JP6421639B2 - ボルト摩擦接合構造 - Google Patents

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Description

本発明は、複数の鋼材を摩擦接合させるためのボルト摩擦接合構造に関する。
従来から、優れた耐候性と摩擦接合性とを兼備した表面処理鋼材や、摩擦抵抗を確実に向上させて合理的な設計を実現させることのできる高力ボルト摩擦接合構造を提供するものとして、特許文献1〜3に開示される摩擦接合構造が提案されている。
特許文献1に開示された摩擦接合構造は、鋼材として耐候性鋼材等が用いられて、鋼材表面に形成された表面処理層の最外層で、安定錆層を早期に形成させるものとすることで、優れた耐候性と高い摩擦係数とを有する表面処理鋼材が提供されるものとする。
特許文献2に開示された摩擦接合構造は、ステンレス、セラミック等の硬い材料を鋼材表面に溶射して、鋼材表面に凹凸状の溶射層が形成されることで、ボルト孔の周りの接合面の摩擦係数を増大させた高力ボルト摩擦接合法が提供されるものとする。
特許文献3に開示された摩擦接合構造は、高力ボルト、ナット、母材及び添板を備えるものであり、添板の接合面には、溶融状態のアルミを吹き付けてアルミ溶射層が形成されるとともに、アルミ溶射層中には、所定の気孔率を有する複数の気孔が形成されることで、接合面間の摩擦力が増大して、摩擦抵抗を高めて合理的な設計を実現させることができるものとなる。
特開2004−285462号公報 特開平1−266309号公報 特開2009−121603号公報
しかし、特許文献1に開示された摩擦接合構造は、鋼材表面に安定錆層を形成することで、接合面の摩擦係数を増大させるものであるが、スチールハウスなど、住宅の下地材等に用いるには外観上の懸念がある。また、特許文献2、3に開示された摩擦接合構造は、特殊な加工が必要となるため適用箇所は限られることになり、また、母材の耐久性向上に寄与するものではない。
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、特に、板厚が6mm未満の薄板鋼材を対象として、摩擦接合される接合面でめっき処理による高いすべり係数を実現させることのできるボルト摩擦接合構造を提供することにある。
第1発明に係るボルト摩擦接合構造は、複数の鋼材を摩擦接合させるためのボルト摩擦接合構造であって、摩擦接合される接合面にめっき処理が施されためっき鋼材と、前記めっき鋼材を板厚方向に貫通させたボルト挿通孔に挿通されるボルトとを備え、前記めっき鋼材は、少なくとも1枚の板厚を6.0mm未満とする母材と、前記接合面で前記母材の母材表面に形成されためっき層とを有して、前記母材と前記めっき層とが重なった状態の前記めっき層のめっき表面のビッカース硬さが、前記母材表面のビッカース硬さ以上の大きさとされ、前記めっき層は、JIS G 3323に規定されるものであることを特徴とする。
第2発明に係るボルト摩擦接合構造は、前記めっき層は、1〜10質量%のマグネシウム、2〜19質量%のアルミニウム、及び、0.01〜2質量%のシリコンを含み、かつ、マグネシウム及びアルミニウムの合計量を20質量%以下とし、残部が亜鉛及び不可避的不純物からなる組成をもつことを特徴とする。
第3発明に係るボルト摩擦接合構造は、第1発明又は第2発明において、前記めっき鋼材は、前記めっき層にリン酸塩処理が施されることを特徴とする。
第4発明に係るボルト摩擦接合構造は、第1発明〜第3発明のいずれか1つにおいて、前記めっき鋼材は、前記接合面で互いに摩擦接合される一対の前記めっき鋼材が用いられて、一方の前記めっき鋼材の前記接合面と、他方の前記めっき鋼材の前記接合面とに、略同一のめっき処理が施されることを特徴とする。
第1発明〜第4発明によれば、母材とめっき層とが重なった状態のめっき表面のビッカース硬さを、母材表面のビッカース硬さ以上の大きさとして、めっき鋼材の接合面でのすべり係数を高いものとすることで、スチールハウス等で板厚を6.0mm未満とした薄板鋼材が用いられた場合であっても、ボルトによる支圧接合に依存することなく、複数の鋼材を確実に摩擦接合させることができるものとなり、コンパクト化、軽量化された薄板鋼材の接合構造を実現させることが可能となる。
