以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい一実施形態である生理用ナプキンに基づき図面を参照して説明する。本実施形態のナプキン1は、少なくとも着用者の排泄部に対向するように配されて使用されるもので、図1及び図2に示すように、排泄部対向部1Mを有し、排泄部対向部1Mに液保持性の吸収体4を具備する。排泄部対向部1Mは、ナプキン1の着用時に着用者の膣口等の排泄部に対向配置される部分であり、通常、ナプキン1の縦方向Xの中央部又はその近傍に位置している。またナプキン1は、着用者の前後方向に対応する縦方向Xとこれに直交する横方向Yとを有する。着用者の前後方向は、着用者の腹側から排泄部のある股間部を介して背側に延びる方向である。
さらに説明すると、ナプキン1は、本体部5と、排泄部対向部1Mにおいて本体部5の縦方向Xに沿う両側部それぞれから横方向Yの外方に延出する一対のウイング部6,6とを有している。本体部5は、液保持性の吸収体4と、該吸収体4の肌対向面側に配された表面層2と、該吸収体4の非肌対向面側に配された裏面層としての裏面シート3とを具備し、図1に示す如き平面視において縦方向Xに長い形状を有し、その長手方向が縦方向Xに一致し、該長手方向に直交する幅方向が横方向Yに一致する。
尚、本明細書において、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収体4)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、即ち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側に向けられる面、即ち相対的に着用者の肌から遠い側である。但し、ウイング部のような、着用時に折り曲げられて上下方向が使用前とは反転する部材には、ここでいう「肌対向面」及び「非肌対向面」という用語は使用しない。また、本明細書において、「表面層」は、吸収性物品の着用時に肌対向面を構成する1枚又は複数枚のシート状部材であり、「裏面層」は、吸収性物品の着用時に非肌対向面を構成する1枚又は複数枚のシート状部材である。尚、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置が維持された状態を意味し、吸収性物品が正しい着用位置からずれた状態にある場合は含まない。
本体部5は、図1に示すように、着用時に排泄部対向部1Mよりも着用者の腹側に配される前方部1Fと、着用時に排泄部対向部1Mよりも着用者の背側に配される後方部1Rとを縦方向Xに有している。その場合、排泄部対向部1Mは、本体部5の縦方向Xにおいてウイング部6を有する領域、即ち、ウイング部6の縦方向Xの前方側(着用者の腹側)の付け根6Fと後方側(着用者の背側)の付け根6Rとに挟まれた領域である。ウイング部6の各付け根6F,6Rは、図1に示すようにウイング部6を広げた状態で、円弧状又は鈍角に形成されている。
尚、本発明の吸収性物品がウイング部を有しない場合における排泄部対向部は、該吸収性物品が3つ折りの個装形態に折り畳まれた際に生じる、図中符号Yで示す吸収性物品の横方向に横断する図示しない2本の折曲線について、図中符号Xで示す該吸収性物品の縦方向の前端から数えて第1折曲線と第2折曲線とに挟まれた領域と同じか又は該領域よりも狭い領域である。また、本発明の吸収性物品が、陰唇部に直接装着する、いわゆる陰唇間パッドのような形態の場合には、該吸収性物品全体が排泄部対向部である。
表面層2は、液透過性の表面シート21と、表面シート21の縦方向Xに沿う両側部に配された液不透過性若しくは液難透過性又は撥水性の一対のサイドシート22とからなり、両シート21,22は接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている。本実施形態における両シート21,22は、図1に示すように、縦方向Xに延びる接合線23にて互いに接合されている。図2に示すように、表面シート21は、吸収体4の肌対向面の全域を被覆し、一対のサイドシート22,22は、それぞれ、表面シート21の縦方向Xに沿う側部の肌対向面を被覆し、さらに吸収体4の縦方向Xに沿う側縁から横方向Yの外方に延出している。また図1に示すように、表面シート21及びサイドシート22並びに裏面シート3は、吸収体4の縦方向Xの両端それぞれから縦方向Xの外方に延出し、それらの延出部において、公知の接合手段によって互いに接合されてエンドシール部11を形成している。
