(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る油圧緩衝器1の正面図である。図2は、実施形態1に係るダンパーD1の斜視図である。図3は、実施形態1に係る外装部品G1の分解斜視図である。図4は、図1に示すS部の油圧緩衝器1の縦断面図である。
図1〜図4を参照し、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、以下の説明において、その油圧緩衝器に対面した場合のユーザーにとっての上下方向をそれぞれ車体側及び車軸側として説明する。
図1に示すように油圧緩衝器1は、シリンダ10、拡径部11、ピストンロッド20、車体側取付部材24及び車軸側取付部材21から成るダンパーD1と、バネ受け部22、バネ2、プロテクタ13、バネガイド50、シリンダガイド40、バネ調整部30及びキャップ37から成る外装部品G1とから構成される。
この油圧緩衝器1は、ダンパーD1と、ダンパーD1におけるシリンダ10を囲むように嵌挿されるバネ2とが一体化されてクッションユニットを構成し、このクッションユニットが、車体(図示しない)と車軸(図示しない)との間に配置される。バネ2が車輪及び車軸を介して路面からの衝撃力を吸収し、ダンパーD1がバネ2の振動を抑制し、車体を制振させる。
図4に示すように、ダンパーD1は、軸方向に延長されると共に車体側端部近傍に取り付けられる拡径部11を有する円筒形状のシリンダ10と、シリンダ10内に摺動可能に嵌装されるピストン60と、車体側の端部がピストン60に連結されると共に車軸側の端部がシリンダ10の外部に延出されたピストンロッド20と、シリンダ10の車体側の端部に取り付けられた車体側取付部材24と、シリンダ10の車軸側の端部に取り付けられた車軸側取付部材21とを備える。またシリンダ10内は、作動油が充填される。
外装部品G1は、シリンダ10及びピストンロッド20を囲むように設けられたバネ2と、ピストンロッド20の車軸側端部に設けられると共にバネ2の車軸側端部を支持するバネ受け部22と、バネ2の車体側に取付けられると共に、シリンダ10の径方向内側に突出された少なくとも一つの突出部53を有するバネガイド50と、その外周にシリンダ10の軸方向に切り欠かれた少なくとも一つの溝部42と溝部42以外の該外周に軸方向に設けられた螺子部43とを有すると共にシリンダ10の外周に取り付けられたシリンダガイド40と、その内周に螺子部34を有すると共に、バネガイド50の車体側端部に当接されることによりバネ2の全長をバネ受け部22との間で調整するバネ調整部30と、バネ調整部30の車体側端部に取り付けられるキャップ37とを備える。
このシリンダ10内においては、ピストン60が、上下の二つの空間に区画する。ここで、ピストン60よりも上側の空間は、オイルが溜まる油室71の一部を構成し、ピストン60よりも下側の空間はオイルが溜まる油室72となる。
油室71内における下側の空間でありオイルが収容される部分はオイル収容部711となり、油室71内における上側の空間であり空気が収容される部分は空気収容部712となる。この空気収容部712は、ピストン60が車体側へ移動したときに、ピストンロッド20の体積分のオイルを体積補償する体積補償室としても機能する。
ピストン60は、複数の油路を有する円筒状の部材である。ピストン60の外周面には、シリンダ10の内周面との間をシールするピストンリング63が嵌め込まれるリング溝64が形成されている。このリング溝64に嵌め込まれたピストンリング63が、油室71と油室72とのオイルの流れを封止する。
また、ピストン60は、油室71と油室72とを連通する油路61及び油路62とを備える。また、ピストン60は、油路61上において、油室71から油室72へのオイルの流れを許容すると共に油室72から油室71へのオイルの流れを阻止するチェック弁61aと、オイルの流れを制限する絞り弁61bとを備える。さらに、ピストン60は、油路62上において、オイルの流れを制限する絞り弁62bと、油室72から油室71へのオイルの流れを許容すると共に油室71から油室72へのオイルの流れを阻止するチェック弁62aとを備える。
