JP6424408B2 - 圧力センサー用シート、圧力センサーおよび圧力センサー用シートの製造方法 - Google Patents
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Description
本願は、2014年2月6日に、日本に出願された特願2014−021488号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
特許文献2には、単純マトリクスの感圧センサーとして、円筒状弾性体と、その円筒状弾性体の外周面に層状に形成された導電体層と、その導電体層上に形成された誘電体層とからなる感圧用線材を縦横に編み込んだ感圧シートが開示されている。
特許文献3には、電極と感圧導電シートとトランジスタを利用したアクティブマトリクスの感圧センサーが開示されており、シリコンゴムにグラファイトが添加された感圧導電シートが開示されている。
特許文献4には、感圧導電シートとして、ゴム基材の表面に導電材を含有する樹脂塗膜を形成して、二層以上の構成としたフレキシブルな感圧センサーが開示されている。二層以上の構成とすることで、圧力−抵抗変化のヒステリシスを改善することができる。
(1)第1の電極シートと、第2の電極シートと、前記第1の電極シートと前記第2の電極シートの間に配置され、押しつぶされることで抵抗値が変化する導電性繊維が絡み合ってなる綿状の感圧導電層と、を備え、前記導電性繊維は二つの電極シートに平行な方向に配向して延在し、かつ垂直な方向に積層して配設され、さらに前記感圧導電層を構成する前記導電性繊維同士の間に、空隙部を有することを特徴とする圧力センサー用シート。
(2)前記導電性繊維が、高分子材料に導電性材料が分散されたものであることを特徴とする(1)に記載の圧力センサー用シート。
(3)前記導電性材料が、第1の導電性材料及び第2の導電性材料からなり、前記第1の導電性材料は線状の導電性材料であり、前記第2の導電性材料は粒子状(鱗片状を含む)の導電性材料であることを特徴とする(2)に記載の圧力センサー用シート。
(4)前記第1の導電性材料が、カーボンナノチューブまたはカーボンナノホーンであり、前記第2の導電性材料が、グラフェンまたはカーボンブラックであることを特徴とする(3)に記載の圧力センサー用シート。
(5)前記導電性繊維における、前記第1の導電性材料の質量比は、前記第2の導電性材料の質量比より小さいことを特徴とする(3)または(4)のいずれかに記載の圧力センサー用シート。
(6)前記感圧導電層を構成する前記導電性繊維のうち、前記第1の電極シートまたは前記第2の電極シートに接触する部分の少なくとも一部が、前記第1の電極シートまたは前記第2の電極シートに結着していることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか一項に記載の圧力センサー用シート。
(8)前記感圧導電層と前記第2の感圧導電層とが接着されていることを特徴とする(7)に記載の圧力センサー用シート。
(9)前記高分子材料が、エラストマーであることを特徴とする(2)〜(7)のいずれか一項に記載の圧力センサー用シート。
(10)前記第1の電極シートと前記第2の電極シートが、透明電極であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか一項に記載の圧力センサー用シート。
(11)前記感圧導電層は、前記電極シートに垂直な方向から見て、前記導電性繊維がない空隙部を有していることを特徴とする(1)〜(10)のいずれか一項に記載の圧力センサー用シート。
(13)前記導電性繊維の直径が100nm〜10μmであることを特徴とする(1)〜(12)のいずれか一項に記載の圧力センサー用シート。
(14)前記感圧導電層の厚さは、前記第1の電極シートと前記第2の電極シートの厚さの合計より小さいことを特徴とする(1)〜(13)のいずれか一項に記載の圧力センサー用シート。
(15)前記第1の電極シートおよび前記第2の電極シートの厚さは、略同等であることを特徴とする(1)〜(14)のいずれか一項に記載の圧力センサー用シート。
(16)前記第1の電極シートまたは前記第2の電極シートは通気性を有することを特徴とする(1)〜(15)のいずれか一項に記載の圧力センサー用シート。
