JP6434349B2 - 杭鉄筋籠及びその保持部材 - Google Patents

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Description

本発明は、杭の鉄筋組立体となるべき杭鉄筋籠、及びその主筋を補強筋に連結して保持する保持部材に関し、特に主筋としてネジ鉄筋を適用した杭鉄筋籠及び保持部材に関する。
この種の杭鉄筋籠は、複数の鉛直な主筋を、水平な円環状の補強枠(力骨)の周方向に互いに間隔を置いて環状に配置することによって構成されている。補強枠によって、主筋が保持され、ひいては杭鉄筋籠の全体形状が円筒形状に保持されている(特許文献1参照)。一般に、補強枠は、L字断面のアングル材を長手方向に沿って湾曲させて、円環状に成形したものである。この補強枠の外周面に主筋を宛がうとともに、U字ボルトで主筋を補強枠に緊締している。さらに、複数の主筋を囲むようにフープ筋を巻き付ける。フープ筋と主筋とは、例えば溶接にて連結されている。したがって、主筋と補強枠とフープ筋とは、互いに相対移動不能に剛結合されている。
2つの杭鉄筋籠どうしを鉛直方向に継ぎ足す際は、例えば、これら杭鉄筋籠の主筋の端部どうしを所要長さ(例えば2m程度)だけオーバーラップさせて、番線結束や溶接等にて接合している。
特開2013−122121号公報
上記従来の構造では、2つの杭鉄筋籠の主筋の端部どうしをオーバーラップさせる分だけ、各杭鉄筋籠の実質長さが短くなり、主筋の長さが無駄になる。主筋をネジ鉄筋にて構成することで、2つの杭鉄筋籠の主筋どうしを筒形状のネジ継手で連結することも考えられる。この場合、連結されるべき2つの主筋のネジ山どうしが互いに共通の螺旋線上に配置されている必要がある。しかし、上述したように、従来構造においては、各杭鉄筋籠の主筋と補強枠とフープ筋とが互いに相対移動不能であるために、2つの杭鉄筋籠の主筋どうしの位置調節は容易でなかった。そのため、ネジ継手による連結は困難であった。
本発明は、上記事情に鑑み、杭鉄筋籠の主筋としてネジ鉄筋を採用して、2つの杭鉄筋籠の主筋どうしをネジ継手にて確実に連結可能とすることを目的とする。
上記問題点を解決するために、本発明に係る杭鉄筋籠は、
雄ネジ部を有するネジ鉄筋からなる主筋と、
前記主筋と交差する環状の補強枠と、
前記主筋を前記補強枠に連ねて保持する保持部材と、
を備え、前記保持部材が、前記補強枠との連結部と、前記保持部とを含み、
前記保持部には挿通穴が形成され、かつ前記挿通穴の周方向の一側には挿通開口部が形成され、更に前記挿通穴の内周には前記雄ネジ部と遊びを持って螺合可能な雌ネジ部が形成されており、
前記主筋が、前記挿通開口部から前記挿通穴に出し入れ可能、かつ前記挿通穴内において前記螺合状態での前記遊びの範囲内で、回転することなく軸線方向に変位可能、かつ軸線方向に変位することなく軸線周りに回転可能であることを特徴とする。
また、本発明は、杭鉄筋籠における、雄ネジ部を有するネジ鉄筋からなる主筋を、前記主筋と交差する環状の補強枠に連ねて保持する保持部材であって、
前記補強枠との連結部と、前記保持部とを含み、
前記保持部には挿通穴が形成され、かつ前記挿通穴の周方向の一側には挿通開口部が形成され、更に前記挿通穴の内周には前記雄ネジ部と遊びを持って螺合可能な雌ネジ部が形成されており、
前記主筋を、前記挿通開口部から前記挿通穴に出し入れ可能、かつ前記挿通穴内において前記螺合状態での前記遊びの範囲内で、回転させることなく軸線方向に変位可能、かつ軸線方向に変位させることなく軸線周りに回転可能に保持することを特徴とする。
前記杭鉄筋籠によれば、主筋を前記遊びの範囲内で相対的に軸方向に変位させたり軸線周りに回転させたりすることによって、当該主筋のネジ山と、連結されるべき他の杭鉄筋籠の主筋のネジ山とが、互いに共通の螺旋線上に配置されるようにすることができる。これによって、これら主筋どうしをネジ継手によって確実に連結することができる。また、主筋の雄ネジ部と保持部材の雌ネジ部との引っ掛かりによって、主筋の軸線方向の変位を前記遊びの範囲内に規制できる。したがって、前記軸線方向の第1側を上に向け、第2側を下に向けて、杭鉄筋篭を吊り下げたとき、主筋を、保持部材を介して補強枠等にて支持することができ、主筋が落下するのを防止できる。
