JP6432892B2 - ケイ素含有化合物水溶液及び該水溶液を含む抗菌・抗ウィルス剤 - Google Patents
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Description
ケイ素含有化合物と、β−シクロデキストリンと、を含み、
前記ケイ素含有化合物は、
下記一般式(1)
(式中、R1は炭素原子数10ないし25のアルキル基を示し、R2およびR3は同一または異なっていてもよい炭素原子数1ないし6の低級アルキル基を示し、R4は炭素原子数1ないし6の低級アルキレン基を示し、R5、R6およびR7は同一または異なっていてもよい炭素原子数1ないし6の低級アルコキシ基を示し、Xはハロゲンイオンまたは有機カルボニルオキシイオンを示す。)で表されるケイ素含有化合物であり、
前記β−シクロデキストリンの配合率が0.1〜1.0重量%であるとともに、前記ケイ素含有化合物を0.1〜1.0重量%含み、
前記ケイ素含有化合物と、前記β−シクロデキストリンとの重量比が0.1:20〜6:1.0であることを特徴とする。
上記一般式(1)で表されるケイ素含有化合物が、オクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドであることを特徴とする。
請求項1または請求項2に記載のケイ素含有化合物水溶液を含むことを特徴とする。
なお、本発明において、「抗菌」とは、細菌及び真菌類の殺菌又除菌、もしくはこれらの発生・生育・増殖を抑制することを含めて、最も広義に解釈されるべきであり、如何なる意味においても限定されない。また、「抗ウィルス」とは病原体ウィルスの感染予防及び病原体ウィルスの不活化及び病原体ウィルスの増殖を阻止することを含めて、最も広義に解釈されるべきであり、如何なる意味においても限定されない。
なお、本発明では少なくとも1種の上記ケイ素含有化合物を用いるが、適宜2種以上の上記ケイ素含有化合物を種々組み合わせて用いることも可能である。
また、特に好ましいケイ素含有化合物としては、オクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドが挙げられる。
なお、β−シクロデキストリンは水に対して難溶であるため、上記の如く、配合率が1重量%以下となる。
本実施例では、以下の検討処方と配合範囲について検討及び各種評価を行った。
ケイ素含有化合物(抗菌・抗ウィルス性の有効成分)であるオクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド(以下、ケイ素含有化合物Eまたは単に化合物Eという):0.1〜1.0重量%
α−シクロデキストリン(塩水港精糖(社)製、商品名「デキシパールα−100」):1〜7重量%
β−シクロデキストリン(塩水港精糖(社)製、商品名「デキシパールβ−100」):1重量%
γ−シクロデキストリン(塩水港精糖(社)製、商品名「デキシパールγ−100」):1〜10重量%
複合型−シクロデキストリン(塩水港精糖(社)製、商品名「デキシパールK−100」):1〜40重量%
分岐型−シクロデキストリン(塩水港精糖(社)製、商品名「イソエリートP」、主成分としてマルトシル−α−シクロデキストリン含有):1〜50重量%
溶媒:精製水
以下や図面、表において、「デキシパールK−100」、「イソエリートP」のそれぞれを便宜上「デキシパール」、「イソエリート」と呼ぶ。
以下の各項目について、検討評価を行った。各項目の詳細については後述する。
(1)各種シクロデキストリン飽和濃度と経時的変化
(2)上記(1)における各種シクロデキストリン飽和濃度水溶液にケイ素含有化合物Eを配合(添加)したときの包接具合と経時的変化
(3)上記(2)で検討した各種処方の定性評価及び電位差滴定法評価
(4)消臭性能試験