(18)前記感圧導電層の厚さが、0.5μm〜100μm以下であることを特徴とする(1)〜(17)のいずれか一項に記載の圧力センサー用シート。
(19)前記感圧導電層中に、非導電性繊維が混在していることを特徴とする(1)〜(18)のいずれか一項に記載の圧力センサー用シート。
(20)(1)〜(19)のいずれか一項に記載の圧力センサー用シートの、前記第1の電極シートまたは前記第2の電極シートの少なくとも一方の電極が、トランジスタに接続されていることを特徴とする圧力センサー。
(21)(1)〜(19)のいずれか一項に記載の圧力センサー用シートの製造方法であって、高分子材料と導電性材料とを含む分散系液体をエレクトロスピニングデポジション法で第1の電極シート上に噴射して、導電性繊維が絡み合ってなる感圧導電層を形成することを特徴とする圧力センサー用シートの製造方法。
(23)前記高分子材料と前記導電性材料とを含む分散系液体を、エレクトロスピニングデポジション法で第2の電極シート上に噴射して、導電性繊維が絡み合ってなる第2の感圧導電層を形成する工程と、前記感圧導電層と、前記第2の感圧導電層を結着させる工程と、をさらに有することを特徴とする(21)または(22)のいずれかに記載の圧力センサー用シートの製造方法。
更に、導電性繊維における、第1の導電性材料の質量比を、第2の導電性材料の質量比より小さくすることで、圧力による抵抗値変化のダイナミックレンジが極めて大きく取れる。第2の導電性材料を高質量比で分散させることで、高い圧力が作用したときに大きな抵抗値低下が得られるためである。
第1の電極シートおよび第2の電極シートの両方の電極シートは、通気性を有していてもよい。通気性を有する感圧導電層に加えて、両方の電極シートに通気性を持たせることで、圧力センサー用シート全体が通気性を有する。これにより、発汗する皮膚等の表面にセンサーシートを貼りつけた時に、皮膚等からの水分の放散できる。そのため、皮膚等からの水分による、体表に作用する圧力誤差を抑制し、精密な計測を行うことができる。このような構成は、長期間装着における、不快感や障害を生じさせない計測システムを可能にする。
図1は、本発明の一実施形態に係る圧力センサー用シートの断面を模式的に示した図である。図2は、本発明の一実施形態に係る感圧導電層を平面視で光学顕微鏡を用いて観察した写真である。
圧力を加えていない状態では、導電性繊維2同士の重なりが弱いため、圧力センサー用シート10はほとんど導通せず、第1の電極シート1aと第2の電極シート1b間で1010Ωオーダーの抵抗値を示す。一方で、圧力を印加すると導電性繊維2同士の重なりが強くなり、第1の電極シート1aと第2の電極シート1b間で、圧力センサー用シート10は、102Ωオーダーの抵抗値を示す。これは、第1の電極シート1aおよび第2の電極シート1bと導電性繊維2の接触面が多くなるためである。つまり、この圧力センサー用シート10は、102Ωオーダーから1010Ωオーダーまでの幅広い抵抗値変化を示す。
この圧力センサー用シート10は、0〜200Paの弱い圧力を加えた際の抵抗値変化が非常に顕著である。すなわち、圧力センサー用シート10は、わずかな圧力変化に対しても高感度なセンサーとして機能する。
圧力センサー用シート10は、二つの電極シートに平行な方向の伸縮に対して応答量が大きく変化しないため、曲げた状態で圧力を印加した場合と伸ばした状態で圧力を印加した場合とで、ほぼ同一の応答量を得ることができる。つまり、圧力センサー用シート10は、動的な部分における圧力変化も、測定のノイズの小さい高精度な測定を行うことができる。このような高精度な測定は、例えば、従来のゴム中に導電粒子を分散させた圧力センサー用シートでは高感度に測定することができなかった。
図5の測定時には、二つの電極シート間に2Vの電圧を印加している。図5の測定は、測定開始から3秒後に0.4gの重りを圧力センサー用シート上に置き、測定開始から8秒後に0.4gの重りを圧力センサー用シート上から除いた。さらに、測定開始から14秒後に1.6gの重りを圧力センサー用シート上に置き、測定開始から20秒後に1. 6gの重りを圧力センサー用シート上から除いた。
図5に示すように、圧力センサー用シート10は折り曲げられた状態でも圧力が加わることで抵抗値に変化が生じている。また、0.4gの重りと1.6gの重りを置いたときでは、流れる電流量に差があり、圧力センサー用シート10は、わずかな圧力差も検出することができる。
