JP6433181B2 - カテキン及びエピカテキン4〜6量体の製造方法 - Google Patents
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Description
プロシアニジンとしては、エピカテキン−(β4→8)−カテキンの構造を有するプロシアニジンB1、エピカテキン−(β4→8)−エピカテキンの構造を有するプロシアニジンB2、カテキン−(α4→8)−カテキンの構造を有するプロシアニジンB3、カテキン−(α4→8)−エピカテキンの構造を有するプロシアニジンB4、エピカテキン−(β4→6)−エピカテキンの構造を有するプロシアニジンB5などが知られている。
非特許文献1には、カテキンを公知の方法により求電子体と求核体の2種の反応性誘導体に変換し、四塩化チタンを触媒として、低温条件下(例えば、−20℃)に、1対4.5当量ずつ反応させて得られる2量体混合物から光学選択的にプロシアニジンB3誘導体を得る方法が開示されている。
また、非特許文献2には、同様にカテキンより変換された2種の反応性誘導体を、四塩化チタンを触媒として2対1で反応させることで、光学選択的に2量体誘導体に導く方法が開示されている。
さらに、例えば、低温条件(例えば、−20℃)での反応が必須で、低温を維持するための設備を必要とするという欠点や、得られる生成物の光学純度も低いという欠点もある。このような問題からこれらの合成反応は産業的にほとんど利用されていない。
当該製造方法は、求電子体と求核体の比率が1:0.8〜1.2という、極めて効率的な方法であり、反応後の処理、精製操作も簡便な方法である。本発明者らは、当該製造方法について、カテキン又はエピカテキンの2量体以上の重合体の製造を試み、カテキン又はエピカテキンの3量体を効率的に製造できることを確認した。(例えば非特許文献3、4参照)しかしながら、当該製造方法は、3量体は効率的に製造可能であるものの、4量体〜6量体の製造は極めて低収率で、非効率な事が判明した。
しかしながら、非特許文献5記載のエピカテキン4量体又は5量体の製造方法は、非特許文献1、2に記載の方法と同様に、求電子体のエピカテキン単量体に対して、求核体のエピカテキン3量体又は4量体を大過剰使用する方法であり、極めて非効率な方法である。
さらに、カテキン4量体及び5量体はこれまで製造されていない。
本発明の製造方法は、これらの課題を解決するものであり、極めて効率よく、簡便に、カテキン又はエピカテキンの4〜6量体を製造できるものである。
造するための合成方法を提供することを目的とする。
なお、金属トリフラートとはトリフルオロメタンスルホン酸と金属との塩であり、前記式中の(CF3SO3)を「OTf」と記載することもある。
本発明の製造方法で得られる、カテキン又はエピカテキンの4〜6量体は、従来のプロシアニジンと同様に、抗酸化作用、抗ウイルス作用、抗菌作用、抗腫瘍作用、動脈硬化抑制作用、胃潰瘍抑制作用、発ガン抑制作用、育毛活性作用、美白作用等の生理作用を示すことが期待され、健康食品や化粧品などの素材として有用である。
さらに、エピカテキン5量体は、求核体として、特許文献1記載の方法に準じ製造したエピカテキン3量体から誘導した反応性誘導体を用い、求電子体としては、エピカテキン4量体の製造と同じくエピカテキン2量体から誘導した反応性誘導体を用いて、亜鉛トリフラート(Zn(CF3SO3)2)の存在下に反応させることにより、効率よく、エピカテキン5量体を製造できる。
[1]下記式(1)、
で表される、カテキン又はエピカテキンの2〜5量体の反応性誘導体と、
下記式(2)、
で表される、カテキン又はエピカテキンの単量体又は2量体の反応性誘導体とを、銀トリフラート(Ag(CF3SO3))又は亜鉛トリフラート(Zn(CF3SO3)2)の存在下に反応させて、下記式(3)
で表されるカテキン又はエピカテキンの4〜6量体誘導体を製造する工程(工程1)と、これを必要に応じ、常法により、フェノール性水酸基の保護基のR1〜R20並びにアルコール性水酸基の保護基のX1〜X3、Y1及びY2を除去する工程(工程2)を含むことを特徴とする、下記式(4)
[2][1]に記載の製造方法であって、下記式(1−1)、
下記式(2−1)、
