以下、本発明の一実施形態にかかる運転姿勢出力装置を説明する。本発明の一実施形態にかかる運転姿勢出力装置は、取得手段が人力機械のクランクの回転角度に関する角度情報と、その回転角度におけるクランクに加えられる力に関する力情報と、を取得する。出力手段が力情報が所定の状態となったときの角度情報に基づいて、人力機械の運転者の運転姿勢を判定して、判定した運転姿勢に関する情報を出力する。このようにすることにより、角度情報と力情報とに基づいて運転姿勢を判定することができる。したがって、ジャイロセンサに基づいて判定するような自転車自体の姿勢を考慮する必要がないので、精度良く運転姿勢を判定することができる。
また、所定の状態とは、力情報に基づいて、力の大きさまたは成分が所定の期間内における最大値となることであってもよい。このようにすることにより、クランクに加えられる力が最大のときのクランクの回転角度に基づいて運転姿勢を判定することができる。
また、力情報は、クランクに加えられる力のうち、クランクの回転方向の力の成分に関する情報を含んでもよい。このようにすることにより、クランクの回転方向の力の成分の最大値に基づいて運転姿勢を判定することができる。
また、出力手段は、クランクに加えられる力が所定の状態となるクランクの回転角度と、回転方向の力の成分が所定の状態となるクランクの回転角度と、に基づいて運転姿勢を判定してもよい。このようにすることにより、2つの評価方向に基づく値から運転姿勢を判定することができる。例えば、それぞれの結果に点数付け等を行って合わせて評価することにより、より精度良く運転姿勢を判定することができる。
出力手段は、力情報が所定の状態となったときの角度情報に対して定めた所定の閾値に基づいて運転姿勢を判定してもよい。このようにすることにより、閾値と最大値となったクランクの回転角度とを比較するだけで容易に運転姿勢を判定することができる。
また、取得手段は、力情報としてクランクに加えられる力のうちクランクの長手方向の力の成分に関する情報を取得する。出力手段は、クランクに加えられる力が所定の状態となるクランクの回転角度と、回転方向の力の成分が所定の状態となるクランクの回転角度と、のうち少なくとも1つ以上と、所定の期間における長手方向の力の成分の変化と、所定の期間における回転方向の力の成分が所定の状態となったときの回転方向の力の成分に関する情報と長手方向の力の成分が所定の状態となったときの長手方向の力の成分に関する情報との比較値と、所定の期間における回転方向の力の成分が所定の状態となったときのクランクの回転角度と長手方向の力の成分が所定の状態となったときクランクの回転角度との比較値と、のうち少なくとも1つ以上と、に基づいて前記運転姿勢を判定してもよい。このようにすることにより、複数の評価方向に基づく値から運転姿勢を判定することができる。例えば、それぞれの結果に点数付け等を行って合わせて評価することにより、より精度良く運転姿勢を判定することができる。
また、出力手段は、角度情報および変化の値もしくは比較値に対してそれぞれ定めた所定の閾値に基づいて運転姿勢を判定してもよい。このようにすることにより、閾値と最大値となったクランクの回転角度および変化の値もしくは比較値とを比較するだけで容易に運転姿勢を判定することができる。
また、所定の期間は、クランクの回転角度に対して定めた所定の閾値を含む所定の角度範囲であってもよい。このようにすることにより、閾値の近傍のみの角度情報と力情報とに基づいて運転姿勢を判定することができる。したがって、角度情報と力情報とを保存するメモリ等の容量を少なくすることができる。
また、所定の期間は、クランクがn回転(nは1以上の自然数)の期間であってもよい。このようにすることにより、クランクの1回転以上の角度情報と力情報とに基づいて判定することができる。したがって、多くの情報に基づいて判定することができるので、より精度良く判定することができる。
また、本発明の一実施形態にかかる運転姿勢出力方法は、取得工程で人力機械のクランクの回転角度に関する角度情報と、その回転角度におけるクランクに加えられる力に関する力情報と、を取得する。そして、出力工程で力情報が所定の状態となったときの角度情報に基づいて、人力機械の運転者の運転姿勢を判定して、判定した運転姿勢に関する情報を出力する。このようにすることにより、角度情報と力情報とに基づいて運転姿勢を判定することができる。したがって、ジャイロセンサに基づいて判定するような自転車自体の姿勢を考慮する必要がないので、精度良く運転姿勢を判定することができる。
また、上述した運転姿勢出力方法をコンピュータにより実行させる運転姿勢出力プログラムとしてもよい。このようにすることにより、コンピュータを用いて、角度情報と力情報とに基づいて運転姿勢を判定することができる。したがって、ジャイロセンサに基づいて判定するような自転車自体の姿勢を考慮する必要がないので、精度良く運転姿勢を判定することができる。
また、上述した運転姿勢出力プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよい。このようにすることにより、当該プログラムを機器に組み込む以外に単体でも流通させることができ、バージョンアップ等も容易に行える。
本発明の第1の実施例にかかる運転姿勢出力装置を図1乃至図12を参照して説明する。まず、運転姿勢出力装置が運転者の運転姿勢を判定するために必要とする情報を収集する構成を説明する。即ち、例えば人力機械としての自転車の運転者(ユーザ)が運転姿勢としてダンシングかシッティングかを判定するために必要とする情報を収集するため自転車に取り付けられるセンサ等の構成を説明する。
自転車1は図1に示すように、フレーム3と、フロント車輪5と、リア車輪7と、ハンドル9と、サドル11と、フロントフォーク13と、駆動機構101と、を有している。
フレーム3は、2つのトラス構造から構成されている。フレーム3は、後方の先端部分において、リア車輪7と回転自在に接続されている。また、フレーム3の前方において、フロントフォーク13が回転自在に接続されている。
フロントフォーク13は、ハンドル9と接続されている。フロントフォーク13の下方向の先端位置において、フロントフォーク13とフロント車輪5とは回転自在に接続されている。
フロント車輪5は、ハブ部、スポーク部及びタイヤ部を有している。ハブ部はフロントフォーク13と回転自在に接続されている。そして、このハブ部とタイヤ部はスポーク部によって接続されている。
リア車輪7は、ハブ部、スポーク部及びタイヤ部を有している。ハブ部はフレーム3と回転自在に接続されている。そして、このハブ部とタイヤ部はスポーク部によって接続されている。リア車輪7のハブ部は、後述するスプロケット113と接続されている。
自転車1は、ユーザの足による踏み込み力(踏力)を自転車1の駆動力に変換する駆動機構101を有している。駆動機構101は、ペダル103、クランク機構104、チェーンリング109、チェーン111、スプロケット113と、を有している。
ペダル103は、ユーザが踏み込むための足と接する部分である。ペダル103は、クランク機構104のペダルクランク軸115によって回転自在となるように支持されている。