第1の電極シート1aおよび第2の電極シート1bは、透明電極であることが好ましい。前述のように導電性繊維2は空隙部を有し、光を透過する。そのため、電極を透明にすることで、光を透過する圧力センサー用シートを実現することができる。これにより、圧力計測箇所を、圧力センサー用シートを透過して観察することができる。また、圧力計測と圧力センサー用シート上からの光計測を同時に行えるなど、多様な計測への展開が可能となる。
蒸着、スパッタ等される金属等としては、Au、Ag、Cu、Cr、Ti、Al、In、Sn、またはこれら金属の積層、透明導電材料としてITO、PEDOT/PSS等を用いることができる。
感圧導電層3は、通気性を持たない二つの電極シートで両側を封止された場合、密閉された空間に空気を内包することになる。そのため、温度が変化すると密封された空気が収縮または膨張し、内部に圧力を発生させる。この内部圧力は、感圧導電層3の抵抗値を変化させ、計測の誤差を生み出す。また、二つの電極シートを圧着積層する工程で、内部の空気が圧縮されると、その内部圧力が計測の誤差を生む。各電極シートが通気性を有することで、これらの内部圧力が解放され、計測誤差を生じないようにすることが可能となる。
通気性を有する感圧導電層3に加えて、第1の電極シート1aおよび第2の電極シート1bに通気性を有することがより好ましい。第1の電極シート1aおよび第2の電極シート1bが通気性を有することで、圧力センサー用シート10全体が通気性を有することができる。これにより、発汗する皮膚表面にセンサーシートを貼りつけた時に、圧力センサー用シート10が皮膚からの水分の放散を阻害することなく、体表に作用する圧力を計測することができる。これは、長期間装着における、不快感や障害を生じさせない計測システムを可能にする。
第1の電極シート1aと第2の電極シート1bの厚さが略同等であれば、曲げが作用した時に感圧導電層3に作用する歪を可及的に小さくすることができる。そのため、圧力センサー用シート10を曲げることによって圧力測定値に誤差が生じることが抑えられる。
感圧導電層3を構成する導電性繊維2のうち、第1の電極シート1aまたは第2の電極シート1bに接触する部分の少なくとも一部が、第1の電極シート1aまたは第2の電極シート1bに結着していることで、接続状態が極めて安定する。そのため、圧力センサーシート10を用いて、ノイズの少ない計測が可能となる。
感圧導電層3を構成する導電性繊維2は、第1の電極シート1aおよび第2の電極シート1bの両方と少なくとも一部で結着していることが好ましい。これにより導電パスを形成する第1の電極シート1a/感圧導電層3/第2の電極シート1bが、構造的に安定につながる。また構造的な安定は、電気的状態もより高く安定させる。そのため、圧力センサーシート10を用いて、ノイズのさらに少ない計測が可能になる。
また、接着剤等を用いる必要もなく、非常に簡便に圧力センサー用シート10を形成することができる。
図7は、基板上に導電性繊維2をエレクトロスピニングデポジション法でスプレーした際に、導電性繊維2と基板が結着している高分解断面透過電子顕微鏡画像(TEM画像)である。
これらの二つの感圧導電層は、それぞれが各電極シートに結着しているため、感圧導電層と電極との間の接続状態が安定になり、ノイズの少ない計測が可能となる。第2の感圧導電層を構成する第2の導電性繊維は、後述する導電性繊維と同じものを用いることができる。また必ずしも同一のものを用いる必要は無く、導電性繊維と、第2の導電性繊維が異なるものでもよい。
さらに、感圧導電層と第2の感圧導電層とが接着されていることが好ましい。また感圧導電層と第2の感圧導電層とが結着されていることがより好ましい。感圧導電層と第2の感圧導電層とが接着されていることで圧力センサー用シート10が構造的に安定する。それに伴い、電気的状態もさらに高く安定し、更にノイズの少ない計測が可能となる。また感圧導電層と第2の感圧導電層が結着されていると、感圧導電層と第2の感圧導電層を電気的に阻害するものがなく、より電気的状態が高く安定し、さらにノイズの少ない計測が可能となる。
なお、ここで言う「接着」とは、本明細書において「結着」と記載する自己組織的な接合でもよく、その他の接着剤等を用いた接合でもよい。
