JP6415197B2 - 光電変換素子、太陽電池及び光センサー - Google Patents
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Description
例えば、シリコン系材料やIII−V族化合物を用いた太陽電池は、光電変換層が無機半導体からなるため、フレキシブル性を実現することができなかった。アモルファスの半導体を薄膜で形成することで、ある程度のフレキシブル性を実現することが出来ても、その光電変換効率は、原理的な限界値が28%程度であり十分とは言えなかった。なお、単結晶シリコンを用いた太陽電池でも、その原理的な光電変換効率の限界値は32%であり、光のエネルギーを十分電力に変換できているとは言えなかった。
しかしながら、タンデム構造の光電変換素子は、ある程度の厚みを有する層を複数積層する必要があるため、総厚が厚くなりフレキシブル性を実現することができない。また量子ドットを利用した光電変換素子も、軽量かつフレキシブルにすることが難しく、さらにその加工が非常に難しいという問題があった。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、軽量かつフレキシブルで、光電変換効率が十分高い光電変換素子、太陽電池および光センサーを提供することを目的とする。
すなわち、p型半導体とn型半導体との間をアームチェア型の端部を有するグラフェンナノリボンで接合することで、軽量かつフレキシブルで、光電変換効率が十分高い光電変換素子、太陽電池および光センサーを実現できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る光電変換素子の平面模式図である。図1に示すように、光電変換素子10は、p型半導体1とn型半導体2が、アームチェア型の端部を有するグラフェンナノリボン3を介して接合されている。
またグラフェンナノリボン3は、原子レベルの厚みしかないため、非常に薄くフレキシブルである。そのため、複雑に稼働するような部分にも適応することができる。そのため、例えば、ウェアラブルな太陽電池、光センサー等を実現することができる。
まず多重励起子生成とは、エネルギーギャップの2倍以上のエネルギーを持つ1つの光子を半導体に照射した場合に、半導体内に多数の励起子(電子正孔対)が生成される現象である。従来のバルク半導体では、この多重励起子の生成確率が極めて小さいため、1個の光子につき1個の励起子しか生成されない。これはバルク半導体には多数の自由電子が存在するために、電子−正孔間のクーロン引力が遮蔽され、励起子が安定には存在できないためである。すなわち、バルク半導体では、励起エネルギー(半導体のエネルギーギャップ)以上のエネルギーを与えても、そのエネルギーの多くは熱散逸により失われる。
また同時に、生成された励起子同士のクーロン相互作用も大きくなる。すなわち、生成された励起子が他のエレクトロンやホールに影響を及ぼすことによって、さらに別の励起子が生成される確率が高くなる。
したがって、クーロン相互作用が強くなると、熱散逸により励起子がエネルギーを失う時間が長くなり、励起子が別の励起子を生み出す可能性が高くなる。すなわち、多重励起子生成が生じやすくなる。
光電変換における工程は、光子から励起子が形成される工程と、励起子からホールとエレクトロンのキャリアが形成される工程がある。図2のグラフでは、一つの光子から複数の励起子を取り出すことができることを示した。これに対し、図3は、一つの光子からホールとエレクトロンがキャリアとして実際にどれだけ取り出せているかを示している。
また図3に示すように、励起エネルギーの2倍以上の光を与えて初めて、1.0倍以上の光電変換効率を示す。これは、キャリアが多重励起子生成を経た後に生成されていることを示している。
すなわち、擬一次元材料は、一つの光子から多重励起子により複数の励起子を生成することができ、その励起子は励起子の状態で留まることなく、ホールとエレクトロンのキャリアに分離されていることを示している。
これに対し、グラフェンナノリボンの幅を変えると、グラフェンナノリボンのエネルギーギャップを制御することができる。そのため、グラフェンナノリボンのサイズは特に限定されないが、使用態様(利用したい光の波長帯域)に合せて、グラフェンナノリボンの幅を調整することが好ましい。
すなわち、擬一次元材料であるグラフェンナノリボン中に励起子解離サイトを有すると、生成された励起子を効率的にキャリアに変換することができる。励起子解離サイトは、欠陥や不純物サイト等であり、グラフェンナノリボンに電子線を照射する、キャリアをイオンドープする等の方法で形成することができる。
また励起子解離サイトは、欠陥や不純物サイト等からなるため、励起子の生成を阻害する恐れがある。そのため、グラフェンナノリボン中における励起子解離サイトの面積比率は2%以下であることが好ましい。
図5は、本発明の第2実施形態に係る光電変換素子の平面模式図である。図5に示すように、光電変換素子10は、p型半導体1とn型半導体2が、グラフェンナノリボン3を介して接合されている。グラフェンナノリボン3は、p型半導体1とn型半導体2との接合方向に形成された幹部3aと、幹部3aから分岐した枝部3bを有する。
グラフェンナノリボン3中に励起子解離サイト4を有すると、効率的に生成された励起子を効率的にキャリアに変換することができる。励起子は、グラフェンナノリボン3内を比較的自由に移動することができる。そのため、生成された励起子はグラフェンナノリボン3内を移動し、励起子解離サイト4にトラップされる。トラップされた励起子は、励起子解離サイト4に発生する大きな電場の影響を受けてキャリアに分離される。
そのため、励起子解離サイト4を幹部3aに有すると、枝部3bで発生した励起子を効率的に幹部3aでキャリアに分離することができ、無駄がなくより効率的に光電変換することができる。
グラフェンナノリボン中における励起子解離サイトの面積比率は、第1の実施形態と同様に2%以下であることが好ましい。
このときの幅は、図6に示すように、幹部3aの第1の端部から第2の端部へ向かって徐々に狭くなっていく場合に限らない。例えば、幹部3aの中央部に最も幅の広い枝部3bを有し、第1および第2の端部に向かって枝部3bの幅が狭まるような構成としてもよい。またその逆の構成でもよい。さらに、枝部3bの幅をランダムに設定してもよい。
図7は、本発明の第3実施形態に係る光電変換素子の斜視模式図である。図7に示すように、光電変換素子30は、p型半導体1とn型半導体2が、アームチェア型の端部を有するグラフェンナノリボン3と原子層絶縁体5が複数交互に積層された積層体を介して接合されている。
このとき、照射される面積が大きくなる理由を説明する。例えば、同一の幅を有する枝部を有するグラフェンナノリボン3が原子層絶縁層4を介して積層された場合、各層の枝部はわずかにずれて積層されることが考えられる。そのため、平面視した場合に枝部の幅は、グラフェンナノリボン3が一層のみの場合と比較して、擬似的に広くなる。そのため、照射される面積が大きくなる。
図8は、本発明の一態様にかかる太陽電池を模式的に示した図である。本発明の太陽電池100は、上述の光電変換素子を有する。光電変換素子は、第1の実施形態〜第3の実施形態のいずれの光電変換素子でもよく、ここでは簡単のため、第1の実施形態の光電変換素子10を有している例を用いて説明する。
太陽電池100は、光電変換素子10のグラフェンナノリボン3で光を電力に変換し、外部出力手段40から出力する。光電変換素子10のグラフェンナノリボン3に照射された光は励起子を生成し、さらにキャリアを生み出す。キャリアは、p型半導体1とn型半導体2のpn接合界面における内部電界の影響を受けて、外部出力手段40に電流として流れ、外部出力手段40から出力される。
図9は、本発明の一態様にかかる光センサーを模式的に示した図である。本発明の光センサー200は、上述の光電変換素子を有する。光電変換素子は、第1の実施形態〜第3の実施形態のいずれの光電変換素子でもよく、ここでは簡単のため、第1の実施形態の光電変換素子10を有している例を用いて説明する。
光センサー200は、照射された光の波長により、動作の有無を判断するセンサーである。具体的には、電化製品のリモートコントローラー等のスイッチング素子として利用することができる。
まず、グラフェンナノリボンの製造方法について具体的に説明する。グラフェンナノリボンは、初めからナノスケールサイズのグラフェンナノリボンを合成するボトムアップ型の手法と、グラフェンやカーボンナノチューブを合成後に微細加工により作製するトップダウン型の手法がある。
また他にも、特開2014−97531号公報に記載されているように、FIB(フォーカスイオンビーム)加工により、数nm単位の加工を行うことができる。
まず、電子線リソグラフィー等の技術により、マスクを形成し、そのマスクを介してドライエッチングを行う。この際に、ドライエッチングの出力を徐々に弱くしていくと、積層体の被加工部にテーパー形状が形成される。被加工部をテーパー形状とすると、加工後に形成されるグラフェンリボン3と層間絶縁膜5の積層体にも傾斜が形成される。
図10は、積層体の被加工部をp型半導体とn型半導体の接合方向に平行な面で切断した断面模式図である。そのため、図10で示されるグラフェンナノリボン3は枝部に対応し、一方の面から他方の面に向かって、各層のグラフェンナノリボンの枝部の幅が変化していることがわかる。
Claims (10)
- p型半導体とn型半導体が、アームチェア型の端部を有するグラフェンナノリボンを介して接合され、
前記グラフェンナノリボンが、前記p型半導体と前記n型半導体との接合方向に形成された幹部と、前記幹部から分岐した枝部を有することを特徴とする光電変換素子。 - 前記グラフェンナノリボンが、p型半導体とn型半導体との間に複数並置されていることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
- 前記グラフェンナノリボンが、形成された励起子を解離する励起子解離サイトを備えることを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の光電変換素子。
- 前記枝部が複数あり、各枝部の幅が一定であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光電変換素子。
- 前記枝部が複数あり、各枝部に幅の中に、幅が異なるものを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光電変換素子。
- 前記幹部が、形成された励起子を解離する励起子解離サイトを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光電変換素子。
- p型半導体とn型半導体が、アームチェア型の端部を有するグラフェンナノリボンと原子層絶縁体が複数交互に積層された積層体を介して接合され、
前記グラフェンナノリボンが、前記p型半導体と前記n型半導体との接合方向に形成された幹部と、前記幹部から分岐した枝部を有することを特徴とする光電変換素子。 - 積層された前記グラフェンナノリボンが枝部を有し、層ごとに枝部の幅が異なることを特徴とする請求項7に記載の光電変換素子。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載された光電変換素子を用いた太陽電池。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載された光電変換素子を用いた光センサー。
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