JP6436408B1 - ポンプ流量計測装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポンプ出口圧力、吐出槽液体レベルおよび液体温度を計測する。ポンプ出口圧力、吐出実揚程、液体温度、液体密度、液体粘度、管損失係数、管摩擦係数および管寸法を用いて、吐出管路と吐出槽にベルヌーイの定理とダルシー・ワイスバッハの式を適用することにより導出した第一管摩擦係数・レイノルズ数関数と、管内壁面の粗さに依存し、液体の種類に依存しない第二管摩擦係数・レイノルズ数関数を作成し、両関数を連立方程式として解くことにより管摩擦係数、レイノルズ数を直接演算により求め、ポンプ流量を計測する。
【選択図】図1
Description
電磁式流量計、超音波式流量計以外のポンプ吐出流量の流量計測装置として、ポンプ全揚程曲線と管路抵抗曲線の交点流量から流量を求める方法が知られている。この方法は第一に、ポンプ並列運転において、合成吸込み管路損失の把握が困難なために合成全揚程曲線を正確に求めることが困難な課題がある。
また、第二として、管路抵抗の求め方として、図3に示すムーディ線図と呼ばれるレイノルズ数と摩擦係数の関係を示す線図と公知のダルシー・ワイスバッハの式を用いて流量に対応して、管摩擦係数の探索を逐次的に行う方法が考えられるが、ムーディ線図の読取りの煩雑さ、読取精度の悪さ、演算過程の複雑化から流量の自動計測用として困難であった。
これら二つの課題を解決して、多くのポンプ流量計測に適用可能で、計測精度が高く、安価なポンプ流量計測装置の開発が課題である。
図2はポンプ1の揚程、管路損失、ポンプ出口圧力、速度等のエネルギーの関係を位置エネルギー(ヘッド)で表した図である。
ポンプ1の吐出管5には吐出液体の圧力を測定する吐出圧力計2および吐出液体の温度を測定する液体温度計3を設置する。吐出管の末端には吐出槽6を設置し、吐出槽6の吐出液体のレベルを測定する吐出槽液体レベル計4を設置する。前記液体温度計3は温度変化に伴う液体粘度と密度を補正するものである。
吐出圧力計2、液体温度計3および吐出槽液体レベル計4の測定値はそれぞれ信号線17を介して、流量演算装置18の第一管摩擦係数・レイノルズ数関数係数演算部9に入力する。
図1および図2において、吐出管5の吐出圧力計2の位置をA点とし、吐出槽6の入口の位置をB点とする。
吐出圧力計の圧力 P1[Pa]
吐出圧力計の圧力ヘッド Hp=P1/ρ・g[m]
ただし、
液体の密度 ρ[kg/m3]
重力の加速度 g[m/s2]
とする。
A点とB点間の吐出管5の距離 L[m]
A点とB点間の吐出管5の液体の平均流速 u[m/s]
吐出管内径 d[m]
ポンプの中心レベル L3[m]
吐出槽の液面底部のレベル L1[m]
吐出槽入口吐出管中心レベル L2[m]
吐出槽液体レベル(L1に対する液面の高さ) W1[m]
管摩擦係数 λ[無次元数]
レイノルズ数 Re[無次元数]
吐出槽液体レベルW1とL2との高低差 h1[m]
とし、吐出管5のA点とB点間に、エネルギー損失を考慮して、ベルヌーイの定理を適用する。吐出管5は一様な断面であり、曲がりを有する円形管とする。
A点における総ヘッド(エネルギー和)は数式1で示される。
ζ1、ζ2、ζ3・・・ζnによる管路抵抗損失の合計である。
また、右辺第2項はダルシー・ワイスバッハの式による吐出管5の管路抵抗損失である。
数式3を数式2へ代入して、数式1と等しいとすれば数式4となる。
管内を流れる液体の粘度 μ[Pa・s]
動粘度 ν=μ/ρ[m2/s]
とすれば、レイノルズ数Reは数式5で示される。
本関数の係数を演算する第一管摩擦係数・レイノルズ数関数係数演算部9において、数式6の管摩擦係数λ、レイノルズ数Re以外の係数の値を決定する。
吐出圧力計2、液体温度計3、吐出槽液体レベル計4で測定した吐出圧力P1、液体温度T、液体レベルW1を信号線17により伝送して第一管摩擦係数・レイノルズ数関数係数演算部9において、吐出圧力計の圧力ヘッドHpはHp=P1/ρgの関係を用いて測定した吐出圧力P1を用いて求める。
液体温度計3により測定した液体温度Tは液体密度、粘度を設定する液体パラメータ設定部12により設定されている基準温度における液体密度、粘度を測定した液体温度Tにおける液体密度、粘度に換算する。換算はあらかじめ設定されている換算テーブルを参照して換算値を求めるか、または粘度の場合は公知のアンドレード粘度換算数式により換算する。