また具体的には、100μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。感圧導電層3の厚さが100μm以下であると、フレキシブル性が高く、複雑な形状を持つ物体や動く物体にも追従することができ、高感度でかつフレキシブルな圧力センサー用シートとして機能することができる。その厚さが10μm以下であると、十分な透明性を維持することができる。
導電性繊維2は、第1の導電性材料2aと、第2の導電性材料2bと高分子材料2cとを少なくとも有することが好ましい。第1の導電性材料2aと、第2の導電性材料2bは導電性繊維2中に均一に分散している。均一に分散していないと、導電性繊維2が良好な導電性を示すことができない。また本発明の導電性材料とは、微粒子サイズの導電性物質を構成要素とする材料をいう。
線状の第1の導電性材料2aは、粒子状の第2の導電性材料2bを高分子材料2c中で電気的に接続する。圧力センサー用シート10に弱い圧力が作用した場合に、線状の第1の導電性材料2aを経た導電性変化の寄与により、導電性繊維の抵抗値が低下する。この作用により、低い圧力でのセンサー感度とその安定性の向上が得られる。また、線状の第1の導電性材料2aが導電性繊維2の作成工程における粒子状の第2の導電性材料2bの分散安定性を向上させるという副次的効果も得られる。
更に、導電性繊維における、第1の導電性材料2aの質量比を、第2の導電性材料2bの質量比より小さくすることで、圧力による抵抗値変化のダイナミックレンジが極めて大きく取れる。第2の導電性材料を高質量比で分散させることで、高い圧力が作用したときに大きな抵抗値低下が得られるためである。
カーボンナノチューブは一般にレーザーアブレーション法、アーク放電、熱CVD法、プラズマCVD法、気相法、燃焼法などで製造することができるが、どのような方法で製造したカーボンナノチューブを用いても構わない。
特に導電性繊維における、第1の導電性材料2aの質量比が0.5wt%〜5wt%であり、第2の導電性材料2bの質量比が5wt%〜50wt%であることが好ましい。
第2の導電性材料2bが、導電性の主要因であるため、第2の導電性材料2bの質量比が、第1の導電性材料2aの質量比よりも多いことで、圧力センサー用シート10の抵抗値変化量を大きくすることができ、圧力センサー用シート10の感度を高くすることができる。
第1の導電性材料2aの質量比が1wt%〜5wt%であり、第2の導電性材料2bの質量比が15wt%〜50wt%であれば、より感度のよい圧力センサー用シート10として機能することができる。
高分子材料2cに硬い物質を選択すると、圧力センサー用シート10に圧力を加えた際の導電性繊維2同士の重なりが少なくなり、圧力センサー用シート10の感度が低下する。一方、軟らかい物質を選択すると、その逆で導電性繊維2同士の重なりが大きくなるため、圧力センサー用シート10の感度を上昇させることができる。そのため、圧力センサー用シート10の使用目的によって高分子材料2cは変更することができる。
図9は本発明の一実施形態に係る圧力センサー100の断面模式図である。図9に示すように圧力センサー用シート10と、圧力センサー用シート10の第1の電極シート1aまたは第2の電極シート1bの少なくとも一方がトランジスタ20と接続されている。
高い柔軟性を持つ圧力センサー用シート10では、細かい凹凸を有する表面での計測に適している。そのため、圧力分布を高い空間分解能で計測するために、電極を多数のセグメントに分割して、複数の測定点を一つの圧力センサー用シート10に配設する。電極セグメントをマトリックス状に多数配設するには、それぞれの電極セグメントをトランジスタでスイッチングすることが有効である。これにより、高機能な圧力センサーを実現できる。
本発明の一態様に係る圧力センサー用シートの製造方法は、高分子材料と導電性材料とを含む分散系液体をエレクトロスピニングデポジション法で電極シート上に噴射して、導電性繊維が絡み合ってなる感圧導電層を形成する。エレクトロスピニング法は第1の電極シート上において、導電性繊維が特別な接着剤や処理を行うことなく結着させることができるため、極細の繊維からなる感圧導電層を形成するのに好適である。
圧力センサー用シートの製造方法は、溶媒に、第1の導電材料とイオン液体とを混合し、溶媒中に第1の導電材料が分散した第1の分散系を得る第1の工程と、溶媒に、第2の導電材料を混合し、溶媒中に第2の導電材料が分散した第2の分散系を得る第2の工程と、第1の分散系と第2の分散系を混合し、第3の分散系を得る第3の工程と、第3の分散系にエラストマーを加え、撹拌し、第4の分散系を得る第4の工程と、第4の分散系をエレクトロスピニングデポジション法で第1の電極シート上に導電性繊維が絡み合ってなる感圧導電層を形成する第5の工程と、を有することが好ましい。以下、第1〜第5の工程を有する好ましい製造条件に基づいて圧力センサー用シートの製造方法について説明する。
