JP6432892B2 - ケイ素含有化合物水溶液及び該水溶液を含む抗菌・抗ウィルス剤 - Google Patents

ケイ素含有化合物水溶液及び該水溶液を含む抗菌・抗ウィルス剤 Download PDF

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Description

本発明は、ケイ素含有化合物水溶液及び該水溶液を含む抗菌・抗ウィルス剤に関する。詳しくは、抗菌作用が長時間持続可能な抗菌物質を有するケイ素含有化合物を溶解した水溶液であって、十分な経時的安定性を有する水溶液からなる抗菌・抗ウィルス剤に関する。
近年、生活環境の改善や健康意識の向上に伴って清潔志向が高まっており、日常生活においてもウィルスや病原性の細菌の人や動物への感染予防として種々の対策が積極的に行われている。感染者だけでなく家庭生活や学校・企業、ひいては社会全体に大きな影響を及ぼすインフルエンザウィルス、感染者に重篤な症状を引き起こす病原性大腸菌(O−157等)及びメシチリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの細菌類(バクテリア)、日常生活において身近な真菌類(カビ)等の菌類の存在に対しては、特に敏感になっている。例えば、真菌類は、我々の日常生活において食品、衣類、絨毯などの繊維製品などで身近に発生し、アトピー性皮膚炎などの症状の原因ともなっている。このような事情から、日常使用される生活用品等に抗菌・抗ウィルス性を予め付与したものや、日常使用される生活用品等に対して手軽に抗菌・除菌等が行える商品の需要が高まり、これに応えるべく対象物に対して簡単に抗菌・抗ウィルス性処理を施すことができる抗菌・抗ウィルス剤が多く上市されている。
しかし、従来の抗菌・抗ウィルス剤は、抗菌・抗ウィルス効果の持続力に乏しく、時間の経過とともに揮発したり分解・溶出したりして、抗菌性能が徐々に低下していくなどの抗菌作用の持続性が十分でないとの欠点が指摘されていた。
かかる観点から、近年、従来の抗菌・抗ウィルス剤に代わるものとして、抗菌物質(抗菌性官能基)を有するシラン化合物(以下では、ケイ素含有化合物ともいう)を用いた抗菌剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
具体的には、特許文献1には、抗菌性官能基として4級アンモニウム塩を有するシラン化合物を用いた抗菌剤が開示されている。さらに、特許文献1には、当該抗菌剤をアルコール等で希釈して抗菌剤溶液を調製し、この中に被抗菌対象物を浸漬して、被抗菌対象物表面(以下、被抗菌面という)に抗菌剤を固定する技術が開示されている。この被抗菌面に抗菌剤を固定する技術を用いた場合、被抗菌面に当該シラン化合物が共有結合によって固定化されるため、抗菌作用を長時間持続させることが可能である。
さらに、上記抗菌性官能基を有するシラン化合物を、所定の溶媒で溶解して抗菌剤溶液を調製し、当該抗菌剤溶液を所定の被抗菌面に塗布することで、被抗菌面に抗菌剤を固定することが可能である。従来、当該抗菌性官能基を有するシラン化合物を配合した製剤はすでに市販されている。当該製剤処方としては、成分特性上、機能上、及び安定性確保上、アルコールを高配合させる必要性があるが、可燃性であるアルコールは製造工程で使用するに際し、防爆設備等の特殊な設備を要し、また保管管理上制約があり、物量が制限される上、輸送も制限される為、余計な費用がかかる。また、抗菌性官能基を有するシラン化合物の用途として、例えば、手指の抗菌や口臭・虫歯予防等の種々の口腔ケア用途が挙げられ、人体(動物含む)に直接使用するニーズが高まっており、逆にアルコールを配合していることで敬遠される場合がある。
特許文献2には、環境負荷を考慮し、抗菌性官能基を有するシラン化合物を含む原液(アルコール溶液)を有機溶媒ではなく水で希釈する技術が記載されている。
具体的には、特許文献2には、抗菌剤原液を水で稀釈して所定の濃度の抗菌剤水溶液を調整し、該水溶液に塩酸などの酸を添加してPHを3.5〜2.0の範囲に調整し、10℃以下で水溶液を保存することで粘度変化のない安定な抗菌性水溶液を得る旨が記載されている。
特開2004−209241号公報 特開2007−31290号公報
しかしながら、特許文献2に記載された抗菌剤水溶液は、当該水溶液の経時変化を抑えるためにPHを調整するとともに低温で管理を行う必要があった。つまり、当該抗菌剤を溶解して所定濃度の水溶液を調製しても、当該水溶液を安定的に保存することが困難であり、経時的安定性を有した状態で当該抗菌剤を水に溶解させることは困難であった。そのため、保存する際に特別な管理を必要とせず、アルコール等の有機溶媒が敬遠される部分にも使用可能にするとともに、経時的安定性に優れた水溶液からなる抗菌・抗ウィルス剤が望まれている。
そこで、本発明は、抗菌性官能基を有するケイ素含有化合物を溶解した水溶液であって、優れた経時的安定性を有するケイ素含有化合物水溶液及び該水溶液を含む抗ウィルス・抗菌剤を提供することを目的とする。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
即ち、請求項1のケイ素含有化合物水溶液においては、
ケイ素含有化合物と、β−シクロデキストリンと、を含み、
前記ケイ素含有化合物は、
下記一般式(1)

(式中、R1は炭素原子数10ないし25のアルキル基を示し、R2およびR3は同一または異なっていてもよい炭素原子数1ないし6の低級アルキル基を示し、R4は炭素原子数1ないし6の低級アルキレン基を示し、R5、R6およびR7は同一または異なっていてもよい炭素原子数1ないし6の低級アルコキシ基を示し、Xはハロゲンイオンまたは有機カルボニルオキシイオンを示す。)で表されるケイ素含有化合物であり、
前記β−シクロデキストリンの配合率が0.1〜1.0重量%であるとともに、前記ケイ素含有化合物を0.1〜1.0重量%含み、
前記ケイ素含有化合物と、前記β−シクロデキストリンとの重量比が0.1:20〜6:1.0であることを特徴とする。
