以下、本発明の実施の形態を説明する。
(全体説明)
図1は、本発明の一実施形態としての印刷装置の模式図である。
この印刷装置1は、用紙収容部10に置かれた収容箱11内に折り畳まれて収容されている連続帳票用紙、いわゆる連帳紙Pをその収容箱11から引き出して搬送し、その連帳紙P上に画像を印刷する印刷装置である。
図2は、本実施形態で使用される連帳紙の一例を示した模式図である。
この連帳紙Pには、一定の間隔でミシン目12が形成されている。また、この連帳紙Pの幅方向両端部には、長手方向に一定のピッチで並んだ送り孔13が形成されている。この連帳紙Pは、ミシン目12を折り目として、ミシン目12ごとに折り畳まれて、図1に示す収容箱11内に収容されている。そして、その収容箱11に収容されている連帳紙Pが収容箱11から引き出されて搬送される。
図1に戻って説明を続ける。
連帳紙Pの搬送は、トラクタ30と駆動装置80が担っている。トラクタ30は、引込部の一例および送り装置の一例に相当し、駆動装置80は、第1駆動部の一例および搬送部の一例に相当する。
トラクタ30は、連帳紙Pの幅方向両端部に形成された送り孔13(図2参照)に嵌まり込む突起(不図示)を備えていて、その突起により連帳紙Pを送り込む構造の装置である。
連帳紙Pの先端部を収容箱11から手で引き出して所要の通紙経路に従ってトラクタ30まで通紙すると、その後はトラクタ30により送り込まれ、所要の通紙経路を経て自動的に通紙される。このとき、案内装置70を構成している案内部701は、印刷機60や駆動装置80に近づいた第1位置Aにあり、通紙されつつある連帳紙Pの先端部を案内する。案内装置70および案内部701の詳細については後述する。駆動装置80を通過した連帳紙Pは、通紙切替機構91によりあらかじめ切り替えられた通紙経路に従って、用紙収納部90に折り畳まれて収納され、あるいは、この印刷装置1の後段に備えられた後処理装置(不図示)に向けて搬送される。なお、この印刷装置1から後処理装置へは、人手により、連帳紙Pの先端が受け渡される。また、この印刷装置1には、この印刷装置1の全体の制御を担う制御装置100が備えられている。この制御装置100には、この印刷装置1に状態をユーザに知らせたりこの印刷装置1にユーザの指示を与えるためのユーザインタフェース(UI)101が設けられている。
収容箱11から引き出された連帳紙Pは、ファン21を備えた用紙引出安定化装置20を経由し、バックテンションロール29によりバックテンションが付与され、上述のトラクタ30を経由し、さらに紙粉除去装置40、退避位置にある印刷機保守装置50、印刷機60、および案内装置70を経由する用紙通路を経て駆動装置80に至る。駆動装置80によりさらに送り出された連帳紙Pは、上述の通り、通紙切替機構91により切り替えられている通紙経路に従って用紙収納部90に収納され、あるいは、この印刷装置1から送り出される。
(駆動装置)
以下では先ず、駆動装置80について説明する。
この駆動装置80には駆動ロール81が備えられている。この駆動ロール81は、中継ギア82を経由して伝達されてきたモータ83の駆動力を受けて、矢印R方向に回転駆動される。
トラクタ30により送り込まれ案内装置によって案内されてきた連帳紙Pの先端部は、案内ロール84とその案内ロールに対向する案内部材85との間を通って駆動ロール81に達する。そして、駆動ロール81に対向する案内部材86に案内されて駆動ロール81に巻き付いて進み、ばね付勢された押当ロール87により、駆動ロール81に押し当てられる。その後は前述の通り、用紙収納部90に向かって進み、あるいは、この印刷装置1から送り出される。
(印刷機)
次に、印刷機60について説明する。この印刷機60は、印刷部の一例および印刷機の一例である。
この印刷機60は、いわゆるインクジェット方式の印刷機であって、吐出口61aから連帳紙Pに向けてインクを吐出するノズル61が連帳紙Pの幅方向に多数配列されている。印刷機60は、連帳紙Pに画像を印刷する際は、矢印D方向に移動した、この図1に示す印刷位置にあり、印刷を休止しているときは、矢印U方向に上昇した待機位置にある。また、印刷機保守装置50は、印刷の際には矢印B方向に移動して、この図1に示す退避位置にある。印刷を休止すると、この印刷機保守装置50は矢印A方向に移動して、矢印U方向に上昇して待機位置にある印刷機60の直下に配置される。印刷機保守装置50についての詳細説明は後に譲る。
(案内装置)
ここでは次に、案内装置70について説明する。この案内装置70には、案内部701が備えられている。この案内部701は、それぞれが複数本のロール711,721を備えた、第1案内部71と第2案内部72とを有する。
案内部701は、連帳紙Pの搬送方向に関し、印刷機60と駆動装置80との間に介在し、第1位置Aと第2位置Bとの間で水平方向(矢印X−X方向)に往復移動自在に構成されている。第1位置Aは、連帳紙Pを通紙するとき、および印刷を休止するときに、案内部701を移動させておく位置である。この第1位置Aにある案内部701は、連帳紙Pの、印刷機60を通過した先端部を駆動装置80に案内する。第1位置Aと第2位置Bとの間の移動では、第1案内部71と第2案内部72は一体に移動する。案内部701が第2位置Bにあるときは、この案内部701は、連帳紙Pの、印刷機60を通過した部分を、水平方向(矢印X−X方向)に第2位置Bまで迂回させて駆動装置80に案内する。