図2に示すように、シリンダ10の車体側の外周には、円環状の拡径部11が形成される。拡径部11は、後述のシリンダガイド40の車体側への移動を規制するものであり、シリンダ10の外周に沿って環状に形成される環状部11aと、この環状部11aから車軸側に向かって突出する突出部11bとを備える。この拡径部11は、例えば、溶接等によりシリンダ10に固定される。しかし、これに限定されることなく、拡径部11は、シリンダ10と一体的に形成されていてもよい。
また、シリンダ10の車軸側の外周には、溝15a及び溝15bが形成される。ストッパリング13aが溝15aに嵌め込まれると共にストッパリング13bは溝15bに嵌め込まれ、円環状のプロテクタ13を挟持する。このプロテクタ13は、走行中においてバネ2が水平方向に振動した場合に、バネ2がシリンダ10へ接触し、シリンダ10の損傷を防止する保護部材である。
本実施形態では、プロテクタ13が設けられたダンパーを用いたが、プロテクタ13が設けられないダンパーを用いてもよい。
シリンダ10の開口側端部には、ロッドガイド(図示しない)がストッパリング(図示しない)によって固定されるとともに、このロッドガイドを覆うようにしてエンドプレート12が嵌挿される。また、このロッドガイドには、必要に応じてオイルシール(図示しない)とダストシール(図示しない)が装着されて、液密に保持される。
ピストンロッド20の車軸側の端部には、車軸取付部材としての車軸側取付部材21が設けられる。車軸側取付部材21は、径方向に貫通された取付孔21aを有すると共に、取付孔21aの上部に車体側が開口する有底の略円筒状の筒体が取り付けられる。この車軸側取付部材21は、該筒体の内周に螺子部があり、該筒体の螺子部をピストンロッド20の車軸側の端部の外周に形成された螺子部に螺合させることにより、ピストンロッド20に取り付けられる。
ピストンロッド20の車軸側には、径方向外側に膨出する円盤状の部材であり、切り欠きを有するバネ受け部22が取り付けられる。このバネ受け部22は、バネを支持する為の部材であり、ピストンロッド20の外周に形成される。このバネ受け部22に切り欠きがあることで、バネ受け部22を径方向にピストンロッド20に嵌め込むことができる。これにより、バネ受け部22がダンパーD1に取り付けられる。
シリンダ10の車体側には、車体取付部材としての車体側取付部材24が設けられる。この車体側取付部材24は、径方向に貫通する取付孔24aを有すると共に、他端側が開口する有底円筒の筒体であって、該筒体の内周にねじ部を有し、この筒体をシリンダ10の上端外周に形成された螺子部に螺合させてシリンダ10の車体側端部に取り付けられる。取付孔24aは、径方向に貫通する貫通孔として、車体側取付部材24の上部に形成される。
図1〜図3に示すように、バネ2は、その下端がバネ受け部22の上面に着座し、車体側に向かってシリンダ10を取り囲むように螺旋状に延長される。バネ2の上端は、後述のバネガイド50の鍔部52の下面52aに着座する。
バネ2は、バネ受け部22の上面22aとバネガイド50の鍔部52の下面52aとの間に挟みこまれ、バネ受け部22の上面22a及びバネガイド50の鍔部52の下面52aにより回転可能に支持されている。
シリンダ10の車体側の上部外周には、軸方向の両端が開口する筒状のバネ調整部30が配置される。このバネ調整部30は、後述のバネガイド50の一端に当接されることによりバネ2の全長をバネ受け部22との間で調整するための部材である。バネ調整部30は、例えば樹脂で形成され、その内周の下端には軸方向に螺子部34が形成される。この螺子部34は、径方向内側に突出しており、後述のシリンダガイド40の螺子部43と螺合する。また、バネ調整部30の車体側開口端にはキャップ37が圧入される。
また、このバネ調整部30の外周には、手動での回転操作が可能となる操作部31を有する。この操作部31は、図3に示すように、例えば、バネ調整部30の外周に沿って複数箇所の窪みを有すると共に、該窪みが軸方向に延長される。この操作部31に窪みがあることにより、バネ調整部30は、手で掴み易く、バネ調整部30の操作部31を手で持って回転させることが可能となり、バネの反力をより調整しやすくなる。
さらに、図4に示すように、バネ調整部30の内壁の下方には、当接面32に向かって傾斜する連通路33が形成される。連通路33は、バネ調整部30の内部から傾斜しつつ外部に連通している。このため、バネ調整部30とシリンダ10の外周の隙間から入った雨水を連通路33より容易に外部に排水することができる。また雨水だけでなく、隙間に入ったゴミや埃も雨水と共に連通路33より容易に外部に排出できるのも勿論である。