前記雌ネジ部の雌ネジ山が、断面三角形であることが好ましい。一般に、前記主筋の雄ネジ山は、断面台形である。これによって、雌ネジ山の幅を雄ネジ山よりも小さくでき、これらネジ山どうし間に遊びを確実に形成することができる。
前記保持部が、前記補強枠の径方向外側に配置され、かつ前記挿通開口部が、前記挿通穴の周方向における前記補強枠とは反対側に開口されていることが好ましい。これによって、補強枠に保持部材を取り付けた後、この保持部材の保持部に、主筋を、補強枠の径方向外側から嵌め込むことができる。主筋の外側にはフープ筋を巻くことで、主筋が保持部から抜け出るのを阻止できる。
前記保持部が、前記補強枠の径方向外側に配置され、かつ前記挿通開口部が、前記挿通穴の周方向における前記補強枠の側に開口されていてもよい。これによって、主筋を補強枠の径方向外側から補強枠に宛がった後、又は宛がうのと併行して、保持部材を補強枠の径方向外側から補強枠に取り付けるとともに、保持部に主筋を嵌め込むことができる。保持部と補強枠とによって主筋を挟んで保持できる。したがって、フープ筋を巻く前から、主筋が保持部から抜け出るのを阻止できる。
本発明によれば、杭鉄筋籠の主筋としてネジ鉄筋を採用して、2つの杭鉄筋籠の主筋どうしをネジ継手にて連結することができる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る杭鉄筋籠の正面図である。 図2は、図1のII−II線に沿う、上記杭鉄筋籠の平面断面図である。 図3は、図2のIII−III線に沿う、上記杭鉄筋籠の一部分の正面断面図である。 図4は、図3のIV−IV線に沿う、上記杭鉄筋籠の一部分の平面断面図である。 図5(a)は、上記杭鉄筋籠の保持部材を、主筋の挿入側(補強枠とは反対側)から見た正面図である。同図(b)は、上記保持部材の斜視図である。 図6(a)は、上記主筋と保持部材を分解して示す平面図である。同図(b)は、上記主筋を保持部材に挿入した当初の状態を示す平面図である。同図(c)は、上記主筋を保持部材に挿入後、約90度回した状態を示す平面図である。 図7(a)は、図3のVII−VII線に沿う、上記主筋と保持部材との噛み合いを示す側面断面図である。図7(b)は、同図(a)において、上記主筋の雄ネジ山が保持部材の雌ネジ山に引っ掛かった状態を示す側面断面図である。 図8は、図9(a)の円部VIIIを断面にして示す拡大正面図である。 図9は、杭の施工手順を示し、同図(a)は、杭鉄筋組立体を地盤の杭穴に建て込む様子を、杭鉄筋籠を組立仕掛体に継ぎ足す状態で示す正面断面図である。同図(b)は、継ぎ足し後の組立仕掛体を1つの杭鉄筋籠の高さ分だけ下降させて杭穴内に挿し入れた状態で示す正面断面図である。 図10は、上記杭の正面断面図である。 図11は、本発明の第2実施形態に係る杭鉄筋籠の一部分の平面断面図である。 図12は、上記第2実施形態の保持部材を示し、同図(a)は、保持部材を、主筋の挿入側(補強枠側)から見た正面図である。同図(b)は、上記保持部材の斜視図である。
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1〜図10は、本発明の第1実施形態を示したものである。図10に示すように、地盤2に杭1が構築されている。地盤2には、杭穴2aが形成されている。この杭穴2aに杭1が埋設されている。杭1は、杭鉄筋組立体3と、コンクリート4を含む。杭鉄筋組立体3は、複数の杭鉄筋籠10,10…によって構成されている。これら杭鉄筋籠10,10…が鉛直に一列に連なっている。
図1及び図2は、杭鉄筋組立体3に組み込む前の各杭鉄筋籠10を示したものである。 各杭鉄筋籠10は、複数の主筋11と、フープ筋12と、補強枠13を備えている。杭鉄筋籠10の全体形状は、概略円筒形状になっている。