裏面シート3は、表面シート21よりも横方向Yの長さが長く、吸収体4の非肌対向面の全域を被覆し、さらに吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出して、一対のサイドシート22,22と共に一対のサイドフラップ部を形成している。この一対のサイドフラップ部が排泄部対向部1Mにて横方向Yの外方に延出して、一対のウイング部6,6が形成されている。サイドフラップ部において、サイドシート22と裏面シート3とは、接着剤等の公知の接合手段によって互いに接合されている。吸収体4と表面層2(表面シート21)及び裏面シート3との間は、それぞれ、接着剤で接合されていても良い。
表面シート21並びにサイドシート22及び裏面シート3としては、それぞれ、この種の吸収性物品に従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。表面シート21としては、液透過性のシート材料を用いることができ、例えば、カード法により製造された不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布;開口手段によって液透過可能とされた樹脂フィルム等が挙げられる。サイドシート22としては、液不透過性若しくは液難透過性又は撥水性のシート材料を用いることができ、例えば、液不透過性又は撥水性の樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体等を用いることができる。裏面シート3には、例えば、液不透過性の樹脂フィルム単独の形態と、該樹脂フィルムの非肌対向面に不織布等からなる外装シートを積層配置した形態とがある。裏面シート3としては、サイドシート22と同じものを用いることができる。
一対のウイング部6,6それぞれの着衣装着面、即ち、ウイング部6を構成する裏面シート3の外面には、ナプキン1の着用時にウイング部6を着衣に固定する図示しないウイング部粘着部が配されている。また、本体部5の非肌対向面、即ち、本体部5を構成する裏面シート3の外面には、本体部5を着衣に固定する図示しない本体部粘着部が配されている。これらの粘着部は、裏面シート3の外面の所定箇所に粘着剤を塗布して設けられており、その使用前においてはフィルム、不織布、紙等からなる図示しない剥離シートによって被覆されている。
吸収体4は、図1に示すように、前方部1Fから排泄部対向部1Mを通って後方部1Rに亘って延在しており、平面視において縦方向Xの両端が縦方向Xの外方に向かって凸状に湾曲した縦長の形状、即ち、角が丸みを帯びた矩形形状をなしている。吸収体4は、吸収性材料を含む液保持性の吸収性コア40と、該吸収性コア40の肌対向面を被覆する肌側コアラップシート41と、該吸収性コア40の非肌対向面を被覆する非肌側コアラップシート42とを含んで構成されている。
本実施形態においては、肌側コアラップシート41と非肌側コアラップシート42とは互いに別体であり、吸収体4は2枚のコアラップシート41,42を含むが、本発明におけるコアラップシートは、1枚の連続したシートであっても良い。例えば、横方向Yの長さが吸収性コア40のそれの2倍以上3倍以下である1枚の連続したコアラップシートを用い、この1枚のコアラップシートを、縦方向X又は横方向Yに2つ折りする等して、折り畳んで吸収性コア40の肌対向面及び非肌対向面を被覆しても良く、その場合、この1枚のコアラップシートにおいて、吸収性コア40の肌対向面を被覆する部分が肌側コアラップシート41、吸収性コア40の非肌対向面を被覆する部分が非肌側コアラップシート42である。
吸収性コア40に含まれる吸収性材料は、吸収性コア40の主体をなし、通常、吸収性コア40の全質量の10質量%以上を占め、100質量%を占めても良い。吸収性コア40に含まれる吸収性材料としては、パルプ等の親水性材料や、吸水性ポリマーが好ましく用いられ、吸収性コア40に含まれる吸収性材料の全てが吸水性ポリマーであっても良い。本発明で用いる吸水性ポリマーとしては、自重の20倍以上の液を吸収・保持でき且つゲル化し得るものが好ましい。そのような吸水性ポリマーの例としては、デンプンや架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体を挙げることができる。ポリアクリル酸塩としては、ナトリウム塩を好ましく用いることができる。また、アクリル酸にマレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はスチレンスルホン酸等のコモノマーを吸水性ポリマーの性能を低下させない範囲で共重合させた共重合体も好ましく使用し得る。吸水性ポリマーの形状は特に制限されず、例えば、球状、塊状、ブドウ状、繊維状など、何れの形状も用いることができる。
