以下、本発明のガスタービン吸気装置及びガスタービンの吸気方法に係る一実施例について図面を参照して説明する。なお、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。そして、水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。
(第1実施形態)
図1は、ガスタービンプラントの一例に係る概略構成を示す図である。図2は本実施形態に係るガスタービンプラントの概略構成を示す側面図である。
ガスタービンプラント1は、図1に示すように、圧縮空気を生成する圧縮機2と、圧縮機2で生成された圧縮空気を用いて燃焼ガスを生成する燃焼器3と、燃焼器3で生成された燃焼ガスによって動力を発生するガスタービン4と、吸気冷却装置10と、を備える。ガスタービン4は、発電機5に連結されており、ガスタービン4で発生した動力が発電機5により電力に変換されるようになっている。
吸気冷却装置10は、外部(大気中)から空気を取り込む吸気用建屋(吸気部)11と、該吸気用建屋11に連通し、外部から取り込んだ空気を圧縮機2の吸気側へと導く吸気ダクト(ダクト)12と、吸気用建屋11よりも上流側に配置され、ミスト状の液体を噴射する複数の噴射ノズル13と、を備えている。なお、吸気用建屋11は、ガスタービンプラント1の設備の一部を構成するものである。
吸気用建屋11は立方体形状からなる建屋であり、6つの壁面を有している。吸気用建屋11は、外気を吸気するための吸気面を3つの壁面に有している。本実施形態において、吸気用建屋11は、XZ面に平行な2面のうち上流側の壁面11a、及びZY平面に平行な2面である壁面11b、11cに、大気中に開口された複数の空気取入口21が形成されている。本実施形態において、複数の空気取入口21は、例えば、4つで平面視矩形状の1つの取入口ユニット21Aを構成するように壁面11a、11b、11cに配置されている。このような構成に基づき、吸気用建屋11は、3方向から大気中から空気を内部に形成された吸気室14に導入することが可能とされている。なお、吸気室14の流路断面積は吸気ダクト12よりも大きい。
本実施形態において、吸気用建屋11の壁面11a、11b、11cには、複数の空気取入口21の少なくとも一部、例えば、複数の上記取入口ユニット21Aを区画するルーバー22が突出した状態に形成されている。ルーバー22は、各壁面11a、11b、11cに対し、Z方向に亘って延びる長板状の部材から構成される。本実施形態において、壁面11aには、6つのルーバー22がX方向に沿って設置され、壁面11b、11cには、2つのルーバー22がY方向に沿って設置されている。なお、ルーバー22の数は、吸気用建屋11の大きさ、空気取入口21(取入口ユニット21A)の大きさ或いは数によって適宜設定され、本実施形態に限定されない。
ルーバー22は、吸気用建屋11の空気取入口21に雨が直接的に入り込むのを防止するためのものである。吸気用建屋11は、ルーバー22を備えることで、空気取入口21に吸気した空気を効率的に取り込むことが可能とされている。また、ルーバー22は、後述のように噴射ノズル13から噴射されて空気中に残留したミストを捕捉する捕捉部材としても機能する。
複数の噴射ノズル13は、吸気用建屋11を囲むように配置されている。噴射ノズル13は、空気取入口21に取り込まれる空気中に液体(例えば、水)をミスト状に噴射するためのものである。本実施形態において、複数の噴射ノズル13は、壁面11a、11b、11cに対向する位置であり、外気の導入方向における上流側に配置されている。なお、噴射ノズル13の個数は、該噴射ノズル13から噴射されるミストMの拡散範囲を考慮して決定されることが好ましい。
噴射ノズル13には、噴射される液体を該噴射ノズル13に供給するための配管15が接続されており、該配管15を介してポンプ16によって液体がタンク17から噴射ノズル13に供給されるようになっている。なお、噴射ノズル13からの液体の噴射量は、外気温および湿度に応じて調節される。噴射ノズル13は、上記配管15に取り付けられることで上記所定位置(壁面11a、11b、11cに対向する位置)に設置されている。なお、配管15は、例えば、不図示の領域において吸気用建屋11から延びる固定部材に固定されていても良いし、吸気用建屋11とは別の固定部材を介して設置されていてもよい。
ところで、ガスタービンプラント1の出力向上を実現するためには、吸気冷却装置10による冷却効率を向上させることが重要である。ここで、吸気冷却装置10による冷却効率はミストMの蒸発量に依存する。すなわち、吸気冷却装置10による冷却効率を向上させるためには、噴射ノズル13から噴射したミストMの蒸発量を増大させる必要がある。
ミストMの蒸発量には、ミストMの平均粒径が大きく影響する。本発明者らは、ミストMの蒸発量を増大させるべく、空気取入口21に対する空気の流れを考慮するのに加え、液体から気体に相変化する際の沸騰現象に着目した。液体内部で沸騰が生じると気泡が急速に成長し液膜を破断させる力が作用し、ミストの平均粒径が小さくなる。
この現象は、文献(「C203 太陽熱を利用したガスタービン増出力システム」、日本機械学会(No.13−10)第18回動力・エネルギー技術シンポジウム講演論文集(13.6.20,21,千葉)、p.299−300)に示されている。
本実施形態においては、図2に示すように、吸気冷却装置10がミストMを加温するための加温部9を含んだ構成を採用している。吸気冷却装置10は、通常6Mpa、20℃程度の水を加温部9により60℃〜80℃程度まで加温し、ミストを噴射することとした。加温されたミストは減圧沸騰が生じる。また、ミストMは粘性係数が加温前(温度例えば、27℃で853μPa・s)から加温後(例えば、温度67℃で424μPa・s)へと変化し、表面張力が加温前(例えば、20℃で72.8dyne/cm)から加温後(例えば、60℃で66.2dyne/cm)へと変化するため、ミストの平均粒径を小さくする条件が満足される。このように本実施形態においては、加温により平均粒径の小さいミストMを噴射することが可能である。
本実施形態において、ガスタービンプラント1は、例えば、プラントのスペース的な制約から排気ダクト7と吸気冷却装置10の吸気用建屋11が近接した状態に配置されている。排気ダクト7は、ガスタービン4からの排気を排熱回収ボイラ6へと導く。排熱回収ボイラ6は、ガスタービン4から排出された排ガスを利用して蒸気を生成する。排熱回収ボイラ6は、蒸気生成に利用した排ガスを不図示の煙突より外部に排出する。
排気ダクト7内を流れる排気ガスは、外気に比べて非常に高温であるため、排気ダクト7は内部を流れる排気ガスの影響により表面温度が外気温度に比べて高くなってしまう。これにより、排気ダクト7の周囲の空気は温められて温度が上昇する。
本実施形態において、排気ダクト7は、吸気用建屋11の上面に近接した位置に設置されている。そのため、排気ダクト7と吸気用建屋11との間の隙間の外気が温められることで温度上昇してしまう。このように温度上昇した外気は、外側から巻き込まれる空気の流れによって空気取入口21に吸い込まれることで吸気温度を効率的に低下させる可能性がある。
本実施形態において、加温部9は、排気ダクト7を流れるガスタービン4の排熱を用いている。加温部9は、吸熱部9aと放熱部9bとを有する。吸熱部9aは、排気ダクト7と熱的に接続されており、排気ダクト7の熱を吸収する。放熱部9bは吸熱部9aに熱的に接続されている。放熱部9bは、吸熱部aが排気ダクト7から吸収した熱を配管15に供給する。これにより、配管15内の液体が加温(加熱)される。本実施形態において、放熱部9bは、配管15におけるポンプ16よりも下流側を加温している。これによれば、配管15内の液体はポンプ16で先に加圧されるため、液体の沸騰を防止できる。また、ポンプ16は、加温前の液体を加圧するため、耐温度が抑えられる。