図3及び図7に示すように、主筋11は、雄ネジ部11bを有するネジ鉄筋にて構成されている。図6(a)に示すように、主筋11の断面は、長径L11Lと短径L11Sを有する概略長円形になっている。主筋11の長径方向の両側の外周部に雄ネジ部11bが形成されている。雄ネジ部11bは、螺旋状の雄ネジ山11dと、雄ネジ谷部11eを含む。図7に示すように、雄ネジ山11dの断面形状は概略台形状になっている。図6(a)に示すように、主筋11の短径方向の両側の外周部は、平らな平面部11cとなっている。
各主筋11の軸長、ひいては杭鉄筋籠10の高さ(長さ)は、例えば12m程度である。図1に示すように、主筋11,11…の軸線は、互いに平行をなして鉛直(図1において上下)に向けられている。図2に示すように、これら複数の主筋11,11…が、杭鉄筋籠10の周方向(補強枠13の周方向)に互いに間隔を置いて環状に並べられている。これら主筋11,11…の周りにフープ筋12が巻かれている。主筋11とフープ筋12とは番線結束されている。主筋11は、フープ筋12に対して、軸方向(鉛直)に変位可能、かつ自らの軸線周りに回転可能である。
図1及び図2に示すように、杭鉄筋籠10には、複数(好ましくは3つ以上)の補強枠13,13…が設けられている。各補強枠13は、主筋11と直交(交差)する円環状(環状)になっている。複数の補強枠13,13…が、互いに上下(杭鉄筋籠10の軸方向)に離れて配置されている。これら補強枠13によって複数の主筋11,11…が保持されている。ひいては、杭鉄筋籠10の全体形状が、円筒形状に保持されている。
補強枠13は、鉄筋13Xによって構成されている。鉄筋13Xとしては、一般的な異形鉄筋が用いられているが、ネジ鉄筋を用いてもよい。この鉄筋13Xが、長手方向に沿って閉じた円環状になるように湾曲されている。鉄筋13Xの両端部どうしが突き合わされて連結されている。鉄筋13Xの両端部どうしの接合手段としては、例えばアップセットバット溶接が適用されている。
なお、鉄筋13Xの両端部どうしを所要長さだけ重ね合わせてフレア溶接等にて接合してもよい。
図2に示すように、杭鉄筋籠10における複数の主筋11,11…が、それぞれ補強枠13の径方向の外側から補強枠13に宛がわれている。杭鉄筋籠10における上下複数段の補強枠13,13…のうち最上段の補強枠13と、各主筋11とは、保持部材30によって連結されている。詳細な図示は省略するが、最上段以外の補強枠13と各主筋11とは、番線結束されている。なお、主筋11,11…のうちの一部は、最上段以外の補強枠13に対しても、保持部材30によって連結され、かつ他の主筋11,11…は、最上段以外の補強枠13と番線結束されていてもよく、或いは、主筋11,11…の全部が、最上段以外の補強枠13に対しても保持部材30によって連結されていてもよい。
以下、特に断らない限り、補強枠13は、杭鉄筋籠10における最上段のものを指す。
図2に示すように、補強枠13には、複数の保持部材30,30…が配置されている。これら保持部材30,30…は、補強枠13の周方向に互いに間隔を置いて配置されている。保持部材30,30…と主筋11,11…とが、一対一に対応している。各保持部材30が、対応する主筋11を補強枠13に連結して保持している。
図4及び図5に示すように、保持部材30は、保持部31と、一対の連結部32,32とを一体に有している。保持部材30は、鋼鉄、鉄等の金属にて構成された鋳造品であるが、鋳造に限られず、切削加工品であってもよい。保持部31は、ハーフナット状になっている。すなわち、保持部31は、挿通穴31a及び挿通開口部31cを有して、平面視でC字形(半環状)の筒形状になっており、挿通穴31aの内周面に雌ネジ部33が形成されている。主筋11の雄ネジ部11bと、保持部31の雌ネジ部33とが、互いに螺合可能になっている。
挿通穴31aの軸線は鉛直に向けられている。挿通穴31aの側部は、補強枠13とは反対側(図5(a)において紙面手前)へ開口され、そこに挿通開口部31cが形成されている。図6(a)に示すように、挿通開口部31cの開口幅W31cは、主筋11の断面の長径L11Lよりも小さく、かつ短径L11Sよりも大きい(L11S<W31C<L11L)。
