JP6410335B2 - 形質転換体及びその作出方法 - Google Patents

形質転換体及びその作出方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6410335B2
JP6410335B2 JP2013197595A JP2013197595A JP6410335B2 JP 6410335 B2 JP6410335 B2 JP 6410335B2 JP 2013197595 A JP2013197595 A JP 2013197595A JP 2013197595 A JP2013197595 A JP 2013197595A JP 6410335 B2 JP6410335 B2 JP 6410335B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gene
transformant
plant
rrna
rice
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2013197595A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015062359A (ja
Inventor
郁郎 中村
郁郎 中村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Chiba University NUC
Original Assignee
Chiba University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Chiba University NUC filed Critical Chiba University NUC
Priority to JP2013197595A priority Critical patent/JP6410335B2/ja
Publication of JP2015062359A publication Critical patent/JP2015062359A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6410335B2 publication Critical patent/JP6410335B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)

Description

本発明は形質転換体及びその作出方法に関し、より具体的には、成長量(バイオマス)が増大した植物等の真核生物の形質転換体(品種)及びその作出方法に関する。
国連の推計によれば、現在の世界の人口は、71億人を越えているという。ボーローグ博士によって開始されたコムギ半矮性遺伝子を利用した多収性品種の育成「緑の革命」(1940−60年代)は、従来の穀物の生産量を2.5倍に増大するために大きく貢献した。この収量の増大は、当時急増した世界人口を養うために大きな役割を果たした。
しかしながら、緑の革命品種が世界中に普及した1990年以降は、穀物の単位収穫量が増大しておらず、増加する人口に必要な食糧は、熱帯雨林などを切り開いて拡大した耕地で増産しているのが現状である。森林の伐採は、光合成量を減少させ、地球環境の悪化、生物多様性の減少の原因となっている。
また一方で、地球の大気や海洋の平均温度が上昇するいわゆる地球温暖化が大きな問題として取り上げられており、その主要因は石油、石炭などの化石エネルギーの燃焼によって生ずる二酸化炭素放出量の増加であると考えられている。そしてこの二酸化炭素放出量を削減するため、風力、太陽光発電、地熱、植物バイオマスなどの再生可能エネルギーへの転換が検討されている。植物バイオマスは、太陽光のエネルギーを利用し光合成により二酸化炭素を固定した有機物であるため、植物バイオマスを燃焼してエネルギーを取り出しても二酸化炭素の放出量を増加させることがない(カーボンニュートラル)。そのため、エネルギー資源の確保および二酸化炭素放出量の削減の2つの課題を同時に解決する手段として期待されている。
しかしながら、再生可能エネルギーを実用化するための問題は、化石エネルギーと比べコストパフォーマンスが悪く、特に、植物バイオマスの生産は、食糧の生産と競合するために、上記森林の伐採に関する問題だけでなく、食糧価格の上昇を招くのではないかと懸念されている。
日本の農業では、高すぎる作物の生産コストが最も大きな問題となっている。例えば、米1俵の生産コストは約1.3万円で、販売額とほぼ同じである。また、外国産のサトウキビは4,000円/トンであるが、国産サトウキビは20,000円/トンである。現状、この差額の16,000円は補助金で補填されている。特に現在、日本は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加を検討しており、TPPが発効すれば、外国産の安い農産物が大量に輸入され、日本の農業に大きな打撃を与えることは間違いない。
