実施例2の図10に対応するコイル配置を示す断面図である。以下実施例2と異なる部分を中心に説明する。
実施例2と異なり、主として被測定空間全体を画像化する固定傾斜磁場コイル対341,351を有し、ズームアップ機能を担当する、画像化できる領域は小さいが、傾斜磁場強度が強い可動傾斜磁場コイル対340,350を有している点が特徴である。可動傾斜磁場コイル対340,350は、固定ステージ551とその可動系552に繋がっている点は実施例2と同様である。図10と同じ番号は、同種の機能を有する部品が対応している。図10で明示されていたヨーク、永久磁石、ポールピース部分は省略してある。
固定傾斜磁場コイル系は、被測定空間全体を画像化するので、被測定空間全体で、傾斜磁場の直線性を例えば、±2%以内に保証する必要があり、比較的大型のコイル系になる。しかし可動傾斜磁場コイル系は、傾斜磁場強度が強く測定空間の大きさが、傾斜磁場強度に反比例するため傾斜磁場の直線性を保証する空間が小さくても良いため、小型に出来る。
ヘルムホルツコイル対320,330間の対向間隔Lsc(磁場空間)は190mmであり、その中に設置された可動傾斜磁場コイル対340,350間の対向間隔LGC(磁場空間)は125mmであり、固定傾斜磁場コイル対341,351間の対向間隔LGC2(磁場空間)は160mmであり、傾斜磁場コイル対340,350,341,351とヘルムホルツコイル対320,330のそれぞれの厚さ(コイルを非磁性板に展開したときの系の厚さ)は、5mmであり、傾斜磁場コイル対340、350の横幅LGC'は135mmであり、これらの値は式(27)(28)(29)を満足している。但し、今の場合固定傾斜磁場コイル対341,351間の対向間隔LGC2が式(28)のヘルムホルツコイル対320,330間の対向間隔Lscの代わりをする。この場合場ヘルムホルツコイル対320,330はポールピース端面から50mm以上離してあり、渦電流の影響は無視できる。ヘルムホルツコイル対320,330の直径は380mmであり、固定傾斜磁場コイル対341,351の直径は460mmである。可動傾斜磁場コイル対340,350による可動傾斜磁場系の直線性を±2%以内に保証する領域は20mm程度に小さくなったが、固定傾斜磁場コイル対340,350は直径200mmの円板内に展開できるので、固定ステージ551とその可動系552が小型コンパクトに設計できる。
このように、固定傾斜磁場コイル系と可動傾斜磁場コイル系の役割を分担させる事で、高分解の画像が時たま必要なケースに対しては、可動傾斜磁場コイル系と固定ステージ551とその可動系552をオプションとして提供できるシステムにでき、使い勝手が向上する。また、可動傾斜磁場コイル系を小型化できるので、同じ電流でより強い傾斜磁場を提供できるので、非常に高分解能な画像を提供できるようになった。
場合によっては、固定傾斜磁場コイル系を二組作って、傾斜磁場強さによる違い(ズーム倍率の違い)により、画像の撮り分けを行うことも出来る。
以上ポールピース間を広く形成できることで、従来実現しえなかった多彩な機能が実現できることを示した。
実施例2,3で示したように、本発明によれば、今まで困難であった、吸収線幅ΔHが数ガウスと広いラジカルについてもズームアップ機能を使うことで鮮明な画像を撮影することが可能になった。
以上の実施例1、2では、200MHz(磁場強度換算71.4G)と400MHz(磁場強度換算142.8G)のESR−CTに関する実施例を開示したが、1200MHz(430G)くらいまでのESR−CTについても生体への応用については、同様に展開できる。一方本発明は、生体以外(水によるESR信号の減衰が少ない対象)についても適用できる。その場合には、現行のRFプローブの延長で1050G(3000MHz程度)位までには、適用可能である。
本発明によれば、以下の効果も得られた。
(1)室温近辺の永久磁石の温度係数が小さい磁石(例えばSmCo系で−300/℃、アルニコ磁石で−200/℃など)を用いることで、永久磁石部分を加熱保温し、永久磁石の温度を30℃±0.01℃程度に制御することで、磁石の設置部屋の室温を厳しく管理する必要がなくなった。室温が±5℃程度変動しても、ヨークや対向するポールピース部分の温度変動への寄与は無視できるほど小さいので、永久磁石部分の温度を正確に制御することで磁場強度の長期変動を±4mG以下に抑えることが出来た。
(2)漏れ磁場領域は、磁石系より50cm以内に5Gラインを設定できるのでコンパクトになり、70G磁石系の重量も約400Kg以下になり、非常にコンパクトになる。
(3)静磁場強度が70Gから400Gへと大きくなるに従いESR感度は磁場強度の二乗で改善するが、静磁場強度を大きくしても、永久磁石部分の体積を増加させることで磁場空間の特性を維持することが出来る点が空芯磁石系と大きく異なるところである。
(4)永久磁石系は、補助的なコイル系を駆動する電源は必要だが、大電流を流さないので軽量コンパクトなシステムにできる。