図7に示すように、雌ネジ部33は、雌ネジ山33dと、ネジ谷33eを有している。雌ネジ山33dの断面は、三角形状になっている。これによって、雌ネジ山33dの幅W33dが小さくなっている。具体的には、雌ネジ山33dの幅W33dは、最大となる底部(ネジ谷33eと連なる部分)においても、主筋11の雄ネジ部11bのピッチP11bより十分に小さく(W33d<P11b)、好ましくはピッチP11bの半分よりも小さい(W33d<(P11b/2))。また、雌ネジ山33dの最大幅W33dは、ネジ谷33eの幅W33eよりも小さい(W33d<W33e)。
なお、雌ネジ山33dの最大幅W33dとネジ谷33eの幅W33eとの和が、雌ネジ部33のピッチP33となる(P33=W33d+W33e)。ネジ部11b,33どうしのピッチP11b,P33は、互いに等しい(P11b=P33)。
図5(a)に示すように、保持部31の左右両側に一対の連結部32,32が設けられている。連結部32は、保持部31の補強枠13を向く側部(図5(a)において紙面奥側部)から補強枠13の接線方向に沿って左右外方へ突出されている。各連結部32は、上下一対の連結座32a,32aを含む。これら連結座32a,32aは、補強枠13の径方向に対してほぼ直交する円板形状になっている。各連結座32aに挿通穴32cが形成されている。
図4に示すように、保持部材30は、補強枠13の径方向外側から補強枠13に宛がわれている。この保持部材30が、一対のU字ボルト34,34によって補強枠13に連結されている。U字ボルト34は、補強枠13の径方向内側から保持部材30に装着されている。図3に示すように、このU字ボルト34と連結部32とによって補強枠13の断面の全周が囲まれている。U字ボルト34の半円部34cが、補強枠13の径方向内側の半部に嵌められている。各U字ボルト34の一対のボルト部34a,34aが、補強枠13を上下から挟んでいる。これらボルト部34a,34aの先端部が、それぞれ挿通穴32cに通されるとともに、ナット35によって連結部32に緊結されている。
図6(a)及び同図(b)に示すように、主筋11が、挿通開口部31cを通して挿通穴31aに挿し入れられている。保持部材30によって、主筋11が、軸線方向に変位可能かつ自らの軸線周りに回転可能に保持されている。図6(a)に示すように、主筋11を保持部31に嵌め込む際は、主筋11の短径を挿通開口部31cの幅方向に向けて、主筋11を挿通開口部31cから挿通穴31aへ挿し入れる。図7(a)に示すように、このとき、主筋11の雄ネジ部11bと保持部材30の雌ネジ部33とを互いに螺合させる。図6(b)に示すように、主筋11を挿通穴31aの奥まで差し入れたら、その後、図6(c)に示すように、主筋11をその軸線周りに90度程度回転させる。これによって、主筋11の長径が挿通開口部31cの幅方向に向けられることで、主筋11が挿通開口部31cから抜け出るのが防止される。
なお、複数の主筋11,11まわりにフープ筋12が巻き付けられることで、このフープ筋12によっても主筋11が挿通開口挿通開口部31cから抜け出るのが阻止される。
図7に示すように、主筋11の雄ネジ部11bと、保持部材30の雌ネジ部33との間には十分な遊び(ガタ)が設定されている。特に、雌ネジ山33dを断面三角形状とすることで、遊び(ガタ)が大きく設定されている。したがって、主筋11は、保持部材30に対して、ネジ部11b,33どうしによるネジ作用に依ることなく、スライド及び回転可能である。すなわち、主筋11は、軸線周りに回転することなく(非回転で)、軸方向に変位可能である。かつ、主筋11は、保持部材30に対して、軸線方向に変位することなく、軸線周りに回転可能である。主筋11をスライド又は回転させていくと、やがて、図7(b)に示すように、雄ネジ山11dが雌ネジ山33dに突き当たる。これによって、主筋11の上記ネジ作用に依らないスライドや回転が規制される。
