以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
<実施の形態1>
まず、樹脂製容器の一種であるボトルに対してコロナ放電処理を行うための装置の構成および概要機能について、図1から図3を用いて説明する。
図1に示すように、コロナ放電処理装置10は、樹脂製容器であるボトルBの開口部を通過可能な電極11と、接地されたアース部12と、電極11にコロナ放電が発生する電圧を印加する電源部13と、電極11をボトルBの内部に挿入させる駆動部14と、ボトルBにアース部12を被せる駆動部15と、駆動部14および駆動部15の動きを制御する制御部16と、を備えている。
コロナ放電処理装置10は、ボトルBの内面をコロナ放電により改質させる。例えば、コロナ放電により電極11から放出された電子は、電界中で加速され大気中の電子や分子と衝突することにより、励起や解離・イオン化を起こす。そして、イオン化された原子や分子からも電子が放出される。電子が、樹脂の表面層に達し、高分子結合の主鎖や側鎖を切り離す。このように切断された高分子表層は、化学的にラジカルな状態となる。そして、気相中の酸素ラジカルやオゾン等が、主鎖や側鎖と再結合することにより、水酸基、カルボニル基等の極性官能基が導入され、樹脂の表面層に親水性が付与されて、濡れ性が向上する。すなわち、樹脂の表面が改質される。
ボトルBは、保持部17により、コロナ放電処理装置10の所定位置に保持される。
ここで、ボトルBは、図2に示すように、胴部b1と、胴部b1の底を閉じる底部b2と、底部b2に対向する側に設けられた少なくとも1つの開口部b3とを有する。
ボトルBの胴部b1の形状は、例えば、略円筒形である。胴部b1の形状は、開口部b3から広がって、円筒形状に移行する。なお、ボトルBの強度を増加させるため、ボトルBの胴部b1が、底部b2から、開口部b3への方向において、一部に波形壁を有してもよい。また、ボトルBの胴部b1の形状として、例えば、角筒形等その他の形状であってもよい。
管状の開口部b3には、外側に雄ネジが形成される。図12(F)に示すように、開口部b3の雌ネジにはキャップCの雌ネジが螺合可能であり、雌雄ネジの螺合によって、ボトルBが塞がれる。開口部b3の開口の大きさは、底部b2の大きさより小さく、胴部b1の断面より小さい。また、開口部b3の外側には、サポートリングb4がフランジ状に形成される。このサポートリングb4に上記保持部17が掛けられることにより、ボトルBが保持部17によって吊下げられる。
ボトルBの材質としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン等のポリオレフィンの単体もしくは二種以上の混合物、又はエチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン、ポリエチレンテレフタラート等の非オレフィン系樹脂を挙げることができ、これらの樹脂の単層又は二種以上の多層構成によりボトルBが形成される。少なくともボトルBの内表面が上記樹脂により形成される。ボトルBの大きさは、例えば500mL容量とすることができる。
なお、ボトルBに充填される物体は、液体だけでなく、粒状物、塊等を含んだものや、高粘度の物体でもよい。
電極11は、図3に示すように、電極放電部11aと、電極支柱11bとを有する。
電極11は、ステンレス等の金属製の導電体である。電極11は、ボトルBの開口部を通過可能な形状および大きさで、かつ、ボトルBの内面の底部まで近接できる長さを有する。例えば、電極放電部11aが、ボトルBの開口部b3の内径より小さい円板形状で、電極支柱11bが、ボトルBの内面の底部まで近接できる長さを有する。
アース部12(接地された導電体の一例)は、ステンレス等の金属製の導電体である導電部12aと、樹脂等の絶縁部12bと、を有する。また、導電体の一例として、ステンレス、鉄、銅、真鍮、アルミニウム、金メッキを施した金属、カーボン、導電性ポリマ等が挙げられる。