本発明の吸収性物品が備える吸収性コア中における吸水性ポリマーの含有量は、該吸収性物品が本実施形態のナプキン1等の如き、経血を吸収する目的の物である場合には、該吸収性コア中の吸収性材料の全質量に対して、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下、より具体的には、好ましくは10質量%以上30質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上25質量%以下である。吸収性コア40には、吸水性ポリマー以外の他の吸収性材料、例えば、木材パルプ、親水化剤により処理された合繊繊維、綿、レーヨン等の親水性繊維を用いることができる。
コアラップシート41,42としては、熱溶融成分を含む液透過性のシート材料を用いることができ、例えば、不織布を用いることができる。不織布の構成繊維に含まれる熱溶融成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。不織布の構成繊維としては、例えば、単一樹脂から構成される単繊維、2種以上の樹脂の混合物から構成される単繊維、2種以上の樹脂からなる複合繊維を用いることができ、複合繊維としては、同心型又は偏心型の芯鞘型複合繊維、サイド・バイ・サイド型複合繊維、2種以上の樹脂からなる分割繊維等を例示できる。不織布の構成繊維は親水化処理されていても良く、即ち、コアラップシート41,42は親水性不織布でも良い。不織布としては、エアスルー不織布、ヒートロール不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等が挙げられる。コアラップシート41,42の坪量は、それぞれ、好ましくは5g/m2以上、さらに好ましくは10g/m2以上、そして、好ましくは30g/m2以下、さらに好ましくは20g/m2以下、より具体的には、好ましくは5g/m2以上30g/m2以下、さらに好ましくは10g/m2以上20g/m2以下である。
吸収体4は、図1及び図2に示すように、縦方向Xに延びる第一領域45と、該第一領域45と横方向Yにおいて隣接して該第一領域45に沿って延びる第二領域46とを有している。より具体的には吸収体4は、平面視して縦方向Xに延びる直線状の第一領域45及び第二領域46をそれぞれ複数有し、それら複数の領域45,46は横方向Yに交互に配されており、且つ吸収体4の縦方向Xに沿う両側部、即ち横方向Yの両端部に第二領域46が位置している。本実施形態における吸収体4は、第一領域45を5つ、第二領域46を6つ有しており、各領域45,46は吸収体4の縦方向Xの全長に亘って連続して延びている。第二領域46の横方向Yの長さ、即ち幅は、第一領域45のそれに比して短く、第二領域46は第一領域45よりも幅狭である。複数の第一領域45は横方向Yの長さが互いに同じであり、複数の第二領域46も横方向Yの長さが互いに同じである。
第二領域46は、第一領域45に比して吸収性材料の坪量が小さい。即ち、第一領域45は、吸水性ポリマー粒子等の吸収性材料が相対的に多い高坪量部であり、第二領域46は、吸収性材料が相対的に少ない低坪量部である。このように、吸収性材料の高坪量部である第一領域45と吸収性材料の低坪量部である第二領域46とが横方向Yに交互に配置されていることにより、吸収体4の肌対向面及び非肌対向面は、それぞれ図2に示すように、第一領域45に対応する凸部と第二領域46に対応する凹部とからなる凹凸を有している。
吸収体4は、縦方向Xに延びる高坪量部(凸部)である第一領域45と、該第一領域45と横方向Yにおいて隣接して該第一領域45に沿って延びる低坪量部(凹部)である第二領域46とを有していることにより、特に、縦方向Xに延びる第一領域45と第二領域46とが横方向Yに交互に配置されていることにより、縦方向Xへの液拡散性に優れ、高い液吸収能を有する。即ち、ナプキン1の着用時に経血等の体液が排泄部対向部1Mの前記排泄部対向部に向けて排泄され、その排泄液が表面シート21を透過して吸収体4の肌対向面を形成する肌側コアラップシート41に到達すると、排泄液は、吸収体4の肌対向面の凹部を形成している第二領域46を主に伝わって、該排泄部対向部から縦方向Xの前後に速やかに拡散される。その拡散の過程で、排泄液は、凹部としての第二領域46に隣接して該凹部の側壁を形成する第一領域45内に吸収される。第二領域46が吸収性材料を含んでいる場合には、第2領域46も排泄液を吸収するが、排泄液の大部分は第一領域45によって吸収される。吸収体4は、このように排泄液を吸収体4の面方向(縦方向X)に拡散させつつこれを内部に吸収することができるため、吸収体4が本来有する液吸収能(吸収容量)を有効に活用することができ、それ故高い液吸収能を示す。
