JP6434327B2 - 滑り軸受 - Google Patents

Description

本発明は、軸部材の移動を許容しつつ、軸部材に加わる荷重を支持する滑り軸受に関し、特に、車両のステアリング機構に用いられるラックブッシュに好適な滑り軸受に関する。

特許文献１には、車両のステアリング機構のラック軸の直線運動を許容しつつ、ラック軸に加わる荷重を支持するラックブッシュに好適な滑り軸受が記載されている。

この滑り軸受は、ラック軸が挿入される円筒状の軸受本体と、軸受本体に装着され、軸受本体を径方向内方に付勢する弾性リングと、を備えている。軸受本体は、合成樹脂製であり、一方の端面から他方の端面に向けて軸方向に沿って形成された複数の第一のスリットと、他方の端面から一方の端面に向けて軸方向に沿って形成された複数の第二のスリットと、軸受本体の外周面に形成され、弾性リングが装着される装着溝と、を有する。

ここで、第一のスリットは、軸受本体の軸心を含む仮想平面によって分断される軸受本体の一方の半円筒部に配されており、第二のスリットは、この仮想平面によって分断される軸受本体の他方の半円筒部に配されている。また、第一のスリットおよび第二のスリットは、それぞれ、この仮想平面と平行なスリット幅が、この仮想平面に対して垂直な方向において、半円筒部の内側から外側まで同幅か、あるいは内側から外側に向かうにつれて徐々に大きくなるように形成されている。

特許文献１に記載の滑り軸受によれば、弾性リングによって軸受本体が縮径し、軸受本体に挿入されたラック軸を締め付けるので、軸受本体の内周面とラック軸の外周面との間のクリアランスをゼロにして、軸受本体の内周面とラック軸の外周面と衝突による不快音の発生を防止することができるとともに、ラック軸の外径寸法誤差による摩擦トルクの変動を防止できる。

また、特許文献１に記載の滑り軸受は、第一のスリットおよび第二のスリットを、それぞれ、軸受本体の軸心を含む仮想平面と平行なスリット幅が、この仮想平面に対して垂直な方向において、この半円筒部の内側から外側まで同幅か、あるいは内側から外側に向かうにつれて徐々に大きくなるように形成しているので、この仮想平面によって分断される軸受本体の一方の半円筒部用の外型（上型）および他方の半円筒部用の外型（下型）と、軸受本体の中空部分（ラック軸の挿入孔）を形成するための中子と、を用いて、軸受本体を成形することができる。したがって、軸受本体に形成される第一のスリットおよび第二のスリットの数に応じた数に外型を分割する必要がないため、製造コストを低減することができる。

特許第４９４０９３１号

しかしながら、特許文献１に記載の滑り軸受では、軸受本体の成形に、２つの外型（上型および下型）に加えて中子が必要である。また、軸受本体の軸心を含む仮想平面を２つの外型で挟み込むようにして軸受本体を成形するため、軸受本体の成形品が外型の成形面に対して平行に配置され、一度の成形で金型から取り出せる成形品の数が軸受本体の軸方向の長さに依存し、軸方向の長さが長くなるほど少なくなる。

本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より低コストで製造可能な滑り軸受を提供することにある。

上記課題を解決するために、本発明の滑り軸受では、軸部材が挿入される筒状の軸受本体に、いずれか一方の端面から他方の端面に向けて軸方向に沿って形成されたスリットと、外周面から径方向外方に突出する第一および第二の弾性体係止部と、を設ける。ここで、第一の弾性体係止部は、外周面の一方の端部側に形成され、第二の弾性体係止部は、外周面の他方の端部側に形成される。そして、第一および第二の弾性体係止部は、軸心に垂直な仮想平面において互いに重ならない位置に配される。また、軸受本体の第一の弾性体係止部と第二の弾性体係止部との間には、軸受本体を径方向内方に付勢する弾性体が装着される。

例えば、本発明の滑り軸受は、軸部材の移動を許容しつつ、前記軸部材に加わる荷重を支持する滑り軸受であって、
前記軸部材が挿入される筒状の軸受本体と、
前記軸受本体に装着され、前記軸受本体を径方向内方に付勢する弾性体と、を備え、
前記軸受本体は、
いずれか一方の端面から他方の端面に向けて軸方向に沿って形成されたスリットと、
外周面の一方の端部側に形成され、径方向外方に突出する第一の弾性体係止部と、
外周面の他方の端部側に形成され、径方向外方に突出する第二の弾性体係止部と、を有し、
前記第一の弾性体係止部および前記第二の弾性体係止部は、前記軸受本体の軸心に垂直な仮想平面において互いに重ならない位置に配される。