また、本実施形態では、第2案内部72は、第2位置Bと、その第2位置Bから垂直方向(矢印Z−Z方向)に下降した第3位置Cとの間で、第1案内部71とは分かれて移動自在に構成されている。
すなわち、この案内部701は、第2案内部72が第3位置Cに移動した状態においては、連帳紙Pの、印刷機60を通過した部分を、第1案内部71によって水平方向(矢印X−X方向)に迂回させ、さらに第2案内部72によって垂直方向(矢印Z−Z方向)に第3位置Cまで迂回させて、駆動装置80に案内する。水平方向(矢印X−X方向)は第1方向の一例であり、垂直方向(矢印Z−Z方向)は第2方向の一例である。
印刷機60は連帳紙P上に液体であるインクを使って印刷するため、その印刷が乾くのに時間を要する。そこで、本実施形態の印刷装置1では、連帳紙P上への印刷にあたって、インクの乾燥時間を確保するために大きく迂回させているのである。
図3〜図5は、案内装置の概略構造と動作を示した図である。
ここで、図3は、案内装置70を構成する案内部701が第1位置Aにある状態を示している。また、図4は、案内部701が第1位置Aから移動してきて第2位置Bに近づいた状態を示している。さらに図5は、案内部701を構成する第2案内部72が、第1案内部71から分かれて第3位置Cに移動した状態を示している。
案内部701は、上述の通り、第1案内部71と第2案内部72とを有する。この案内装置70には、水平方向(矢印X−X方向)に延びて案内部701をその水平方向(矢印X−X方向)に案内する一対の案内フレーム702と、同じく水平方向(矢印X−X方向)に延びるラック703が備えられている。
これに対して、案内部701を構成する第1案内部71には、案内コロ712とモータ713とが備えられている。
案内コロ712は、案内フレーム702に嵌まり込んで案内フレーム702に案内される部材である。また、モータ713には、その回転軸に、ラック703と噛み合うピニオンギア(不図示)が固定されている。これにより、モータ713が回転すると、先ずは第1案内部71が案内フレーム702に案内されて水平方向(矢印X−X方向)に移動する。
また、第1案内部71には、第2案内部72と結合する、下方に開口した結合凹部714(図5を合わせて参照)が設けられており、これに対応して、第2案内部72には、その結合凹部714に下方から嵌り込む結合凸部722が設けられている。結合凹部714に結合凸部722が嵌り込んだ状態で第1案内部71が水平方向(矢印X−X方向)に移動することで、第2案内部72も、第1案内部71と一体に、水平方向(矢印X−X方向)に移動する。第2案内部72には案内コロ723が設けられており、この水平方向(矢印X−X方向)への移動にあたっては、その案内コロ723が水平に延びる案内バー704に案内される。
第2位置Bには、第2案内部72を垂直方向(図5に示す矢印Z−Z方向)に移動させる昇降機構705が控えている。この昇降機構705には、案内部701が第2位置Bに移動したときに第2案内部72の案内コロ72が入り込む溝706が設けられている。また、この案内装置70には、第2位置Bと第3位置Cとの間に上下に延び、モータ708により駆動されて回転するねじ軸709が備えられている。昇降機構705は、ねじ軸709の回転により、上下に延びる案内ポール707に案内されながら、第1案内部71とは分かれて垂直方向(矢印Z−Z方向)に移動する。
図6は、印刷時の動作シーケンスを示したフローチャートである。
このフローチャート中にある第1制御と第2制御については、ユーザによるUI101(図1参照)の操作により、あらかじめその一方が選択されている。この印刷装置1に不図示の画像編集装置から印刷用の画像データが送り込まれて印刷の開始が指示される。すると、この図6に示す動作シーケンスに従う動作が実行される。
この印刷装置1は印刷を休止しているときは、第1案内部71は第1位置Aに戻って待機している。一方、この案内部701は、印刷実行中は印刷位置に移動してその印刷位置に停止している。ここで、本実施形態では、典型的には、第1案内部71が第2位置Bにあり、第2案内部72が第3位置Cにあることを、案内部701が印刷位置にあると称している。ただし、この印刷装置1が速乾性のインクを採用していて、案内部701(第1案内部71と第2案内部72の双方)が第2位置Bにある状態で、すなわち、連帳紙Pを水平方向に第2位置Bまで迂回させるだけで、十分な乾燥が行われるときは、第2案内部72を含む案内部701が第2位置Bにあることを、印刷位置としてもよい。
印刷開始の指示を受けると、先ず、案内部701が第1位置Aにあるか否かが判定される(ステップS01)。案内部701が第1位置Aにあるときは、印刷休止の状態にあることを意味している。第1位置Aにあるときの動作の説明は、後述する。
