JP5238445B2 - 磁性微粒子イメージング装置 - Google Patents

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Description

この発明は、被検体に注入された磁性微粒子の分布を画像化する磁性微粒子イメージング装置に関し、特に、磁性微粒子の3次元分布を画像化する場合の撮影時間を短縮することができる磁性微粒子イメージング装置に関する。
近年、被検体内に造影剤として注入された磁性微粒子(例えば、超常磁性酸化鉄など)の分布を画像化する方法が考案されている(例えば、非特許文献1、特許文献1および2を参照)。この方法は、「磁性微粒子イメージング(MPI:Magnetic Particle Imaging)」と呼ばれている。
図17は、従来の磁性微粒子イメージングの原理を説明するための図である。同図に示すように、磁性微粒子イメージングでは、ゼロ磁場領域形成コイル(Selection coils)と、高周波コイル(drive field coils)と、検出コイル(Recording coils)とが用いられる。
ゼロ磁場領域形成コイルは、互いに反対向きの磁場を生成することによって、撮影空間の中央部にゼロ磁場領域(無磁場領域:Field-free point)を発生させる。高周波コイルは、例えば、25kHz程度の高周波磁場を撮影空間に印加する。ここで、ゼロ磁場領域の外では、高周波磁場が印加されても磁性微粒子の磁束密度が常に飽和しており、磁束密度は変化しない。他方、ゼロ磁場領域内では、静磁場による飽和が起きておらず、高周波磁場が印加されると磁気飽和が起きる。したがって、ゼロ磁場領域内では、磁気飽和をともなう磁束密度が生じる。
ゼロ磁場領域内での磁束密度の変化は、検出コイルを鎖交する磁束の変化を生じる。この磁束の変化の大きさはゼロ磁場領域内の磁性微粒子の量に依存しており、検出コイルを鎖交する磁束の変化は検出コイルに誘起される起電力(電圧)の変化として現れる。すなわち、検出コイルに誘起される電圧はゼロ磁場領域内の磁性微粒子の量に応じて変化することになる。
このような原理を利用し、撮影空間内でゼロ磁場領域を少しずつ移動しながら、検出コイルに誘起される電圧の計測を行えば、磁性微粒子の分布が反映された画像を作成することができる。なお、かかる磁性微粒子イメージングを実現するための装置は「磁性微粒子イメージング装置」と呼ばれる。
B. Gleich, J. Borgert, J. Weizenecker, "Magnetic Particle Imaging (MPI), Philips Medic Mundi vol.50 no.1, 2006/5 [online], May 23 2007, retrieved from the Internet: <URL:http://www.medical.philips.com/main/news/assets/docs/medicamundi/mm_vol50_no1/12_Gleich.pdf> 特開2003−199767号公報 特表2006−523492号公報
ところで、上述した従来の磁性微粒子イメージングでは、磁性粒子の3次元分布を画像化する場合、被検体内でゼロ磁場領域を3軸方向に走査する必要があるが、ゼロ磁場領域が点状の領域であるため撮影時間が長時間となる。例えば、一点を10kHzの高周波磁場の100周期分で計測する場合、一点の計測にかかる所要時間は10msとなる。この場合、3mmの分解能で一辺が200mmの立方体の範囲を撮影するためには296000点の計測が必要となるので、合計で約50分の撮影時間が必要となる。
そのため、臨床への応用を考えた場合には、いかにして磁性微粒子の3次元分布を画像化する場合の撮影時間を短縮するかが大きな技術的課題となっている。