クランク機構104は、クランク105とクランク軸107及びペダルクランク軸115(図4および図6も参照)から構成されている。
クランク軸107はフレーム3を左右方向に(自転車側面の一方から他方に)貫通している。クランク軸107は、フレーム3によって回転自在に支持されている。即ち、クランク105の回転軸となる。
クランク105は、クランク軸107と直角に設けられている。クランク105は、一端部において、クランク軸107と接続されている。
ペダルクランク軸115は、クランク105と直角に設けられている。ペダルクランク軸115の軸方向は、クランク軸107と同一方向となっている。ペダルクランク軸115は、クランク105の他端部においてクランク105と接続されている。
クランク機構104は、このような構造を自転車1の側面の反対側にも有している。つまり、クランク機構104は、2個のクランク105及び、2個のペダルクランク軸115を有している。したがって、ペダル103も自転車1の両側面にそれぞれ有している。
これらが自転車1の右側にあるか左側にあるかを区別する場合には、それぞれ右側クランク105R、左側クランク105L、右側ペダルクランク軸115R、左側ペダルクランク軸115L、右側ペダル103R、左側ペダル103Lと記載する。
また右側クランク105Rと左側クランク105Lは、クランク軸107を中心として反対方向に延びるように接続されている。右側ペダルクランク軸115R、クランク軸107および左側ペダルクランク軸115Lは、平行かつ同一平面に形成されている。右側クランク105R及び左側クランク105Lは、平行かつ同一平面上に形成されている。
チェーンリング109は、クランク軸107に接続されている。チェーンリング109は、ギア比を変化させることができる可変ギアで構成されると好適である。また、チェーンリング109にはチェーン111が係合されている。
チェーン111はチェーンリング109及びスプロケット113に係合している。スプロケット113は、リア車輪7と接続されている。スプロケット113は、可変ギアで構成されると好適である。
自転車1は、このような駆動機構101によってユーザの踏み込み力をリア車輪の回転力に変換している。
自転車1は、サイクルコンピュータ201と、測定モジュール301と、を有している(図2も参照)。
サイクルコンピュータ201は、ハンドル9に配置されている。サイクルコンピュータ201は、図2に示すように、各種情報を表示するサイクルコンピュータ表示部203およびユーザの操作を受けるサイクルコンピュータ操作部205を有している。
サイクルコンピュータ表示部203に表示される各種情報とは、自転車1の速度、位置情報、目的地までの距離、目的地までの予測到達時間、出発してからの移動距離、出発してからの経過時間、クランク105の角度ごとの推進力や損失力、効率等である。
ここで、推進力とはクランク105の回転方向に加わる力の大きさである。一方、損失力とは、クランク105の回転方向とは別の方向に加わる力の大きさである。この回転方向とは別の方向に加わる力は、何ら自転車1の駆動に寄与しない無駄な力である。したがって、ユーザは、推進力をできるだけ増加させ、損失力をできるだけ減少させることによって、より効率的に自転車1を駆動させることが可能となる。即ち、これらの力は、クランク105の回転時に当該クランク105に加えられる力である。
サイクルコンピュータ操作部205は、図2では押しボタンで示されているが、それに限らず、タッチパネルなど各種入力手段や複数の入力手段を組み合わせて用いることができる。
また、サイクルコンピュータ201は、サイクルコンピュータ無線受信部209を有している。サイクルコンピュータ無線受信部209は、配線を介してサイクルコンピュータ201の本体部分と接続されている。なお、サイクルコンピュータ無線受信部209は、受信のみの機能を有する必要はない。例えば、送信部としての機能を有していても良い。以下、送信部又は受信部と記載した装置も、受信機能及び送信機能の両方を有していても良い。
測定モジュール301は、例えばクランク105の内面に設けられ、複数のひずみゲージ素子から構成されるひずみゲージ369(図3及び図4参照)を用いて、ペダル103にユーザが加えている人力(踏力)を検出する。具体的には、クランク105の回転力であって自転車1の駆動力となる推進力と、回転方向とは別の方向に加わる力である損失力を算出する。また、測定モジュール301は、後述するクランク回転角度検出センサ2を用いて、クランク105の回転角度も検出する。
また、測定モジュール301は、クランク回転角度検出センサ2が有する磁気センサ22を用いてケイデンス[rpm]を得ることができる。即ち、測定モジュール301は、ケイデンスセンサの機能も合わせて有している。
図3は、サイクルコンピュータ201及び測定モジュール301のブロック図である。
まず、測定モジュール301のブロック構成を説明する。測定モジュール301は、図3に示したように、測定モジュール無線送信部309、測定モジュール制御部351、測定モジュール記憶部353、パワーセンサ368及び磁気センサ22を有している。
測定モジュール無線送信部309は、測定モジュール制御部351がひずみ情報から算出した推進力及び損失力、クランク105の回転角度及びケイデンス等を、サイクルコンピュータ無線受信部209に送信している。
測定モジュール制御部351は、測定モジュール301を包括的に制御している。測定モジュール制御部351は、推進力演算部351aと、回転角検出部351bと、送信データ作成部351dと、ケイデンス演算部351eと、を有している。
推進力演算部351aは、パワーセンサ368が出力するひずみ情報から推進力及び損失力を算出する。推進力及び損失力の算出方法は後述する。
回転角検出部351bは、クランク回転角度検出センサ2の磁気センサ22の検出結果に基づいてクランク105の回転角度を検出し、ひずみ情報を取得するタイミング等を制御している。クランク105の回転角度の検出方法は後述する。
ケイデンス演算部351eは、磁気センサ22の検出結果に基づいて単位時間当たり(1分間)に、後述する基準磁石21aが磁気センサ22の第2素子部22bを通過する回数n(rpm)を検出することで、単位時間当たりのクランク105の回転数を検出する。
送信データ作成部351dは、推進力演算部351aで算出された推進力及び損失力や回転角検出部351bで検出されたクランク105の回転角度やケイデンス演算部351eで算出されたケイデンス等から送信データを作成して、測定モジュール無線送信部309に出力する。
測定モジュール記憶部353には、各種情報が記憶される。各種情報とは、例えば、測定モジュール制御部351の制御プログラム、及び、測定モジュール制御部351が制御を行う際に必要とされる一時的な情報である。
パワーセンサ368は、ひずみゲージ369と、測定モジュールひずみ検出回路365と、を有している。ひずみゲージ369は、クランク105に接着されて、一体化される。ひずみゲージ369は、第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369b、第3ひずみゲージ369c、第4ひずみゲージ369dから構成されている(図4等参照)。そして、ひずみゲージ369のそれぞれの端子は、測定モジュールひずみ検出回路365に接続されている。