導電部12a(ボトルの外部の少なくとも一部に、接地された導電体の一例)は、底部を有し、ボトルBの底部b2および胴部b1を覆う形状である。例えば、ボトルBの胴部b1が円筒形である場合、導電部12aは、ボトルBより大きい円筒形である。また、導電部12aは、接地されている。
絶縁部12b(ボトルと導電体との間の絶縁体の一例)は、樹脂製で所定の厚みを有し、ボトルBと導電部12aとの間に存在し、スペーサの機能を有する。例えば、絶縁部12bは、底部を有し、絶縁部12bの内側が、ボトルBを挿入できる形状で、かつ、外側が導電部12aに収まる形状である。絶縁部12bは、その外周面の一部と底部とにおいて導電部12aと接している。
絶縁部12bの材質の一例として、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート等が挙げられる。
また、絶縁部12bは、ボトルBの開口方向に導電部12aより突出している。すなわち、絶縁部12bの長手方向の長さ(深さ)が、ボトルBの高さより長い。
また、導電部12aの長手方向の長さ(深さ)は、絶縁部12bが存在する状態で、ボトルBの開口部b3の高さと同じぐらいになることが好ましい。
電源部13は、定電圧、定電流、または、定電力で、高電圧を発生させる電源である。電源部13は、商用電源の周波数を上げる周波数変換を行うコンバータ、コロナ放電が発生する電圧まで昇圧する高電圧トランス等を有する。電源部13は、電極11にコロナ放電が発生する高電圧を印加する。
駆動部14(駆動手段の一例)は、サーボモータ等のモータを有する。駆動部14は、電極11に連結されている。図2に示すように、駆動部14は、電極11を、ボトルBの開口部を通過させてボトルB内に挿入する駆動を行う。そして、駆動部14は、ボトルBの内面の底部に近づけ、ボトルBから抜く駆動を行う。なお、駆動部14は、電極11の長軸方向(ボトルBの開口方向)を軸として電極11を回転させながら、挿入または抜く動作を行ってもよい。
駆動部15(駆動手段の一例)は、サーボモータ等のモータを有する。駆動部15は、アース部12の底部に連結されている。図2に示すように、駆動部15は、ボトルBをその底部から覆うように、アース部12を駆動する。放電処理後に、駆動部15は、ボトルBからアース部12を外すように、アース部12を駆動する。なお、駆動部15は、ボトルBがセットされたアース部12を、ボトルBと共に、電極11の長軸方向(ボトルBの開口方向)を軸として回転させてもよい。
制御部16は、CPU(Central Processing Unit)とメモリとを有する。CPUは、メモリに記憶されたプログラムに基づき、電源部13のオンオフおよび電圧等を制御し、駆動部14および駆動部15の駆動を制御する。また、制御部16は、保持部17の動作を制御してもよい。
次に、コロナ放電処理装置10のボトルの表面処理の動作について、図4から図5Eを用いて説明する。
図4に示すように、ボトルBがコロナ放電処理装置10にセットされる(ステップS1)。具体的には、ボトルBの搬送装置(図示せず)が、ブロー成形されたボトルBを、コロナ放電処理装置10に搬送する。
図2に示すように、コロナ放電処理装置10の所定位置に、保持部17により保持されたボトルBがセットされる。コロナ放電処理装置10は、ボトルBが所定位置にセットされたか、センサ等により確認する。
そして、コロナ放電処理装置10の制御部16の制御により、駆動部15が、ボトルBの底部からボトルBをアース部12に収納するように、ボトルBの開口方向にアース部12を駆動させる。そして、図5Aに示すように、ボトルBが、アース部12に収納される。この時ボトルBは保持部17に保持されているが、図示を省略する。
次に、コロナ放電処理装置10は、電極11に電圧を印加する(ステップS2)。