第1の工程は、溶媒に、第1の導電材料とイオン液体とを混合し、第1の溶媒中に第1の導電材料が分散した第1の分散系を得る。
溶媒としては、4−メチル2ペンタノン(4−methyl−2−pentanone)が好適である。第1の導電材料としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、金属ナノワイヤー等を用いることができる。イオン液体としては、EMIBF4、DEMEBF4等を用いることができる。イオン液体は、第1の導電材料同士が凝集することを防ぐ役割がある。
第2の工程は、溶媒に、第2の導電材料を混合し、溶媒中に第2の導電材料が分散した第2の分散系を得る。
溶媒は、第1の工程の溶媒と同一のものを用いることができる。第2の導電材料としては、グラフェン、金ナノフレーク、銀ナノフレーク、アルミニウムフレーク、カーボンブラック、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、銅ナノ粒子等を用いることができる。第2の工程においてもせん断力を加えることが好ましく、第1の工程と同一のものを用いることができる。
第2の工程においても、第1の工程と同様にイオン液体を更に、混合してもよい。
第3の工程は、第1の分散系と第2の分散系を混合し、第3の分散系を得る。第1の工程と第2の工程とで用いる溶媒は同一であるため、溶媒に第1の導電材料と第2の導電材料を一度に投入することも考えられる。しかしながら、一度に第1の導電材料と第2の導電材料を投入すると、それぞれが均一に溶媒中に分散しづらくなる。そのため、第1の分散系と第2の分散系をそれぞれ作製し、その後これらを混合し第3の分散系を得ることが重要である。
第4の工程は、第3の分散系にエラストマーを加え、撹拌し、第4の分散系を得る。
エラストマーとしては、フッ素系ゴム、ウレタン系ゴム、シリコン系ゴム等の一般に使用されるものを用いることができる。エラストマーの他に、アクリル、ナイロン、ポリエステル等の高分子材料も用いることができる。第3の分散系に追加するエラストマー材料を選択することで、第4の分散系の粘度が変化する。粘度が変化することで、最終的に形成される導電性繊維の直径及び硬度が変化する。これにより、圧力センサー用シートの感度が変化する。すなわち、エラストマーを変えることで圧力センサー用シートの感度を変化させることができる。
第5の工程は、第4の分散系をエレクトロスピニングデポジション法で、導電性繊維を有する感圧導電層を形成する。ここで、エレクトロスピニングデポジション法について、図10を用いて説明する。
第1の工程として、4−メチル2ペンタノンからなる溶媒に、カーボンナノチューブを0.6wt%、イオン液体を2wt%の割合で混合した。この混合液を高圧ジェットミルホモジナイザー(60MPa;Nano−jet pal,JN10,Jokoh)によってせん断力を加えることで、4−メチル2ペンタノンからなる溶媒にカーボンナノチューブが均一に分散された第1の分散系を得た。
さらに第4の工程として、フッ素系ゴムであるG−912(商品名、ダイキン工業社製)を、第3の分散系に対し、25wt%の割合で混合し、スターラーで4時間撹拌し、第4の分散系を得た。このとき第4の分散系における、エラストマーとカーボンナノチューブとグラフェンの割合はそれぞれ、0.3wt%、3wt%、25wt%であった。
得られた感圧導電層の膜厚は、4μmであった。このとき電極シートは1.4μmのPETフィルム上に、Auを50nm積層して作製した。
導電性繊維の直径は、300nm〜400nmであり、導電性繊維中の第1の導電材料の質量比は、1wt%であり、第2の導電材料の質量比は、12wt%であった。
図11は実施例1の圧力センサー用シートの写真である。この圧力センサー用シートの総厚は7μmであった。