本実施形態においては、第二領域46には吸水性ポリマーをはじめとする吸収性材料が存在せず、第二領域46において、肌側コアラップシート41と非肌側コアラップシート42とが接合されている。コアラップシート41,42同士の接合部は、図2に示すように、吸収体4の厚み方向の中央部に存しており、それ故、吸収体4の肌対向面及び非肌対向面の両面が何れも凹凸面となっている。コアラップシート41,42同士の接合は、接着剤、ヒートシール等の公知の接合手段により実施可能である。前述した通り、コアラップシート41,42は熱溶融成分を含んでいるので、ヒートシール等の熱を伴うエンボス加工によってこれらを互いに接合、即ち熱融着させることが可能であり、その場合接着剤は不要であるが、熱融着に加えて接着剤を用いても良い。
このように第二領域46が、吸収性材料を含まず且つ吸収性コア40の肌対向面側に配された肌側コアラップシート41と非肌対向面側に配された非肌側コアラップシート42との接合部となっていることにより、第一領域45に含まれる吸水性ポリマーが排泄液を吸収して膨潤することによって、第一領域45が膨張しても、第二領域46は膨張しないため、この膨張差によって、吸収体4の湿潤状態においては、第二領域46は吸収体4の縦方向Xに伸びる溝となり、排泄された体液の導液路として作用する。従って、第二領域46に吸収性材料が存在せずにコアラップシート41,42が互いに接合されていることで、前述した吸収体4の縦方向Xの液拡散性がより一層向上し、吸収体4の液吸収能がより一層向上し得る。また、隣接する第一領域45,45の間が、コアラップシート41,42の接合部である第二領域46となっていることは、液拡散性の向上のみならず、吸液前の吸収性材料の移動の防止にも有効である。また、吸収体4の縦方向Xに沿う両側部が、吸収性材料が存在せずコアラップシート41,42が接合されている第二領域46となっていることにより、吸水性ポリマー等の吸収性材料の吸収体4からの脱落が効果的に防止される。
また後述するように、第二領域46には、液吸収性、透湿性、通気性の向上の観点から、図1に示すように、第二領域46を厚み方向に貫通する開口部47が形成されているところ、開口部47の周辺に位置する第一領域45内の吸水性ポリマーが排泄液を吸収して膨潤すると、開口部47の変形や閉塞が生じ、開口部47による所望の効果が奏されないおそれがある。これに対し、開口部47が形成されている第二領域46が、1)第一領域45よりも吸収性材料が少ないか、又は2)吸収性材料を含まず、且つ吸収性コア40の肌対向面側に配された肌側コアラップシート41と非肌対向面側に配された非肌側コアラップシート42との接合部となっていると、開口部47の周辺の吸水性ポリマーが膨潤しても、それに起因する開口部47の変形や閉塞が生じ難く、開口部47による所望の効果がより確実に奏されるようになる。
前述した作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、第一領域45における吸収性材料の坪量と第二領域46における吸収性材料の坪量との差、即ち前者から後者を差し引いた値は、好ましくは50g/m2以上、さらに好ましくは100g/m2以上、そして、好ましくは400g/m2以下、さらに好ましくは300g/m2以下、より具体的には、好ましくは50g/m2以上400g/m2以下、さらに好ましくは100g/m2以上300g/m2以下である。
第一領域45における吸収性材料の坪量は、好ましくは100g/m2以上、さらに好ましくは150g/m2以上、そして、好ましくは600g/m2以下、さらに好ましくは500g/m2以下、より具体的には、好ましくは100g/m2以上600g/m2以下、さらに好ましくは150g/m2以上500g/m2以下である。
また、第二領域46に吸収性材料を意図的に存在させない場合における、吸収性材料の坪量は、好ましくは10g/m2以上、さらに好ましくは30g/m2以上、そして、好ましくは150g/m2以下、さらに好ましくは100g/m2以下、より具体的には、好ましくは10g/m2以上150g/m2以下、さらに好ましくは30g/m2以上100g/m2以下である。
尚、本発明においては前述した通り、吸収性コア40に含まれる吸収性材料の全てが吸水性ポリマーであっても良い。その場合には、ここでいう「吸収性材料の坪量」は「吸水性ポリマーの坪量」に換言できる。
図1及び図3に示すように、第二領域46には、これを厚み方向に貫通する開口部47が形成されている。本実施形態における開口部47は、図1に示すように、平面視楕円形形状をなし、排泄部対向部1M、より具体的には、ナプキン1の着用時に着用者の膣口等の排泄部に対向配置される排泄部対向部及びその近傍に存している。ここでいう「排泄部対向部の近傍」は、排泄部対向部1MのX方向中心線とY方向中心線とが交わる点から半径30mmの仮想円以内の領域である。本実施形態においては、吸収体4の横方向Yの中央部に第一領域45が縦方向Xに延びるように配され、その1つの横方向中央部の第一領域45(吸収体4を横方向Yに二分して縦方向Xに延びる縦中心線Lycに重なる第一領域45)と横方向Yにおいて隣接する一対の第二領域46,46それぞれの縦方向Xの中央部に、開口部47が形成されている。その横方向中央部の一対の第二領域46,46それぞれには、平面視楕円形形状の複数(図示の形態では4個)の開口部47が、その短軸を縦方向Xに一致させ、長軸を横方向Yに一致させて、縦方向Xに間欠的に形成されている。複数の開口部47は、縦中心線Lycを基準として対称に形成されている。
図3に示すように、開口部47は、該開口部47が形成されている第二領域46と、該第二領域46に横方向Yにおいて隣接する第一領域45とに跨って存している。本実施形態においては複数の開口部47はそれぞれ、図3に示す如き吸収体4の平面視において、第二領域46から横方向Yの外方及び内方の両方向に延出しており、一対の第一領域45,45とそれらの間に位置する1つの第二領域46との3つの領域に跨って存している。このように、開口部47の全体が第二領域46内に収まらずに、その一部が第二領域45に隣接する第一領域45に入り込んでいることにより、第二領域46を通って縦方向に拡散される経血等の排泄液が、開口部47を介して隣接する第一領域45に拡散されるようになり、これにより横方向Yの液拡散性が向上し、吸収体4の液吸収能がより一層向上し得る。一般に、吸収体にこれを厚み方向に貫通する開口部を形成することで、通気性及び透湿性が向上し、それによってムレやカブレが効果的に抑制される。本実施形態に係る開口部47は、通気性及び透湿性の向上のみならず、排泄液の面方向における拡散性の向上にも寄与し得るものである。
前述した開口部47による作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、開口部47の最大径は、好ましくは1mm以上、さらに好ましくは3mm以上、そして、好ましくは10mm以下、さらに好ましくは8mm以下、より具体的には、好ましくは1mm以上10mm以下、さらに好ましくは3mm以上8mm以下である。尚、ここでいう「開口部の最大径」は、開口部47が採り得る直径の最大値であり、例えば、開口部47が本実施形態のように平面視楕円形形状の場合は長軸を意味し、平面視真円形状の場合は直径を意味する。
また、開口部47の数は、好ましくは1個以上、さらに好ましくは4個以上、そして、好ましくは100個以下、さらに好ましくは80個以下、より具体的には、好ましくは1個以上100個以下、さらに好ましくは4個以上80個以下である。
開口部47は、吸収体4における開口部47の形成予定部位に対し、熱を伴うエンボス加工、型抜き加工、切削加工等の後加工を施すことによって形成することができる。前述した通り、コアラップシート41,42は熱溶融成分を含んでいるため、開口部47を形成するための加工が熱を伴う加熱加工であると、両シート41,42がその熱によって溶融し、開口部47における第一領域45に位置する部分においては、両シート41,42同士が熱融着によって接合する。また、両シート41,42は、吸収性コア40が吸水性ポリマー等の熱融着性成分を含んでいる場合には、第一領域45を構成する吸水性ポリマー等の樹脂製の吸収性材料と融着して、融着部を強固に形成する。このように、開口部47の開口周縁部の少なくとも一部に、コアラップシート41,42同士の融着部が形成されていると、前述した、吸水性ポリマーの膨潤に起因する開口部47の変形や閉塞がより一層確実に抑制される。
