JPH072615A - 抗菌性消毒剤含浸布 - Google Patents

抗菌性消毒剤含浸布

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JPH072615A
JPH072615A JP4270593A JP4270593A JPH072615A JP H072615 A JPH072615 A JP H072615A JP 4270593 A JP4270593 A JP 4270593A JP 4270593 A JP4270593 A JP 4270593A JP H072615 A JPH072615 A JP H072615A
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limonene
disinfectant
antibacterial
cloth
concentration
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JP4270593A
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English (en)
Inventor
Yoshifumi Matsuda
善文 松田
Kinji Nakai
欣司 中井
Hiroshi Ebara
博 江原
Kazuhide Momoi
一英 桃井
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HONSYU KOSAN KK
Original Assignee
HONSYU KOSAN KK
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 擦拭された被消毒部の殺菌消毒はもとより、
殺菌消毒後の被消毒部における抗菌性が持続する消毒剤
を含浸した含浸布であって、特にMRSAに対しても抗
菌性を持続し得る抗菌性消毒剤含浸布の提供。 【構成】 柑橘皮油の主成分たるD−リモネンが大腸
菌,黄色ブドー球菌,又はメチシリン耐性黄色ブドー球
菌(MRSA)等の細菌類に対しその発育を阻止する特
性、即ち抗菌性の機能があることを確認した。特に、M
RSAに対しても抗菌性が認められた。即ち、医療用殺
菌剤とリモネンとを含む消毒剤を含浸してなる抗菌性消
毒剤含浸布により、これを用いて擦拭された被消毒部の
細菌類に対する殺菌性と抗菌性とが認められた。尚、消
毒剤中のD−リモネンの含有量が0.8wt%以上の場
合には、殺菌後の抗菌性が持続される。また、1.0w
t%以上である場合には、特にMRSAに対しても有効
な抗菌効果を奏する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば細菌の発育を阻
止する特性、いわゆる抗菌性を有するリモネンの特性を
生かした抗菌性消毒剤に係り、さらに詳しくはこの抗菌
性消毒剤を含浸してなる抗菌性消毒剤含浸布に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】近年、モダシン,アジセフ,メイセリン
等の第3世代セファム系の抗生物質を多量に投与した場
合、その抗生物質に対し耐性を有するようになった細菌
の出現が問題化している。例えば抵抗力が低下している
人体に対し敗血症等を誘発し、最悪の場合致命的な影響
を及ぼすメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methic
illin−resistant Staphyloc
occus aureus:以下、MRSAと略称す
る)による病院での院内感染が大きな社会問題になって
いる。このMRSAによる症状を抑制するために、抗生
物質を更に投与したとしても有効でないのは明らかであ
る。そこで、このMRSAに対する応急措置として、病
室内の室内備品例えばドアのノブ,ベッドの手すり等