実施例2は、第5の工程以外は、実施例1と同様の製造方法を用いて圧力センサーを作製した。実施例2では第5の工程において、第4の分散系を注入したシリンジと共に、第4の分散系とは導電性材料を含まないことだけが異なる溶液を注入したシリンジを用意した。これら二つのシリンジから第4の分散系と導電性材料を含まない溶液とを同時にそれぞれ送り出しながら、エレクトロスピニングデポジション法により電極シート上に20cm×20cm角の感圧導電層を作製した。このとき用いたシリンジのニードル径や、ニードルと電極シートとの距離や、ニードルと電極シート間に印加する電圧は、実施例1と同一とした。
得られた感圧導電層の膜厚は、4μmであり、感圧導電層中には、非導電性繊維を、導電性繊維:非導電繊維が1:1の割合で混合した。電極シートは1.4μmのPETフィルム上に、Auを50nm積層して作製した。導電性繊維の直径は、300nm〜400nmであり、導電性繊維中の第1の導電材料の質量比は、1wt%であり、第2の導電材料の質量比は、12wt%であった。得られた圧力センサーの総厚は、7μmであった。
実施例1の圧力センサー用シートは、102Ωオーダーから1010Ωオーダーまでの抵抗値変化を示し、実施例2の圧力センサー用シートは、104Ωオーダーから1010Ωオーダーまでの抵抗値変化を示し、共に印加された圧力に対し、非常に大きな抵抗値変化を示している。
実施例1の圧力センサー用シートに対し、実施例2の圧力センサー用シートは抵抗値変化が小さく感度が異なっている。これは、実施例2の圧力センサー用シートは、導電性繊維と非導電性繊維が混在しており、実施例1の導電性繊維からなる圧力センサー用シートと比較して感度が鈍くなっている。すなわち、圧力センサー用シートの導電性繊維と非導電性繊維との混在割合を変化させることで、容易に圧力センサー用シートの感度を調整することができる。
実施例3は、有機電界効果トランジスタが、12.5μm厚のPIフィルム上に形成されていること以外は、実施例1と同様の製造方法を用いて圧力センサーを作製した。得られた圧力センサーの層厚は29μmであった。
実施例4は、有機電界効果トランジスタが、75μm厚のPIフィルム上に形成されていること以外は、実施例1と同様の製造方法を用いて圧力センサーを作製した。得られた圧力センサーの層厚は154μmであった。
実施例1および2は、曲げ伸ばしを行っても、同じ曲げ半径において同じ抵抗値を示しており、曲げ伸ばし等にも適応しており、フレキシブルな温度センサー用シートとして機能していることが分かる。中でも、実施例1の圧力センサー用シートは、曲げ半径が0に近づいた状態(圧力センサー用シートがほぼ二つに折り重なった状態)でも、伸ばした状態と抵抗値の値が変わらない。すなわち、圧力センサー用シートに平行方向の圧力には、ほとんど反応していないことが分かる。言い換えると、圧力センサー用シートに垂直に印加された圧力のみを正確に測ることができ、複雑な形状や、曲げ伸ばし等の動きのある物体への圧力センサー用シートとしてより適している。
血管の脈動は、人工血管内に80mmHgと120mmHgの圧力で交互に液体を送ることで模擬した。図14Bで示すように、脈動に応じて、得られる電流値が変化していることがわかる。すなわち、動く物体にも適切に追従し、動く物体に加わる圧力を、高感度に測定できていることがわかる。
実施例6では、実施例1の第1の工程を行っていない点が異なる。すなわち、実施例6の圧力センサー用シートは、導電性繊維内の導電材料としてグラフェンのみを用いている点が、実施例1の圧力センサー用シートと異なる。
Claims (18)
- 第1の電極シートと、第2の電極シートと、前記第1の電極シートと前記第2の電極シートの間に配置され、押しつぶされることで抵抗値が変化する導電性繊維が絡み合ってなる綿状の感圧導電層と、を備え、
前記導電性繊維は二つの電極シートに平行な方向に配向して延在し、かつ垂直な方向に積層して配設され、
さらに前記感圧導電層を構成する前記導電性繊維同士の間に、空隙部を有し、
前記導電性繊維が、高分子材料に導電性材料が分散されたものであり、
前記導電性材料が、第1の導電性材料及び第2の導電性材料からなり、
前記第1の導電性材料は線状の導電性材料であり、
前記第2の導電性材料は粒子状(鱗片状を含む)の導電性材料であり、
前記導電性繊維の直径が100nm〜10μmであることを特徴とする圧力センサー用シート。 - 前記第1の導電性材料が、カーボンナノチューブまたはカーボンナノホーンであり、
