以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置10の構成の一例を示す。本例において、印刷装置10は、円筒状の媒体(メディア)50に対して印刷を行うインクジェットプリンタであり、ヘッド部12、キャリッジ14、ガイドレール16、主走査駆動部18、回転駆動部20、角度調整部22、及び制御部24を備える。また、図1において、主走査方向は、図中に示したY方向である。また、以下に説明をする点を除き、本例の印刷装置10は、公知の印刷装置10と同一又は同様の構成を有してよい。
尚、円筒状の媒体50とは、例えば、筒が延伸する方向である軸方向と直交する平面による媒体の断面が円型になる媒体(被プリント円筒)のことである。この場合、媒体50の断面が円型になるとは、例えば、断面の外縁が円になることである。また、本例において用いる円筒状の媒体50は、筒状体の媒体の一例である。印刷装置10の構成の他の例において、筒状体の媒体としては、例えば、楕円、かまぼこ型、ピーナツ型等の様々な形状の筒状体の媒体を用いることも考えられる。この場合、楕円、かまぼこ型、ピーナツ型の筒状体の媒体とは、例えば、軸方向と直交する平面による媒体の断面が楕円、かまぼこ型、ピーナツ型になる媒体のことである。また、筒状体の媒体において、軸方向と直交する平面による媒体の断面形状は、上記以外の形状であってもよい。この場合、断面形状は、外縁が滑らかな閉曲線になる形状であることが好ましい。
また、これらの筒状体の媒体は、被印刷面が曲面状になる媒体の一例である。この場合、被印刷面が曲面状になる媒体とは、例えば、主走査方向(スキャン方向)と直交する平面による断面において、少なくともヘッド部12と対向する側の外縁が曲線状になる断面のことである。また、本例において、主走査方向とは、主走査動作時におけるヘッド部12の移動方向として予め設定された方向である。この場合、主走査動作とは、例えば、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドがインク滴を吐出しつつ主走査方向へ移動する動作のことである。
ヘッド部12は、複数のノズルからインク滴を吐出するインクジェットヘッドを有する部分である。本例において、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッドを有する。また、それぞれのインクジェットヘッドは、予め設定されたノズル列方向へ複数のノズルが並ぶノズル列を有する。また、それぞれのノズル列において、複数のノズルは、ノズル列方向における間隔であるノズルピッチPが一定になるように並ぶ。
ヘッド部12におけるインクジェットヘッドとしては、例えば公知のインクジェットヘッドを好適に用いることができる。また、本例において、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドは、主走査動作を行うことにより、媒体50に対してインク滴を吐出する。ヘッド部12のより具体的な構成については、後に更に詳しく説明をする。
キャリッジ14は、ヘッド保持部の一例であり、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドを媒体50と対向させて保持する。また、本例において、キャリッジ14は、副走査方向に対してノズル列方向を傾けた状態でインクジェットを保持する。この場合、副走査方向とは、主走査方向と直交する方向である。また、図1に示した構成において、副走査方向とは、図中に示したX方向と平行な方向である。また、このX方向は、水平面内でY方向と直交する方向である。キャリッジ14によるインクジェットヘッドの保持の仕方についても、後に更に詳しく説明をする。
ガイドレール16は、主走査方向へ延伸するレール部材(Yバー)であり、主走査方向へ移動可能にキャリッジ14を保持する。また、これにより、ガイドレール16は、主走査方向へのキャリッジ14の移動をガイドする。
主走査駆動部18は、インクジェットヘッドに主走査動作を行わせる駆動部である。本例において、主走査駆動部18は、ガイドレール16に沿ってキャリッジ14を移動させることにより、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドを主走査方向へ移動させる。また、印刷すべき画像に基づき、移動中のインクジェットヘッドにインク滴を吐出させる。これにより、主走査駆動部18は、印刷すべき画像に基づき、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドに主走査動作を行わせる。
回転駆動部20は、円筒状の媒体50の軸方向と平行な回転軸に対して媒体50を回転させる駆動部である。本例において、回転駆動部20は、媒体50の軸方向が主走査方向と平行になる向きで媒体50を保持する。これにより、回転駆動部20は、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドが円筒状の媒体50の側面へインク滴を吐出するように、インクジェットヘッドと媒体50の側面とを対向させる。
また、本例において、回転駆動部20は、主走査動作の合間に媒体50を回転させることにより、媒体50においてヘッド部12と対向する領域を変更する。この場合、媒体50の回転により、媒体50においてヘッド部12と対向する領域は、主走査方向と直交する副走査方向(図中のX方向)へ移動する。また、これにより、回転駆動部20は、主走査動作の合間に副走査方向へ媒体50を送る副走査駆動部としても機能する。
尚、この場合、領域が副走査方向へ移動するとは、印刷品質に応じた精度で、ほぼ副走査方向へ移動することであってよい。また、領域の移動方向とは、回転により生じる移動の接線方向のことであってよい。
また、本例において、回転駆動部20は、筐体部32、従動ローラ34、及び駆動ローラ36を有する。筐体部32は、回転駆動部20の筐体部分であり、それぞれの軸方向を主走査方向と平行にして、従動ローラ34及び駆動ローラ36を回転可能に保持する。また、本例において、筐体部32は、媒体50に対してヘッド部12と反対側において、それぞれの軸方向を主走査方向と平行になる向きにして、従動ローラ34及び駆動ローラ36を保持する。これにより、従動ローラ34及び駆動ローラ36は、媒体50に対してヘッド部12と反対側から媒体50を支持する。
また、従動ローラ34は、媒体50の回転に従って回転するローラであり、媒体50の軸よりも副走査方向における一方側において、媒体50の側面と接する。駆動ローラ36は、図示を省略したモータ等により回転駆動されるローラであり、媒体50の軸よりも副走査方向における他方側において、媒体50の側面と接する。これにより、駆動ローラ36は、自身の回転に応じて、媒体50を回転させる。また、この場合、媒体50は、自身の軸を中心にして、回転する。