さらに、本発明者らは、ミストMの蒸発量を増大させるべく、空気取入口21に対する空気の流れを考慮してミストを噴射することに着目した。以下の説明では、壁面11aに形成された空気取入口21を例に挙げて説明するが、壁面11b、11cに形成された空気取入口21についても同様のシミュレーション結果が得られていることからその詳細については省略する。
図3は、ミストの噴射方向を変化させるようにノズルの設置方向を変化させた場合において、ノズルから噴射されたミストの流れのシミュレーション結果を概念的に示した図である。具体的に、図3(a)は吸気方向(+X方向)に向けてノズル13Aのミスト噴射口を設置した場合(以下、順方向設置と称す場合もある)を示すものであり、図3(b)は鉛直方向上方(+Z方向)、且つ、吸気方向(+X方向)と反対側(−X方向)であって水平面から45度傾けてノズル13Aのミスト噴射口を設置した場合(以下、逆斜め上方設置と称す場合もある)を示すものであり、図3(c)は鉛直方向上方(+Z方向)を向けてノズル13Aミスト噴射口を設置した場合(以下、鉛直方向上方設置と称す場合もある)を示すものである。なお、本シミュレーション結果で説明するノズル13Aは、本実施形態に係る吸気冷却装置10が有する噴射ノズル13と同一の構成を有するものであり、同じ噴射特性を有する。また、本説明において、ノズル13Aは、ミストを噴射する一般的なノズルと同様、ミストが放射状に噴射されるものとする。
図3(a)に示したように、順方向設置されたノズル13Aは、Y方向に沿って配置されるとともに前記ノズル13Aに液体を供給する配管15Aと反対方向に向けてミストM1を噴射する。そのため、噴射されたミストM1は、配管15Aに付着することがない。しかしながら、順方向設置によるノズル13Aから噴射されたミストM1は、空気の流れ方向(吸気方向)に沿って進むため、空気の流れ方向と反対方向(例えば、180度逆方向)に沿ってミストM1が噴射される場合に比べて、ミストM1の飛翔距離が短くなる。
そのため、ミストM1が蒸発するまでの時間を稼ぐことができない。ここで、飛翔距離とは、ノズル13Aから噴射されたミストM1がノズル13Aの下流側の所定位置に達するまでに進んだ合計距離である。
このように、図3(a)に示すようにノズル13Aを順方向設置した場合はミストM1の飛翔距離が短くなることから、吸気方向に流れる空気中において十分に蒸発することができず、ミストM1がルーバー22(図1参照)に付着してしまい、結果的に冷却効率が低下してしまう。
これに対し、吸気方向(+X方向)と180度反対方向(−X方向)に向けてノズル13Aのミスト噴射口を設置する場合(以下、逆方向設置と称す場合もある)も考えられる。このように逆方向設置されたノズル13Aは、配管15Aに対して吸気方向の上流側にミストM1を噴射する。配管15Aは、ノズル13Aよりも大きいため、噴射したミストM1の一部が付着するおそれがある。
また、逆方向設置のノズル13Aから噴射されたミストM1は、はじめは空気の流れ方向(吸気方向)とは反対方向に進むが、やがて空気の流れに抗することができなくなり、最終的には空気に同伴して下流側へと運ばれる。そのため、上記順方向設置のノズル13AからミストM1が噴射される場合に比べてミストM1の飛翔距離が長くなり、結果的にミストM1が蒸発するまでの時間を稼ぐことができる。
ここで、ミストM1はノズル13Aから噴射された際に放射状に拡がる。ミストM1は非常に微細な霧状からなるものであるが、少なからず重力の影響を受ける。そのため、鉛直方向下方側に拡がったミストM1は、重力の影響により下方に早く落下してしまい、蒸発する前に地面等に付着してしまう可能性がある。したがって、上述のようにノズル13Aを逆方向設置した場合は、鉛直方向上方側に拡がったミストM1の飛翔距離を延ばすことができるものの、鉛直方向下方側に拡がったミストM1が地面等に付着することで十分に蒸発することができない。また、噴射したミストM1の一部が配管15Aに付着することで十分に蒸発できない。その結果、吸気される空気の冷却効率が低下してしまう。
これに対し、図3(b)に示すように、逆斜め上方設置によるノズル13Aから噴射されたミストM1は、上記順方向設置の場合と異なり、はじめは空気の流れ方向(吸気方向)とは反対方向に進み、やがて空気の流れに抗することができなくなり、最終的には空気に同伴して下流側へと運ばれる。
逆斜め上方設置によるノズル13Aから噴射されたミストM1は、ミスト噴射口が上方を向くように設置されるため、ミストM1の拡散領域が全域に亘って鉛直方向上方に調整される。これにより、図3(a)に示した順方向設置や上述の逆方向設置の場合において鉛直方向下方側に拡がることで蒸発することなく地面等に付着していたミストM1を水平面よりも上方に向けて噴射することができる。また、ノズル13Aのミスト噴射口が上方を向くことで該ミスト噴射口と反対側に設置された配管15Aが鉛直方向下方に位置するので、配管15AにミストM1を付着させ難くすることができる。よって、図3(b)に示すように、ノズル13Aから放射状に噴射されたミストM1は、ミスト噴射口よりも上方に全体が拡散するため、空気に同伴して下流側へと良好に運ばれる。そのため、ミストM1が蒸発することなく地面等に付着するのを抑制することができる。また、空気の流れ方向に沿ってミストM1が噴射される場合に比べて、空気の流れ方向と反対方向にミストM1を噴射するため、ミストM1の飛翔距離を延ばすとともにミストM1が拡散する空間を拡げることができる。
また、図3(c)に示すように、鉛直方向上方設置によるノズル13Aから噴射されたミストM1は、図3(b)に示した場合と同様、はじめは空気の流れ方向(吸気方向)とは反対方向に進み、やがて空気の流れに抗することができなくなり、最終的には空気に同伴して下流側へと運ばれる。
鉛直方向上方設置によるノズル13Aから噴射されたミストM1は、鉛直方向上方に向かって全体が拡散するので、図3(b)に示した場合に比べ、多くのミストM1を鉛直方向上方に拡散させることができる。また、ノズル13Aのミスト噴射口が上方を向くことで該ミスト噴射口と反対側に設置された配管15Aが鉛直方向下方に位置するので、配管15AにミストM1をより付着させ難くすることができる。一方、鉛直方向上方設置の場合、3(c)に示すように、空気の流れ方向に沿ってミストM1の一部が噴射されるため、一部のミストM1の飛翔距離が短くなってしまい、一部のミストM1が蒸発しなくなるおそれもある。
また、下記表1は、ノズルの設置方向を変化させた場合における冷却効率の違いに関するシミュレーションによる計算結果を示すものである。なお、表1における実施例1は、図3(c)に示した鉛直方向上方設置されたノズル13Aによる結果を示すものであり、実施例2は、図3(b)に示した逆斜め上方設置されたノズル13Aによる結果を示すものであり、比較例は、図3(a)に示した順方向設置されたノズル13Aによる結果を示すものである。
本シミュレーションでは、入口側から出口側に向かって空気が流入される環境下において、ノズル13Aからミストを噴射させた場合において、入口側での空気の条件と、出口側での空気の条件を計算した。なお、シミュレーションの条件としては、例えば、空気の流入速度を2.3m/sとした。また、ノズル13Aから噴射されるミストMの中心における平均粒子径を20.7μmとした。