本発明では、軸受本体に、いずれか一方の端面から他方の端面に向けて軸方向に沿ってスリットを形成するとともに、外周面から径方向外方に突出する第一および第二の弾性体係止部を形成し、第一および第二の弾性体係止部を、軸受本体の軸心に垂直な仮想平面において互いに重ならない位置に配しているので、軸方向に相対移動する２つの外型（上型および下型）を用いて、中子なしで軸受本体を成形することができる。また、軸受本体の成形品が外型の成形面に対して垂直に配置されるので、一度の成形で金型から取り出せる成形品の数が軸受本体の軸方向の長さに依存しない。したがって、本発明によれば、より低コストで製造可能な滑り軸受を提供することができる。

図１（Ａ）、図１（Ｂ）および図１（Ｃ）は、本発明の一実施の形態に係る滑り軸受１の正面図、側面図および背面図である。 図２（Ａ）、図２（Ｂ）および図２（Ｃ）は、軸受本体２の正面図、側面図および背面図であり、図２（Ｄ）および図２（Ｅ）は、図２（Ａ）に示す軸受本体２のＡ−Ａ断面図およびＢ−Ｂ断面図である。 図３（Ａ）および図３（Ｂ）は、弾性リング３の正面図および側面図であり、図３（Ｃ）は、図３（Ａ）に示す弾性リング３のＣ−Ｃ断面図である。

以下、本発明の一実施の形態について説明する。

図１（Ａ）、図１（Ｂ）および図１（Ｃ）は、本発明の一実施の形態に係る滑り軸受１の正面図、側面図および背面図である。

本実施の形態に係る滑り軸受１は、車両のステアリング機構のラック軸等の軸部材の直線運動を許容しつつ、この軸部材に加わる荷重を支持する。図示するように、滑り軸受１は、軸部材（不図示）が挿入される円筒状の軸受本体２と、軸受本体２に装着され、軸受本体２を径方向内方に付勢する弾性リング３と、を備えている。

図２（Ａ）、図２（Ｂ）および図２（Ｃ）は、軸受本体２の正面図、側面図および背面図であり、図２（Ｄ）および図２（Ｅ）は、図２（Ａ）に示す軸受本体２のＡ−Ａ断面図およびＢ−Ｂ断面図である。

図示するように、軸受本体２は、内周面２０に形成され、挿入された軸部材の外周面と摺接する摺動面２１と、一方の端面２３から他方の端面２４に向けて軸Ｏ方向に沿って形成された複数の第一スリット２５と、他方の端面２４から一方の端面２３に向けて軸Ｏ方向に沿って形成された複数の第二スリット２６と、外周面２２の一方の端部２２０側に形成され、径方向外方に突出する複数の第一弾性リング係止部２７と、外周面２２の他方の端部２２１側に形成され、径方向外方に突出する複数の第二弾性リング係止部２８と、を有する。ここで、第一弾性リング係止部２７および第二弾性リング係止部２８は、軸受本体２の軸Ｏに垂直な仮想平面Ｐにおいて互いに重ならない位置、つまり図２（Ａ）および図２（Ｃ）に示す正面図および背面図において互いに重ならない位置に配されている。

軸受本体２は、ポリアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、四フッ化エチレン樹脂等の熱可塑性合成樹脂等の、摺動特性のよい合成樹脂を用いて一体成形される。

図３（Ａ）および図３（Ｂ）は、弾性リング３の正面図および側面図であり、図３（Ｃ）は、図３（Ａ）に示す弾性リング３のＣ−Ｃ断面図である。

図示するように、弾性リング３は、円筒状をしており、その内径φ２は、軸受本体１の外径φ１より小さい。これにより、弾性リング３は、軸受本体２に装着された場合に、軸受本体２を径方向内方に付勢する。弾性リング３は、天然ゴム、合成ゴム、あるいは、ポリエステルエラストマー等の弾性を有する熱可塑性合成樹脂を用いて形成される。なお、ここでは、弾性リング３を円筒状としているが、いわゆるＯリングであってもよい。また、軸受本体２に装着され、軸受本体２を径方向内方に付勢することができる弾性体であれば、弾性リングでなくてもかまわない。