表1〜表5における「CD溶解性」では、溶質であるCD単体を各表中の各配合率(各表中の「CD単体/配合率」参照)で溶媒である精製水に溶解するかどうかを評価したものである。各表中のCD溶解性における透明性とは、前記各配合率になるようにCDと精製水を順に、所定のねじ口びんに入れて密閉した状態で振とう器で撹拌することでそれぞれのCD水溶液を調製して、CD水溶液の調製直後に、CD水溶液の透明性を目視にて評価したものである。各CD水溶液において透明性を有した状態であれば「OK」、透明性を有しない状態であれば「NG」として評価した。また、各表中のCD溶解性における安定性とは、調製後の各CD水溶液を常温で所定時間放置した後、溶液の状態(沈殿・析出等の有無)を目視にて評価したものである。各CD水溶液において沈殿・析出等が無ければ安定性を有した状態(表中の「OK」)、沈殿・析出等が有れば安定性を有しない状態(表中の「NG」)として評価した。
各表における「化合物E溶解性」では、CD溶解性評価後の各CD水溶液に対して、さらに溶質であるケイ素含有化合物Eを各表中の各配合率(各表中の「化合物E/配合率」参照)で加えて、振とう器で撹拌することでそれぞれのCD/ケイ素含有化合物E水溶液を調製した。そうして、CD/ケイ素含有化合物E水溶液の調製直後に、CD/ケイ素含有化合物E水溶液の透明性を目視にて評価したものである。各CD/ケイ素含有化合物E水溶液において透明性を有した状態であれば「OK」、透明性を有しない状態であれば「NG」として評価した。また、各表中の化合物E溶解性における安定性とは、調製後の各CD/ケイ素含有化合物E水溶液を常温で所定時間放置した後、溶液の状態(沈殿・析出等の有無)を目視にて評価したものである。各CD/ケイ素含有化合物E水溶液において沈殿・析出等が無ければ安定性を有した状態(表中の「OK」)、沈殿・析出等が有れば安定性を有しない状態(表中の「NG」)として評価した。
各表における「評価」では、ケイ素含有化合物E溶解性評価後の各CD/ケイ素含有化合物E水溶液を用いて、さらに機能性評価(定性評価及び定量評価)と経時的安定性の評価(経時的変化の目視観察)を行った。
機能性評価における定性評価では所定の試験片に所定量の各CD/ケイ素含有化合物E水溶液を塗布し、当該試験片上にケイ素含有化合物Eが固定化されているかどうかをブロモフェノールブルーを用いたpH反応(色変化)を確認することにより定性的に確認した(図21参照)。この定性評価の具体的な方法としては、先ず、PP(ポリプロピレン)フィルムに試料(図21に示した例ではγ−CD1重量%+化合物E1重量%の水溶液及びγ−CD1重量%+化合物E0.1の水溶液を使用)を塗布し、乾燥後水洗いして、BPB(ブロモフェノールブルー)0.1重量%の溶液を全体に噴霧する。その後、ケイ素含有化合物EがPPフィルム表面に固定化されていれば「青色」に呈色する。図21に示した例では、BPB溶液未塗布(ブランク)のフィルムと比較して二つの試料がともに呈色しており、ケイ素含有化合物Eが表面に固定化されていることが確認できた。
表1〜表5における所定の試料を用いて、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸及びノネナールに対する消臭性能を試験した。以下、試験条件等を具体的に説明する。
試験項目:繊維評価技術協議会法の消臭性試験、SEKマーク繊維製品認証基準準用
(綿布に試料4mlの液体を塗布し30分−1時間乾燥後、検知管法・ガスクロマトグラフ法によって当該綿布から揮発するガス濃度を計測する評価)
対象とした臭い:アンモニア、酢酸、イソ吉草酸、ノネナール
用いた試料:試料1)化合物E0.1%+γ−CD1%+精製水98.9%試料
試料2)化合物E0.1%+γ−CD5%+精製水94.9%試料
ガス初期濃度:アンモニア 100ppm(100cm2)
酢酸 50ppm(100cm2)
イソ吉草酸 約38ppm(48cm2)
ノネナール 約14ppm(48cm2)
表3に示すように、「化合物E溶解性」では、γ−シクロデキストリンが1重量%で、且つケイ素含有化合物Eが0.4重量%以下であれば透明性を維持していることを確認した。また、γ−シクロデキストリンが1重量%で、且つケイ素含有化合物Eが0.5重量%以上では不透明であるが、溶液状態は安定していた。また、経時的安定性の評価においてγ−シクロデキストリンが0.6重量%以下でほぼ不変であり、γ−シクロデキストリンが10重量%以上で、ケイ素含有化合物Eと共存した形態で沈殿していることを確認した。これらの結果から結論としては、ケイ素含有化合物E水溶液において、経時的安定性が製品として要求される必須項目であるため、経時的安定性を確保できる好ましい範囲としては、γ−シクロデキストリンが1重量%以上6重量%以下で、かつケイ素含有化合物Eが1重量%以下である。また、透明性については製品設計上付加価値的な項目であり、製品として透明性が要求されるものは、適宜透明性が得られる処方となるようにγ−シクロデキストリンの配合率を適宜調整すればよい。