磁場空間を構成する永久磁石による磁気系の概念を示す図である。 被測定空間の磁場強度を決定するための補助説明を示す図である。 磁場空間内の傾斜磁場コイルと磁場強度掃引コイルの配置を示す図である。 磁場空間内被測定空間の空間分割の配置を示す図である。 磁場空間内の傾斜磁場コイル系可動方式を説明する図である。 ズームアップ機能を示す図である。 磁場空間を構成する永久磁石による磁気系の他の実施例を示す図である。 実施例の各コイル系配置と被測定空間の磁場実測を示す図である。 磁場空間を構成する永久磁石による磁気系のさらに他の実施例を示す図である。 磁場空間内の傾斜磁場コイル系可動方式の説明を示す図である。 可動傾斜磁場系の他の実施例を示す図である。
符号の説明
1,10,101…永久磁石、2,3…ヨーク、10’,10’’…ダミーヨーク部分、6,7…対向するポールピース、La…対向するポールピース間距離、Lp…永久磁石の長さ、19…ポールピースカバー、15,16…小磁石片磁性シム、17,18…コイル電流シム、40,41…磁石設置車、30,31…ダブルヘルムホルツコイル、320,330…ヘルムホルツコイル、340,350,341,351…X,Y,Z傾斜磁場コイル、360…RFプローブコイル、42,43…温度センサー、44,45…温度センサーの制御線、66,77…対向ポールピースの面、116,117…永久磁石のヨークヘの接合面、125…変調磁場コイル。

Claims (16)

  1. 空間を介して対向した所定の面積Sを有するポールピースと、
    前記ポールピースと結合したヨークと、
    前記ポールピース、前記ヨークおよびとよりなる閉磁路中に磁極面が前記閉磁路に直交するように直列に挿入された永久磁石とよりなる電子スピン共鳴CT装置の磁気系を備えるとともに、前記ポールピース間に傾斜磁場コイル系および高周波送受信用RFプローブ系が形成された電子スピン共鳴CT装置において、
    前記ヨークと前記永久磁石の前記磁極面の対向面積をSとするとき、面積比S/Saが約1/3から1/30であることを特徴とする電子スピン共鳴CT装置。
  2. 前記高周波送受信用RFプローブ系を前記ポールピース間の空間の所定の位置に固定し、前記傾斜磁場コイル系を前記高周波送受信用RFプローブ系に対して相対的な位置を可変とするためのステージを付加した請求項1記載の電子スピン共鳴CT装置。
  3. 前記ポールピース間に静磁場の磁場掃引を行なう磁場掃引コイル系が形成され、前記傾斜磁場コイル対の対向間隔LGCが、前記高周波送受信用RFプローブ系の横幅Lpbより大きく形成されており、前記磁場掃引コイル対の対向間隔LSCは前記傾斜磁場コイル対の対向間隔LGCより大きく、且つ、前記ポールピース間の距離Laは前記磁場掃引コイル対の対向間隔LSCに所定の距離を加えた大きさとされている請求項2記載の電子スピン共鳴CT装置。
  4. 前記ポールピース間に、前記傾斜磁場コイル対の対向間隔LGCが、前記高周波送受信用RFプローブ系の横幅Lpbより大きく形成されており、前記ポールピース間の距離Laは前記傾斜磁場コイル対の対向間隔LGCに所定の距離を加えた大きさとされている請求項2記載の電子スピン共鳴CT装置。
  5. 前記傾斜磁場コイル対の対向間隔LGCが、受信コイルの内径RとRFプローブ系の横幅Lpbの和より大きく形成されており、
    前記磁場掃引コイル対の対向間隔LSCとのRFプローブ系の横幅Lpbの和が傾斜磁場コイル対の対向間隔LGCと傾斜磁場コイル対の横幅LGC’の和より大きく形成されている請求項3記載の電子スピン共鳴CT装置。
  6. 前記傾斜磁場コイル対の対向間隔LGCが、受信コイルの内径RとRFプローブ系の横幅Lpbの和より大きく形成されており、
    前記ポールピース間の距離LaとRFプローブ系の横幅Lpbの和が傾斜磁場コイル対の対向間隔LGCと傾斜磁場コイル対の横幅LGC’の和より大きく形成されている請求項4記載の電子スピン共鳴CT装置。
  7. 前記ポールピース端面から、前記磁場掃引コイル傾斜磁場コイルまでの距離が50mm以上離れている請求項4記載の電子スピン共鳴CT装置。
  8. 前記ポールピース端面から、前記磁場掃引コイルまでの距離が50mm以上離れている請求項5記載の電子スピン共鳴CT装置。
  9. 前記ポールピース端面間に形成される静磁場が、70Gから1050Gである請求項4記載の電子スピン共鳴CT装置。
  10. 前記ポールピース端面間に形成される静磁場が、70Gから1050Gである請求項5記載の電子スピン共鳴CT装置。
  11. 前記永久磁石が室温よりも高い温度に維持されるための制御手段を有する請求項4記載の電子スピン共鳴CT装置。
  12. 前記永久磁石が室温よりも高い温度に維持されるための制御手段を有する請求項5記載の電子スピン共鳴CT装置。
  13. 前記永久磁石の温度係数の絶対値が400ppm/℃以下である請求項11記載の電子スピン共鳴CT装置。
  14. 前記永久磁石の温度係数の絶対値が400ppm/℃以下である請求項12記載の電子スピン共鳴CT装置。
  15. 前記永久磁石がSmCo系磁石である請求項13記載の電子スピン共鳴CT装置。
  16. 前記永久磁石がSmCo系磁石である請求項14記載の電子スピン共鳴CT装置。
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