また、急増する世界人口を背景に、現在の食糧輸出国が一転して食糧輸入国に転じるおそれもあり、将来も日本に対し食糧を供給し続けるという保障はなく、日本の食糧生産を安易に海外に依存していては、食糧安全保障の面から大変危険である。すなわち、日本国内における植物バイオマスの生産は、食糧生産を担保するためにも有効である。
上述のさまざまな課題を解決するためには、面積当りの植物バイオマスの生産量を大きく増大することが有効である。植物バイオマスの生産コストを低下させることができれば、バイオマスエネルギーの産業化を推進することができる。また、農業および野菜工場の採算化、植物を用いた物質生産の実用化などに大きく貢献できる。
ところで、植物等の真核生物の成長量を増大させる方法の一つに雑種強勢を利用した方法がある。雑種強勢とは、遠縁な両親の間の雑種が両親よりも強勢な成長を示す遺伝現象で一代雑種(F1)品種の作出方法として確立されている。
しかしながら、雑種強勢による生長量の増大は、雑種第一代においてのみ発現し、その後代には遺伝しないことが知られている。
一方、近年の遺伝子解析技術の発展に伴い、植物の多くの遺伝子の機能及び遺伝子ネットワークが解析され、そのデータが集積されてきており、これらの研究成果を利用し、植物のバイオマス生産量を強化しようとする研究が盛んに行なわれている。
例えば、Eriksson et al.(2010)は、ジベレリン生合成系の調節遺伝子を高発現させたポプラ形質転換体の地上部のバイオマスが70%程増大するというデータを示している。
また、Ishimaru et al.(2012)は、イネの種子で発現するIAA−glucose hydrolase遺伝子を欠損させると、粒重が増大し15%の収量増加できることを報告している。
また、Kim et al.(2013)は、細胞内の過酸化物の処理能力を高めるOsDHAR遺伝子を導入したイネの形質転換体は、収量が約15%増加することを報告している。
また最近、Yoshida et al.(2012)は、イネの穂の二次枝梗の分化を促進するtaw1−D遺伝子を見出しており、この遺伝子を交配により導入したコシヒカリは種子粒数が倍増し、約50%程度の収量増加となるのではないかと見込まれている。
上記各報告は確かに効果的ではあるが、生物全体の成長量(乾物重量)を数倍に増大した研究例はこれまでに知られていない。
そこで、本発明は、遺伝子導入によって、植物等の真核生物の生長量(バイオマス)を数倍に増大する形質転換体の作出方法および当該技術により作出された形質転換体を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の一の観点に係る真核生物である植物の形質転換体の作出方法は、RNAポリメラーゼIIにより転写されるユビキチン遺伝子のプロモータ配列に、異なる種から単離したイネの45S rRNA遺伝子を連結した構築物を含む形質転換用ベクターを用いる。また、前記植物がアラビドプシスであると望ましい。
また、本発明の他の一観点に係る真核生物である植物の形質転換体は、RNAポリメラーゼIIにより転写されるユビキチン遺伝子のプロモータ配列に、異なる種から単離したイネの45S rRNA遺伝子を連結した構築物を含む形質転換用ベクターを用いて作出される。また、前記植物がアラビドプシスであることを特徴とする形質転換体であると望ましい。
上記課題を解決する他の一の観点に係る真核生物の形質転換体は、RNAポリメラーゼIIにより転写される遺伝子のプロモータ配列に、異なる種から単離した45S rRNA遺伝子を連結した構築物を含む形質転換用ベクターを用いて作出されるものである。
以上、本発明により、遺伝子導入によって、植物等の真核生物の生長量(バイオマス)を数倍に増大する形質転換体の作出方法および当該技術により作出された形質転換体を提供することが可能となる。
特に、本発明によると、45S rRNA遺伝子を、RNAポリメラーゼIIで転写する形質転換体を作出することによりバイオマスを2倍以上に増大できるというものであって、手法および結果ともに上記の研究とは全く異なる独創的なものとなっている。
