JP6420946B2 - ティルティングパッド軸受装置 - Google Patents
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Description
ここで、本発明者による鋭意検討の結果、JOP機構による回転軸の浮上特性は、回転軸の停止時における軸受パッドと回転軸との接触エリアと、軸受パッドの軸受面に設けられた潤滑油導入用の油溝との相対的な配置関係の影響を受けることが分かっている。換言すれば、接触エリアと油溝との相対的な配置関係によっては、回転軸の浮上させるために必要なJOP機構への供給油圧の大きさが異なる。
回転軸の周囲に配置され、前記回転軸を回転自在に支持する複数の軸受パッドと、
前記複数の軸受パッドとこれら軸受パッドを支持する軸受ハウジングとの間に介在され、各軸受パッドを揺動可能に支持する支持部材と、
前記複数の軸受パッドのうちの1個以上の軸受パッドの軸受面に形成された少なくとも1個の油溝に潤滑油を供給するように構成された給油機構とを備えたティルティングパッド軸受装置であって、
前記少なくとも1個の油溝は、前記回転軸の停止時において前記軸受面のうち前記回転軸の外周面と接触する接触エリアの内側及び外側に設けられていることを特徴とする。
なお、接触エリアは、回転軸の直径(回転軸の外周面の曲率半径)、軸受パッドの軸受面の曲率半径、軸受パッドの材質、及び、回転軸を介してティルティングパッド軸受装置に与えられる荷重等によって決定される。接触エリアの形状、位置は、実験的に求めてもよいし、シミュレーションによって推定してもよい。例えば、回転軸と軸上パッドの間に感圧紙を挟み込み、軸受パッドの着色した部位を接触エリアと判定してもよい。あるいは、ヘルツ理論を用いて算出される接触応力から接触エリアを推定してもよいし、FEM解析を用いて接触エリアを推定してもよい。
このように、接触エリアの内側から外側まで連続的に延在する少なくとも1個の油溝を設けることによって、油溝による回転軸の浮上特性を維持しながら油溝の設置数を削減することもできる。
このように、接触エリアの内側に設けられた内側油溝と、接触エリアの外側に設けられた外側油溝とを設けることにより、油溝による回転軸の浮上特性を維持しながら各油溝の設置位置や形状の自由度を向上させることができる。
各油溝は、それぞれ、連通した1つの空間によって形成されるので、油溝内はいずれの位置も同一の圧力となる。したがって、異なる等圧線にまたがるように油溝を形成した場合、回転軸の回転時に油溝内の圧力が均一化して動圧軸受としての機能が損なわれる可能性がある。そこで、上記実施形態のように、各油溝をそれぞれ等圧線に沿って設けることによって、各等圧線位置における油溝内の圧力を維持し、動圧軸受としての機能を良好に保てる。
上記実施形態によれば、第1油溝に連通する第1給油路と、第2油溝に連通する第2給油路とが、少なくとも回転軸の回転時に互いに異なる圧力に維持可能に別系統として設けられている。これにより、異なる等圧線(第1等圧線と第2等圧線)に沿って設けられる第1油溝および第2油溝の圧力が、回転軸の定格回転時において均一化されることを回避でき、動圧軸受としての機能を良好に保持できる。
このように、同一の等圧線に沿って設けられる複数個の油溝については給油路が互いに連通する構成を採用すれば、給油路やバルブ等の給油機構の構成を簡素化することもできる。
ティルティングパッド軸受装置の軸受パッドには、回転軸の回転開始時又は低速回転時におけるJOP機構の作動中(すなわち潤滑油の供給中)、回転軸と軸受パッドとの間に形成される油膜圧の分布に応じて、支持部材による軸受パッドの支持点まわりのモーメントが加わる。このモーメントは、軸受面上の任意の位置における油膜圧と、該位置の支持点からの距離との積である局所的なモーメントを軸受面上の全ての位置について積算したものである。この局所的なモーメントの符号は、支持部材による軸受パッドの支持点の両側において逆転する。したがって、支持部材による軸受パッドの支持点の両側におけるモーメントの絶対値の大小関係により、回転軸と軸受パッドとの間に形成される油膜圧の分布に応じた正味のモーメントの方向が決まる。ここで、各油溝の局所的なモーメントへの寄与は、各油溝の中心位置xiと、当該油溝が作る油膜圧の大きさに影響する当該油溝の開口面積Siとの積xiSiによって表わされる。よって、油膜圧の分布に応じた正味のモーメントの方向は、基本的には、全油溝についての局所的モーメントへの寄与の総和ΣxiSiによって決まる。換言すれば、総和ΣxiSiを全油溝の開口面積の総和ΣSiで除して得られる値(各々の油溝の中心位置xiを油溝の開口面積Siで重み付けした油溝の加重平均位置xA)と支持部材の位置との配置関係に応じて、油膜圧の分布に応じた正味のモーメントの方向が定まる。