このように構成すれば、例えば、回転駆動部20により媒体50を回転させることにより、媒体50の側面について、各回の主走査動作で印刷の対象となる領域を順次変化させることができる。また、これにより、例えば、媒体50の側面の各位置に対し、適切に印刷を行うことができる。
尚、上記のように、本例において、回転駆動部20は、駆動ローラ36と従動ローラ34とが一対になるように構成されている。しかし、回転駆動部20の構成は、必ずしもこの構成に限定されるものではなく、様々に変形可能である。例えば、重量の大きな円筒状の媒体50を用いる場合等には、2個の駆動ローラを一対にした構成を用いること等も考えられる。このように構成すれば、例えば、媒体50の重量が大きい場合にも、媒体50をより適切に回転させることができる。
角度調整部22は、ヘッド部12のインクジェットヘッドを傾ける角度であるヘッド傾斜角度(傾角)を調整するための構成である。この場合、ヘッド傾斜角度とは、より具体的に、インクジェットヘッドにおけるノズル列方向を副走査方向に対して傾ける角度のことである。角度調整部22としては、例えば自動的にヘッド傾斜角度を調整する手段を用いることが考えられる。この場合、例えば、円筒状の媒体50の径等の条件に応じて、ヘッド傾斜角度を自動的に調整することが考えられる。また、角度調整部22として、ユーザによる手動の走査でヘッド傾斜角度を調整する手段を用いることも考えられる。角度調整部22の具体的な動作については、後に更に詳しく説明をする。
制御部24は、例えば印刷装置10のCPUであり、印刷装置10の各部を制御する。本例によれば、円筒状等の媒体50に対し、適切に印刷を行うことができる。
続いて、キャリッジ14によるインクジェットヘッドの保持の仕方や、ヘッド部12のより具体的な構成等について、更に詳しく説明をする。本例において、キャリッジ14は、ヘッド傾斜角度として、少なくとも複数種類の角度を選択可能である。また、副走査方向とノズル列方向とを平行にした状態でもインクジェットヘッドを保持可能である。この場合、副走査方向とノズル列方向とを平行にした状態とは、例えば、副走査方向に対してノズル列方向を傾けずにキャリッジ14がインクジェットヘッドを保持した状態(通常配置)である。また、図1において、ヘッド部12を囲む位置に破線で示した範囲は、通常配置でのヘッド部12の位置を示している。また、キャリッジ14は、例えばノズル面内において回転可能にヘッド部12を保持しており、ノズル列方向を傾けた状態(斜配置)でヘッド部12を保持することにより、副走査方向におけるヘッド部12の幅を、図中に破線で示した範囲の中で様々に変化させる。
尚、この場合、ヘッド部12を傾けて保持するとは、副走査方向に対してノズル列方向を傾けた状態で。ヘッド部12におけるインクジェットヘッドを傾けて保持することである。また、ノズル面内において回転可能とは、インクジェットヘッドにおいてノズルが形成されている面と平行な面内において回転可能なことである。
図2は、キャリッジ14によるインクジェットヘッドの保持の仕方、及びヘッド部12のより具体的な構成について説明をする図である。図2(a)は、キャリッジ14によるインクジェットヘッド102の保持の仕方の一例を示す。図2(b)は、ヘッド部12におけるインクジェットヘッド102の構成の一例を示す拡大図である。
本例において、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッド102を有する。複数のインクジェットヘッド102は、例えば、それぞれ異なる色のインク滴を吐出する。また、それぞれのインクジェットヘッド102は、インクジェットヘッド102の長手方向であるノズル列方向へ複数のノズル204が並ぶノズル列202を有する。
また、図2(a)においては、ヘッド部12の構成に関し、副走査方向とノズル列方向とを平行にした状態を実線で示し、副走査方向に対してノズル列方向を傾けた状態を点線で示している。また、図2(b)においては、副走査方向に対してノズル列方向を傾けた状態について、媒体50の側から見た様子の一例を示している。
ノズル列202を有するインクジェットヘッド102を用いて印刷を行う場合、インクジェットヘッド102は、ノズル列202中の各ノズル204からインク滴を吐出することにより、所定の密度で並ぶ複数のインクのドットを形成する。この場合、1回の主走査動作においてインクジェットヘッド102によりインク滴が吐出される領域であるバンド領域の幅(副走査方向における幅)は、副走査方向におけるノズル列202の長さと等しくなる。
より具体的に、本例において、複数のインクジェットヘッド102は、ヘッド傾斜角度を同一にして、主走査方向へ並べて配設される。そして、この場合、それぞれのインクジェットヘッド102においてノズル204が並ぶ領域の副走査方向における範囲、すなわち、副走査方向におけるノズル列202の長さは、ヘッド傾斜角度に応じて決まる幅Lxの範囲になる。そして、幅Lxは、ノズル列方向を傾けない場合に最大となり、かつ、角度が90°以内の範囲において、ヘッド傾斜角度の増大に応じて徐々に狭くなる。
そのため、本例において、ノズル列方向を傾けた状態でインクジェットヘッド102を保持する場合、副走査方向におけるノズル204の長さは、ノズル列方向におけるノズル204の長さよりも小さくなる。また、これにより、バンド領域の幅(プリント幅)についても、ノズル列方向を傾けない場合に最大となり、かつ、角度が90°以内の範囲において、ヘッド傾斜角度の増大に応じて徐々に狭くなる。
ここで、インクジェット方式で印刷を行う場合、インクジェットヘッド102は、媒体50との間に隙間を空けた非接触の状態で、媒体50に対してインク滴を吐出する。また、円筒状の媒体50のように、被印刷面が曲面状の媒体50を用いる場合、インクジェットヘッド102における各ノズル204と媒体50との間の距離であるギャップは、媒体50の曲面形状に応じて、副走査方向における位置によって変化することになる。そして、この場合、副走査方向におけるノズル列202の長さが長いと、ノズル列202内でのギャップの最大値と最小値との差(ギャップ差)が大きくなりやすい。また、その結果、ノズル列202内の全てのノズルに対し、適切なギャップに調整をすることが困難になるおそれがある。
これに対し、本例においては、例えば、ヘッド傾斜角度を調整することにより、副走査方向におけるノズル列202の長さを様々に変化させることができる。また、これにより、例えば、ノズル列202内でのギャップ差を適切に抑え、ノズル列202内の全てのノズル204に対し、適切なギャップに調整をすることも可能になる。そのため、本例によれば、例えば、円筒状等の媒体50に対し、より適切に印刷を行うことができる。