請求項2のケイ素含有化合物水溶液においては、
上記一般式(1)で表されるケイ素含有化合物が、オクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドであることを特徴とする。
請求項3に記載の抗菌・抗ウィルス剤においては、
請求項1または請求項2に記載のケイ素含有化合物水溶液を含むことを特徴とする。
本発明によれば、ケイ素含有化合物自体をゲスト分子としてシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体に包接させることで、ケイ素含有化合物が溶解し、かつ経時的安定性に優れた水溶液からなる抗菌・抗ウィルス剤を得ることができる。これにより、アルコール等の有機溶媒が敬遠される部分に対して抗菌・抗ウィルス性を付与することができる。
γ−CD/ケイ素含有化合物E水溶液(CD単体/配合率:1重量%、ケイ素含有化合物E/配合率:0.1〜1.0重量%)を示す写真。 γ−CD/ケイ素含有化合物E水溶液(CD単体/配合率:6重量%、ケイ素含有化合物E/配合率:0.1〜0.9重量%)を示す写真。 γ−CD/ケイ素含有化合物E水溶液(CD単体/配合率:7重量%、ケイ素含有化合物E/配合率:0.1〜1.0重量%)を示す写真。 γ−CD/ケイ素含有化合物E水溶液(CD単体/配合率:10重量%、ケイ素含有化合物E/配合率:0.1〜1.0重量%)を示す写真。 α−CD/ケイ素含有化合物E水溶液(CD単体/配合率:1重量%、ケイ素含有化合物E/配合率:0.1〜0.5重量%)を示す写真であり、(a)は斜め上方から撮影した写真、(b)は正面から撮影した写真。 α−CD/ケイ素含有化合物E水溶液(CD単体/配合率:1重量%、ケイ素含有化合物E/配合率:0.6〜1.0重量%)を示す写真であり、(a)は斜め上方から撮影した写真、(b)は正面から撮影した写真。 α−CD/ケイ素含有化合物E水溶液(CD単体/配合率:7重量%、ケイ素含有化合物E/配合率:0.1〜0.5重量%)を示す写真であり、(a)は斜め上方から撮影した写真、(b)は正面から撮影した写真。 α−CD/ケイ素含有化合物E水溶液(CD単体/配合率:7重量%、ケイ素含有化合物E/配合率:0.6〜1.0重量%)を示す写真であり、(a)は斜め上方から撮影した写真、(b)は正面から撮影した写真。 γ−CD/ケイ素含有化合物E水溶液(CD単体/配合率:1重量%、ケイ素含有化合物E/配合率:0.1〜0.5重量%)を示す写真であり、(a)は斜め上方から撮影した写真、(b)は正面から撮影した写真。 γ−CD/ケイ素含有化合物E水溶液(CD単体/配合率:1重量%、ケイ素含有化合物E/配合率:0.6〜1.0重量%)を示す写真であり、(a)は斜め上方から撮影した写真、(b)は正面から撮影した写真。 γ−CD/ケイ素含有化合物E水溶液(CD単体/配合率:3重量%、ケイ素含有化合物E/配合率:0.1〜0.4重量%)を示す写真であり、(a)は斜め上方から撮影した写真、(b)は正面から撮影した写真。 γ−CD/ケイ素含有化合物E水溶液(CD単体/配合率:3重量%、ケイ素含有化合物E/配合率:0.5〜0.9重量%)を示す写真であり、(a)は斜め上方から撮影した写真、(b)は正面から撮影した写真。 γ−CD/ケイ素含有化合物E水溶液(CD単体/配合率:6重量%、ケイ素含有化合物E/配合率:0.1〜0.4重量%)を示す写真であり、(a)は斜め上方から撮影した写真、(b)は正面から撮影した写真。 γ−CD/ケイ素含有化合物E水溶液(CD単体/配合率:6重量%、ケイ素含有化合物E/配合率:0.5〜0.9重量%)を示す写真であり、(a)は斜め上方から撮影した写真、(b)は正面から撮影した写真。 γ−CD/ケイ素含有化合物E水溶液(CD単体/配合率:10重量%、ケイ素含有化合物E/配合率:0.1〜0.5重量%)を示す写真であり、(a)は斜め上方から撮影した写真、(b)は正面から撮影した写真。 γ−CD/ケイ素含有化合物E水溶液(CD単体/配合率:10重量%、ケイ素含有化合物E/配合率:0.6〜1.0重量%)を示す写真であり、(a)は斜め上方から撮影した写真、(b)は正面から撮影した写真。 イソエリート/ケイ素含有化合物E水溶液(CD単体/配合率:10〜50重量%、ケイ素含有化合物E/配合率:0.1重量%)を示す写真であり、(a)は斜め上方から撮影した写真、(b)は正面から撮影した写真。 デキシパール/ケイ素含有化合物E水溶液(CD単体/配合率:10〜50重量%、ケイ素含有化合物E/配合率:0.1重量%)を示す写真であり、(a)は斜め上方から撮影した写真、(b)は正面から撮影した写真。 図18で示した、デキシパール50%−化合物E0.1%の水溶液とデキシパール30%−化合物E0.1%の水溶液との沈殿具合の比較を示す写真。 デキシパール1%−化合物E0.1%の水溶液とイソエリート1%−化合物E0.1%の水溶液との比較を示す写真であり、(a)は斜め上方から撮影した写真、(b)は正面から撮影した写真。 ブロモフェノールブルー溶液を用いた定性確認試験の結果を示す写真。 安定性試験(三か月経過後)におけるケイ素含有化合物E水溶液中のケイ素含有化合物Eの定量分析結果を示す図。 消臭性能試験の結果を示す表であり、(a)は試料1の試験結果を示す表、(b)は試料2の試験結果を示す表。
次に、発明の実施の形態を説明する。
なお、本発明において、「抗菌」とは、細菌及び真菌類の殺菌又除菌、もしくはこれらの発生・生育・増殖を抑制することを含めて、最も広義に解釈されるべきであり、如何なる意味においても限定されない。また、「抗ウィルス」とは病原体ウィルスの感染予防及び病原体ウィルスの不活化及び病原体ウィルスの増殖を阻止することを含めて、最も広義に解釈されるべきであり、如何なる意味においても限定されない。
本発明のケイ素含有化合物水溶液は、ケイ素含有化合物と、シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体と、を含むことを特徴とする。
前記ケイ素含有化合物は、下記一般式(1)