換算した液体密度ρ、粘度μは数式6に代入して係数値を決定する。
吐出槽液面レベル計4により測定した液体レベルW1は数式6のW1に代入して係数値を決定する。
この他に第一管摩擦係数・レイノルズ数関数係数演算部9に管の水力直径として円形管の場合は管内径d、吐出圧力計2と吐出槽6間の吐出管の距離L、吐出槽の液面底部のレベルL1、ポンプ中心レベルL3(ポンプ中心を基準点としL3=0とする)、吐出管5に曲がりがある場合は曲がり毎の曲がりの抵抗損失係数ζiを管および吐出槽パラメータ設定部11により設定する。
曲りの抵抗損失係数ζiは吐出管5の曲がり角度θ等から管および吐出槽パラメータ設定部11で求める。
曲りの抵抗損失係数ζiの求め方の例は段落0011に示す。
以上により、数式6の係数値はすべて決定して、第一管摩擦係数・レイノルズ数関数は管摩擦係数λ、レイノルズ数Reのみを変数とする関数となる。
第二管摩擦係数・レイノルズ数関数係数演算部10においては、層流、層流から乱流域に遷移する遷移流、乱流毎に数式が異なり、液体の種類、管寸法に依存せず、管内壁の粗さのみに依存する管摩擦係数・レイノルズ数関数を第二管摩擦係数・レイノルズ数関数と定義する。層流の場合の管摩擦係数、レイノルズ数の関数は公知の式として、数式7となる。
ここで、εは絶対粗さで、管内径dとの比ε/dは相対粗さと呼ばれている。
ε/dは管相対粗さ設定部13により設定する。
図4に管内壁の絶対粗さと相対粗さの関係を示す。
第二管摩擦係数・レイノルズ数関数係数演算部10に管相対粗さを管相対粗さ設定部13により設定し、臨界レイノルズ数を臨界レイノルズ数設定部14により設定する。
層流から乱流に変化する遷移流の管摩擦係数に対するレイノルズ数の関数として、下記によるものとする。
(1)臨界レイノルズ数は下限、上限がある。
(2)下限、上限間のレイノルズ数と摩擦係数の関係は層流と乱流曲線を結ぶ直線近似とする。
これは下限、上限間のレイノルズ数と摩擦係数の関係は図5に示す実験データから下限、上限間のレイノルズ数と摩擦係数の関係は直線的に近似可能となるためである。
(3)遷移流となる上、下限のレイノルズ数は管と流体依存性が大きく確定できないために設定値とする。
(4)層流と遷移流、遷移流と乱流への変化時に摩擦係数対レイノルズ数曲線は不連続とならない。
層流と遷移流の境界の臨界レイノルズ数 ReL
遷移流と乱流の境界の臨界レイノルズ数 ReH
層流と遷移流の境界の摩擦係数 λL
遷移流と乱流の境界の摩擦係数 λH
とし、レイノルズ数Reを横軸、摩擦係数λを縦軸にとった時の遷移流の直線の方程式は数式11となる。
臨界レイノルズ数ReL およびReHは臨界レイノルズ数設定部14により設定する。
また、λHは乱流曲線の数式8において、レイノルズ数ReHを代入した数式12により計算される。
流量計測対象管のε/dの値は管の粗さに対応して設定する。
以上により数式12は乱流域と接続する摩擦係数λH以外の係数は与えられ、
λHについて解くことが可能である。数式12は陰関数のためλHの値はニュートン・ラプソン法等を用いて数値的に解くか、Excel等の表計算ソフトであるゴールシーク、ソルバーなどを流量演算装置18に組込むことにより演算で求める。
λHが求められたことにより、遷移流のλ、Reの直線の方程式の係数が求められた。
以上、第二管摩擦係数・レイノルズ数関数係数演算部10の係数と数式が求められた。図7に第二管摩擦係数・レイノルズ数関数の遷移域における直線近似の方法を示す。
第一管摩擦係数・レイノルズ数関数は数式6である。
第二管摩擦係数・レイノルズ数関数は層流、遷移流、乱流に対して別々の数式による。
層流については数式7
遷移流については数式11
乱流については数式8
である。
表1に、これらの数式を整理して示す。
演算の順は、図8に示す手順を自動的に選択して行う。
第一に乱流について摩擦係数λ、レイノルズ数Reを求める。
レイノルズ数Reが上限の臨界レイノルズ数ReH以上の時は乱流と判定する。
臨界レイノルズ数ReHより小さい時は遷移流と仮定してレイノルズ数Reを求める。遷移流と仮定して求めたレイノルズ数Reが上限の臨界レイノルズ数ReHより小さく下限の臨界レイノルズ数ReL以上の時は遷移流と判定する。