この発明は、上述した従来技術による課題を解決するためになされたものであり、磁性微粒子の3次元分布を画像化する場合の撮影時間を短縮することができる磁性微粒子イメージング装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、被検体が置かれる撮影空間に無磁場領域を形成する無磁場領域形成手段と、前記撮影空間に高周波磁場を印加する高周波磁場印加手段と、前記高周波磁場印加手段により印加される高周波磁場によって前記無磁場領域内の磁性微粒子が磁気飽和することにより生じる磁化の分布を計測する磁化分布計測手段と、前記磁化分布計測手段によって計測された磁化の分布を画像化する画像生成手段と、を備え、前記磁化分布計測手段は、前記無磁場領域内または前記無磁場領域周辺に位置する複数の点にそれぞれ生じる磁気モーメントの大きさを求めることによって前記磁化の分布を計測することを特徴とする。
請求項1記載の本発明によれば、ゼロ磁場領域を固定した状態でも同時に複数の点における磁化を計測することができるようになり、磁性微粒子の3次元分布を画像化する場合の撮影時間を短縮することができるという効果を奏する。
以下に添付図面を参照して、この発明に係る磁性微粒子イメージング装置の好適な実施例を詳細に説明する。
本実施例に係る磁性微粒子イメージング装置は、被検体が置かれた撮影空間にゼロ磁場領域を形成し、形成したゼロ磁場領域に高周波磁場を印加する。そして、ゼロ磁場領域内の磁性微粒子が磁気飽和することによって生じる磁化の分布を計測し、計測した磁化の分布すなわち磁性微粒子の分布を画像化する。ここで、従来の磁性微粒子イメージング装置は、点状に形成したゼロ磁場領域のただ一点における磁化の大きさを計測するものであり、ゼロ磁場領域で被検体内を走査することによって磁化の分布を計測していた。
これに対し、本実施例に係る磁性微粒子イメージング装置は、ゼロ磁場領域内またはゼロ磁場領域周辺に位置する複数の点にそれぞれ生じる磁気モーメントの大きさを求めることによって、磁化の分布を計測する。これにより、ゼロ磁場領域を固定した状態でも同時に複数の点における磁化を計測することができるようになり、磁性微粒子の3次元分布を画像化する場合の撮影時間を短縮することが可能になる。
以下、かかる磁性微粒子イメージングについて具体的に説明する。まず、本実施例に係る磁性微粒子イメージング装置の構成について説明する。図1および2は、本実施例に係る磁性微粒子イメージング装置10の構成を示す図である。図1は、磁性微粒子イメージング装置の斜視図であり、図2は、磁性微粒子イメージング装置の正面図である。
図1に示すように、本実施例に係る磁性微粒子イメージング装置10は、ゼロ磁場領域形成磁石11aおよび11bと、ゼロ磁場スキャンコイル12aおよび12bと、寝台13と、架台14と、制御装置15とを有する。さらに、図2に示すように、磁性微粒子イメージング装置10は、高周波コイル16a〜16fを有する。
なお、図1および2では図示を省略しているが、磁性微粒子イメージング装置10は、さらに複数の検出コイルを備える。各検出コイルは、磁性微粒子が磁気飽和することにより生じる磁場の変化を信号値として検出する。かかる検出コイルについては、後に詳細に説明する。
ゼロ磁場領域形成磁石11aおよび11bは、被検体Pが置かれる撮影空間にゼロ磁場領域(無磁場領域)を形成する。具体的には、ゼロ磁場領域形成磁石11aおよび11bは、それぞれ永久磁石であり、図1に示すように、磁化の方向を逆にしてそれぞれ配置されている。なお、ここでは、ゼロ磁場領域形成磁石11aおよび11bとして永久磁石を用いた場合について説明するが、永久磁石の代わりに電磁石を用いてもよい。
図3および4は、ゼロ磁場領域形成磁石11aおよび11bによって形成されるゼロ磁場領域を説明するための図である。図3に示すように、磁化の方向を逆にしてゼロ磁場領域形成磁石11aおよび11bを配置することによって、2つの磁石の中間点で静磁場が相殺され、ゼロ磁場領域が作られる。このゼロ磁場領域は、図4に示すように、頭−足方向に伸びる直線状の領域となる。