バネ調整部30の下側において、円筒状のシリンダガイド40がシリンダ10に嵌挿されている。シリンダガイド40の車体側の端部から車軸側の端部まで軸方向に螺子部43が形成される。図4に示すように、この螺子部43は、バネ調整部30の螺子部34と略同径であるので、バネ調整部30とシリンダガイド40は回転自在に螺合する。すなわち、バネ調整部30を軸方向において上下自在に移動させることができる。
シリンダガイド40はバネガイド50の内周に挿入される円筒状の部材であり、車体側の端部の外周には拡径部11の突出部11bと嵌合する凹部41が形成される。凹部41は、シリンダガイド40の車体側の端部から車軸側に向かって切り欠かれ、例えば、径方向に一対に対向配置される。この凹部41は、シリンダ10の拡径部11の突出部11bに嵌合されて、シリンダガイド40をシリンダ10に取り付けるためのものである。このため、凹部41は、突出部11bの数に合わせて、少なくとも1つあればよい。
また、シリンダガイド40の外周には、例えば、車体側の端部から車軸側の端部まで軸方向に切り欠かれた少なくとも一つの溝部42が形成される。この溝部42は、凹部41から所定の間隔を隔てて形成され、後述のバネガイド50の突出部53と嵌合される。また、シリンダガイド40は、溝部42以外の外周に軸方向に設けられた螺子部43が形成されている。
本実施形態では、溝部42はシリンダガイド40の外周の車体側端部から車軸側端部まで軸方向に切り欠かれているので、車体側又は車軸側のどちらからでもバネガイド50をシリンダガイド40に取付けることができる。
シリンダガイド40の外周には、バネ2の上端を支持するバネガイド50が嵌挿される。すなわち、バネガイド50はシリンダガイド40を介してシリンダ10に取付けられる。バネガイド50は、シリンダガイド40の外径よりも大きい内径を有する。またバネガイド50は、バネ2の内径よりも小さい外径を有する円筒部51と、円筒部51の車体側端部から径方向外側に拡径されると共にバネ2の外径とほぼ同じ外径を有する鍔部52と、鍔部の内周においてシリンダ10の径方向内側に突出する突出部53とを備える。円筒部51がシリンダガイド40と重なり合うように嵌挿され、突出部53はシリンダガイド40の溝部42に嵌合され、鍔部52の上面52bがバネ調整部30の当接面32に当接している。鍔部52の下面52aは、バネ2の車体側端部と当接してバネ2を回転可能に支持する。このバネガイド50の突出部53は、複数あってもよいが、シリンダガイド40の溝部42と嵌合させるために、シリンダガイド40の溝部42の数と同じ数か溝部42の数よりも少ない数で形成されるのは勿論である。
このような構成を採用することにより、倒立型の油圧緩衝器において、走行中にバネ2が回転した場合であっても、バネガイド50の鍔部52により、バネ2の回転力をバネ調整部30に伝えることはない。すなわち、バネ2の回転によって、バネ調整部30は供回りすることはないので、走行前に設定した初期荷重を維持することができる。
また、シリンダガイド40の凹部41は拡径部11の突出部11bと係合し、バネ調整部30の内周の螺子部34とシリンダガイド40の螺子部43とが螺合されているので、バネ調整部30を周方向に回転させるだけでバネ調整部30を軸方向に移動させ、バネ調整部30とバネ受け部22の間に介装されたバネ2の全長を簡易に変化させ、バネ2の反力を変化させることができる。すなわち、特殊な工具を要せず、バネ調整部30の回転により、バネガイド50を介してバネ2の全長を変化させてバネ2の反力を調整し、バネの初期設定荷重を簡易に調整することができる。
図5は、実施形態1に係る油圧緩衝器1の作製手順を示す図である。以下に、図5(a)〜図5(e)を参照して、実施形態1に係る油圧緩衝器1の作製手順について詳述する。
図5(a)に示すように、ダンパーD1においては、車軸側取付部材21がダンパーD1に対して最初から取り付けられている。これは、例えば、ピストンロッド20の車軸側端部近傍に螺子部が形成され、車軸側取付部材21の内部に車体側から車軸側に向かって螺子部が形成されることにより、ピストンロッド20の車軸側と車軸側取付部材21の車体側を螺合させて一体化されている。しかし、これに限定されることなく、ピストンロッド20と車軸側取付部材21とは、溶接によって取り付けられていてもよい。車体側取付部材24も車軸側取付部材21と同様な方法でダンパーD1に取り付けられる。ここでは、車軸側取付部材21及び車体側取付部材24の詳細な取り付け手順は割愛する。