求めたレイノルズ数Reが下限の臨界レイノルズ数ReLより小さい時は層流について摩擦係数λ、レイノルズ数Reを求める。レイノルズ数Reが下限の臨界レイノルズ数ReL以下の時は層流と判定する。
乱流の場合において、第一管摩擦係数・レイノルズ数関数および第二管摩擦係数・レイノルズ数関数の連立方程式を解くにあたり数式が陰関数となる場合、ニュートン・ラプソン法等を用いて数値的に解くか、Excel等の表計算ソフトであるゴールシーク、ソルバーなどを流量演算装置18に組込むことにより演算で求める。
λで表現した場合の管流量Qは数式5のレイノルズ数Reを数式6に代入し、平均流速uを求め、この平均流速uを数式13に代入することにより求められる。
(1)特許文献1は管路抵抗損失曲線と全揚程曲線の交点から流量を求める方式に分類される1例である。全揚程曲線の関数近似方式、回転数制御、ポンプ並列運転方式などの相違により多数の特許が出願されている。
(2)特許文献2は吐出管および吸込み管が短く吐出管および吸込み管の抵抗損失が無視できる場合であり、吐出圧、全揚程および流速より、流量を求める方式であり、複数の特許が出願されている。
本願はポンプの全揚程曲線を利用せずポンプの吐出圧を計測して流量を求める方式である。流量の求め方は特許文献3の管流量計測装置の流量計測の方法を応用している。
ベンドの損失ヘッドΔhbおよびエルボの損失ヘッドΔheの公知の公式を、それぞれ数式15および数式17に示す。
ベンドまたはエルボの合計でn組ある曲りの抵抗損失係数の和は、
ζ1+ζ2+ζ3・・・+ζn となり、曲がりによる損失ヘッドの合計は数式19となる。
管の断面積をA、断面の周辺の長さ(ぬれ縁という)をSとし、m=A/S は断面積Aとぬれ縁Sの比であり、水力平均深さと呼ばれている。
任意断面の水力直径deは、de=4×mとなる。
例として、
円形の場合 m=A/S={π(d/2)2}/{2π(d/2)}=d/4であるから de=4×m=d
正方形の場合 一辺をBとして m=A/S=B2/4B=B/4であるから d=4×m=Bとなる。
吐出管の抵抗損失係数が無視できるポンプ設備は極めて限定されるため、本発明のポンプ流量測定としての用途は広い。多くのポンプ設備には吐出圧を測定する吐出圧測定用の圧力計が設置されている。また、吐水槽には液面レベル測定用のレベル計が設置されている。
このため、新たに設置するセンサとしては液面温度計のみとなる場合が多い。
従来ではポンプ流量計の設置のために、流量計はポンプから所定の距離を離して設置する必要がありポンプ室の建物が大きくなる。
流量計を屋外に設置する場合は、流量計ボックスのスペースが必要となり、流量計以外のコストが高価になる欠点がある。
また、流量計のコストが必要になる欠点があったがこれらの欠点を除くことが
可能である。
本発明によればポンプシステムとして、吐出弁により流量制御を行うシステム、回転数制御により流量制御するシステム、ポンプ並列運転により流量制御するシステムとの親和性が高い。
さらに、ポンプ固有の全揚程曲線を必要としないために、ポンプシステム毎に必要とする全揚程曲線の作成の必要性がなくなり、全揚程曲線の関数近似にもとづく流量誤差が防止できる。
(1)液体 水
(2)液体密度 0℃において 999.8Kg/m3
(3)液体粘度 0℃において 0.001782Pa・s
(4)管の種類 配管用鋼管 呼び径 1,350 mm
(5)管壁絶対粗さ ε=0.045mm
(6)臨界レイノルズ数
下限臨界 2,000
上限臨界 4,000
(7)吐出管 A点とB点の距離 L=87m
(8)管の敷設 図11参照
管内径 d=1.35m
ポンプの中心レベル L3=0m(基準レベル)
吐出槽の液面底部のレベル L1=39m
吐出槽入口吐出管中心レベル L2=40m
吐出管の曲がり(ベンド)30度 2ヶ所
曲がりによる損失係数は下記による。
ξb=[0.131+0.1632(d/R)3.5]*θ/90
θ=30 d=1.35 R=3 として ξb=0.047
2ヶ所の損失係数は 2ξb=0.094
測定値として、下記の値を得ている。
(1)吐出圧力P1 499 KPa
(2)液体温度 20 ℃