図1にもどって、ゼロ磁場スキャンコイル12aおよび12bは、撮影空間内でゼロ磁場領域を左−右方向に移動させる。具体的には、ゼロ磁場スキャンコイル12aがN極、ゼロ磁場スキャンコイル12bがS極となるように、それぞれのコイルに電流を流せば、ゼロ磁場領域は左方向(図1における右側)へ移動し、逆向きに電流を流せば右(図1における左側)へ移動する。
寝台13は、被検体Pが載置され、撮影空間内で被検体Pを上−下方向、左−右方向、頭−足方向に移動する。ゼロ磁場スキャンコイル12aおよび12bでは、ゼロ磁場領域を上下方向へ移動させることはできないが、寝台13が上下方向へ移動することによって、等価的に、被検体内でゼロ磁場領域を上下方向へ移動させることができる。
架台14は、磁性微粒子イメージング装置10を構成する各部を支持する。
制御装置15は、磁性微粒子イメージングの全体制御を行い、特に、コイル制御部15aと、磁化検出部15bと、画像生成部15cとを有する。
コイル制御部15aは、磁性微粒子イメージング装置10が有する各種コイルを制御する。例えば、コイル制御部15aは、ゼロ磁場領域を移動するためにゼロ磁場スキャンコイル12aおよび12bを制御したり、ゼロ磁場領域に高周波磁場を印加するために高周波コイル16a〜16fを制御したりする。
磁化検出部15bは、高周波コイル16a〜16fにより印加される高周波磁場の方向と、ゼロ磁場領域の位置と、ゼロ磁場領域周辺の磁場分布とから磁気モーメントの方向を特定し、特定した磁気モーメントの方向および検出コイルにより検出された信号値に基づいて磁気モーメントの大きさを求めることによって磁化の分布を計測する。この磁化検出部15bによって行われる磁化分布の計測については後に詳細に説明する。
画像生成部15cは、磁化分布計測手段によって計測された磁化の2次元分布あるいは3次元分布を画像化する。
高周波コイル16a〜16fは、撮影空間に高周波磁場を印加する。具体的には、高周波コイル16a〜16fは、それぞれ電磁石であり、10kHzから100kHz程度の高周波磁場を発生させる。被検体Pに磁性微粒子を分布させたうえで、高周波コイル16a〜16fによって高周波磁場を印加することによって、ゼロ磁場領域に存在する磁性微粒子の量に応じて、歪を含んだ高周波磁場がゼロ磁場領域から発生する。
図5−1および5−2は、高周波コイル16a〜16fによる高周波磁場の印加を説明するための図である。具体的には、図5−1に示すように、高周波コイル16eおよび16fは上下方向の高周波磁場を印加し、図5−2に示すように、高周波コイル16a〜16dは左−右方向の高周波磁場を印加する。これらを組み合わせることによって、斜め方向を含む任意の向きの高周波磁場を印加することができる。
ここでは、高周波コイル16a〜16fは、上下方向の高周波磁場の位相と左−右方向の高周波磁場の位相とを90度ずらすことによって、撮影空間中の磁場の向きを10kHzから100kHzの周波数(以下、「変調周波数」と呼ぶ)で回転させるものとする。
図6は、高周波コイルの配置を説明するための図である。同図に示すように、磁性微粒子イメージング装置10には、高周波コイル16a〜16fと同様のコイルの組である高周波コイル16g〜16lが配置されている。ここで、高周波コイル16a〜16fと高周波コイル16g〜16lとは、それぞれ異なる向きの磁場を発生させるものとする。
次に、上記で説明した構成によってゼロ磁場領域の近傍に形成される磁場について説明する。図7は、ゼロ磁場領域の近傍で形成される磁場を説明するための図である。同図は、ゼロ磁場領域形成磁石11aおよび11bによって発生する静磁場の磁場分布を示す模式図である。なお、ここでは説明の便宜上、永久磁石によって発生する静磁場に近似するものとして、静磁場コイル(電磁石)によって発生した静磁場を示している。