上記のようなダンパーD1において、ピストンロッド20が挿入されたシリンダ10の車軸側の外周に突出部11bが車軸側を向くように環状部11aを嵌挿させ、例えば溶接により拡径部11をシリンダ10に固定する。
次に、図5(b)に示すように、凹部41が車体側を向くように、シリンダガイド40をシリンダ10に対して車軸側から挿入し、シリンダ10に固定された拡径部11の突出部11bとシリンダガイド40の凹部41とを嵌合させる。これにより、シリンダ10にシリンダガイド40を取り付ける。
次に、図5(c)に示すように、シリンダ10に対して車軸側からバネ調整部30を嵌挿して、バネ調整部30の螺子部34をシリンダガイド40の螺子部43に螺合させる。しかし、これに限定されることなく、シリンダガイド40の螺子部43にバネ調整部30の螺子部34を螺合させた状態で、シリンダ10に対して車軸側からシリンダガイド40を嵌挿し、拡径部11の突出部11bとシリンダガイド40の凹部41とを嵌合させてもよい。その後、バネ調整部30の車体側の開口部に車体側からキャップ37を圧入する。
次に、図5(d)に示すように、シリンダ10に対して車軸側からバネガイド50を嵌挿して、バネガイド50の突出部53をシリンダガイド40の溝部42に嵌合させる。このとき、バネガイド50の鍔部52がバネ調整部30の当接面32に当接されるまで、バネガイド50を車体側へと移動させる。
次に、図5(c)及び(d)に示すように、シリンダ10に対して車軸側からストッパリング13aを挿入してシリンダ10の外周の車軸側に形成された溝15aに嵌め込む。次に車軸側からシリンダ10の外周に円環状のプロテクタ13を挿入し、ストッパリング13aと同様にストッパリング13bを挿入して溝15bに嵌め込む。従って、軸方向の両側からストッパリング13a、13bにより挟み込むことでプロテクタ13をシリンダ10に対して取り付ける。
次に、図5(e)に示すように、バネ2の車体側の端部を鍔部52の下面52aに当接させるようにシリンダ10に対して車軸側から挿入すると共にピストンロッド20に対してバネ受け部22を径方向に嵌め込む。これにより、バネ2はバネガイド50の鍔部52及びバネ受け部22の上面22aにより支持される。
(実施形態2)
図6は、実施形態2に係る油圧緩衝器100の正面図である。図7は、実施形態2に係る油圧緩衝器100の作成手順を示す図である。
図6及び図7を参照して、本発明の実施形態に係る他の構成について説明する。実施形態2に係る油圧緩衝器100の各構成部品の形状や機能は、上述の実施形態1に係る発明の構成部品と同じであるので詳細は割愛する。油圧緩衝器101は、シリンダ110、ピストンロッド120及び車体側取付部材123から成るダンパーD2と、ストッパリング113、バネ受け部121、バネ102、バネガイド150、シリンダガイド140、バネ調整部130及び車軸側取付部材124から成る外装部品G2から構成される。
図6、7に示すように、ダンパーD2は、軸方向に延長される円筒形状のシリンダ110と、シリンダ110内に摺動可能に嵌装されるピストン(図示しない)と、車体側の端部が該ピストンに連結されると共に車軸側の端部がシリンダ110の外部に延出されたピストンロッド120と、シリンダ110の車体側の端部に取り付けられた車体側取付部材123と、ピストンロッド120の車軸側の端部近傍に取り付けられた六角ナット127とを備える。またシリンダ110内は、作動油が充填される。なお、実施形態2に係る油圧緩衝器100のピストンの詳細な構成は、図示していないが、例えば、図4に示す実施形態1に係る油圧緩衝器1のピストン60と同じ構成をしていてもよく、ここでは割愛する。
外装部品G2は、シリンダ110及びピストンロッド120を囲むように設けられたバネ102と、シリンダ110の車体側近傍の外周に設けられると共にバネ102の車体側端部を支持するバネ受け部121と、バネ102の車軸側に取付けられると共にシリンダ110の径方向内側に突出された少なくとも一つの突出部153を有するバネガイド150と、その外周にシリンダ110の軸方向に切り欠かれた少なくとも一つの溝部142と溝部142以外の該外周に軸方向に設けられた螺子部143とを有すると共にシリンダ110の外周に取り付けられたシリンダガイド140と、その内周に螺子部134を有すると共に、バネガイド150の車軸側端部に当接されることによりバネ102の全長をバネ受け部121との間で調整するバネ調整部130と、シリンダ110の車体側の端部近傍に取り付けられたストッパリング113と、シリンダ110の車軸側端部に取り付けられた車軸側取付部124とを備える。