(3)吐出槽液体レベル(L1に対する液面の高さ) W1 6m
以上の条件でポンプ流量を求めた結果 18.0 m3/sである。
流量演算の結果を表2に示す。
各流量計測区間の上流側ポンプはポンプ吐出圧力を測定する、また、下流側の吐水槽の水位を計測する。下流側で再度揚水するカスケード形のシステムにおいては下流側の吐水槽は吸水槽を兼ねる。
幹線管路の代表地点には用水の温度を測定する液体温度計を設置する。
流量計測は各加圧ポンプ場にポンプ流量計測装置を設置して、個別に流量計測をおこなう個別方式と中央の管理所に各ポンプ場の吐出圧、吐水槽または吸水槽の水位をテレメータで収集して、共通の流量演算装置により処理し流量計測を行い、経済的に流量計測をおこなう管理所一括方式の流量計測がある。
管理所一括方式の場合、各ポンプ場と管理所間の伝送路は経済性、信頼性等を考慮して、有線、無線の選択、通信事業者用、自営用の伝送路を選択する。
すなわち、数式20として取扱う。
数式20を数式6に代入すれば、数式21となる。
数式6の代わりに数式21を用いることになる。
すなわち、W1および吐出槽の液面底部のレベルL1が不要となり、L2が必要となる。また、吐出槽液体レベル計4が不要となる。
以上のとおり、大気中に吐出管5により直接放流する形態は、吐出槽5が無限大の
平面を有する場合として扱うことができる。
この形態は、本願発明の一つの形態であり、本発明に含まれる。
用途として農業用の用水路、水道用幹線、石油または液化天然ガスパイプライン、化学プラントにおける液体をポンプアップするシステムに適用可能である。
本発明のポンプ流量計測装置は並列運転ポンプ、回転数制御ポンプ、吐出弁による流量制御ポンプ等のポンプシステムの流量制御システムとの親和性が高く、適用に当たってポンプシステムの改修等は基本的に必要としない。
Claims (1)
- ポンプ吐出管の液体吐出圧力を測定する吐出圧力計と、
前記液体の温度を測定する液体温度計と、
吐出槽液体レベルを測定する吐出槽液体レベル計と、
前記ポンプ吐出管にベルヌーイの定理と公知のダルシー・ワイスバッハの式の管流速をレイノルズ数に変換した式において、前記液体吐出圧力、液体密度、液体粘度、管の水力直径、前記吐出圧力計と前記吐出槽入口間の前記吐出管の距離、ポンプ中心レベル、吐水槽の液面底部レベル、吐出管の曲がり抵抗損失係数を求めることにより管摩擦係数とレイノルズ数のみを変数とした第一管摩擦係数・レイノルズ数関数係数演算部と
前記吐出圧力計、前記液体温度計および前記吐出槽液体レベル計で測定した前記吐出圧力、前記液体温度および前記吐出槽液体レベルを前記第一管摩擦係数・レイノルズ数関数係数演算部に電気信号により入力する信号線と、
前記第一管摩擦係数・レイノルズ数関数係数演算部に液体密度、粘度を設定する液体パラメータ設定部と、
前記第一管摩擦係数・レイノルズ数関数係数演算部に前記吐出管の水力直径、前記吐出圧力計と吐出槽入口間の前記吐出管の距離、ポンプ中心レベル、吐水槽の液面底部レベル、吐出管の曲がり抵抗損失係数を設定する管および吐出槽パラメータ設定部と、
層流域においては公知の管摩擦係数=64/レイノルズ数の式、乱流域においては係数として管相対粗さを含む公知のコールブルックの式、層流域と乱流域を相互に遷移する遷移域においては、遷移点の臨界レイノルズ数間を補間する直線補間式をもちいて、前記管相対粗さ、前記臨界レイノルズ数を設定することにより、管摩擦係数とレイノルズ数のみを変数とした第二管摩擦係数・レイノルズ数関数係数演算部と
前記第二管摩擦係数・レイノルズ数関数係数演算部に管相対粗さを設定する管相対粗さ設定部と、前記第二管摩擦係数・レイノルズ数関数係数演算部に臨界レイノルズ数を設定する臨界レイノルズ数設定部と
前記第一および第二管摩擦係数・レイノルズ数関数係数演算部で係数を演算により求めた前記第一および第二管摩擦係数・レイノルズ数関数を連立方程式として管摩擦係数、レイノルズ数を演算する連立管摩擦係数・レイノルズ数演算部と、
前記連立管摩擦係数・レイノルズ数関数演算部で求めた管摩擦係数またはレイノルズ数を用いて前記吐出管流量を演算して表示する流量演算表示部と、
を具備するポンプ流量計測装置。
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