以上、本発明の一実施の形態について説明した。

本実施の形態に係る滑り軸受１では、軸受本体２に、一方の端面２３から他方の端面２４に向けて複数の第一スリット２５を軸Ｏ方向に沿って形成するとともに、他方の端面２４から一方の端面２３に向けて複数の第二スリット２６を軸Ｏ方向に沿って形成しているので、軸受本体２を径方向に伸縮することができる。そして、軸受本体２に装着された弾性リング３によって軸受本体２が縮径し、軸受本体２に挿入された軸部材を締め付けるので、軸受本体２の内周面２０に形成された摺動面２１と軸部材の外周面との間のクリアランスをゼロにして、軸受本体２の内周面２０に形成された摺動面２１と軸部材の外周面と衝突による不快音の発生を防止することができるとともに、軸部材の外径寸法誤差による摩擦トルクの変動を防止できる。

また、本実施の形態に係る滑り軸受１では、軸受本体２の外周面２２の一方の端部２２０側に径方向外方に突出する複数の第一弾性リング係止部２７を形成するとともに、外周面２２の他方の端部２２１側に径方向外方に突出する複数の第二弾性リング係止部２８を形成しているので、軸受本体２の第一弾性リング係止部２７と第二弾性リング係止部２８との間に装着された弾性リング３が、軸受本体２から抜け落ちるのを防止することができる。

また、本実施の形態に係る滑り軸受１では、軸受本体１の外周面２２に形成された第一弾性リング係止部２７および第二弾性リング係止部２８を、軸受本体２の軸Ｏに垂直な仮想平面Ｐにおいて互いに重ならない位置、つまり図２（Ａ）および図２（Ｃ）に示す正面図および背面図において互いに重ならない位置に配しているので、軸受本体２の軸Ｏ方向に相対移動する２つの外型（上型および下型）を用いて、中子なしで軸受本体２を一体成形することができる。また、この場合、軸受本体２の成形品を外型の成形面に対して垂直に配置できるので、一度の成形で金型から取り出せる成形品の数が軸受本体２の軸Ｏ方向の長さに依存しない。したがって、より低コストで製造可能な滑り軸受２を提供することができる。

なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形は可能である。

例えば、上記の実施の形態では、軸受本体２に、一方の端面２３から他方の端面２４に向けて複数の第一スリット２５を軸Ｏ方向に沿って形成するとともに、他方の端面２４から一方の端面２３に向けて複数の第二スリット２６を軸Ｏ方向に沿って形成しているが、本発明はこれに限定されない。軸受本体２は、いずれか一方の端面から他方の端面に向けて軸Ｏ方向に沿って形成されたスリットを備えるものであればよい。また、本実施の形態では、軸受本体２の形状を円筒状としているが、挿入される軸部材の形状に適合する筒形状であればよい。

また、本発明は、軸部材の移動を許容しつつ、この軸部材に加わる荷重を支持する滑り軸受に広く適用可能である。

１：滑り軸受、 ２：軸受本体、 ３：弾性リング、 ２０：軸受本体２の内周面、 ２１：軸受本体２の摺動面、 ２２：軸受本体２の外周面、 ２３、２４：軸受本体２の端部、 ２５：第一スリット、 ２６：第二スリット、 ２７：第一弾性リング係止部、 ２８：第二弾性リング係止部、 ２２０、２２１の外周面２２の端部

Claims (3)

1. 軸部材の移動を許容しつつ、前記軸部材に加わる荷重を支持する滑り軸受であって、
   前記軸部材が挿入される筒状の軸受本体と、
   前記軸受本体に装着され、前記軸受本体を径方向内方に付勢する弾性体と、を備え、
   前記軸受本体は、
   いずれか一方の端面から他方の端面に向けて軸方向に沿って形成されたスリットと、
   外周面の一方の端部側に形成され、径方向外方に突出する第一の弾性体係止部と、
   外周面の他方の端部側に形成され、径方向外方に突出する第二の弾性体係止部と、を有し、
   前記第一の弾性体係止部および前記第二の弾性体係止部は、前記軸受本体の軸心に垂直な仮想平面において互いに重ならない位置に配される
   ことを特徴とする滑り軸受。
2. 請求項１に記載の滑り軸受であって、
   前記軸受本体は、合成樹脂で形成されている
   ことを特徴とする滑り軸受。
3. 請求項１または２に記載の滑り軸受であって、
   前記弾性体は、ゴム、あるいは弾性を有する合成樹脂で形成されている
   ことを特徴とする滑り軸受。

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