図7に示すように、車体側取付部材123の下方におけるシリンダ110の外周には溝115が周方向に形成される。溝115には、円環状のストッパリング113が嵌め込まれ、シリンダ110に固定される。シリンダ110に固定されたストッパリング113は、シリンダ110の外周よりも径方向外側に膨出する。
バネ受け部121は、その内周に径方向に突出されたストッパリング受け部121aが周方向に形成されている。このバネ受け部121は、シリンダ110に対して車軸側から嵌挿されて、バネ受け部121のストッパリング受け部121aが、ストッパリング113に突き当たることにより、車体側への移動が制止される。
またバネ受け部121は、バネ102の車体側端部を支持する部材である。バネ102は、シリンダ110の車軸側端部から嵌挿され、バネ102の車体側端部がバネ受け部121の下面121bに着座する。このため、バネ受け部121は、ストッパリング113とバネ102とにより軸方向の移動が規制される。
シリンダガイド140を介してシリンダ110に嵌挿されるバネガイド150は、後述のシリンダガイド140の外径よりも大きい内径を有し、かつバネ102の内径よりも小さい外径を有する円筒部151と、円筒部151の車軸側端部から径方向外側に拡径し、バネ102の外径とほぼ同じ外径を有する鍔部152と、鍔部152の内周において軸方向に延長し径方向内側に突出する突出部153とを備える。バネガイド150は、円筒部151を車体側に向けたままシリンダ110に嵌挿され、鍔部152の上面152aがバネ102の車軸側端部に当接する。すなわち、バネ102は、バネ受け部121の下面121bと鍔部152の上面152aとの間に挟持される。
シリンダガイド140は、バネガイド150の内周に挿入される円筒状の部材であり、その外周には、軸方向に螺子部143が形成され、後述の車軸側取付部材124の突出部124dと嵌合する凹部141が形成される。凹部141は、シリンダガイド140の車軸側の端部から車体側に向かって切り欠かれ、例えば、径方向に一対に対向配置される。この凹部141は、後述の車軸側取付部材124の車体側端部の突出部124dに嵌合されて、シリンダガイド140をシリンダ110に取り付けるためのものである。このため、凹部141は、突出部124dの数に合わせて、少なくとも1つあればよい。
また、シリンダガイド140の外周には螺子部143に軸方向に切り欠かれた溝部142が形成される。この溝部142は、凹部141から所定の間隔を隔てて形成され、バネガイド150の突出部153と嵌合する。すなわち、シリンダガイド140は、溝部142以外の外周に軸方向に設けられた螺子部143が形成されている。シリンダガイド140は、溝部142をバネガイド150の突出部153に嵌合させつつ、シリンダ110の車軸側から嵌挿される。
本実施形態では、溝部142はシリンダガイド140の外周の車体側端部から車軸側端部まで軸方向に切り欠かれているので、車体側又は車軸側のどちらからでもバネガイド150をシリンダガイド140に取付けることができる。
シリンダ110の車軸側の端部外周には、軸方向の両端が開口する筒状のバネ調整部130が設けられる。このバネ調整部130は、後述のバネガイド150の他端に当接されることによりバネ102の全長をバネ受け部121との間で調整するための部材である。このバネ調整部130は、例えば樹脂等で形成され、その内周の車体側端部近傍には軸方向に螺子部134が形成される。この螺子部134により、バネ調整部130は後述のシリンダガイド140の螺子部143と螺合する。バネ調整部130の当接面132は、鍔部152の下面152bと当接する。
また、このバネ調整部130の外周には、手動での回転操作が可能となる操作部131を有する。この操作部131は、図7に示すように、例えば、バネ調整部130の外周に沿って複数箇所の窪みを有すると共に、該窪みが軸方向に延長される。この操作部131に窪みがあることにより、バネ調整部130は、手で掴み易く、バネ調整部130の操作部131を手で持って回転させることが可能となり、バネの反力をより調整しやすくなる。