を、消毒用アルコールを含んだガーゼ等の布で拭くとい
った殺菌処理が施されている。また、一般には、アルコ
ール水溶液等の殺菌剤を不織布等に含浸させたウェット
ティッシュや便座除菌用クリーナティッシュ等も市販さ
れている。
【0003】ところで、樹木から発散される天然物たる
テルペン類は、悪臭を隠ぺいするマスキング性や種々の
生物学的特性を有することが知られている。これらのテ
ルペン類は、概して(C1016n の構造式(詳しくは
イソプレンC5 8 を基本単位とする)で表される。上
記テルペン類のうち、モノテルペンの一種であるリモネ
ン(1−Methyl−4−(1−methyleth
enyl)cyclohexene;C10 16)は光学
活性を有する天然物であって、沸点(B.P763 )17
5〜176.5℃,比重(d4 20.85)0.8402,屈
折率(nD )1.4744,引火点45℃等の物性、及
び水に不溶でアルコールに微溶等の溶解性を有してい
る。このリモネンのうち、D体はオレンジ皮油(約90
wt%含有),ミカン皮油(約90wt%含有),又は
レモン皮油(約87wt%含有)等のいわゆる柑橘皮油
に含まれており、米国のFDAテスト合格物質であって
国内でも食品添加物としての使用が認められている。な
お、上記テルペン類の生物学的特性としては、例えば殺
菌性,殺虫性,去痰性,鎮静性,利尿性,芳香性或いは
除虫性(この除虫性は所謂フィトンチッド性ともいう)
等が挙げられる。これらのうち、殺菌性には、注目すべ
きものがある。例えば、神山等は、D−リモネンを約8
7wt%含むとされるレモン皮油がフェノールと比べて
5.2倍の殺菌力を有すると報告している(出典;書籍
名“ブルーバックス「植物の不思議な力=フィトンチッ
ド」”,昭和55年4月20日発行,講談社出版)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のように特有の殺
菌性を有するにもかかわらず、従来よりリモネンは柑橘
系の香料の主用途で用いられている。例えば、米国では
一般には1940年代以降より、石ケン、洗浄剤、クリ
ームローション又は香水等の各種製品に0.005〜
1.0wt%の濃度範囲で香料として使用されてきた。
これは、このような天然物を使用しなくても、上記従来
のウェットティッシュや便座除菌用クリーナティッシュ
等に用いる殺菌剤としては、エチルアルコール,iso
−プロピルアルコール等の工業製品を用いた方が簡便で
あること、即ち天然物の場合原料の入手や量確保が困難
であると考えられていたこと、或いは組成中のリモネン
濃度が極めて高い場合は柑橘臭がきついこと等に起因し
たものである。ところで、上記殺菌剤として例えばエチ
ルアルコールの水溶液を含んだウェットティッシュを用
いて被殺菌部を擦拭すると、強力に殺菌することができ
る。しかしながら、このウェットティッシュに用いられ
るエチルアルコールは常温下又は体温下で徐々に蒸散す
るため、全量のエチルアルコールが被殺菌部から蒸散し
たのちは殺菌力がなくなる。そのため、この被殺菌部に
細菌が再付着すると細菌の増殖を防ぐことができず、い
わゆる抗菌性がほとんど持続しないという欠点があっ
た。一方、D−リモネンは、ミカン皮やレモン皮の柑橘
皮油中に多量に含まれており、ミカンジュースやレモン
ジュースの製造時に排出される柑橘皮を圧搾し蒸留する
ことにより、比較的大量且つ容易に得ることができる。
【0005】そこで、本発明者等は、従来技術のかかる
問題点を解決するため種々検討を重ねた結果、擦拭され
た被消毒部の殺菌消毒はもとより、殺菌消毒後の被消毒
部における抗菌性が長く持続する消毒剤含浸布に関して
鋭意研究を行い、細菌類、特にMRSAに対しても抗菌
性を持続し得る抗菌性消毒剤含浸布を提供するに至っ
た。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は実験を通じ
て、柑橘皮油の主成分たるD−リモネンが大腸菌,黄色