具体的には、コロナ放電処理装置10の制御部16の制御により、電源部13が、電極11の電極放電部11aから空気中にコロナ放電が発生するように、電極11に電圧を印加する。図5Aに示すように、電極放電部11aの円板の円周部分から、コロナ放電C1が発生する。電極放電部11aが、アース部12の導電部12aから離れているため、コロナ放電C1は、指向性が弱いコロナ放電の放電態様である。
次に、コロナ放電処理装置10は、電極11の挿入動作を開始する(ステップS3)。
具体的には、制御部16の制御により、電極11の駆動部14は、コロナ放電を発生している電極11の挿入動作を開始する。なお、駆動部14は、電極11を回転させながら挿入してもよい。または、駆動部15が、ボトルBと共にアース部12を回転させて、ボトルBと電極11とを相対的に回転させるようにしてもよい。
次に、電極放電部11aが導電部12aに近づくと、導電部12aの方向へ指向性が増加したコロナ放電に、放電態様が変化する。そして、図5Bに示すように、電極放電部11aが、ボトルBの開口部b3に入ると、電極放電部11aの円周部分から、指向性が強いコロナ放電C2が発生する。コロナ放電C2は、指向性が強いコロナ放電の放電態様である。そして、電極放電部11aが、ボトルBの開口部b3の細い内径部分を通過して行くにつれて、開口部b3の内径部分の表面が、コロナ放電C2により改質されて行く。
なお、ボトルBの開口部b3の内径部分の表面と、電極放電部11aの円周部分との距離が近いので、駆動部14は、電極放電部11aを早めに通過させてもよい。
図5Cに示すように、駆動部14が電極11をボトルBの内部にさらに挿入する。電極11がボトルBの底方向へと挿入されるにつれて、ボトルBの胴部b1の内面が、コロナ放電C2により順に改質されて行く。
次に、コロナ放電処理装置10は、電極11をボトルBの底面まで近づけ、ボトルBの底部内面を処理する(ステップS4)。
具体的には、制御部16の制御により、電極11の駆動部14は、電極放電部11aをボトルBの内面の底部b2に近づける。
図5Dに示すように、電極放電部11aが、ボトルBの内面の底部b2に近づくと、電極放電部11aの円面部分(導電部12aの底面に対向した面)から、面放電のコロナ放電C3が発生する。電極放電部11aの円周部分とアース部12の導電部12aとのインピーダンスより、電極放電部11aの面部分とアース部12の導電部12aとのインピーダンスが低くなるため、電極放電部11aの面部分から、面放電のコロナ放電C3(ボトルBの内面の底部b2の処理用の放電の一例)が発生する。すなわち、コロナ放電C2からコロナ放電C3にコロナ放電の態様が変化する。
面放電のコロナ放電C3により、ボトルBの内面の底部b2が改質され始める。
なお、駆動部14または駆動部15は、ボトルBの開口方向を軸として、電極11とボトルBとを相対的に回転させながら、電極11をボトルBの内面の底部b2に近づけてもよい。
さらに、電極放電部11aをボトルBの内面の底部b2に近づけると、図5Eに示すように、コロナ放電C3から放電C4(ボトルBの内面の底部b2の処理用の放電の一例)にコロナ放電の態様が変化する。放電C4は、底部b2の内面に沿った沿面放電である。電極放電部11aの面部分から放出したコロナ放電が、ボトルBの内面の底部b2に沿って、底部b2の内面全体に広がるような放電が発生する。放電C4により、底部b2の内面全体が改質され易くなる。
次に、コロナ放電処理装置10は、電極11を抜く動作を開始する(ステップS5)。具体的には、制御部16の制御により、電極11の駆動部14は、コロナ放電を発生している電極11を抜く動作を開始する。電極11を抜くにつれて、放電の態様が、放電C4からコロナ放電C3に代わり、さらに、コロナ放電C2に変化する。電極11を抜く動作においても、ボトルBの内面が改質されて行く。なお、駆動部14は、電極11を回転させながら、電極11を抜いてもよい。また、電圧の印加を止めて、電極11を抜く動作が行われてもよい。