案内部701が第1位置Aには存在しないことが判定されると(ステップS01)、次に、その案内部701が印刷位置にあるか否かが判定される(ステップS02)。第1位置Aにもなく印刷位置にもないときは、案内部701はそれらの間で移動している途中であり、その移動が継続される(ステップS03)。
案内部701が印刷位置にあることが確認されると(ステップS02)、連帳紙Pの搬送速度が規定の搬送速度にあるか、あるいは現在速度上昇中であるかが判定される(ステップS04)。速度上昇中のときは規定の搬送速度に達するまで、速度上昇状態が維持される(ステップS05)。
連帳紙Pの搬送速度が規定速度にあると判定されると(ステップS05)、次に、今回の印刷指示よりも前に指示された印刷を行っている途中にあるか否かが判定される(ステップS06)。印刷中のときは、今回の印刷指示については印刷待の状態となり、先の印刷が終了した後に印刷が開始される。
ステップS06において、印刷中ではないと判定されると、規定の搬送速度に応じた速度での印刷が開始される。
次に、ステップS01において案内部701が第1位置Aに存在すると判定された場合の動作について説明する。
ステップS01において、案内部701が第1位置Aに存在することが認識されると、案内部701が印刷位置に向けて移動を開始し(ステップS09)、それに伴って連帳紙Pのゆっくりとした搬送が開始される(ステップS10)。
その後の動作シーケンスは、ユーザにより、あらかじめ第1制御と第2制御のうちのいずれが設定されているかによって異なる。
第1制御の場合、印刷開始までの待ち時間が短縮される。
この第1制御の場合、案内部701の移動が開始され、連帳紙Pのゆっくりとした搬送速度での搬送が開始されると、そのゆっくりとした搬送速度に応じた速度での印刷が開始される(ステップS11)。そして、案内部701が印刷位置に到達すると(ステップS12)、連帳紙Pの搬送速度を規定の速度に向けて上昇させ(ステップS13)、その上昇する搬送速度に応じた、上昇する印刷速度での印刷が行われる(ステップS14)。そして、連帳紙Pの搬送速度が規定の搬送速度に達すると(ステップS15)、その規定の搬送速度に応じた印刷速度での印刷が開始される(ステップS16)。
すなわち、この第1制御では、案内部701が第1位置Aから移動を開始した時点から印刷が開始される。
次に、第2制御について説明する。上述の第1制御の場合、案内部701の移動中や連帳紙Pの搬送速度が規定の搬送速度に達する前においても印刷を行うため、印刷の品質の確保が難しいという難点がある。これに対し、以下に説明する第2制御では印刷の品質を重視した動作が行われる。
この第2制御では、ステップS09で案内部701の移動が開始され、ステップS10で連帳紙Pがゆっくりとした搬送速度での搬送を開始しても、直ちには印刷は行わずに、案内部701が印刷位置に到達するまで待機する(ステップS22)。さらに、案内部701が印刷位置に到達しても印刷は未だ開始せずに、次に連帳紙Pの搬送速度を上昇させる(ステップS23)。そしてその連帳紙Pの搬送速度が規定の搬送速度に達すると(ステップS25)、その規定速度に応じた印刷速度での印刷が開始される(ステップS26)。
この第2制御の場合、印刷を開始する際には、案内部701は印刷位置に移動した状態にあり、かつ、連帳紙Pの搬送速度も規定の搬送速度に安定している。したがって、第1制御の場合と比べ、安定した高品質の印刷が行われる(ステップS26)。
すなわち、この第2制御の場合、案内部701は印刷位置に移動した状態にあり、かつ、連帳紙Pの搬送速度も規定の搬送速度に安定している。したがって、第1制御の場合と比べ、安定した高品質の印刷が期待できる。
(用紙引出安定化装置)
次に、図1に示す用紙引出安定化装置20について説明する。
上述の通り、用紙収容部10には収容箱11が置かれており、その収容箱11内には、図2に示す構造の連帳紙Pがミシン目ごとに折り畳まれて収容されている。この印刷装置1では、連帳紙Pの先端部がトラクタ30の位置まで人手で引き出されてトラクタ30にセットされる。その後、UI101の操作で通紙を指示すると、連帳紙Pは規定の通紙経路上を自動搬送されて通紙される。
通紙の後、その連帳紙P上への印刷が行われるが、印刷を行っていくと収容箱11
内の連帳紙Pの残量が少なくなってくる。収容箱11の内壁面とその収容箱11内の連帳紙Pとの間の隙間gは数mmと狭く、連帳紙Pの残量が少なくなってくると、連帳紙Pの、引き出されている部分の裏側のくさび状になった部分に空気が入り込むのが追い付かず、特に対策を施さずにいると、連帳紙Pが収容箱11の内壁面に吸着されながら引き出される場合がある。すると、この連帳紙Pはミシン目12(図2参照)で折り畳まれているため、連帳紙Pの、ミシン目12の部分とミシン目12以外の部分とで、収容箱の内壁面との関係が大きく異なり、連帳紙Pの張力がミシン目12の周期で大きく変動し、この張力の変動が印刷機60にまで伝わり、印刷の品質劣化につながる恐れがある。近年、印刷の効率化のために搬送速度を上げる傾向にあり、高速で搬送すると、この張力変動の影響が一層顕著に表れてくる。
そこで、本実施形態では、用紙収容部10に置かれる収容箱11の上部に、用紙引出安定化装置20を配置して、収容箱11からの連帳紙Pの引出しの安定化が図られている。
図7は、用紙引出安定化装置の概要図である。
ここには、案内部材21と、ファン22と、支えロール23とが示されている。
案内部材21は、導き部材の一例であり、用紙収容部10に置かれた収容箱11からは上方に離れた位置に設置され、収容箱11から引き出された連帳紙Pの搬送の向きを安定化させる部材である。
また、ファン22は、送風部の一例であり、用紙収容部10から引き出された連帳紙Pの案内部材21に達する前の部分に向けて、横向きの風を送り出す役割を担っている。
このように、ファン22を備えて、連帳紙Pの、収容箱11から引き出された部分に
横風を当てると連帳紙が収容箱11の内壁面から離れる。
ここで、仮に、ファン22を、収容箱11の内壁面と、その収容箱11内に収容されている連帳紙Pとの隙間gに積極的に風を送り込む向きに設置すると、連帳紙Pが制御不能な姿勢に煽られてしまい、かえって不安定となる。
また、支えロール23は、支え部材の一例であって、用紙収容部10に置かれた収容箱11から引き出された連帳紙Pの、ファン22から送り出された風で横に押された部分に接してその部分を横から支える役割を担っている。
この支えロール23は、上下方向に関し、ファン22と案内部材21との間に配備されている。すなわち設置の高さの関係では、案内部材21(高さH1)、支えロール23(高さH2)、および、ファン22(高さH3)は、H1>H2>H3である。本実施形態では、H1=750mm、H2=450mm、H3=400mmに設定している。
この支えロール23を備えると、支えロール23を備えずにファン22で送風する場合と比べ、収容箱11から引き出された連帳紙Pがばたつきにくくなる。また、H2>H3、すなわち支えロール23をファン22の送風口よりも上に配置されていることで、送風口よりも下に配置した(H2<H3)ときよりも、連帳紙Pの姿勢制御の精度が一層高められている。
ここで、この支えロール23は、連帳紙Pに接し、連帳紙Pの搬送に従動する回転体であるが、この回転体の支えロール23に代えて、非回転体の支え部材を配置してもよい。
連帳紙Pの、収容箱11から引き出されつつある部分にファン22で風を当てた結果、その風に起因して、収容箱11の内壁面のうちの、ファン22から離れた側の面に連帳紙Pが接触すると、今度はその接触によって、張力変動や搬送速度変動が生じるおそれがある。そこでここでは、ファン22からの送風で連帳紙Pが横に押されても、その送風に起因して連帳紙Pが収容箱11の内壁面に接触してしまうことが避けられるように、風量(ファン22の回転速度)や支えロール23の配置位置等が調整されており、支えロール23は、最小折り長用紙L(例えば7インチ)の中心にとなるよう、L/2=3.5インチの位置に配置されている。
収容箱11から横風を受けながら引き出された連帳紙Pは、案内部材21により、その搬送の向きが安定化され、さらに、図1に示すバックテンションロール29を経由してさらに下流へと搬送される。
図8は、ファンの配置位置を示した図である。この図8は、図1、図7とは異なり、用紙収容部10をファン22側から見たときの、ファン22の位置を示している。
本実施形態の印刷装置1では、最小用紙幅W1(例えば6.5インチ幅)、中間用紙幅W2(例えば15インチ幅)、および最大用紙幅W3(例えば18インチ幅)の3種類の連帳紙Pが使用可能である。
そこで本実施形態では、2台のファン22A,22Bが配置されている。
最小用紙幅W1の連帳紙Pを使用するときは、2台のファン22A,22Bのうちの一方のファン22Aのみがその連帳紙Pに作用する。このため、このファン22Aから吹き出される風量は、最小用紙幅W1の連帳紙Pを収容している収容箱11から引き出されつつある連帳紙Pがその最小用紙幅W1の連帳紙Pを収容している収容箱11の内壁面に接触しない程度の風量に設定されている。
また、中間用紙幅W2あるいは最大用紙幅W3の連帳紙Pを使用すると、2台のファン22A,22Bの双方がその連帳紙Pに作用する。このため、ファン22Bについては、ファン22Aの風量との関係で、用紙幅方向の風量バランスを欠かさないことと、それら中間用紙幅W2あるいは最大用紙幅W3の連帳紙Pが収容箱11から引き出される際に、その連帳紙Pを収容している収容箱11の内壁面に接触しないこととを条件に、その風量が設定されている。
(紙粉除去装置)
次に、紙粉除去装置40について説明する。
この紙粉除去装置40は、除去部の一例であり、連帳紙Pの搬送に随伴する気流により搬送されてくる紙粉を除去する役割を担っている。この紙粉除去装置40は、連帳紙Pの搬送方向について印刷機60よりも上流側に配置されていて、印刷機60に搬送されてくる紙粉を減らして画像欠陥の発生を防いでいる。
図9は、紙粉除去装置の概略構成図である。
この紙粉除去装置40は、還流形成部41と紙粉回収部42とを備えている。
ここで、還流形成部41は、対向部411と延在部412とを有する。対向部411は、搬送中の連帳紙Pとの間に空間Sを空けて連帳紙Pに対向している。また、延在部412は、対向部411の、連帳紙Pの搬送方向下流側の部分から、連帳紙Pに向かって、搬送方向上流側に斜めに向かう向きに、連帳紙Pの近傍にまで延在している。この延在部412は、連帳紙Pに接触しない限り、連帳紙Pの、できるだけ近くまで延在していることが好ましい。具体的には、連帳紙Pの搬送に随伴する気流により運ばれる紙粉は、連帳紙Pから約6mm程度の空気層により運ばれるため、延在部412は、連帳紙Pに6mmよりもさらに近づくまで延在させることが好ましい。なお、ここでは、延在部412は、連帳紙Pに向かって搬送方向上流側に向かって斜めに延びているが、この延在部412は、連帳紙Pに垂直に向かって延びていてもよい。
この還流形成部41は、連帳紙Pの搬送に随伴する気流により搬送されてきた紙粉dを延在部412により連帳紙Pから剥離し、連帳紙Pと対向部411との間の空間Sに挟み込んで還流させて、その紙粉dを含む気流を紙粉回収部42に導く役割を担っている。
また、紙粉回収部42は、集塵フィルタ421とファン422を備えている。紙粉回収部42に導かれた気流は、集塵フィルタ421によりその気流中の紙粉dが回収され、ファン422により、最終的にはこの印刷装置1の外部に排気される。
本実施形態の紙粉除去装置40は、上記の構成の還流形成部41を備えているため、その還流形成部41により紙粉が空間Sに閉じ込められ大きく拡散することが防止される。したがって、紙粉回収部42により紙粉が効率的に回収される。
図10は、紙粉除去装置の第1変形例を示した模式図である。
この第1変形例、および、後述する第2、第3変形例の説明にあたっては、図9に示す紙粉除去装置40と同一の、あるいは対応する構成要素には、図9において付した符号と同一の符号を付して示し、図9に示した紙粉除去装置40との相違点について説明する。
図10に示す第1変形例の紙粉除去装置40Aの、還流形成部41を構成する延在部412には、連帳紙Pに近接した先端に開口した中空スリット412aが形成されている。そして、この中空スリット412aには、紙粉回収部42に備えられたファン422の、空気の吹出し口側から空気を取り込んで中空スリット412aに空気を流入させる空気流路43が接続されている。これにより、延在部412の連帳紙Pに近接した側の先端部の開口412bから空気が吹き出される。
この第1変形例の場合、この空気吹出しにより、延在部411と連帳紙Pとの間にエアカーテンが形成され、延在部411と連帳紙Pの間の隙間を通って印刷機60(図1参照)側に流れる紙粉dを減少させて、紙粉回収部42に向けて紙粉dを効率的に還流させることができる。すなわち、この第1変形例の場合、図9に示す紙粉除去装置40と比べると、紙粉が一層効率的に回収される。
図11は、紙粉除去装置の第2変形例を示した模式図である。
図11に示す第2変形例の紙粉除去装置40Bの還流形成部41を構成する対向部411には、延在部412の、空間S側の直上の箇所にスリット411aが形成されている。またこのスリット411aの直上にはファン413が備えられている。このファン413を作動させると、空気がスリット411aを通り、延在部412の、空間S側に沿って連帳紙Pに向かって流れる空気流が生じ、その空気流によって連帳紙Pに空気が吹き付けられる。
この第2変形例の場合も、図10に示す第1変形例の場合と同様、この空気流により、延在部411と連帳紙Pとの間にエアカーテンが形成され、延在部411と連帳紙Pの間の隙間を通って印刷機60(図1参照)側に流れる紙粉dを減少させて、紙粉回収部42に向けて紙粉dを効率的に還流させることができる。
図12は、紙粉除去装置の第3変形例を示した模式図である。ここで、図12(A)は、図9〜図11と同じ向きから見た側面図であり、図12(B)は、連帳紙Pを上から見下ろす向きに見た平面図である。
この第3変形例の紙粉除去装置40Cを構成する還流形成部41は、連帳紙Pの、送り孔12(図2を合わせて参照)が形成されている幅方向端部に対応する領域にのみ、設置されている。ここでは、連帳紙Pの一方の端部に対応する領域に設置されている紙粉除去装置のみを示しているが、連帳紙Pの幅方向のもう一方の端部に対応する領域にも、ここに示した紙粉除去装置40Cと左右対称な紙粉除去装置が設置されている。
前述の通り、送り孔12には、トラクタ30(図1参照)の突起(不図示)が嵌り込んで、連帳紙Pはその突起で搬送される。このため、その突起で送り孔12が擦られて紙粉が発生しやすい状況にある。またこの連帳紙Pの製造の際にも、連帳紙Pを裁断したり送り孔12を穿つにあたり紙粉が発生して連帳紙Pとともに収容箱11内に入り込んでいる。
この図12に示す第3変形例の紙粉除去装置40Cは、送り孔12が設けられている連帳紙Pの幅方向端部を狙って、その部分の紙粉を重点的に回収する装置である。
また、この第3変形例の紙粉除去装置40Cの紙粉回収部42は、連帳紙Pの幅方向外側に設置され、空気を吸い込む吸込口42aを連帳紙Pに向けている。この第3変形例の場合、ファン422で、気流が積極的に、この紙粉回収部42の吸込口42a側に向けられ、その吸込口42aから吸い込まれる。この第3変形例におけるファン422は、吸気部の一例である。
この第3変形例では、紙粉回収部42が連帳紙Pから幅方向に外れた位置に設置されているため、吸込口42aの近傍に溜まった紙粉が連帳紙Pの上に不用意に落下してしまって画像欠陥に繋がることが防止される。
なお、この図12に示す第3変形例では、還流形成部41は、連帳紙Pの幅方向端部に対応する領域にのみ設置されているが、幅方向全域に広がる還流形成部41を備え、紙粉回収部42については、この図12に示すように、連帳紙Pから幅方向に外れた位置に設置してもよい。
(印刷機保守装置)
次に、図1に示す印刷機保守装置50について説明する。
印刷機60は、吐出口61aからインクを吐出することで連帳紙Pに画像を印刷する、いわゆるインクジェット方式の印刷機である。この実施形態の印刷機60は、そのようなノズル61が連帳紙Pの幅方向(図1の紙面に垂直な方向)にライン状に多数並んでいて、それら多数のノズル61で画像を印刷するタイプの印刷機である。
ここで、印刷を休止しているときは、保湿のために、吐出口61aにキャップが被せられる。また、吐出口61aにはインクが付着していて濡れているため、紙粉等の塵埃が付着しやすく、付着すると印刷の品質の劣化を招くおそれがある。このため、ノズル61の吐出口61aを時々拭き取ることで吐出口61aを常に清潔にしておく必要がある。
本実施形態における印刷機保守装置50は、保守部の一例であって、ノズル61の吐出口61aを覆うことと、その吐出口61aの拭取りを行うこととを兼ねた装置である。
この印刷機60は、印刷を休止しているときは、図1に示す矢印U方向に上昇して待機位置に保持される。そして、この印刷機60は、印刷を開始するにあたり、図1に示す矢印D方向に、連帳紙Pに対面した印刷位置まで下降する。図1には印刷位置にある印刷機60が示されている。
印刷機保守装置50は、図1に示す矢印A−B方向に往復移動自在であって、印刷機60が印刷位置にあるときは、矢印B方向に退避した、図1に示す退避位置にある。そして、この印刷機保守装置50は、印刷を休止して印刷機60が矢印U方向に上昇すると矢印A方向に前進して、印刷機60の下に入り、ノズル60の拭取りとキャップを被せる動作を実行する。そして、この印刷機保守装置50は、印刷の開始に先立って矢印B方向に移動して退避位置に退避し、印刷機60が矢印D方向に、印刷位置まで下降する。
図13,図14,図15は、本実施形態における印刷機保守装置の、それぞれ、斜視図、平面図、および正面図である。
この印刷機保守装置50は、ノズル61のキャップとして作用する覆い部51と、ノズル61を拭取ることで清掃する清掃部52とを有する。
覆い部51には、連帳紙Pの幅方向(図1の紙面に垂直な方向)に延びる窪み部511が形成されており、その窪み部511には水分を含んだスポンジ512が配置されている。印刷機60が下降してきてノズル61が窪み部511に入り込むことで、ノズル61がキャップを被せられた状態となる。この窪み部511の横には廃液排出管513が延びている。ノズル61の吐出口61aからは、そのノズル61内のインクが固まってしまわないように、窪み部512内にインクが吐出されることがある。スポンジ512に含まれている水や吐出されたインクは、廃液排出管513を通って回収される。スポンジ512への水の補給は、この印刷機保守装置50が図1に示す退避位置にあるときに、図示しない給水装置により行われる。
清掃部52にも、連帳紙Pの幅方向に延びる長溝521が設けられている。この清掃部52には、ノズル61の吐出口61a(図1参照)を拭き取る拭取装置53が備えられている。この拭取装置53は、清掃部51の長溝521に沿って、図13,図14に示す矢印F−R方向に移動する。
ノズル61の吐出口61aの清掃にあたっては、ノズル61がこの長溝521の直上に位置するように印刷機保守装置50を移動させて停止させる。次に、拭取装置53を長溝521に沿って移動させる。すると、その拭取装置53に備えられている拭取部材531がノズル61の吐出口61aを拭き取っていく。
この長溝521の、図14の左側の端部には拭取部材拭取部54が設けられている。この拭取部材拭取り部54には拭取装置53に備えられている拭取部材531の汚れを拭き取る清掃部材541が備えられている。図13では、拭取装置53は、その清掃部材541の下にほとんど隠れた状態にあり、示されていない。一方、図14では、拭取装置53は、清掃部材541の下に隠れた状態から少しだけ矢印R方向に移動した位置にあり、この図14には、拭取装置53があらわれている。拭取装置53の詳細については後述する。
また、この印刷機保守装置50には、2つのモータ55,56が備えられている。一方のモータ55は、この印刷機保守装置50を図1に示す矢印A−B方向に移動させるモータである。またもう一方のモータ56は、拭取装置53に備えられており、その拭取装置53を長溝512に沿って矢印F−R方向に移動させるモータである。
この印刷機保守装置50では、覆い部51と清掃部52との相対的な高さが問題となる。清掃部52の構成要素である拭取装置53に備えられている、拭取部材531は、ノズル61の下端の吐出口61aを拭き取るために、図15に示すように、他の部材よりも少し高い位置にある。これに対し、印刷機60は、印刷機保守装置50の覆い部51が印刷機60のノズル61の直下に位置する状況において、清掃部52の上に重なるだけの大きさを有する。このため、この印刷機60が、ノズル61の吐出口61aが覆い部51により十分に覆われる規定の高さまで下降しようとすると、このままでは、下降中に拭取部材531に当たってしまうことになる。
一方、拭取部材531を覆い部51よりも低い位置に設置すると、覆い部51はノズル61の吐出口61aを十分に覆うことができるが、今度はその覆い部531が邪魔になって、ノズル61の吐出口61aに拭取部材531を当てて十分な拭取りを行うことができないことになる。
これを解決するために、拭取装置53あるいは拭取部材531をモータで上下動させることが考えられる。ただし、この場合、モータを新たに備え、さらに、拭取装置53あるいは拭取部材531を上下動させる機構が必要となり、複雑化、大型化し、コストの上昇が避けられない。
これに対し、本実施形態では、以下に説明するようにして、拭取部材531の高さを変更している。
図16は、拭取装置を構成する拭取部材の斜視図である。
この拭取部材531は、拭取りブレード531aが支持部材531bに支持された構成となっている。支持部材531bには、位置決め用の突起531cが設けられている。拭取装置53は、ライン状に並んでいるノズル61の吐出口61a(図1参照)を、拭取りブレード531aで擦るようにして拭いていく。
図17,図18は、拭取部材を組み込んだ拭取部材組立体の、それぞれ、右側面図、および、図17に示す矢印X−Xに沿う断面図である。
この拭取部材組立体532には、図18に示すように、図16に示した拭取部材531が、支持部材531bの突起531cで位置決めされ板バネ533押えられることで固定されている。この拭取部材531は消耗品であり、交換の必要がある。そこで、ここではねじ止め等の固定方法を避けて、消耗品である拭取部材531の交換を容易としている。
また、この拭取部材組立体532は、図17に示す矢印R1−R1方向に少し回転自在となるように長手方向の中央が支持されていて、コイルバネ534で引っ張られている。拭取部材531が傾くとコイルバネ534が伸びて、傾きのない姿勢に戻す力が働く。この拭取部材531は、ノズル61の吐出口61a(図1参照)にあてがう必要がある。このため、ここではノズル61と拭取装置53との間の取付誤差等の許容度を上げ、拭取部材531をノズル61の吐出口61aに確実にあてがう工夫がなされている。
この拭取部材組立体532は、図18に示すように、アーム536(図17を合わせて参照)が固定されたアーム535を有する。このアーム535に固定されたアーム536は、この拭取部材組立体532が後述する支持部材538に取り付けられたときの、その支持部材538に対する回転中心となる。
この拭取部材組立体532は、図17に示すように長手方向に突き出た、左右それぞれ2本ずつのアーム536,537を有する。
図19,図20は、図17,図18に示す拭取部材組立体を支持部材に支持させた状態の、それぞれ正面図および左側面図である。
拭取部材組立体532に備えられた左右2本ずつのアーム536,537(図17を合わせて参照)のうちの1本のアーム536は、図20に示すように、支持部材53に回転自在に支持され、もう1本のアーム537は、支持部材538の長孔538a(図19参照)を突き抜けている。この支持部材538には左右に突き出たアーム538bが設けられており、そのアーム538bと、長孔538aを突き抜けた、拭取部材組立体532のアーム537との間にはコイルバネ539が架けられている。
拭取部材組立体532は、図19に示すように、支持部材538に対し少し傾いた姿勢に支持されており、その支持された姿勢からさらに、アーム536を回転中心として回転可能となっている。図19には、拭取部材組立体532の、回転前の姿勢が実線で示されており、回転した姿勢における拭取り部材531(拭取りブレード531a)の先端部分と伸びた状態のコイルバネ539が一点鎖線で示されている。
図21は、拭取部材組立体の、回転後の姿勢を示した左側面図である。
これに対し、上掲の図20は、拭取部材組立体の、回転前の姿勢における左側面図である。
これらの図20,図21から分かるように、拭取部材組立体532が回転すると、その拭取部材組立体532に組み込まれている拭取り部材531も回転するが、拭取り部材531は、回転しながらその高さを下げる構造となっている。すなわち、拭取り部材531を含む拭取部材組立体532が回転する前は、その拭取り部材531の拭取りブレード531aは、覆い部51(図13〜図15参照)よりも高い位置にあり、回転後は、覆い部51よりも低い位置に下がっている。換言すると、拭取り部材531は回転前の高い位置にあるときにノズル61の吐出口61aを擦りながら拭き取り、回転した状態では、覆い部51がノズル61の吐出口61aを覆うのに邪魔にならない位置まで、その高さを下げている。この拭取部材組立体532は、回転させる向きの力が加わると、回転後の第2姿勢となり、その力が解除されると、コイルバネ539の作用により回転前の第1姿勢に戻る。
この支持部材538に支持された拭取部材組立体532は、図13,図15に示すモータ56の回転により、図13,図14に示す矢印F−R方向に移動する。
図22は、拭取り部材拭取り部に近づいてきた拭取部材組立体の動作を示した図である。
また、図23は、拭取り部材拭取り部にまで移動してきたときの拭取部材組立体を示した斜視図である。
拭取り部材拭取り部54(図13,図14を合わせて参照)には、図16に示す拭取り部材531の拭取りブレード531aを拭き取ることでその拭取りブレード531aを清掃する、ブレード型の清掃部材541が備えられている。
図22には、拭取部材組立体532が、実線と一点鎖線との双方で示されている。実線の拭取部材組立体532は、その拭取部材組立体532が矢印F方向(図13,図14を合わせて参照)に移動してきて、清掃部材541に接触した直後の状態を示している。また、一点鎖線の拭取部材組立体532は、その拭取部材組立体532がさらに矢印F方向に移動し、拭取部材組立体532が清掃部材541に押されて回転した状態を示している。
図23には、図22に一点鎖線で示す、回転後の第2姿勢にある拭取部材組立体が示されている。ただし、拭取部材組立体532の回転後の姿勢があらわれるように、この図23では、図22に示す清掃部材541は、図示を省略している。
図13,図14に示す清掃部52には、その長溝521に沿うように延びる、図23に示すラック522および案内バー523が備えられている。
図13に示すモータ56の回転軸にはそのラック522に噛み合うピニオンギア561が備えられている。また、そのモータ56の枠体は支持部材538に固定されている。このため、拭取り部材532は、モータ56の回転により、そのモータ56とともに、矢印R−F方向に移動する。
図22に一点鎖線で示すように清掃部材541に押されて傾いた姿勢の拭取部材組立体532は、矢印R方向に移動して清掃部材541から離れると、回転前の、立ち上がった第1姿勢に戻って長溝521に沿って進む。そして矢印R方向の最先端まで進むと、今度は、拭取部材組立体532のアーム537が、長溝521の矢印R方向の端部に設けられている突当部材529に(図13参照)に突き当たって、再び、傾いた第2姿勢となる。このように、本実施形態における拭取部材組立体532は、拭取部材拭取部54が設けられているフロント側と、突当部材529が備えられているリア側とのいずれにおいても、回転して傾いた第2姿勢となる。したがって、この拭取部材組立体532はフロント側とリア側とのいずれに移動させても、覆い部51による、ノズル61の吐出口61aを覆う動作の妨げとはならない高さとなる。ただし、本実施形態では、以下に示す動作シーケンスを採用していることから、突当部材529が備えられているリア側を、拭取部材組立体532の初期位置としている。
ノズル61の吐出口61aを拭き取るにあたっては、印刷機保守装置50を、先ず、覆い部51がノズル61の直下に位置するように移動させ、ノズル61の吐出口61aにインクの滴ができるように、その吐出口61aからインクを吐出させる。これは、ノズル61の吐出口61aから紙粉等の塵埃がノズル61内に入り込んでいた場合であっても、その塵埃を取り除くためである。また、覆い部51をノズル61の直下に配置するのは、インクが滴下した場合に備えるためである。
その後、印刷機保守装置50を、その清掃部52がノズル61の直下に位置するように移動する。そして、初期位置にある拭取部材組立体532をフロント側(矢印F方向)に向けて移動させる。初期位置にある拭取部材組立体532は、突当部材529に突き当てられて傾いた第2姿勢にあるが、フロント側に向けて移動を開始して突当部材529から離れると、立ち上がった第1姿勢となる。そして、その立ち上がった第1姿勢で、拭取り部材531の拭取りブレード531aが、ライン状に並ぶノズル61の吐出口61aを拭き取っていく。そして、その拭取りが終わって、拭取部材組立体532がフロント側に到達すると、そのフロント側に備えられている清掃部材541により、拭取り部材531の拭取りブレード531aが拭取られる。その後、この拭取部材組立体532は、リア側の初期位置に戻り、突当部材529に突き当てられて傾いた第2姿勢で待機する。さらにその後、覆い部1がノズル61の直下となるように印刷機保守装置50を移動させ、印刷機60を下降させて、ノズル61の吐出口61aを覆い部51で覆った状態とする。これにより、この印刷機60は、ノズル61の吐出口61aが拭取りにより清掃された状態で覆い部51に覆われて保湿された待機状態となる。
なお、ここでは、リア側を拭取部材組立体532の初期位置としているが、拭取部材組立体532は、フロント側においても、拭取部材拭取部54に備えられている清掃部材541に突き当たっても傾いた第2姿勢となるため、このフロント側を、拭取部材組立体532の初期位置としてもよい。
このように、本実施形態では、拭取り部材531を、拭取部材組立体532が立ち上がった第1姿勢でノズル61の吐出口61aを拭き取る高さとし、フロント側あるいはリア側に移動させると傾いた第2姿勢となってノズル61の吐出口61aを覆い部51で覆うのに邪魔にならない高さとしている。したがって本実施形態では拭取り装置53あるいは拭取り部材531をモータで上下動させる機構は不要であって、装置の簡素化、コスト低減に寄与している。