尚、この場合、ノズル列202内の全てのノズルとは、例えば、ノズル列202を構成する複数のノズル204のうち、ダミーノズルを除いたノズル204等であってもよい。ダミーノズルとは、例えば、インク滴を吐出しないように予め設定されるノズル(不吐出ノズル)である。ダミーノズルは、例えば、インクジェットヘッド102の構造等に応じて、ノズル列202の端の一部等に設定される。
また、上記においても説明をしたように、本例において、ヘッド傾斜角度として、少なくとも複数種類の角度を選択可能である。そして、この場合、制御部24(図1参照)は、ヘッド傾斜角度に応じて、印刷装置10の各部の動作を制御することが好ましい。例えば、制御部24により、ヘッド傾斜角度に応じて、複数のインクジェットヘッド102や主走査駆動部18(図1参照)の動作を制御することが考えられる。この場合、より具体的には、例えば、ヘッド傾斜角度に応じて、主走査動作時におけるヘッド部12の移動速度を変化させること等が考えられる。
また、制御部24により、ヘッド傾斜角度に応じて、例えば回転駆動部20(図1参照)の動作を制御することも考えられる。この場合、より具体的には、例えば、主走査動作の合間に回転駆動部20により媒体50を回転させる回転量について、ヘッド傾斜角度に応じて決まるバンド領域の幅に合わせて設定すること等が考えられる。このように構成すれば、例えば、ヘッド部12の斜配置によりバンド領域の幅が狭くなるのに合わせて、副走査方向への媒体50の送り量を適切に調整できる。
これらのように構成すれば、例えば、ヘッド傾斜角度について、様々な角度に適切に調整できる。また、また、ヘッド傾斜角度に応じて各部を制御することにより、ヘッド傾斜角度を変更した場合にも、適切に印刷を行うことができる。
また、本例のように、副走査方向に対してノズル列方向を傾けた場合、副走査方向におけるノズル204の間隔も変化することになる。また、その結果、媒体50上に形成されるインクのドットの副走査方向における密度も、副走査方向におけるノズル204の間隔に応じて変化することになる。
より具体的に、例えば、ノズル列方向と副走査方向が平行である場合、副走査方向におけるノズル204の間隔は、ノズル列中のノズルの間隔であるノズルピッチPと等しくなる。また、その結果、副走査方向におけるインクのドットの密度は、ノズルピッチPに対応する密度になる。
これに対し、副走査方向に対してノズル列方向を傾けた場合、ヘッド傾斜角度に応じて、副走査方向におけるノズル204の間隔が小さくなる。また、これにより、副走査方向におけるノズルの間隔は、ノズルピッチPよりも小さくなる。そのため、このように構成した場合、副走査方向におけるインクのドットの密度は、ノズルピッチPに対応する密度よりも高くなる。
そのため、本例によれば、例えば、副走査方向に対してノズル列方向を傾けることにより、副走査方向におけるインクのドットの密度を高めることもできる。また、例えば、これにより、副走査方向における印刷の解像度を高めることができる。また、ヘッド傾斜角度を調整することにより、副走査方向におけるインクのドットの密度や印刷の解像度等を調整することも可能になる。
また、この場合、キャリッジ14により、例えば、ノズル列202中の隣接するノズル204により形成されるインクのドットについて、少なくとも一部の副走査方向における位置が重なるように、インクジェットヘッド102を傾けた状態で保持すること等が考えられる。この場合、インクのドットについて、少なくとも一部の副走査方向における位置が重なるとは、1回の主走査動作においてそれぞれのノズル204から吐出されるインク滴により媒体上に形成されるインクのドットについて、少なくとも一部の副走査方向における位置が重なることである。
このように構成した場合、例えば、インクのドットの少なくとも一部の副走査方向における位置が重なることにより、個々のノズル204の吐出特性の影響を軽減することができる。また、これにより、例えば一部のノズル204の吐出特性が異常である場合にも、印刷される画像の画質に対し、そのノズル204の吐出特性が影響を与えることを適切に抑えることができる。また、その結果、例えば、マルチパス方式での印刷を行わなくても、ノズル204の吐出特性のバラツキの影響を適切に抑えることができる。この場合、マルチパス方式とは、例えば、媒体50において印刷が行われる被印刷領域の各位置に対して複数回の主走査動作を行う方式のことである。
また、この場合、副走査方向に対してノズル列方向を傾けることにより、副走査方向におけるノズル204の間隔は、ノズルピッチPよりも小さくなっている。そのため、例えば、副走査方向における印刷の解像度を高める目的でマルチパス方式での印刷を行う必要はない。
従って、本例においては、例えば、1回のパスでの印刷動作により、円筒状等の媒体50に対し、適切に印刷を行うことができる。この場合、1回のパスでの印刷動作とは、媒体50の各位置に対して1回の主走査動作を行うことで印刷を行う動作のことである。また、これにより、例えば、マルチパス方式で印刷を行う場合と比べ、印刷速度を適切に高速化することができる。すなわち、本例によれば、例えば、円筒状等の媒体50に対し、ノズル列方向の長さ(ノズル幅)が十分に長いインクジェットヘッドを用いて、高速な加飾をより適切に行うことができる。
また、本例においては、斜配置により副走査方向におけるインクのドットの密度を高めることで、1回の主走査動作で単位面積に対して吐出するインクの量を増加させることができる。この場合、例えば、単位面積あたりに吐出するインクの量について、副走査方向に対してノズル列方向を傾けない通常配置と比べ、単位面積あたりに吐出するインクの量を数倍〜数十倍程度の増加させることが考えられる。
また、この場合、例えば、必要に応じて、インクの量が過剰にならないように、単位面積あたりに吐出するインクの量を調整することが好ましい。また、このような調整としては、例えば、ノズル列202における一部のノズル204を間引く方法や、主走査動作時のヘッド部12の移動速度(主走査方向への送り量)を変化させる方法等が考えられる。
また、より具体的に、このような調整は、インクのドットの径に応じて決まる最高の解像度に対応するドット間隔よりも、傾けた状態で保持されたノズル列202列中での副走査方向におけるノズル204の間隔の方が小さい場合に行うことが考えられる。この場合、インクのドットの径に応じて決まる最高の解像度とは、例えば、1回の主走査動作で形成されるインクのドットについての最高の解像度のことである。また、より具体的に、インクのドットの径に応じて決まる最高の解像度とは、例えば、解像度に対応するドット間隔が、インクのドットの直径と等しくなる解像度のことである。この場合、最高の解像度に対応するドット間隔とは、例えば、ドットの直径と等しいドット間隔のことである。
尚、インクのドットの径とは、例えば、ノズル204から吐出されるインク滴により媒体上に形成されるインクのドットの直径のことである。インクのドットの直径とは、例えば、標準的なドットの直径であってよい。また、インクのドットの直径は、実際に形成されるインクのドットの平均的な直径であってよい。また、実用上、ドットの直径は、例えば設計上の直径であってもよい。
また、単位面積あたりに吐出するインクの量を調整する場合、例えば、各回の主走査動作において、インクジェットヘッド102に、ノズル列202における一部のノズル204のみからインク滴を吐出させることが考えられる。このように構成すれば、例えば、各回の主走査動作において使用するノズル204を適切に間引くことができる。また、これにより、インクの量が過剰になることを適切に防ぐことができる。
また、単位面積あたりに吐出するインクの量の調整は、上記のように、主走査動作時のヘッド部12の移動速度を変化させる方法で行うことも考えられる。より具体的に、この場合、例えば、最高の解像度に対応するドット間隔と、傾けた状態で保持されたインクジェットヘッド102での副走査方向におけるノズル204の間隔との大小関係に応じて、主走査動作時にインクジェットヘッドを移動させる移動速度を異ならせることが考えられる。より具体的に、例えば、最高の解像度に対応するドット間隔よりも、傾けた状態で保持されたインクジェットヘッド102での副走査方向におけるノズル204の間隔の方が大きい場合、主走査駆動部18(図1参照)は、例えば、主走査動作時にインクジェットヘッド102を移動させる移動速度について、予め設定された第1の速度に設定する。また、最高の解像度に対応するドット間隔よりも、傾けた状態で保持されたインクジェットヘッドでの副走査方向におけるノズルの間隔の方が小さい場合、主走査駆動部18は、主走査動作時のインクジェットヘッド102の移動速度について、第1の速度よりも高速な第2の速度に設定する。
このように構成した場合、例えば、ヘッド傾斜角度によって副走査方向におけるノズル204の間隔が変化するのに応じて、主走査動作時のインクジェットヘッド102の移動速度を適切に変化させることができる。また、これにより、単位時間あたりに主走査方向へインクジェットヘッド102が移動する距離である主走査方向への送り量を変化させ、単位面積に対して吐出するインクの量を適切に調整することができる。そのため、このように構成した場合も、例えば、インクの量が過剰になることを適切に防ぐことができる。
ここで、本例の印刷装置10に関し、より具体的な様々な特徴について、補足説明をする。本例のインクジェットヘッド102において使用するインクとしては、特定のインクに限定されず、公知の各種のインクを用いることができる。例えば、紫外線硬化型インク(UVインク)等のエネルギー線硬化型のインクや、ソルベントUVインク(SUVインク)、ラテックスインク、又はソルベントインク等を用いることが考えられる。印刷装置10の具体的な構成については、使用するインクに合わせて、適宜変更することが好ましい。
また、インクの色は、特定の色に限定されず、様々な色のインクを用いることができる。例えば、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色や、LM(ライトマゼンタ)、LC(ライトシアン)、LK(ライトブラック)等のライト色のインクを用いることが考えられる。また、クリア色、白色、メタリック色や、その他の各種特色のインクを用いてもよい。
また、インクジェットヘッド102としては、例えばピエゾ方式のインクジェットヘッドを用いることが考えられる。この場合、インクジェットヘッド102は、それぞれのノズル204の位置に、ピエゾ素子を有する。
また、上記においても説明をしたように、本例においては、副走査方向とノズル列方向とを平行にした状態でもインクジェットヘッド102を保持可能である。そして、この場合、印刷装置10においては、例えば公知のインクジェットプリンタと同一又は同様にして、マルチパス方式で印刷を行うことが考えられる。
また、上記においても説明をしたように、印刷装置10においては、断面が真円になる円筒状の媒体50に限らず、断面が楕円、かまぼこ型、ピーナツ型等になる様々な形状の筒状体の媒体を用いることも考えられる。この場合、被印刷面となる側面が回転可能な曲面になっていることが好ましい。また、様々な筒状体の媒体を用いる場合において、媒体の径は、軸方向に沿って変化してもよい。この場合、印刷装置10は、高さ方向におけるヘッド部12の位置を変更させる機構を有することが好ましい。この場合、高さ方向とは、主走査方向及び副走査方向と直交する方向である。また、高さ方向は、インクジェットヘッド102と媒体50とを結ぶ方向であってよい。このように構成すれば、例えば、媒体の径の変化に追随させてインクジェットヘッド102の位置を適切に調整することができる。
続いて、角度調整部22(図1参照)の具体的な動作に関し、キャリッジ14によりインクジェットヘッド102を保持する角度等について、更に詳しく説明をする。上記のように、本例において、キャリッジ14は、副走査方向に対してノズル列方向を傾けた状態で複数のインクジェットヘッド102を保持する。この場合、副走査方向に対してノズル列方向を傾けた状態でインクジェットを保持するとは、例えば、副走査方向とノズル列方向との関係について、非平行かつ非直角の状態にして、インクジェットヘッド102を保持することである。この場合、副走査方向に対してノズル列方向がなす角度は、例えば5〜85°にすることが好ましい。また、この角度は、例えば25〜65°程度にすることがより好ましい。
図3は、ヘッド傾斜角度について更に詳しく説明をする図であり、ノズル列方向を傾けた状態でヘッド部12における複数のインクジェットヘッドを保持する場合について、ヘッド部12と媒体50との位置関係の位置関係の一例を示す。
上記においても説明をしたように、円筒状の媒体50等を用いる場合、インクジェットヘッドにおける各ノズルと媒体50との間の距離であるギャップは、媒体50の曲面形状に応じて、副走査方向における位置によって変化する。また、この場合、副走査方向におけるノズル列の長さが長いと、ノズル列内でのギャップの最大値と最小値との差であるギャップ差が大きくなりやすい。
これに対し、本例においては、角度調整部22(図1参照)でヘッド傾斜角度を調整することにより、副走査方向におけるノズル列の長さがより短くなるように調整を行う。また、これにより、ギャップ差が大きくなりすぎることを防いでいる。また、この場合、より具体的に、角度調整部22は、例えば、ギャップ差が3mm未満になる角度にヘッド傾斜角度を調整する。また、角度調整部22は、ギャップ差について、より好ましくは2mm未満、更に好ましくは1mm未満になるように、ヘッド傾斜角度を調整することが好ましい。このように構成すれば、例えば、ノズル列内でのギャップ差を適切に抑えることができる。また、これにより、例えば、円筒状等の媒体50に対し、より適切に印刷を行うことができる。
ここで、本例の構成において生じるギャップやギャップ差について、より具体的に説明をする。例えば円筒状の媒体50のように、被印刷面が曲面状の媒体50を用いる場合、インクジェットヘッドにおけるノズル列と媒体50との位置関係は、例えば、ノズル列の中心部にあるノズルの位置においてギャップが最小になるように設定することが好ましい。この場合、ノズル列の中心部にあるノズルとは、ノズル列の中心又はその近傍にあるノズルのことである。また、この場合、ノズル列の端のノズルの位置において、ギャップが最大になる。ノズルの端のノズルとは、例えば、ノズル列においてダミーノズルを除いた部分における端のノズルであってよい。
より具体的に、例えば、図3は、主走査方向と直交する平面によるヘッド部12及び媒体50の断面図であり、副走査方向に対してノズル列方向を傾け、副走査方向におけるノズル列の長さがDhになった場合について、ギャップ差ΔLgを具体的に示している。この場合、Dhは、斜配置のヘッド部12による最大プリント幅になる。また、図3において、ヘッド部12を囲む位置に破線で示した範囲は、図1と同様に、通常配置でのヘッド部12の位置を示している。
また、図3において、点Aは、ノズル列の中心部のノズルの位置を示す。このノズルは、ギャップが最小になる位置のノズルである。また、点Bは、ノズル列の端のノズルの位置を示す。このノズルは、ギャップが最大になる位置のノズルである。また、点Cは、点Aと、媒体50の中心とを結ぶ直線と、媒体50の側面との交点を示す。点Dは、点Bと、媒体50の中心とを結ぶ直線と、媒体50の側面との交点を示す。この場合、媒体50の中心とは、図に示した断面において媒体50の回転軸に対応する位置のことである。
また、距離rは、媒体50の断面となる円の半径である。Θは、媒体50の中心から点Aに向かう直線と、媒体50の中心から点Bに向かう直線とがなす角度である。Lgcは、点Aの位置におけるギャップである。また、図示した場合において、Lgcは、最小のギャップになる。Lgeは、点Dの位置におけるギャップである。また、図示した場合において、Lgeは、最大のギャップになる。この場合、ギャップ差ΔLgは、ΔLg=Lge−Lgcで計算される距離になる。
また、図3において、距離HΘは、媒体50の中心から点Dまでの高さ方向の距離を示す。図示した場合において、HΘ=r・cosΘである。そして、この場合、図から明らかなように、ギャップ差ΔLgについて、ΔLg=r−HΘ=r(1−cosΘ)と示すことができる。
そして、印刷時においては、例えば、これらのパラ−メータの関係に基づき、媒体50の円筒径等に応じて、角度調整部22により、自動的又は手動でヘッド傾斜角度を調整する。この場合、ギャップ差ΔLg(絶対値)について、上記においても説明をしたように、3mm未満に設定することが好ましい。また、ギャップ差Lgは、より好ましくは2mm未満、更に好ましくは1mm未満である。
このように構成すれば、例えば、ギャップ差ΔLgを適切に抑えることができる。また、これにより、例えば、円筒状等の媒体50に対し、より適切に印刷を行うことができる。
また、図から分かるように、図示した場合において、点Aと点Bとの間の距離は、Dh/2になる。また、点Cと点Dとの間の円周長は、2πr(Θ/360)になる。そして、この場合、ヘッド傾斜角度の調整において、更に、両者の比Ra=(Dh/2)/{2πr(Θ/360)}について、3/1000未満になるように調整を行うことが好ましい。このように構成すれば、例えば、媒体50の側面に印刷された画像に歪みが生じること等を適切に防ぐことができる。また、比Raは、1/1000未満にすることがより好ましい。このように構成すれば、例えば、画像の歪みをより適切に防ぐことができる。
また、上記においても説明をしたように、ヘッド傾斜角度を変化させた場合、副走査方向におけるノズル間隔の変化により、副走査方向における印刷の解像度も変化する。そのため、ヘッド傾斜角度の調整においては、解像度の変化も考慮して行うことが好ましい。
続いて、ヘッド傾斜角度を様々な角度に設定した状態について、更に詳しく説明をする。図4〜7は、様々なヘッド傾斜角度について、ヘッド傾斜角度と、副走査方向におけるノズル列の長さとの関係の例を示す。尚、図4〜7においては、図示の便宜上、一のインクジェットヘッド102について、インクジェットヘッド102を傾けない場合と対比させて、ヘッド傾斜角度θを様々に異ならせた状態を示す。
図4は、ヘッド傾斜角度θが84.26°になるようにインクジェットヘッド102を傾けた場合の例を示す。図中において、符号Aを付して示したインクジェットヘッド102は、傾けない状態でのインクジェットヘッド102を示している。この場合、傾けない状態とは、ノズル列方向と副走査方向とを平行にした状態である。また、この場合、ノズル列202における複数のノズル204は、副走査方向において、ノズル列の長さと等しい幅L0の範囲内に並ぶ。
また、符号Bを付して示したインクジェットヘッド102は、角度θだけ傾けた状態のインクジェットヘッド102を示している。この場合、角度θだけ傾けた状態とは、例えば、インクジェットヘッド102を回転させることで、ノズル列方向と副走査方向とがなす角度がθになった状態である。また、この場合、ノズル列202における複数のノズル204は、副走査方向において、幅L0よりも狭い幅Lxの範囲内に並ぶ。また、より具体的に、θが84.26°である場合、幅Lxは、幅L0の1/10である。
すなわち、ヘッド傾斜角度θをこのように設定することにより、副走査方向におけるノズル列の長さについて、インクジェットヘッド102を傾けない場合の1/10にすることができる。また、これにより、円筒状等の媒体を用いる場合にも、ギャップ差を適切に抑えることができる。
また、この場合、インクジェットヘッド102を傾けた状態において、副走査方向におけるノズルの解像度は、インクジェットヘッド102を傾けない場合と比べ、10倍になる。副走査方向におけるノズルの解像度とは、副走査方向におけるノズル204の間隔に対応する解像度である。そのため、この場合、インクジェットヘッド102を傾けない場合と比べ、副走査方向における単位長さあたり、10倍のインクを媒体50へ吐出することができる。また、これにより、例えば、単位面積あたりのインクの吐出量を適切に増やすことができる。
また、この場合、例えば、主走査動作時のインクジェットヘッド102の移動速度について、ヘッド傾斜角度に合わせて調整し、インクジェットヘッド102を傾けない場合の1/10の速度に設定することが考えられる。このように構成すれば、単位面積あたりのインクの吐出量について、インクジェットヘッド102を傾けない場合と比べ、100倍に増やすことができる。
ここで、上記においても説明をしたように、本例においては、単位面積あたりのインクの吐出量を増やし、例えばノズル列中の隣接するノズルにより形成されるインクのドットについて、少なくとも一部の副走査方向における位置が重なるようにする。このよう構成すれば、例えば、マルチパス方式での印刷を行わなくても、ノズル204の吐出特性のバラツキの影響を適切に抑えることができる。また、これにより、例えば、1回のパスでの印刷動作により、円筒状等の媒体に対し、適切に印刷を行うことができる。また、このような効果は、例えば、図5〜7を用いて以下に説明をする場合にも、同様に得ることができる。
しかし、例えば単位面積あたりのインクの量が過剰になる場合には、上記においても説明をしたように、ノズル列における一部のノズルを間引く方法や、主走査動作時のヘッド部の移動速度を変化させること等により、インクの量を調整することが好ましい。このように構成すれば、例えば、インクの量が過剰になることを適切に防ぐことができる。また、このような調整は、図5〜7を用いて以下に説明をする場合にも、必要に応じて同様に行うことが好ましい。
図5は、ヘッド傾斜角度θが78.46304°になるようにインクジェットヘッド102を傾けた場合の例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図5において、図4と同じ符号を付した構成は、図4における構成と同一又は同様の特徴を有する。
この場合も、ノズル列202における複数のノズル204は、副走査方向において、幅L0よりも狭い幅Lxの範囲内に並ぶ。また、より具体的に、θがこの角度の場合、幅Lxは、幅L0の1/5である。すなわち、ヘッド傾斜角度θをこのように設定することにより、副走査方向におけるノズル列の長さについて、インクジェットヘッド102を傾けない場合の1/5にすることができる。また、これにより、円筒状等の媒体を用いる場合にも、ギャップ差を適切に抑えることができる。
また、この場合、インクジェットヘッド102を傾けた状態において、副走査方向におけるノズルの解像度は、インクジェットヘッド102を傾けない場合と比べ、5倍になる。また、これにより、インクジェットヘッド102を傾けない場合と比べ、副走査方向における単位長さあたり、5倍のインクを媒体50へ吐出することができる。そのため、この場合も、例えば、単位面積あたりのインクの吐出量を適切に増やすことができる。
また、この場合、例えば、主走査動作時のインクジェットヘッド102の移動速度について、ヘッド傾斜角度に合わせて調整し、インクジェットヘッド102を傾けない場合の1/5の速度に設定することが考えられる。このように構成すれば、単位面積あたりのインクの吐出量について、インクジェットヘッド102を傾けない場合と比べ、25倍に増やすことができる。
図6は、ヘッド傾斜角度θが75.5225°になるようにインクジェットヘッド102を傾けた場合の例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図6において、図4又は図5と同じ符号を付した構成は、図4又は図5における構成と同一又は同様の特徴を有する。
この場合も、ノズル列202における複数のノズル204は、副走査方向において、幅L0よりも狭い幅Lxの範囲内に並ぶ。また、より具体的に、θがこの角度の場合、幅Lxは、幅L0の1/4である。すなわち、ヘッド傾斜角度θをこのように設定することにより、副走査方向におけるノズル列の長さについて、インクジェットヘッド102を傾けない場合の1/4にすることができる。また、これにより、円筒状等の媒体を用いる場合にも、ギャップ差を適切に抑えることができる。
また、この場合、インクジェットヘッド102を傾けた状態において、副走査方向におけるノズルの解像度は、インクジェットヘッド102を傾けない場合と比べ、4倍になる。また、これにより、インクジェットヘッド102を傾けない場合と比べ、副走査方向における単位長さあたり、4倍のインクを媒体50へ吐出することができる。そのため、この場合も、例えば、単位面積あたりのインクの吐出量を適切に増やすことができる。
また、この場合、例えば、主走査動作時のインクジェットヘッド102の移動速度について、ヘッド傾斜角度に合わせて調整し、インクジェットヘッド102を傾けない場合の1/4の速度に設定することが考えられる。このように構成すれば、単位面積あたりのインクの吐出量について、インクジェットヘッド102を傾けない場合と比べ、16倍に増やすことができる。
図7は、ヘッド傾斜角度θが60°になるようにインクジェットヘッド102を傾けた場合の例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図7において、図4〜6と同じ符号を付した構成は、図4〜6における構成と同一又は同様の特徴を有する。
この場合も、ノズル列202における複数のノズル204は、副走査方向において、幅L0よりも狭い幅Lxの範囲内に並ぶ。また、より具体的に、θがこの角度の場合、幅Lxは、幅L0の1/2である。すなわち、ヘッド傾斜角度θをこのように設定することにより、副走査方向におけるノズル列の長さについて、インクジェットヘッド102を傾けない場合の1/2にすることができる。また、これにより、円筒状等の媒体を用いる場合にも、ギャップ差を適切に抑えることができる。
また、この場合、インクジェットヘッド102を傾けた状態において、副走査方向におけるノズルの解像度は、インクジェットヘッド102を傾けない場合と比べ、2倍になる。また、これにより、インクジェットヘッド102を傾けない場合と比べ、副走査方向における単位長さあたり、2倍のインクを媒体50へ吐出することができる。そのため、この場合も、例えば、単位面積あたりのインクの吐出量を適切に増やすことができる。
また、この場合、例えば、主走査動作時のインクジェットヘッド102の移動速度について、ヘッド傾斜角度に合わせて調整し、インクジェットヘッド102を傾けない場合の1/2の速度に設定することが考えられる。このように構成すれば、単位面積あたりのインクの吐出量について、インクジェットヘッド102を傾けない場合と比べ、4倍に増やすことができる。
以上のように、本例によれば、例えば、ヘッド傾斜角度を様々に変化させることにより、副走査方向におけるノズル列の長さを様々に変化させることができる。また、これにより、例えば、円筒状の媒体の径に応じてヘッド傾斜角度を調整し、ギャップ差を適切に抑えることができる。
ここで、上記においては、説明を簡略化するため、ノズル列方向におけるノズル列の長さは一定として、ヘッド傾斜角度の調整のみにより、副走査方向におけるノズル列の長さを変化させる構成について説明をした。しかし、印刷装置10(図1参照)の構成の変形例においては、例えば、ヘッド傾斜角度の調整に加え、更に、ノズル列の端に設定するダミーノズルの数の調整を行うこと等も考えられる。例えば、媒体の径が小さい場合等において、ヘッド傾斜角度を調整のみではギャップ差を十分に抑えられない場合や、単にヘッド傾斜角度を大きくすると単位面積あたりのインクの量が多くなりすぎ、適切に調整を行うことが困難な場合等には、ダミーノズルの数をより多く設定すること等も考えられる。この場合、より具体的に、例えば、媒体においてヘッド部と対向する領域の曲率半径が予め設定された下限値よりも小さい場合において、ダミーノズルの数がより多くなるように設定すること等が考えられる。このように構成すれば、例えば、様々な形状の媒体に対し、より適切に印刷を行うことができる。
続いて、ヘッド部12の構成の変形例について、説明をする。インクジェットプリンタにおいて、カラー印刷を行う場合、所定の基本色であるプロセスカラーのインクを用いて、混色により様々な色を表現する方法が広く用いられている。また、プロセスカラーのインクとしては、一般的に、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色のインクが使用される。そのため、図2等においては、これらの各色に対応させて、ヘッド部12が4個のインクジェットヘッドを有する場合の構成を図示した。しかし、ヘッド部12の構成の変形例としては、例えば、プロセスカラー以外の特色のインク用のインクジェットヘッドを用いること等も考えられる。
図8は、ヘッド部12の構成の変形例について説明をする図である。尚、以下に説明をする点を除き、図8において、図1〜7と同じ符号を付した構成は、図1〜7における構成と同一又は同様の特徴を有する。
図8(a)は、従来のヘッド部の構成の一例を示す。従来のヘッド部においては、例えば、副走査方向における位置を揃えて主走査方向へ並べて配設された複数のインクジェットヘッド102を用いる。また、複数のインクジェットヘッド102としては、例えば、印刷のプロセスカラーの各色であるYMCKの各色用のインクジェットヘッド102を用いる。そして、これらのインクジェットヘッド102において、ノズル列方向は、副走査方向と平行な方向に固定されている。これに対し、以下において説明をする変形例に係るヘッド部12では、図1〜7を用いて説明をした場合と同様に、傾いた状態でインクジェットヘッド102を保持可能である。
図8(b)は、ヘッド部12の変形例の構成を示す。本変形例において、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッド102として、YMCKの各色用のインクジェットヘッド102に加え、特色(特色1)用のインクジェットヘッド102を更に有する。これらの複数のインクジェットヘッド102は、副走査方向における位置を揃えて主走査方向へ並べて配設される。また、本変形例において、ヘッド部12の複数のインクジェットヘッド102は、様々な角度で傾けた状態で保持される。このように構成すれば、例えば、特色用のインクジェットヘッド102を更に用いることにより、媒体に対してより多様な印刷を行うことができる。また、より具体的に、特色用のインクとしては、例えば、透明色であるクリア色、白色、又はメタリック色のインクを用いることが考えられる。また、その他の各種の特色のインクを用いることも考えられる。
図8(c)は、ヘッド部12の更なる変形例の構成を示す。本変形例において、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッド102として、特色用の複数のインクジェットヘッド102を有する。これらの複数のインクジェットヘッド102は、副走査方向における位置を揃えて主走査方向へ並べて配設される。また、本変形例においても、ヘッド部12の複数のインクジェットヘッド102は、様々な角度で傾けた状態で保持される。
また、図示した場合において、ヘッド部12は、例えば、それぞれ異なる色の特色(特色1〜3)のインクのインク滴を吐出する3個のインクジェットヘッド102を有する。この場合、それぞれの特色のインクは、印刷に使用する色に応じて、予め調色される。また、これにより、本変形例の場合、印刷装置10は、異なる色のインクを混色させる方法ではなく、予め調色された特色のインクを直接用いて、媒体50への印刷を行う。このように構成した場合も、様々な色の特色のインクを用いることにより、媒体に対して多様な印刷を行うことができる。
また、上記においては、ヘッド部12における複数のインクジェットヘッド102について、主に、副走査方向における位置を揃えて主走査方向へ並べて配設する場合について説明をした。しかし、ヘッド部12の構成の更なる変形例においては、少なくとも一部のインクジェットヘッド102について、他のインクジェットヘッド102と副走査方向における位置をずらして配設すること等も考えられる。
より具体的に、例えば、インクジェットヘッド102を傾けて保持する場合、上記においても説明をしたように、単位面積あたりのインクの吐出量は、増加する。そして、この場合、多数のインクジェットヘッド102について、副走査方向における位置を揃えて主走査方向へ並べて配設すると、ヘッド傾斜角度を大きくした場合等に、単位面積あたりのインクの量が過剰になる場合もある。そのため、このような場合、少なくとも一部のインクジェットヘッド102について、他のインクジェットヘッド102と副走査方向における位置をずらして配設し、各回の主走査動作で同じ領域へ吐出するインクの量を減らすこと等が考えられる。
図9は、ヘッド部12の構成の更なる変形例について説明をする図である。尚、以下に説明をする点を除き、図9において、図1〜8と同じ符号を付した構成は、図1〜8における構成と同一又は同様の特徴を有する。
図9(a)は、ヘッド部12の更なる変形例の構成を示す。本変形例において、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッド102として、YMCKの各色用のインクジェットヘッド102と、特色(特色1)用のインクジェットヘッド102とを有する。これらのそれぞれのインクジェットヘッド102は、図8(b)の構成において用いるそれぞれのインクジェットヘッド102と同一又は同様のインクジェットヘッドであってよい。また、これらの複数のインクジェットヘッド102は、図示のように、副走査方向における位置を互いにずらして配設される。
このように構成すれば、例えば、各回の主走査動作で同じ領域へ吐出するインクの量を適切に減らすことができる。また、これにより、例えば、ヘッド傾斜角度を大きくした場合等にも、単位面積あたりのインクの量が過剰になることを適切に防ぐことができる。
また、副走査方向における位置をずらして複数のインクジェットヘッド102を配設する場合も、印刷に使用する色に合わせて予め調色されたインクを用いてもよい。図9(b)は、ヘッド部12の更なる変形例の構成を示す。本変形例において、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッド102として、特色(特色1〜3)用の複数のインクジェットヘッド102を有する。これらのそれぞれのインクジェットヘッド102は、図8(c)の構成において用いるそれぞれのインクジェットヘッド102と同一又は同様のインクジェットヘッドであってよい。また、これらの複数のインクジェットヘッド102は、図示のように、副走査方向における位置を互いにずらして配設される。
このように構成すれば、例えば、各回の主走査動作で同じ領域へ吐出するインクの量を適切に減らすことができる。また、これにより、例えば、ヘッド傾斜角度を大きくした場合等にも、単位面積あたりのインクの量が過剰になることを適切に防ぐことができる。
尚、図9(a)、(b)に示した構成において、例えば円筒状の媒体を用いた場合、それぞれのインクジェットヘッド102と媒体との間の距離は、副走査方向における位置の差に応じて異なることになる。また、その結果、それぞれのインクジェットヘッド102におけるノズル列でのギャップの最小値や最大値も、インクジェットヘッド102によって異なることになる。
しかし、この場合も、それぞれのインクジェットヘッド102毎に、そのインクジェットヘッド102のノズル列中のノズルについてのギャップ差が適切に抑えられていればよい。より具体的には、それぞれのインクジェットヘッド102のノズル列において、ギャップ差が3mm未満(好ましくは2mm未満、更に好ましくは1mm未満)になっていればよい。このように構成すれば、例えば、それぞれのインクジェットヘッド102により、媒体への印刷を適切に行うことができる。
また、この場合、個別のインクジェットヘッド102の範囲のみではなく、ヘッド部12において印刷に使用する全てのインクジェットヘッド102を含めた範囲で、ギャップ差を十分に抑えることが好ましい。例えば、全てのインクジェットヘッド102の全てのノズルの位置でのギャップについて、ギャップ差を3mm未満のすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、副走査方向における位置をずらして配設された複数のインクジェットヘッド102により、円筒状等の媒体に対し、より適切に印刷を行うことができる。また、このギャップ差は、好ましくは2mm未満、更に好ましくは1mm未満である。
また、上記においては、ヘッド部12における複数のインクジェットヘッドの配置について、それぞれのインクジェットヘッドにおけるノズル列の端の位置が一直線上に並ぶ配置を説明した。しかし、ヘッド部12の更なる変形例においては、ノズル列の端の位置について、一直線上には並ばず、例えばギザギザにずれた状態にすること等も考えられる。
図10は、ヘッド部12の構成の更なる変形例について説明をする図であり、ヘッド部12における複数のインクジェットヘッドによって1回の主走査動作においてインク滴を吐出する領域の一例を示す。
本変形例のヘッド部12において、複数のインクジェットヘッドは、例えば、少なくとも一部について副走査方向の位置が重なるようにして、主走査方向へ並べて配設される。また、主走査方向において隣接するインクジェットヘッドについて、ノズル列の端の副走査方向における位置は、互いにずらされている。また、これにより、複数のインクジェットヘッドは、ノズル列の端の位置が順次すれるようにして、並べて配設される。
より具体的に、図示した場合において、ヘッド部12は、YMCKの各色用のインクジェットヘッドを有する。そして、YMCKの各色用のインクジェットヘッドは、各回の主走査動作において、媒体50における領域302y、302m、302c、302k(以下、領域302y〜kと記載する)のそれぞれに対し、インク滴を吐出する。そして、この場合、図中に示すように、領域302y〜kは、媒体50上において、対応するインクジェットヘッドの配置に応じて、副走査方向における位置をギザギザ状に互いにずらして並ぶことになる。
また、この場合、ヘッド部12全体での副走査方向におけるノズル列の長さDhについては、図示のように、各回の主走査動作において形成される領域302y〜kの全体の副走査方向における長さと考えることができる。また、副走査方向における長さ(バンド幅)がDhになるバンド領域は、全てのインクジェットヘッドによりインク滴が吐出される領域402と、領域402よりも副走査方向において一端側にくる領域404と、領域402よりも副走査方向において他端側にくる領域406とに分けられることになる。
そして、この場合、領域402は、例えば、1回の主走査動作により媒体50への印刷を完了する領域になる。一方、1回の主走査動作のみを行った場合、領域404及び領域406は、端がギザギザ状に印刷される。そのため、領域404及び領域406は、前又は後の回の主走査動作と合わせて2回の主走査動作で印刷を完了する領域になる。
このように構成した場合、例えば、ノズル列の端の影響が重なって視認されることを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、ノズル列の端の影響によりバンド縞等が発生することを適切に防ぐことができる。
尚、この場合、図から明らかなように、領域404及び領域406に対し、各色用のインクジェットヘッドは、2回の主走査動作のうちの、いずれか一方の主走査動作において、インク滴を吐出することになる。そのため、この場合も、印刷のパス数については、1回と考えることができる。また、主走査方向において隣接するインクジェットヘッドの間において、副走査方向への位置のずらし量は、例えば、人間の視覚感度が最大になる空間周波数に対応する距離よりも大きくすることが考えられる。また、より簡略には、このずらし量について、例えば200μm以上にすることが考えられる。このように構成すれば、例えば、ノズル列の端の影響をより適切に抑えることができる。
また、図10においては、図示の便宜上、副走査方向に対してノズル列方向を傾けない状態で主走査動作を行った結果について、図示を行った。しかし、本変形例においても、実際の印刷時には、例えば図1〜9を用いて説明をした場合と同一又は同様に、媒体の径等に応じて、ヘッド傾斜角度を適宜調整することが考えられる。このように構成すれば、例えば、円筒状等の媒体に対し、より適切に印刷をすることができる。
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。