開口部47の開口周縁部におけるコアラップシート41,42同士の融着部は、該開口周縁部の一部のみならず、該開口周縁部の全体に形成することもできる。例えば、周面にエンボス用凸部が突設されたエンボスロールを用いて吸収体4に対して開口部47を形成するための熱エンボス加工を施す場合において、そのエンボス用凸部の先端部全体を、コアラップシート41,42の構成繊維が溶融可能な温度で加熱した状態で吸収体4に対して熱エンボス加工を施した場合、そうして形成された開口部47は、その開口周縁部全体が、コアラップシート41,42同士の融着部となり得る。しかしながら、コアラップシート41,42同士の融着部は樹脂からなり、経血等の排泄液を透過させ難いため、開口部47の開口周縁部全体が該融着部であると、前述した開口部47を介しての横方向Yへの液拡散作用が抑制され、吸収体4の液吸収能が低下するおそれがある。
そこで本実施形態においては、図4に示すように、コアラップシート41,42同士の融着部48は、開口部47の開口周縁部に部分的に形成されており、該開口周縁部全体が融着部48とはなっていない。また、吸収性コア40が熱融着性成分を含んでいる場合であっても、コアラップシート41,42及び吸収性コア40の熱融着は部分的に形成されている。開口部47の開口周縁部における融着部48以外の部分は、コアラップシート41,42の融着物が存在せず、第一領域45の吸収性コア40が露出した非融着部49となっている。本実施形態において、経血等の排泄液が開口部47に流入した場合、その一部が非融着部49を介して、第一領域45内に吸収されることになる。
コアラップシート41,42同士の融着部48を、開口部47の開口周縁部に部分的に形成するためには、例えば、周面にエンボス用凸部が突設されたエンボスロールを用いて吸収体4に対して開口部47を形成するための熱エンボス加工を施す方法において、吸収体4との接触部位であるエンボス用凸部の先端部を、該先端部を用いて形成される開口部47の周方向の全体に亘って加熱せずに、該周方向の一部のみを加熱すれば良い。その方法によれば、吸収体4における、エンボス用凸部の先端部の加熱部との接触部分のみにおいて、コアラップシート41,42同士が融着して融着部48が形成される。図4に示すように、複数の融着部48が開口部47の開口周縁部においてその周方向に間欠的に形成されていると、換言すれば、複数の非融着部49が開口部47の開口周縁部においてその周方向に間欠的に形成されていると、主として融着部48によって奏される作用効果(吸水性ポリマーの膨潤に起因する開口部47の変形や閉塞の抑制効果)と、主として非融着部49によって奏される作用効果(開口部47を介しての面方向への液拡散効果)とのバランスが良好になるため、好ましい。
吸収体4は、例えば次のようにして製造することができる。先ず、肌側コアラップシート41及び非肌側コアラップシート42の何れか一方の一面の一部に、吸収性材料例えば吸水性ポリマー粒子を、所望の第一領域45の形成パターンに合わせて、例えば図1に示す如きストライプ状に散布し、次いで、その吸水性ポリマー粒子の散布面に他方のコアラップシートを重ね合わせて積層シートを得、次いで、該積層シートにおける第二領域46の形成予定部位、即ち、吸水性ポリマー粒子が散布されていない部位を、エンボスロール等を用いて加熱加圧処理することにより、該部位における両コアラップシート41,42を熱融着させる。その後、前述した方法によって、第二領域46に所定部位に開口部47を形成することによって、目的とする吸収体4が得られる。
尚、吸収体4の製造方法において、吸水性ポリマー粒子の散布前に、散布対象のコアラップシートにおける吸水性ポリマー粒子の被散布面に予め接着剤を塗布しても良く、あるいは、吸水性ポリマー粒子の散布後に重ね合わせるコアラップシートの重ね合わせ面に予め接着剤を塗布しても良い。例えば前述したように、第二領域46における肌側コアラップシート41と非肌側コアラップシート42との接合に接着剤を用いる場合は、散布対象のコアラップシート及び散布後に重ね合わせるコアラップシートの一方又は両方における、第二領域46に対応する部位に接着剤を塗布しても良い。また必要に応じ、第一領域45において、肌側コアラップシート41及び/又は非肌側コアラップシート42と吸収性コア40とを接着剤を介して接合しても良く、そうすることによって、吸収性コア40を構成する吸水性ポリマー粒子等の吸収性材料が吸液前に移動する不都合を、効果的に抑制することができる。
図5及び図6には、本発明に係る吸収体の他の実施形態が示されている。後述する他の実施形態については、前記実施形態であるナプキン1と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分には、ナプキン1についての説明が適宜適用される。