図4に、本実施例におけるひずみゲージ369のクランク105への配置の例を示す。ひずみゲージ369は、クランク105の内面119に接着されている。クランク105の内面とは、クランク軸107が突設されている(接続されている)面であり、クランク105の回転運動により定義される円を含む平面と平行な面(側面)である。また、図4には図示しないが、クランク105の外面120は、内面119と対向しペダルクランク軸115が突設されている(接続されている)面である。つまり、ペダル103が回転自在に設けられている面である。クランク105の上面117は、内面119および外面120と同じ方向に長手方向が延在し、かつ内面119および外面120と直交する面の一方である。クランク105の下面118は、上面117と対向する面である。
第1ひずみゲージ369aと第2ひずみゲージ369bは、クランク105の長手方向に対して検出方向が平行、つまり、内面119の中心軸C1に対して平行かつ、内面119の中心軸C1に対して対称になるように設けられている。第3ひずみゲージ369cは、中心軸C1上に設けられ、検出方向が中心軸C1に対して平行かつ、第1ひずみゲージ369aと第2ひずみゲージ369bに挟まれるように設けられている。第4ひずみゲージ369dは、クランク105の長手方向に対して検出方向が垂直、つまり、内面119の中心軸C1に対して垂直かつ、中心軸C1上に設けられている。
即ち、クランク105の長手方向に延在する軸である中心軸C1と平行な方向(図4の縦方向)、つまり、クランク105の長手方向と平行な方向が、第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369b、第3ひずみゲージ369cの検出方向となり、中心軸C1と垂直な方向(図4の横方向)、つまり、クランク105の長手方向と垂直な方向が、第4ひずみゲージ369dの検出方向となる。したがって、第1ひずみゲージ369a乃至第3ひずみゲージ369cと第4ひずみゲージ369dは検出方向が互いに直交している。
なお、第1ひずみゲージ369a乃至第4ひずみゲージ369dの配置は図4に限らない。つまり、中心軸C1と平行または垂直の関係が維持されていれば他の配置でもよい。但し、第1ひずみゲージ369a及び第2ひずみゲージ369bは、中心軸C1を挟んで対称に配置し、第3ひずみゲージ369c及び第4ひずみゲージ369dは、中心軸C1上に配置する方が、後述する各変形を精度良く検出できるので好ましい。
また、図4では、クランク105を単純な直方体として説明しているが、デザイン等により、角が丸められていたり、一部の面が曲面で構成されていてもよい。そのような場合でも、上述した配置を極力維持するようにひずみゲージ369を配置することで、後述する各変形を検出することができる。但し、上記した中心軸C1との関係(平行または垂直)がずれるにしたがって検出精度が低下する。
測定モジュールひずみ検出回路365は、第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369b、第3ひずみゲージ369c、第4ひずみゲージ369dが接続されて、ひずみゲージ369のひずみ量が電圧として出力される。測定モジュールひずみ検出回路365の出力は、図示しないA/Dコンバータによって、アナログ情報からデジタル情報であるひずみ情報信号に変換される。そして、ひずみ情報信号は測定モジュール制御部351の推進力演算部351aに出力される。
測定モジュールひずみ検出回路365の例を図5に示す。測定モジュールひずみ検出回路365は、2つのブリッジ回路である第1検出回路373aと第2検出回路373bとで構成されている。第1検出回路373aの第1系統側では、電源Vccから順に、第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369bの順に接続されている。即ち、第1ひずみゲージ369aおよび第2ひずみゲージ369bが電源Vccに対して直列に接続されている。第2系統側では、電源Vccから順に、固定抵抗R、固定抵抗Rの順に接続されている。第2検出回路373bの第1系統側では、電源Vccから順に、第3ひずみゲージ369c、第4ひずみゲージ369dの順に接続されている。即ち、第3ひずみゲージ369cおよび第4ひずみゲージ369dが電源Vccに対して直列に接続されている。第2系統側では、電源Vccから順に、固定抵抗R、固定抵抗Rの順に接続されている。
即ち、2つの固定抵抗Rは、第1検出回路373aと第2検出回路373bとで共有している。ここで、2つの固定抵抗Rは同一の抵抗値を有している。また、2つの固定抵抗Rは、ひずみゲージ369の圧縮又は伸長が生ずる前の抵抗値と同一の抵抗値を有する。なお、第1ひずみゲージ369a乃至第4ひずみゲージ369dは同じ抵抗値を有している。
ひずみゲージ369の抵抗値は、公知のように圧縮されている場合には抵抗値が下がり、伸長されている場合には抵抗値が上がる。この抵抗値の変化は、変化量がわずかな場合には比例している。また、ひずみゲージ369の検出方向は、配線が伸びている方向であり、上述したように第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369b、第3ひずみゲージ369cが、中心軸C1と平行な方向、第4ひずみゲージ369dが、中心軸C1と垂直な方向となる。この検出方向以外において圧縮又は伸長が生じた場合には、ひずみゲージ369に抵抗値の変化は生じない。
このような特性を持つひずみゲージ369を使用した第1検出回路373aは、第1ひずみゲージ369aと第2ひずみゲージ369bの検出方向で圧縮または伸長されていない場合は、第1ひずみゲージ369aと第2ひずみゲージ369bとの間の電位Vabと、2つの固定抵抗Rの間の電位Vrとの電位差はほぼゼロとなる。
第1ひずみゲージ369aが圧縮され、第2ひずみゲージ369bが伸張された場合は、第1ひずみゲージ369aの抵抗値が減少して第2ひずみゲージ369bの抵抗値が増加するために、電位Vabが高くなり、電位Vrは変化しない。つまり、電位Vabと電位Vrとの間に電位差が発生する。第1ひずみゲージ369aが伸張され、第2ひずみゲージ369bが圧縮された場合は、第1ひずみゲージ369aの抵抗値が増加して第2ひずみゲージ369bの抵抗値が減少するために、電位Vabが低くなり、電位Vrは変化しない。つまり、電位Vabと電位Vrとの間に電位差が発生する。
第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369bともに圧縮された場合は、第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369bともに抵抗値が減少するために、電位Vabと、電位Vrとの電位差はほぼゼロとなる。第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369bともに伸張された場合は、第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369bともに抵抗値が増加するために、電位Vabと、電位Vrとの電位差はほぼゼロとなる。