ブドー球菌,又はメチシリン耐性黄色ブドー球菌(MR
SA)等の細菌類に対しその発育を阻止する特性、即ち
抗菌性の機能があることを確認した。特に、MRSAに
対しても抗菌性が認められ、このMRSAによる社会問
題を解決し得る発明を完成した。すなわち、本発明者等
は、少なくとも医療用殺菌剤とリモネンとを含む消毒剤
を含浸してなる抗菌性消毒剤含浸布が、これを用いて擦
拭された被消毒部の細菌に対する殺菌性と抗菌性とを有
し得ることを解明したのである。また、抗菌性消毒剤含
浸布の消毒剤中のリモネンの含有量が少なくとも0.8
wt%以上である場合には、殺菌後に主としてリモネン
によって抗菌性を持続させることができる。また、より
好ましくは消毒剤全体の1.0wt%以上である場合に
は、特にMRSAに対しても有効な抗菌効果を奏するこ
とを解明した。一方、上記リモネンの含有量が多いほ
ど、リモネン自体による殺菌効果を得ることができる。
しかしながら、リモネンの含有量が多過ぎると、医療用
殺菌剤に対するリモネンの分散性が悪くなるので、例え
ば多量の乳化剤を要することや当該消毒剤からの柑橘臭
がきつく却って不快感を与えることになる。従って、リ
モネンの実用的な含有量としては、リモネン自体による
殺菌効果と乳化剤量による製造コスト等とを比較考量
し、そのときの事情に応じた量を設定するのが好まし
い。更に、上記医療用殺菌剤が常温下又は体温下にて蒸
発するものである場合、この医療用殺菌剤は被消毒部か
ら経時的に蒸散するが、この蒸散によってリモネンが濃
縮される。
【0007】
【作用】本発明にいう医療用殺菌剤としては、殺菌作用
を有する例えばエチルアルコール,iso−プロピルア
ルコール,フェノール,クレゾール,ホルマリン,ヨー
ド系等及びそれらの水溶液を挙げることができる。ま
た、本発明にいう医療用殺菌剤として更に好ましくは、
常温下又は体温下にて蒸発しこれによってリモネンが経
時的に濃縮するものがよい。上記のようなより好ましい
医療用殺菌剤としては、例えば汎用のエチルアルコール
70wt%水溶液,iso−プロピルアルコール(沸点
(常圧下)=97℃)又はその水溶液(日本薬局方)等
が挙げられる。また、これらは一般消費者向けの抗菌性
殺菌剤含浸布に用いる医療用殺菌剤としても、安全性や
取扱性の観点から好ましい。本発明にいうリモネンとし
ては、光学活性の面から分類されるD体,L体,又はD
L体のいずれを用いてもよいが、より好ましくはジュー
ス工場から排出されるミカン皮等から比較的大量且つ容
易に入手できるD−リモネンを用いるのがよい。上記リ
モネンは、いわゆる非共役型のテルペン系炭化水素であ
って、水やアルコール等に対する親和性が比較的小さく
これらの混合物は均一に分散しにくいが、これらの混合
物に対し適当量の界面活性剤を添加して均一に溶解さ
せ、この溶解液を布材に安定して含浸保持し得る量の例
えば増粘剤を、上記溶解液に添加したものを用いること
もできる。本発明の抗菌性消毒剤含浸布に用いられる布
材としては、例えば紙ティッシュ(天然パルプ製),織
布(天然又は合成繊維製),繊維質の不織布(合成繊維
製),又はスポンジ薄板等を挙げることができる。
【0008】従って、本発明による抗菌性消毒剤含浸布
を用いて被消毒部を擦拭すれば、先ず医療用殺菌剤の作
用により被消毒部が殺菌消毒される。その後、当該被消
毒部に細菌が新たに付着しても、上記医療用殺菌剤によ
り殺菌されるか又はリモネンの作用によりこの細菌の発
育が阻止される。また、医療用殺菌剤が常温下又は体温
下にて蒸発するものである場合、この医療用殺菌剤が被
消毒部から経時的に蒸散したとしても、この蒸散によっ
てリモネンが濃縮されるので、最終的には細菌の発育を
阻止し且つ殺菌作用をも有するリモネン液膜が被消毒部
に形成される。
【0009】本発明者等は、本発明の抗菌性消毒剤含浸
布の機能と社会事情との関連についても多くの研究を行
った結果、本発明の抗菌性消毒剤含浸布を広範な分野で