さらに、バネ調整部130は、車体側から車軸側に向かって内周と外周とが連通される連通路(図示しない)が形成されていてもよい。該連通路は、バネ調整部130の内周と外周とが連通されているので、バネ調整部130内に溜まった雨水を排出し、その雨水と共にバネ調整部130の内側に溜まったゴミや埃も外側に排出することができる。この雨水やゴミ等の排出路は、連通路に限定されることなく、シリンダ110とバネ調整部130との隙間から雨水やゴミ等を排出してもよいことは勿論である。
車軸側取付部材124は、取付孔124aを有すると共に、上面124bに形成された螺孔124cをピストンロッド120の車軸側の端部の外周に形成された螺子部120aに螺合させて取り付けられる。取付孔124aは、シリンダ110の径方向に貫通する貫通孔として、車軸側取付部材124の下端側に形成される。上面124bには径方向に延長すると共に車体側に突出する突出部124dが形成される。突出部124dは、シリンダガイド140の凹部141と嵌合し、シリンダガイド140の周方向への回転を制限する部材である。また、螺孔124cは突出部124dの中央を貫通する孔である。車軸側取付部材124は、バネ調整部130の車軸側開口部を封止するキャップとしての機能も担う。なお、車軸側取付部材124は、ピストンロッド120の螺合部120aに螺合される後述の六角ナット127と当接し固定される。
実施形態2に係る油圧緩衝器100では、バネ102のシリンダ110への衝突を防止し、シリンダ110の損傷を防止するプロテクタを用いなかったが、該プロテクタを装着してもよいことは勿論である。
このような構成を採用することにより、走行中にバネ102が回転した場合であっても、バネガイド150の鍔部152によりバネ102の回転力をバネ調整部130に伝えることはない。すなわち、バネ102の回転によって、バネ調整部130が供回りすることはないので、走行前に設定した初期荷重を維持することができる。
また、バネ調整部130の内周の螺子部134とシリンダガイド140の螺子部143とが螺合されているので、バネ調整部130を周方向に回転させるだけでバネ調整部130を軸方向に移動させ、バネ調整部130とバネ受け部121の間に介装されたバネ102の全長を簡易に変化させ、バネ102の反力を変化させることができる。すなわち、特殊な工具を要せず、バネ調整部130の回転により、バネガイド150を介してバネ102の全長を変化させてバネ102の反力を調整し、バネ102の初期設定荷重を容易に調整することができる。
以下に、図7を参照して、本実施形態に係る油圧緩衝器101の作製手順について詳述する。図7(a)に示すように、ダンパーD2において、シリンダ110に対して、車体側の端部にピストン(図示しない)が設けられたピストンロッド120を挿入し、車体側取付部材123をシリンダ110の車体側の端部に取り付ける。ここで、シリンダ110と車体側取付部材123との取り付けは、螺合であっても溶接であってもよい。
次に、六角ナット127をピストンロッド120の螺子部120aに螺入する。
次に、ストッパリング113をシリンダ110の車体側又は車軸側のいずれか一方から嵌挿し、溝115に嵌め込み固定する。
次に、バネ受け部121をシリンダ110の車体側又は車軸側から嵌挿し、バネ受け部121をバネ受け部121のストッパリング受け部121aがストッパリング113に突き当たるまで車体側へ移動させる。
次に、バネ102をシリンダに対して車軸側から嵌挿し、バネ102の車体側の一端をバネ受け部121に着座させ、バネガイド150の円筒部151が車体側を向くようにバネガイド150を車軸側から嵌挿させ、バネガイド150の鍔部152をバネ102の車軸側端部に当接させる。
次に、バネガイド150の突出部153にシリンダガイド140の溝部142を嵌合させつつ、シリンダガイド140をシリンダ110に対して車軸側から嵌挿して車体側へ移動させ、バネガイド150の内周側にシリンダガイド140を取り付ける。
次に、バネ調整部130の螺子部134をシリンダガイド140の螺子部134に螺合させつつ、バネガイド150の鍔部152の下面152bにバネ調整部130の当接面132に当接するまで車体側へ移動させる。このとき、シリンダガイド140の螺子部143にバネ調整部130の螺子部134を螺合させたまま、シリンダガイド140をバネガイド150に取り付けてもよい。