上記ティルティングパッド軸受装置では、各々の油溝の中心位置xiを油溝の開口面積Siで重み付けした油溝の加重平均位置が支持部材の配置位置に対して支持部材のオフセット方向にずれるようにしたので、支持部材がオフセットされていても、支持部材を基準として回転軸の回転方向上流側と下流側に作用するモーメントをバランスさせることができる。よって、回転軸の回転開始時又は低速回転時に、回転軸が傾くことを抑制し、回転軸と軸受パッドが接触することを防止できる。
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るティルティングパッド軸受装置10の全体的な概略構成について説明する。なお、図1は本発明の第1実施形態に係るティルティングパッド軸受装置の全体構成図である。
以下の実施形態では、軸受パッド14がピボット38により点支持される構成を有するティルティングパッド軸受装置10について例示している。
一実施形態において、図2及び図3では、ピボット38を通る直線G2が、回転軸15の回転方向における軸受パッド14の中央位置C(図13参照)に対し、回転軸15の回転方向下流側にオフセットして配置された場合を示している。このように、回転軸15の定格回転時のようにティルティングパッド軸受装置10が動圧軸受として機能する場合に、ピボット38が回転軸15の周方向における軸受パッド14の中心位置よりも回転軸15の回転方向下流側に配置されていることにより、軸受パッド14の前端14bの軸受面14aと回転軸15の外周面との隙間が大きくなる。そのため、潤滑油の軸受面14aへの引き込み量が増加し、軸受パッド14と回転軸15の間の潤滑性を向上できる。
図4及び図6(B)に示すように、潤滑油を導くための油溝42’,46’が接触エリアSの内側に形成されている場合、接触エリアSの内側から接触エリアSの外側への境界で軸受パッド14’と回転軸15の間の隙間は急激に広がる。そのため、接触エリアS内の油溝42a’,42b’,46a’,46b’を介して隙間に供給される潤滑油による油膜圧は、接触エリアSの内側では高く維持されるものの接触エリアSの外側では隙間の急激な体積増加によって大幅に低下してしまう。そのため、軸受パッド14’の軸受面全体に略均一な油膜圧が形成されるように潤滑油を行き渡らせることは難しく、特に接触エリアSの外側における油膜圧が十分に立たないおそれがある。
図5及び図6(C)に示すように、接触エリアSの外側に油溝42”,46”が形成されている場合、接触エリアSの外側から接触エリアSの内側に向けてその境界で軸受パッド14”と回転軸15の間の隙間は急激に狭くなる。そのため、接触エリアSの内側へ潤滑油が十分に供給されず、接触エリアSの内側における油膜圧が十分に立たないおそれがある。
このように、比較例における軸受パッド14’,14”によれば、軸受パッド14’,14”の軸受面14a’,14a”に十分に潤滑油が行き渡らず、そのため、JOP機構を起動して回転軸15の回転させる際に、回転軸15が円滑に浮上しない可能性がある。
回転軸15の高速回転時、軸受パッド14の軸受面14aに開口した給油口40,44への潤滑油の供給は停止されている。この時、潤滑油は回転軸15と共に連れ回りしながら油膜圧を形成し、油膜圧による油膜圧分布(図11参照)が形成される。図11において、ラインp1〜p6は軸回転によるくさび状油膜の等圧線であり、p1の内側領域が最大油膜圧を呈し、外側へ行くに従って油膜圧は順々に低下していく。図示のように、最大油膜圧領域R1を中心とし、等圧域が同心状に広がる楕円形を呈する。ここで、等圧線は、回転軸15の回転時に軸受面14aと回転軸15の外周面との間に形成される油膜の圧力が同一である位置を通る線である。
各油溝42,44は、それぞれ、連通した1つの空間によって形成されるので、各油溝42,44内はいずれの位置も同一の圧力となる。したがって、異なる等圧線にまたがるように油溝42,44を形成した場合、回転軸15の回転時に各油溝42,44内の圧力が均一化して動圧軸受としての機能が損なわれる可能性がある。そこで、上記実施形態のように、各油溝42,44をそれぞれ等圧線に沿って設けることによって、各等圧線位置における油溝42,44内の圧力を維持し、動圧軸受としての機能を良好に保てる。