次に、コロナ放電処理装置10は、電圧の印加を止める(ステップS6)。
具体的には、電極11の位置が、図6Aに示すような位置に来たとき、制御部16の制御により、電源部13が、電極11への電圧の印加を止め、コロナ放電の発生を止める。
なお、ボトルBの開口部b3の内径部分は、電極放電部11aの円周部分との距離が近く、改質され易いので、電極11の位置が、図5Bに示すような位置に来たとき、電源部13が、電極11への電圧の印加を止めてもよい。
次に、コロナ放電処理装置10は、ボトルBを外す(ステップS7)。
制御部16の制御により、駆動部14が、アース部12に収納されているボトルBを外すように、アース部12を駆動する。コロナ放電処理装置10の定位置から、保持部17により保持されたボトルBが外され、搬送装置が、ボトルBを次の工程の位置まで搬送する。
以上、本実施形態によれば、ボトルBの開口部b3を通過させた電極11を、ボトルBの内面の底部b2まで近づけて、コロナ放電の態様を変化させて、ボトルBの底部b2まで効率良く処理しているので、効率良くボトルBの内部全体を改質できる。さらに、アルゴンのような特別な気体を供給する必要が無く、通常の大気中のコロナ放電であるので、コストの軽減を図ることができる。
また、ボトルBの内面の底部b2に沿った放電C4が生じるまで、電極11を、ボトルBの内面の底部b2に更に近づける場合、底部b2の内面全体が改質され易くなる。また、底部b2がより短時間で、改質される。
また、ボトルBの外部の少なくとも一部に、接地された導電部12a(導電体の一例)を有する場合、電極放電部11aから、ボトルBに向かう放電の指向性が向上して、ボトルBの内面を効率的に改質させることができる。
また、ボトルBと導電部12aとの間に絶縁部12b(絶縁体の一例)を有する場合、電極放電部11aからの放電が安定し、均質な改質がし易くなる。
また、絶縁部12b(絶縁体の一例)が、ボトルBの開口方向に導電部12a(導電体の一例)より突出している場合は、ボトルBの開口部b3の最上部からボトルBの内面すべてに、電極11からの安定した放電が確保されるので、適正な表面処理を行うことができる。
また、ボトルBの開口方向を軸として、電極11とボトルBとを相対的に回転させながら、電極11をボトルBの内面の底部b2に近づける場合、均一性がより向上した表面処理を行うことができる。
以上のようなコロナ放電処理が施されることにより、ボトルBの内面はその濡れ性が向上するように改質される。具体的には、例えばコロナ放電処理前は水に対する接触角が大体98度であったものが、大体75度以下になるように改質される。
上記の如くコロナ放電処理により内面が改質処理されたボトルBは、次に述べるような殺菌処理に付される。
まず、図11(A)に示すように、ボトルBが予備加熱ステップに供され、ボトルBの開口部b3からボトルBの内部へノズル43が挿入される。このノズル43から熱風がボトルBの内部へ送り込まれる。
この予備加熱では、ボトルBの開口部b3の外側面に正対するようにノズル44,44が設置され、それらのノズル44,44から熱風が開口部b3に吹き付けられて開口部b3がさらに加熱される。これは、開口部b3がサポートリングb4を含め比較的厚肉であり、ノズル43からの熱風のみでは開口部b3やサポートリングb4が十分に加熱されないおそれがあるためである。
ノズル43をボトルB内に挿入するのは、熱風をボトルB内に確実に送り込むためである。ノズル43の挿入量は熱風の流量、開口部b3の口径等に応じて適宜変更してよいが、図11(A)に示すようにボトルBの開口部b3と胴部b1との間に設けられたボトル径の遷移領域にノズル43の先端を位置させるとよい。遷移領域は、開口部b3の下端からボトル径が最大径の例えば70%まで拡大する範囲として定義できる。予備加熱は、ボトルBの内面が40°C以上となるように行うことが望ましい。