第2検出回路373bも第1検出回路373aと同様の動作となる。つまり、第3ひずみゲージ369cが圧縮され、第4ひずみゲージ369dが伸張された場合は、電位Vcdが高くなり、電位Vrは低くなり、電位Vcdと電位Vrとの間に電位差が発生する。第3ひずみゲージ369cが伸張され、第4ひずみゲージ369dが圧縮された場合は、電位Vcdが低くなり、電位Vrは高くなり、電位Vcdと電位Vrとの間に電位差が発生する。第3ひずみゲージ369c、第4ひずみゲージ369dともに圧縮された場合と、第3ひずみゲージ369c、第4ひずみゲージ369dともに伸張された場合は、電位Vcdと、電位Vrとの電位差はほぼゼロとなる。
そこで、第1検出回路373aの電位Vabが測定できる第1ひずみゲージ369aと第2ひずみゲージ369bとの接続点と、電位Vrが測定できる2つの固定抵抗Rの接続点と、を第1検出回路373aの出力(以降A出力)とする。第2検出回路373bの電位Vcdが測定できる第3ひずみゲージ369cと第4ひずみゲージ369dとの接続点と、電位Vrが測定できる2つの固定抵抗Rの接続点と、を第2検出回路373bの出力(以降B出力)とする。このA出力とB出力がひずみ情報となる。
図6は、ユーザにより力(踏力)が加えられた際の右側クランク105Rの変形状態を示している。(a)は右側クランク105Rの内面119から見た平面図、(b)は右クランク105Rの上面117から見た平面図、(c)は右側クランク105Rのクランク軸107側の端部から見た平面図である。なお、以降の説明では右側クランク105Rで説明するが、左側クランク105Lでも同様である。
ユーザの足からペダル103を介して踏力が加えられると、その踏力はクランク105の回転力となる、クランク105の回転の接線方向の力である推進力Ftと、クランク105の回転の法線方向の力である損失力Frとに分けられる。このとき、右側クランク105Rには、曲げ変形x、曲げ変形y、引張変形z、ねじれ変形rzの各変形状態が生じる。
曲げ変形xは、図6(a)に示したように、右側クランク105Rが上面117から下面118に向かって、或いは下面118から上面117に向かって曲がるように変形することであり、推進力Ftによって生じる変形である。即ち、クランク105の回転方向に発生する変形によるひずみ(クランク105の回転方向に生じているひずみ)を検出することとなり、曲げ変形xの検出によってクランク105に生じている回転方向ひずみが検出できる。曲げ変形yは、図6(b)に示したように、右側クランク105Rが外面120から内面119に向かって、或いは内面119から外面120に向かって曲がるように変形することであり、損失力Frによって生じる変形である。即ち、クランク105の外面120から内面119、または内面119から外面120に向かって発生する変形によるひずみ(右側クランク105Rの回転運動により定義される円を含む平面と垂直な方向に生じているひずみ)を検出することとなり、曲げ変形yの検出によってクランク105に生じている内外方向ひずみが検出できる。
引張変形zは、右側クランク105Rが長手方向に伸張または圧縮されるように変形することであり、損失力Frによって生じる変形である。即ち、クランク105が長手方向に引っ張られるまたは押される方向に発生する変形によるひずみ(長手方向と平行な方向に生じているひずみ)を検出することとなり、引張変形zの検出によってクランク105に生じている引張方向ひずみが検出できる。ねじれ変形rzは、右側クランク105Rが、ねじれるように変形することであり、推進力Ftによって生じる変形である。即ち、クランク105がねじれる方向に発生する変形によるひずみを検出することとなり、ねじれ変形rzの検出によってクランク105に生じているねじり方向ひずみが検出できる。なお、図6では、曲げ変形x、曲げ変形y、引張変形z、ねじれ変形rzの変形方向を矢印で示したが、上述したように、この矢印と逆方向に各変形が発生する場合もある。
したがって、推進力Ftを測定するためには、曲げ変形xまたはねじれ変形rzのいずれか、損失力Frを測定するためには、曲げ変形yまたは引張変形zのいずれかを定量的に検出すればよい。
ここで、図4のように配置され、図5のように第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369b、第3ひずみゲージ369c、第4ひずみゲージ369dが接続された測定モジュールひずみ検出回路365によって、曲げ変形x、曲げ変形y、引張変形z、ねじれ変形rzを検出(測定)する方法を説明する。
まず、第1検出回路373aのA出力において、各変形がどのように検出(測定)されるかを説明する。曲げ変形xは、右側クランク105Rが上面117から下面118に向かって、或いはその逆方向に変形する。右側クランク105Rが上面117から下面118に向かって変形する場合、第1ひずみゲージ369aは圧縮されるので抵抗値が減少し、第2ひずみゲージ369bは伸張されるので抵抗値が増加する。そのため、第1検出回路373aのA出力は正出力(電位Vabが高く電位Vrが低い)となる。また、右側クランク105Rが下面118から上面117に向かって変形する場合、第1ひずみゲージ369aは伸張されるので抵抗値が増加し、第2ひずみゲージ369bは圧縮されるので抵抗値が減少する。そのため、第1検出回路373aのA出力は負出力(電位Vabが低く電位Vrが高い)となる。
曲げ変形yは、右側クランク105Rが外面120から内面119に向かって、或いはその逆方向に変形する。右側クランク105Rが外面120から内面119に向かって変形する場合、第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369bともに圧縮されるので、どちらも抵抗値が減少する。そのため、第1検出回路373aのA出力はゼロ(電位Vabと電位Vrに電位差が無い)となる。また、右側クランク105Rが内面119から外面120に向かって変形する場合、第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369bともに伸張されるので、どちらも抵抗値が増加する。そのため、第1検出回路373aのA出力はゼロとなる。
引張変形zは、右側クランク105Rが長手方向に伸張または圧縮されるように変形する。右側クランク105Rが伸張する場合、第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369bともに伸張されるので、どちらも抵抗値が増加する。そのため、第1検出回路373aのA出力はゼロとなる。また、右側クランク105Rが圧縮する場合、第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369bともに圧縮されるので、どちらも抵抗値が減少する。そのため、第1検出回路373aのA出力はゼロとなる。