また本発明によると、様々な植物の原系統(品種)の特性を損なうことなく、生長量(バイオマス)を数倍に増大した形質転換体を作出することが可能になる。単位面積当りの生産量を数倍に増大することができれば、生産コストを数分の1にすることができるため、サトウキビ、ユーカリなどを用いたバイオマスエネルギーのコストパフォーマンスを改善できる。また、バイオマスを増大することができれば、穀物、野菜、薬用植物の生産量を増大することができる。また、植物工場など施設園芸作物生産の採算化に貢献できる。さらに、植物などの培養細胞を用いた有用物質の物質生産の効率を高めることが可能になる。ランやリンゴなどの植物は、開花までに数年間を要しているが、この年限を短縮することも期待することができる。
イネの45S rRNA遺伝子のPCR増幅とバイナリーベクターの構築について説明する図である。 アラビドプシス形質転換体の作出についての模式図である。トウモロコシのユビキチン遺伝子プロモータにイネの45S rRNA遺伝子を連結して、ハイグロマイシン抵抗性遺伝子を含むバイナリーベクターに組み込み、Floral dip法によりアラビドプシス形質転換体を作出した。この形質転換体では、イネの45S rRNA遺伝子は、Pol IIにより転写される。 アラビドプシス形質転換体のPCRおよびサザン解析の結果を示す図である。イネの45S rRNA遺伝子を4コピーおよび3コピー導入したアラビドプシスの形質転換体をそれぞれ2系統および3系統作出した。 形質転換体2系統(45−2、45−3)のT2後代と対照(Col−0)系統の生育試験、展開葉数およびロゼット葉の最大直径の径時的変化を示す図である。 形質転換2系統(45S−2、45S−3)のT2後代の開花期におけるロゼット葉の最大直径(D.M.)、地上部の乾物重(D.W).対照(Col−0)系統の乾物重を100とした値(D.W.ratio)。を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に検討する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例の例示にのみ限定されるわけではない。
本実施形態に係る真核生物の形質転換体の作出方法は、RNAポリメラーゼII(Pol II)により転写される遺伝子のプロモータ配列に、異なる種から単離した45S rRNA遺伝子の少なくとも一部を連結した構築物を含む形質転換用ベクターを用いる。
また本実施形態に係る真核生物の形質転換体は、RNAポリメラーゼIIにより転写される遺伝子のプロモータ配列に、異なる種から単離した45S rRNA遺伝子の少なくとも一部を連結した構築物を含む形質転換用ベクターを用いて作出される。
本実施形態において、プロモータ配列は、Pol IIにより転写される遺伝子のものであれば、どんな遺伝子のプロモータ配列も利用可能であるが、カリフラワーモザイクウィルスなどの強い遺伝子発現を誘導できるプロモータ配列であることが好ましい。
また本実施形態において、45S rRNA遺伝子は、限定されるわけではないが、遺伝子を導入する宿主生物と異なる属の生物から単離したものを用いることが好ましい。
Pol IIにより認識されるプロモータ配列及びターミネータ配列に連結した異種の45S rRNA遺伝子を目的遺伝子カセットとして、直接又は間接形質転換法を用いて当該遺伝子カセットを導入した植物等の形質転換体を作出することができる。
上記形質転換法としては、限定されるわけではないが、遺伝子銃(パーティクルガン)法などの直接形質転換法およびアグロバクテリウム媒介法などの間接形質転換法のいずれかの方法を用いることができる。
なお本実施形態に係る強勢成長を示す形質転換体の作出方法は、双子葉、単子葉を含む被子植物、裸子植物、シダ類、コケ類、藻類などのすべての植物に適応できる。以下具体的な手順については、植物を例に説明するが、原理上、植物以外の真核生物にも応用可能である。
[45S rRNA遺伝子単離]
本方法には、植物の45S rRNA遺伝子の少なくとも一部を用いる。45S rRNA遺伝子は、PCR法により増幅すること、又は、ゲノムDNAより切り出すことができる。また、植物以外の真核生物から単離した45S rRNA遺伝子を用いることも可能である。
[形質転換用ベクターの構築方法]
単離した45S rRNA遺伝子の全長又はその一部をRNAポリメラーゼIIにより転写される遺伝子のプロモータ配列及びターミネータ配列の間に挿入して融合遺伝子を作製する。プロモータ配列としては限定されるわけではないが、カリフラワーモザイクウィルスの35S転写物プロモータ等、遺伝子発現量の高いプロモータ配列を用いることが好ましい。また、上記のとおり、植物以外の真核生物のプロモータ配列も使用可能である。
そして、作製した融合遺伝子を抗生物質等の選抜マーカー遺伝子を含むベクターに組み込む。形質転換植物を作出するためには、アグロバクテリウムで複製可能なバイナリーベクターに組み込むことが好ましい。しかし、直接遺伝子導入法を用いて形質転換体を作出することも可能である。