同図において、グラフの目盛りが交差する点から伸びる直線の向きは、各点における静磁場の向きを示しており、直線の長さは、各点における静磁場の強さを示している。また、同図の上下にある静磁場コイルの矢印は、各静磁場コイルに流れる電流の向きを示しており、同図の中央にある円は、ゼロ磁場領域を示している。
図8は、図7に示したゼロ磁場領域の近傍を拡大した拡大図である。同図の(a)〜(d)において、大きい円はゼロ磁場領域を示している。また、小さい円(網掛けされた円)は、それぞれ、高周波コイル16a〜16fによって実線の矢印の向きに磁場が印加された瞬間に磁気飽和する領域を示している。また、白抜きの矢印は、外部から近似的に観測される磁化Mの磁気モーメントを示している。
ここで、同図に示すように、高周波コイル16a〜16fによって印加される磁場の向きに応じて、磁気飽和が生じる位置はわずかに変化し、その変化に同期して磁気モーメントの向きも変化する。これは、磁化Mによって形成される磁場の分布から磁気モーメントの向きを知ることができれば、撮影空間内で磁気飽和が生じている位置を知ることができることを示しており、特に、ゼロ磁場領域内ではより詳細に磁気飽和が生じている位置を知ることができることを示している。
なお、前述した図5−1および5−2を用いた説明で、高周波コイル16a〜16fの組と高周波コイル16g〜16lの組が、それぞれ異なる向きの磁場を発生し、変調周波数で磁場を回転させることを述べた。
図9は、ある瞬間において高周波コイル16a〜16lが作る磁場の様子を示す模式図である。同図は、図6に示した高周波コイル16a〜16lと位置関係が対応しており、手前側に高周波コイル16a〜16fの組が、奥側に高周波コイル16g〜16lの組がそれぞれ配置されているものとする。
同図に示す瞬間では、手前側の高周波コイル16a〜16fは横向きの磁場を発生し、奥側の高周波コイル16g〜16lは下向きの磁場を発生している。実際の磁場はこれらの合成なので、直線状のゼロ磁場領域に沿って磁場の向きが変化している。
図10は、図9に示した瞬間において計測される磁気モーメントを示す模式図である。前述したように、高周波磁場の向きによって磁気モーメントの向きも変化するので、図9に示した瞬間では、図10に示すように、磁気モーメントは直線状のゼロ磁場領域に沿って配置される。なお、同図において、左右に配列された小円は、それぞれ、各向きの磁気モーメントが作る磁場を検出し、分解するための検出コイルを示している。
従来の方法では、ゼロ磁場領域をある位置に置いたとき、計測できる磁化の量(=磁性粒子の分布に比例)は一点のみであった。本実施例に係る磁性微粒子イメージング装置10では、以下に説明するように、ゼロ磁場領域を固定した状態でも、ある範囲の磁化の分布を測定することができる。
次に、本実施例における磁化分布の計測方法(分解方法)について説明する。ここでは、ゼロ磁場領域の周方向に沿った磁化の分布を計測する方法と、ゼロ磁場領域の軸方向に沿った磁化の分布を計測する方法とをそれぞれ説明する。
まず、ゼロ磁場領域の周方向に沿った磁化の分布を計測する方法について説明する。図11−1および11−2は、ゼロ磁場領域の周方向に沿った磁化の分布を計測する方法を説明するための図であり、それぞれ、検出コイル17の配置の一例を示している。
本実施例に係る磁性微粒子イメージング装置10では、全ての検出コイル17は、高周波コイル16a〜16fが作る磁場に対してコイルの軸が直交するように配置される。例えば、図11−1および11−2に示すように、検出コイル17は、高周波コイル16eおよび16fが作る磁場および高周波コイル16a〜16dが作る磁場の両方に対してコイルの軸が直交するように配置されている。
このように検出コイル17を配置することによって、どのような向きの磁場を高周波コイル16a〜16dが発生させていても、検出コイル17が、高周波コイル16a〜16dによって発生する磁場を直接計測することはない。つまり、前述したように高周波コイル16a〜16dは回転磁場を発生させるが、検出コイル17は、この回転磁場に対して感度を持たない。