ここで、六角ナット127は、既にピストンロッド120に取り付けられているが、この段階で、六角ナット127をピストンロッド120の螺子部120aに螺入してもよい。
次に、バネ102又はバネ調整部130を車体側に移動させて、バネ102を車体側に収縮させ、車軸側取付部材124をピストンロッド120の車軸側端部の螺子部120aに螺入し、六角ナット127を車軸側へ回転させて締め付けることにより、ピストンロッド120と車軸側取付部材124とを固定する。
次に、ピストンロッド120に固定された車軸側取付部材124を周方向に回転させつつ、シリンダ110に取り付けられているシリンダガイド140の凹部141と車軸側取付部材124の突出部124dとを嵌合させる。
最後に、バネ102又はバネ調整部130を車軸側に移動させて、収縮させていたバネ102を車軸側へ移動させることにより、図7(b)に示す油圧緩衝器100を作製する。
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、以下に示すように構成しても良い。
上述のシリンダガイド40の溝部42及びシリンダガイド140の溝部142は、車体側端部から車軸側端部まで軸方向に切り欠かれているが、車体側の端部から軸方向に所定長で切り欠かれるようにしてもよい。このように構成することで、シリンダガイド40の溝部42及びシリンダガイド140の溝部142は、車体側の端部から軸方向に所定の長さで切り欠かれているので、シリンダガイドの車体側の端部からバネガイド50又はバネガイド150を嵌合させて、シリンダガイド40又はシリンダガイド140とバネガイド50又はバネガイド150を取付けることができる。また、例えばシリンダガイド40の溝部42又はシリンダガイド140の溝部142が、車体側の端部から軸方向に車軸側の端部まで到達しない所定の長さであった場合には、車軸側への移動はバネガイド50又はバネガイド150を所定の長さ移動した後、制止させることができる。このため、バネ調整部30又はバネ調整部130もバネガイド50又はバネガイド150と同様に車軸側への移動は所定の長さで制止できる。これにより、バネ調整部30及びバネ調整部130の車軸側への脱落を防止することができる。
上述のシリンダガイド40の溝部42及びシリンダガイド140の溝部142は、車体側端部から車軸側端部まで軸方向に切り欠かれているが、車軸側の端部から軸方向に所定長で切り欠かれるようにしてもよい。このように構成することで、シリンダガイド40の溝部42及びシリンダガイド140の溝部142は、車軸側の端部から軸方向に所定の長さで切り欠かれているので、シリンダガイドの車軸側の端部からバネガイド50又はバネガイド150を嵌合させて、シリンダガイド40又はシリンダガイド140とバネガイド50又はバネガイド150を取付けることができる。また、例えばシリンダガイド40の溝部42又はシリンダガイド140の溝部142が、車軸側の端部から軸方向に車体側の端部まで到達しない所定の長さであった場合には、車体側への移動はバネガイド50又はバネガイド150を所定の長さ移動した後、制止させることができる。このため、バネ調整部30又はバネ調整部130もバネガイド50又はバネガイド150と同様に車体側への移動は所定の長さで制止できる。これにより、バネ調整部30及びバネ調整部130の車体側への脱落を防止することができる。
上述のシリンダガイド40の溝部42及びシリンダガイド140溝部142は、車体側端部から車軸側端部まで軸方向に切り欠かれているが、シリンダガイド40の溝部42及びシリンダガイド140の溝部142は、その外周における車軸側の端部と車体側の端部との間に所定の長さで切り欠かれていてもよい。これによれば、シリンダガイド40の溝部42及びシリンダガイド140の溝部142は、その外周における車軸側の端部と車体側の端部との間に所定の長さで切り欠かれているので、車体側にも車軸側にもバネガイド50又はバネガイド150を所定の長さ移動した後、制止させることができる。このため、バネ調整部30又はバネ調整部130もバネガイド50又はバネガイド150と同様に車体側及び車軸側への移動は所定の長さで制止できる。これにより、バネ調整部30及びバネ調整部130の車体側及び車軸側への脱落を防止することができる。
