図1は、本発明が適用される車両10の走行に関わる各部の概略構成を説明する図であると共に、その各部を制御する為の制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、走行用の駆動力源となり得る、エンジン12、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2と、動力伝達装置14と、駆動輪16とを備えるハイブリッド車両である。
エンジン12は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等、所定の燃料を燃焼させて動力を出力させる公知の内燃機関である。このエンジン12は、後述する電子制御装置90によってスロットル開度或いは吸入空気量、燃料供給量、点火時期等の運転状態が電気的に制御されることにより、エンジントルクTeが制御される。
第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、駆動トルクを発生させる電動機(モータ)としての機能及び発電機(ジェネレータ)としての機能を有する所謂モータジェネレータである。第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、電力制御ユニット18を介してバッテリユニット20に接続されており、後述する電子制御装置90によって電力制御ユニット18が制御されることにより、第1回転機MG1及び第2回転機MG2の各々の出力トルク(力行トルク又は回生トルク)であるMG1トルクTmg1及びMG2トルクTmg2が制御される。
動力伝達装置14は、エンジン12と駆動輪16との間の動力伝達経路に備えられており、車体に取り付けられる非回転部材であるケース22内に、第1回転機MG1及び第2回転機MG2と共に収容されている。動力伝達装置14は、第1動力伝達部24、第2動力伝達部26、第1動力伝達部24の出力回転部材であるドライブギヤ28と噛み合うドリブンギヤ30、ドリブンギヤ30を相対回転不能に固設するドリブン軸32、ドリブン軸32に相対回転不能に固設されたファイナルギヤ34(ドリブンギヤ30よりも小径のファイナルギヤ34)、デフリングギヤ36を介してファイナルギヤ34と噛み合うディファレンシャルギヤ38、ディファレンシャルギヤ38に連結された車軸40等を備えている。
第1動力伝達部24は、第1動力伝達部24の入力回転部材である入力軸42と同軸心に配置されており、変速部44と差動部46とを備えている。変速部44は、第1遊星歯車機構48、クラッチC1、及びブレーキB1を備えている。差動部46は、第2遊星歯車機構50及びクラッチCSを備えている。
第1遊星歯車機構48は、第1サンギヤS1、第1ピニオンギヤP1、第1ピニオンギヤP1を自転及び公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1ピニオンギヤP1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を有する公知のシングルピニオン型の遊星歯車機構であり、差動作用を生じる差動機構として機能する。第1遊星歯車機構48は、第2遊星歯車機構50よりもエンジン12側に配置された入力側差動機構である。第1キャリヤCA1は、入力軸42に一体的に連結され、その入力軸42を介してエンジン12に連結された回転要素(例えば第1回転要素RE1)である。第1サンギヤS1は、ブレーキB1を介してケース22に選択的に連結される回転要素(例えば第2回転要素RE2)である。第1リングギヤR1は、差動部46の入力回転部材(すなわち第2遊星歯車機構50の第2キャリヤCA2)に連結された回転要素(例えば第3回転要素RE3)であり、変速部44の出力回転部材として機能する。又、第1キャリヤCA1と第1サンギヤS1とは、クラッチC1を介して選択的に連結される。
クラッチC1及びブレーキB1は、好適には何れも湿式の摩擦係合装置であり、油圧アクチュエータによって係合制御される多板型の油圧式摩擦係合装置である。このクラッチC1及びブレーキB1は、後述する電子制御装置90によって油圧制御回路52が制御されることにより、油圧制御回路52から各々供給される油圧(例えば油圧Pc1、Pb1)に応じてその作動状態が係合と解放との間で制御される。
クラッチC1及びブレーキB1が共に解放された状態においては、第1遊星歯車機構48の差動が許容される。よって、この状態では、第1サンギヤS1にてエンジントルクTeの反力トルクが取れない為、変速部44は機械的な動力伝達が不能な中立状態(ニュートラル状態)とされる。又、クラッチC1が係合され且つブレーキB1が解放された状態においては、第1遊星歯車機構48は各回転要素が一体回転させられる。よって、この状態では、エンジン12の回転は等速で第1リングギヤR1から第2キャリヤCA2へ伝達される。一方で、クラッチC1が解放され且つブレーキB1が係合された状態においては、第1遊星歯車機構48は第1サンギヤS1の回転が止められ、第1リングギヤR1の回転が第1キャリヤCA1の回転よりも増速される。よって、この状態では、エンジン12の回転は増速されて第1リングギヤR1から出力される。このように、変速部44は、直結状態(変速比=1.0)となるローギヤと、オーバードライブ状態(例えば変速比=0.7)となるハイギヤとに切り替えられる2段の有段変速機として機能する。又、クラッチC1及びブレーキB1が共に係合された状態においては、第1遊星歯車機構48は各回転要素の回転が止められる。よって、この状態では、変速部44の出力回転部材である第1リングギヤR1の回転が停止されることで、差動部46の入力回転部材である第2キャリヤCA2の回転が停止させられる。
第2遊星歯車機構50は、第2サンギヤS2、第2ピニオンギヤP2、第2ピニオンギヤP2を自転及び公転可能に支持する第2キャリヤCA2、第2ピニオンギヤP2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を有する公知のシングルピニオン型の遊星歯車機構であり、差動作用を生じる差動機構として機能する。第2遊星歯車機構50は、第1遊星歯車機構48よりも駆動輪16側に配置された出力側差動機構である。第2キャリヤCA2は、変速部44の出力回転部材(すなわち第1遊星歯車機構48の第1リングギヤR1)に連結された回転要素(例えば第1回転要素RE1)であり、差動部46の入力回転部材として機能する。第2サンギヤS2は、第1回転機MG1のロータ軸54に一体的に連結され、そのロータ軸54を介して第1回転機MG1に連結された回転要素(例えば第2回転要素RE2)である。第2リングギヤR2は、ドライブギヤ28に一体的に連結された回転要素(例えば第3回転要素RE3)である。又、第2サンギヤS2は、クラッチCSを介して第1キャリヤCA1と選択的に連結される。よって、クラッチCSは、第1キャリヤCA1に連結されたエンジン12と、第2サンギヤS2に連結された第1回転機MG1とを選択的に連結する係合装置である。