で表されるカテキン4〜6量体誘導体を製造する工程(工程1)と、これを必要に応じ、常法により、フェノール性水酸基の保護基のR1〜R20並びにアルコール性水酸基の保護基のX1〜X3、Y1及びY2を除去する工程(工程2)を含むことを特徴とする、下記式(4−1)
[3][2]に記載の製造方法であって、下記式(5)、
[4]式中のR1〜R20がベンジル基、X1〜X3が水素原子であり、Y1及びY2がアセチル基である、[2]又は[3]に記載のカテキン4〜6量体化合物の製造方法、及び、
[5]Zがメトキシ基である、[4]に記載のカテキン4〜6量体化合物の製造方法、に関する。
[6][3]〜[5]の何れかに記載の製造方法で製造されたことを特徴とする、下記式(8−1)、
及び、
[7][3]〜[5]の何れかに記載の製造方法で製造されたことを特徴とする、下記式(8−2)、
[8][1]に記載の製造方法であって、下記式(1−2)、
下記式(2−2)、
エピカテキン単量体又は2量体の反応性誘導体とを、亜鉛トリフラート(Zn(CF3SO3)2)の存在下に反応させて、下記式(3−2)
で表されるエピカテキン4〜6量体誘導体を製造する工程(工程1)と、これを必要に応じ、常法により、フェノール性水酸基の保護基のR1〜R20並びにアルコール性水酸基の保護基のX1〜X3、Y1及びY2を除去する工程(工程2)を含むことを特徴とする、下記式(4−2)
[9][8]に記載の製造方法であって、下記式(9)、
[10]式中のR1〜R20がベンジル基、X1〜X3が水素原子であり、Y1及びY2がアセチル基である、[8]又は[9]に記載のエピカテキンの4〜6量体化合物の製造方法、
及び、
[11]Zがエトキシエトキシ基である、[10]に記載のエピカテキン4〜6量体化合物の製造方法、に関する。
「置換ベンジル」としては、それぞれ、独立して、例えば、アルキルで置換されたベンジルが挙げられ、「置換アリールアルキル」としては、それぞれ、独立して、例えば、アルキルで置換されたアリールアルキルが挙げられる。
これらのアルキル置換基は、炭素数1〜20であることが好ましく、炭素数1〜10であることがより好ましい。
「アシル」としては、それぞれ、独立して、脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸のアシルが挙げられる。
「置換アシル」としては、芳香族カルボン酸のアシルのアリールが置換されたアシルが挙げられ、具体的には、アリール(より具体的には例えば、フェニル)が、置換基、例えば、アルキルで置換されたアシルが挙げられる。
これらのアルキル置換基は、炭素数1〜20であることが好ましく、炭素数1〜10であることがより好ましい。
より好ましくは、C1〜C5アルキルである。さらに好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、アリルなどである。最も好ましくはメチルである。
好ましくは、メトキシメトキシ基などであり、最も好ましくはエトキシエトキシ基である。
より好ましくは、炭素数7〜10のフェニルアルキルであり、最も好ましくはベンジルである。
さらに、カテキン4〜6量体の場合、銀トリフラート(Ag(CF3SO3))が好ましく、エピカテキン4〜6量体の場合、亜鉛トリフラート(Zn(CF3SO3)2)が好ましい。
使用される金属トリフラートの形態は、特に限定されず、粉末状態のものでも結晶化したものでもよいが、粉末状態のものが好ましい。
例えば、カテキン4量体の製造においては、銀トリフラートの添加量は、約1.5当量程度が好ましく、3当量以上用いると大幅に収率が低下する。
一方、カテキン5量体の製造においては、銀トリフラートの添加量は、約3当量程度が好ましい。
従来の製造方法、例えば、非特許文献1〜3に記載の方法は、一方の製造原料を大過剰、例えば1:2〜1:4.5当量用いるものであり、非常に効率が悪く、反応後の精製処理にも手間を要する方法である。
本発明の製造方法は、求電子体と求核体の反応性誘導体の使用比率が、1:0.8〜1.2と極めて効率的な方法であり、また、保護基の除去及び残留原料の除去等の反応後の処理操作も極めて簡単な方法である。
工程1:
化学式(1)、化学式(1−1)、化学式(1−2)、化学式(5)又は化学式(9)で表される化合物と、化学式(2)、化学式(2−1)、化学式(2−2)、化学式(6)又は化学式(10)で表される化合物をカップリング反応させて、化学式(3)、化学式(3−1)、化学式(3−2)、化学式(7)又は化学式(11)で表される化合物を製造する工程
工程2:
化学式(3)、化学式(3−1)、化学式(3−2)、化学式(7)又は化学式(11)で表される化合物のフェノール性水酸基の保護基及びアルコール性水酸基の保護基を脱保護して、化学式(4)、化学式(4−1)、化学式(4−2)、化学式(8)又は化学式(12)で表される化合物を製造する工程
すなわち、カテキン又はエピカテキンの3〜5量体のフェノール性水酸基に、保護基のR1〜R12を導入し、必要に応じて、カテキン又はエピカテキンの3〜5量体のアルコール性水酸基に、保護基のX1〜X3を導入して製造する。
基を導入する。
前記ベンジル基の導入手順としては、例えば、カテキン又はエピカテキンの3〜5量体に臭化ベンジルを添加して反応させることにより行うことができる。
臭化ベンジルとの反応は、例えば、溶媒としてジメチルホルムアミド(DMF)を用いることにより好適に行うことができる。
すなわち、カテキン又はエピカテキンの単量体又は2量体のフェノール性水酸基に、保護基のR13〜R20を導入し、次いで、アルコール性水酸基に、保護基のY1及びY2を導入し、さらに、脱離基Zを導入する。
(1)フェノール性水酸基に、保護基のR13〜R20を導入する手順、
(2)アルコール性水酸基に、保護基のY1及びY2を導入する手順、
(3)脱離基Zを導入する手順
好ましい具体例としては、例えば、以下の手順が行われる。
(1)フェノール性水酸基に、保護基のR13〜R20としてベンジル基を導入する手順、
(2)アルコール性水酸基に、保護基のY1及びY2としてアセチル基を導入する手順、
(3)カテキン反応性誘導体の脱離基Zとしてメトキシ基を導入する手順、又はエピカテキン反応性誘導体のZとしてエトキシエトキシ基(OEE)を導入する手順
臭化ベンジルの添加は、前記、カテキン又はエピカテキンの3〜5量体の反応性誘導体の製造と同じく、例えば、溶媒としてDMFを用いて行うことができる。
(2)のアセチル基の導入は、例えば、無水酢酸を添加して反応させることにより行うこ
とができる。無水酢酸の添加は、例えば、溶媒としてのピリジン中で行うことができる。
(3)のメトキシ基の導入は、例えば、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−パラ−ベンゾキノン(DDQ)を添加して、メタノールと反応させることにより行うことができる。当該メトキシ基の導入は、例えば、溶媒としてのジクロロメタン中で行うことができる。
また、エトキシエトキシ基(OEE)の導入は、例えば前述のメトキシ基と同様に、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−パラ−ベンゾキノン(DDQ)を添加して、エトキシエタノールと反応させることによって行うことが出来る。
また、反応触媒の添加量もカテキン又はエピカテキンの種類及び4、5、6量体毎に好適な使用量が異なることから、製造原料の種類及び目的物の種類に応じて、適宜、調整した方がよい。
例えば、カテキン4量体の製造においては、銀トリフラートの使用量としては1.5当量が好ましく、カテキン5量体の製造においては、銀トリフラートの使用量としては3当量用が好ましい。
これらの溶媒の中で、ベンゼン、ヘキサン、トルエン、キシレン、四塩化炭素、塩化メチレンが好ましく、塩化メチレンが最も好ましい。
具体的には、4量体の製造の場合、カテキン及びエピカテキンの4量体のいずれにおいても、約24時間程度が好ましい。5量体では反応時間が長くなり、カテキン5量体の場合、約72時間、エピカテキン5量体の場合、約47時間程度が好ましい。
従来の製造方法、例えば非特許文献1記載の方法は、低温条件(例えば、−20℃)を要するものであるのに対して、本発明の方法はこのような低温条件を要しない。
また、本発明の方法における反応温度は特に制限されず、製造原料の種類及び目的物の種類に応じて、適宜、調整することができる。
具体的には、−10℃以上であればよく、0℃以上である事が好ましく、より好ましくは10℃以上であり、20℃以上が特に好ましい。