なお、上記予備加熱は必要に応じて行われるものであって、省略することも可能である。
予備加熱されたボトルBは過酸化水素供給ステップへと搬送される。
過酸化水素供給ステップでは、図11(B)に示すように、過酸化水素水のミストM若しくはガスG又はこれらの混合物がノズル45からボトルBの内部へと供給される。
過酸化水素水のミストM若しくはガスG又はこれらの混合物は、例えば図13に示す生成装置46により作られる。過酸化水素水は過酸化水素を20〜60重量%含む水溶液であり、安定剤等の添加物を含む。過酸化水素の濃度は35重量%が好適に用いられる。
この生成装置46は、殺菌剤である過酸化水素の水溶液を霧状にして供給する二流体スプレーとしての過酸化水素水供給部47と、この過酸化水素水供給部47から供給された過酸化水素水の噴霧をその沸点以上、非分解温度以下に加熱して気化させる気化部48とを備える。過酸化水素水供給部47は、過酸化水素水供給路47a及び圧縮空気供給路47bからそれぞれ過酸化水素水と圧縮空気を導入して過酸化水素水を気化部48内に噴霧するようになっている。気化部48は内外壁間にヒータ48aを挟み込んだパイプであり、パイプ内に吹き込まれた過酸化水素水の噴霧を加熱し気化させる。気化した過酸化水素水のガスGはノズル45から、ボトル1の開口部b3の開口に向かってミストM若しくはガスG又はこれらの混合物の状態で噴出する。
ノズル45から噴出したミストM若しくはガスG又はこれらの混合物は、図11(B)に示すように、開口部b3からボトルBの中に入るとともにボトルBの外部を伝って流れ落ちる。
これにより、微細な過酸化水素水のミストMがボトルBの内外面に付着する。上述したように、ボトルBの内面はコロナ放電処理により改質されていることから、殊にミストMがボトルBの内面に付着したときは、ボトルBの内面の全面にわたり過酸化水素水が薄い均一な被膜となって広がる。これにより、殺菌ムラが防止され、殺菌効果が向上する。
ボトルBが上記予備加熱によって加熱されている場合は、ボトルBの内面はもちろんのこと外面も過酸化水素によって効果的に殺菌される。
なお、容量500mLのボトル1本に対する過酸化水素水ミストの付着量は、35重量%過酸化水素溶液に換算して5μL〜100μLの範囲が好ましい。すなわち、過酸化水素を35重量%含んだ過酸化水素溶液を5μL〜100μLの範囲でボトル内に供給したときと同等の過酸化水素がボトルB内に付着するようにミストMの量を設定することが好ましい。ミストMの吹き込み時間はボトル1本に対して0.1秒〜1秒の範囲が好ましい。
なお、図11(B)に示すように、必要に応じてノズル45の下方にはボトルBを通過させるトンネル49が設けられる。過酸化水素水のミストMがトンネル49内に充満することから、ボトルBの外面に過酸化水素水のミストMが付着しやすくなり、それだけボトルBの外面の殺菌効果が向上する。
次に、ボトルBは、図11(C1)に示すように、エアリンスステップに付される。
エアリンスステップでは、無菌エアNがノズル50からボトルB内に吹き込まれることによって行われ、この無菌エアNの流れによってボトルB内から過酸化水素、異物等が除去される。
無菌エアNは加熱したホットエアであるのが望ましいが、常温であってもよい。ホットエアが送り込まれる場合は、ボトルBが内面から加熱され、過酸化水素水のミストMによる殺菌効果が高められるとともに、過酸化水素のボトルBへの浸透が抑制されて過酸化水素がボトルBの内面に浮かび易くなる。さらに、ボトルBの内部に漂っているミストがホットエアによりボトルB外へ排出される。この時点では、ボトルBの内面に付着した過酸化水素水のミストMにより既に殺菌が十分に行われているので、ボトルBの内部空間に漂っているミストMを排出しても殺菌効果は損なわれず、むしろ余分なミストMを早期に排出することにより、ボトルBの内面への過酸化水素の過剰な浸透を抑えることができる。