図7に示す給油機構16は、第1給油口40と、第1油溝42と、第2給油口44と、第2油溝46と、第1給油路52と、第2給油路54と、第1バルブ53と、第2バルブ55と、ポンプ50とを有している。
第1油溝42と第2油溝46とは、異なる油膜圧を示す等圧線に沿って設けられている。第1給油路52及び第2給油路54は、少なくとも回転軸15の回転時に互いに異なる圧力に維持可能に別系統として設けられる。第1給油路52及び第2給油路54は、ポンプ50に接続されて、ポンプ50によって潤滑油が供給されるようになっている。第1給油路52及び第2給油路54とポンプ50との間には、それぞれ、第1バルブ53,第2バルブ55が設けられており、第1給油路52及び第2給油路54への潤滑油の供給量が調節可能に構成される。
そして、回転軸15の回転開始時又は低速回転時には、第1バルブ53及び第2バルブ55をそれぞれ開いた状態とし、ポンプ50を作動させて第1給油路52及び第2給油路54を介して第1油溝42と第2油溝46に潤滑油を供給する。各油溝42,46への潤滑油の供給量は、各バルブ53,55の開度によって調節してもよい。一方、回転軸15の定格回転時には、第1バルブ53及び第2バルブ55を閉じた状態とし、ポンプ50を停止して第1給油路52及び第2給油路54を介した第1油溝42及び第2油溝46への潤滑油の供給を遮断する。このとき、第1油溝42第2油溝46とは連通していないため、各油溝42,46の圧力は独立して保たれる。
次に、本発明の第3実施形態を図8及び図9に基づいて説明する。図8は本発明の第2実施形態における軸受パッドの軸受面の展開図である。図9は本発明の第2実施形態に係る軸受装置の給油機構の一例を示す構成図である。
複数の第1油溝62,66は、同一の油膜圧を示す等圧線に沿って設けられている。さらに、第1油溝62,66は、第1給油路72,74を介して互いに連通するように構成されている。例えば、第1給油路72,74が基部側で合流しており、合流した第1給油路72,74とポンプ70との間に第1バルブ76が設けられる。第1バルブ76は、第1給油路72,74への潤滑油の供給量を調節する構成となっている。
そして、回転軸15の回転開始時又は低速回転時には、第1バルブ76を開いた状態とし、ポンプ70を作動させて第1給油路72,74を介して第1油溝62,66に潤滑油を供給する。一方、回転軸15の定格回転時には、第1バルブ76を閉じた状態とし、ポンプ70を停止して第1給油路72,74を介した第1油溝62,66への潤滑油の供給を遮断する。
図10は本発明の第3実施形態における軸受パッドの軸受面の展開図である。
図10に示すように、一実施形態において油溝80は、回転軸15の軸方向に沿って給油口82を挟むように配置された、一対の菱形形状の油溝80a,80bを含んでいてもよい。その場合、油溝80の菱形形状の周方向の回転上流側の頂点部83a,83bは、ピボット38を通る直線G2を跨る位置に配置してもよい。
図11は本発明の第4実施形態における軸受パッドの断面図である。図12は本発明の第4実施形態における軸受パッドの軸受面の展開図である。図13は油溝の加重平均位置を説明するための図である。なお、図12は、曲率を有する軸受パッド14を平面上に展開した図である。
図11において、G1は、回転軸15の中心とピボット38の支持点を通る直線である。図12において、Cは、回転軸15の回転方向における軸受パッド14(軸受面14a)の中央位置を通る直線である。この中央位置Cは回転軸15の軸線に平行である。G2は、ピボット38による軸受パッド14の支持点を通り、回転軸15の軸線と平行な直線である。矢印aは回転軸15の軸方向を示す。また、図12及び図13において、回転軸15の回転方向をx軸とし、ピボット38の支持点(支持部材の配置位置)を通る直線G2の位置をxG=0に設定する。さらに、ピボット38の支持点を通る直線G2よりも回転方向下流側(図12及び図13では右側)を正の向き、直線G2よりも回転方向上流側(図12及び図13では左側)を負の向きとしている。
図示しないが、他の実施形態では、ピボット38が、回転軸15の中央位置Cより回転方向上流側にオフセットされて配置される。この場合、油溝90a及び油溝90bの加重平均位置がピボット38の支持点を通る直線G2よりも回転方向上流側にずれるように油溝90a及び油溝90bがそれぞれ形成される。
12 軸受ハウジング