クラッチCSは、好適には湿式の摩擦係合装置であり、油圧アクチュエータによって係合制御される多板型の油圧式摩擦係合装置である。このクラッチCSは、後述する電子制御装置90によって油圧制御回路52が制御されることにより、油圧制御回路52から供給される油圧(例えば油圧Pcs)に応じてその作動状態が係合と解放との間で制御される。
クラッチCSが解放された状態においては、第2遊星歯車機構50の差動が許容される。よって、この状態では、第2遊星歯車機構50は、第2キャリヤCA2に入力される動力を第1回転機MG1及び第2リングギヤR2へ分配する動力分配機構として機能することが可能である。すなわち、差動部46において、第2リングギヤR2へ分配される機械的な動力伝達に加え、第1回転機MG1に分配された動力で第1回転機MG1が発電され、その発電された電力が蓄電されたりその電力で第2回転機MG2が駆動される。これにより、差動部46は、後述する電子制御装置90によって電力制御ユニット18が制御されて第1回転機MG1の運転状態が制御されることにより変速比を制御する公知の電気式差動部(電気式無段変速機)として機能する。又、クラッチCSが係合された状態においては、エンジン12と第1回転機MG1とが連結される為、エンジン12の動力によって第1回転機MG1にて発電を行い、その発電した電力を蓄電したりその電力で第2回転機MG2を駆動することが可能である。
このように構成された第1動力伝達部24においては、エンジン12の動力や第1回転機MG1の動力はドライブギヤ28からドリブンギヤ30へ伝達される。従って、エンジン12及び第1回転機MG1は、第1動力伝達部24を介して駆動輪16に動力伝達可能に連結される。又、変速部44は、オーバードライブであるので、第1回転機MG1の高トルク化が抑制される。
第2動力伝達部26は、入力軸42とは別にその入力軸42と平行に配置された、第2回転機MG2のロータ軸56、及びドリブンギヤ30と噛み合うと共にそのロータ軸56に連結されたリダクションギヤ58(ドリブンギヤ30よりも小径のリダクションギヤ58)を備えている。これにより、第2動力伝達部26においては、第2回転機MG2の動力は第1動力伝達部24を介すことなくドリブンギヤ30へ伝達される。従って、第2回転機MG2は、第1動力伝達部24を介さずに駆動輪16に動力伝達可能に連結される。
このように構成された動力伝達装置14は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式の車両に好適に用いられる。又、動力伝達装置14では、エンジン12の動力や第1回転機MG1の動力や第2回転機MG2の動力は、ドリブンギヤ30へ伝達され、そのドリブンギヤ30から、ファイナルギヤ34、ディファレンシャルギヤ38、車軸40等を順次介して駆動輪16へ伝達される。又、動力伝達装置14では、エンジン12、第1動力伝達部24、及び第1回転機MG1と、第2回転機MG2とが異なる軸心上に配置されることで、軸長が短縮化されている。又、第2回転機MG2の減速比を大きくとることができる。
電力制御ユニット18は、インバータ部60、平滑コンデンサCsmなどを有する電気回路である。インバータ部60は、例えば公知のスイッチング素子を備えており、第1回転機MG1及び第2回転機MG2に対してそれぞれ要求された出力トルクが得られるように、後述する電子制御装置90からの指令によってそのスイッチング素子のスイッチング作動が制御されることで、第1回転機MG1及び第2回転機MG2のそれぞれの作動に関わる電力の授受を制御する。平滑コンデンサCsmは、バッテリユニット20とインバータ部60との間に配設された昇圧コンバータ部(不図示)に備えられており、第1回転機MG1及び第2回転機MG2のそれぞれの作動に関わる電力を一時的に蓄電する蓄電部材である。上記昇圧コンバータ部は、バッテリユニット20側の電圧を昇圧したりインバータ部60側の電圧を降圧する。
バッテリユニット20は、例えばリチウムイオン組電池やニッケル水素組電池などの充放電可能な2次電池であるバッテリ部62と、後述する電子制御装置90からの指令によって電力制御ユニット18との間の電気経路の開閉を行う(すなわち電力制御ユニット18に対するバッテリ部62の接続と遮断とを行う)メインリレーMRとを備えている。尚、バッテリ部62は、例えばコンデンサやキャパシタなどであっても差し支えない。
車両10は、走行に関わる各部を制御する制御装置を含む電子制御装置90を備えている。電子制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置90は、エンジン12、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2の各出力制御、後述する走行モードの切替制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用、回転機制御用、油圧制御用等に分けて構成される。
電子制御装置90には、車両10に設けられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ70、出力回転速度センサ72、レゾルバ等のMG1回転速度センサ74、レゾルバ等のMG2回転速度センサ76、アクセル開度センサ78、シフトポジションセンサ80、複数の加速度センサ82、走行モード選択スイッチ84、バッテリセンサ86など)による検出値に基づく各種信号(例えばエンジン回転速度Ne、車速Vに対応するドリブンギヤ30の回転速度である出力回転速度Nout、MG1回転速度Nmg1、MG2回転速度Nmg2、アクセル開度θacc、シフトレバーの操作位置Psh、車両10の各方向から働く加速度(減速度)G、運転者により選択された走行モードMode、バッテリ部62の充電状態(充電容量)SOCなど)が供給される。又、電子制御装置90からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン12、電力制御ユニット18、バッテリユニット20、油圧制御回路52など)に各種指令信号(例えばエンジン制御指令信号Se、回転機制御指令信号Sm、油圧制御指令信号Sp、電源制御指令信号Sbatなど)が供給される。