ボトルBは、エアリンスステップに移行する前に、その内部に過酸化水素水のミストMが導入された状態で所定時間保持されるのが殺菌効果を高めるうえで望ましい。しかし、上述したようにボトルBの内面はコロナ放電処理により改質され、過酸化水素水の被膜が速やかにムラなく均一に付着する。そのため、過酸化水素の導入後に速やかにエアリンスステップに移行することができる。従って、殺菌処理の迅速化が達成可能である。また、エアの温度を低めにしてボトルBの熱による変形を回避することが可能である。
なお、図11(C1)のボトルBを正立状態にして行うエアリンス方法に代えて、図11(C2)のごときボトルBを倒立状態にして行うエアリンス方法を採用してもよい。図11(C2)の方法を採用し、ボトルBを倒立状態にして下向きになった開口部b3から無菌エアNをボトルB内に吹き込むようにすることで、ボトルB内の異物等を開口部b3からボトルB外に落下させやすくすることができる。あるいは、図11(C1)のエアリンス工程に続いて同図(C2)の工程を、無菌エアNを吹き込むことなく行うようにしてもよい。
また、エアリンスステップでは、ノズル50がボトルBの外に配置された状態で吹き込まれているが、ボトルBの内部にノズル50を挿入して無菌エアNをボトルB内に吹き込むようにしてもよい。ノズル50は予備加熱ステップと同じくボトル径の遷移領域まで挿入することが望ましい。
エアリンス後、図12(D)に示すように、ボトルBは水リンスステップへと送られる。
水リンスステップでは、ボトルBは反転状態にされ、ボトルBの内部にノズル51が挿入され、このノズル51から加熱された無菌の温水Hが洗浄液として送り込まれる。この無菌水は常温であってもよい。温水HがボトルB内に吹き込まれることにより、ボトルBの内面に付着した過酸化水素がボトルBの外に洗い流される。また、異物も除去される。ノズル51は予備加熱ステップやエアリンスステップと同様にボトルBの内部の遷移領域と重なる位置まで挿入することが望ましい。
なお、上述したように、ボトルBの内面はコロナ放電処理されている結果、少量の過酸化水素水がムラのない薄い被膜となってボトルBの内面に付着している。そのため、上記エアリンスステップのみで残留過酸化水素の除去は十分可能である。このような場合は、上記水リンスステップは省略することができる。
上記所定の殺菌処理が施された後、図12(E)に示すように、ノズル52から飲料aがボトルBの内部に充填される。飲料aは予め殺菌処理されている。
飲料aが充填されたボトルBは、図12(F)に示すように、キャップCがボトルBの開口部b3にねじ込まれることにより密封される。キャップCは予め殺菌処理されている。
なお、図示しないがボトルBが上記予備加熱ステップ(図11(A))から上記密封ステップ(図12(F))に至る経路にはボトルBを搬送するためのホイール列等からなる搬送手段が設けられる。また、少なくとも上記過酸化水素水供給ステップ(図11(B))から上記密封ステップ(図12(F))に至る経路は無菌チャンバーで覆われている。これにより、内容物の充填が無菌的に、かつ、自動的に行われる。
コロナ放電処理を行った場合と行わなかった場合とについて、殺菌条件を種々変えて殺菌処理したところ、表1の結果を得た。
この場合、ボトルは、中間層としてエチレン−ビニルアルコール共重合体を含む高密度ポリエチレンにより形成し、500mL容量のものとして多層ブロー成形により得た。このボトルの内面は、コロナ放電処理をしない場合、水に対する接触角は98°であった。一方、コロナ放電処理をした場合、水に対する接触角は63°であった。
表1において、滅菌効果は、Bacillus atrophaeusを指標菌として、35℃下で、8日間SCDブイヨン培地にて培養し、以下の式に基づき算出した。数値が大きいほど滅菌効果が高い。
滅菌効果=Log(容器に接種した菌数/殺菌処理後の菌数)
殺菌処理後の菌数は、複数の殺菌処理済サンプルの陽性数から統計的に算出される最確数を代入した。