ねじれ変形rzは、右側クランク105Rが、ねじれるように変形する。右側クランク105Rが図6(b)の矢印の方向にねじれる場合、第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369bともに伸張されるので、どちらも抵抗値が増加する。そのため、第1検出回路373aのA出力はゼロとなる。また、右側クランク105Rが図6(b)の矢印と逆方向にねじれる場合、第1ひずみゲージ369a、第2ひずみゲージ369bともに伸張されるので、どちらも抵抗値が増加する。そのため、第1検出回路373aのA出力はゼロとなる。
以上のように、A出力からは、曲げ変形xのみが検出される。即ち、第1検出回路373aは、第1ひずみゲージ369aおよび第2ひずみゲージ369bが接続され、クランク105に生じている回転方向ひずみを検出する。
次に、第2検出回路373bのB出力において、各変形がどのように検出(測定)されるかを説明する。曲げ変形xは、右側クランク105Rが上面117から下面118に向かって、或いはその逆方向に変形する。右側クランク105Rが上面117から下面118に向かって変形する場合、第3ひずみゲージ369c、第4ひずみゲージ369dは曲がるだけのため、検出方向に圧縮も伸張もされないので抵抗値は変化しない。そのため、第2検出回路373bのB出力はゼロとなる。また、右側クランク105Rが下面118から上面117に向かって変形する場合、第3ひずみゲージ369c、第4ひずみゲージ369dは曲がるだけのため、検出方向に圧縮も伸張もされないので抵抗値は変化しない。そのため、第2検出回路373bのB出力はゼロとなる。
曲げ変形yは、右側クランク105Rが外面120から内面119に向かって、或いはその逆方向に変形する。右側クランク105Rが外面120から内面119に向かって変形する場合、第3ひずみゲージ369cは圧縮されるので抵抗値が減少し、第4ひずみゲージ369dは伸張されるので抵抗値が増加する。そのため、第2検出回路373bのB出力は正出力(電位Vcdが高く電位Vrが低い)となる。また、右側クランク105Rが内面119から外面120に向かって変形する場合、第3ひずみゲージ369cは伸張されるので抵抗値が増加し、第4ひずみゲージ369dは圧縮されるので抵抗値が減少する。そのため、第2検出回路373bのB出力は負出力(電位Vcdが低く電位Vrが高い)となる。
引張変形zは、右側クランク105Rが長手方向に伸張または圧縮されるように変形する。右側クランク105Rが伸張する場合、第3ひずみゲージ369cは伸張されるので抵抗値が増加し、第4ひずみゲージ369dは圧縮されるので抵抗値が減少する。そのため、第2検出回路373bのB出力は負出力となる。また、右側クランク105Rが圧縮する場合、第3ひずみゲージ369cは圧縮されるので抵抗値が減少し、第4ひずみゲージ369dは伸張されるので抵抗値が増加する。そのため、第2検出回路373bのB出力は正出力となる。
ねじれ変形rzは、右側クランク105Rが、ねじれるように変形する。右側クランク105Rが図6(b)の矢印の方向にねじれる場合、第3ひずみゲージ369cは伸張されるので抵抗値が増加し、第4ひずみゲージ369dは検出方向に変形しないので抵抗値は変化しない。そのため、第2検出回路373bのB出力は負出力となる。また、右側クランク105Rが図6(b)の矢印と逆方向にねじれる場合、第3ひずみゲージ369cは伸張されるので抵抗値が増加し、第4ひずみゲージ369dは検出方向に変形しないので抵抗値は変化しない。そのため、第2検出回路373bのB出力は負出力となる。
以上のように、B出力からは、曲げ変形y、引張変形z、ねじれ変形rzが検出される。即ち、第2検出回路373bは、第3ひずみゲージ369cおよび第4ひずみゲージ369dが接続され、クランク105に生じている内外方向ひずみまたは引張方向ひずみを検出する。
そして、第1検出回路373aのA出力と、第2検出回路373bのB出力から、推進力演算部351aが、推進力Ftは次の(1)式により、損失力Frは次の(2)式によりそれぞれ算出する。なお、引張変形zは曲げ変形yと比較すると非常に小さいので無視することができる。即ち、(1)式及び(2)式で算出される値が、クランク105の回転時に当該クランク105に加えられる荷重に関する値となる。
Ft=p(A−A0)+q(B−B0)[kgf]・・・(1)
Fr=s|A−A0|+u(B−B0)[kgf]・・・(2)
ここで、Aは推進力Ft(あるいは損失力Fr)を算出する時点におけるA出力値、A0は無負荷時のA出力値、Bは推進力Ft(あるいは損失力Fr)を算出する時点におけるB出力値、B0は無負荷時のB出力値、p、q、s、uは係数であり、次の(3)〜(6)式からなる連立方程式により算出される値である。
m=p(Am−A0)+q(Be−B0)・・・(3)
0=s(Am−A0)+u(Be−B0)・・・(4)
0=p(Ae−A0)+q(Bm−B0)・・・(5)
m=s(Ae−A0)+u(Bm−B0)・・・(6)
ここで、Amはクランク105の角度が水平前向き(クランク105で水平かつフロント車輪5方向に延在している状態)でペダル103にm[kg]を載せたときのA出力値である。Beはクランク105の角度が水平前向きでペダル103にm[kg]を載せたときのB出力値である。Aeはクランク105の角度が垂直下向き(クランク105で鉛直かつ地面方向に延在している状態)でペダル103にm[kg]を載せたときのA出力値である。Bmはクランク105の角度が垂直下向きでペダル103にm[kg]を載せたときのB出力値である。
係数p、q、s、uおよびA0、B0は予め算出又は測定可能な値であるので、AおよびBを(1)式に代入することで推進力Ftが算出でき、AおよびBを(2)式に代入することで損失力Frが算出できる。
また、(1)式ではB出力を用いてA出力の補正をしている。(2)式ではA出力を用いてB出力の補正をしている。これにより、第1検出回路373aや第2検出回路373bに含まれる検出対象以外のひずみの影響を排除することができる。なお、第1ひずみゲージ369aと第2ひずみゲージ369bがクランク方向(中心軸C1と平行な方向)にずれが無い場合、Ae=A0となりB出力による補正の必要がなくなる。
なお、ひずみゲージ369の配置やブリッジ回路の構成は図4や図5に示した構成に限らない。例えばひずみゲージ369は4つに限らないし、ブリッジ回路も1つに限らない。要するに、推進力Ftや損失力Frが算出できる構成であればよい。
次に、クランク回転角度検出センサ2の構成について図7及び図8を参照して説明する。
なお、以降の説明において、クランク105の回転角度は、右側クランク105Rを基準に表されるものとする。つまり、右側クランク105Rが12時の方向に位置する(先端が上方を向く)ときに、クランク105の回転角度θは0°とする。また、クランク回転角度検出センサ2は、右側クランク105Rが3時の方向を指す(先端が前方を向く)とき、クランク105の回転角度(以後、クランク回転角度θとする)は90°を示し、右側クランク105Rが9時の方向を指す(先端が後方を向く)とき、クランク回転角度θは270°を示す。そして、クランク回転角度検出センサ2が検出するクランク回転角度θの範囲は0°以上360°未満(0≦θ<360°)となっており、右側クランク105Rが12時の方向から時計回りで回転する向きを「+」方向とする。