(式中、R1は炭素原子数6以上の炭化水素基を示し、R2およびR3は同一または異なっていてもよい低級炭化水素基を示し、R4は二価の低級炭化水素基を示し、R5、R6およびR7は同一または異なっていてもよい低級アルキル基または低級アルコシ基を示し、Xはハロゲンイオンまたは有機カルボニルオキシイオンを示す。)で表されるケイ素含有化合物であることを特徴とする。
次に、本発明のケイ素含有化合物水溶液及び該水溶液を含む抗菌・抗ウィルス剤において、抗菌・抗ウィルス性を発揮する有効成分であるケイ素含有化合物と、ケイ素含有化合物を水に可溶化する成分であるシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体と、のそれぞれについて、以下に説明する。
ケイ素含有化合物は、上記一般式(1)で表されるケイ素含有化合物であり、抗菌物質(抗菌性官能基)を有するケイ素含有化合物である。
抗菌物質(抗菌性官能基)を有するケイ素含有化合物とは、上記一般式(1)で表されるように、抗菌性官能基(抗菌活性部位)である4級アンモニウム塩と、酸素と共有結合可能なシラン化合物とを低級アルキレン基を介して結合した有機シラン化合物である。すなわち、本発明に係るケイ素含有化合物はその分子内に、抗菌性成分として知られる4級アンモニウム塩を含有するものであり、この4級アンモニウム塩により高い抗菌・抗ウィルス性を有する。また、本発明に係るケイ素含有化合物はその分子内に、酸素と共有結合可能なシラン化合物を含有するものであり、このシラン化合物により被抗菌面上の酸素と共有結合で結ばれることで、抗菌性成分である4級アンモニウム塩が被抗菌面上に堅固に固定化され、被抗菌面に強い抗菌性能と優れたその持続性が付与されることとなる。
上記一般式(1)で表されるケイ素含有化合物のうちで、好ましい態様は、上記一般式(1)のR1は炭素原子数10ないし25のアルキル基を示し、R2およびR3は同一または異なっていてもよい炭素原子数1ないし6の低級アルキル基を示し、R4は炭素原子数1ないし6の低級アルキレン基を示し、R5、R6およびR7は同一または異なっていてもよい炭素原子数1ないし6の低級アルキル基または低級アルコシ基を示し、Xはハロゲンイオンまたは有機カルボニルオキシイオン(有機カルボン酸イオン)であるケイ素含有化合物である。
R1の炭素原子数6以上の炭化水素基としては、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ウンエイコシル基、ドエイコシル基、トリエイコシル基、テトラエイコシル基、ペンタエイコシル基などが例示できる。
R2およびR3の同一または異なっていてもよい低級炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロヘクシル基、フェニル基、トリル基などを例示することができる。
R4の低級アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基などを例示できる。
R5、R6およびR7は同一または異なっていてもよい低級アルキル基または低級アルコシ基(アルコキシ基ともいう)であり、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、へキシルオキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基などを例示できる。
Xとしては塩素イオン、臭素イオンなどのハロゲンイオン、メチルカルボニルオキシイオン(アセテートイオン)、エチルカルボニルオキシイオン(プロピオネートイオン)、フェニルカルボニルオキシイオン(ベンゾエートイオン)などの有機カルボニルオキシイオン(有機カルボン酸イオン)を例示することができる。
ケイ素含有化合物として具体的には、次の化合物を例示することができる。前記一般式(1)で表されるケイ素含有化合物(a)が、オクタデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニムクロライド、オクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、オクタデシルジエチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、オクタデシルジメチル(2−トリメチルシリルエチル)アンモニウムクロライド、オクタデシルジプロピル(4−トリメトキシシリルブチル)アンモニムアセテート、オクタデシルジメチル(3−トリイソプロポキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、オクタデシルジメチル(3−トリエチルシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、オクタデシルジメチル(3−トリイソプロピルシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ヘプタデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ヘプタデシルジイソプロピル(2−トリエトキシシリルエチル)アンモニウムクロライド、ヘキサデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニムクロライド、ヘキサデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニムアセテートおよびペンタサデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニムクロライドからなる群から選ばれた少なくとも1種のケイ素含有化合物であるのが好ましい。このうち、さらに好ましいのは、オクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド(別名:オクタデシルアミノジメチルトリエトキシシリルプロピルアンモニウムクロイラド)である。