また、形質転換植物を作出するためには、Tiプラスミドを保持したアグロバクテリウム(A.tumefaciens)を用いることが好ましい。なお、パーテクルガン、マイクロインジェクション、リポソーム、ポリエチレングリコールなどを用いて形質転換体を作出することも可能である。
アグロバクテリウムを用いる形質転換法としては、限定されるわけではないがバイナリーベクター法が好ましい。バイナリーベクター法とは、T−DNA領域のボーダー(LB及びRB)を有するプラスミドのT−DNA領域に目的の外来遺伝子を組み込んだプラスミドをアグロバクテリウムに導入して植物に感染させることにより、目的遺伝子を植物ゲノムに挿入する方法である。
バイナリーベクター法を利用した発現カセットは、T−DNA領域に、目的遺伝子の45S rRNA遺伝子、及び当該遺伝子が導入された細胞を選抜するための選抜マーカー遺伝子、レポーター遺伝子を含んでいる。また、マーカーフリー(MAT) ベクターを利用することもできる。
ここでプロモータ配列としては、植物において強い遺伝子発現を誘導するカリフラワーモザイクウィルスの35S RNA、ノパリンシンターゼ(nos)、アクチン並びにβ−ファゼオリン、ナピン、ユビキチン遺伝子のプロモータなどが挙げられる。また、植物以外の真核生物のプロモータ配列も利用できる。
また、ターミネータ配列としては、プロモータにより転写された遺伝子の転写を終結できる配列であればよく、例えば、オクトビン合成酵素(ocs)、カリフラワーモザイクウィルスの35S RNA遺伝子のターミネータが挙げられ、ノパリン合成酵素(nos)遺伝子のターミネータが好ましい。
また、選抜マーカー遺伝子としては、抗生物質や除草剤のような薬剤に対する抵抗性を付与する遺伝子が用いられる。具体的には、カナマイシン耐性遺伝子、パロモマイシンB耐性遺伝子、またはビスピリバックナトリウム塩(BS)、ビアラフォス、グルフォシネート及びグリフォセートのような除草剤に対する抵抗性遺伝子等が挙げられる。また、MATベクターシステムのようなマーカーフリーベクターの使用も可能である。
また本実施形態では、必要に応じて、さらにエンハンサー配列などを含んでもよい。エンハンサーは、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられるものであって、限定されるわけではないが、カリフラワーモザイクウィルスの35S RNA遺伝子のプロモータ内の上流側の配列を含むエンハンサー領域等を例示することができる。
また、バイナリーベクターとしては、上記発現カセットをT−DNA領域に含むものであって、具体的には、pEKH又はpEKBベクターに上記発現カセットを組み入れたものが好ましいが、pBI系、pRI系、pPZP系、pSMA系、pGW系などの市販ベクターに上記発現カセットを組み入れたものも用いることができる。
そして、以上のような構成を有するバイナリーベクターを、トリペアレンタルメイティング法やfreese−thaw(凍結融解)法、エレクトロポレーション法等によりアグロバクテリウムに導入することにより、遺伝子導入用アグロバクテリウムを調製できる。
〔アグロバクテリウム接種液の調製〕
遺伝子導入用のアグロバクテリウム接種液としては、例えば2×YT培地、AB培地、YEP培地、LB培地などにより外来遺伝子を保持したアグロバクテリウムを、15〜24時間程度培養した培養液を用いてもよく、また、培養したアグロバクテリウム属細菌を集菌し、MES、アセトシリンゴンを含むMS培地に懸濁することにより調製してもよく、また、上記培養液をそのまま、接種液として用いてもよい。
また接種液には、限定されるわけではないが、さらに界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤は、水の表面張力を低下させ、これにより、アグロバクテリウム懸濁液を植物組織の内部へ浸透させることができる。
また、使用する界面活性剤としては、水の表面張力を低下させて、接種液の植物組織への浸透を促進できるものであればよく、例えば、形質転換用試薬として市販されているSILWET L−77、Tween 80、Tween 20、Triton X−100等を例示することができる。また界面活性剤の濃度は、界面活性剤の種類にもよるが、0.005〜0.02%水溶液が好ましく用いられる。
〔外植体の調製〕
遺伝子導入に供される植物の組織は、葉片、胚軸、及びカルス等である。これらの組織は、無菌的に維持している植物体から調製することが好ましい。しかし、温室等で育成した植物体から殺菌処理により直接調製することも可能である。また、直接遺伝子導入法を用いて形質転換体を作出する場合には、上記に加え培養細胞を用いることができる。
〔遺伝子導入〕