図5に示す吸収体4A及び図6に示す吸収体4Bにおいては、開口部47は、該開口部47が形成されている第二領域46から横方向Yの外方に隣接する第一領域45にはみ出しているが、横方向Yの内方に隣接する第一領域45(縦中心線Lycが縦断する第一領域45)にははみ出していない。ここでいう、横方向Yの外方及び内方に関し、吸収体4を横方向Yに二分して縦方向Xに延びる縦中心線Lycを基準として、縦中心線Lycから遠ざかる方向が「横方向外方」であり、縦中心線Lycに近づく方向が「横方向内方」である。即ち、開口部47は、該開口部47が形成されている第二領域46と、該第二領域46の横方向Yの外方に位置してこれに隣接する第一領域45とに跨って存しており、該第二領域46よりも横方向Yの内方、即ち、一対の第二領域46,46に挟まれ、吸収体4の縦中心線Lycと重なる第一領域45には存していない。図3に示す吸収体4における開口部47は、縦中心線Lycと重なる第一領域45にも存していたが、斯かる構成の場合、該第一領域45における、横方向Yにおいて複数の開口部47で挟まれた部分、即ち、排泄部対向部及びその近傍に位置する部分に、該部分の吸収容量を超える多量の排泄液が集中するため、排泄部対向部に排泄液が残留するおそれがある。吸収体4A,4Bは斯かる不都合の防止を図ったものであり、吸収体4A,4Bにおいては、縦中心線Lycと重なる第一領域45に開口部47が存していないため、図3に示す吸収体4で懸念される事項が払拭されている。
図5に示す吸収体4Aにおいては、平面視楕円形形状の複数の開口部47は、それぞれ、その長軸が横方向Yに一致しており、これにより、これら複数の開口部47を介しての面方向における液拡散は、専ら横方向Yへの液拡散となる。
これに対し、図6に示す吸収体4Bにおいては、平面視楕円形形状の複数の開口部47は、それぞれ、その長軸が縦方向X及び横方向Yの両方向に交差する方向に一致しており、且つ縦中心線Lycを基準として対称に形成されている。また、吸収体4Bにおいては、1つの第二領域46につき偶数個(図6に示す形態では4個)の開口部47が、縦方向Xに等間隔を置いて形成されているところ、その1つの第二領域46における偶数個の開口部47は、その偶数個の開口部47の形成領域を縦方向Xに二分して横方向Yに延びる横中心線Lxcを基準として、対称に形成されている。ここでいう「開口部47の形成領域」は、開口部47が複数形成された1つの第二領域46において、縦方向Xの最外方に位置する一対の開口部47,47を含んでそれよりも縦方向Xの内方に位置する領域を意味する。また、吸収体4Bにおいては、平面視楕円形形状の複数の開口部47は、それぞれ、その長軸と横中心線Lxcとの間隔が横方向Yの外方に向かうに従って長くなるように、該長軸が斜めに延びている。要するに、図6に示す吸収体4Bにおいては、平面視楕円形形状の複数の開口部47は、それぞれ、その長軸が、縦中心線Lycと横中心線Lxcとの交点C及びその近傍から縦方向Xの外方且つ横方向Yの外方に延びるように形成されており、これにより、交点C及びその近傍における経血等の排泄液を、これら複数の開口部47を介して縦方向X及び横方向Yの両方向に拡散し得る。縦中心線Lycと横中心線Lxcとの交点C及びその近傍は、通常、排泄部対向部及びその近傍に相当する領域であり、吸収体4において排泄液が最も到達しやすい部位である。
尚、図6に示す実施形態では開口部47が1つの第二領域46に偶数個存在するものであったが、これに代えて、縦中心線Lyc上に1つの開口部47が配され、その前後方向に縦中心線Lycに対称に開口部47が複数個配されて、奇数個の開口部47が1つの第二領域46に配される形態であっても良い。
以上、本発明について説明したが、本発明は、前述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。例えば前記実施形態における開口部47は、平面視楕円形形状であったが、本発明においては第二領域における開口部の平面視形状は、楕円形の如き形状異方性を有するものに制限されず、真円形状、四角形形状等、任意に設定できる。本発明の吸収性物品は、生理用ナプキンの他、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド、使い捨ておむつ等にも適用できる。また、前述した実施形態では吸収性コアに吸水性ポリマーが含まれていたが、吸水性ポリマーが含まれず、パルプのような親水性繊維が吸水材料として含まれる形態であっても良い。この場合の実施形態でも、パルプが吸水によって体積を増せば、前述した実施形態と同様の課題解決が可能となる。