電子制御装置90は、ハイブリッド制御手段すなわちハイブリッド制御部92、及び動力伝達切替手段すなわち動力伝達切替部94を備えている。ハイブリッド制御部92は、電子スロットル弁を開閉制御し、燃料噴射量や噴射時期を制御し、点火時期を制御するエンジン制御指令信号Seを出力して、エンジントルクTeの目標値が得られるようにエンジン12の出力制御を実行する。又、ハイブリッド制御部92は、第1回転機MG1や第2回転機MG2の作動を制御する回転機制御指令信号Smをインバータ部60へ出力して、MG1トルクTmg1やMG2トルクTmg2の目標値が得られるように第1回転機MG1や第2回転機MG2の出力制御を実行する。
ハイブリッド制御部92は、アクセル開度θaccからそのときの車速Vにて要求される駆動トルク(要求駆動トルク)を算出し、充電要求値(充電要求パワー)等を考慮して低燃費で排ガス量の少ない運転となるように、エンジン12、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2の少なくとも1つから要求駆動トルクを発生させる。ハイブリッド制御部92は、走行モードとして、後述するEV走行モード或いはHV走行モードを走行状態に応じて選択的に成立させる。例えば、ハイブリッド制御部92は、要求駆動トルクが予め定められた閾値よりも小さなモータ走行領域にある場合には、EV走行モードを成立させる一方、要求駆動トルクが予め定められた閾値以上となるエンジン走行領域にある場合には、HV走行モードを成立させる。又、ハイブリッド制御部92は、要求駆動トルクがモータ走行領域にあるときであっても、充電容量SOCが予め定められた閾値未満となる場合には、HV走行モードを成立させる。
ハイブリッド制御部92は、EV走行モードを成立させたときには、エンジン12の運転を停止させると共に、第1回転機MG1及び第2回転機MG2のうちの少なくとも一方の回転機を走行用の駆動力源とするモータ走行(EV走行)を可能とする。ハイブリッド制御部92は、EV走行モードを成立させたときに、第2回転機MG2のみで要求駆動トルクを賄える場合には、後述する単独駆動EVモードを成立させる一方で、第2回転機MG2のみでは要求駆動トルクを賄えない場合には、後述する両駆動EVモードを成立させる。ハイブリッド制御部92は、単独駆動EVモードを成立させた場合には、第2回転機MG2のみを走行用の駆動力源とするEV走行を可能とする一方で、両駆動EVモードを成立させた場合には、第1回転機MG1及び第2回転機MG2の両方を走行用の駆動力源とするEV走行を可能とする。ハイブリッド制御部92は、第2回転機MG2のみで要求駆動トルクを賄えるときであっても、MG2回転速度Nmg2及びMG2トルクTmg2で表される第2回転機MG2の動作点が第2回転機MG2の効率を悪化させる動作点として予め定められた領域内にある場合には(換言すれば第1回転機MG1及び第2回転機MG2を併用した方が効率が良い場合には)、両駆動EVモードを成立させる。ハイブリッド制御部92は、両駆動EVモードを成立させた場合には、第1回転機MG1及び第2回転機MG2の運転効率に基づいて、第1回転機MG1及び第2回転機MG2にて要求駆動トルクを分担させる。
ハイブリッド制御部92は、要求駆動トルクがエンジン走行領域にあることでHV走行モードを成立させた場合には、後述するパラレルモードを成立させる。ハイブリッド制御部92は、パラレルモードを成立させた場合には、エンジン12の動力に対する反力を第1回転機MG1の発電により受け持つことでドライブギヤ28にエンジン直達トルクを伝達すると共に第1回転機MG1の発電電力により第2回転機MG2を駆動することで駆動輪16にトルクを伝達して少なくともエンジン12を走行用の駆動力源とするエンジン走行を可能とする。すなわち、ハイブリッド制御部92は、パラレルモードを成立させた場合には、第1回転機MG1の運転状態を制御することによりエンジン12の動力を駆動輪16へ伝達して走行するエンジン走行を可能とする。このパラレルモードでは、バッテリ部62からの電力を用いた第2回転機MG2の駆動トルクを更に付加して走行することも可能である。ハイブリッド制御部92は、充電容量SOCが予め定められた閾値未満にあることでHV走行モードを成立させたときに、第2回転機MG2のみでは要求駆動トルクを賄えない場合にはパラレルモードを成立させる一方で、第2回転機MG2のみで要求駆動トルクを賄える場合には後述するシリーズモードを成立させる。ハイブリッド制御部92は、シリーズモードを成立させた場合には、エンジン12を作動させて第1回転機MG1を発電させ、第1回転機MG1の発電電力により第2回転機MG2を駆動することで駆動輪16にMG2トルクTmg2を伝達して走行することができる。この走行では、エンジントルクTeは機械的に駆動輪16へ伝達されないが、第2回転機MG2を駆動する基の動力源はエンジン12であるので、シリーズモードの走行もエンジン走行に含める。
動力伝達切替部94は、ハイブリッド制御部92により成立させられた走行モードに基づいて、クラッチC1、ブレーキB1、及びクラッチCSの各係合作動を制御する。動力伝達切替部94は、ハイブリッド制御部92により成立させられた走行モードにて走行する為の動力伝達が可能となるように、クラッチC1、ブレーキB1、及びクラッチCSを各々係合及び/又は解放させる油圧制御指令信号Spを油圧制御回路52へ出力する。