応用できることを見出した。例えば、皮膚の消毒用、
器具,用具,衣服等の消毒用、病院,養護施設等の
院内設備での消毒用(院内感染の蔓延阻止用)、理
容,美容施設での消毒用、公共施設での消毒用、公
共性遊戯場(例えば、パチンコ,ゲーム場等)での消毒
用として活用することができる。即ち、本発明の抗菌性
消毒剤含浸布は、これを用いて被消毒部を擦拭すれば、
医療用殺菌剤により被消毒部を確実に殺菌でき、殺菌後
は上記被消毒部に新たに付着した細菌の発育・増殖をも
阻止することもできるので、例えば社会問題と化してい
るMRSAによる院内感染の蔓延防止等に極めて有効で
ある。
【0010】
【実施例】本発明の技術内容を明確にするため、以下に
示す代表的な実施例により本発明を具体的に説明する。
尚、以下の実施例は本発明を具体化した単なる例に過ぎ
ず、本発明の技術的範囲を限定するものでないのは無論
である。
【0011】実施例1.本実施例に係る抗菌性消毒剤含
浸布は、これに含浸された消毒剤を構成する医療用殺菌
剤が強力な殺菌作用を有するため、この消毒剤を細菌類
に対する抗菌性試験用の検体としてそのまま用いると、
細菌類は培養初期に悉く死滅してしまう。そこで、医療
用殺菌剤が殺菌後に被消毒部から蒸散してリモネンが残
存した状況を想定し、リモネンのみを上記検体として用
いて細菌類を培養し、その発育を観察した。 (1)「試験概要」 リモネンとしては、D−リモネンを用い、このD−リモ
ネンを任意濃度に希釈して添加した寒天平板培地に接種
用菌液を塗抹して培養した後、菌の発育を阻止し得た最
低の任意濃度をもって最小発育阻止濃度とした。測定に
供したD−リモネンの任意濃度としては、滅菌精製水で
希釈した0.01wt%,0.1wt%及び1.0wt
%の3種類の濃度とした。 (2)「試験方法」 1)試験菌株 試験菌株としては、例えば大腸菌(Escherich
is coli IFO 12734),黄色ブドウ球
菌(Staphylococcus aureus I
FO 12732),MRSA(Methicilli
n−resistant Staphylococcu
s aureus)を用いた。 2)増菌用培地及び希釈用培地 増菌用培地及び希釈用培地としては、例えばミューラー
・ヒントン・ブロス(Mueller Hinton
Broth(Difco))を用いた。 3)感受性測定用培地 感受性測定用培地としては、例えばミューラー・ヒント
ン・ミディアム(Mueller Hinton Me
dium(Difco))を用いた。 4)感受性測定用平板の調製 ジメチルスルホキシドを溶媒として用い、検体としてD
−リモネン単体の20%(wt(溶質)/vol(溶
媒))溶液を調整した後、さらにこの溶液をもとに滅菌
精製水で2倍希釈系列液を調製した。均一に溶解させた
後、約50℃に保った上記感受性測定用培地に対し各希
釈液をそれぞれ1/9量加えて充分に混合した後、複数
のシャーレに分注し、それぞれを固化させて感受性測定
用平板とした。尚、試験対照サンプルとして検体無添加
の平板も調製した。 5)接種用菌液の調製 接種用菌液としては、各試験菌株を増菌用培地で35℃
で18〜20時間培養した後、希釈用培地を用いて菌数
が約106 /mlとなるように調製した。 6)培養 上記接種用菌液を付着させたニクロム線ループ(ループ
内径約1mm)を用いて、この接種用菌液を感受性測定
用平板に2cm程度画線塗抹し、35℃で18〜20時
間培養した。 7)判定 上記培養後に、各試験菌株の発育を観察し、発育が阻止
された最低の任意濃度をもって各試験菌株に対する最小
発育阻止濃度とした。 8)判定結果 その判定結果を以下の表1に示す。表1から明らかなよ
うに、D−リモネン濃度が、0.01wt%及び0.1
wt%の検体を用いた場合はいずれの菌についても、そ
の発育を阻止できず、抗菌性が認められなかった。しか
しながら、1.0wt%の場合はいずれの菌について
も、その発育を阻止することができ、抗菌性が認められ
た。即ち、1.0wt%のD−リモネン濃度を最小発育
阻止濃度とした。
【0012】
【表1】
【0013】上記の場合に添加量1.0wt%で最小発
育阻止濃度となるD−リモネンの特性を生かすために、
本実施例の「抗菌性消毒剤含浸布」の一例として次に示
す消毒用ウェットティッシュを製造した。 「消毒用ウェットティッシュの製造」 1)消毒剤例1. 消毒用エチルアルコール(約70wt%水溶液;日本薬
局方)に対しD−リモネンを1〜10wt%と非イオン
界面活性剤0.1〜2wt%とを添加・かき混ぜして均
一に可溶化させたものを主剤とする。この主剤に所要量
の多価アルコール(例えば、プロピレングリコール)を
添加・かき混ぜして均一に溶解させて消毒剤を調製し
た。上記多価アルコールは、調製される消毒剤の粘度を
適度に大きくして布材への保持力を適当に高める機能と
消毒用エチルアルコールの揮発を抑える機能とを有して
おり、上記所要量とはこれらの各機能を発揮するために
必要な添加量である。尚、上記多価アルコールとして
は、プロピレングリコール以外に、例えばエチレングリ
コール、グリセリン等を挙げることができる。また、上
記布材への保持力が適当であるときの消毒剤の粘度は、
例えば常温で3CPS程度である。この粘度を極度に超
えると、手がベトついて取扱性が悪くなり、それ以下で
あると、消毒剤が布材から流出する。次に、上記のよう
に調製した消毒剤を合成繊維製の不織布(布材の一例)
に十分に含浸させることにより、この実施例の消毒用ウ
ェットティッシュが得られる。ここで、上記消毒剤を含
浸させる布材としては、他に例えば、紙ティッシュ(天
然パルプ製),織布(天然又は合成繊維製),又はスポ
ンジ薄板等を用いることもできる。尚、上記実施例のD
−リモネンの添加量について、比較的少量の場合(1〜
3wt%)はD−リモネンによる抗菌作用を奏するが、
比較的多量の場合(3wt%超過)はD−リモネンによ
る抗菌作用のみならず殺菌作用をも奏することとなる。
但し、このように多量のD−リモネンを添加する場合
は、比較的多量の界面活性剤(例えば、5wt%以上)
が必要になる。
【0014】そこで、上記D−リモネンを含む消毒用ウ
ェットティッシュを用いて、被消毒部たる皮膚や器具を
擦拭すると、この消毒用ウェットティッシュに含浸して
いる消毒剤中の消毒用エチルアルコールにより皮膚や器
具が殺菌される。尚、D−リモネンの添加量が多い場合
は、上記したようにD−リモネンによっても殺菌され
る。そして、殺菌後にそのまま風乾させると、長期的に
は消毒用エチルアルコールが被消毒部から蒸散し、D−
リモネンが徐々に濃縮される。これによって、皮膚面,
器具類や衣類繊維の表面に、抗菌性はもとより殺菌性を
も有するD−リモネンの液膜が形成される。このよう
に、被消毒部のD−リモネンの液膜は、濃縮により大腸
菌、黄色ブドー球菌・MRSA等に対する殺菌・抗菌性
が次第に増大する。また、D−リモネンは常温では蒸発
しにくく被消毒部に残留するため、細菌が付着してもそ
の細菌の発育・増殖を長期間阻止することができる。更
に、リモネンは人の皮膚組織に対して保湿作用を奏する
ため、例えばこの消毒用ウェットティッシュで手指を払
拭して消毒用エチルアルコールが蒸散した後は、リモネ
ンの作用により手指がスベスベするといった快適感を与
えることができる。
【0015】2)消毒剤例2. 精製水に対しD−リモネン5wt%と非イオン界面活性
剤5wt%とを加えて均一に分散させた調合液を消毒剤
の別例とする。この消毒剤は、D−リモネンと非イオン
界面活性剤のいずれも比較的高濃度であるので、抗菌・
殺菌作用に加えて洗浄作用も併せ持つものである。但
し、上記不織布への保持力は劣る。続いて、この消毒剤
を上記不織布に十分に含浸させることにより、別例の消
毒用ウェットティッシュが得られる。そこで、この消毒
用ウェットティッシュを用いて、被消毒部を擦拭する
と、この消毒用ウェットティッシュに含浸している消毒
剤中の高濃度のD−リモネン(5wt%)により上記被
消毒部が殺菌されるとともに、D−リモネン及び非イオ
ン界面活性剤の双方の作用により洗浄される。そして、
殺菌・洗浄後にそのまま風乾させると、精製水が被消毒
部から蒸散し、D−リモネンが経時的に濃縮される。こ
れによって、先述した例の消毒剤と同様に、D−リモネ
ンの液膜が形成される。
【0016】参考例1.上記被消毒部の殺菌・抗菌効果
に加えて、当該被消毒部の汚れ落とし効果をも考慮した
場合の適用例を想定し、次に示す組成のD−リモネン含
有乳液を調製し、上記実施例1と同様に各試験菌種に対
する抗菌性を観察した。 「D−リモネン含有乳液の組成」 ・柑橘皮油(D−リモネン90wt%含有) 40.5wt% ・乳化剤A(ソルビタン脂肪酸エステル) 7.1wt% ・乳化剤B(ポリオキシエチレンソルビタン 脂肪酸エステル) 7.4wt% ・乳化剤C(ポリオキシエチレンノニル フェニルエステル) 4.1wt% ・基材(精製水=イオン交換水) 40.8wt% ・pH調製剤(重炭酸ソーダ) 0.1wt% 組成合計 100.0wt% 「D−リモネン含有乳液の調製」精製水408gに、ポ
リオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル74g,ソ
ルビタン脂肪酸エステル71g,ポリオキシエチレンノ
ニルフェニルエステル41gを加え、これらをかき混ぜ
て均一に溶解させる。次に、柑橘皮油(D−リモネン9
0wt%含有)405gを加え、粘ちょうで均一なエマ
ルジョン液になるまでかき混ぜる。このエマルジョン液
のpH値を重炭酸ソーダを用いて6〜7に調整し、上記
D−リモネン含有乳液(クレンジング乳液)を調製し
た。
【0017】(1)「試験概要」 検体としてD−リモネン単体の代わりに上記D−リモネ
ン含有乳液を用いた以外は、このD−リモネン含有乳液
を任意濃度に希釈して添加した寒天平板培地に接種用菌
液を塗抹して培養した後、菌の発育を阻止し得た最低の
任意濃度をもって最小発育阻止濃度とするのは、実施例
1と同様である。測定に供したD−リモネン含有乳液の
任意濃度として、大腸菌及び黄色ブドウ球菌について
は、滅菌精製水で希釈した0.02wt%,0.2wt
%及び2.0wt%の3種類の濃度とし、MRSAにつ
いては、滅菌精製水で希釈した0.04wt%,0.4
wt%及び4.0wt%の3種類の濃度とした。 (2)「試験方法」 尚、1)使用した試験菌株、2)使用した増菌用培地及
び希釈用培地、3)使用した感受性測定用培地は、実施
例1によるD−リモネン単体を検体として用いた場合と
同じであって、次に示すように、4)感受性測定用平板
の調製仕様が異なる。 4)感受性測定用平板の調製 滅菌精製水を溶媒として用いてD−リモネン含有乳液
(検体)の40%(wt(溶質)/vol(溶媒))溶
液を調製した後、この溶液をもとにさらに2倍希釈系列
液を調製した。これらを均一に溶解させた後、約50℃
に保った上記感受性測定用培地に対し各希釈液をそれぞ
れ1/9量加えて充分に混合した後、複数のシャーレに
分注し、それぞれを固化させて感受性測定用平板とし
た。同様に、試験対照サンプルとして検体無添加の平板
も調製した。また、5)接種用菌液の調製仕様、6)培
養仕様、7)判定手法も、実施例1によるD−リモネン
単体を検体として用いた場合と同じである。 8)判定結果 その判定結果を以下の表2に示す。表2からも明らかな
ように、大腸菌及び黄色ブドウ球菌については、D−リ
モネン含有乳液の濃度が、0.02wt%(D−リモネ
ン単体換算濃度=0.008wt%)及び0.2wt%
(D−リモネン単体換算濃度=0.08wt%)の場合
はいずれの菌についても、その発育を阻止できず、抗菌
性が認められなかった。しかしながら、2.0wt%
(D−リモネン単体換算濃度=0.8wt%)の場合
は、その発育を阻止することができ、抗菌性が認められ
た。即ち、大腸菌及び黄色ブドウ球菌については、2.