他方、検出コイル17は、図11−1および11−2に示すように、高周波コイル16a〜16dによってゼロ磁場領域の近傍で発生する磁化M(磁気モーメント)に対しては感度を持つよう配置されている。磁気モーメントの向きは、高周波コイル16a〜16dが発生させる回転磁場に伴って回転するが、この回転中、複数の検出コイル17のうち、少なくとも一つは、磁気モーメントが作る磁場を計測することになる。
すなわち、磁気モーメントの向きに応じて、複数の検出コイル17によって計測される信号値のパターンが異なる。この信号値のパターンは、b(θ)と表すことができる。ここで、θは、高周波コイル16a〜16dによって発生する磁場の向きであり、iは、検出コイル17のインデックスである。実際の検出信号s(θ)とb(θ)の内積は、磁化Mの大きさに比例する。
また、磁化Mが存在する領域の位置は、ゼロ磁場領域の中心からθに関連する方向に少しだけずれた位置となる(図8を参照)。この位置は、高周波コイル16a〜16dの配置などによって異なる。例えば、図11−1および11−2の例では、磁化Mが存在する領域の位置は、ゼロ磁場領域の中心から約(90度−θ)の方向にずれた位置となる。
そこで、磁化Mの方向(磁気モーメントの方向)をφ=π/2−θとすると、ゼロ磁場領域の中心からφの方向にずれた位置における磁気モーメントの大きさa(φ)は、以下に示す式(1)で求めることができる。これにより、ゼロ磁場領域の周方向に沿った磁化の分布が得られる。ここで、αは適当な比例係数である。
a(φ)=αΣ{s(π/2−φ)b(π/2−φ)} ・・・(1)
なお、ここで説明したゼロ磁場領域の周方向に沿った磁化分布の計測は、前述した制御装置15の磁化検出部15bによって行われるものとする。
次に、ゼロ磁場領域の軸方向に沿った磁化の分布を計測する方法について説明する。図12は、ゼロ磁場領域の軸方向に沿った磁化の分布を計測する方法を説明するための図である。同図は、図10に示した瞬間で検出される検出信号および磁気モーメントを示している。同図に示すように、例えば、N個の磁気モーメントの大きさM〜Mの総和が、M個の検出コイルによって検出信号s〜sとして計測される。
ここで、磁気モーメントが存在する領域をN個に離散化すれば、各検出コイルによって計測される検出信号sは、以下に示す式(2)で表すことができる。
Figure 0005238445
さらに、線形逆問題理論を用いることによって、以下に示す式(3)のように、N個の磁気モーメントの大きさM〜M(磁化の分布)を求めることができる。これにより、ゼロ磁場領域の軸方向に沿った磁化の分布が得られる。ここで、Aは一般逆行列を表している。
Figure 0005238445
上記の方程式の特異性はそれほど大きくないため、安定的に解くことは比較的容易であり、線形逆問題の解法としては公知の方法を用いればよい。例えば、ムーア・ペンローズ一般逆行列などを用いることができるほか、公知の正則化法を適用することもできる。
また、式(1)における係数行列Aのランクは、分離できる磁気モーメントの数に関係する。ゼロ磁場領域内の全点に同じ方向の磁場を印加する場合には(磁気モーメントの向きが同じ場合)、各点における磁気モーメントが作る磁場分布の違いが小さく、結果として、行列Aのランクはあまり大きくならない。これは、分解できる磁気モーメントの数が少ないことを意味する。
本実施例では、各点の磁気モーメントの方向が異なるように磁場を印加するので、行列Aのランクが増加する。これにより、分解できる磁気モーメントの数を大きくすることができ、結果として、撮影する磁化分布の分解能を高めることが可能になる。
なお、ここで説明したゼロ磁場領域の軸方向に沿った磁化分布の計測は、前述した制御装置15の磁化検出部15bによって行われるものとする。