クランク回転角度検出センサ2は、図7(a)に示すように、円環状の枠状部材20、枠状部材20の表面に所定間隔をおいて固定された複数の磁石からなる磁石群21(磁石21a、21b等)及び磁気センサ22からなる。磁石群21が固定された枠状部材20は、枠状部材20の中心点とクランク軸107の軸心とが一致した状態で、磁石群21がクランクB31に対向する様にフレーム3の側面に固定されている。一方、磁気センサ22はチェーンリング109に固定され、クランク105(105R)と共に回転する。
磁石群21は12個の磁石21a〜磁石21lからなり、円環状の枠状部材20の中心点を基準として30°間隔で配置されている。磁石21a、磁石21lは、非常に強い磁力及び保磁力を有するネオジム磁石で構成されている。具体的に、磁石21a、21lは第1ネオジム磁石が2つ直列してなり(双方のN極が同一直線上で同一方向を向いて重ねられ)、その他の磁石21b〜磁石21kは、第1ネオジム磁石より磁力が小さい第2ネオジム磁石が2つ直列してなる。すなわち、磁石群21は、磁力の異なる2種類の磁石からなる。
また、磁石21a、磁石21bは、各中心軸が枠状部材20の半径方向と一致した状態で配置されている。そして、N極の向きが外側を向く磁石と内側(中心側)を向く磁石とが枠状部材20の周方向に交互に入れ替わって配置されている。具体的には、磁石21a、磁石21c、磁石21e、磁石21g、磁石21i、磁石21kのN極が枠状部材20の半径方向(放射方向)外側を向き、磁石21b、磁石21d、磁石21f、磁石21h、磁石21j、磁石21lのN極が枠状部材20の半径方向内側(中心)を向いている。さらに、各磁石21a〜21lの半径方向外側先端と枠状部材20の中心との距離L4は同一となっている。
磁気センサ22は、第1素子部22a、第2素子部22b及び第3素子部22cがケース22dに収容されてなる。第1素子部22a及び第2素子部22bは、所定方向において磁力線(磁界)を検出し(図7(a)において水平方向左向き)、その検出方向と逆向きの磁力線を検出する場合(N極が対向する磁石を検出する場合)にHiレベルの信号(以下、単にHiとする)を出力し、検出方向と同一の向きの磁力線を検出する場合(S極が対向する磁石を検出する場合)にLoレベルの信号(以下、単にLoとする)を出力する。なお、第1素子部22a及び第2素子部22bは所定の強さの磁力線を検出しない場合、出力状態を保持する。
クランク回転角度検出センサ2の使用状態において(枠状部材20及び磁気センサ22が適切に自転車1に固定された状態で)、自転車1の側方からみると、第1素子部22aと第2素子部22bは、枠状部材20の半径方向外側、すなわち、枠状部材20の中心点から磁石21a〜磁石21lより遠い位置に配されている。また、第1素子部22aと第2素子部22bの検出方向は一致しており、各検出方向上に枠状部材20の中心点が位置している。そして、第1素子部22aの方が第2素子部22bより枠状部材20の中心点から近い位置に配されており、検出方向上を通過する磁石21a〜磁石21lの外側先端に近い。これは、後述するように、第1素子部22aを用いて全ての磁石21a〜磁石21lを検出し、第2素子部22bを用いてクランク回転角度θ=0°を示す磁石21aを検出するためである。なお、クランク回転角度θ=0°のとき(右側クランク105Rが12時を示すとき)、第2素子部22bが磁石21aを検出するように(磁石21aが第2素子部22bの検出方向上に位置するように)、枠状部材20及び磁気センサ22が自転車1に固定されている。
また、磁気センサ22には、第1素子部22a及び第2素子部22bより低消費電力の第3素子部22cが設けられている。第3素子部22cは第1素子部22aの近傍に設けられており、いずれかの磁石21a〜21lを検出すると、測定モジュール301のシステムを起動させる。
次に図8を用いて、クランク回転角度検出センサ2によるクランク回転角度の検出方法について説明する。前述したように、円環状の枠状部材20には、その中心点を基準として30°間隔で磁石21a〜磁石21lが配置されており、最も磁力の高い磁石21aはクランク回転角度θ=0°となるときに、第2素子部22bに検出される位置に配されている(以下、磁石21aのことを「基準磁石21a」ともいう)。また、磁石21a〜磁石21lのN極の向きが交互に入れ替わっている。よって、チェーンリング109に固定された磁気センサ22が、クランク105の回転に伴ってクランク軸107を中心に回転すると、磁気センサ22の第1素子部22aは磁石21a〜磁石21lの前を通過する度にHi又はLoと出力を切り換える。同様に、磁気センサ22の第2素子部22bは磁石21a、21lの前を通過する度にHi又はLoと出力を切り換える。この第1素子部22aから出力される「Hi」又は「Lo」は、クランク105が30°回転したことを検出するものである(以後「間隔角度検出信号」という)。一方、第2素子部22bから出力する「Hi」は、クランク回転角度θ=0°を検出するものである(以後「基準角度検出信号」という)。
このように、間隔角度検出信号と基準角度検出信号とを用いることにより、クランク回転角度θを0°から30°間隔で検出することができる。なお、第2素子部22bから出力されたHiは、同一の磁力で逆向きに配置された磁石21lの前を通過するとLoとなる。すなわち、リセットされる。よって、クランク回転角度θを連続して検出することができる。よって、以後、第2素子部22bから出力する「Lo」を「リセット信号」という。
また、第1素子部22aと基準磁石21aとが最も遠く離れた位置関係にあるときに、第1素子部22aが基準磁石21aを検出してしまうことを防ぐためには、以下の3条件を満たすことが望ましい。(1)基準磁石21aが第2素子部22bの検出方向上(以下、「第2検出方向」という)で第2素子部22bに最も接近したときに第2素子部22bが基準磁石21aを検出できること。(2)最も磁力の小さい磁石21b〜磁石21lが第1素子部22aの検出方向上(以下、「第1検出方向」という)で第1素子部22aに最も接近したときに第1素子部22aが磁石21b〜磁石21kを検出できること。(3)基準磁石21aが第1検出方向上で第1素子部22aから最も離隔したときに第1素子部22aが基準磁石21aを検出できないこと。
次に、サイクルコンピュータ201のブロック構成を説明する。サイクルコンピュータ201は、図3に示したように、サイクルコンピュータ表示部203、サイクルコンピュータ操作部205、サイクルコンピュータ無線受信部209、サイクルコンピュータ外部通信部210、サイクルコンピュータ記憶部253及びサイクルコンピュータ制御部251を有している。