特に、第3発明によれば、めっき層のめっき表面にリン酸塩処理が施されることで、リン酸塩処理後のめっき表面の最高高さが、リン酸塩処理前のめっき表面の最高高さを大幅に上回るものとなり、めっき鋼材の接合面でのすべり係数が著しく高められるため、複数の鋼材の摩擦接合をさらに確実なものとすることが可能となる。
特に、第4発明によれば、接合面で互いに摩擦接合される一対のめっき鋼材が用いられて、一方のめっき鋼材の接合面と、他方のめっき鋼材の接合面とに、略同一のめっき処理が施されることで、すべり係数を高く設定することが可能となる。
本発明を適用したボルト摩擦接合構造で摩擦接合される鋼材を示す斜視図である。 本発明を適用したボルト摩擦接合構造を示す拡大正面図である。 (a)は、本発明を適用したボルト摩擦接合構造でめっき表面のビッカース硬さを示すグラフであり、(b)は、めっき表面の最高高さを示すグラフである。 本発明を適用した第1実施形態のボルト摩擦接合構造のすべり係数試験を示す正面図である。 本発明を適用した第1実施形態のボルト摩擦接合構造で2枚の板に作用する引張荷重と相対変位の関係を示すグラフである。 (a)は、本発明を適用した第2実施形態のボルト摩擦接合構造のすべり試験を示す正面図であり、(b)は、その側面図である。 本発明を適用した第2実施形態のボルト摩擦接合構造の側板の板厚とすべり係数との関係を示すグラフである。 本発明を適用した第2実施形態のボルト摩擦接合構造のめっき種類とすべり係数との関係を示すグラフである。
以下、本発明を適用したボルト摩擦接合構造1を実施するための第1実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明を適用したボルト摩擦接合構造1は、図1に示すように、主に、スチールハウス等の薄板鋼材を対象とするものであり、鋼板又は形鋼等を用いた複数の鋼材6を連結させるために導入されるものである。
複数の鋼材6は、例えば、略平板状のウェブ60に一対のフランジ61を連設させたC形鋼等が各々に用いられる。複数の鋼材6は、互いのウェブ60を板厚方向Xで対向させるとともに当接させて、一対のC形鋼等の鋼材6を摩擦接合させることで、高さ方向Y及び奥行方向Zでウェブ60の面内方向に所定の摩擦抵抗力を発揮させるものとなる。
各々の鋼材6は、ウェブ60及びフランジ61の各々で、C形鋼等の外面6a及び内面6bに所定のめっき処理が施される。各々の鋼材6は、少なくとも、互いに当接されるウェブ60の外面6aに所定のめっき処理が施されて、C形鋼等のウェブ60がめっき鋼材2となる。
本発明を適用したボルト摩擦接合構造1は、例えば、C形鋼のウェブ60等をめっき鋼材2として、複数の鋼材6を摩擦接合させるためのものであり、図2に示すように、めっき処理が施されためっき鋼材2と、めっき鋼材2を貫通させて締結されるボルト5とを備える。
めっき鋼材2は、摩擦接合される接合面20に所定のめっき処理が施されて、めっき鋼材2を板厚方向Xに貫通させてボルト挿通孔21が形成される。めっき鋼材2は、所定の板厚t1の少なくとも1枚の母材3と、接合面20で母材3の母材表面3aに形成された所定の厚みt2のめっき層4とを有する。
母材3は、板厚t1を1.6mm以上、6.0mm未満として、略平板状に形成された鋼製等の薄板が用いられる。母材3は、めっき鋼材2の接合面20側に、略平坦状の母材表面3aが配置されて、母材表面3aから板厚方向Xに貫通させてボルト挿通孔21が形成される。
めっき層4は、例えば、1〜10質量%のマグネシウム、2〜19質量%のアルミニウム、及び、0.01〜2質量%のシリコンを含み、かつ、マグネシウム及びアルミニウムの合計量を20質量%以下とし、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成をもつ。あるいは、めっき層4は、アルミニウムが0.005〜30.0質量%、マグネシウムが0.5〜10.0質量%、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成をもつ。なお、めっき層4が多層の場合は、表面のめっき層4が、前記組成の何れかを満足すればよい。