上述してきたように、本実施例では、高周波コイル16a〜16fが、ゼロ磁場領域内の位置に応じて高周波磁場の方向を変化させる。また、複数の検出コイル17が、磁性微粒子が磁気飽和することにより生じる磁場の変化を信号値として検出する。そして、制御装置15の磁化検出部15bが、高周波コイル16a〜16fにより印加される高周波磁場の方向と、ゼロ磁場領域の位置と、ゼロ磁場領域周辺の磁場分布とから磁気モーメントの方向を特定し、特定した磁気モーメントの方向および検出コイル17により検出された信号値に基づいて磁気モーメントの大きさを求めることによって、磁化の分布を計測する。これにより、ゼロ磁場領域を固定した状態でも同時に複数の点における磁化を計測することができるようになり、磁性微粒子の3次元分布を画像化する場合の撮影時間を短縮することが可能になる。
ところで、上記実施例では、直線状のゼロ磁場領域を形成する場合について説明したが、本発明はこれに限られるわけではなく、例えば、円環状のゼロ磁場領域を形成するようにしてもよい。図13は、円環状のゼロ磁場領域を形成する場合のコイルの配置を示す図である。また、図14は、図13に示したコイルによって発生する静磁場の磁場分布を示す模式図であり、図15は、円環状のゼロ磁場領域を示す図である。
例えば、図13に示すように、3つのゼロ磁場領域形成コイル18a、18bおよび18cを、それぞれの中心軸が一致するように配置する。このようにゼロ磁場領域形成コイル18a、18bおよび18cを配置することによって、図14に示すように静磁場が発生する。これにより、図15に示す円環状のゼロ磁場領域を形成することができる。
ここで、ゼロ磁場領域の円環の直径は、ゼロ磁場領域形成コイル18aおよび18bに流す電流とゼロ磁場領域形成コイル18cに流す電流の比を変えることによって変化させることができる。なお、ゼロ磁場領域形成コイル18aおよび18bは、コイル(電磁石)の代わりに永久磁石を用いて構成することもできる。その場合には、ゼロ磁場領域形成コイル18cに流す電流によって円環の直径を変化させる。また、頭−足方向へのゼロ磁場領域の移動は、寝台13を移動することによって行う。
また、上記実施例では、線状(直線状または円環状など)のゼロ磁場領域を形成する場合について説明したが、本発明はこれに限られるわけではなく、従来のように点状のゼロ磁場領域を形成する場合にも同様に適用することができる。
図16は、点状のゼロ磁場領域を形成する場合の磁性微粒子イメージング装置20の構成を示す図である。なお、ここでは、図1に示した各部と同様の役割を果たすものについては、同一の符号を付すこととしてその説明を省略する。また、ここでは、制御装置15については図示を省略している。
点状のゼロ磁場領域を形成する場合、磁性微粒子イメージング装置20には、同図に示すように、2つのゼロ磁場領域形成磁石21aおよび21b、8つのゼロ磁場スキャンコイル22a〜22h、6つの高周波コイル26a〜26fがそれぞれ配設される。
ゼロ磁場領域形成磁石21aおよび21bは、対向して設置され、互いに反対向きの静磁場を発生させる。これにより、ゼロ磁場領域形成磁石21aと21bの中間点で静磁場が相殺され、点状のゼロ磁場領域が形成される。
ゼロ磁場スキャンコイル22a〜22hは、撮影空間内でゼロ磁場領域を左−右および足−頭の方向に移動させる。具体的には、ゼロ磁場スキャンコイル22aおよび22eからゼロ磁場スキャンコイル22bおよび22fへ向かう磁場と、ゼロ磁場スキャンコイル22cおよび22gからゼロ磁場スキャンコイル22dおよび22hへ向かう磁場が発生するように各コイルに電流を流せば、ゼロ磁場領域は左方向へ移動する。また、これとは逆向きの磁場が発生するように各コイルに電流を流せば、ゼロ磁場領域は右方向へ移動する。