ここで、車両10にて実行可能な走行モードについて図2、及び図3−図7を用いて説明する。図2は、各走行モードにおけるクラッチC1、ブレーキB1、及びクラッチCSの各係合作動を示す図表である。図2の図表中の○印は係合装置(C1,B1,CS)の係合を示し、空欄は解放を示し、△印は回転停止状態のエンジン12を連れ回し状態とするエンジンブレーキの併用時に何れか一方を係合することを示している。又、「G」は回転機(MG1,MG2)を主にジェネレータとしての機能させることを示し、「M」は回転機(MG1,MG2)を駆動時には主にモータとしての機能させ、回生時には主にジェネレータとしての機能させることを示している。 図2に示すように、車両10は、走行モードとして、EV走行モード及びHV走行モードを選択的に実現することができる。EV走行モードは、エンジン12を運転停止して、第1回転機MG1及び第2回転機MG2のうちの少なくとも一方の回転機を駆動力源としてEV走行することができる走行モードである。EV走行モードは、第2回転機MG2のみを駆動力源としてEV走行することができる単独駆動EVモードと、第1回転機MG1及び第2回転機MG2の両方を駆動力源としてEV走行することができる両駆動EVモードとの2つのモードを有している。HV走行モードは、少なくともエンジン12を駆動力源としてエンジン走行することができる走行モードである。HV走行モードは、エンジントルクTeを機械的に駆動輪16へ伝達することでエンジン走行することができるパラレルモードと、エンジン12の動力による第1回転機MG1の発電電力により駆動された第2回転機MG2のMG2トルクTmg2を機械的に駆動輪16へ伝達することでエンジン走行することができるシリーズモードとの2つのモードを有している。パラレルモードでは、エンジン12に加えて、第2回転機MG2を駆動力源として走行することができる。
図3−図7は、第1遊星歯車機構48及び第2遊星歯車機構50の各々における3つの回転要素RE1,RE2,RE3の回転速度を相対的に表すことができる共線図である。この共線図において、第1遊星歯車機構48における各回転要素の回転速度を表す縦線Y1−Y3は紙面向かって左から順に、縦線Y1がブレーキB1を介してケース22に選択的に連結される第2回転要素RE2である第1サンギヤS1の回転速度を、縦線Y2がエンジン12に連結された第1回転要素RE1である第1キャリヤCA1の回転速度を、縦線Y3が第2キャリヤCA2に連結された第3回転要素RE3である第1リングギヤR1の回転速度をそれぞれ示している。又、第2遊星歯車機構50における各回転要素の回転速度を表す縦線Y4−Y6は紙面向かって左から順に、縦線Y4が第1回転機MG1に連結された第2回転要素RE2である第2サンギヤS2の回転速度を、縦線Y5が第1リングギヤR1に連結された第1回転要素RE1である第2キャリヤCA2の回転速度を、縦線Y6がドライブギヤ28に連結された第3回転要素RE3である第2リングギヤR2の回転速度をそれぞれ示している。
図3は、単独駆動EVモード時の共線図である。単独駆動EVモードは、図2に示すように、クラッチC1、ブレーキB1、及びクラッチCSを共に解放した状態で実現される。単独駆動EVモードでは、図3に示すように、クラッチC1及びブレーキB1が解放されることで、第1遊星歯車機構48の差動が許容され、変速部44は中立状態とされる。変速部44が中立状態とされると、第1リングギヤR1に連結された第2キャリヤCA2にてMG1トルクTmg1の反力トルクが取れない為、差動部46は中立状態とされる。従って、クラッチC1及びブレーキB1が解放されることで、第1動力伝達部24は中立状態とされる。動力伝達切替部94は、クラッチC1及びブレーキB1を解放することで、第1動力伝達部24を中立状態とする。ハイブリッド制御部92は、第2回転機MG2から走行用のMG2トルクTmg2を出力させる。後進時は、前進時に対して第2回転機MG2を逆回転させる。車両走行中には、駆動輪16の回転に連動してドライブギヤ28に連結された第2リングギヤR2が回転させられる。単独駆動EVモードでは、第1回転機MG1を空転させても良いが、第1回転機MG1における引き摺り損失等を低減する為に、ハイブリッド制御部92は、MG1回転速度Nmg1を零回転に維持する。例えば、ハイブリッド制御部92は、第1回転機MG1をジェネレータとしての機能させて、フィードバック制御によりMG1回転速度Nmg1を零回転に維持する。或いは、ハイブリッド制御部92は、第1回転機MG1の回転が固定されるように第1回転機MG1に電流を流す制御(d軸ロック制御)を実行して、MG1回転速度Nmg1を零回転に維持する。或いは、MG1トルクTmg1を零トルクとしても第1回転機MG1のコギングトルクによりMG1回転速度Nmg1を零回転に維持できるときはMG1トルクTmg1を加える必要はない。尚、MG1回転速度Nmg1を零回転に維持する制御を行っても、第1動力伝達部24は中立状態であるので、駆動トルクに影響を与えない。
単独駆動EVモードでは、第1リングギヤR1は第2キャリヤCA2に連れ回されるが、変速部44は中立状態であるので、エンジン12は連れ回されず零回転で停止状態とされる。よって、単独駆動EVモードでの走行中に第2回転機MG2にて回生制御を行う場合、回生量を大きく取ることができる。単独駆動EVモードでの走行時に、バッテリ部62が満充電状態となり回生エネルギーが取れない場合、エンジンブレーキを併用することが考えられる。エンジンブレーキを併用する場合は、図2に示すように、ブレーキB1又はクラッチC1が係合される。ブレーキB1又はクラッチC1が係合されると、エンジン12は連れ回し状態とされて、エンジンブレーキが作用させられる。MG1回転速度Nmg1を上昇させることで、エンジン12の連れ回し状態におけるエンジン回転速度Neを上昇させることができる。ブレーキB1又はクラッチC1を係合することでエンジン回転速度Neを上昇させることができるので、EV走行モードからエンジン12を始動するときには、ブレーキB1又はクラッチC1を係合した状態として、必要に応じて第1回転機MG1によりエンジン回転速度Neを引き上げて点火する。このとき、第2回転機MG2に反力キャンセルトルクを追加で出力させる。尚、車両停止時にエンジン12を始動する際には、ブレーキB1又はクラッチC1を係合した状態で第1回転機MG1により第2キャリヤCA2の回転を引き上げることでエンジン回転速度Neを上昇させても良いし、又、第1回転機MG1により第2キャリヤCA2の回転を引き上げてからブレーキB1又はクラッチC1を係合することでエンジン回転速度Neを上昇させても良い。