図1に示すように、各杭鉄筋籠10において、主筋11の上端部(第1側の端部)は、保持部材30よりも上方(第1側)へ突出されている。この主筋11の上端部にネジ継手20が装着されている。
図8に示すように、ネジ継手20は、筒形状になっており、その軸線は鉛直に向けられている。ネジ継手20の内周には、雌ネジ部22が形成されている。雌ネジ部22のネジ山の断面は、台形状になっている。後述するグラウト剤5を充填する前の雌ネジ部22と主筋11との間には、軸方向に遊び(ガタ)が設定されている。この遊び量は、保持部材30と主筋11との間の軸方向の遊び量よりも十分に小さい。図8に示すように、ネジ継手20には、グラウト孔24が形成されている。グラウト孔24は、ネジ継手20の外周面から内周面に貫通している。
図9及び図10に示すように、杭鉄筋組立体3においては、上下に隣接する2つの杭鉄筋籠10,10における対応する主筋11,11どうしが、ネジ継手20を介して連結されている。ここで、上記2つの杭鉄筋籠10,10を互いに区別する際は、上側(第1側)の杭鉄筋籠10には符号に「A」を付し、下側(第2側)の杭鉄筋籠10には符号に「B」を付す。また、杭鉄筋籠10A,10Bにおける連結すべき2つの主筋11,11を互いに区別する際は、杭鉄筋籠10Aの主筋11の符号を「11A」と表記し、杭鉄筋籠10Bの主筋11の符号を「11B」と表記する。また、図9に示すように、施工途中の杭鉄筋組立体3における一列に連なった杭鉄筋籠10,10…(継足作業未完了の杭鉄筋籠10Aを除く)を「組立仕掛体3x」と称す。
図8に示すように、ネジ継手20は、上側の杭鉄筋籠10Aの主筋11Aと、下側の杭鉄筋籠10Bの主筋11Bとの間に跨っている。ネジ継手20の上側部に主筋11Aの下端部が螺合されている。ネジ継手20の下側部に主筋11Bの上端部が螺合されている。ネジ継手20の内周と各主筋11A,11Bとの間には、グラウト剤5が充填されている。
杭1の施工方法を、杭鉄筋組立体3の構築方法を中心に説明する。
図9及び図10に示すように、地盤2に杭穴2aを鉛直に掘る。なお、杭穴2a内には、ベントナイト(図示せず)を充填することで、地盤2の崩落を防止しておく。
この杭穴2aの内部に杭鉄筋組立体3を以下の手順で構築する。
杭穴2aの上方で杭鉄筋籠10を組立仕掛体3xに1つずつ継ぎ足す。継ぎ足す度に、組立仕掛体3xを杭穴2aの内部に一定深さだけ挿し入れていく。
杭穴2aの上端開口には、かんざし筋6(吊支持部材)を架け渡す。このかんざし筋6によって、組立仕掛体3xを吊った状態で支持する。かんざし筋6は、例えば太い鉄筋にて構成されている。好ましくは、かんざし筋6は、組立仕掛体3xの最上段の杭鉄筋籠10(10B)における補強枠13の直下に差し渡す。これによって、組立仕掛体3xの荷重を補強枠13で受けて、かんざし筋6に伝えることができる。
なお、図9(a)においては、かんざし筋6は、組立仕掛体3xの最上段の杭鉄筋籠10Bにおける最上段の補強枠13の直下に挿し入れられているが、作業性を考慮して、杭鉄筋籠10Bにおける上から2段目や3段目の補強枠13の直下にかんざし筋6を挿し入れることにしてもよい。そうすることで、杭鉄筋籠10Bの主筋11Bの上端部の高さを作業者の腰の辺りに位置させることができる。したがって、後述する主筋11A,11Bどうしの連結作業がし易くなる。
続いて、図9(a)に示すように、新たに継ぎ足されるべき杭鉄筋籠10Aをクレーン7にて吊り揚げる。クレーン7の吊りワイヤ7bは、好ましくは杭鉄筋籠10Aの補強枠13に引っ掛ける。
杭鉄筋籠10Aを吊り揚げると、杭鉄筋籠10Aの各主筋11Aが自重によって下降しようとする。すると、図7(b)に示すように、主筋11Aの雄ネジ山11dが、保持部材30の雌ネジ山33dに引っ掛かる。これによって、主筋11Aの下方(第2側)への変位を規制できるとともに、保持部材30によって主筋11Aを吊下支持できる。ひいては主筋11Aが落下するのを阻止できる。主筋11Aの荷重は、保持部材30及び補強枠13を介してクレーン7に伝えることができる。これによって、杭鉄筋籠10Aを安定的に吊り揚げることができる。