一方、ゼロ磁場スキャンコイル22aおよび22bからゼロ磁場スキャンコイル22eおよび22fへ向かう磁場と、ゼロ磁場スキャンコイル22cおよび22dからゼロ磁場スキャンコイル22gおよび22hへ向かう磁場が発生するように各コイルに電流を流せば、ゼロ磁場領域は頭方向へ移動する。また、これとは逆向きの磁場が発生するように各コイルに電流を流せば、ゼロ磁場領域は足方向へ移動する。
高周波コイル26a〜26fは、図5−1、5−2および6に示した高周波コイル16a〜16fと同様に配設される。
また、図16では図示を省略しているが、磁性微粒子イメージング装置20には、検出コイルも配設される。点状のゼロ磁場領域を形成する場合も、検出コイルは、図11−1および11−2に示した検出コイル17と同様に、高周波コイル26eおよび26fが作る磁場および高周波コイル26a〜26dが作る磁場の両方に対してコイルの軸が直交するように配置される。
上記の構成によれば、高周波コイル26a〜26fによって形成される磁場、および、検出コイルによって計測される検出信号は、それぞれ直線状のゼロ磁場領域の場合と同様になる。したがって、ゼロ磁場領域の周方向に沿った磁化の分布は、直線状のゼロ磁場領域の場合と同様の計測方法で計測することができる。
以上のように、本実施例に係る磁性微粒子イメージング装置は、高周波コイルによってゼロ磁場領域に印加される磁場の方向を変化させ、特に回転磁場を生成する。また、高周波コイルが作る磁場、信号発生領域(ゼロ磁場近傍でかつ、磁場が加算される領域から信号が発生する)、および、磁気モーメント(磁性微粒子の濃度と大きさが関連する)の方向を、高周波コイルの信号と連動して変化させるとともに、高周波コイルが作っている磁場の方向から磁気モーメントの方向、および、信号発生領域を決定する手段と、複数の検出コイルの信号値と、磁気モーメントの方向から、磁気モーメントの大きさを決定する。
これにより、本実施例に係る磁性微粒子イメージング装置では、ゼロ磁場領域周辺の磁化分布を計測することが可能になった。従来は、ゼロ磁場領域一点につき、一点の磁化の大きさを計測できるだけであったが、本実施例に係る磁性微粒子イメージング装置では、ゼロ磁場領域一点につき、ゼロ磁場領域近傍の磁化の分布を計測できるようになった。したがって、従来と同一の点数の磁化分布を撮影すると仮定した場合、測定点数を従来と比べて少なくすることができ、その結果、高速撮影が可能になる。
また、本実施例に係る磁性微粒子イメージング装置は、線状のゼロ磁場領域を形成し、複数の検出器の信号から、線状ゼロ磁場に沿った方向の磁化分布を求める。これにより、一度に複数点の磁化分布を計測でき、撮影時間を短縮することが可能になる。特に、線状ゼロ磁場領域内の位置に応じて高周波コイルが作る磁場の向きが異なるように高周波コイルを配置するので、同一方向の磁場を印加する場合と比べて分解能が向上する。
以上のように、本発明に係る磁性微粒子イメージング装置は、磁性微粒子の3次元分布を画像化する場合に有用であり、特に、撮影時間を短縮することが要求される場合に適している。
本実施例に係る磁性微粒子イメージング装置の構成を示す図(1)である。 本実施例に係る磁性微粒子イメージング装置の構成を示す図(2)である。 ゼロ磁場領域形成磁石によって形成されるゼロ磁場領域を説明するための図(1)である。 ゼロ磁場領域形成磁石によって形成されるゼロ磁場領域を説明するための図(2)である。 高周波コイルによる高周波磁場の印加を説明するための図(1)である。 高周波コイルによる高周波磁場の印加を説明するための図(2)である。 高周波コイルの配置を説明するための図である。 ゼロ磁場領域の近傍で形成される磁場を説明するための図である。 図7に示したゼロ磁場領域の近傍を拡大した拡大図である。 ある瞬間において高周波コイルが作る磁場の様子を示す模式図である。 図9に示した瞬間において計測される磁気モーメントを示す模式図である。 ゼロ磁場領域の周方向に沿った磁化の分布を計測する方法を説明するための図(1)である。 ゼロ磁場領域の周方向に沿った磁化の分布を計測する方法を説明するための図(2)である。 ゼロ磁場領域の軸方向に沿った磁化の分布を計測する方法を説明するための図である。 円環状のゼロ磁場領域を形成する場合のコイルの配置を示す図である。 図13に示したコイルによって発生する静磁場の磁場分布を示す模式図である。 円環状のゼロ磁場領域を示す図である。 点状のゼロ磁場領域を形成する場合の磁性微粒子イメージング装置の構成を示す図である。 従来の磁性微粒子イメージングの原理を説明するための図である。