表1において、入口温度(単位:℃)及び出口温度(単位:℃)とは、空気の入口及び出口での温度をそれぞれ示すものである。入口湿度(単位:%)及び出口湿度(単位:%)とは、空気の入口及び出口での湿度をそれぞれ示すものである。蒸発量(単位:l/h)とは、ノズル13Aから噴射したミストMの蒸発したミスト量を示すものである。非蒸発量(単位:l/h)とは、ノズル13Aから噴射されたミストMのうち蒸発しなかったミスト量を示すものである。蒸発率(単位:%)とは、ノズル13Aから噴射されたミストMの全量に対する蒸発した量の割合を示すものである。非蒸発率(単位:%)とは、ノズル13Aから噴射されたミストMの全量に対する蒸発しなかったミスト量の割合を示すものである。最大滞留時間(単位:s)とは、噴射されたミストMが空気中で滞留している最大の時間を示すものである。冷却温度(単位:℃)とは、入口温度と出口温度との温度差を示すものである。
表1に示されるように、実施例1(図3(c)に示したノズル13Aを鉛直方向上方設置)の場合、比較例(図3(a)に示したノズル13Aを順方向設置)の場合に比べ、ミストMの滞留時間が長く(すなわち、飛翔距離が長く)、冷却温度が高いことが確認できた。すなわち、ノズル13Aを鉛直方向上方設置した場合は、ノズル13Aを順方向設置した場合に比べ、多くのミストMを空気中に滞留させることで蒸発量を増やすことができるので、結果的に冷却温度が大きくなることが確認できた。
また、表1に示されるように、実施例2(図3(b)に示したノズル13Aを逆斜め上方設置)の場合、比較例(図3(a)に示したノズル13Aを順方向設置)の場合に比べ、ミストMの滞留時間が長く、冷却温度が高いことが確認できた。すなわち、ノズル13Aを逆斜め上方設置した場合は、より多くのミストMが空気中に滞留することで蒸発量が多くなるため、結果的に冷却温度が大きくなることが確認できた。また、実施例2の場合、実施例1の場合に比べ、冷却温度がより高いことが確認できた。すなわち、ノズル13Aを逆斜め上方設置した場合は、ノズル13Aを鉛直方向上方設置した場合に比べ、ミストMの飛翔距離が長くなることで空気中に滞留する最大時間が長くなることで蒸発量が多くなり、結果的に冷却温度が大きくなることが確認できた。
なお、上記シミュレーション結果では、逆斜め上方設置の一例として、水平面から斜め上方にミスト噴射口を45度だけ傾けるようにノズル13Aを設置した場合を例に挙げたが、ノズル13Aの設置角度(傾斜角度)はこれに限定されない。ノズル13Aは、空気取入口21と反対側、且つ、鉛直方向上方に、ミストMの噴射口を向ける傾斜された状態に設置されていればよい。したがって、ノズル13Aの水平面に対する傾斜角度は、0度よりも大きく90度以下の範囲に設定されていれば冷却効率の向上を図ることが可能である。換言すると、ノズル13Aは、水平面に対して斜め上方に僅かでも傾いて設置されていれば、図3(a)に示した順方向設置や上述した逆方向設置の場合に例示したような鉛直方向下方側に拡がることで地面に付着していたミストM1をより上方に向けて噴射することが可能となり、地面に付着するミストM1の量を減少させることが可能となる。
本実施形態に係る吸気冷却装置10は、図3に示したように、上記シミュレーション結果に基づき、ミスト噴射口(噴射口)13aを空気の流れ方向と反対であり、且つ水平面に対して斜め上方に向けるように噴射ノズル13を傾斜させた状態に設置している。なお、噴射ノズル13の傾斜角度は、10度から80度の範囲に設定するのが好ましく、30度から60度の範囲に設定するのがより好ましい。また、図3(b)に示したように45度に設定するのが冷却効率を最も高めることができるため望ましい。したがって、本実施形態では、噴射ノズル13がミスト噴射口13aを水平面に対して45度傾けた状態(図3(b)参照)に設置した。
図4は、吸気冷却装置10の要部構成を示す上面図である。
図4に示すように、吸気冷却装置10は、吸気室14(吸気用建屋11)内に設けられたフィルタ部材(捕捉部材)18と、塵埃フィルタ部材19と、を有している。
フィルタ部材18は、吸気室14の壁面に設けられ、噴射ノズル13から噴射されたミストMのうちルーバー22に付着することなく、且つ蒸発せずに空気に同伴して飛翔してくるものを捕集するためのものである。フィルタ部材18としては、例えば、長繊維グラスファイバ製パッドを用いることが好ましい。これによれば、フィルタ部材18の内部に捕集したミストMをより多く保持して、フィルタ部材18内におけるミストMの蒸発によって空気をより一層効率的に冷却できる。なお、フィルタ部材18は、従来のエバポレーティブクーラに用いられている冷却メディアであってもよく、特に限定されない。
塵埃フィルタ部材19は、吸気室14内から吸気した空気中の塵埃を除去するためのものである。なお、塵埃フィルタ部材19は、フィルタ部材18の下流側に設けられるのが好ましい。これによれば、塵埃を除去するための塵埃フィルタ部材19にミストが到達する前にフィルタ部材18によってミストMを捕捉できるので、塵埃フィルタ部材19がミストMで濡れることで捕集した塵埃が膜を形成し、圧力損失が上昇してしまうといった不具合の発生を防止することが可能である。
なお、塵埃フィルタ部材19としては、例えば、以下に示す3つのタイプのいずれかを用いることができる。第1のタイプは、中性能フィルタが1つ設けられたものである。第2のタイプは、中性能フィルタと、中性能フィルタの下流側にこれと所定距離を隔てて設けられたHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air filter)とからなる。第3のタイプは、中性能フィルタと、中性能フィルタの下流側にこれと所定距離を隔てずに一体化して設けられたHEPAフィルタとからなる。
なお、上記フィルタ部材18は、複数(例えば、2つ)の部材から構成されていても良い。この場合において、一方のフィルタ部材18を吸気室14内のうち塵埃フィルタ部材19の上流側であって空気取入口21に近い側(以下、上流側と称す場合もある)に設置し、他方のフィルタ部材18を吸気室14内のうち塵埃フィルタ部材19の上流側であって該塵埃フィルタ部材19に近い側(以下、下流側と称す場合もある)に設置すればよい。
また、上流側に設置されるフィルタ部材18は、下流側に配置されるフィルタ部材18よりも目の粗い濾材からなるものを用いるのが好ましい。このようにすれば、例えば、空気中に噴射されたミストMがルーバー22に付着することなく、且つ蒸発せずに空気取入口21内に入り込んでしまった場合であっても、空気中に残存した比較的大粒径のミストMを、上流側のフィルタ部材18で予め捕集することが可能となり、上流側のフィルタ部材18で捕集されずに飛翔してきた小粒径のミストMを下流側のフィルタ部材18で確実に捕集する事が可能となる。よって、圧縮機2側へのミストMの入り込みによる圧縮効率の低下をより確実に防止することができる。
上述のように、吸気冷却装置10は、空気取入口21内への雨の入り込みがルーバー22により抑制されている。噴射ノズル13から噴射されたミストMの一部は、ルーバー22に付着することで捕捉される。すなわち、ルーバー22は、ミストMの一部を捕捉する捕捉部材として機能する。ルーバー22に付着したミストMは、ルーバー22間を通り抜けて空気取入口21に吸気される空気に触れることで蒸発する。よって、空気取入口21に吸気される空気をより一層効率的に冷却することが可能となっている。
しかしながら、雪は、ルーバー22の間を空気とともにすり抜けて空気取入口21に入り込んでしまう。例えば、寒冷地の豪雪地帯に建設されたガスタービンプラント1においては、空気取入口21に入り込んだ雪が上記フィルタ部材18に堆積して凍結することで空気の吸気経路が閉塞されてしまい、ガスタービン4の駆動が停止させなければならなくなってしまうことがある。