前記第2の導電性材料が、グラフェンまたはカーボンブラックであることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサー用シート。 - 前記導電性繊維における、前記第1の導電性材料の質量比は、前記第2の導電性材料の質量比より小さいことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサー用シート。
- 前記感圧導電層を構成する前記導電性繊維のうち、前記第1の電極シートまたは前記第2の電極シートに接触する部分の少なくとも一部が、前記第1の電極シートまたは前記第2の電極シートに結着していることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサー用シート。
- 前記感圧導電層と前記第2の電極シートとの間に、第2の導電性繊維が絡み合ってなる第2の感圧導電層をさらに有し、
前記導電性繊維の前記第1の電極シートに接触する部分の少なくとも一部が前記第1の電極シートに結着し、
前記第2の導電性繊維の前記第2の電極シートに接触する部分の少なくとも一部が前記第2の電極シートに結着していることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサー用シート。 - 前記感圧導電層と前記第2の感圧導電層とが接着されていることを特徴とする請求項5に記載の圧力センサー用シート。
- 前記高分子材料が、エラストマーであることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサー用シート。
- 前記第1の電極シートおよび前記第2の電極シートが、透明電極であることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサー用シート。
- 前記感圧導電層は、前記電極シートに垂直な方向から見て、前記導電性繊維がない空隙部を有していることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサー用シート。
- 前記導電性繊維の直径は、前記第1の電極シートおよび前記第2の電極シートの厚さより小さいことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサー用シート。
- 前記感圧導電層の厚さは、前記第1の電極シートと前記第2の電極シートの厚さの合計より小さいことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサー用シート。
- 前記第1の電極シートと前記第2の電極シートの厚さは、略同等であることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサー用シート。
- 前記第1の電極シートまたは前記第2の電極シートは通気性を有することを特徴とする請求項1に記載の圧力センサー用シート。
- 前記感圧導電層の厚さが、前記導電性繊維の直径の2倍以上、100倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサー用シート。
- 前記感圧導電層の厚さが、0.5μm〜100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサー用シート。
- 前記感圧導電層中に、非導電性繊維が混在していることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサー用シート。
- 請求項1に記載の圧力センサー用シートの、前記第1の電極シートまたは前記第2の電極シートの少なくとも一方の電極が、トランジスタに接続されていることを特徴とする圧力センサー。
- 溶媒に、第1の導電材料とイオン液体とを混合し、溶媒中に第1の導電材料が分散した第1の分散系を得る第1の工程と、
溶媒に、第2の導電材料を混合し、溶媒中に第2の導電材料が分散した第2の分散系を得る第2の工程と、
第1の分散系と第2の分散系を混合し、第3の分散系を得る第3の工程と、
第3の分散系に高分子材料を加え、撹拌し、第4の分散系を得る第4の工程と、
第4の分散系をエレクトロスピニングデポジション法で第1の電極シート上に噴射して、導電性繊維が絡み合ってなる感圧導電層を形成する第5の工程と、
を有することを特徴とする圧力センサー用シートの製造方法。
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