なお、γ−シクロデキストリンが1重量%未満においては、評価を行っていないが、γ−シクロデキストリン自体の溶解性がより良好となる範囲であるため、γ−シクロデキストリンの使用量に応じた本発明の効果が得られると推定される。
また、ケイ素含有化合物Eとγ−シクロデキストリンの重量比(ケイ素含有化合物/γ−シクロデキストリン)として好ましい範囲としては、0.1:6〜1:1である。
表1に示すように、「化合物E溶解性」では、全体的に透明性を有していないが、α−シクロデキストリンが1重量%で、且つケイ素含有化合物Eが0.7重量%以下、及びα−シクロデキストリンが7重量%で、且つケイ素含有化合物Eが0.1〜1.0重量%であれば溶液状態の安定性を維持していることを確認した。また、経時的安定性の評価においてα−シクロデキストリンが1重量%で、且つケイ素含有化合物Eが0.7重量%以下、及びα−シクロデキストリンが7重量%で、且つケイ素含有化合物Eが0.1〜1.0重量%で安定であり、これらの結果から結論としては、ケイ素含有化合物E水溶液において、経時的安定性が製品として要求される必須項目であるため、経時的安定性を確保できる好ましい範囲としては、α−シクロデキストリンが7重量%以下で、かつケイ素含有化合物Eが1重量%以下(より好ましくは、0.7重量%以下)である。
なお、α−シクロデキストリンが1重量%未満においては、評価を行っていないが、α−シクロデキストリン自体の溶解性がより良好となる範囲であるため、α−シクロデキストリンの使用量に応じた本発明の効果が得られると推定される。
また、ケイ素含有化合物Eとα−シクロデキストリンの重量比(ケイ素含有化合物/α−シクロデキストリン)として好ましい範囲としては、0.1:7〜1:1である。
表2に示すように、「化合物E溶解性」では、ケイ素含有化合物Eの各配合率において透明性を有していないが、溶液状態の安定性を維持していることを確認した。また、経時的安定性の評価においては、不変であった。これらの結果から結論としては、ケイ素含有化合物E水溶液において、経時的安定性が製品として要求される必須項目であるため、経時的安定性を確保できる好ましい範囲としては、α−シクロデキストリンが1重量%で、かつケイ素含有化合物Eが0.1〜1重量%以下である。
なお、β−シクロデキストリンが1重量%未満においては、評価を行っていないが、β−シクロデキストリン自体の溶解性がより良好となる範囲であるため、β−シクロデキストリンの使用量に応じた本発明の効果が得られると推定される。
また、ケイ素含有化合物Eとβ−シクロデキストリンの重量比(ケイ素含有化合物/β−シクロデキストリン)として好ましい範囲としては、0.1:1〜1:1である。
表4に示すように、「化合物E溶解性」では、イソエリートが1〜9重量%、且つケイ素含有化合物Eが0.1重量%であれば透明性を維持していることを確認した。また、イソエリートが9重量%以下で、溶液状態は安定していた。また、経時的安定性の評価においては、イソエリートが9重量%以下で安定であり、10重量%以上で、ケイ素含有化合物Eと共存した形態で沈殿していることを確認した。これらの結果から結論としては、ケイ素含有化合物E水溶液において、経時的安定性が製品として要求される必須項目であるため、経時的安定性を確保できる好ましい範囲としては、ケイ素含有化合物Eが0.1重量%であるときは、イソエリートが1〜9重量%である。経時的安定性の評価において水溶液が不透明であったが製剤としては安定したものである。
なお、イソエリートが1重量%未満においては、評価を行っていないが、イソエリート自体の溶解性がより良好となる範囲であるため、イソエリートの使用量に応じた本発明の効果が得られると推定される。