12a,12b ハウジング片
14 軸受パッド
14a 軸受面
15 回転軸
16 給油機構
18 ポンプ
20 モータ
22 給油路
24 リリーフ弁
26 タンク
28a,28b 分岐路
30a,30b バルブ
34 給油口
36 油溝
38 ピボット
40(40a,40b) 第1給油口
42(42a,42b) 第1油溝
44(44a,44b) 第2給油口
46(46a,46b) 第2油溝
50 ポンプ
P JOPによる油膜圧分布
Pr 低圧域
R1 最大油膜圧領域
o 潤滑油
pa、pb 軸回転によるくさび状油膜の圧力分布
p1〜p5 軸回転によるくさび状油膜の等圧線
s1,s2 隙間
S 接触エリア
Claims (8)
- 回転軸の周囲に配置され、前記回転軸を回転自在に支持する複数の軸受パッドと、
前記複数の軸受パッドとこれら軸受パッドを支持する軸受ハウジングとの間に介在され、各軸受パッドを揺動可能に支持する支持部材と、
前記複数の軸受パッドのうちの1個以上の軸受パッドの軸受面に形成された少なくとも1個の油溝に潤滑油を供給するように構成された給油機構とを備えたティルティングパッド軸受装置であって、
前記少なくとも1個の油溝は、前記回転軸の停止時において前記軸受面のうち前記回転軸の外周面と接触する接触エリアの内側及び外側に設けられ、
前記少なくとも1個の油溝の各々が、前記回転軸の回転時に前記軸受面と前記回転軸の外周面との間に形成される油膜の圧力が同一である位置を通る等圧線に沿って設けられ、
前記少なくとも1個の油溝は、前記油膜の前記圧力が第1圧力である位置を通る第1等圧線に沿って設けられる第1油溝と、前記油膜の前記圧力が前記第1圧力とは異なる第2圧力である位置を通る第2等圧線に沿って設けられる第2油溝とを含み、
前記給油機構は、前記第1油溝に連通する第1給油路と、前記第2油溝に連通する第2給油路とを含み、
前記第1給油路と前記第2給油路とは、少なくとも前記回転軸の回転時に互いに異なる圧力に維持可能に別系統として設けられたことを特徴とするティルティングパッド軸受装置。 - 前記給油機構は、前記軸受面に形成された前記油溝としての少なくとも1個のJOP油溝に連通する給油口を介して前記JOP油溝に潤滑油を供給するように構成され、
前記給油口は、前記軸受面の外周縁によって囲まれた内側領域において前記軸受面に開口し、
前記少なくとも1個のJOP油溝は、前記軸受面の前記内側領域であって、且つ、前記接触エリアの内側及び外側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のティルティングパッド軸受装置。 - 前記少なくとも1個のJOP油溝は、前記接触エリアの内側から外側まで連続的に延在していることを特徴とする請求項2に記載のティルティングパッド軸受装置。
- 前記軸受面には、前記接触エリアの内側に設けられた前記JOP油溝としての内側油溝と、前記内側油溝とは別に前記接触エリアの外側に設けられた前記JOP油溝としての外側油溝とが形成されたことを特徴とする請求項2又は3に記載のティルティングパッド軸受装置。
- 前記少なくとも1個のJOP油溝は、前記接触エリアの内側から外側まで連続的に延在しており、
前記少なくとも1個のJOP油溝の各々が、前記回転軸の回転時に前記軸受面と前記回転軸の外周面との間に形成される油膜の圧力が同一である位置を通る等圧線に沿って設けられたことを特徴とする請求項2に記載のティルティングパッド軸受装置。 - 前記第1等圧線に沿って設けられる複数個の前記第1油溝は、前記第1給油路を介して互いに連通するように構成されることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のティルティングパッド軸受装置。
- 前記回転軸の周方向における各々の前記JOP油溝の中心位置を該JOP油溝の開口面積で重み付けした前記少なくとも1個のJOP油溝の加重平均位置が、前記支持部材の配置位置より前記回転軸の回転方向下流側にずれていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載のティルティングパッド軸受装置。
- 前記支持部材は、前記回転軸の周方向における前記軸受パッドの中央位置よりも前記回転軸の回転方向下流側に配置されていることを特徴とする請求項7に記載のティルティングパッド軸受装置。
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