上記のように外植体を調製し、目的遺伝子を保持するアグロバクテリウム接種液に浸漬することによりアグロバクテリウムが保持する目的遺伝子を植物細胞へ導入する。また、直接遺伝子導入法では、目的遺伝子を含むDNA断片を物理的に目的とする真核生物の細胞内へ導入する。
45S rRNA遺伝子が導入された細胞は、当代より強勢成長を示す。しかし、後代系統を育成して45S rRNA遺伝子をホモに持つ系統を選抜することが好ましい。これにより強勢成長を遺伝的に固定した形質転換体を作出することが可能になる。
本手法において用いる45S rRNA遺伝子は、目的とする植物(宿主)とは異なる分類群の種から単離することが好ましい。このことは同種から単離した45S rRNAにより強勢成長が誘導されることを否定するものではないが、同種であるとRNAポリメラーゼIとIIにより転写される45S rRNAを識別することができないため、強勢成長との因果関係を証明することが困難である。
以上、本実施形態により、遺伝子導入によって、植物等の真核生物の生長量(バイオマス)を数倍に増大する形質転換体の作出方法および当該技術により作出された形質転換体を提供することが可能となる。また本発明による生長量の増大は、後代に遺伝するので、遺伝的に固定した品種を作出することができる。
特に、本発明によると、45S rRNA遺伝子を、RNAポリメラーゼIIで転写する形質転換体を作出することによりバイオマスを2倍以上に増大できるというものであって、手法および結果ともに上記の研究とは全く異なる独創的なものとなっている。
また本実施形態によると、様々な植物の原系統(品種)の特性を損なうことなく、生長量(バイオマス)を数倍に増大した形質転換体を作出することが可能になる。単位面積当りの生産量を数倍に増大することができれば、生産コストを数分の1にすることができるため、サトウキビ、ユーカリなどを用いたバイオマスエネルギーのコストパフォーマンスを改善できる。また、バイオマスを増大することができれば、穀物、野菜、薬用植物の生産量を増大することができる。また、植物工場など施設園芸作物生産の採算化に貢献できる。さらに、植物などの培養細胞を用いた有用物質の物質生産の効率を高めることが可能になる。ランやリンゴなどの植物は、開花までに数年間を要しているが、この年限を短縮することも期待することができる。
以下、実際に上記方法を実践し、本発明の効果を確認した。以下具体的に説明する。下記実施例は一例であり、本発明の範囲を限定するものではない。
〔45S rRNA遺伝子単離〕
まず、イネの栽培種(Oryza sativa L.)のインド型系統N16の葉よりCTAB法(Doyle and Doyle 1987)によってゲノムDNAを抽出した。
次いで、PCR法により45S rRNA遺伝子の全長(5.8kb)を増幅して、45S rRNA遺伝子をPCR増幅した。なお増幅プライマーは下記のものを使用した。そして94℃3分後、94℃1分58℃1分68℃5分のサイクルを30回繰り返し、得られたPCR産物にアデニンを付加し、TOPO TA Cloning Kitを用いて、PCR2.1ベクターにクローニングした(図1参照)。
そして、単離したイネ45S rRNA遺伝子の全長の両端にあるEcoRIサイトをパーシャルダイジェッションし、アガロース電気泳動を行い、イネの45S rRNA遺伝子を含む断片をゲル抽出した。その後、抽出した断片を平滑末端処理し、Sub221sベクターのBamHIサイトおよびSalIサイトを切断し、平滑末端処理を行い、トウモロコシのユビキチン遺伝子のプロモータ配列とアグロバクテリウムのノパリン合成酵素遺伝子のターミネータ配列との間に挿入し融合遺伝子(UbiP::45S rRNA)を作成した(図1参照)。
そして、バイナリーベクター(pEKH2)が保持するカナマイシンおよびハオグロマイシン抵抗性遺伝子カセットの間にあるHindIIIサイトに、同じくHindIIIで切断した融合遺伝子を含むプラスミッドを挿入してpEKH2 UbiP::45S rRNAを構築した。Sub221sベクターには、スペクチノマイシン抵抗性遺伝子が含まれているので、目的遺伝子を含むバイナリーベクターを効率良く選抜できた(図1参照)。
そして、構築したバイナリーベクターpEKH2 UbiP::45S rRNAを含む大腸菌を用いてTriparental mating法によりアグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens)菌株EHA101にpEKH2−UbiP::45S rRNAを導入した。