上述のバネガイド50及びバネガイド150は、金属部材を用いて形成しているが、弾性を有する樹脂で形成されていてもよい。例えば、フェノール樹脂(PF)、メラミン樹脂(MF)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリエチレンテレフタレート(PET)等を用いてもよい。
例えば、断面視で円形状のシリンダガイド40、140と、断面視で楕円形状のバネガイド50、150において、シリンダガイド40、140の直径とバネガイド50、150の短径が同じであり、特にバネガイド50、150が、径方向に変形可能な樹脂であった場合には、バネガイド50、150は、径方向に一端広げて短軸の長さをシリンダガイド40、140の直径よりも長くすることができる。このとき、シリンダガイド40、140の溝部42、142の位置にバネガイドの突出部53、153の位置を合わせて、その広げた力を開放すれば、シリンダガイド40、140の溝部42、143にバネガイドの突出部53、153を嵌合させることができる。従って、例えば、シリンダガイド40、140の溝部42、142が、シリンダガイド40、140の車体側端部と車軸側端部との間に設けられている場合であっても、バネガイド50の突出部53をシリンダガイド40の溝部42に嵌合させ、バネガイド150の突出部153をシリンダガイド140の溝部142に嵌合させて、バネガイド50、150をシリンダガイド40、140に取り付けることができる。更に、バネガイド50、150の車体側端部又は車軸側端部の何れか一方の端部が開口していない場合であっても、同様にバネガイド50、150の突出部53、153とシリンダガイド40、140の溝部42、142とを嵌合させることができて、バネガイド50、150をシリンダガイド40、140に取り付けることができる。
図8(a)は、実施形態1に係る油圧緩衝器1にダストカバーを取り付けた場合の正面図であり、(b)は、実施形態2に係る油圧緩衝器100にダストカバーを取り付けた場合の正面図である。
油圧緩衝器1の他の構成として、図8(a)に示すように、バネガイド50の鍔部52をバネ2の外径よりも径方向外側に拡径させるとともに、バネ受け部22を鍔部52の外径と同等にそれぞれ拡径させ、円環状のダストカバー80を挟み込む。ダストカバー80は伸縮自在な蛇腹状の部材であり、その内径はバネ2の外径よりも大きく設定され両端が開口している。これにより、バネ2全体を被覆するように油圧緩衝器1に装着することができる。従って、バネ2の外周にダストカバー80があるため、ゴミや埃がピストンロッド20やバネ2等に付着せず、ピストンロッド20やバネ2等の機能を保持できる。
また、油圧緩衝器100の他の構成として、図8(b)に示すように、バネガイド150の鍔部152をバネ102の外径よりも径方向外側に拡径させるとともに、バネ受け部121を鍔部152の外径と同等にそれぞれ拡径させ、円環状のダストカバー180を挟み込む。ダストカバー180は伸縮自在な蛇腹状の部材であり、その内径はバネ102の外径よりも大きく設定され両端が開口している。これにより、バネ102全体を被覆するように油圧緩衝器100に装着することができる。従って、バネ102の外周にダストカバー180があるため、ゴミや埃がピストンロッド120やバネ102等に付着せず、ピストンロッド120やバネ102等の機能を保持できる。
また実施形態1及び2のいずれの場合も、ぞれぞれ図1、図6において、車体側を特許請求の範囲で示される一端側として、車軸側を特許請求の範囲で示される他端側として説明してきた。
しかし、これに限定されることない。即ち、実施形態1では、いわゆる倒立型の油圧緩衝器の取付態様であり、バネ調整部30側を車体側、バネ受け部22を車軸側としたが、いわゆる正立型の取付態様としてバネ調整部30側を車軸側、バネ受け部22を車体側としても同様の効果を得ることができる。
また、実施形態2では、いわゆる倒立型の油圧緩衝器の取付態様であり、バネ調整部130側を車軸側、バネ受け部121を車体側としたが、いわゆる正立型の取付態様としてバネ調整部130側を車体側、バネ受け部121を車軸側としても同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態で示す油圧緩衝器1及び油圧緩衝器101を二輪車用のリアショックとして説明したが、二輪車に限定されることなく、自動車や自転車の油圧緩衝器として使用しても、シートダンパーとして使用してもよいことは勿論である。