また、ケイ素含有化合物Eとイソエリートの重量比(ケイ素含有化合物/イソエリート)として好ましい範囲としては、0.1:9〜0.1:1である。
表5に示すように、「化合物E溶解性」では、デキシパールが1〜10重量%、且つケイ素含有化合物Eが0.1重量%であれば透明性を維持していることを確認した。また、デキシパールが10重量%以下で、溶液状態は安定していた。また、経時的安定性の評価においては、デキシパールが10重量%以下で安定であり、20重量%以上で、ケイ素含有化合物Eと共存した形態で沈殿していることを確認した。これらの結果から結論としては、ケイ素含有化合物E水溶液において、経時的安定性が製品として要求される必須項目であるため、経時的安定性を確保できる好ましい範囲としては、ケイ素含有化合物Eが0.1重量%であるときは、デキシパールが1〜10重量%である。経時的安定性の評価において水溶液が不透明であったが製剤としては安定したものである。
なお、デキシパールが1重量%未満においては、評価を行っていないが、デキシパール自体の溶解性がより良好となる範囲であるため、デキシパールの使用量に応じた本発明の効果が得られると推定される。
また、ケイ素含有化合物Eとデキシパールの重量比(ケイ素含有化合物/デキシパール)として好ましい範囲としては、0.1:10〜0.1:1である。
以下に、上記γ−シクロデキストリンを含め、当該γ−シクロデキストリンと同様に評価を行ったシクロデキストリン類(α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、複合型、分岐型シクロデキストリン)の評価結果をまとめる。
(1)シクロデキストリンの種類によってケイ素含有化合物Eの包接状態が異なり、配合量・経時的安定性も変わることを確認した。
(2)透明性が低い状態(白濁状態)でも分離状態でなければ、包接具合は安定している(定性評価で確認)。
(3)α−シクロデキストリン1重量%溶解の場合、ケイ素含有化合物E0.1〜0.7重量%配合で経時的に安定していた。α−シクロデキストリン7重量%溶解の場合、ケイ素含有化合物E0.1〜1.0重量%配合で安定していた。
(4)β−シクロデキストリン1重量%溶解の場合、ケイ素含有化合物E0.1〜1.0%配合で経時的に安定していた。
(5)γ−シクロデキストリン6重量%以下の溶解の場合、ケイ素含有化合物E0.1〜1.0重量%配合で経時的に安定していた。γ−シクロデキストリン10重量%溶解の場合、経時的に不安定であった。
(6)分岐型CDであるイソエリートでは、イソエリート9重量%以下且つケイ素含有化合物E0.1重量%配合で経時的に安定していた。
(7)複合型CDであるデキシパールでは、デキスパール6重量%以下且つケイ素含有化合物E0.1重量%配合で経時的に安定していた。
Claims (3)
- ケイ素含有化合物と、β−シクロデキストリンと、を含み、
前記ケイ素含有化合物は、
下記一般式(1)
(式中、R1は炭素原子数10ないし25のアルキル基を示し、R2およびR3は同一または異なっていてもよい炭素原子数1ないし6の低級アルキル基を示し、R4は炭素原子数1ないし6の低級アルキレン基を示し、R5、R6およびR7は同一または異なっていてもよい炭素原子数1ないし6の低級アルコキシ基を示し、Xはハロゲンイオンまたは有機カルボニルオキシイオンを示す。)で表されるケイ素含有化合物であり、
前記β−シクロデキストリンの配合率が0.1〜1.0重量%であるとともに、前記ケイ素含有化合物を0.1〜1.0重量%含み、
前記ケイ素含有化合物と、前記β−シクロデキストリンとの重量比が0.1:20〜6:1.0であることを特徴とするケイ素含有化合物水溶液。 - 上記一般式(1)で表されるケイ素含有化合物が、オクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドであることを特徴とする請求項1に記載のケイ素含有化合物水溶液。
- 請求項1または請求項2に記載のケイ素含有化合物水溶液を含むことを特徴とする抗菌・抗ウィルス剤。
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