そして、スペクチナマイシン50mg/l、カナマイシン25mg/l、クロラムフェニコール25mg/lを含む抗生物質を含まない2×YT培地に、イネ45S rRNA遺伝子を含むアグロバクテリウムを接種して16時間培養した。菌液を4,000rpm、25℃、3分遠心した。その後、上澄みを捨て、5%スクロースおよびMESを添加した1/2MS培地に再懸濁後、0.02%になるようL−77を加え、よく撹拌した。アグロバクテリウム濃度(OD600)は、1.0程度に調整した。
〔形質転換植物の作出方法〕
モデル植物シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana Colombia−0)の種子を3%スクロース含有1/2MS培地に無菌播種して、発芽後2週間の幼苗を鉢上げし、22℃、16時間明期8時間暗期に調整したグロースチャンバー内で栽培した。鉢上げ後、3週間程度の蕾をアグロバクテリウムの接種に用いた。
そして、上記は種後35日目のアラビドプシスの花序の先端に、ピペットマンを用いて10から20μlのアグロバクテリウムの懸濁液を滴下した。アグロバクテリウムの接種後、30日程度でシロイヌナズナの完熟種子(T1世代)が採種できた。
本手法により作出するアラビドプシス形質転換体において、アラビドプシス45S rRNA遺伝子はRNAポリメラーゼIにより、導入したトウモロコシのユビキチン遺伝子のプロモータ配列に連結したイネの45S rRNA遺伝子はRNAポリメラーゼIIにより転写されると考えられる(図2参照)。
〔形質転換種子の選抜〕
一晩冷蔵庫で保管することにより上記で得られた種子の休眠を打破し、20mg/lの濃度でハイグロマイシンを添加した3%スクロースを含む1/2MS培地に無菌播種を行なった。
そして、20日後にハイグロマイシンに耐性のある5個体を選抜し、メトロミックスとルーフソイルを1対1で配合した用土を2号ポットに詰めた鉢に移植した。
鉢上げ後、10日経過した個体から葉をサンプリングし、CTAB法によりDNAを抽出した。抽出したDNAを鋳型としてハイグロマイシン(hyg)遺伝子を増幅するプライマーを用いてPCR法を実施した。PCR条件は94℃3分後、94℃1分59℃1分68℃1分のサイクルを30回繰り返した。PCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動法にかけたところ、5個体すべてにおいてhyg遺伝子が検出できた(図3参照)。
そして、PCR法により、イネの45S rRNA遺伝子と一緒に導入した選抜マーカー(hyg)遺伝子断片の増幅が確認された5系統についてゲノムDNAを制限酵素により切断し、アガロース電気泳動法にかけ、サザン法により導入されたhyg遺伝子のコピー数を解析したところ、2系統(45S−1、45S−2)には4コピー、残りの3系統(45S−3、45S−4、45S−5)には3コピーのhyg遺伝子が導入されていた(図3参照)。なおサザンブロッティング法はRoche社のDIGアプリケーションマニュアルに従って行った。
得られた5系統の形質転換体のなかで、3系統は生育が不良であったが、残りの2系統(45S-2、45S-3)は、順調に生育したため、自殖させてT2世代および T3世代の完熟種子を採種した。
更に、一晩冷蔵庫で保管することによりT3世代の種子の休眠を打破し、20mg/lハイグロマイシンを含む1/2MS培地に無菌播種した。対照に用いたCol−0系統はハイグロマイシンを含まない条件で同様に行った。
そして、無菌播種15日後、形質転換体2系統および対照のCol−0系統を8個体ずつメトロミックスとルーフソイルを1対1で配合した用土を2号ポットに詰めた鉢に移植した。
そして、移植した形質転換体2系統(45S−2、45S−3)および対照系統(Col−0)の展開した本葉の枚数を播種後25日目までカウントした。また、ロゼット葉の最大直径を2日毎に播種後40日目まで測定した(図4参照)。
そして、播種後40日目、開花期に達した植物体のロゼット葉の最大直径を計測した。また、全地上部を収穫して、120℃で1時間および65℃で12時間乾燥し、精密天秤を用いて乾物重を測定した。
この結果、イネの45S rRNA遺伝子を導入した2系統(45S−2、45S−3)は、播種後40日目のロゼット葉の最大直径および地上部乾物重において、原系統のCol−0と比べて有意に大きな値を示した。特に、45S−2系統の乾物重は、対照と比べて2.8倍であった(図5参照)。
以上、本手法のRNAポリメラーゼIIが転写するプロモータ配列に異種の45S rRNAを連結した融合遺伝子を導入した形質転換体を作出することにより、強勢成長を示す植物体を作出することができることを確認した。本手法は、真核生物の基礎的な原理に従っているので 、すべての植物種および植物以外の真核生物の種においても強勢成長を示す形質転換体を提供できる。
本発明は、形質転換体及びこの作出方法として産業上の利用可能性がある。