めっき層4は、マグネシウム及びアルミニウムが母材3の耐食性を向上させるための成分であり、シリコンが母材3への密着性を高めるための成分である。めっき層4は、マグネシウムを3質量%程度、アルミニウムを11質量%程度、シリコンを0.2質量%程度、及び、残部を亜鉛として、溶融Zn‐Al‐Mg‐Si合金のめっき鋼材2「スーパーダイマ(登録商標)」が提供されるものとなる。
めっき層4は、所定の付着量でめっき鋼材2にめっき処理が施されることで、母材表面3aで所定の厚みt2を有するものとなる。ここで、めっき層4は、例えば、51〜383g/m2の付着量で、めっき鋼材2に溶融Zn‐Al‐Mg‐Si合金のめっき処理が施されることで、めっき層4が母材表面3aに設けられて、母材3とめっき層4とが重なった状態となる。
めっき層4は、めっき鋼材2の接合面20側に配置されためっき表面4aに、必要に応じて、リン酸塩皮膜を形成するためのリン酸塩処理が施される。リン酸塩処理は、例えば、通常の結晶性リン酸亜鉛皮膜を形成させることのできるリン酸塩種が用いられて、結晶性リン酸亜鉛皮膜にリン酸ニッケル、マンガン、マグネシウム等の金属塩や金属等を混在させてもよい。
リン酸塩処理は、反応型処理、塗布型処理又は電解型処理等の処理方法が用いられるものであり、例えば、めっき鋼材2に所定のめっきを施した後、リン酸塩前処理(表面調整)、リン酸塩処理、水洗及び乾燥の各工程を経て処理される。リン酸塩前処理は、例えば、リン酸亜鉛水溶液やTiコロイド溶液が使用されるものであり、リン酸塩結晶の析出サイトとなる作用を有して、緻密な皮膜を形成させるために実施される。
ボルト5は、めっき鋼材2を板厚方向Xに貫通させたボルト挿通孔21に挿通されるものであり、主に、引張強度が800〜1000N/mm2程度でF8T等級(JIS B 1186)の溶融亜鉛めっき高力ボルトが用いられる。ボルト5は、これに限らず、F8T等級の高力ボルトの約1.5倍程度の耐力を有する12G溶融亜鉛めっき高力ボルト「12G SHTB(登録商標)」が用いられてもよい。
ボルト5は、M12〜M30程度のものが用いられて、外径12〜30mm程度の軸部50がボルト挿通孔21に挿通されて、ナット51により締め込まれる。ボルト5は、軸部50にナット51が締め込まれることで、めっき鋼材2にボルト5が締結されるものとなり、めっき鋼材2に所定の軸力Tが作用するものとなる。
本発明を適用したボルト摩擦接合構造1は、板厚方向Xで一対の鋼材6を互いに対向させるとともに、めっき鋼材2を接合面20で当接させてボルト5が締結されることにより、一対の鋼材6が摩擦接合されるものとなる。
本発明を適用したボルト摩擦接合構造1は、めっき層4が母材表面3aに設けられて、母材3とめっき層4とが重なった状態で、めっき層4のめっき表面4aのビッカース硬さHV2が、母材表面3aのビッカース硬さHV1以上の大きさとされる。ここで、ビッカース硬さは、日本工業規格で規定される「ビッカース硬さ試験−試験方法」(JIS Z 2244)により測定されるものとした。
ビッカース硬さ試験−試験方法(JIS Z 2244)においては、試験力を0.098N、めっき鋼材2の試験片を縦30mm×横30mmとして、試験片の略平坦な箇所の10点を測定して、測定した10点における平均値からビッカース硬さを求めるものとした。このとき、溶融Zn‐Al‐Mg‐Si合金のめっき鋼材2の試験片では、図3(a)に示すように、めっき表面4aのビッカース硬さHV2が、HV190程度の大きさとなる。
これに対して、母材3となる鋼板では、母材表面3aのビッカース硬さHV1が、HV120〜150程度の大きさとなり、めっき表面4aのビッカース硬さHV2以下の大きさとなる。なお、従来の純亜鉛めっき鋼板の試験片では、純亜鉛めっき表面のビッカース硬さHV3が、測定された10点における平均値として、HV59程度の大きさとなり、母材表面3aのビッカース硬さHV1未満の大きさとなる。