符号の説明
10,20 磁性微粒子イメージング装置
11a,11b,21a,21b ゼロ磁場領域形成磁石
12a,12b,22a〜22h ゼロ磁場スキャンコイル
13 寝台
14 架台
15 制御装置
15a コイル制御部
15b 磁化検出部
15c 画像生成部
16a〜16l,26a〜26f 高周波コイル
17 検出コイル

Claims (7)

  1. 被検体が置かれる撮影空間に無磁場領域を形成する無磁場領域形成手段と、
    前記撮影空間に高周波磁場を印加する高周波磁場印加手段と、
    前記高周波磁場印加手段により印加される高周波磁場によって前記無磁場領域内の磁性微粒子が磁気飽和することにより生じる磁化の分布を計測する磁化分布計測手段と、
    前記磁化分布計測手段によって計測された磁化の分布を画像化する画像生成手段と、
    を備え、
    前記磁化分布計測手段は、前記無磁場領域内または前記無磁場領域周辺に位置する複数の点にそれぞれ生じる磁気モーメントの大きさを求めることによって前記磁化分布を計測することを特徴とする磁性微粒子イメージング装置。
  2. 前記高周波磁場印加手段は、前記無磁場領域内の位置に応じて、前記高周波磁場の方向を変化させ、
    前記磁化分布計測手段は、
    前記磁性微粒子が磁気飽和することにより生じる磁場の変化を信号値として検出する複数の磁場検出手段と、
    前記高周波磁場印加手段により印加される高周波磁場の方向と前記無磁場領域の位置と前記無磁場領域周辺の磁場分布とから前記磁気モーメントの方向を特定し、特定した磁気モーメントの方向および前記磁場検出手段により検出された信号値に基づいて前記磁気モーメントの大きさを求めることによって前記磁化の分布を計測する磁化検出手段と、
    を有することを特徴とする請求項1に記載の磁性微粒子イメージング装置。
  3. 前記高周波磁場印加手段および前記磁場検出手段はそれぞれコイルであり、
    前記磁場検出手段は、前記高周波磁場印加手段によって印加される磁場に対してコイルの軸が直交するように配置されることを特徴とする請求項2に記載の磁性微粒子イメージング装置。
  4. 前記無磁場領域形成手段は、線状の無磁場領域を形成し、
    前記磁化分布計測手段は、前記無磁場領域の軸方向に沿った磁化の分布を計測することを特徴とする請求項1、2または3に記載の磁性微粒子イメージング装置。
  5. 前記磁化分布計測手段は、前記無磁場領域の周方向に沿った磁化の分布を計測することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の磁性微粒子イメージング装置。
  6. 前記高周波磁場印加手段は、前記撮影空間内で磁場が回転するように前記高周波磁場を印加することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の磁性微粒子イメージング装置。
  7. 前記無磁場領域形成手段によって形成された無磁場領域で前記被検体内を走査する無磁場領域走査手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の磁性微粒子イメージング装置。
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