また、最高温度としては、90℃以下であることが好ましく、70℃以下であることがより好ましく、50℃以下であることがさらに好ましく、40℃以下であることが特に好ましく、30℃以下であることが最も好ましい。
このように、添加割合をほぼ同量にすることで原料の過剰使用の無駄を防ぎ、さらに残留原料の除去等を含む精製操作を簡略化することもできる。
なお、本発明の方法で製造したカテキン又はエピカテキンの4〜6量体の、エピカテキン4量体(cinnamtannin A2)及びエピカテキン5量体(cinnamtannin A3)並びにカテキン4量体及びカテキン5量体の化学式を以下に示す。
特許文献1記載の方法に準じ、下記反応式(1)に従って、カテキン3量体の求核剤1を合成した。
次いで、この求核剤1と求電子体であるモノマー2を製造原料として用い、反応触媒としてAgOTfを1.5当量用いて、塩化メチレン中、室温下に24時間反応させることにより、カテキン4量体の縮合物3を得た。(収率約53%)
この化合物3を用い、無水酢酸の添加による水酸基のアセチル化、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBALH)の添加によるアセチル基の脱保護及び水素雰囲気下水酸化パラジウムの添加による脱ベンジル(2工程)を行って、カテキン4量体を製造した。(収率約68%)
[式1]
実施例1で製造したカテキン4量体から、4量体の求核剤4を合成し、この4量体の求核剤4とモノマー2とを用い、下記反応式(2)に従って、反応触媒としてAgOTfを3当量用いて、塩化メチレン中、反応温度約20℃で、72時間反応させることにより、収率約50%でカテキン5量体の縮合物5を得た。
この化合物5を用い、実施例1と同様な操作により、脱ベンジルを行って、カテキン5量体を製造した。(収率約73%)
[式2]
特許文献1記載の方法に準じて製造した、エピカテキン2量体の求核体6と2量体の求電子剤7を製造原料として用い、下記反応式(3)に従って、反応触媒としてZn(OTf)2を2.5当量用いて、塩化メチレン中、反応温度約20℃で、24時間反応させることにより、収率約55%でエピカテキン4量体の縮合物8を得た。
この縮合物8から実施例1と同様な操作により、脱ベンジルを行って、エピカテキンの4量体であるcinnamtannin A2を製造した。(収率約63%)
[式3]
特許文献1記載の方法に準じて製造した、エピカテキン3量体の求核剤9と2量体の求電子体10を製造原料として用い、下記反応式(4)に従って、反応触媒としてZn(OTf)2を3当量用いて、塩化メチレン中、反応温度約20℃で、47時間反応させることにより、収率約50%でエピカテキン5量体の縮合物11を得た。
この縮合物11から実施例1と同様な操作により、脱ベンジルを行って、エピカテキンの5量体であるcinnamtannin A3を製造した。(収率約78%)
[式4]
本発明の方法によれば、従来の製造方法の問題点であった、一方の製造原料を大過剰に使用することによる無駄を省き、効率的な製造ができる。また、反応後の残留原料の除去を含む精製工程の操作も簡略化でき、製造コストの低減化も可能となる。
さらに、本発明の方法によれば、目的の重合度以外の副生成オリゴマーの生成率を劇的に低減することが可能となり、選択的に目的の重合体を立体選択的に得ることが可能となる。
Claims (5)
- 下記式(1)、
で表される、エピカテキンの2〜5量体の反応性誘導体と、
下記式(2)、
で表される、エピカテキンの2量体の反応性誘導体とを、銀トリフラート(Ag(CF3SO3))又は亜鉛トリフラート(Zn(CF3SO3)2)の存在下に反応させて、下記式(3)
- 請求項1に記載の製造方法であって、下記式(1−2)、
下記式(2−2)、
、下記式(4−2)
- 請求項2に記載の製造方法であって、下記式(9)、
- 式中のR1〜R20がベンジル基、X1〜X3が水素原子であり、Y1及びY2がアセチル基である、請求項2又は3に記載のエピカテキンの4〜6量体化合物の製造方法。
- Zがエトキシエトキシ基である、請求項3に記載のエピカテキン4〜6量体化合物の製造方法。
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