図9(a)に示すように、この杭鉄筋籠10Aを組立仕掛体3xの直上に配置し、かつ杭鉄筋籠10A,10Bの連結すべき2つの主筋11,11どうしを互いに鉛直な一直線上に配置する。
続いて、図8に示すように、主筋11Bの上端部のネジ継手20を回して上昇させて、主筋11A,11Bどうし間に跨らせる。このとき、主筋11Aの雄ネジ部11bと保持部材30の雌ネジ部33との間の遊びを利用して、主筋11Aを上方へ浮かせたり(軸方向に変位させたり)、軸線周りに回転させたりすることで、2つの主筋11A,11Bの雄ネジ部11bが互いに共通の螺旋線上に配置されるように調節する。
雌ネジ山33dを幅小の断面三角形状に形成しておくことによって、雄ネジ部11bと雌ネジ部33との間の軸線方向の遊びを大きくできる。したがって、主筋11Aを軸線方向に十分に位置調節できる。これによって、ネジ継手20の上端部を主筋11Aの下端部に確実に螺合させることができる。この結果、図8に示すように、主筋11A,11Bどうしを、ネジ継手20を介して確実に連結することができる。
次いで、グラウト剤5をグラウト孔24からネジ継手20の内周と主筋11A,11Bとの間に充填する。これによって、ネジ継手20と主筋11A,11Bとの間のガタツキを無くすことができる。したがって、主筋11A,11Bどうしが、軸力を伝達可能に連結される。
2つの杭鉄筋籠10A,10Bにおける一直線をなす全ての主筋11A,11Bどうしを、上記のようにして連結する。各主筋11Aが、ネジ部11b33どうし間の遊びの分だけ上方変位可能かつ回転可能であるから、1組の主筋11A,11Bどうしを連結したら、他の主筋11A,11Bどうしが連結不能になることはない。
このようにして、杭鉄筋籠10Aを組立仕掛体3xの上方に継ぎ足すことができる。
なお、主筋11A,11Bどうしを継ぎ足した後は、主筋11Bの保持部材30を撤去し、別の杭鉄筋籠10に使い回すことにしてもよい。そうすることで、保持部材30の所要個数を少なくできる。
続いて、図9(b)に示すように、かんざし筋6を一旦、引き抜き、クレーン7にて、組立仕掛体3xを1つの杭鉄筋籠10の高さ分だけ吊り降ろす。そして、かんざし筋6を、組立仕掛体3xのうち最上段の杭鉄筋籠10(上記新たに継ぎ足した杭鉄筋籠10A)に挿し通すことで、組立仕掛体3xをかんざし筋6で吊支持する。
以上の操作を反復することで、図10に示すように、やがて最下段の杭鉄筋籠10が杭穴2aの底部に達する。これによって、杭穴2aの内部に杭鉄筋組立体3を構築できる。
その後、杭鉄筋組立体3の内部にトレミー管等のコンクリート打設管(図示せず)を挿し入れ、コンクリート4を打設する。
このようにして、杭1を構築できる。
杭鉄筋組立体3によれば、杭鉄筋籠10A,10Bの主筋11,11どうしをオーバーラップさせる必要がない。したがって、主筋11の長さを有効に利用することができる。
補強枠13を鉄筋13Xで構成することによって、L字断面のアングル材で構成するよりも施工コストを低減できる。また、アングル材製の補強枠においては、コンクリート打設時に当該アングル材の水平材の下側に空気溜まりが形成されるおそれがあったが、鉄筋13X製の補強枠13においては、そのような空気溜まりの形成を防止又は抑制できる。
保持部材30で主筋11の下方変位を規制することによって、保持部材30を規制部材として兼用できる。したがって、部品点数を削減して、施工コストを低減できる。
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を簡略化する。
図11及び図12は、本発明の第2実施形態を示したものである。図11に示すように、補強枠13の径方向外側に保持部材30Bが配置されている。保持部材30Bの保持部31は、平面視でU字状ないしはC字状になっており、内部に挿通穴31aが形成されている。図12(a)に示すように、挿通穴31aの内周面に雌ネジ部33が形成されている。図12(b)に示すように、保持部31の周方向の一側が開口され、そこに挿通開口部31cが形成されている。図11に示すように、挿通開口部31cは、補強枠13に向かって開口されている。