本発明を適用したボルト摩擦接合構造1は、必要に応じて、めっき層4のめっき表面4aにリン酸塩処理が施される。従来の純亜鉛めっき鋼板では、図3(b)に示すように、リン酸塩処理後の純亜鉛めっき表面の最高高さRz4が、リン酸塩処理前の純亜鉛めっき表面の最高高さRz3を大幅に上回るものとなる。そして、溶融Zn‐Al‐Mg‐Si合金のめっき鋼材2においても同様に、リン酸塩処理後のめっき表面4aの最高高さRz2が、リン酸塩処理前のめっき表面4aの最高高さRz1を大幅に上回るものとなる。ここで、最高高さRzは、日本工業規格で規定される「製品の幾何特性仕様 (GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語、定義及び表面性状パラメータ」(JIS B0601:2001)により測定されるものとした。
本発明を適用したボルト摩擦接合構造1は、溶融Zn‐Al‐Mg‐Si合金のめっき処理をめっき鋼材2に施して、一対の鋼材6を摩擦接合させたときに、めっき鋼材2の接合面20が所定のすべり係数μを有する。ここで、めっき鋼材2は、図4に示すように、摩擦接合された一対の鋼材6に高さ方向Yの引張荷重Pを負荷するすべり係数試験により、めっき鋼材2の接合面20が滑り始めるときの引張荷重Pを求めることで、すべり係数μが算出されるものとなる。
本発明を適用したボルト摩擦接合構造1のすべり係数試験では、図2に示すように、日本工業規格で規定される「溶融亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっき鋼板及び鋼帯」(JIS 3323)のSGMC400について、母材3の板厚t1を2.2mm、めっきの付着量表示記号をK27としたもの(付着量:270g/m2)を、めっき鋼材2の試験体(試験体名称:22K27)とした。
また、純亜鉛めっき鋼板のすべり係数試験では、日本工業規格で規定される「溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯」(JIS 3302)のSGC400について、鋼板の板厚を2.2mm、めっきの付着量表示記号をZ27としたもの(付着量:270g/m2)を、純亜鉛めっき鋼板の試験体(試験体名称:22Z27)とした。
本発明を適用したボルト摩擦接合構造1は、母材3とめっき層4とが重なった状態のめっき層4のめっき表面4aのビッカース硬さHV2が、母材表面3aのビッカース硬さHV1以上の大きさとなるように、めっき鋼材2に所定のめっき処理が施されることで、図5に示すように、めっき鋼材2の接合面20が滑り始めるときの引張荷重P1が44.1kNとなる(実線:22K27)。
これに対して、従来の純亜鉛めっき鋼板は、純亜鉛めっき表面のビッカース硬さHV3が、母材表面3aのビッカース硬さHV1未満の大きさとなることで、図5に示すように、純亜鉛めっき表面が滑り始めるときの引張荷重P2が39.3kNとなる(破線:22Z27)。
本発明を適用したボルト摩擦接合構造1は、めっき鋼材2の接合面20が滑り始めるときの引張荷重P1が44.1kNとなり、ボルト5により作用する軸力T1が88.5kNであることから、めっき鋼材2の接合面20でのすべり係数μ1(=P1/T1)が0.50となる。これに対して、従来の純亜鉛めっき鋼板は、純亜鉛めっき表面が滑り始めるときの引張荷重P2が39.3kNとなり、軸力T2が89.5kNであることから、純亜鉛めっき表面でのすべり係数μ2(=P2/T2)が0.44となる。
本発明を適用したボルト摩擦接合構造1は、めっき鋼材2の接合面20でのすべり係数μ1が、純亜鉛めっき表面でのすべり係数μ2より、0.06(約14%)も高いものとなることがわかる。特に、日本建築学会が発行する鋼構造接合部設計指針によると、母材3の板厚t1を6.0mm未満とした場合は、構造用鋼材のすべり係数μが0.23に設定されている。これに対して、本発明を適用したボルト摩擦接合構造1は、母材3の板厚t1が2.2mmの場合でも、めっき鋼材2の接合面20でのすべり係数μ1が0.50となるため、従来の構造用鋼材に比べて、すべり係数μを2倍以上に高めたものとなる。