Claims (2)

  1. RNAポリメラーゼIIにより転写されるユビキチン遺伝子のプロモータ配列に、異なる種から単離したイネの45S rRNA遺伝子の全長を連結した構築物を含む形質転換用ベクターを用いる真核生物である植物の形質転換体の作出方法において、前記植物がアラビドプシスであることを特徴とする形質転換体の作出方法
  2. RNAポリメラーゼIIにより転写されるユビキチン遺伝子のプロモータ配列に、異なる種から単離したイネの45S rRNA遺伝子の全長を連結した構築物を含む形質転換用ベクターを用いて作出される真核生物である植物の形質転換体において、前記植物がアラビドプシスであることを特徴とする形質転換体
JP2013197595A 2013-09-24 2013-09-24 形質転換体及びその作出方法 Expired - Fee Related JP6410335B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013197595A JP6410335B2 (ja) 2013-09-24 2013-09-24 形質転換体及びその作出方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013197595A JP6410335B2 (ja) 2013-09-24 2013-09-24 形質転換体及びその作出方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015062359A JP2015062359A (ja) 2015-04-09
JP6410335B2 true JP6410335B2 (ja) 2018-10-24

Family

ID=52830883

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013197595A Expired - Fee Related JP6410335B2 (ja) 2013-09-24 2013-09-24 形質転換体及びその作出方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6410335B2 (ja)

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20100184128A1 (en) * 2008-10-03 2010-07-22 Dow Agrosciences Llc Production of products of pharmaceutical interest in plant cell cultures
JP2012526536A (ja) * 2009-05-15 2012-11-01 ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング コンビナトリアルエンジニアリング

Also Published As

Publication number Publication date
JP2015062359A (ja) 2015-04-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8609418B2 (en) Genetic transformation of Jatropha curcas
Wang et al. Highly efficient Agrobacterium-mediated transformation of Volvariella volvacea
CN105543269B (zh) 利用球孢白僵菌BbP4-ATPase基因提高植物对黄萎病抗性的方法
JP2011229521A (ja) ヤトロファ由来のnf−ybをコードするポリヌクレオチド及びその利用
CN106148390A (zh) Chy锌指蛋白转录激活辅因子及其应用
Maligeppagol et al. Genetic transformation of chilli (Capsicum annuum L.) with Dreb1A transcription factor known to impart drought tolerance
CN102061308B (zh) 一种用百草枯筛选转基因植物的方法
US8785612B2 (en) Sugarcane bacilliform viral (SCBV) enhancer and its use in plant functional genomics
Gao et al. Influence of bacterial density during preculture on Agrobacterium-mediated transformation of tomato
CN106397556B (zh) 植物抗旱相关蛋白ZmNAC111及其编码基因与应用
Chen et al. Agrobacterium-mediated genetic transformation of peanut and the efficient recovery of transgenic plants
Konagaya et al. Application of the acetolactate synthase gene as a cisgenic selectable marker for Agrobacterium-mediated transformation in Chinese cabbage (Brassica rapa ssp. pekinensis)
CN103409460A (zh) 转化玉米的方法
KR20140050262A (ko) 식물 바이러스를 이용한 식물체 형질전환을 위한 유전자 전달 시스템 및 이의 용도
JP6410335B2 (ja) 形質転換体及びその作出方法
CN104628840B (zh) 植物耐逆性相关蛋白VrDREB2A及其编码基因与应用
CN114085854A (zh) 一种水稻抗旱、耐盐基因OsSKL2及其应用
CN109207487B (zh) 一种油菜耐渍基因BnaLPP1及制备方法和应用
CN102206662B (zh) miR399融合基因及其构建方法和在植物育种中的应用
CN104877021A (zh) 与植物脂肪酸和油脂代谢相关的油菜转录因子BnFUS3及其编码基因与应用
CN106459884A (zh) 土壤杆菌及使用土壤杆菌的转化植物的制造方法
CN107058381A (zh) 一种获得耐盐转基因大豆材料的方法
CN109837298A (zh) 一种甜荞麦抗逆遗传转化体系及其构建方法
Varalaxmi et al. Optimization of parameters for Agrobacterium mediated transformation of black gram (Vigna mungo L. Hepper) using cotyledon explants
CN112725353B (zh) 重组载体、转化体、用于扩增AtNAC58基因的引物及其制备方法和应用

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160808

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170801

RD05 Notification of revocation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7425

Effective date: 20170913

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20170927

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171115

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180419

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180604

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180904

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180921

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6410335

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees