JP6417452B2 - 導電性ポリマー及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、導電性ポリマー及びその製造方法に関する。
導電性ポリマー材料は、帯電防止材、電磁波シールド材、コンデンサ(キャパシタ)等の電極、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池等の電極及びエレクトロルミネッセンスディスプレイの電極等に用いられている。
このような導電性ポリマー材料としては、ピロール、チオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、アニリン等を重合して得られる導電性ポリマーが知られている。このような導電性ポリマーは、一般には水性溶媒中の分散液もしくは溶液、又は有機溶媒中の溶液(導電性ポリマー組成物)として提供されており、使用時に溶媒を除去して導電性ポリマー材料として使用される。
しかし、導電性ポリマーの種類が同じであってもその製造方法によって得られる導電性ポリマー材料の物性は異なる。そのため、導電性ポリマー組成物の製造方法に関しては種々検討がなされている。
特許文献1には、ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とポリ陰イオンとの複合体の水分散体が開示されている。該複合体の水分散体は、3,4−ジアルコキシチオフェンを、ポリ陰イオンの存在下で、ペルオキソ二硫酸を酸化剤として用い、水系溶媒中で重合することで得られることが開示されている。また、3,4−ジアルコキシチオフェンを、ポリ陰イオンの存在下で、酸化剤を用いて、水溶性の無機酸及び有機酸からなる群より選択される酸を添加し、反応溶液のpHを低下させて、水系溶媒中で化学酸化重合することで得られることが開示されている。
特許文献2には、フェノールスルホン酸ノボラック樹脂、スルホン化ポリエステル又はポリスチレンスルホン酸の存在下で、チオフェン誘導体を水中又は水混和性溶剤との混合溶液からなる水性液中で電解重合することによって得られる導電性ポリマーの分散液が開示されている。
特許文献3には、ポリスチレンスルホン酸と、フェノールスルホン酸ノボラック樹脂及びスルホン化ポリエステルの少なくとも1種の存在下で、チオフェン誘導体を水中又は水混和性溶剤との混合溶液からなる水性液中で酸化重合することによって得られる導電性ポリマーの分散液が開示されている。
特許文献4には、低い等価直列抵抗(ESR)を有する固体電解コンデンサを製造する方法であって、良好なエッジ被覆を持つ密なポリマー外層を、簡単にかつ再現性よく製造できる方法が開示されている。
また、電極物質の多孔質電極本体;電極物質の表面を覆う誘電体;及び誘電体表面を完全に又は部分的に覆う導電性材料を少なくとも含む固体電解質を少なくとも含むコンデンサ本体に、ポリアニリン及び/又はポリチオフェンを含む導電性ポリマーの粒子b)、結合剤c)及び分散剤d)を含む分散物a)を適用する工程;及び導電性ポリマー外層の形成のために、分散剤d)を少なくとも部分的に除去し、かつ/又は結合剤c)を硬化させる工程を含み、分散体a)中の700nm未満の粒径を有する導電性ポリマーの粒子b)の割合が、分散物の固形分の少なくとも5質量%である方法により電解質コンデンサを製造することが開示されている。
特許文献5、6には、高導電率な導電性ポリマー材料を提供するための導電性ポリマー懸濁液とその製造方法と、低ESRの固体電解コンデンサ及びその製造方法が開示されている。すなわち、低分子有機酸又はその塩からなるドーパントを含む溶媒中で、導電性ポリマーを与えるモノマーを酸化剤により化学酸化重合して、導電性ポリマーを合成して精製し、次いで、ポリ酸成分を含む水系溶媒中で、前記精製された導電性ポリマーと酸化剤とを混合して、導電性ポリマー懸濁液を製造することが開示されている。
特開2004−59666号公報 国際公開第2009/131011号 国際公開第2009/131012号 特開2007−27767号公報 特開2010−40776号公報 特開2010−40770号公報
特許文献1、2、3に開示された方法では、ポリスチレンスルホン酸水溶液の存在下、過硫酸アンモニウム、鉄塩、エチレンジオキシチオフェン等を混合して反応し、導電性ポリマーの分散液を得る方法に基づき、さらに製造条件を変更することによってその性質を向上させている。
しかし、これらの方法によって得られる導電性ポリマー組成物は、導電性ポリマーの含有量を増加させると、粘度が著しく上昇し、更に高濃度するとゲル化してしまう可能性もあり、分散安定性が損なわれてしまうため、高濃度で低粘度の導電性組成物を得ることは困難であった。また未ドープのポリ陰イオン、つまり導電性に寄与しないポリ陰イオンが余剰に存在してしまい、より高導電率なポリマーや吸湿性の少ないポリマー材料を得る製造方法としては、十分な方法とは言い難い。
特許文献4に開示されている導電性ポリマー分散体中に導電性ポリマーの粉末を混合する方法では、導電性ポリマーの総含有量を増加させることは容易である一方、分散体中の導電性ポリマーと粉末形態の導電性ポリマーが、相互作用もなく単に混ざり合っていることから、粉末の沈降が起こり導電性ポリマー溶液の分散安定性が乏しい。また、導電性ポリマー分散体から溶媒を除去して得られる導電性ポリマー材料は、海島状で凹凸が大きくフィルム状に乏しいという課題がある。
特許文献5、6に開示された方法では、導電性ポリマー粉末にポリ酸がドープして分散していることから良好な分散性を示し、結晶性が高い導電性ポリマー材料が得られるとしている。このような組成物は、未ドープのポリ陰イオン、つまり導電性に寄与しないポリ陰イオンが余剰に存在してしまい、より高導電率なポリマーや吸湿性の少ない導電性ポリマー材料を得る製造方法としては、十分な方法とは言い難い。また、当該導電性ポリマー分散体から溶媒を除去して得られる導電性ポリマー材料は、結晶性が高いために硬く柔軟性に欠けるという課題がある。
本発明は、上記の課題を解決することにあり、具体的には導電性ポリマー成分の含有量が高く低粘度である分散性の良好な導電性ポリマー組成物を提供することを目的とする。また、導電率が高く、吸湿性の少ない導電性ポリマー材料、導電性基材を提供することを目的とする。さらに、高容量でESRが低く、LC特性に優れた固体電解コンデンサを提供することにある。
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記を要旨とする本発明に到達した。
1.高分子有機酸又はその塩がドーピングされた導電性ポリマー(P1)と、
無機酸若しくは低分子有機酸又はそれらの塩がドーピングされた導電性ポリマー(P0)における無機酸若しくは低分子有機酸又はそれらの塩が、ド―パント交換によって導電性ポリマー(P1)にドーピングされた高分子有機酸又はその塩によりドーピングされた導電性ポリマー(P2)と、
水又は水混和性の有機溶媒からなる溶媒と、
を含有することを特徴とする導電性ポリマー組成物。
2.導電性ポリマー(P1)の100質量部に対して、導電性ポリマー(P2)を0.01〜20質量部含有する上記1に記載の導電性ポリマー組成物。
3.導電性ポリマー(P1)と導電性ポリマー(P2)とを合計で0.1〜50質量%含有する上記1又は2に記載の導電性ポリマー組成物。
4.前記導電性ポリマー(P1)が、ピロール、チオフェン及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーと、ドーパントとしての高分子有機酸又はその塩とを、水又は水混和性有機溶媒中で、酸化剤を用いて酸化重合して得られる上記1〜3のいずれかに記載の導電性ポリマー組成物。
5.前記導電性ポリマー(P0)は、ピロール、チオフェン及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーと、ドーパントとしての無機酸若しくは低分子有機酸又はその塩とを、水又は有機溶媒を含む溶媒中で、酸化剤を用いて酸化重合して得られる上記1〜4のいずれかに記載の導電性ポリマー組成物。
6.前記高分子有機酸が、少なくともスルホン酸基(−SOH)を有する上記1〜5のいずれかに記載の導電性ポリマー組成物。
7.前記高分子有機酸が、ポリエステルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記6に記載の導電性ポリマー組成物。
8.前記低分子有機酸が、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸、アントラキノンスルホン酸、及びそれらの塩からなる群からなる群から選択される少なくとも1種である上記1〜7のいずれかに記載の導電性ポリマー組成物。
9.動的光散乱法で測定された体積換算の粒径(D50)が1〜200nmの粒子を含有する請求項1〜8のいずれかに記載の導電性ポリマー組成物。
10.ピロール、チオフェン及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを、ドーパントである高分子有機酸又はその塩及び酸化剤を用い、水、有機溶媒又は水混和性の有機溶媒からなる溶媒中で酸化重合して導電性ポリマー(P1)の水又は水混和性の有機溶媒の分散液を得る工程(a)と、
ピロール、チオフェン及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを、ドーパントである無機酸若しくは低分子有機酸又はそれらの塩及び酸化剤を用いて、水、有機溶媒叉は水混和性の有機溶媒からなる溶媒中で酸化重合し、導電性ポリマー(P0)を得る工程(b)と、
工程(b)で得られた導電性ポリマー(P0)を、工程(a)で得られた導電性ポリマー(P1)の水又は水混和性の有機溶媒の分散液と酸化剤の存在下に混合し、ド―パント交換する工程(c)と、
を有する請求項1に記載の導電性ポリマー組成物を製造する方法。
11.前記工程(c)における酸化剤が過硫酸塩である上記10に記載の導電性ポリマー組成物の製造方法。
12.さらに、導電性向上成分及び/又は密着性向上成分を混合する工程(d)を有する上記10又は11に記載の導電性ポリマーの製造方法。
13.さらに、湿式ビーズミル、湿式ジェットミル、又は超音波装置を用いた粉砕工程(e)を有する請求項10〜12のいずれかに記載の導電性ポリマー組成物の製造方法。
14.上記1〜9のいずれかに記載の導電性ポリマー組成物から前記溶媒を除去して得られる導電性ポリマー材料。
15.基材上に、上記14に記載の導電性ポリマー材料を含む層を備える導電性基材。
16.前記基材がポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂及びスチレン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む樹脂基材である上記15に記載の導電性基材。
17.上記16に記載の導電性基材を備える電極。
本発明によれば、導電性ポリマーの導電性部位の含有量が高く、低粘度である分散性の良好な導電性ポリマー組成物が提供される。かかる本発明の導電性ポリマー組成物からは、導電率が高く、吸湿性の少ない導電性ポリマー材料、及び導電性基材、さらに、高容量でESRが低く、LC特性に優れた固体電解コンデンサが得られる。
本発明により何故に上記のごとき効果が得られるかについては必ずしも明らかではないがほぼ次のように推定される。
導電性ポリマー(P2)は、導電性ポリマー(P1)における、未ドープのフリーな高分子有機酸をドーパントとすることで、高分子有機酸又はその塩を増やさずに導電性成分のみを増加させることができるため、導電性成分の高濃度化ができる。また、通常、高分子有機酸又はその塩は増加に伴って、3次元状架橋ネットワークの形成によって生じる粘度の増加を抑えることができる。また、導電性ポリマー(P2)は、高分子有機酸にドーピングされているため、沈降することなく良好な分散性の有する分散液である導電性ポリマー組成物が得られる。
また、本発明の導電性ポリマー組成物は、良好な分散性を有しているため、フィルム状で均一な膜が得られ、吸湿性の低い導電性ポリマー材料が得られる。また、本発明の導電性ポリマー組成物では、導電性ポリマー(P1)と(P2)の含有比率を調整することによって、高い柔軟性を有する導電性ポリマー材料のフィルムを得ることができる。
〔導電性ポリマー組成物の製造〕
本発明の導電性ポリマー組成物は、下記する工程(a)、工程(b)及び工程(c)を通じて製造される。
〔工程(a)〕
工程(a)では、ピロール、チオフェン及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを、ドーパントである高分子有機酸若しくはその塩及び酸化剤を用い、水又は水混和性の有機溶媒からなる溶媒中で酸化重合して導電性ポリマー(P1)の水又は水混和性の有機溶媒の分散液が調製される。
高分子有機酸若しくはその塩は水溶性を有し、ドーパントとしての機能と水系溶媒中での分散材としての機能とを備えているため、これによりドーピングすることにより良好な分散性の導電性ポリマー(P1)が得られる。
溶媒としては、水が好ましいが、水混和性の有機溶媒叉は水と水混和性の有機溶媒との混合溶媒でもよい。水混和性の有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、酢酸等のプロトン性極性溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、アセトン等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
ピロールの誘導体の具体例としては、3−ヘキシルピロール等の3−アルキルピロール、3,4−ジヘキシルピロール等の3,4−ジアルキルピロール、3−メトキシピロール等の3−アルコキシピロール、3,4−ジメトキシピロール等の3,4−ジメトキシピロール等が挙げられる。チオフェンの誘導体の具体例としては、3,4−エチレンジオキシチオフェン叉はその誘導体、3−ヘキシルチオフェン等の3−アルキルチオフェン、3−メトキシチオフェン等の3−アルコキシチオフェンが挙げられる。3,4−エチレンジオキシチオフェンの誘導体としては、3,4−(1−ヘキシル)エチレンジオキシチオフェン等の3,4−(1−アルキル)エチレンジオキシチオフェンが挙げられる。
これらのなかでも、モノマーとしては、下記式(1)で示される3,4−エチレンジオキシチオフェン誘導体が好ましい。
Figure 0006417452

(式中、Rは水素原子、又は直鎖若しくは分岐の、置換若しくは未置換のC1〜C18アルキル基、置換又は未置換のC5〜C12シクロアルキル基、置換又は未置換のC6〜C14アリール基、あるいは置換又は未置換のC7〜C18アラルキル基を示す。)
高分子有機酸としては、ドーパントとして知られている既知の高分子有機酸又はその塩
を用いる。高分子有機酸の具体例としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸等のポリカルボン酸;ポリビニルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリスチレンスルホン酸、ポリエステルスルホン酸等のポリスルホン酸又はこれらの構造単位を有する共重合体が挙げられる。高分子有機酸の塩の具体例としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。
これらのなかでも、ポリスチレンスルホン酸又はポリエステルスルホン酸が好ましい。
これらの高分子有機酸若しくはその塩は、1種のみを用いることもでき、2種以上を組み合わせて用いることもできる。なかでも、下記式(2)で示されるポリスチレンスルホン酸が特に好ましい。これらは、1種を用いることもでき、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
Figure 0006417452
高分子有機酸の重量平均分子量としては、良好な分散性と高い導電率を示す導電性ポリマー組成物が得られる点から、10,000〜2,000,000が好ましく、30,000〜500,000がより好ましく、50,000〜500,000が特に好ましい。重量平均分子量が10,000以下の場合、分散性が損なわれて導電性が低下する傾向がある。2,000,000以上の場合、粘度の増加が著しくなり分散性が損なわれる傾向にある。重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエションクロマトグラフ)測定で算出した値とする。
高分子有機酸若しくはその塩の使用量は、高い導電率を示す導電性ポリマー組成物が得られる点から、溶媒中に含まれるモノマー1質量部に対して0.5〜3.0質量部が好ましく、0.6〜2.5質量部がより好ましく、0.8〜1.8質量部が更に好ましく、1.0〜1.3質量部が特に好ましい。モノマー1質量部に対して、高分子有機酸若しくはその塩が0.5質量部以上であることにより、導電性ポリマーが十分に分散する。一方、モノマー1質量部に対して、3.0質量部以下であることにより、十分な導電性が得られる。
酸化剤は、特に制限はなく、塩化鉄(III)六水和物、無水塩化鉄(III)、硝酸鉄(III)九水和物、無水硝酸第二鉄、硫酸鉄(III)n水和物(n=3〜12)、硫酸鉄(III)アンモニウム十二水和物、過塩素酸鉄(III)n水和物(n=1,6)、テトラフルオロホウ酸鉄(III)等の無機酸の鉄(III)塩;塩化銅(II)、硫酸銅(II)、テトラフルオロホウ酸銅(II)等の無機酸の銅(II)塩;テトラフルオロホウ酸ニトロソニウム;過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過ヨウ素酸カリウム等の過ヨウ素酸塩;過酸化水素、オゾン、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、硫酸四アンモニウムセリウム(IV)二水和物、臭素、ヨウ素;p−トルエンスルホン酸鉄(III)等の有機酸の鉄(III)塩を用いることができる。
なかでも、無機酸の鉄塩(III)、過硫酸塩が好ましく、硫酸鉄(III)n水和物、過硫酸アンモニウムがより好ましい。酸化剤は、1種を用いることもでき、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
酸化剤の使用量は、特に制限はないが、より穏やかな酸化雰囲気で反応させて高導電率の重合体を得る点から、モノマー1質量部に対して、酸化剤が0.5〜100質量部が好ましく、1〜40質量部がより好ましい。
酸化重合は、化学酸化重合でも電解酸化重合でもよい。化学酸化重合は、攪拌下で行うことが好ましい。化学酸化重合の反応温度は、特に限定されないが、使用する溶媒の還流温度を上限とすることができ、例えば、0〜100℃が好ましく、10〜50℃がより好ましい。化学酸化重合の反応時間は、酸化剤の種類や使用量、反応温度、攪拌条件等にもよるが、5〜100時間であることが好ましい。
なお、高分子有機酸がドーピングして導電性ポリマー(P1)が生成すると、反応液が濃紺色に変化する。
〔工程(b)〕
工程(b)では、ピロール、チオフェン及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを、ドーパントである無機酸若しくは低分子有機酸若しくはそれらの塩及び酸化剤を用いて、水、有機溶媒又は水混和性の有機溶媒からなる溶媒中で酸化重合して導電性ポリマー(P0)を調製する。
モノマーとしては、前述の工程(a)におけるモノマーと同じもの、又は、同様のものを用いることが好ましい。溶媒中のモノマーの濃度は、たとえ過剰であっても、導電性ポリマー(P0)の合成後に分離して除去することが可能なため特に制限はないが、高い導電性ポリマー(P0)を収率良く得るために、0.5〜70質量%が好ましく、1〜50質量%がより好ましい。
溶媒は、モノマーとの相溶性が良好な溶媒を選定することが好ましく、水でも有機溶媒でも水混和性の有機溶媒でも、又はそれらの混合物でもよい。有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒が挙げられる。有機溶媒叉は水混和性の有機溶媒は、1種を用いることもでき、2種以上を組み合わせて用いることもできる。なかでも、エタノール又はエタノールと水との混合溶媒が好ましい。
ドーパントとしては、無機酸及び/又は低分子有機酸若しくはその塩が用いられる。無機酸としては、例えば、硫酸、過塩素酸などのプロトン酸などが挙げられる。また、低分子有機酸若しくはその塩は、例えば、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸、アントラキノンスルホン酸若しくはそれらの誘導体、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。具体例としては、アルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、カンファースルホン酸若しくはそれらの誘導体等、又はそれらの鉄(III)塩が挙げられる。
低分子有機酸は、モノスルホン酸でもジスルホン酸でもトリスルホン酸でもよい。アルキルスルホン酸の誘導体の具体例としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が挙げられる。ベンゼンスルホン酸の誘導体の具体例としては、フェノールスルホン酸、スチレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸が挙げられる。ナフタレンスルホン酸の誘導体の具体例としては、1−ナフタレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,3−ナフタレンジスルホン酸、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸、6−エチル−1−ナフタレンスルホン酸が挙げられる。アントラキノンスルホン酸の誘導体の具体例としては、アントラキノン−1−スルホン酸、アントラキノン−2−スルホン酸、アントラキノン−2,6−ジスルホン酸、2−メチルアントラキノン−6−スルホン酸が挙げられる。
そのなかでも、1−ナフタレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸又はこれらの鉄(III)塩が好ましい。特に、ドーパントを兼ねる性質を有していることから、p−トルエンスルホン酸鉄(III)がより好ましい。
ドーパントの使用量は、過剰に添加しても導電性ポリマーの合成後に分離することで除去が可能なため特に制限はないが、高い導電性ポリマーを得るためには、モノマー1質量部に対して1〜100質量部が好ましく、1〜30質量部がより好ましい。
酸化重合は、攪拌下で行うことが好ましい。化学酸化重合の反応温度は、特に限定されないが、使用する溶媒の還流温度を上限として行い、0〜100℃が好ましく、10〜50℃がより好ましい。反応温度が好ましくないと、得られるポリマーの導電性が低下する場合がある。酸化重合の反応時間は、酸化剤の種類や使用量、反応温度、攪拌条件などに依存するが、5〜100時間程度が好ましい。なお、酸化重合が進行すると、反応液中に高分子が析出して生成する。
工程(b)で得られた導電性ポリマー(P0)は、反応液から分離するのが好ましい。分離は、ろ過法、遠心分離法などで行われる。反応液は、必ずしも完全に分離されなくてもよい。分離後の導電性ポリマー(P0)は、洗浄してもよいし、また、乾燥して用いてもよい。
洗浄する溶媒は、導電性ポリマー(P0)を溶解することなく、モノマー及び/又は酸化剤を溶解可能な溶媒を用いることが好ましい。具体例としては、水や熱水、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒が挙げられる。洗浄溶媒は、1種、又は2種以上を用いることもできる。洗浄の程度は、洗浄後の洗浄溶媒のpH測定や比色観察により確認できる。また、導電性ポリマー(P0)の乾燥は、ポリマーの分解温度以下であればよいが、300℃未満で行うことが好ましい。
〔工程(c)〕
〔工程(c)〕では、工程(b)で得られた導電性ポリマー(P0)を、工程(a)で得られた導電性ポリマー(P1)の分散液と混合し、これを酸化剤の存在下に撹拌せしめることにより、ドーパント交換を通じて導電性ポリマー(P2)を調製する。
工程(c)における、酸化剤は前述の酸化剤と同様のものを用いることができるが、なかでも過硫酸塩が好ましく、特に、過硫酸のアルキル金属塩若しくはアンモニウム塩が好ましい。酸化剤の使用量は、導電性ポリマー(P0)の1質量部に対して、0.5〜50質量部が好ましく、1〜30質量部がより好ましい。0.5質量部以下とすると、十分なドーピングが進行せず分散性が乏しくなり好ましくない。
混合、攪拌温度は、特に限定されないが、0℃〜100℃が好ましく、10℃〜50℃がより好ましい。反応時間は、特に制限されないが、5〜100時間程度である。
工程(b)で得られた導電性ポリマー(P0)を、工程(a)で得られた導電性ポリマー(P1)の分散液に混合する場合、導電性ポリマー(P0)は、工程(a)で得られた分散液に含有される導電性ポリマー(P1)の1質量部に対して、好ましくは0.01〜30質量部、より好ましくは0.01〜20質量部混合される。導電性ポリマー(P0)を導電性ポリマー(P1)の分散液に混合し、酸化剤の存在下に攪拌することによって、導電性ポリマー(P0)にドープしている低分子有機酸若しくはその塩が、導電性ポリマー(P1)にドーピングしている高分子有機酸若しくはその塩によってドーパント交換されて、導電性ポリマー(P0)に高分子有機酸若しくはその塩がドーピングする。このとき、ドーパント交換の前後で導電性ポリマーの外観色の変化が生じる。
このようにして、高分子有機酸若しくはその塩によりドーピングされた導電性ポリマー(P2)が良好に分散した均一な分散液が得られる。酸化剤を混合しなかった場合は、高分子有機酸若しくはその塩が、導電性ポリマー(P0)のドーパントと交換せずドーピングしないため、導電性ポリマーが沈降してしまい均一な分散液は得られない。
〔導電性ポリマー組成物〕
本発明の導電性ポリマー組成物は、高分子有機酸又はその塩がドーピングされた導電性ポリマー(P1)と、無機酸若しくは低分子有機酸又はその塩がドーピングされた導電性ポリマー(P0)における無機酸若しくは低分子有機酸又はその塩が、ド―パント交換によって導電性ポリマー(P1)にドーピングされた高分子有機酸又はその塩によりドーピングされた導電性ポリマー(P2)と、水又は水混和性の有機溶媒と、を含有する。
かかる導電性ポリマー組成物は、上記の工程(a)、工程(b)及び工程(c)により製造されるが、導電性ポリマー(P1)及び導電性ポリマー(P2)を含む分散液である。
本発明の導電性ポリマー組成物は、通常、濃紺色〜黒紺色を呈している。その外観色は、導電性ポリマー(P1)と(P2)の含有比率によって異なり、導電性ポリマー(P1)の含有比率が高いと濃紺色を呈し、導電性ポリマー(P2)の含有比率が高いと黒紺色を呈する。導電性ポリマー組成物における導電性ポリマー(P1)と(P2)の含有比率は、良好な分散性と高い導電性の導電性を得る点から、ポリマー(P1)の1質量部に対して、ポリマー(P2)を0.01〜20質量部が好ましく、0.01〜10質量部がより好ましく、0.01〜2.5がさらに好ましい。20質量部を超えると、分散性が損なわれる可能性があり、0.01質量未満で導電性が小さい。
導電性ポリマー(P1)と(P2)の総含有量は、特に制限されず、導電性ポリマー組成物の用途によって、調整することができる。良好な分散性の導電性ポリマー組成物を得る点からは、導電性ポリマー(P1)と(P2)の総含有量は、分散液中に0.1〜50質量%であることが好ましく、特には、0.5〜20質量%であるのが好ましい。
例えば、固体電解コンデンサの製造において、導電性ポリマー組成物にコンデンサ陽極体を浸漬する場合は、導電性ポリマー組成物の濃度が高く、粘度が低いことが好ましい。また、基材等に印刷するプロセスに用いる場合は、ある程度粘度が高いことが好ましい。
本発明の導電性ポリマー組成物の粘度は、増粘に寄与する高分子有機酸若しくはその塩の含有量、すなわち、導電性ポリマー(P1)の含有量で適宜調整することが好ましい。
導電性ポリマー組成物の濃度は、導電性組成物の分散性を損なわない範囲で、導電性ポリマー(P2)の含有量で適宜調整することが好ましい。
例えば、粘度を増加させる場合には導電性ポリマー(P2)の含有量を一定にして、導電性ポリマー(P1)の含有量を増加させるとその効果は大きく、粘度の増加を抑えて濃度を増加させる場合は、導電性ポリマー(P1)の含有量を一定にして導電性ポリマー(P2)の含有量を増加させるとその効果は大きい。
このように、本発明の導電性ポリマー組成物は、導電性ポリマー(P1)と(P2)のそれぞれの含有比率と、総含有量を適宜調整することで、高濃度でかつ、粘度の低い導電性ポリマー組成物を得ることができる。
本発明の導電性ポリマー組成物は、さらに導電性を高める目的で、さらに、導電性向上成分を含有してもよい。導電性向上成分としては、金属粒子、金属酸化物等の無機物、炭素材料、スルホキシド類、水酸基を有する水溶性化合物等が挙げられる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
本発明の導電性ポリマー組成物は、基材への密着性を高めるために、さらに、バインダー、有機官能性シラン及びそれらの水解物などの密着性向上成分を含有してもよい。バインダーとしては、導電性ポリマー組成物と相溶又は導電性ポリマー組成物に分散可能であれば特に限定されず、熱硬化性樹脂であっても、熱可塑性樹脂であってもよい。
バインダーとしては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド樹脂、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、ポリアミド11等のポリアミド樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、アラミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアクリル樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。
有機官能性シランとしては、例えば、3 − グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3 − アミノプロピルトリエトキシシラン、3 − メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3 − メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン等が挙げられる
また、熱縮合性の化合物も含まれ、前記バインダーを合成するための前駆体化合物又はモノマーが導電性ポリマー組成物に含まれてもよい。この場合、導電性ポリマー組成物を乾燥する際に、バインダーが形成される。これらのバインダーは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
バインダーの含有量は、導電性ポリマー100質量部に対し、10〜400質量部であることが好ましく、10〜100質量部であることがより好ましい。該含有量を10質量部以上とすることにより密着性が向上し、該含有量を400質量部以下とすることにより高い導電性が得られる。
本発明の導電性ポリマー組成物は、後述する基材に導電性ポリマー組成物を塗布する各工程に適合させるために、さらに粘度を制御する目的で増粘剤を添加してもよい。増粘剤としては、アルギナン酸誘導体、キサンタンガム誘導体、カラギーナンやセルロース等の糖類化合物等の水溶性高分子等が挙げられる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。増粘剤の添加量は特に限定されないが、導電性を損なわないために、導電性ポリマー組成物中に60質量%以下の割合で含まれることが好ましい。
本発明の導電性ポリマー組成物に含有される導電性ポリマーの粒径は、特に制限されないが、長期的に分散安定性の高い導電性ポリマー組成物を得る観点から、ポリマー組成物について、必要に応じて、高圧機構のジェットミルやビーズミル、超音波装置などを使用する湿式粉砕を行うことができる。かくして、本発明の導電性ポリマー組成物に含有される導電性ポリマーの粒子は、動的光散乱法で測定された体積換算の粒径(D50)が、好ましくは1〜200nm、より好ましくは1〜100nmであるのが好ましい。
導電性ポリマー組成物は、未反応モノマーや酸化剤由来の残留成分、ドーパント交換されて生じた無機酸又は低分子有機酸等の本発明の導電性ポリマー組成物を使用する場合に不適切な成分を含む場合がある。この場合、限外濾過、遠心分離等による抽出やイオン交換処理、透析処理によって、該成分を除去することが好ましい。なお、導電性ポリマー組成物に含まれる不要な成分は、ICP発光分析やイオンクロマトグラフィー、UV吸収等により定性定量可能である。
〔導電性ポリマー材料〕
導電性ポリマー材料は、導電性ポリマー組成物から前記溶媒を除去して得られる。本発明に係る導電性ポリマー材料は、導電性ポリマー(P1)と異なる製法で得られた導電性ポリマー(P2)が、ドーパントとしての高分子有機酸にドーピングされている。
導電性ポリマー(P1)と(P2)は、前記高分子有機酸の同一分子鎖上にドーピングされており、同一の導電性マトリックス中に存在している。このような導電性ポリマー材料は、導電性が高く、吸湿性が低い。また良好な成膜性を有している。
導電性ポリマー組成物からの溶媒の除去は溶媒の乾燥により行うことができる。乾燥温度は、80℃以上が好ましく、水の沸点である100℃以上で行うことがより好ましい。乾燥温度は、導電性ポリマー材料の分解温度以下であれば特に制限されないが、300℃以下が好ましい。
〔導電性基材、電極、電子デバイス〕
導電性基材は、基材上に本発明に係る導電性ポリマー材料を含む層(以下、導電性ポリマー層とも示す)を備える。また、電極は、本発明に係る導電性基材を備える。電子デバイスは、電極を備える。
このような導電性基材、電極、電子デバイスにおける要求特性の一つとして耐湿特性が挙げられるが、本発明の導電性ポリマー材料は吸湿性が少ないため、耐湿特性に優れた導電性基材を提供することができる。
本発明における基材は樹脂基材であることが好ましく、透明樹脂基材であることがより好ましい。例えば、前記基材は、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂及びスチレン樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含む樹脂基材であることが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等のフィルム又はシートが挙げられる。また、ガラス基板、シリコン基板等も使用できる。さらに、基材と導電性ポリマー層との間に、ITOを含む層を備えてもよい。
本発明に係る導電性基材は基材の少なくとも片面に導電性ポリマー層が形成されている。導電性基材は透明樹脂基材の少なくとも片面に導電性ポリマー層が形成された透明導電性基材であることが好ましい。
導電性ポリマー層の形成方法としては、本発明に係る導電性ポリマー組成物を基材表面に塗布して形成することができる。基材表面への塗布方法は特に限定されない。例えば、スピンコーティング、グラビアコーティング、バーコーティング、ディップコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング、スプレーコーティング等が挙げられる。さらに、スクリーン印刷、スプレー印刷、インクジェット印刷、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷等の印刷法も採用することが可能である。
基材上に形成される塗膜の厚みは特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、乾燥後の厚みが0.01μm以上、300μm以下であることが好ましく、0.03μm以上、100μm以下であることがより好ましい。0.01μm以上であることにより十分な導電性を発現することができる。また、300μm以下であることにより、膜厚に比例した導電性が得られる。
次いで、これらを乾燥して溶媒を除去することで、基材上に導電性ポリマー層を形成することができる。溶媒を乾燥する方法は特に限定されない。溶媒を除去するための乾燥温度は、80℃以上であることが好ましく、水の沸点である100℃以上であることがより好ましい。乾燥温度の上限は、導電性ポリマーの分解温度以下であれば特に制限されないが、300℃以下が好ましい。また、基材の耐熱性を考慮して決定することが好ましい。
導電性基材は、全光線透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。導電性ポリマー層の膜厚を任意に調整することによって、全光線透過率を70%以上とすることができる。全光線透過率は、HAZE MATER NHD−5000 (日本電色工業社製)にて測定した値とする。
本発明に係る導電性基材は、電極、特に透明電極として用いることができる。例えば、太陽電池、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等の電子デバイスの正孔注入層や正極として用いることができる。また、タッチパネル、電子ペーパー等の電子デバイスの電極として用いることができる。
〔固体電解コンデンサ〕
固体電解コンデンサは、上記の導電性ポリマー材料を含む固体電解質を備える。本発明の導電性ポリマー組成物は濃度が高く粘度が低い。コンデンサの製造において、例えば浸漬プロセス(陽極導体を浸漬する)において、粘度が低いため多孔質内部への含浸性がよく、濃度が高いため電解質の形成量が多く高い容量が得られる。また、コンデンサ陽極体の外周部への付着量も多いため、外周部を均一に被覆することもでき、LC特性の良好な固体電解コンデンサを得ることができる。また、本発明の導電性ポリマー材料は導電性が高く吸湿が少ないため、低いESR(等価直列抵抗)で、耐湿特性に優れる。
固体電解コンデンサは、陽極導体上に、誘電体層、固体電解質層及び陰極導体がこの順に積層された構造を有し、外装としてエポキシ樹脂などで加圧モールドして製品とされる。陽極導体は、弁作用金属の板、箔又は線;弁作用金属の微粒子からなる焼結体;エッチングによって拡面処理された多孔質体金属等によって形成される。弁作用金属の具体例としては、タンタル、アルミニウム、チタン、ニオブ、ジルコニウム及びこれらの合金等が挙げられる。これらの中でも、アルミニウム、タンタル及びニオブからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
誘電体層は、陽極導体の表面を電解酸化することで形成することができる層であり、焼結体や多孔質体等の空孔部にも形成される。誘電体層の厚みは、電解酸化の電圧によって適宜調整できる。
固体電解質層は、少なくとも、本発明に係る導電性ポリマー組成物から溶媒を除去して得られる導電性ポリマー材料を含む。固体電解質層の形成方法としては、例えば誘電体層上に本発明に係る導電性ポリマー組成物を塗布又は含浸し、該導電性ポリマー組成物の溶媒を除去する方法が挙げられる。
塗布又は含浸の方法としては特に制限はないが、十分に多孔質細孔内部へ導電性ポリマー組成物を充填するために、塗布又は含浸後に数分〜数十分放置することが好ましい。浸漬の繰り返しや、減圧方式又は加圧方式が好ましい。
導電性ポリマー組成物からの溶媒の除去は、導電性ポリマー組成物を乾燥することで行うことができる。溶媒を乾燥する方法は特に限定されない。溶媒を除去するための乾燥温度は、80℃以上であることが好ましく、水の沸点である100℃以上であることがより好ましい。乾燥温度の上限は、導電性ポリマーの分解温度以下であれば特に制限されないが、熱による素子劣化防止の観点から300℃以下が好ましい。また、基材の耐熱性を考慮して決定することが好ましい。乾燥時間は、乾燥温度によって適宜最適化する必要があるが、導電性が損なわれない範囲であれば特に制限されない。
固体電解質層は、さらに、ピロール、チオフェン、アニリン及びその誘導体からなる導電性重合体;二酸化マンガン、酸化ルテニウム等の酸化物誘導体;TCNQ(7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンコンプレックス塩)等の有機物半導体を含んでもよい。
固体電解質層は、第一の固体電解質層と第二の固体電解質層の2層構造とすることもできる。例えば、導電性ポリマーを与えるモノマーを化学酸化重合若しくは電解重合して、又は本発明の導電性ポリマー組成物を塗布若しくは含浸し溶媒を除去して、誘電体層上に導電性ポリマーを含む第一の固体電解質層を形成する。第一の固体電解質層上に、本発明に係る導電性ポリマー組成物を塗布又は含浸し、溶媒を除去して第二の固体電解質層を形成することができる。
前記モノマーとしては、ピロール、チオフェン、アニリン及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。モノマーを化学酸化重合又は電解重合して導電性ポリマーを得る際に使用するドーパントとしては、アルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸及びカンファースルホン酸、ならびにそれらの誘導体等のスルホン酸系化合物が好ましい。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。ドーパントの分子量としては、低分子化合物から高分子量体まで適宜選択して用いることができる。溶媒としては、水のみでもよく、水と水に可溶な有機溶媒とを含む混合溶媒を用いてもよい。
第一の固体電解質層に含まれる導電性ポリマーと、第二の固体電解質層に含まれる導電性ポリマーとは、同一種の重合体であることが好ましい。陰極導体は、導体であれば特に限定されないが、例えば、グラファイト等のカーボン層と、銀導電性樹脂とからなる2層構造とすることができる。
以下、本発明を実施例に基づき、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。
〔実施例1〕
工程(a)
高分子有機酸としての20質量%ポリスチレンスルホン酸水溶液(重量平均分子量:50,000)12.2gを、水187.5gに混合して10分間攪拌した。次に、モノマーとしての3,4−エチレンジオキシチオフェン2.04gを投入してさらに15分間攪拌し反応溶液を調製した。得られた反応溶液は、薄い黄色を呈していた。
反応溶液に含まれるポリスチレンスルホン酸の量は、反応溶液に含まれる3,4−エチレンジオキシチオフェン1質量部に対して1.19質量部であった。
反応溶液を攪拌しながら、酸化剤としての1.5質量%硫酸鉄(III)水溶液5.8gと、11.0質量%過硫酸アンモニウム水溶液13.3gを滴下して、室温下で15時間攪拌して化学酸化重合を行った。これにより、ポリスチレンスルホン酸がドーピングされたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)からなる導電性ポリマー(P1)を合成した。このとき反応溶液は、薄い黄色から濃紺色へ変化し、P1の含有量は1.3質量%であった。
工程(b)
モノマーとしての3,4−エチレンジオキシチオフェン1gと、酸化剤及びドーパントとして機能するp−トルエンスルホン酸鉄(III)9gとを、溶媒としてのエタノール30mlに溶解させた。得られた溶液を室温下24時間攪拌して化学酸化重合をおこない、反応溶液中に導電性ポリマー(P0)が析出して沈降した。
得られた反応溶液を、減圧ろ過装置を用いてろ過して導電性ポリマー(P0)を回収した。次いで、導電性ポリマー(P0)を純水とエタノールを用いて洗浄して、未反応モノマーと酸化剤の残渣を除去した。ろ液の酸性度がpH6〜7に、無色透明になるまで洗浄した後、100℃で30分乾燥して、黒色の導電性ポリマー(P0)を得た。
工程(c)
工程(b)で得た導電性ポリマー(P0)の0.12gを、工程(a)で調製した1.3質量%の導電性ポリマー(P1)を含有する濃紺色の反応液54gに投入して、10分間撹拌した。この混合液に、酸化剤としての40質量%過硫酸アンモニウム0.35gを混合し、室温下に24時間攪拌した。これにより、前記導電性ポリマー(P0)がポリスチレンスルホン酸でドーピングされている導電性ポリマー(P2)を含む液を調製した。
得られた液は、導電性ポリマー(P1)を1.3質量%と、導電性ポリマー(P2)を0.22質量%含む濃紺色である導電性ポリマー組成物(P1:P2の質量比=1:0.17)。であった。
次いで、得られた導電性ポリマー組成物に対して、両性イオン交換樹脂(商品名:MB−1、イオン交換形:−H、−OH、オルガノ社製)を27.9g投入して、2時間攪拌した。これにより、導電性ポリマー組成物のpHは1.23から1.88に変化し、濃紺色を呈した。
得られた導電性ポリマー組成物について、粘度と分散性の評価をおこなった。結果を表1に示す。
粘度は、常温下で、SV−10(AND社)を用いて測定した。
分散性の評価は、導電性ポリマー組成物を20ccのガラス瓶に10g採取して1週間、常温下で静置した後、ガラス瓶を逆さまにした時の導電性ポリマー組成物の流動性を目視で、以下の基準で評価をおこなった。
○:沈降成分なし、かつ、流動性の変化なし。
△:沈降成分はないが、流動性の低下(凝集・ゲル)傾向がある。
×:沈降成分がある、又は、流動性が明らかに低下(凝集・ゲル)。
次いで、導電性ポリマー材料について、導電性、吸湿性の評価を行った。結果を表1に示す。
導電性(S/cm)は、導電性ポリマー組成物にさらに導電性向上剤としてジメチルスルホキシドを5質量%混合して、ガラス基板上に100μl滴下し、120℃の恒温槽中で20分間乾燥して導電性ポリマー材料を形成し、表面抵抗(Ω/□)と、膜厚を計測して算出した。表面抵抗は、ロレスタ−GP(三菱化学アナリテックス社)で測定した。
吸湿性は、前記形成した導電性ポリマー材料を、85℃85%RH雰囲気に5時間放置した後の水分量を、CA−100(三菱化学社)を用いて測定した。
〔実施例2〕
工程(c)において、導電性ポリマー(P0)を0.30gとし、40質量%過硫酸アンモニウム1.0gを使用した以外は、実施例1と同様にして導電性ポリマー組成物を製造した。導電性ポリマー組成物は、P1成分を1.3質量%とP2成分を0.55質量%含み(P1:P2の質量比=1:0.42)、若干黒みがかった紺色であった。
〔実施例3〕
工程(c)において、導電性ポリマー(P0)を0.61gとし、40質量%過硫酸アンモニウム2.1gを使用した以外は、実施例1と同様にして導電性ポリマー組成物を製造した。導電性ポリマー組成物は、P1成分を1.3質量%とP2成分を1.1質量%含み(P1:P2の質量比=1:0.84)、黒みがかった紺色であった。
〔実施例4〕
工程(c)において、導電性ポリマー(P0)を1.1gとし、40質量%過硫酸アンモニウム3.7gを使用した以外は、実施例1と同様にして導電性ポリマー組成物を製造した。導電性ポリマー組成物は、P1成分を1.3質量%とP2成分を2.0質量%含み(P1:P2の質量比=1:1.53)、黒紺色であった。
〔比較例1〕
高分子有機酸としての20質量%ポリスチレンスルホン酸水溶液(重量平均分子量:50,000)12.2gを、水187.5gに混合して10分間攪拌した。次に、モノマーとしての3,4−エチレンジオキシチオフェン2.04gを投入してさらに15分間攪拌し反応溶液を調製した。得られた反応溶液は、薄い黄色を呈していた。
反応溶液に含まれるポリスチレンスルホン酸の量は、反応溶液に含まれる3,4−エチレンジオキシチオフェン100質量部に対して119質量部であった。
反応溶液を攪拌しながら、酸化剤としての硫酸鉄(III)0.012gと、過硫酸アンモニウム4.46gを滴下して、室温下で15時間攪拌して化学酸化重合を行った。このとき反応液は、薄い黄色から濃紺色へ変化した。
次いで、得られた反応液に対して、両性イオン交換樹脂(商品名:MB−1、イオン交換形:−H、−OH、オルガノ社製)を50.1g投入して、2時間攪拌した。これにより、反応溶液のpHは1.15から1.83に変化した。これにより、1.3質量%のポリスチレンスルホン酸がドーピングされたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含有する導電性ポリマー組成物を調製した。
〔比較例2〜4〕
表1に示す導電性ポリマーの含有量となるように、20質量%ポリスチレンスルホン酸水溶液(重量平均分子量:50,000)、3,4−エチレンジオキシチオフェンを増加し、伴って酸化剤を同じ比率で増加させて合成した以外は、比較例1と同様にして導電性ポリマー組成物を合成した。結果を表1に示す。
なお、分散性が悪かった導電性ポリマー組成物については、導電性ポリマー材料の形成性が悪く、導電性と吸湿性の評価が困難であるため行わなかった。
〔比較例5〕
比較例1で合成した導電性ポリマー組成物54gに、実施例1の工程(b)で得られた導電性ポリマーを、0.3g混合して、室温下に24時間攪拌した。これにより導電性ポリマーを0.55質量%含む、黒みがかった紺色の導電性ポリマー組成物を得た。結果を表1に示す。
導電性ポリマー組成物の分散性は悪かったが、強く撹拌して一時的に再分散させた状態で導電性、吸湿性の評価をおこなった。
〔比較例6〕
モノマーとしての3,4−エチレンジオキシチオフェン1gと、酸化剤及びドーパントとして機能するp−トルエンスルホン酸鉄(III)9gとを、溶媒としてのエタノール30mlに溶解させた。得られた溶液を室温下24時間攪拌して化学酸化重合を行い、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を合成した。
得られた溶液を減圧ろ過装置を用いてろ過して、粉末を回収した。純水とエタノールを用いて粉末を洗浄した。
精製後の粉末0.5gを水50ml中に分散させた後、ポリ酸成分としてのポリスチレンスルホン酸(重量平均分子量:50,000)を20質量%含有する水溶液3.3gを添加した。この混合液に、酸化剤としての過硫酸アンモニウム1.5gを添加し、室温下24時間攪拌した。
次いで、比較例1と同様にしてイオン交換処理をおこなって、2.3質量%のポリスチレンスルホン酸がドーピングされたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含有する導電性ポリマー組成物を合成した。実施例1と同様にして評価をおこなった結果を表1に示す。
Figure 0006417452
表1から、実施例1〜4は、導電性成分の増加に伴う粘度の上昇が小さく、良好な分散性の導電性ポリマー組成物であることがわかる。また導電性が高く、吸湿が少ない導電性ポリマー材料ことがわかる。
比較例1〜4は、導電性成分の増加に伴う、粘度の上昇が著しく大きくゲル化が認めら
れた。比較例5は、粉末成分が沈降してしまい分散性が悪い。また導電性が低く、吸湿が大きい。また実施例2と比較すると、単に粉末を混合するよりもドーピングされていることで導電性が高く、吸湿が小さいことがわかる。比較例6は、分散性は良好であったがポリスチレンスルホン酸の含有量が多いため、導電性が低く、吸湿が大きい。
〔実施例5〕
工程(a)において、反応溶液に含まれるポリスチレンスルホン酸の量は、反応溶液に含まれる3,4−エチレンジオキシチオフェン1質量部に対して2.44質量部とし、実施例3と同様にして導電性ポリマー組成物を製造した。こうしてP1成分を1.3質量%とP2成分を1.1質量%含む若干黒みがかった紺色である導電性ポリマー組成物を得た(含有比率 P1:P2=1:0.84)。実施例1と同様にして粘度を測定した結果を表2に示す。
〔比較例7〕
表2に示す導電性ポリマーの含有量となるように、(反応溶液に含まれるポリスチレンスルホン酸の量は、反応溶液に含まれる3,4−エチレンジオキシチオフェン1質量部に対して2.44質量部)、20質量%ポリスチレンスルホン酸水溶液(重量平均分子量:50,000)と、3,4−エチレンジオキシチオフェンを増加し、伴って酸化剤を同じ比率で増加させて合成した以外は、比較例1と同様にして導電性ポリマー組成物を合成した。実施例5と同様にして粘度を評価した結果を表2に示す。
Figure 0006417452
これより、工程(a)においてポリスチレンスルホン酸と、3,4−エチレンジオキシチオフェンの混合比率を変化させた場合も、粘度の低い導電性ポリマー組成物が得られることがわかった。
〔実施例6〕
工程(a)において、20質量%ポリスチレンスルホン酸水溶液(重量平均分子量:50,000)に代えて、25質量%水溶性ポリエステルスルホン酸樹脂(重量平均分子量:28,000)を用いた以外は実施例1と同様にしてP1成分を1.3質量%とP2成分を0.22質量%含む濃紺色である導電性ポリマー組成物を得て(含有比率 P1:P2=1:0.17)、評価をおこなった。結果を表3に示す。
〔実施例7〕
工程(b)に使用するモノマーとして、ピロールを用いた以外は実施例1と同様にして導電性ポリマー組成物を得て、評価をおこなった。結果を表3に示す。
〔実施例8〕
工程(b)において、酸化剤としてp−トルエンスルホン酸鉄(III)に代えて、過硫酸アンモニウムを、溶媒としてエタノールに代えて水を用いた以外は実施例1と同様にして導電性ポリマー組成物を得て、評価をおこなった。結果を表3に示す。
〔実施例9〕
工程(c)において、導電性ポリマー(P0)を0.05gとした以外は実施例1と同様にして、P1成分を1.3質量%とP2成分を0.09質量%含む濃紺色である導電性ポリマー組成物を得て(含有比率 P1:P2=1:0.07)、評価をおこなった。結果を表3に示す。
〔実施例10〕
実施例1の工程(a)において、モノマーとして〔化1〕のRがエチル基であるモノマーを用いた以外は実施例1と同様にして導電性ポリマー組成物を得て、評価をおこなった。結果を表3に示す。
〔実施例11〕
実施例1の工程(b)において、モノマーとして〔化1〕のRがエチル基であるモノマーを用いた以外は実施例1と同様にして導電性ポリマー組成物を得て、評価をおこなった。結果を表3に示す。
Figure 0006417452
表3に示されるように、実施例6では、ドーパントとしての高分子有機酸を変更しても、また、実施例7では、モノマーとしてピロールを用いても、実施例8では、ドーパントとしての低分子有機酸を含まない酸化剤を用いても、実施例9では、導電性ポリマー(P2)の比率を変化させても、実施例10、11では、モノマーを変更しても、いずれも、本発明の効果が得られることがわかる。
〔実施例12〕
実施例1で得られた導電性ポリマー組成物を、市販の高圧粉砕装置を用いて処理した。得られた導電性ポリマー組成物を、動的光散乱原理の装置を用いて粒度分布を測定した結果、体積換算の粒径(D50)は、48.5nmであった。
次いで、該導電性ポリマー組成物10gに、さらに導電性向上成分としジメチルスルホキシドを5質量%と、密着性向上成分として市販の水溶性ポリエステル樹脂(固形分25質量%)を0.53g混合して60分攪拌して、導電性ポリマー組成物を調製した。
基材としての、厚さ100μmのポリエステルフィルム(商品名:DIAFOIL MR−100、三菱化学ポリエステルフィルム製)上に、前記混合物を100μl滴下した。スピンコーターを用いて、1,000rpmで5秒、連続して3,000prmで30秒コートした。その後、120℃で15分間乾燥して導電性基材を得た。
得られた導電性基材について耐湿性試験をおこなった。耐湿性試験は、60℃90%RH雰囲気に100時間放置した場合の初期値に対する導電性の変化率(倍)を算出した。結果を表4に示す。
〔比較例8、9〕
良好な分散性を示した比較例2及び6で得られた導電性ポリマー組成物をそれぞれ用いて、密着性向上成分の量をそれぞれ0.56g、0.81gとした以外は、実施例12と同様にして導電性ポリマー組成物を調製して、導電性基材を得た後、同様の評価をおこなった。結果を表4に示す。
Figure 0006417452
表4に示されるように、実施例12では、耐湿性試験の導電性の劣化が小さいが、比較例8、9では、導電性の劣化も大きい。
〔実施例13〕
弁作用金属からなる陽極導体として多孔質性の直方体タンタル素子を用い、リン酸水溶液中で50V印加して陽極酸化によりタンタルの表面に誘電体層となる酸化皮膜を形成した。次いで、誘電体層を形成した陽極導体を、実施例12で調製した導電性ポリマー組成物に浸漬し引き上げた後、120℃で15分間乾燥して、固体電解質層を形成した。
次いで、実施例3の導電性ポリマー組成物を市販の高圧粉砕装置を用いて処理した。得られた導電性ポリマー組成物を、動的光散乱原理の装置を用いて粒度分布を測定した結果、体積換算の粒径(D50)は、68.9nmであった。該導電性ポリマー組成物10gに、さらに導電性向上成分としジメチルスルホキシドを0.67gと、密着性向上成分として市販の水溶性ポリエステル樹脂(固形分25質量%)を1.01g混合して60分攪拌して調製した導電性ポリマー組成物に、浸漬し引き上げて120℃15分間乾燥した。
次いで、固体電解質層の上に、グラファイト層及び銀含有樹脂層を順番に形成して、エポキシ樹脂で加圧モールドして、固体電解コンデンサを得た。
固体電解コンデンサの容量(120Hz)、ESR(100kHz)を、LCRメーターを用いて各周波数で測定した後、25Vの電圧を3分間印加した後のLC(漏れ電流)測定をおこなった。結果を表5に示す。
〔比較例10〕
比較例2で得られた導電性ポリマー組成物を市販の高圧粉砕装置を用いて処理した。次いで、該導電性ポリマー組成物10gに、さらに導電性向上成分としジメチルスルホキシドを5質量%と、密着性向上成分として市販の水溶性ポリエステル樹脂(固形分25質量%)を0.56g混合して60分攪拌して、導電性ポリマー組成物を調製した。次いで、実施例13で用いたタンタル素子を用いて、誘電体層を形成した陽極導体を該導電性ポリマー組成物に浸漬し引き上げた後、120℃で15分間乾燥して、固体電解質層を形成した。次いで、固体電解質層の上に、グラファイト層及び銀含有樹脂層を順番に形成して、エポキシ樹脂で加圧モールドして固体電解コンデンサを得て、同様に評価をおこなった。結果を表5に示す。
〔比較例11、12〕
比較例5、6で得られた導電性ポリマー組成物をそれぞれ用いて、密着性向上成分の量をそれぞれ0.66g、0.81gとした以外は、比較例10と同様にして調製して、固体電解コンデンサを得て評価をおこなった。結果を表5に示す。
なお、比較例5で得られた導電性ポリマー組成物は、用いる際に強く再撹拌して沈降成分を一時的に分散させて用いた。
Figure 0006417452
表5に示されるように、実施例13では、容量が大きく、ESRが低く、LCが小さく良好な固体電解コンデンサが得られる。これは、導電性ポリマー材料が高分散性、高導電性を有し、高濃度でも安定した分散性を有し、導電性ポリマーが陽極導体の外周部を均一に覆っていることに起因すると考えられる。
比較例10では、ESRが高く、LCが大きく好ましくない。これは、導電性ポリマー材料の導電性が低いこと、陽極導体の外周部を導電性ポリマーで覆えていないことに起因し、外周部を覆えなかったのは濃度が低いことも要因であると考えられる。
比較例11では、容量が低く、ESRが高く、LCが高い。これは、導電性ポリマー組成物の分散安定性が悪く、導電性が低いこと、陽極導体の外周部を導電性ポリマーで覆えていないことに起因すると考えられる。
比較例12では、ESRが高く、LCが大きい。これは、導電性ポリマー組成物の導電性が低いこと、さらに陽極導体の外周部を覆う導電性ポリマー材料が硬いために加圧モールド時の機械的ストレスによって割れが生じ悪化した可能性が考えられる。
本発明の導電性ポリマー組成物から得られる導電性ポリマー材料は、導電性基材、電極、特に固体電解コンデンサ、帯電防止材、電磁波シールド材、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池等の電極、及びエレクトロルミネッセンスディスプレイの電極等に広く使用される。

Claims (11)

  1. 無機酸若しくは低分子有機酸又はそれらの塩がドーピングされた導電性ポリマー(P0)における無機酸若しくは低分子有機酸又はそれらの塩の一部が、高分子有機酸又はその塩がドーピングされた導電性ポリマー(P1)に含まれる高分子有機酸又はその塩によってドーパント交換されていることを特徴とする導電性ポリマー(P2)。
  2. 前記導電性ポリマー(P1)のモノマーが、ピロール、チオフェン及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の導電性ポリマー(P2)。
  3. 前記導電性ポリマー(P0)のモノマーが、ピロール、チオフェン及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の導電性ポリマー(P2)。
  4. 前記高分子有機酸が、少なくともスルホン酸基(−SOH)を有する請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ポリマー(P2)。
  5. 前記高分子有機酸が、ポリエステルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載の導電性ポリマー(P2)。
  6. 前記低分子有機酸が、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸、アントラキノンスルホン酸、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の導電性ポリマー(P2)。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の導電性ポリマー(P2)の製造方法であり、無機酸若しくは低分子有機酸又はそれらの塩がドーピングされた導電性ポリマー(P0)と、高分子有機酸又はその塩がドーピングされた導電性ポリマー(P1)とを、水又は水混和性の有機溶媒の分散液と酸化剤の存在下に混合することを特徴とする導電性ポリマー(P2)の製造方法。
  8. 前記酸化剤が過硫酸塩である請求項7に記載の導電性ポリマー(P2)の製造方法。
  9. さらに、導電性向上成分及び/又は密着性向上成分を混合する請求項7又は8に記載の導電性ポリマー(P2)の製造方法。
  10. さらに、湿式ビーズミル、湿式ジェットミル、又は超音波装置を用いて粉砕する請求項7〜9のいずれかに記載の導電性ポリマー(P2)の製造方法。
  11. 動的光散乱法で測定された体積換算の粒径(D50)が1〜200nmである請求項10に記載の導電性ポリマー(P2)の製造方法。
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