このように、めっき鋼材2の接合面20でのすべり係数μ1は、母材表面3aに形成されためっき層4の特性の影響を大きく受けるものであり、めっき表面4aのビッカース硬さHV2が母材表面3aのビッカース硬さHV1以上の大きさとなる本発明を適用したボルト摩擦接合構造1に比べて、純亜鉛めっき表面のビッカース硬さHV3が母材表面3aのビッカース硬さHV1未満の大きさとなる従来の純亜鉛めっき鋼板は、純亜鉛めっき表面の耐力が低い(硬さが低い)ため、純亜鉛めっき層が早期に塑性化して、すべり係数μ2が低下するものとなる。
本発明を適用したボルト摩擦接合構造1は、母材3とめっき層4とが重なった状態のめっき表面4aのビッカース硬さHV2を母材表面3aのビッカース硬さHV1以上の大きさとして、めっき鋼材2の接合面20でのすべり係数μ1を高いものとすることで、スチールハウス等で板厚t1を6.0mm未満とした薄板鋼材が母材3として用いられた場合であっても、ボルト5による支圧接合に依存することなく、複数の鋼材6を確実に摩擦接合させることができるものとなり、コンパクト化、軽量化した薄板鋼材の接合構造を実現させることが可能となる。
また、本発明を適用したボルト摩擦接合構造1は、めっき層4のめっき表面4aにリン酸塩処理が施されることで、図3(b)に示すように、リン酸塩処理後のめっき表面4aの最高高さRz2が、リン酸塩処理前のめっき表面4aの最高高さRz1を大幅に上回るものとなり、めっき鋼材2の接合面20でのすべり係数μ1が著しく高められるため、複数の鋼材6の摩擦接合をさらに確実なものとすることが可能となる。
次に、本発明を適用したボルト摩擦接合構造1を実施するための第2実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、上述した構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
ここでは、図6に示すように、高さ方向Yで上下に分割された中板7に対し、中板7の両面に側板8が配された試験体を用い、表1に示す中板7の板厚t4、側板8の板厚t3及びめっき鋼材2の種類(鋼種A〜D)を実験変数とするすべり係数試験を実施した。すべり係数試験は、高さ方向Yに分割された中板7の端部に、高さ方向Yの引張荷重Pを負荷させ、中板7と側板8との接合面20が滑り始めるときの引張荷重Pを求めることで、すべり係数μが算出されるものとなる。なお、表1において、中板7の板厚t4及び側板8の板厚t3は、表記上、6.0mmとされているが、実際の板厚寸法は、5.9mm以上、6.0mm未満となる。
表1中のめっき鋼材2(鋼種A)は、日本工業規格で規定される「溶融亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっき鋼板及び鋼帯」(JIS 3323)のSGMC400について、めっきの付着量表示記号をK27としたもの(付着量:270g/m2)で、特にめっきをZn‐Al‐Mg‐Si合金としたものである。表1中のめっき鋼材2(鋼種B)は、日本工業規格で規定される「溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯」(JIS 3302)のSGC400について、めっきの付着量表示記号をZ27としたもの(付着量:270g/m2)とした。表1中のめっき鋼材2(鋼種C)は、母材3を日本工業規格で規定される「一般構造用圧延鋼材」(JIS G 3101)のSS400とし、日本工業規格で規定される「溶融亜鉛めっき」(JIS H 8641)の1種55、記号HDZ55とした。表1中のめっき鋼材2(鋼種D)は、日本工業規格で規定される「溶融亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっき鋼板及び鋼帯」(JIS 3323)のSGMC400について、めっきの付着量表示記号をK14としたもの(付着量:140g/m2)で、特にめっきをZn‐Al‐Mg合金としたものである。試験体一覧とすべり係数の一覧を表1に示す。なお、めっき鋼材2(鋼種B)及びめっき鋼材2(鋼種C)のめっきは純亜鉛めっきである。また、表1のすべり係数は、2体の試験体の平均値である。
Figure 0006421639