なお、本発明では少なくとも1種の上記ケイ素含有化合物を用いるが、適宜2種以上の上記ケイ素含有化合物を種々組み合わせて用いることも可能である。
また、特に好ましいケイ素含有化合物としては、オクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドが挙げられる。
以上に示されるケイ素含有化合物は、公知の手法によって製造することができ、その方法を限定するものではない。
次に、本発明で用いるシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体について説明する。
シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体としては、当該シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体の分子内空間に上記ケイ素含有化合物を包接可能であるものを用いる。また、シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体は、臭いの原因物質(分子)を包接する作用により消臭性を有する。
シクロデキストリンは、特に限定されないが、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等のシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体が好ましい。また、シクロデキストリン誘導体としては、例えば、アルキル基、アセチル基、トリチル基、トシル基、トリメチルシラン基、フェニル基、ハロゲン基等の置換基が導入され、シクロデキストリンの環状部分にさらに分枝ができた分岐型のシクロデキストリン(例えば、市販品の塩水港精糖(株)社製のイソエリートP)、及び、α−シクロデキストリンを主成分としたシクロデキストリン混合物である複合型シクロデキストリン(例えば、市販品の塩水港精糖(株)社製のデキシパールK−100)などが挙げられる。本発明のシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体としては、上記シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種のシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体であるのが望ましい。
次に、上述した、ケイ素含有化合物及びシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体と、を含む水溶液である抗菌・抗ウィルス剤について、以下に説明する。
本発明の抗菌・抗ウィルス剤は、当該抗菌・抗ウィルス剤が有するケイ素含有化合物により、大腸菌O−157・MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)・レジオネラ菌等の有害細菌類(バクテリア)や、真菌症や真菌中毒症を発症させる真菌類(カビ)や、藻類等に対して抗菌・抗ウィルス性を発揮するものである。
本発明の抗菌・抗ウィルス剤は、当該抗菌・抗ウィルス剤が有するシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体により、臭いの発生源等に対して消臭性(消臭能)を発揮するものである。
また、本発明の抗菌・抗ウィルス剤の有する消臭性(消臭能)とは、臭いを吸着させる性能、すなわち、臭いの発生源となる、例えば揮発性の疎水性有機化合物に作用して、当該揮発性の疎水性有機化合物等を分子内空間に包接させる性能のことをいい、如何なる意味においても限定的に解釈されるものではない。
適用対象は、抗菌・抗ウィルス性及び消臭性を付与したいもの(被抗菌・抗ウィルス対象物)全てを含み、例えば、木、ガラス、繊維、金属、陶磁器、ゴム等などを有する各種工業用製品類や、化粧品、トイレタリー製品などの日用品、及び手指等の人肌(皮膚)やペット等の動物を包含するものである。
適用対象に対して抗菌・抗ウィルス性及び消臭性を付与する手段としては、スプレーによる塗布、ウェットティッシュ等のシート状塗布具、ポンプ付きボトルによる滴下、刷毛塗り、ローラ塗り、ディップコーティング(浸漬による塗布)等が挙げられる。
本発明の抗菌・抗ウィルス剤は、有効成分であるケイ素含有化合物を1種単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせてもよく、また、その他の添加剤を加えてもよい。また、ケイ素含有化合物とシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体を含む水溶液であれば、その形態は特に限定するものではない。添加剤としては、本発明の効果を阻害しない範囲でその形態に応じた、保湿剤、乳化剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、香料等からなる群から選ばれる1種又は2種以上のものを加えることができる。
乳化剤・分散剤としては、通常の界面活性剤を用いることができ、例えば、脂肪酸ナトリウム、アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤や、しょ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、及びソルビタンアルキルエステル等の非イオン界面活性剤や、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等の両性界面活性剤や、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、トコフェロール(ビタミンE)、酢酸トコフェロール等のトコフェロール誘導体、フェノール系(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)など)や、硫黄系(ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネートなど)や、リン系(トリフェニルホスファイト、トリイソデシルホスファイトなど)や、アミン系(オクチル化ジフェニルアミン、N−n−ブチル−p−アミノフェノール、N,N−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミンなど)等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系(2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンなど)や、ベンゾトリアゾール系((2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなど)等が挙げられる。
香料としては、フトモモ科オオフトモモ属、パンジロウ属、ユーカリ属、ネズモドキ属、もしくはカユプテ属の植物由来の精油成分であるティーツリーオイルを用いることもできる。さらに、前記ティーツリーオイル、アニス油、オレンジ油、クローブ油、シトロネラ油、ジャスミン油、ショウノウ油、スペアミント油、ゼラニウム油、テレピン油、ビャクダン油、ペパーミント油、ベルガモット油、ボアドローズ油、ユーカリ油、ラベンダー油、レモングラス油、レモン油、ローズ油、ムスク、シベット、カストル、アンバーグリス、アネトール、オイゲノール、ゲラニオール、シトロネオール、ハッカ油のうち一種または二種以上を添加することができる。
ケイ素含有化合物は、抗菌・抗ウィルス性付与の対象物の種類、使用材料、使用目的などにより、その適用範囲や適用方法を適宜変更することができるが、通常では、製品の全組成に対して少なくとも0.001重量%以上含有され、好ましくは0.01〜1.0重量%含有される。より好ましくは0.05〜0.1重量%含有される。
ケイ素含有化合物水溶液を調製する際のケイ素含有化合物とシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体との配合割合は、特定の配合割合に限定されるものではないが、好ましくは重量比で0.1:30〜10:1、より好ましくは0.1:20〜6:1.0である。
シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体は、抗菌・抗ウィルス性及び消臭性付与の対象物の種類、使用材料、使用目的などにより、その適用範囲や適用方法を適宜変更することができるが、シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体の水溶性を考慮するとそれらの配合率は自ずと限定される。具体的には、製品の全組成に対して、例えば、α−シクロデキストリンでは1〜7重量%、β−シクロデキストリンでは0.l〜1重量%、γ−シクロデキストリンでは1〜10重量%、複合型−シクロデキストリンでは1〜20重量%、分岐型―シクロデキストリンでは1〜9重量%の配合率で配合することが好ましい。
なお、β−シクロデキストリンは水に対して難溶であるため、上記の如く、配合率が1重量%以下となる。
本発明のケイ素含有化合物水溶液及び該水溶液を含む抗菌・抗ウィルス剤の用途としては、例えば、手指の抗菌や口臭・虫歯予防等の種々の口腔ケア用途が挙げられる。また、これら人体(動物含む)に直接使用するものだけでなく、表面に抗菌・抗ウィルス性を付与したい物品に使用することも可能である。当該物品としては、インプラント、クラウン、ブリッジ、矯正用ブラケット、歯科用ワイヤーなどの歯科材料、食器、メガネ、流し、台所周り、便器、トイレ周り、浴槽、浴室周り、洗面ボウル、洗面所周り、繊維製品または被服など広範囲にわたる物品を挙げることができる。
上述した本発明の抗菌・抗ウィルス剤の実施形態について、より詳細な検討を行うため、シクロデキストリンの種類、配合率及び各種処方で調製された抗菌・抗ウィルス剤の評価を行った。
[検討処方と配合範囲]
本実施例では、以下の検討処方と配合範囲について検討及び各種評価を行った。
ケイ素含有化合物(抗菌・抗ウィルス性の有効成分)であるオクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド(以下、ケイ素含有化合物Eまたは単に化合物Eという):0.1〜1.0重量%
α−シクロデキストリン(塩水港精糖(社)製、商品名「デキシパールα−100」):1〜7重量%
β−シクロデキストリン(塩水港精糖(社)製、商品名「デキシパールβ−100」):1重量%
γ−シクロデキストリン(塩水港精糖(社)製、商品名「デキシパールγ−100」):1〜10重量%
複合型−シクロデキストリン(塩水港精糖(社)製、商品名「デキシパールK−100」):1〜40重量%
分岐型−シクロデキストリン(塩水港精糖(社)製、商品名「イソエリートP」、主成分としてマルトシル−α−シクロデキストリン含有):1〜50重量%
溶媒:精製水
以下や図面、表において、「デキシパールK−100」、「イソエリートP」のそれぞれを便宜上「デキシパール」、「イソエリート」と呼ぶ。
[検討評価内容]
以下の各項目について、検討評価を行った。各項目の詳細については後述する。
(1)各種シクロデキストリン飽和濃度と経時的変化
(2)上記(1)における各種シクロデキストリン飽和濃度水溶液にケイ素含有化合物Eを配合(添加)したときの包接具合と経時的変化
(3)上記(2)で検討した各種処方の定性評価及び電位差滴定法評価
(4)消臭性能試験
表1〜表5には、評価用シクロデキストリン(CD)として上記各シクロデキストリンを用いて各種評価を行った結果をまとめて示している。
<CD溶解性>
表1〜表5における「CD溶解性」では、溶質であるCD単体を各表中の各配合率(各表中の「CD単体/配合率」参照)で溶媒である精製水に溶解するかどうかを評価したものである。各表中のCD溶解性における透明性とは、前記各配合率になるようにCDと精製水を順に、所定のねじ口びんに入れて密閉した状態で振とう器で撹拌することでそれぞれのCD水溶液を調製して、CD水溶液の調製直後に、CD水溶液の透明性を目視にて評価したものである。各CD水溶液において透明性を有した状態であれば「OK」、透明性を有しない状態であれば「NG」として評価した。また、各表中のCD溶解性における安定性とは、調製後の各CD水溶液を常温で所定時間放置した後、溶液の状態(沈殿・析出等の有無)を目視にて評価したものである。各CD水溶液において沈殿・析出等が無ければ安定性を有した状態(表中の「OK」)、沈殿・析出等が有れば安定性を有しない状態(表中の「NG」)として評価した。
<ケイ素含有化合物E溶解性>
各表における「化合物E溶解性」では、CD溶解性評価後の各CD水溶液に対して、さらに溶質であるケイ素含有化合物Eを各表中の各配合率(各表中の「化合物E/配合率」参照)で加えて、振とう器で撹拌することでそれぞれのCD/ケイ素含有化合物E水溶液を調製した。そうして、CD/ケイ素含有化合物E水溶液の調製直後に、CD/ケイ素含有化合物E水溶液の透明性を目視にて評価したものである。各CD/ケイ素含有化合物E水溶液において透明性を有した状態であれば「OK」、透明性を有しない状態であれば「NG」として評価した。また、各表中の化合物E溶解性における安定性とは、調製後の各CD/ケイ素含有化合物E水溶液を常温で所定時間放置した後、溶液の状態(沈殿・析出等の有無)を目視にて評価したものである。各CD/ケイ素含有化合物E水溶液において沈殿・析出等が無ければ安定性を有した状態(表中の「OK」)、沈殿・析出等が有れば安定性を有しない状態(表中の「NG」)として評価した。
<機能性評価及び経時的安定性評価>
各表における「評価」では、ケイ素含有化合物E溶解性評価後の各CD/ケイ素含有化合物E水溶液を用いて、さらに機能性評価(定性評価及び定量評価)と経時的安定性の評価(経時的変化の目視観察)を行った。
機能性評価における定性評価では所定の試験片に所定量の各CD/ケイ素含有化合物E水溶液を塗布し、当該試験片上にケイ素含有化合物Eが固定化されているかどうかをブロモフェノールブルーを用いたpH反応(色変化)を確認することにより定性的に確認した(図21参照)。この定性評価の具体的な方法としては、先ず、PP(ポリプロピレン)フィルムに試料(図21に示した例ではγ−CD1重量%+化合物E1重量%の水溶液及びγ−CD1重量%+化合物E0.1の水溶液を使用)を塗布し、乾燥後水洗いして、BPB(ブロモフェノールブルー)0.1重量%の溶液を全体に噴霧する。その後、ケイ素含有化合物EがPPフィルム表面に固定化されていれば「青色」に呈色する。図21に示した例では、BPB溶液未塗布(ブランク)のフィルムと比較して二つの試料がともに呈色しており、ケイ素含有化合物Eが表面に固定化されていることが確認できた。
また、機能性評価における定量評価では、後述する経時的安定性の評価後(3ヶ月間保存試験後)の試料(水溶液)に対して電位差滴定法評価により試料中の化合物Eの濃度(含有率)を定量的に確認した。電位差滴定法では、所定の定量分析器を用い、試料中に所定の電極を液中に入れて、希硝酸溶液等で滴定を開始する。そうして、滴定しながらその滴下量と試料の電位差の変化曲線をとり、当該変化曲線の変曲点を見つけて終点とするものである。電位差滴定法による測定結果を図22に示す。図22に示す電位差滴定法による評価結果において、ロット名称の記載として、例えば、α1E01は、α−CD(1%)+化合物E試薬(市販品0.1%)+精製水(バランス)からなる水溶液を意味する。各ロットに対応する化合物E水溶液においては、経時的安定性の評価後においても、定量結果から化合物E成分が検出されていることがはっきりと分かる。理論値から前後する数値になっているが化合物E試薬自体の純度の影響や製剤調整での誤差と考えられる。
経時的安定性の評価では、ケイ素含有化合物Eの溶解性評価後の各CD/ケイ素含有化合物E水溶液を用いて、加速試験(40℃の環境下で3ヶ月間保存する試験)及び低温試験(5℃程度の環境下で3ヶ月間保存する試験)を行い、当該各試験後、各CD/ケイ素含有化合物E水溶液の経時的安定性として溶液の状態の経時的変化(沈殿・析出等の有無)を目視にて観察して評価したものである。
<消臭性能試験>
表1〜表5における所定の試料を用いて、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸及びノネナールに対する消臭性能を試験した。以下、試験条件等を具体的に説明する。
試験項目:繊維評価技術協議会法の消臭性試験、SEKマーク繊維製品認証基準準用
(綿布に試料4mlの液体を塗布し30分−1時間乾燥後、検知管法・ガスクロマトグラフ法によって当該綿布から揮発するガス濃度を計測する評価)
対象とした臭い:アンモニア、酢酸、イソ吉草酸、ノネナール
用いた試料:試料1)化合物E0.1%+γ−CD1%+精製水98.9%試料
試料2)化合物E0.1%+γ−CD5%+精製水94.9%試料
ガス初期濃度:アンモニア 100ppm(100cm2
酢酸 50ppm(100cm2
イソ吉草酸 約38ppm(48cm2
ノネナール 約14ppm(48cm2
消臭性能の試験結果としては、図23に示すように、試料1及び試料2においては、ブランク(綿布のみ)と比較して臭いの減少率(%)が高く、ブランク(綿布のみ)との間に明らかな違いがあることから、試料1、試料2を塗布することで消臭効果が得られることが確認できた。
図1は、上記表3における「CD単体/配合率」が1%であって、「ケイ素含有化合物E/配合率」が0.1重量%から1.0重量%であるCD/ケイ素含有化合物E水溶液の状態を示したものであり、左から右にかけて「ケイ素含有化合物E/配合率」を0.1%ずつ増加させたものである。図1に示すCD/ケイ素含有化合物E水溶液(「CD単体/配合率」:1重量%)は、「化合物E/配合率」が0.1〜0.4重量%の各水溶液は比較的透明であり(表1ではOKと記載)、「化合物E/配合率」が0.5〜1.0重量%の各水溶液は白濁である(表3ではNGと記載)。
図2は、上記表3における「CD単体/配合率」が6%であって、「化合物E/配合率」が0.1重量%から0.9重量%であるCD/ケイ素含有化合物E水溶液を示したものであり、「化合物E/配合率」を0.1%ずつ増加させたものである。
図3は、上記表3における「CD単体/配合率」が7%であって、「化合物E/配合率」が0.1重量%から1.0重量%であるCD/ケイ素含有化合物E水溶液を示したものであり、「化合物E/配合率」を0.1%ずつ増加させたものである。
図4は、上記表3における「CD単体/配合率」が10%であって、「化合物E/配合率」が0.1重量%から1.0重量%であるCD/ケイ素含有化合物E水溶液を示したものであり、「化合物E/配合率」を0.1%ずつ増加させたものである。図4に示すCD/ケイ素含有化合物E水溶液(「CD単体/配合率」:10重量%)は、「化合物E/配合率」が0.1〜1.0重量%である全ての水溶液において白い沈殿物が生じている(表3ではNGと記載)。
図9〜図16は、上記表3(CDの種類:γ−シクロデキストリン)における「評価」の「経時変化3ヶ月(40℃保存試験)」に対応するものである。
(γ−CD/ケイ素含有化合物E水溶液の評価結果まとめ)
表3に示すように、「化合物E溶解性」では、γ−シクロデキストリンが1重量%で、且つケイ素含有化合物Eが0.4重量%以下であれば透明性を維持していることを確認した。また、γ−シクロデキストリンが1重量%で、且つケイ素含有化合物Eが0.5重量%以上では不透明であるが、溶液状態は安定していた。また、経時的安定性の評価においてγ−シクロデキストリンが0.6重量%以下でほぼ不変であり、γ−シクロデキストリンが10重量%以上で、ケイ素含有化合物Eと共存した形態で沈殿していることを確認した。これらの結果から結論としては、ケイ素含有化合物E水溶液において、経時的安定性が製品として要求される必須項目であるため、経時的安定性を確保できる好ましい範囲としては、γ−シクロデキストリンが1重量%以上6重量%以下で、かつケイ素含有化合物Eが1重量%以下である。また、透明性については製品設計上付加価値的な項目であり、製品として透明性が要求されるものは、適宜透明性が得られる処方となるようにγ−シクロデキストリンの配合率を適宜調整すればよい。
なお、γ−シクロデキストリンが1重量%未満においては、評価を行っていないが、γ−シクロデキストリン自体の溶解性がより良好となる範囲であるため、γ−シクロデキストリンの使用量に応じた本発明の効果が得られると推定される。
また、ケイ素含有化合物Eとγ−シクロデキストリンの重量比(ケイ素含有化合物/γ−シクロデキストリン)として好ましい範囲としては、0.1:6〜1:1である。
図5〜図8は、上記表1(CDの種類:α−シクロデキストリン)における「評価」の「経時変化3ヶ月(40℃保存試験)」に対応するものである。
(α−CD/ケイ素含有化合物E水溶液の評価結果まとめ)
表1に示すように、「化合物E溶解性」では、全体的に透明性を有していないが、α−シクロデキストリンが1重量%で、且つケイ素含有化合物Eが0.7重量%以下、及びα−シクロデキストリンが7重量%で、且つケイ素含有化合物Eが0.1〜1.0重量%であれば溶液状態の安定性を維持していることを確認した。また、経時的安定性の評価においてα−シクロデキストリンが1重量%で、且つケイ素含有化合物Eが0.7重量%以下、及びα−シクロデキストリンが7重量%で、且つケイ素含有化合物Eが0.1〜1.0重量%で安定であり、これらの結果から結論としては、ケイ素含有化合物E水溶液において、経時的安定性が製品として要求される必須項目であるため、経時的安定性を確保できる好ましい範囲としては、α−シクロデキストリンが7重量%以下で、かつケイ素含有化合物Eが1重量%以下(より好ましくは、0.7重量%以下)である。
なお、α−シクロデキストリンが1重量%未満においては、評価を行っていないが、α−シクロデキストリン自体の溶解性がより良好となる範囲であるため、α−シクロデキストリンの使用量に応じた本発明の効果が得られると推定される。
また、ケイ素含有化合物Eとα−シクロデキストリンの重量比(ケイ素含有化合物/α−シクロデキストリン)として好ましい範囲としては、0.1:7〜1:1である。
(β−CD/ケイ素含有化合物E水溶液の評価結果まとめ)
表2に示すように、「化合物E溶解性」では、ケイ素含有化合物Eの各配合率において透明性を有していないが、溶液状態の安定性を維持していることを確認した。また、経時的安定性の評価においては、不変であった。これらの結果から結論としては、ケイ素含有化合物E水溶液において、経時的安定性が製品として要求される必須項目であるため、経時的安定性を確保できる好ましい範囲としては、α−シクロデキストリンが1重量%で、かつケイ素含有化合物Eが0.1〜1重量%以下である。
なお、β−シクロデキストリンが1重量%未満においては、評価を行っていないが、β−シクロデキストリン自体の溶解性がより良好となる範囲であるため、β−シクロデキストリンの使用量に応じた本発明の効果が得られると推定される。
また、ケイ素含有化合物Eとβ−シクロデキストリンの重量比(ケイ素含有化合物/β−シクロデキストリン)として好ましい範囲としては、0.1:1〜1:1である。
図17、図20は、上記表4(CDの種類:分岐型(イソエリートP))における「評価」の「経時変化3ヶ月(40℃保存試験)」に対応するものである。
(イソエリート/ケイ素含有化合物E水溶液の評価結果まとめ)
表4に示すように、「化合物E溶解性」では、イソエリートが1〜9重量%、且つケイ素含有化合物Eが0.1重量%であれば透明性を維持していることを確認した。また、イソエリートが9重量%以下で、溶液状態は安定していた。また、経時的安定性の評価においては、イソエリートが9重量%以下で安定であり、10重量%以上で、ケイ素含有化合物Eと共存した形態で沈殿していることを確認した。これらの結果から結論としては、ケイ素含有化合物E水溶液において、経時的安定性が製品として要求される必須項目であるため、経時的安定性を確保できる好ましい範囲としては、ケイ素含有化合物Eが0.1重量%であるときは、イソエリートが1〜9重量%である。経時的安定性の評価において水溶液が不透明であったが製剤としては安定したものである。
なお、イソエリートが1重量%未満においては、評価を行っていないが、イソエリート自体の溶解性がより良好となる範囲であるため、イソエリートの使用量に応じた本発明の効果が得られると推定される。
また、ケイ素含有化合物Eとイソエリートの重量比(ケイ素含有化合物/イソエリート)として好ましい範囲としては、0.1:9〜0.1:1である。
図18〜図20は、上記表5(CDの種類:複合(デキシパールK−100))における「評価」の「経時変化3ヶ月(40℃保存試験)」に対応するものである。
(デキシパール/ケイ素含有化合物E水溶液の評価結果まとめ)
表5に示すように、「化合物E溶解性」では、デキシパールが1〜10重量%、且つケイ素含有化合物Eが0.1重量%であれば透明性を維持していることを確認した。また、デキシパールが10重量%以下で、溶液状態は安定していた。また、経時的安定性の評価においては、デキシパールが10重量%以下で安定であり、20重量%以上で、ケイ素含有化合物Eと共存した形態で沈殿していることを確認した。これらの結果から結論としては、ケイ素含有化合物E水溶液において、経時的安定性が製品として要求される必須項目であるため、経時的安定性を確保できる好ましい範囲としては、ケイ素含有化合物Eが0.1重量%であるときは、デキシパールが1〜10重量%である。経時的安定性の評価において水溶液が不透明であったが製剤としては安定したものである。
なお、デキシパールが1重量%未満においては、評価を行っていないが、デキシパール自体の溶解性がより良好となる範囲であるため、デキシパールの使用量に応じた本発明の効果が得られると推定される。
また、ケイ素含有化合物Eとデキシパールの重量比(ケイ素含有化合物/デキシパール)として好ましい範囲としては、0.1:10〜0.1:1である。
[評価結果まとめ]
以下に、上記γ−シクロデキストリンを含め、当該γ−シクロデキストリンと同様に評価を行ったシクロデキストリン類(α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、複合型、分岐型シクロデキストリン)の評価結果をまとめる。
(1)シクロデキストリンの種類によってケイ素含有化合物Eの包接状態が異なり、配合量・経時的安定性も変わることを確認した。
(2)透明性が低い状態(白濁状態)でも分離状態でなければ、包接具合は安定している(定性評価で確認)。
(3)α−シクロデキストリン1重量%溶解の場合、ケイ素含有化合物E0.1〜0.7重量%配合で経時的に安定していた。α−シクロデキストリン7重量%溶解の場合、ケイ素含有化合物E0.1〜1.0重量%配合で安定していた。
(4)β−シクロデキストリン1重量%溶解の場合、ケイ素含有化合物E0.1〜1.0%配合で経時的に安定していた。
(5)γ−シクロデキストリン6重量%以下の溶解の場合、ケイ素含有化合物E0.1〜1.0重量%配合で経時的に安定していた。γ−シクロデキストリン10重量%溶解の場合、経時的に不安定であった。
(6)分岐型CDであるイソエリートでは、イソエリート9重量%以下且つケイ素含有化合物E0.1重量%配合で経時的に安定していた。
(7)複合型CDであるデキシパールでは、デキスパール6重量%以下且つケイ素含有化合物E0.1重量%配合で経時的に安定していた。
以上の如く、本発明は、ケイ素含有化合物自体をゲスト分子としてシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体に包接させることで、ケイ素含有化合物が溶解し、かつ経時的安定性に優れた水溶液からなる抗菌・抗ウィルス剤を得ることができる。これにより、アルコール等の有機溶媒が敬遠される部分に対して抗菌・抗ウィルス性を付与することができる。さらに、シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体による消臭効果も合わせて得ることができる。
従来において、抗菌・抗ウィルス作用を有するケイ素含有化合物を溶解させるためにアルコールを配合しているのに対して、本発明の処方では、シクロデキストリンを使用することによって、ケイ素含有化合物自体をゲスト分子としてシクロデキストリン内に包接することで、ケイ素含有化合物を水に溶解させて水溶液とすることができる。これにより本発明の抗菌・抗ウィルス剤の特徴である抗菌成分の被抗菌面の固定化という特性に加えて、シクロデキストリンの消臭効果といった機能も得ることができる。

Claims (3)

  1. ケイ素含有化合物と、β−シクロデキストリンと、を含み、
    前記ケイ素含有化合物は、
    下記一般式(1)

    (式中、R1は炭素原子数10ないし25のアルキル基を示し、R2およびR3は同一または異なっていてもよい炭素原子数1ないし6の低級アルキル基を示し、R4は炭素原子数1ないし6の低級アルキレン基を示し、R5、R6およびR7は同一または異なっていてもよい炭素原子数1ないし6の低級アルコキシ基を示し、Xはハロゲンイオンまたは有機カルボニルオキシイオンを示す。)で表されるケイ素含有化合物であり、
    前記β−シクロデキストリンの配合率が0.1〜1.0重量%であるとともに、前記ケイ素含有化合物を0.1〜1.0重量%含み、
    前記ケイ素含有化合物と、前記β−シクロデキストリンとの重量比が0.1:20〜6:1.0であることを特徴とするケイ素含有化合物水溶液。
  2. 上記一般式(1)で表されるケイ素含有化合物が、オクタデシルジメチル(3−トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドであることを特徴とする請求項に記載のケイ素含有化合物水溶液。
  3. 請求項1または請求項2に記載のケイ素含有化合物水溶液を含むことを特徴とする抗菌・抗ウィルス剤。
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