サイクルコンピュータ表示部203は、ユーザ(運転者)の指示等に基づいて、各種の情報を表示する。本実施例においては、推進力Ftと損失力Frを視覚化して表示する。なお、視覚化の方法はどのような方法であっても良いが、測定モジュール301から送信されたクランク回転角度θに基づいて、例えばクランク105の回転角が30°毎の推進力Ftと損失力Frをベクトル表示することができる。また、他の方法としては、例えば、グラフ表示、色分け表示、記号の表示、3次元表示等どのような方法であってもよい。また、それらの組み合わせ等であってよい。
サイクルコンピュータ操作部205は、ユーザの指示(入力)を受ける。例えば、サイクルコンピュータ操作部205は、ユーザから、サイクルコンピュータ表示部203に表示内容の指示を受ける。
サイクルコンピュータ無線受信部209は、測定モジュール301から送信される送信データ(推進力Ft及び損失力Frとクランク105の回転角とケイデンス)を受信する。
サイクルコンピュータ外部通信部210は、主にサイクルコンピュータ記憶部253に記憶されている推進力Ftおよび損失力Frとクランク回転角度θをサイクルコンピュータ201の外部のコンピュータ等に送信する。
サイクルコンピュータ記憶部253には、各種情報が記憶される。各種情報とは、例えば、サイクルコンピュータ制御部251の制御プログラム、及び、サイクルコンピュータ制御部251が制御を行う際に必要とされる一時的な情報である。なお、サイクルコンピュータ記憶部253は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)およびフラッシュメモリ等の不揮発性の読み書き可能なメモリを有している。ROMには制御プログラム、及び、推進力Ftおよび損失力Frをサイクルコンピュータ表示部203に視覚的に表示するデータに変換するための各種のパラメータ、定数、等が記憶されている。
RAMには、サイクルコンピュータ制御部251が制御を行う際に必要とされる一時的な情報等が記憶されている。不揮発性の読み書き可能なメモリには、推進力Ftおよび損失力Frとクランク回転角度θとが対応付けて記憶されている。
サイクルコンピュータ制御部251は、サイクルコンピュータ201を包括的に制御している。さらに、測定モジュール301をも包括的に制御していても良い。また、サイクルコンピュータ制御部251は、推進力Ftおよび損失力Frをサイクルコンピュータ表示部203に視覚的に表示するデータに変換する。
上述した構成の測定モジュール301及びサイクルコンピュータ201は、測定モジュール301がクランク105の回転角度が30°ごとに推進力Ftおよび損失力Frを測定して、その推進力Ft及び損失力Frとクランク回転角度θとをサイクルコンピュータ201に送信する。サイクルコンピュータ201では、測定モジュール301から送信された推進力Ft及び損失力Frとクランク回転角度θとをサイクルコンピュータ表示部203に表示させるとともに、サイクルコンピュータ記憶部253に記憶して蓄積する。
そして、例えば走行終了後にサイクルコンピュータ201は、サイクルコンピュータ記憶部253に蓄積されている推進力Ft及び損失力Frとクランク回転角度θとをサイクルコンピュータ外部通信部210から後述するサーバ401へ送信する。なお、これらのデータの送信タイミングは、走行終了後に限らず、走行中であってもよいし、任意のタイミングでよい。
次に、上述したようにしてサイクルコンピュータ201に蓄積された推進力Ft及び損失力Frとクランク回転角度θとに基づいてユーザがダンシングかシッティングかの判定をする運転姿勢出力装置について図9乃至図12を参照して説明する。
図9は、本実施例にかかるサーバ401とサイクルコンピュータ201等を示したネッとワーク構成図である。
サーバ401は、事業所等に設置されるコンピュータであり、本実施例では、サイクルコンピュータ201からインターネット601を経由して入力された推進力Ft及び損失力Frとクランク回転角度θとからダンシングかシッティングかの判定をする。即ち、運転者が立ち漕ぎをしているか否かを判定する。なお、図9では、サイクルコンピュータ201は1つしか記載されていないが複数であってもよいことは言うまでもない。
サーバ401は、上述したようにコンピュータであるので、周知のようにCPU(Central Processing Unit)、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、ネットワークインターフェース等を有している。図10は、サーバ401が運転姿勢出力装置として機能する際の機能的構成を示した構成図である。サーバは、判定部411と、データ格納部412と、通信部413と、を備えている。
出力手段としての判定部411は、サイクルコンピュータ201から受信した推進力Ft及び損失力Frとクランク回転角度θとに基づいてユーザがダンシングかシッティングかの判定をして、判定結果をデータ格納部412あるいは通信部413に出力する。即ち、推進力Ft及び損失力Frがクランク105に加えられる力に関する力情報に相当し、クランク回転角度θがクランク105の回転角度に関する角度情報に相当する。判定方法は後述する。判定部411は、CPU上で実行されるコンピュータプログラムによって機能する。
データ格納部412は、サイクルコンピュータ201から受信した推進力Ft及び損失力Frとクランク回転角度θとを蓄積する。データ格納部412は、ハードディスクドライブ等が機能する。
通信部413は、サイクルコンピュータ201から推進力Ft及び損失力Frとクランク回転角度θとを受信したり、判定部411における判定結果等を送信したりする。なお、判定結果等を送信する先は、サイクルコンピュータ201に限らず、例えばユーザが所有するコンピュータ501等であってもよい。通信部413は、ネットワークインターフェース等が機能する。
次に、判定部411で行う運転姿勢の判定方法について説明する。サイクルコンピュータ201から受信する推進力Ftおよび損失力Frは、図11に示しように、それぞれクランク105の回転の接線方向の力の成分、法線方向の力の成分となる。そして、これら2つの成分を合成した力がクランク105に加えられる力としての荷重Fとなる。
この荷重Fは、シッティングの場合は、クランク105が3時の位置近傍にあるときが最大値となるが、ダンシングの場合はペダル103に体重がかかるため、下死点近傍(クランク105の位置が5時〜6時)で最大値(力の大きさまたは成分の最大値)となる。
これは、ダンシングの場合は、クランク105が3時の位置(クランク回転角度θ=90°)でペダル103に体重をかけても、左右への体重の荷重移動に時間があるので、体重のかかるピークのクランク回転角度θは90°より遅れる。そのため荷重Fが最大値となるクランク回転角度θは90°以上となる。これに対しシッティングの場合は、体が左右に振れないので、荷重Fの最大値はクランク回転角度θは90°近傍となる。
したがって、推進力Ft及び損失力Frから荷重Fを算出し、その荷重Fが最大値となるクランク回転角度θを検出することで、ダンシングかシッティングかを判定することができる。即ち、力情報(荷重F)が最大値(所定の状態)となったときの角度情報(クランク回転角度θ)に基づいて人力機械(自転車1)の運転姿勢を判定している。また、本実施例では、荷重Fを推進力Ft及び損失力Frから荷重Fを算出するので、判定部411がクランク105に加えられる力に関する力情報を取得する取得手段としても機能する。