そのため、従来、豪雪地帯に建設されたガスタービンプラントにおいては、融雪装置が別途必要となっていた。融雪装置は冬季のみ利用されるものであることから、降雪の無い夏季においては余剰設備となってしまい、プラント設備のコスト増加の要因となってしまう。
これに対し、本実施形態では、融雪手段によって雪を溶かすことでフィルタ部材18に雪が堆積することによる不具合の発生を防止している。具体的に本実施形態では、吸気冷却装置10が噴射ノズル13を融雪手段として利用し、該噴射ノズル13から噴射したミストM、もしくはミストにならない放水により雪を溶かすようにした。
外気温が低い冬季においては吸気冷却装置10(噴射ノズル13)を使用する必要が無い。これは、空気取入口21に取り込まれる大気(空気)の温度が十分に低く、ミストMを蒸発させる必要は無く、吸気温度を低下させなくてもよいからである。
本実施形態において、吸気冷却装置10は、外気温度が例えば11℃以上の場合にミストMを噴射することで吸気の冷却を行っている。そのため、ミストMを噴射するための噴射ノズル13は、吸気冷却を行う必要が無い外気温が11℃以下の場合(例えば降雪時)においては余剰となる。
本実施形態においては、吸気冷却を行う必要が無い降雪時に、噴射ノズル13から噴射したミストM、もしくはミストにならない放水により融雪を行っている。これによれば、噴射ノズル13が吸気冷却用途と融雪用途とで兼用することができるので、従来のように冬季のみしか利用されない融雪装置を別途導入する場合に比べて、プラント設備に必要とされるコスト・労力が抑えられたものとなっている。
本実施形態において、吸気冷却装置10は、加温部9により噴射ノズル13から噴射するミストMを加温している。そのため、空気中に噴射されたミストMは雪を効率良く溶かすことが可能である。
続いて、吸気冷却装置10における融雪手段としての機能について説明する。
図1に戻り、吸気冷却装置10は、大気中の降雪状況を検出する検出手段60と、検出手段60の検出結果に基づいて、噴射ノズル13を制御する制御部61と、をさらに備える。
検出手段60は、例えば、ルーバー22の表面画像を取得する赤外線サーモセンサーから構成される。検出手段60は、取得したルーバー22の表面画像を比較することで、降雪時と非降雪時とを非接触状態で判別することが可能である。検出手段60は、ルーバー22の表面に付着した雪を検出した場合、降雪を確認した旨の信号を制御部61に送信する。
制御部61は、噴射ノズル13の駆動制御の他、吸気冷却装置10の他の機構の制御を行う。例えば、制御部61は、検出手段60の検出結果に基づいて、ミストMとして噴射される液体を加圧し、配管15を介して噴射ノズル13に供給するポンプ16の駆動を制御する。
ここで、吸気冷却を行う場合は、ミストMの平均粒径を小さくするのが望ましい。一方、ミストM、もしくはミストにならない放水を融雪に使用する場合、ミストMが蒸発し難いことが望ましい。
本実施形態において、制御部61は、検出手段60から降雪確認の信号を受信すると、配管15内の液体の加圧を弱めるようにポンプ16の駆動を調整する。すなわち、ポンプ16は、噴射ノズル13に供給される液体の圧力を調整する圧力調整部を構成している。
ポンプ16により液体の加圧が弱められるとミストMの平均粒径が大きくなる。平均粒径の大きなミストMは蒸発し難くなるので、大気中に噴霧されることで該大気中の雪を効率良く溶かすことが可能である。
続いて、上記構成を備えるガスタービンプラント1の動作について説明するとともに、本発明の吸気方法の一例についても説明する。
ガスタービンプラント1は、吸気冷却装置10により吸気された空気を圧縮機2によって圧縮し、該圧縮機2で生成された圧縮空気を用いて燃焼器3により燃焼ガスを生成し、該燃焼器3で生成した燃焼ガスによってガスタービン4を回転させる。そして、ガスタービン4で発生した動力を発電機5により電力に変換する。
本実施形態において、吸気冷却装置10は、外気温度が例えば11℃以上の場合にミストMを噴射することで吸気冷却を行う。吸気冷却装置10は、空気の流れ方向と反対であり、且つ水平面に対して斜め上方にミスト噴射口13aを向けるように傾斜した状態に設置された噴射ノズル13からミストMを大気中に噴射する。これにより、噴射ノズル13から噴射されたミストMは、はじめは空気の流れ方向とは反対方向に進むが、やがて空気の流れに抗することができなくなり、最終的には空気に同伴して下流側に進む。噴射ノズル13から噴射されたミストMは、拡散方向が全体に亘って鉛直方向上方に調整されるため、蒸発することなく地面等に付着するミストMの量を減少させることができる。また、空気の流れ方向と反対方向にミストMが噴射されるため、ミストMの飛翔距離を延ばすことができる。よって、噴射ノズル13から放射状に噴射されたミストMの全体に亘って滞留時間を長くすることができる。
本実施形態においては、図2に示したように、ミストMが加温部9(放熱部9b)で加温されることで平均粒径が小さくなっている。そのため、空気の流れに取り込まれたミストMは、空気取入口21に吸気されるまでの間に十分に蒸発する。よって、多量の蒸発潜熱が空気から奪われ、空気の冷却効率を向上させることができる。さらに、本実施形態では、図2に示したように、加温部9(吸熱部9a)が排気ダクト7の熱を吸収するため、排気ダクト7により温められた外気が空気取入口21に吸い込まれることが抑制される。これにより、空気の冷却効率をより向上させることができる。また、加温部9の熱源としてガスタービン4の排熱を有効利用するので、熱の利用効率が高いガスタービンプラント1が提供される。
また、図示を省略したものの、配管15が噴射ノズル13のミスト噴射口13aと反対側に設置された場合においても、噴射ノズル13のミスト噴射口13aが上方を向けることで該ミスト噴射口13aの反対側に設置された配管15を鉛直方向下方に位置させることができるので、配管15にミストMを付着させ難くすることができる。したがって、吸気される空気中をミストMが滞留する間により多くのミストMが蒸発するので、多量の蒸発潜熱が空気から奪われ、空気の冷却効率を向上させることができる。
また、吸気冷却装置10は、ルーバー22を備えるので、空気取入口21内に雨が直接的に入り込むのを防止することができる。また、噴射ノズル13から噴射されたミストMの一部は、ルーバー22に付着することで捕捉される。すなわち、ルーバー22は、ミストMの一部を捕捉する捕捉部材として機能する。ルーバー22に付着したミストMは、ルーバー22間を通り抜けて空気取入口21に吸気される空気に触れることで蒸発する。よって、空気取入口21に吸気される空気をより一層効率的に冷却することが可能となる。
また、吸気冷却装置10は、噴射ノズル13の下流側にフィルタ部材18が設けられているので、例えば、空気中に噴射されたミストMがルーバー22に付着することなく、且つ蒸発せずに空気取入口21内に入り込んでしまった場合であっても、空気中に残存したミストMをフィルタ部材18によって捕捉することができる。よって、空気がフィルタ部材18を通過する際に該フィルタ部材18に捕捉されたミストMを蒸発させることで空気の冷却効率を高めつつ、圧縮機2側にミストMが入り込むことによって圧縮効率が低下するといった不具合の発生を防止することができる。
また、吸気冷却装置10は、塵埃フィルタ部材19を備えるので、吸気室14内から吸気した空気中に含まれた塵埃を確実に除去することができる。よって、塵埃が圧縮機2側に導かれることで圧縮効率が低下するといった不具合の発生が防止される。
また、本実施形態において、吸気冷却装置10は、噴射ノズル13から噴射したミストM、もしくはミストにならない放水を融雪に使用している。吸気冷却装置10は、検出手段60によって大気中の降雪状況を検出する。検出手段60は、降雪を確認した旨の信号を制御部61に送信する。制御部61は、検出手段60からの降雪確認信号を受信するまでは噴射ノズル13からのミスト噴射を行わない。