主筋11が、挿通開口部31cから挿通穴31a内に挿し入れられている。主筋11の雄ネジ部11bが、雌ネジ部33と螺合されている。
保持部31の挿通開口部31c側の両端部に一対の連結部32,32が設けられている。これら連結部32,32が、U字ボルト34及びナット35によって補強枠13に連結されている。補強枠13における一対のU字ボルト34,34間の架渡部分13bによって、挿通開口部31cが塞がれ、ひいては、挿通穴31aが閉じられている。主筋11が、保持部31と、架渡部分13bとに囲まれ、挿通開口部31cから抜け出し不能に保持されている。これによって、主筋11が、フープ筋12に依ることなく、挿通開口部31cから抜け出し不能になっている。
第2実施形態においては、補強枠13に主筋11を宛がった後、又は宛がうのと併行して、保持部31を主筋11に嵌める。そして、連結部32を補強枠13に連結する。その後、フープ筋12を巻く。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その精神に反しない限りにおいて種々の改変をなすことができる。
例えば、保持部材30の連結部32が、補強枠13に着脱可能に係止されるフック状になっていてもよい。
主筋11の雄ネジ部11bと保持部材の雌ネジ部33との間に十分な遊びがありさえすれば、雌ネジ山33dの断面は、三角形状に限られず、台形状になっていてもよい。
本発明は、建築・土木構造物における杭の鉄筋組立体を構成する杭鉄筋籠に適用可能である。
10 杭鉄筋籠
11 主筋
11b 雄ネジ部
11d 雄ネジ山
13 補強枠
30,30B 保持部材
31 保持部
31a 挿通穴
31c 挿通開口部
32 連結部
33 雌ネジ部
33d 雌ネジ山

Claims (5)

  1. 雄ネジ部を有するネジ鉄筋からなる主筋と、
    前記主筋と交差する環状の補強枠と、
    前記主筋を前記補強枠に連ねて保持する保持部材と、
    を備え、前記保持部材が、前記補強枠との連結部と、前記保持部とを含み、
    前記保持部には挿通穴が形成され、かつ前記挿通穴の周方向の一側には挿通開口部が形成され、更に前記挿通穴の内周には前記雄ネジ部と遊びを持って螺合可能な雌ネジ部が形成されており、
    前記主筋が、前記挿通開口部から前記挿通穴に出し入れ可能、かつ前記挿通穴内において前記螺合状態での前記遊びの範囲内で、回転することなく軸線方向に変位可能、かつ軸線方向に変位することなく軸線周りに回転可能であることを特徴とする杭鉄筋籠。
  2. 前記雌ネジ部の雌ネジ山が、断面三角形であることを特徴とする請求項1に記載の杭鉄筋籠。
  3. 前記保持部が、前記補強枠の径方向外側に配置され、かつ前記挿通開口部が、前記挿通穴の周方向における前記補強枠とは反対側に開口されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の杭鉄筋籠。
  4. 前記保持部が、前記補強枠の径方向外側に配置され、かつ前記挿通開口部が、前記挿通穴の周方向における前記補強枠の側に開口されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の杭鉄筋籠。
  5. 杭鉄筋籠における、雄ネジ部を有するネジ鉄筋からなる主筋を、前記主筋と交差する環状の補強枠に連ねて保持する保持部材であって、
    前記補強枠との連結部と、前記保持部とを含み、
    前記保持部には挿通穴が形成され、かつ前記挿通穴の周方向の一側には挿通開口部が形成され、更に前記挿通穴の内周には前記雄ネジ部と遊びを持って螺合可能な雌ネジ部が形成されており、
    前記主筋を、前記挿通開口部から前記挿通穴に出し入れ可能、かつ前記挿通穴内において前記螺合状態での前記遊びの範囲内で、回転させることなく軸線方向に変位可能、かつ軸線方向に変位させることなく軸線周りに回転可能に保持することを特徴とする杭鉄筋籠用保持部材。
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