図7には、横軸を側板8の板厚t3、縦軸をすべり係数μとした実験結果を示す。側板8の板厚t3が2.3mmから6.0mmとなる範囲の全てで、側板8及び中板7がともに鋼種Aの試験体のすべり係数は、側板8が鋼種B、中板7が鋼種C(何れも純亜面めっき)の試験体のすべり係数より高く、具体的には0.03から0.10ほど高い。
このとき、本発明を適用したボルト摩擦接合構造1は、接合面20で互いに摩擦接合される一対のめっき鋼材2が用いられて、例えば、側板8及び中板7をともに鋼種Aとして、一方のめっき鋼材2の接合面20と、他方のめっき鋼材2の接合面20とに、略同一のめっき処理が施されることで、すべり係数を高く設定することが可能となる。
図8には、鋼種とすべり係数との関係を示す。鋼種による差は見られないことから、めっきの付着量及びシリコンの含有量は影響がないといえる。
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、上述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
例えば、本発明を適用したボルト摩擦接合構造1は、互いに摩擦接合される一対の鋼材6の両方で、めっき表面4aのビッカース硬さHV2を母材表面3aのビッカース硬さHV1以上の大きさとしためっき鋼材2が用いられるものであるが、これに限らず、一対の鋼材6の一方のみで、めっき表面4aのビッカース硬さHV2が大きいめっき鋼材2が用いられてもよい。
1 :ボルト摩擦接合構造
2 :めっき鋼材
20 :接合面
21 :ボルト挿通孔
3 :母材
3a :母材表面
4 :めっき層
4a :めっき表面
5 :ボルト
50 :軸部
51 :ナット
6 :鋼材
6a :外面
6b :内面
60 :ウェブ
61 :フランジ
7 :中板
8 :側板
X :板厚方向
Y :高さ方向
Z :奥行方向

Claims (4)

  1. 複数の鋼材を摩擦接合させるためのボルト摩擦接合構造であって、
    摩擦接合される接合面にめっき処理が施されためっき鋼材と、前記めっき鋼材を板厚方向に貫通させたボルト挿通孔に挿通されるボルトとを備え、
    前記めっき鋼材は、少なくとも1枚の板厚を6.0mm未満とする母材と、前記接合面で前記母材の母材表面に形成されためっき層とを有して、前記母材と前記めっき層とが重なった状態の前記めっき層のめっき表面のビッカース硬さが、前記母材表面のビッカース硬さ以上の大きさとされ
    前記めっき層は、JIS G 3323に規定されるものであること
    を特徴とするボルト摩擦接合構造。
  2. 複数の鋼材を摩擦接合させるためのボルト摩擦接合構造であって、
    摩擦接合される接合面にめっき処理が施されためっき鋼材と、前記めっき鋼材を板厚方向に貫通させたボルト挿通孔に挿通されるボルトとを備え、
    前記めっき鋼材は、少なくとも1枚の板厚を6.0mm未満とする母材と、前記接合面で前記母材の母材表面に形成されためっき層とを有して、前記母材と前記めっき層とが重なった状態の前記めっき層のめっき表面のビッカース硬さが、前記母材表面のビッカース硬さ以上の大きさとされ、
    前記めっき層は、1〜10質量%のマグネシウム、2〜19質量%のアルミニウム、及び、0.01〜2質量%のシリコンを含み、かつ、マグネシウム及びアルミニウムの合計量を20質量%以下とし、残部が亜鉛及び不可避的不純物からなる組成をもつこと
    を特徴とするボルト摩擦接合構造。
  3. 前記めっき鋼材は、前記めっき層にリン酸塩処理が施されること
    を特徴とする請求項1又は2に記載のボルト摩擦接合構造。
  4. 前記めっき鋼材は、前記接合面で互いに摩擦接合される一対の前記めっき鋼材が用いられて、一方の前記めっき鋼材の前記接合面と、他方の前記めっき鋼材の前記接合面とに、略同一のめっき処理が施されること
    を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のボルト摩擦接合構造。
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