0wt%のD−リモネン含有乳液濃度(D−リモネン単
体換算濃度=0.8wt%)を最小発育阻止濃度とし
た。
【0018】一方、MRSAについては、D−リモネン
含有乳液の濃度が、0.04wt%(D−リモネン単体
換算濃度=0.016wt%)及び0.4wt%(D−
リモネン単体換算濃度=0.16wt%)の場合は、そ
の発育を阻止できず、抗菌性が認められなかった。しか
し、4.0wt%(D−リモネン単体換算濃度=1.6
wt%)の場合は、その発育を阻止することができ、抗
菌性が認められた。即ち、MRSAについては、4.0
wt%のD−リモネン含有乳液濃度(D−リモネン単体
換算濃度=1.6wt%)を最小発育阻止濃度とした。
【0019】
【表2】
【0020】尚、本参考例のD−リモネン含有乳液を不
織布(消毒用ウェットティッシュ基布)にスプレーで吹
きつけて含浸させた後、この含浸した消毒用ウェットテ
ィッシュで被消毒部を擦拭するようにしてもよい。即
ち、D−リモネン含有乳液は、水系ミセル内での汚染物
への転移性並びに溶解性が良好であるので汚れ落としの
効果が比較的良く、被消毒部の殺菌と殺菌後の抗菌性を
有するのは勿論のこと、衛生面と清掃面の両面で効果を
発揮する。
【0021】また、上記参考例では、D−リモネン含有
乳液中の柑橘皮油濃度を40.5wt%とした例を示し
たが、表2の試験結果からも明らかなように、上記柑橘
皮油の添加量を例えば4.0wt%程度にした場合で
も、MRSAに対しても抗菌性のある乳液を得ることが
できる。このように柑橘皮油の濃度が4.0wt%程度
である場合は、基材(精製水)に対する相溶性の面から
少ない添加量の乳化剤で済むこと、D−リモネン自体の
可燃性による危険度を小さくできること、或いは製品洗
剤から発せられるD−リモネン特有の臭気がきつくなく
芳香であること等の利点をも有することとなる。
【0022】以上述べたように、上記実施例の消毒用ウ
ェットティッシュに含浸される消毒剤、又は上記参考例
のD−リモネン含有乳液は、リモネンを香料の主用途と
して用いるのではなく、比較的容易且つ多量に入手し得
る柑橘皮油(D−リモネンを多量含有)が備えたフィト
ンチッド性(植物が本来有する虫や菌を滅殺したり寄せ
つけたりしない特性)の優れた殺菌性及び抗菌性と、人
体に対する安全性とを活用したものであって、例えば予
防衛生材として好適である。尚、消毒用ウェットティッ
シュに限らず、予防衛生用のナフキン,おしぼり等とし
ても適用できる。
【0023】
【発明の効果】本発明は抗菌性消毒剤含浸布に係るもの
であって、これを用いて擦拭された被消毒部の殺菌性及
び抗菌性を奏するのはもとより、殺菌消毒後の被消毒部
における抗菌性を比較的長期間持続し得る消毒剤含浸布
に関するものである。従って、本発明の抗菌性消毒剤含
浸布の実現によって、家庭内から病院内に至るまで広範
囲に亘り細菌類に対する殺菌・抗菌効果を奏することが
でき、特に近年社会問題化しているMRSAに対する殺
菌・抗菌効果は絶大である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 桃井 一英 和歌山県和歌山市小雑賀2丁目5番115号 本州興産株式会社内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも医療用殺菌剤とリモネンとを
    含む消毒剤を含浸してなる抗菌性消毒剤含浸布。
  2. 【請求項2】 上記リモネンが上記消毒剤全体の少なく
    とも0.8wt%以上含まれてなる請求項1に記載の抗
    菌性消毒剤含浸布。
  3. 【請求項3】 上記医療用殺菌剤が常温下又は体温下で
    蒸発するものである請求項1又は請求項2のいずれかに
    記載の抗菌性消毒剤含浸布。
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