制御部61は、検出手段60から降雪確認の信号を受信すると、配管15内の液体の加圧を弱めることでミストMの平均粒径を大きくする。平均粒径の大きなミストMは蒸発し難くなるため、大気中に噴霧されることで該大気中の雪を効率良く溶かすことができる。なお、制御部61は、配管15内の液体の圧力を、例えば大気圧まで低下させることでミストMを水滴とすることで雪を効率良く溶かすようにしてもよい。
また、噴射ノズル13から噴射されたミストMの一部は、ルーバー22に付着することで捕捉される。ルーバー22に付着したミストMは、ルーバー22に接触した雪を溶かすことができる。
本実施形態によれば、ルーバー22の間を空気とともにすり抜けた雪が空気取入口21内に入り込むことで、フィルタ部材18に堆積して凍結することで空気の吸気経路が閉塞されてしまうといった不具合の発生を防止することができる。よって、フィルタ部材18に堆積した雪によりガスタービン4の駆動が停止されるのを未然に防止することができる。
また、本実施形態の吸気冷却装置10では、噴射ノズル13を吸気冷却用途と融雪用途とで兼用するので、融雪のために別途新たに装置を導入する場合に比べ、プラント設備に必要なコスト・労力を大幅に抑えることができる。
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態と第1実施形態との違いは、融雪時におけるミストの噴射方向である。そのため、以下では、噴射ノズルの周辺構成を主体に説明し、上記実施形態と同一の構成及び部材については同じ符号を付し、その詳細な説明については省略若しくは簡略化する。
図5は本実施形態に係る吸気冷却装置の要部構成を示す図である。なお、図5は壁面11aに関する+X方向から視た側断面構成を示す図である。
図5に示すように、本実施形態に係る吸気冷却装置10は、噴射ノズル13における取付角度を調整する駆動部30をさらに備えている。制御部61は、検出手段60の検出結果に基づいて駆動部30を駆動させることで噴射ノズル13のミストMの噴射方向を変更することが可能である。
駆動部30は、噴射ノズル13に接続される配管15をX軸方向に回転させることで該噴射ノズル13をYZ平面内で回転可能である。これにより、噴射ノズル13のミストMの噴射方向が変更整される。
吸気冷却装置10は、吸気冷却を行う場合、空気の流れ方向と反対であり、且つ水平面に対して斜め上方にミスト噴射口13aを向けるように噴射ノズル13を傾斜した状態としている。
制御部61は、検出手段60から降雪確認の信号を受信すると、駆動部30を駆動させて噴射ノズル13をX軸回りに回転させて、ミスト噴射口13aを空気取入口21に対向させる。なお、上記実施形態と同様、制御部61が検出手段60から降雪確認の信号を受信した際、噴射ノズル13を回転させるとともに、配管15内の液体の加圧を弱めることでミストMの平均粒径を大きくしてもよい。
この構成によれば、空気取入口21に向かってミストMが噴射されるので、ルーバー22の表面にミストMを多く付着させることができる。よって、ルーバー22に接触させた雪を効率良く溶かすことが可能となる。
なお、噴射ノズル13は、ミスト噴射口13aを空気取入口21に対向させる方向に向ける場合に限定されない。例えば、空気取入口21に向かう空気の流れに沿った方向にミスト噴射口13aを向けるようにしてもよい。この場合、空気取入口21に取り込まれる空気の流れを計測するセンサーを設け、該センサーの計測結果を制御部61に送信する。制御部61は、空気の流れに沿ってミストMを噴射可能とするように噴射ノズル13を回転させる。これによれば、空気取入口21に取り込まれる空気の流れ中にミストMを効率良く噴霧することができるので、空気中に含まれる雪を効率良く溶かすことができる。
(第3実施形態)
続いて、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態と上記実施形態との違いは、加温部の熱源である。そのため、以下では、加温部の構成を主体に説明し、上記実施形態と同一の構成及び部材については同じ符号を付し、その詳細な説明については省略若しくは簡略化する。
図6は第3実施形態におけるガスタービンプラントの概略構成を示す平面図である。本実施形態に係るガスタービンプラント1Aは、図6に示すように、圧縮機31、燃焼器3、ガスタービン4、吸気冷却装置10および排熱回収ボイラ6を備える。本実施形態において、圧縮機31は、前段である前段圧縮部(前段タービン翼部)31aと、後段である後段圧縮部(後段タービン翼部)31bと、を含む2段圧縮構造を有する。
本実施形態において、吸気冷却装置10は、加温部39として圧縮機31の段間の熱を用いたものを備えている。加温部39は、吸熱部39bと放熱部39aとを有する。吸熱部39bは、前段圧縮部31aおよび後段圧縮部31bの段間に設けられた放熱管の熱を吸収する。放熱部39aは吸熱部39bに熱的に接続されている。放熱部39aは、吸熱部39bが圧縮機31の段間から吸収した熱を配管15に供給する。これにより、配管15内の液体が加温(加熱)される。本実施形態において、放熱部39aは、配管15におけるポンプ16よりも下流側を加温している。これによれば、配管15内の液体はポンプ16で先に加圧されるため、液体の沸騰を防止できる。また、ポンプ16は、加温前の液体を加圧するため、耐温度が抑えられる。
本実施形態においても、加温部39が加温することで平均粒径の小さいミストMを噴射することができるので、空気中に噴射したミストMを効率良く蒸発させることができる。よって、空気の冷却効率をより向上させることができる。
本実施形態では、加温部39が圧縮機31の段間の熱を吸収するため、空気が冷えるので圧縮効率を向上させることができる。また、加温部39の熱源として段間の熱(排熱)を有効利用するので、熱の利用効率が高いプラントが提供される。
なお、本実施形態では、加温部39が圧縮機31の段間の熱を間接的に配管15に供給する場合を例に挙げたが、これに限定されない。図7は第3実施形態の変形例に係るガスタービンプラントの概略構成を示す平面図である。図7に示すように、加温部39が圧縮機31の段間の熱を直接的に配管15に供給するようにしても良い。この場合、配管15を圧縮機31の段間に直接引き回し、加温部39の放熱部39aによって配管15を直接加熱することができる。本構成においては、加温部39は放熱部39aのみから構成される。本変形例においても、放熱部39aは、配管15におけるポンプ16よりも下流側を加温している。これによれば、配管15内の液体はポンプ16で先に加圧されるため、液体の沸騰を防止できる。また、ポンプ16は、加温前の液体を加圧するため、耐温度が抑えられる。
(第4実施形態)
続いて、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態と上記実施形態との違いは、加温部の熱源である。そのため、以下では、加温部の構成を主体に説明し、上記実施形態と同一の構成及び部材については同じ符号を付し、その詳細な説明については省略若しくは簡略化する。
図8は第4実施形態におけるガスタービンプラントの概略構成を示す平面図である。本実施形態に係るガスタービンプラント1Bは、図8に示すように、圧縮機2、燃焼器3、ガスタービン4、吸気冷却装置10および排熱回収ボイラ6を備える。
ところで、燃焼器3で生成された燃焼ガスは非常に高温(例えば、1500℃)になる。そのため、ガスタービン4の翼部(静翼および動翼)あるいは燃焼器3は非常に高温となってしまう。通常は、圧縮機2から燃焼器3(燃焼部)を経由することなく直接タービン内部の翼部あるいは燃焼器3に圧縮空気を導くためのバイパス経路2aを設けている。