滅菌効果は6を越えれば十分であり、コロナ放電処理をすることにより過酸化水素の供給時間を短縮し、かつ、供給量を減らしても十分な殺菌効果が得られることがわかる。コロナ放電処理をしない場合は過酸化水素の供給量を減らすと実用的な殺菌効果が得られないことが分かった。
<実施の形態2>
この実施の形態2では、電極の各種変形例を用いてコロナ放電処理が行われる。
まず、電極の形状の各種変形例について、図6(A)から(E)を用いて説明する。
図6(A)に示すように、樹脂製のボトルBの開口部b3を通過可能な電極21が、電極支柱21bの先端から、棒状の電極放電部21aが3本以上放射状に広がった形状とされる。
この場合、コロナ放電C1、C2の際は、棒状の電極放電部21aの先端から、コロナ放電が発生する。コロナ放電C3および放電C4の場合、電極放電部21aの棒の側面からボトルBの底部b2に向かって、コロナ放電が発生する。
図6(B)に示すように、樹脂製のボトルBの開口部b3を通過可能な電極22が、電極支柱22bの先端から、棒状の電極放電部22aがT字に広がった形状とされる。
図6(C)に示すように、樹脂製のボトルBの開口部b3を通過可能な電極23が、電極支柱23bの先端から、棒状の電極放電部23aがL字に曲がった形状とされる。
図6(D)に示すように、樹脂製のボトルBの開口部b3を通過可能な電極24が、棒状の電極支柱23bから、電極曲部24cを介して、棒状の電極放電部24aへ、角がないL字に曲がった形状とされる。
図6(E)に示すように、樹脂製のボトルBの開口部b3を通過可能な電極25が、電極支柱25bから電極放電部25aまで、なだらかなカーブ形状とされる。
なお、上記図6(A)〜(E)のいずれの電極の場合であっても、できるだけ均質に改質させるために、ボトルBの開口方向を軸として、電極21、22、23、24、25とボトルBとを相対的に回転させながら、電極21、22、23、24、25をボトルBの内面の底部b2に近づけることが好ましい。
次に、電極24の場合、ボトルBへの電極24の挿入の動作について、図7(A)から(E)を用いて説明する。
なお、図7(A)から(E)において、アース部12は省略されている。
図7(A)に示すように、ステップS2で電圧が印加された電極24を、ステップS3において、駆動部14は、電極24の電極放電部24aの先端から、ボトルBの開口部b3に電極24を挿入する。このとき、駆動部14は、ボトルBを回転させる。
次に、図7(B)に示すように、駆動部14は、電極放電部24aの先端がボトルBの開口部b3を通過するようにさせながら、電極24の方向を、電極支柱24bがボトルBの開口方向に平行になるように近づける。ボトルBの開口部b3から広がって胴部b1の太いところまで広がる場所の内面が改質される。
次に、図7(C)から図7(D)に示すように、電極支柱24bの方向がボトルBの開口方向に平行になったら、駆動部14は、電極24を、ボトルBの開口方向に駆動させて、ボトルBの胴部b1の内面をコロナ放電C2で改質させながら、電極放電部24aをボトルBの内面の底部b2に近づけて行く。
次に、図7(E)に示すように、ステップS4において、駆動部14は、電極放電部24aを、放電の態様が変化するまで、ボトルBの内面の底部b2に近づける。電極放電部24aの側面部分(導電部の底面に対向した面)からのコロナ放電C3が発生する。電極24とボトルBとは相対的に回転しているので、ボトルBの内面の底部b2全体が改質され易い。
<実施の形態3>
この実施の形態3では、電極の先端が開いたり閉じたりして展開する電極が、コロナ放電処理に用いられる。
図8(A)に示すように、電極31は、棒状の電極支柱31bと、2本の棒状の電極放電部31aと、電極放電部31aを展開させるヒンジ部31cとを有してもよい。ヒンジ部31cを中心に電極放電部31aが開いたり閉じたりする。