上述したようにダンシングの場合はクランク105の位置が5時〜6時(クランク回転角度θが150°〜180°)近傍のときに最大値となるので、例えばクランク105の位置が4時半(クランク回転角度θ=135°)を閾値として、最大値となるクランク回転角度θが閾値以上の場合はダンシングと判定すればよい。即ち、クランク105の回転角度に対して定めた所定の閾値に基づいて運転姿勢を判定する。
また、この最大値を判定する期間はクランク105の1回転に限らず、複数回転であってもよい。あるいは、1回転以内であって、閾値を含む所定の角度範囲としてもよい。例えば、閾値をクランク105が4時半の位置に設けた場合は、クランク105が2時〜7時の位置(クランク回転角度θが60°〜210°)の範囲を最大値を判定する期間とする。
また、最大値は、データ格納部412に蓄積されているデータから算出される30°ごとの荷重Fのうちの最大の値でもよいし、30°ごとの値から補間等により推定した値であってもよい。例えば、クランク105の位置が4時〜5時は荷重Fが増加傾向で、5時〜6時は荷重Fが減少傾向であった場合は、5時(クランク回転角度θ=150°)を最大値としてもよいし、クランク105の位置が4時〜5時の増加率と5時〜6時の減少率等から最大値を推定してもよい。
また、クランク105の位置が5時と6時との値が略同じ値であった場合はその中間(クランク105の位置が5時半、クランク回転角度θ=165°)を最大値と推定してもよい。あるいは、力(荷重F)の角度ごとの変化を曲線に表し、その曲線を所定の閾値(例えば50%)で切ったときの幅の中央値となる角度を「最大値」に対応するクランク回転角度θと推定してもよい。
さらには、前記曲線を所定の閾値(例えば50%)で切ったときの、上側部分(曲線と閾値とで囲まれた部分)を積分し、その重心となる角度を「最大値」に対応するクランク回転角度θとしてもよい。
つまり、最大値は、取得した荷重Fの値から演算により算出してもよい。本実施例の場合は、荷重Fの取得間隔は30°ごとなので、取得値のみで判断を行うと実際の最大値との誤差が大きくなるため特に有効である。
図12に運転姿勢出力方法のフローチャートを示す。このフローチャートは判定部411が実行する。即ち、図12のフローチャートがコンピュータプログラムとして構成されている。まず、サイクルコンピュータ201から受信するデータ(推進力Ftおよび損失力Fr、クランク回転角度θ)を取得してデータ格納部412に格納する(ステップS11)。なお、ステップS11の時点で荷重Fを算出して格納してもよい。即ち、ステップS11が取得工程として機能する。
次に、運転姿勢を判定するための所定の期間(例えばクランク105が1回転)が経過したか否を判断し(ステップS12)、経過しない場合(NOの場合)はステップS11に戻る。
ステップS12で所定の期間経過した場合(YESの場合)は、その期間における荷重Fの最大値を抽出する(ステップS13)。次に、抽出した荷重Fの最大値のクランク回転角度θが閾値以上か否かを判断し(ステップS14)、閾値以上である場合(YESの場合)はダンシングと判定する(ステップS15)。
一方、ステップS14で閾値未満であると判断された場合(NOの場合)はシッティングと判定する(ステップS16)。
そして、ステップS15またはS16で判定された結果(判定結果)を、データ格納部412や通信部413へ出力する(ステップS17)。通信部413は、当該判定結果をサイクルコンピュータ201やコンピュータ501等へ出力する。なお、判定結果はデータ格納部412に格納しておき、コンピュータ501等からのリクエスト等に応じて出力するようにしてもよい。即ち、ステップS13〜S17が出力工程として機能する。
なお、この判定結果は、運転姿勢のみを出力するに限らず、推進力Ftや損失力Fr等の変化を解析したデータに付加するようにしてもよい。例えば、推進力Ftや損失力Frの時系列や走行距離に対する変化のグラフ等にダンシングやシッティングの表示をしたり、ダンシングやシッティングの区間は色を変化させたりしてもよい。あるいは、ある区間内におけるダンシングの割合として出力してもよい。
本実施例によれば、通信部413が自転車1のクランク回転角度θと、そのクランク回転角度θにおけるクランク105に加えられる推進力Ft及び損失力Frと、を取得する。そして、判定部411が、推進力Ft及び損失力Frから算出される荷重Fが最大値となったときのクランク回転角度θに基づいて、ダンシングか否かを判定して、判定結果を出力する。このようにすることにより、クランク回転角度θと、推進力Ft及び損失力Frと、に基づいてダンシングか否かを判定することができる。したがって、ジャイロセンサに基づいて判定するような自転車自体の姿勢は考慮する必要がないので、精度良くダンシングか否かを判定することができる。
また、クランク回転角度θに対して定めた閾値に基づいてダンシングか否かを判定しているので、閾値と比較するだけで容易にダンシングか否かを判定することができる。
また、荷重Fの最大値を判定する期間は、閾値を含む所定の角度範囲であってもよい。この場合、ダンシングか否かを判定する閾値の近傍のみのクランク回転角度θと荷重Fとに基づいて判定することができる。したがって、クランク回転角度θと荷重Fとを保存するメモリ等の容量を少なくすることができる。
また、荷重Fの最大値を判定する期間は、クランク105がn回転(nは1以上の自然数)の期間であってもよい。この場合、クランク105の1回転以上のクランク回転角度θと荷重Fとに基づいて判定することができる。したがって、多くの情報から解析することができるので、より精度良く判定することができる。
なお、上述した実施例では右側のクランク105Rでダンシングの判定をする例を示したが、左側のクランク105Lで行ってもよい。この場合、クランク105Lは回転方向が反時計回りにクランク回転角度θ(クランク105の位置)が検出される他は同様である。さらには、両側のクランク105の検出結果に基づいて判定してもよい。例えば、両側のクランク105の検出結果を利用する方法としては、右側の最大値と左側の最大値とのうち大きい方を判定対象とする方法が挙げられる。
また、閾値は、荷重Fの大きさに応じて変更してもよい。荷重Fは、所定の値より小さい場合(漕ぐ力が弱い場合)は、シッティングでも足の重さの影響が大きくなって、荷重の最大値が5時〜6時に近づいてくるので、例えば閾値を4時半から5時に近づけるように変更する。あるいは、また荷重Fが閾値を変更する値よりも更に小さい場合は、ダンシングの判定を行わないようにしてもよい(常にシッティングと判定する、あるいは判定しない旨の情報を出力する)。なお、閾値の変更を判定する力は荷重Fに限らず、トルク等他の値であってもよい。つまり、漕ぐ力がある基準以上に弱いことを検出できればよい。
また、上述した実施例では推進力Ftおよび損失力Frから荷重Fを算出していたが、荷重Fを直接検出することができるセンサ等を用いてもよい。