図4は、両駆動EVモード時の共線図である。両駆動EVモードは、図2に示すように、クラッチC1及びブレーキB1を係合し、且つクラッチCSを解放した状態で実現される。両駆動EVモードでは、図4に示すように、クラッチC1及びブレーキB1が係合されることで、第1遊星歯車機構48の差動が規制され、第1サンギヤS1の回転が停止させられる。その為、第1遊星歯車機構48は何れの回転要素も回転が停止させられる。これによって、エンジン12は零回転で停止状態とされ、又、第1リングギヤR1に連結された第2キャリヤCA2の回転も停止させられる。第2キャリヤCA2の回転が停止させられると、第2キャリヤCA2にてMG1トルクTmg1の反力トルクが取れる為、MG1トルクTmg1を第2リングギヤR2から機械的に出力させて駆動輪16へ伝達することができる。従って、クラッチC1及びブレーキB1が係合されることで、第1動力伝達部24は機械的な動力伝達が可能な非中立状態とされる。動力伝達切替部94は、クラッチC1及びブレーキB1を係合することで、第1動力伝達部24を非中立状態とする。ハイブリッド制御部92は、第1回転機MG1及び第2回転機MG2から各々走行用のMG1トルクTmg1及びMG2トルクTmg2を出力させる。両駆動EVモードでは、前進時に対して第1回転機MG1及び第2回転機MG2を共に逆回転させて後進走行することも可能である。
図5は、HV走行モードのロー状態でのパラレルモード時の共線図である。ロー状態でのパラレルモード(以下、パラレルローモードという)は、図2に示すように、クラッチC1を係合し、且つブレーキB1及びクラッチCSを解放した状態で実現される。パラレルローモードでは、図5に示すように、クラッチC1が係合されることで、第1遊星歯車機構48の差動が規制され、第1遊星歯車機構48の回転要素が一体回転させられる。その為、エンジン12の回転は等速で第1リングギヤR1から第2キャリヤCA2へ伝達される。
図6は、HV走行モードのハイ状態でのパラレルモード時の共線図である。ハイ状態でのパラレルモード(以下、パラレルハイモードという)は、図2に示すように、ブレーキB1を係合し、且つクラッチC1及びクラッチCSを解放した状態で実現される。パラレルハイモードでは、図6に示すように、ブレーキB1が係合されることで、第1サンギヤS1の回転が停止させられる。その為、エンジン12の回転は増速されて第1リングギヤR1から第2キャリヤCA2へ伝達される。
パラレルローモード及びパラレルハイモードでは、エンジン12の動力に対する反力を第1回転機MG1により受け持つことでエンジントルクTeの一部(エンジン直達トルク)を第2リングギヤR2から機械的に出力させて駆動輪16へ伝達することができる。従って、クラッチC1又はブレーキB1が係合されることで、第1動力伝達部24は機械的な動力伝達が可能な非中立状態とされる。動力伝達切替部94は、クラッチC1を係合することで変速部44をローギヤに切り替える一方で、ブレーキB1を係合することで変速部44をハイギヤに切り替える。動力伝達切替部94は、クラッチC1又はブレーキB1を係合することで、第1動力伝達部24を非中立状態とする。ハイブリッド制御部92は、エンジントルクTeに対する反力トルクとなるMG1トルクTmg1を第1回転機MG1の発電により出力させると共に、第1回転機MG1の発電電力により第2回転機MG2からMG2トルクTmg2を出力させる。パラレルローモードでは、前進時に対して第2回転機MG2を逆回転させて後進走行することも可能である。
ハイブリッド制御部92は、車速Vが予め定められた閾値以上の高車速時には、パラレルハイモードを成立させる一方で、車速Vが予め定められた閾値未満の中低車速時には、パラレルローモードを成立させる。ここで、MG1回転速度Nmg1が零回転とされてエンジン12の動力が電気パス(第1回転機MG1や第2回転機MG2の電力授受に関わる電気経路である電気的な動力伝達経路)を介することなく全て機械的にドライブギヤ28へ伝達される状態となる所謂メカニカルポイントでは、理論伝達効率が最大の「1」となる。このメカニカルポイントは、図5,6の共線図における差動部46(縦線Y4−Y6参照)において、MG1回転速度Nmg1が零回転となる状態(すなわち第2サンギヤS2の回転速度が零回転となる状態)である。HV走行モードにおいてパラレルハイモードとパラレルローモードとが切り替えられることでこのメカニカルポイントが2つとなり、パラレルハイモードを有することでメカニカルポイントが高車速側に増えることになり、高速燃費が向上する。
第1動力伝達部24において、変速部44と差動部46とは直列に接続されている。変速部44を変速すれば第1動力伝達部24の変速比も変化させられる。そこで、ハイブリッド制御部92は、変速部44の変速時に第1動力伝達部24の変速比の変化が抑制されるように、動力伝達切替部94による変速部44の変速に合わせて、差動部46の変速を実行する。例えば、ハイブリッド制御部92は、変速部44がローギヤからハイギヤへアップシフトされる場合、それと同時に、差動部46をダウンシフトする。これによって、第1動力伝達部24は、所謂電気的無段変速機として機能させられる。又、変速部44と差動部46とが直列に接続された第1動力伝達部24は変速比幅がワイドになるので、差動部46から駆動輪16までの動力伝達経路における変速比を比較的大きくとることができる。
パラレルハイモードはパラレルローモードと比べて同じエンジン回転速度Neに対して第2キャリヤCA2の回転速度が高くされるので、HV走行モードのパラレルモードにおけるエンジン走行では、高車速時に第1回転機MG1が負回転且つ負トルクの力行状態となって第1回転機MG1に電力が供給される動力循環状態となることが抑制される。
図7は、HV走行モードのシリーズモード時の共線図である。シリーズモードは、図2に示すように、クラッチC1及びブレーキB1を共に解放し、且つクラッチCSを係合した状態で実現される。シリーズモードでは、図3に示すように、クラッチC1及びブレーキB1が解放されることで、第1遊星歯車機構48の差動が許容され、変速部44は中立状態とされる。従って、差動部46は中立状態とされ、第1動力伝達部24も中立状態とされる。加えて、シリーズモードでは、図3に示すように、クラッチCSが係合されることで、エンジン12と第1回転機MG1とが連結される。その為、エンジン12を作動させることで第1回転機MG1を回転駆動して発電をすることができる。この際、第1動力伝達部24は中立状態であるので、エンジントルクTeは機械的に駆動輪16へ伝達されない。動力伝達切替部94は、クラッチC1及びブレーキB1を解放することで、第1動力伝達部24を中立状態とし、クラッチCSを係合することで、エンジン12と第1回転機MG1とを連結する。ハイブリッド制御部92は、エンジン12を作動させ、エンジン12の動力によって第1回転機MG1を発電させ、第1回転機MG1の発電電力により第2回転機MG2を駆動して第2回転機MG2から走行用のMG2トルクTmg2を出力させる。シリーズモードでは、前進時に対して第2回転機MG2を逆回転させて後進走行することも可能である。車両走行中には、駆動輪16の回転に連動してドライブギヤ28に連結された第2リングギヤR2が回転させられる。又、エンジン回転速度Neに連動して第2サンギヤS2が回転させられる。このように回転させられる、第2リングギヤR2の回転速度と第2サンギヤS2の回転速度とにより、第2キャリヤCA2の回転が決められる。
動力伝達装置14では、クラッチC1、ブレーキB1、及びクラッチCSの各係合作動や各部の潤滑や各部の冷却に用いられる作動油(オイル)を供給する為の機械式のオイルポンプ(図7のMOP参照)が第2キャリヤCA2に連結されており、第2キャリヤCA2の回転に伴って駆動される。よって、HV走行モードのシリーズモードでの走行中には、潤滑等に必要なオイルが上記オイルポンプから供給可能である。尚、両駆動EVモードのように第2キャリヤCA2の回転が停止される場合、電動式のオイルポンプ(不図示)によりオイルが供給される。
以上のように、第1動力伝達部24は、クラッチCSが係合されるか解放されるかに拘わらず、クラッチC1及びブレーキB1が解放されることで、エンジン12及び第1回転機MG1の何れの動力も機械的に駆動輪16へ伝達することができない中立状態とされる。又、第1動力伝達部24は、クラッチC1及びブレーキB1が係合されることで、第1回転機MG1の動力を機械的に駆動輪16へ伝達することができる非中立状態とされる。又、第1動力伝達部24は、クラッチC1又はブレーキB1が係合されることで、エンジン12の動力を第1回転機MG1にて反力を取って機械的に駆動輪16へ伝達することができる非中立状態とされる。このように、第1動力伝達部24は、機械的な動力伝達が可能な非中立状態と不能な中立状態とに切替え可能な動力伝達部である。
ところで、車両衝突時(又は車両衝突が予測されるとき)には、電力制御ユニット18内の平滑コンデンサCsmに蓄えられた電力を放電することが望ましい。例えば、回転機MG1,MG2による放電制御を行って電力を消費することが考えられる。しかしながら、回転機MG1,MG2と駆動輪16との間の動力伝達経路が接続されていると、上記放電制御の際の位相合わせによって車両振動を発生させたり、或いは、車両衝突時に駆動輪16が空転したときに放電制御を行う回転機MG1,MG2に逆起電力が発生し電力が平滑コンデンサCsmに蓄えられる可能性がある。第2回転機MG2は、常時、駆動輪16との間の動力伝達経路が接続されているので、上記のような課題を回避することが難しい。その為、第1回転機MG1にて放電制御することが適切である。但し、両駆動EVモードのように第1回転機MG1を車両駆動用に使用していると、上記のような課題を回避することが難しい。
そこで、電子制御装置90は、車両衝突(又は衝突に相当するような急減速)が検知又は予測されたときには、第1動力伝達部24の中立状態で第1回転機MG1による放電制御を行う。具体的には、電子制御装置90は、衝突判定手段すなわち衝突判定部96、及び放電制御手段すなわち放電制御部98を更に備えている。
衝突判定部96は、車両衝突(又は急減速)を検知又は予測する。具体的には、衝突判定部96は、例えば加速度センサ82により検出された減速度G(前後方向の減速度や側面方向の減速度)が車両10の衝突(又は急減速)を判断できる程の減速度Gの変化として予め定められた衝突判定値(又は急減速判定値)に到達したことに基づいて、車両衝突(又は急減速)の発生を検知する。又は、衝突判定部96は、車両衝突(又は急減速)の発生を検知することに替えて、例えばレーダーセンサにより検出された車両周辺にある対象物の情報(例えばその対象物の位置、速度、進路等)に基づいて、予め定められた判断基準から車両衝突(又は急減速)の発生が不可避であるか否かを判定する(すなわち車両衝突(又は急減速)の発生を予測する)。
動力伝達切替部94は、衝突判定部96により車両衝突(又は急減速)が検知又は予測された場合には、第1動力伝達部24を中立状態とする。具体的には、動力伝達切替部94は、クラッチC1及びブレーキB1を係合した第1動力伝達部24の非中立状態で第1回転機MG1及び第2回転機MG2を共に駆動力源とする両駆動EVモードでの走行中に、衝突判定部96により車両衝突(又は急減速)が検知又は予測された場合には、クラッチC1及びブレーキB1を共に解放して第1動力伝達部24を中立状態へ切り替える(すなわち動力伝達装置14を単独駆動EVモードでの走行が可能な状態へ切り替える)。
放電制御部98は、衝突判定部96により車両衝突(又は急減速)が検知又は予測された場合には、第1動力伝達部24の中立状態(特には、単独駆動EVモードの状態)で第1回転機MG1による放電制御を行う。放電制御部98は、メインリレーMRをオフすると共に、インバータ部60のスイッチング素子のスイッチング作動を制御することで平滑コンデンサCsmの電荷を放電する、第1回転機MG1による放電制御を行い、平滑コンデンサCsmに残った電荷を放電する(すなわち平滑コンデンサCsmに蓄電された電力を放電する)。上記放電制御は、例えば力のベクトルの向きに力が発生しないように、第1回転機MG1のロータに設けられた永久磁石(界磁)により形成される磁界のベクトルの向きと放電電流のベクトルの向きとを制御するものである。すなわち、上記放電制御は、第1回転機MG1にトルクが発生しない形で電力が消費されるような第1回転機MG1の界磁角にて第1回転機MG1を作動するように、インバータ部60におけるスイッチング素子のスイッチング作動を制御するものである。
図8は、電子制御装置90の制御作動の要部すなわち車両衝突(又は急減速)が検知又は予測された場合に第1回転機MG1により適切に放電する為の制御作動を説明するフローチャートであり、繰り返し実行される。
図8において、先ず、ハイブリッド制御部92の機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、走行モードが両駆動EVモードであるか否かが判定される。このS10の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS10の判断が肯定される場合は衝突判定部96の機能に対応するS20において、車両衝突(又は急減速)が発生したか否かが判定される。このS20では、車両衝突(又は急減速)の発生が予測されたか否かが判定されても良い。このS20の判断が肯定される場合は動力伝達切替部94の機能に対応するS30において、クラッチC1及びブレーキB1を係合した両駆動EVモードでの走行が可能な状態から、クラッチC1及びブレーキB1が共に解放されて単独駆動EVモードでの走行が可能な状態へ切り替えられる。次いで、放電制御部98の機能に対応するS40において、第1回転機MG1による放電制御が実行され、強電系(例えば平滑コンデンサCsm)に残った電荷が放電される。上記S20の判断が否定される場合はハイブリッド制御部92の機能に対応するS50において、両駆動EVモードでの走行が継続される。
上述のように、本実施例によれば、車両衝突(又は急減速)の検知後又は予測後に第1回転機MG1にて放電制御を行う際に、第1動力伝達部24が中立状態とされている為、第1回転機MG1の回転変化が駆動輪16へ伝達されず、車両振動が発生することが抑制される。又、車両衝突(又は急減速)時に駆動輪16が空転したとしても駆動輪16の回転が第1回転機MG1へ伝達されず、放電制御を行う第1回転機MG1には逆起電力が発生しない。よって、車両衝突(又は急減速)が検知又は予測された場合に、第1回転機MG1により適切に放電することができる。
また、本実施例によれば、車両駆動に用いられていた第1回転機MG1及び第2回転機MG2のうちで第1回転機MG1が駆動輪16との間での動力伝達を遮断された後、その第1回転機MG1による放電制御が行われるので、車両衝突(又は急減速)が検知又は予測された場合に、第1回転機MG1により適切に放電することができる。
次に、本発明の他の実施例を説明する。尚、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
前述の実施例1では、第1回転機MG1による放電制御に際して第1動力伝達部24を中立状態へ切り替える前の非中立状態として、第1回転機MG1を車両駆動用に使用する両駆動EVモードの走行状態を例示した。第1動力伝達部24の非中立状態としては、エンジン12の動力に対する反力を受け持つように第1回転機MG1を作動させるHV走行モードのパラレルモードにおけるエンジン走行もある。パラレルモードにて第1回転機MG1を使用している場合でも、エンジン12のイナーシャが差動部46の入力回転部材である第2キャリヤCA2に掛かることで機械的な動力伝達が可能である為、前述したような放電制御の際に車両振動を発生させる等の課題を回避することが難しい。従って、車両衝突(又は急減速)が検知又は予測されたときには第1動力伝達部24の中立状態で第1回転機MG1による放電制御を行うという電子制御装置90による制御作動は、HV走行モードのパラレルモードにおけるエンジン走行においても有用である。
具体的には、ハイブリッド制御部92は、HV走行モードのパラレルモードにおけるエンジン走行中に、衝突判定部96により車両衝突(又は急減速)が検知又は予測された場合には、エンジン12の運転を停止する。又、ハイブリッド制御部92は、エンジン12の運転を停止した後、エンジン回転速度Neが予め定められた零判定値となったか否かに基づいて、エンジン12が回転停止したか否かを判定するエンジン停止判定手段すなわちエンジン停止判定部として機能する。
動力伝達切替部94は、クラッチC1又はブレーキB1を係合した第1動力伝達部24の非中立状態でエンジン12の動力に対する反力を受け持つように第1回転機MG1を作動させるHV走行モードのパラレルモードでのエンジン走行中に、衝突判定部96により車両衝突(又は急減速)が検知又は予測された場合には、係合されているクラッチC1又はブレーキB1を解放して第1動力伝達部24を中立状態へ切り替える。動力伝達切替部94は、第1動力伝達部24の中立状態への切替え完了後、ハイブリッド制御部92によりエンジン12が回転停止したと判定されている状態でクラッチCSを係合して動力伝達装置14をHV走行モードのシリーズモードでの走行が可能な状態へ切り替える。
放電制御部98は、衝突判定部96により車両衝突(又は急減速)が検知又は予測された場合には、第1動力伝達部24の中立状態(特には、クラッチCSが係合されたHV走行モードのシリーズモードの状態)で第1回転機MG1による放電制御を行う。前述の実施例1で例示した放電制御では、第1回転機MG1にトルクが発生しない形で電力が消費されるようにインバータ部60におけるスイッチング素子のスイッチング作動を制御することで平滑コンデンサCsmの電荷を放電したが、シリーズモードの状態における放電制御では、放電を促進する為に、第1回転機MG1にエンジン12が連結されていることを利用して平滑コンデンサCsmの電荷を放電する。具体的には、放電制御部98は、メインリレーMRをオフすると共に、第1回転機MG1にてエンジン12を回転駆動するようにMG1トルクTmg1を発生させることで平滑コンデンサCsmの電荷を放電する、第1回転機MG1による放電制御を行い、平滑コンデンサCsmに残った電荷を放電する。
図9は、電子制御装置90の制御作動の要部すなわち車両衝突(又は急減速)が検知又は予測された場合に第1回転機MG1により適切に放電する為の制御作動を説明するフローチャートであり、繰り返し実行される。図9は、図8とは別の実施例である。図10は、図9のフローチャートに示す制御作動を実行した場合のタイムチャートの一例である。
図9において、先ず、ハイブリッド制御部92の機能に対応するS110において、HV走行モードのパラレルモードにおけるエンジン走行中であるか否かが判定される。このS110の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS110の判断が肯定される場合は衝突判定部96の機能に対応するS120において、急減速(又は車両衝突)が発生したか否かが判定される。このS120では、急減速(又は車両衝突)の発生が予測されたか否かが判定されても良い。このS120の判断が肯定される場合は動力伝達切替部94の機能に対応するS130において、クラッチC1又はブレーキB1を係合したHV走行モードのパラレルモードでの走行が可能な状態から、係合されているクラッチC1又はブレーキB1が解放されて第1動力伝達部24が中立状態へ切り替えられる。これにより、差動部46の入力回転部材(第2キャリヤCA2)は反力を持つことができない。このS130では、更に、第1動力伝達部24の中立状態への切替え完了後、エンジン12が回転停止した状態でクラッチCSが係合されて、第1回転機MG1とエンジン12とが連結される(すなわち動力伝達装置14がHV走行モードのシリーズモードでの走行が可能な状態へ切り替えられる)。次いで、放電制御部98の機能に対応するS140において、第1回転機MG1によるシリーズモードの状態における放電制御が実行され、強電系(例えば平滑コンデンサCsm)に残った電荷が放電される。上記S120の判断が否定される場合はハイブリッド制御部92の機能に対応するS150において、HV走行モードのパラレルモードにおけるエンジン走行が継続される。