図8(B)に示すように、電極32は、棒状の電極支柱32bと、1本の棒状の電極放電部32aと、電極放電部32aを展開させるヒンジ部32cとを有してもよい。
図8(C)に示すように、電極33は、棒状の電極支柱33bと、傘状の3本以上の棒状の電極放電部33aと、電極放電部33aを展開させるヒンジ部33cとを有してもよい。
ボトルBの開口部b3を通過させる際は、駆動部14は、開口部b3を通過できる程度まで電極放電部31a、32a、33aを閉じさせる。閉じ方は、電極放電部31a、32a、33aが折りたたまれて電極支柱31b、32b、33bに近づく場合と、電極放電部31a、32a、33aが折りたたまれて電極支柱31b、32b、33bから離れる場合と、があるが、どちらでもよい。
ヒンジ部31c、32c、33c(ボトルBの開口部b3を通過後に展開可能な展開機構の一例)は、ヒンジ部31c、32c、33cを中心に回転できる機構を有する。例えば、ワイヤにより引っ張り上げ、電極放電部31a、32a、33aの自重で開く機構、バネ機構、傘の折りたたみ方式のような機構等が挙げられる。
電極31、32、33が、放電して、電極支柱31b、32b、33bを中心に回転しながら、ボトルBの開口部b3の細い部分を通過する。通過後は、電極31、32、33が展開して、電極放電部31a、32a、33aが開く。電極放電部31a、32a、33aが開いた後、電極支柱31b、32b、33bを中心に回転しながら、電極31、32、33が駆動部14によりボトルBの底部b2まで移動する。
電極31の場合、図9(A)に示すように、ステップS3において、電極放電部31aが閉じた状態で、電極支柱31bを中心に回転しながら、電極放電部31aがボトルBの開口部b3の細い部分を通過する。電極放電部31aの先端からのコロナ放電が、開口部b3の内側の部分を改質する。なお、管状の開口部b3の内側に近づくように、電極放電部31aが多少開いた状態でもよい。
図9(B)に示すように、開口部b3から胴部b1の内面形状に沿って、先端からコロナ放電を発生する電極放電部31aが、回転しながら開き始める。胴部b1の内径が最大の部分の所まで、電極31が移動してきたときに、電極放電部31aが全開する。電極放電部31aの先端からのコロナ放電が、胴部b1の内側の部分を改質する。なお、また、胴部b1がくびれた形状である場合、電極放電部31aが多少閉じてもよい。
図9(C)に示すように、ステップS4において、開いた電極放電部31aが底部b2に近づくと、電極放電部31aの棒部分から、コロナ放電が発生する。電極放電部31aが回転しながら、ボトルBの内面の底部b2を改質する。
電極31、32、33が、ボトルBの開口部b3を通過後に展開可能な展開機構を有する場合、ボトルBの開口部b3を通過した後に電極の先端(電極放電部31a、32a、33a)が開き、電極放電部31a、32a、33aがボトルBの内面の側壁部(開口部b3の内側および胴部b1の内側)に近づくため、ボトルBの内面の側壁部を効率的に改質させることができる。
なお、図9(A)から(C)において、アース部12は図示が省略されている。
<実施の形態4>
この実施の形態4では、実施の形態1における導電体とは異なる構造の導電体がコロナ放電処理に用いられる。
図10に示すように、アース部42(接地された導電体の一例)は、絶縁部が無くて、アースされた導電体のみにより構成される。
この場合、ボトルBが導電体のアース部42に接触しないように、ボトルBがセットされる。また、ボトルBの開口部b3が、アース部42の開口部から、多少突出している。
本発明は、以上のように構成されるが、上記各実施形態に限定されるものではない。上記各実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。例えば、上記各実施形態ではコロナ放電処理及び殺菌処理の対象としてボトルを用いたが、本発明はボトルのほかカップ、トレー等他の形態の樹脂製容器についても適用可能である。