圧縮機2で圧縮された圧縮空気の温度は、圧縮機出口において例えば300〜400℃程度である。バイパス経路2aを介してタービン内部の翼部あるいは燃焼器3に供給された圧縮空気は、当該翼部あるいは燃焼器3に比べて十分に低温となる。よって、圧縮空気を供給することで翼部(静翼および動翼)あるいは燃焼器3を冷却することができる。よって、翼部(静翼および動翼)あるいは燃焼器3における熱による負荷を軽減することで、これらの製品寿命を延ばすことができる。
本実施形態において、吸気冷却装置10は、加温部49としてバイパス経路2aを流れる圧縮空気の熱を用いたものを備えている。加温部49は、吸熱部49bと放熱部49aとを有する。吸熱部49bは、バイパス経路2a内を流れる圧縮空気の熱を吸収する。放熱部49aは吸熱部49bに熱的に接続されている。放熱部49aは、吸熱部49bが圧縮空気から吸収した熱を配管15に供給する。これにより、配管15内の液体が加温(加熱)される。
本実施形態では、吸熱部49bがバイパス経路2a内の圧縮空気から熱を吸収するため、圧縮空気の温度を低下させることができる。よって、圧縮空気自体の冷却能力が高まるので、少量の圧縮空気であっても翼部(静翼および動翼)あるいは燃焼器3を効率良く冷却することが可能となる。よって、バイパス経路2aにバイパスさせる圧縮空気を減らすことができるので、圧縮機2における動力損失を低減させることができる。
本実施形態においても、加温部49が加温することで平均粒径の小さいミストMを噴射することができるので、空気中に噴射したミストMを効率良く蒸発させることができる。よって、空気の冷却効率をより向上させることができる。
本実施形態では、加温部49の熱源としてバイパス経路2a内を流れる圧縮空気の熱(圧縮機2の排熱)を有効利用するので、熱の利用効率が高いプラントが提供される。
なお、本実施形態では、加温部49がバイパス経路2a内の圧縮空気からの熱を間接的に配管15に供給する場合を例に挙げたが、これに限定されない。図9は第4実施形態の変形例に係るガスタービンプラントの概略構成を示す平面図である。図9に示すように、加温部49がバイパス経路2a内の圧縮空気からの熱を直接的に配管15に供給するようにしても良い。この場合、配管15を圧縮機31の段間に直接引き回し、加温部49の放熱部49aによって配管15を直接加熱することができる。本構成においては、加温部49は放熱部49aのみから構成される。本変形例においても、放熱部49aは、配管15におけるポンプ16よりも下流側を加温している。これによれば、配管15内の液体はポンプ16で先に加圧されるため、液体の沸騰を防止できる。また、ポンプ16は、加温前の液体を加圧するため、耐温度が抑えられる。
(第5実施形態)
続いて、本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態と上記実施形態との違いは、加温部の熱源である。そのため、以下では、加温部の構成を主体に説明し、上記実施形態と同一の構成及び部材については同じ符号を付し、その詳細な説明については省略若しくは簡略化する。
図10は第5実施形態におけるタービンプラントの概略構成を示す平面図である。本実施形態のタービンプラント1Cは、図10に示すように、蒸気タービン8と、冷却部50と、復水器51とをさらに備えたコンバインドサイクル発電プラントである。
蒸気タービン8は、排熱回収ボイラ6で生成した蒸気によって回転することで動力を発生する。本実施形態において、蒸気タービン8は発電機5に連結されており、蒸気タービン8で発生した動力が発電機5により電力に変換されるようになっている。
蒸気タービン8においては、動翼のついたローラーが回転することによって、軸受8aとの間に摩擦が生じる。本実施形態において、冷却部50は、蒸気タービン8の軸受8aに冷却油を循環させることで該軸受8aを冷却する。冷却部50は、冷却油が流れる配管から構成された循環経路53を有する。循環経路53は、第1放熱部53aと第2放熱部53bとを含む。
復水器51は、蒸気タービン8を回転駆動させた蒸気を回収し、凝縮して水に戻す。本実施形態において、復水器51は、例えば海水中に配置されており、海水により蒸気を冷却することで水に戻す。排熱回収ボイラ6及び復水器51は流路40を介して接続されている。流路40は、排熱回収ボイラ6から蒸気タービン8を経た蒸気を復水器51に供給する第1流路40aと、復水器51で凝縮した水を蒸気タービン8に供給する第2流路40bとを含む。このような構成に基づき、復水器51で凝縮された水は排熱回収ボイラ6に循環され、蒸気となって蒸気タービン8に再び供給されるようになっている。
本実施形態において、第2流路40bは、吸熱部55を有している。吸熱部55は、循環経路53の第2放熱部53bとの熱交換により熱を受け取る。
このような構成に基づき、本実施形態では、吸熱部55および第2放熱部53bが復水クーラー52を構成している。ここで、復水クーラー52とは、復水と冷却油とを熱交換させることで冷却油を冷却する請求項に記載の熱交換器を構成する。
本実施形態において、加温部9は、蒸気タービン8の軸受8aを冷却した冷却油の熱(冷却部50の排熱)を用いている。加温部9は、吸熱部9aと放熱部9bとを有する。吸熱部9aは、軸受8aを冷却することで比較的高温となった冷却油が流れる循環経路53の第1放熱部53aと直接的または間接的に熱交換することで熱を吸収する。
第1放熱部53aは、循環経路53において、復水クーラー52(吸熱部55)の上流側に設けられている。そのため、加温部9の吸熱部9aは、軸受8aから排出された直後の比較的高温の冷却油から効率良く熱を吸収することができる。
吸熱部9aに熱的に接続された放熱部9bは、吸熱部9aが第1放熱部53a(冷却油)から吸収した熱を配管15に供給する。本実施形態では、上述のように、吸熱部9aにおいて冷却油から効率良く熱が吸収されるので、配管15内の液体は加温部9により効率良く加温(加熱)される。
続いて、本実施形態のタービンプラント1Cの動作について説明する。
ガスタービン4から排出された排ガス(排気)は、排気ダクト7を介して排熱回収ボイラ6に供給される。排熱回収ボイラ6は、ガスタービン4から排出された排ガスを利用して蒸気を生成する。排熱回収ボイラ6が生成した蒸気は、流路40(第1流路40a)を介して蒸気タービン8に供給される。蒸気タービン8は、排熱回収ボイラ6で生成した蒸気によって回転することで動力を発生する。発電機5は、蒸気タービン8で発生した動力を電力に変換する。
蒸気タービン8を回転駆動させた蒸気は、流路40(第1流路40a)を介して復水器51に供給される。復水器51は、回収した蒸気を凝縮して水に戻す。
本実施形態では、復水器51で凝縮された水(復水)が第2流路40bの途中に設けられた復水クーラー52において循環経路53の第2放熱部53bを流れる冷却油と熱交換する。具体的に、循環経路53内を流れる冷却油は、第2放熱部53bにおいて吸熱部55側に熱が奪われることで冷却されて温度が低下する。
本実施形態では、循環経路53内を流れる冷却油は、第1放熱部53aにおいて加温部9(吸熱部9a)によって熱を奪われることで温度が低下している。よって、循環経路53は、第1放熱部53aおよび第2放熱部53bにより内部を流れる冷却油を段階的に放熱させることで冷却する。よって、蒸気タービン8は、軸受8aに対して低温に保持された冷却油が安定して供給されている。
一方、第2流路40b内を流れる水(復水)は、吸熱部55(復水クーラー52)において第2放熱部53b側から熱を奪うことで加熱されて温度が上昇する。復水クーラー52で加熱された水(復水)は、流路40(第2流路40b)を介して排熱回収ボイラ6に循環され、再び蒸気となって蒸気タービン8に再び供給される。本実施形態では、上述のように、復水クーラー52で予熱した水(復水)を排熱回収ボイラ6に供給する。そのため、排熱回収ボイラ6は、蒸気生成時に比較的高温の水を用いることができるので、蒸気生成時のエネルギー効率を向上させることができる。
ところで、復水器51が配置される海水の温度は季節により変動する。特に夏場は海水温度が高いため、凝縮後の水の温度が比較的高くなってしまうことがある。凝縮後の水温が高くなると、復水クーラー52(吸熱部55)は、第2放熱部53bから熱を良好に吸収できなくなってしまう。すると、循環経路53によって比較的高温の冷却油が軸受8aに供給されてしまい、軸受8aが十分に冷却されずに焼き付きが発生することで蒸気タービン8の動作不良を招くおそれもある。
これに対し、本実施形態では、上述のように加温部9(吸熱部9a)が冷却油から熱を予め吸収しておくため、例えば、夏場のように復水クーラー52の能力が不足する場合でも冷却油の温度が高くなってしまうといった問題が生じることが防止される。よって、本実施形態によれば、季節によらずに軸受8aに低温に保持された冷却油が安定して供給されるため、蒸気タービン8における焼き付き等の動作不良の発生を防止した信頼性の高いプラントを提供することができる。
また、本実施形態に係るタービンプラント1Cによれば、ガスタービン4による発電に加え、ガスタービン4の排熱を利用して生成した蒸気により回転した蒸気タービン8による発電を行うことができるので、エネルギー効率が高いコンバインドサイクル発電が可能なプラントとなる。
(第6実施形態)
続いて、本発明の第6実施形態について説明する。本実施形態と第5実施形態との違いは、冷却部の構造である。そのため、以下では、冷却部の構成を主体に説明し、上記実施形態と同一の構成及び部材については同じ符号を付し、その詳細な説明については省略若しくは簡略化する。
図11は第6実施形態におけるタービンプラントの概略構成を示す平面図である。本実施形態に係るタービンプラント1Dは、図11に示すように、圧縮機2と、燃焼器3と、ガスタービン4と、蒸気タービン8と、冷却部50と、復水器51と、吸気冷却装置10と、排熱回収ボイラ6と、を備えたコンバインドサイクル発電プラントである。
本実施形態において、第1放熱部53aは、循環経路53において、復水クーラー52(吸熱部55)の下流側に設けられている。本実施形態において、第2放熱部53b(復水クーラー52)は、軸受8aから排出された直後の比較的高温の冷却油から熱を吸収する。第1放熱部53aは、復水クーラー52で熱交換後の冷却油の熱を加温部9(吸熱部9a)側に供給する。
この構成によれば、例えば、夏場のように海水温度が高いことで凝縮後の水(復水)の温度が高くなり、復水クーラー52によって冷却油の温度を十分に低下させることができなくても、加温部9(吸熱部9a)に冷却油の熱を利用させることができる。これにより、例えば、夏場のように復水クーラー52の能力が不足した場合であっても、加温部9により冷却油の温度が高くなってしまうといった問題の発生が防止される。よって、季節によらずに軸受8aに低温に保持された冷却油が安定して供給されるため、蒸気タービン8における焼き付き等の動作不良の発生を防止した信頼性の高いプラントを提供することができる。
(第7実施形態)
続いて、本発明の第7実施形態について説明する。本実施形態と上記第4、5実施形態との違いは、加温部の熱源である。そのため、以下では、加温部の構成を主体に説明し、上記実施形態と同一の構成及び部材については同じ符号を付し、その詳細な説明については省略若しくは簡略化する。
図12は第7実施形態におけるタービンプラントの概略構成を示す平面図である。本実施形態に係るタービンプラント1Eは、図12に示すように、圧縮機2と、燃焼器3と、ガスタービン4と、蒸気タービン8と、復水器51と、吸気冷却装置10と、排熱回収ボイラ6と、を備えたコンバインドサイクル発電プラントである。
本実施形態において、蒸気タービン8は、高圧タービン80、中圧タービン81および低圧タービン82を含む。高圧タービン80、中圧タービン81および低圧タービン82は、排熱回収ボイラ6側から復水器51側に向かう蒸気の流れ方向の上流側から下流側に向かって、この順に配置されている。
本実施形態において、排熱回収ボイラ6は、高圧タービン80、中圧タービン81および低圧タービン82にそれぞれ蒸気を供給する。例えば、排熱回収ボイラ6は、500〜600℃、150気圧の蒸気を高圧流路71により高圧タービン80の入口80aに供給し、300〜400℃、100気圧の蒸気を中圧流路72により中圧タービン81の入口81aに供給し、250〜350℃、50気圧の蒸気を低圧流路73により低圧タービン82の入口82aに供給する。これにより、高圧タービン80、中圧タービン81および低圧タービン82がそれぞれ動力を発生させる。なお、高圧タービン80の出口80bから排出された蒸気の一部は流路76により排熱回収ボイラ6へと戻され、再加熱された後、蒸気タービン8側に供給される。また、中圧タービン81の出口81bから排出された蒸気は低圧流路73に合流することで低圧タービン82の入口82aに供給される。
本実施形態のタービンプラント1Eにおいて、燃焼器3で生成された燃焼ガスは、非常に高温(例えば、1500℃)となるため、ガスタービン4の翼部(静翼および動翼)が非常に高温となる。そのため、翼部(静翼および動翼)が高熱に晒されることで消耗してしまい、結果的に製品寿命が短くなってしまう。
これに対し、本実施形態では、蒸気タービン8から排出された蒸気の熱を用いて翼部(静翼および動翼)を冷却している。本実施形態では、高圧タービン80の出口80bから排出された蒸気の一部が、流路70を介してガスタービン4の翼部に供給される。ここで、高圧タービン80の出口80bから排出された蒸気の温度は、例えば、300℃〜400℃程度である。流路70を介してタービン内部に供給された圧縮空気は、翼部に比べて十分に低温となる。そのため、出口80bから排出された蒸気は、翼部(静翼および動翼)を十分に冷却することができる。
これにより、翼部(静翼および動翼)の熱による負荷を軽減することで、これらの製品寿命を延ばすことが可能である。
さらに、本実施形態において、加温部9は、高圧タービン80の出口80bから排出された蒸気の熱を用いている。加温部9は、吸熱部9aと放熱部9bとを有する。吸熱部9aは、出口80bから排出された蒸気が流れる流路70の放熱部70aと直接的または間接的に熱交換することで熱を吸収する。
吸熱部9aに熱的に接続された放熱部9bは、吸熱部9aが放熱部70a(蒸気)から吸収した熱を配管15に供給する。本実施形態では、上述のように、吸熱部9aにおいて冷却油から効率良く熱が吸収されるので、配管15内の液体は加温部9により効率良く加温(加熱)される。
本実施形態において、放熱部70aは、流路70における、ガスタービン4の上流側に設けられている。そのため、加温部9の吸熱部9aは、出口80bから排出された直後の比較的高温(300℃〜400℃程度)の蒸気から効率良く熱を吸収することができる。蒸気は吸熱部9aで熱が奪われることで温度が低下する。よって、流路70はガスタービン4の翼部に低温の蒸気を供給するので、翼部(静翼および動翼)の冷却効率をより向上させることが可能である。
ここで、高圧タービン80の出口80bから排出された蒸気は、加温部9を経由することで温度が当初温度(300℃〜400℃)よりも低くなる。しかしながら、ガスタービン4の翼部を冷却することで熱を吸収した蒸気は、その温度が再び上昇する。流路70は、加温部9およびガスタービン4を経由した蒸気を中圧タービン81の入口81aに供給する。具体的に、流路70は、中圧流路72に合流することで排熱回収ボイラ6から供給される蒸気とともにガスタービン4を経由した蒸気を中圧タービン81の入口81aに供給する。
このように、本実施形態によれば、高圧タービン80から排出した蒸気を加温部9によるミストの加温と、ガスタービン4の翼部の冷却に利用した後、中圧タービン81で有効利用することが可能である。したがって、蒸気タービン8は、排熱回収ボイラ6で生成した蒸気を無駄なく使用することができる。すなわち、本実施形態のタービンプラント1Eによれば、高いエネルギー効率を備えたものとなる。
続いて、上記構成を備えるタービンプラント1Eの動作について説明する。ガスタービン4から排出された排ガス(排気)は、排気ダクト7を介して排熱回収ボイラ6に供給される。排熱回収ボイラ6は、ガスタービン4から排出された排ガスを利用して蒸気を生成する。排熱回収ボイラ6が生成した蒸気は、流路40(第1流路40a)を介して蒸気タービン8に供給される。蒸気タービン8は、排熱回収ボイラ6で生成した蒸気によって回転することで動力を発生する。発電機5は、蒸気タービン8で発生した動力を電力に変換する。
ここで、蒸気タービン8の高圧タービン80の出口80bから排出された蒸気は、加温部9によるミストの加温と、ガスタービン4の翼部の冷却を行った後、中圧タービン81の入口81aに供給されることで再利用される。
また、蒸気タービン8を回転駆動させた蒸気は、流路40(第1流路40a)を介して復水器51に供給される。復水器51は、回収した蒸気を凝縮して水に戻す。
以上述べたように、本実施形態によれば、蒸気タービン8(高圧タービン80)から排出した蒸気の熱をミストの加温やガスタービン4の翼部の寿命延長に有効に利用することができる。また、高圧タービン80から排出した蒸気を中圧タービン81で有効利用するので、排熱回収ボイラ6で生成した蒸気を無駄なく使用することができる。
(第8実施形態)
続いて、本発明の第8実施形態について説明する。本実施形態と第7実施形態との違いは、蒸気タービンから蒸気を取り出す位置、すなわち加温部の周辺構造である。そのため、以下では、加温部の周辺構成を主体に説明し、上記実施形態と同一の構成及び部材については同じ符号を付し、その詳細な説明については省略若しくは簡略化する。
図13は第8実施形態におけるタービンプラントの概略構成を示す平面図である。本実施形態に係るタービンプラント1Fは、図13に示すように、圧縮機2と、燃焼器3と、ガスタービン4と、蒸気タービン8と、冷却部50と、復水器51と、吸気冷却装置10と、排熱回収ボイラ6と、を備えたコンバインドサイクル発電プラントである。
本実施形態においては、中圧タービン81の出口81bから排出された蒸気が、流路75を介してガスタービン4の翼部に供給されている。ここで、中圧タービン81の出口81bから排出された蒸気の温度は、例えば、250℃〜300℃程度である。流路75を介してタービン内部に供給された圧縮空気は、翼部に比べて十分に低温となる。そのため、出口81bから排出された蒸気は、翼部(静翼および動翼)を十分に冷却することができるので、翼部の寿命を延ばすことが可能である。
本実施形態において、加温部9は、中圧タービン81の出口81bから排出された蒸気の熱を用いている。加温部9の吸熱部9aは、出口81bから排出された蒸気が流れる流路75の放熱部75aと直接的または間接的に熱交換することで熱を吸収する。
本実施形態において、加温部9の吸熱部9aは、出口81bから排出された比較的高温(250℃〜300℃程度)の蒸気から効率良く熱を吸収することができる。蒸気は吸熱部9aで熱が奪われることで温度が低下する。よって、流路75はガスタービン4の翼部に低温の蒸気を供給するので、翼部(静翼および動翼)の冷却効率をより向上させることが可能である。
ここで、中圧タービン81の出口81bから排出された蒸気は、加温部9を経由することで温度が当初温度(250℃〜300℃)よりも低くなる。しかしながら、ガスタービン4の翼部を冷却することで熱を吸収した蒸気は、その温度が再び上昇する。流路75は、加温部9およびガスタービン4を経由した蒸気を低圧タービン82の入口82aに供給する。具体的に、流路75は、排熱回収ボイラ6からの蒸気を低圧タービン82の入口82aに供給する低圧流路73に合流する。
この構成によれば、中圧タービン81から排出した蒸気を加温部9によるミストの加温と、ガスタービン4の翼部の冷却に利用した後、低圧タービン82で有効利用することができる。よって、蒸気タービン8は、排熱回収ボイラ6で生成した蒸気を無駄なく使用することができる。
以上のように本実施形態に係るタービンプラント1Fにおいても、加温部9の熱源として蒸気タービン8(中圧タービン81)から排出した蒸気の熱を有効利用するので、熱の利用効率が高いものが提供される。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることは無く、発明の主旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、ミストMを加温する熱源としては、上記実施形態に限定されることは無く、加温部の熱源として各実施形態の構成を組み合わせたものを採用しても良い。また、給湯用ボイラやヒートポンプ装置の熱を用いてミストMを加温するようにしてもよい。特にヒートポンプ装置を用いてミストMを加温すれば、プラント全体のエネルギー効率の向上が図られる。
また、上記実施形態では、検出手段60として、ルーバー22の表面画像を取得する赤外線サーモセンサーを例示したが、本発明はこれに限定されない。検出手段60は、大気の降雪状況(実際に雪が降っている状況の他、降雪が開始する可能性が高い状況)を検出(判別)することができればよい。すなわち、例えば、気温や天気図等に基づいた気象情報を取得することで降雪状況を検出するようにしてもよい。また、上記赤外線サーモセンサーによって取得した画像および上記気象情報のそれぞれに基づいて、降雪状況を検出してもよい。
図14は、変形例に係る検出手段の構造を示す図である。
図14に示すように、検出手段160がフィルタ部材18の上流側および下流側の差圧を検出する圧力検出センサーから構成されていても良い。検出手段160は、フィルタ部材18の上流側の圧力を検出する上流側圧力センサー160Aと、フィルタ部材18の下流側の圧力を検出する下流側圧力センサー160Bとを含む。
ここで、空気取入口21に入り込んだ雪がフィルタ部材18に堆積すると、フィルタ部材18を透過して下流側に流れ込む空気の流量が減少するため、フィルタ部材18の上流側の圧力が下流側に比べて高くなる。
検出手段160は、上流側圧力センサー160Aおよび下流側圧力センサー160Bの検出結果(圧力検出値の差分)に基づき、フィルタ部材18の上流側および下流側の差圧を検出可能となっている。検出手段160は、差圧が上昇したこと(すなわち、降雪によりフィルタ部材18に雪が付着したこと)を検出することができる。検出手段160は、降雪を検出した場合、降雪を確認した旨の信号を制御部61に送信する。制御部61は、検出手段160の検出結果に基づいて、駆動部30を駆動させることで噴射ノズル13のミストMの噴射方向を変更して大気中にミストMを噴射させる。
上述の検出手段160によれば、フィルタ部材18への雪の付着による差圧が発生したタイミングで大気中の降雪を検出して大気中にミストMを噴射させることができる。よって、差圧が検出された初期状態よりもフィルタ部材18に堆積する雪が増えていくのを防止することができる。よって、フィルタ部材18に所定量以上の雪が堆積することで、ガスタービン4の駆動が停止されてしまうといった不具合の発生を未然に防止することができる。