図10において、t1時点は、クラッチC1を係合したHV走行モードのパラレルモードでのエンジン走行中に車両衝突の発生が判断されたので、エンジン12の運転が停止させられると共に、クラッチC1の解放への切替えが開始されて第1動力伝達部24の中立状態への切替えが開始されたことを示している。その後、車両10が停止し(t2時点参照)、エンジン12が回転停止し(t3時点参照)、第1動力伝達部24の中立状態への切替えが完了する(t4時点参照)。そして、t4時点にて、本来はHV走行モードのシリーズモードでの走行用に使用するクラッチCSの係合作動が開始される。クラッチCSの係合が完了して第1回転機MG1がエンジン12と連結されると、第1回転機MG1による放電制御が開始される(t5時点参照)。この放電制御では、MG1トルクTmg1が発生させられて平滑コンデンサCsmの電荷が放電される。この際、第1回転機MG1は負荷(エンジン12のイナーシャ)を持つことになるので、エンジン12が実際に回転駆動されるまでには至らず、短時間で放電することができる(t5時点からt6時点参照)。
上述のように、本実施例によれば、車両衝突(又は急減速)の検知後又は予測後に第1回転機MG1にて放電制御を行う際に、第1動力伝達部24が中立状態とされている為、車両衝突(又は急減速)が検知又は予測された場合に、第1回転機MG1により適切に放電することができる。
また、本実施例によれば、第1回転機MG1による放電制御時にエンジン慣性による負荷を加えることができ、放電時の負荷を大きくして放電時間を短縮することができる。
また、本実施例によれば、エンジン12の動力を駆動輪16へ伝達するように制御されていた第1回転機MG1が駆動輪16との間での動力伝達を遮断された後、エンジン慣性による負荷を利用した第1回転機MG1による放電制御が行われるので、車両衝突(又は急減速)が検知又は予測された場合に、第1回転機MG1により適切に放電することができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例1での放電制御は両駆動EVモードでの走行中に車両衝突(又は急減速)の発生が検知又は予測された場合に実行される第1回転機MG1による放電制御であり、前述の実施例2での放電制御はHV走行モードのパラレルモードにおけるエンジン走行中に車両衝突(又は急減速)の発生が検知又は予測された場合に実行される第1回転機MG1による放電制御であった。両駆動EVモード及びパラレルモードは、車両10において何れも成立可能な走行モードであるので、前述の実施例1と前述の実施例2とは適宜組み合わせて実施することができる。すなわち、本発明は前述の実施例1,2相互を組み合わせて実施可能である。
また、前述の実施例1では、両駆動EVモードを単独駆動EVモードへ切り替えた状態で、第1回転機MG1にトルクが発生しない形で電力が消費されるようにインバータ部60におけるスイッチング素子のスイッチング作動を制御する、第1回転機MG1による放電制御を実行したが、これに限らない。例えば、両駆動EVモードを単独駆動EVモードへ切り替えた後に、更に、エンジン12が回転停止した状態でクラッチCSを係合し、クラッチCSが係合された状態で、第1回転機MG1にエンジン12が連結されていることを利用したMG1トルクTmg1を発生させることでの第1回転機MG1による放電制御を行っても良い。尚、前述の実施例1において、クラッチCSを係合した状態で第1回転機MG1による放電制御を行うという実施態様を採用しないのであれば、このクラッチCSは備えられなくても良い。この場合には、HV走行モードのシリーズモードは成立させられない。又、エンジン12も備えられなくても良い。この場合には、HV走行モードのパラレルモードも成立させられない。前述の実施例1における、両駆動EVモードを単独駆動EVモードへ切り替えた状態で第1回転機MG1による放電制御を実行するという実施態様は、機械的な動力伝達が可能な非中立状態と不能な中立状態とに切替え可能な動力伝達部と、その動力伝達部を介して駆動輪16に連結される第1回転機MG1と、駆動輪16に連結される第2回転機MG2とを備えた車両であれば、適用することができる。つまり、車両10のように第2回転機MG2が第1動力伝達部24の軸心とは別の軸心上に配置されるような連結関係のギヤトレーンに限らず、例えば第2回転機MG2が第2遊星歯車機構50の第2リングギヤR2に連結されるようなギヤトレーン、又は、第1回転機MG1と第2回転機MG2とが共に動力伝達部を介した構成にて両駆動EVモードを成立させることができるようなギヤトレーンなどの他の構成のギヤトレーンでも本発明を適用することができる。
また、前述の実施例2では、HV走行モードのパラレルモードを第1動力伝達部24の中立状態へ切替え、更に、エンジン12が回転停止した状態でクラッチCSを係合し、クラッチCSが係合されたHV走行モードのシリーズモードへ切り替えた状態で、第1回転機MG1にエンジン12が連結されていることを利用したMG1トルクTmg1を発生させることでの第1回転機MG1による放電制御を実行したが、これに限らない。例えば、HV走行モードのパラレルモードを第1動力伝達部24の中立状態へ切替えた状態で、第1回転機MG1にトルクが発生しない形で電力が消費されるようにインバータ部60におけるスイッチング素子のスイッチング作動を制御する、第1回転機MG1による放電制御を実行しても良い。
また、前述の実施例では、FF方式の車両10に好適に用いられる動力伝達装置14を用いて発明を説明したが、本発明は、例えばRR方式など他の方式の車両に用いられる動力伝達装置においても適宜適用することができる。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。